日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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2016年3月17日 厚生労働委員会 速記録

2016年03月18日

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 冒頭、ちょっと今日、今朝一部報道で、子供の医療費の窓口負担無料化で、いわゆる地単カット、補助金のペナルティーの問題、これを一部廃止するということで、厚生労働省、方針固めたという報道されているんですけど、通告していないので詳しい御答弁は結構ですが、大臣、少なくとも大臣の腹は固まったということなんでしょうか。お答えいただきたいと思います。

○国務大臣(塩崎恭久君) これは大きな宿題になっていることはよく分かっておりますし、これはやっぱりどういうふうにすればこれまでこれを導入してきた論理と、子育て支援を応援をしていくかということとの兼ね合いでどうしていくかということを決めないといけないなということは明確に事務方にも伝えておりますが、最終的に、これは市町村などとの話合い、国民健康保険の改革の議論の中で随分御要望もあったところでもございますので、どういうところで、どこまで、どういうふうな扱いをするのかということについてはまだ私も最終的な結論を出しているわけではないということでありますが、何らかの対応をしていかなければならないということは間違いないというふうに思っております。

○小池晃君 どこまで廃止するかはともかく、とにかく廃止という方向だということで腹を固めたというふうに理解しますが、これは就学前にとどまらずやっぱり広げるべきだというふうに私どもは思っておりますし、障害者などにも拡大すべきだというふうに思いますが、ちょっとこれはこれ以上今日はやりません。
 退職手当共済制度の見直しについて聞きます。
 昨日の参考人質疑でも家平参考人の方から、支え手が福祉現場に来ない深刻な実態がある中で人材確保とは真逆だという指摘もありました。イコールフッティングというけれども、やらせたいことは公益性を強調するのに、担い手の確保については公的責任を後退させるというのはやっぱりおかしいんじゃないかという、私もそのとおりだと思うんですね。
 最初に局長にお伺いしたいんですが、既に先行例として介護ではこれは公費助成廃止されましたが、これは二〇〇六年、平成十八年、その影響調査はされましたか。

○政府参考人(石井淳子君) 社会福祉施設職員等退職手当共済制度の加入職員数、こういう形で把握をしているところでございます。これは、実施主体であります独立行政法人福祉医療機構において把握をいたしております。
 平成十七年四月一日には二十八万七千五百四十四名でございましたところ、御指摘のこの介護関係施設、事業の公費助成を見直す改正が施行された平成十八年には二十九万九千九百九十人、その後平成二十三年まで減少傾向にございました。このところ、平成二十三年から二十七年までは二十五万人強で推移をしているところでございます。

○小池晃君 これ、公費助成を廃止してから、今日資料をお配りしていますけれども、廃止した直前は約三十万人です。それが二十五万人、五万人減っているわけですね。同じ時期に、障害者総合支援法の関連施設では十三万人から十九万人に加入者は増えているわけです。
 大臣にお伺いしますが、この介護の事例を見れば、公費助成を廃止すればやはりこの共済制度に加入する人は明らかに減っているわけで、これは障害者分野でも人材確保がやっぱり更に厳しくなるんじゃないですか。この介護の実態から見てやっぱりそういう懸念はありませんか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今回の改正案につきましては、他の経営主体とのイコールフッティングの観点から、障害者総合支援法等に関する施設そしてまた事業について公費助成を廃止するということにしているわけでございますけれども、これは何度も申し上げておりますように、既加入者、既に入っている人に対する公費助成などは維持をし、なおかつ、新規加入者に係る法人の掛金負担の増加については、制度見直し後の施設、事業の経営実態等を適切に把握した上で報酬改定を行うということにして、安定した法人運営の確保に努めるということにしているわけでございまして、これについて御意見があったことはよく分かっております。
 今回の改正の中でも、さらに退職手当の給付水準についてはより長期加入に配慮をした給付水準に見直したということ、さらには、一度退職をして再就職をその後する、そういう場合には合算できる期間を二年以内から三年以内に拡充するといった人材確保に資する見直しを同時に行っているわけでありますので、その他の福祉人材の確保策と併せて人材の確保に取り組んでいるところでございます。
 なお、前回改正時に同様に公費助成を廃止した介護関係施設、事業について今御指摘がございましたけれども、既に今、既加入者の退職や法人経営者が他の退職金制度を選択をしたといったことなどによって制度改正前と比較して加入職員数が一時的に減少いたしましたけれども、一方で、総加入職員数はおおむね横ばいで来ているということで、率として減っているじゃないかということで御指摘がございましたけれども、安定的な数が今見込まれているというところが今までの経験ではないかというふうに思います。

○小池晃君 説明になっていないと思いますよ。
 減っているじゃないですか、明らかに。やっぱりこれ影響出るわけですよ、公費助成を廃止すれば。
 こういう事態はやっぱり障害者でも起こるでしょうと言っているんです。全く答えられないわけですね。
 ちょっとこれに関して言うと、もう一つは保育であります。保育について前回この問題を議論したときに、大臣は、これは平成二十九年までの検討課題であって廃止は全く決めていないと、こうおっしゃったんですね。
 ならば聞きますが、平成二十九年度までの検討の結果、公費負担を維持することも選択肢にあるということですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今お話をいただいたように、今事前に何か決めて、結論を初めから決めて掛かって、議論はどうあろうともそうするんだみたいなことは全く考えているわけではございませんので、この公費助成の在り方については何よりも今、子ども・子育て支援、特に待機児童解消をやりながら子育て支援をするということはまさに最優先課題の一つという位置付けでございますので、そういう中で皆さん方がどういうふうなお考えを持つかということをよく議論していただこうということで予断なく検討しておりますから、選択肢としては導入を、こういうことを決めないという選択肢も十分それはあり得るというふうに考えます。

○小池晃君 ということは、安倍政権の最優先課題は待機児童ゼロだ、解消だというのであれば、平成二十九年度で待機児童ゼロが実現していなければ、これは公費負担を維持するということだってあるということですね。

○国務大臣(塩崎恭久君) それは様々な要因を考え併せて決めていかなきゃいけないことでありますから、それはどういう場合になったらやめる、どういうふうになったらやめないみたいな話ではなくて、先ほど申し上げたように、選択肢としてはいろいろあり得ますけれども、しかし、それをどういうふうな結論付けを最後にするかは、国民の皆様方の他の子育て支援策をどうするのか、それから、今御指摘をいただいている障害者の場合の今回廃止を提案をしている公費助成とのバランスとか、いろいろやはり考えなければいけないんだろうというふうに思いますので、しかし、いずれにしても、はっきりしていることは、アプリオリに何か結論を持って今臨んでいるわけではないということでございます。

○小池晃君 バランス、バランスというけど、やっぱり劣悪な職員の処遇の、イコールフッティング、イコールフッティングといって、下に下に合わせるということをやったら、私は、やっぱり職員の確保は一層困難になるし、非正規化も進むし、人材確保を本当に閉ざすことになるんだということを改めて指摘をしたいと思います。
 それから、前回の質疑で石井局長は、再投下可能な財産がある場合は残額全てを社会福祉事業に充当するという、そういう計画でもよいということを答弁されました。全額を社会福祉事業の拡充に利用することができるという答弁されました。
 更に聞きますけれども、その場合に、所轄庁が地域公益活動などが計画にないからこれは認めませんよといったような圧力を掛けてくるようなことがあった場合、それを排除することはできるんでしょうか。

○政府参考人(石井淳子君) 所轄庁による社会福祉充実計画の承認に当たりましては、法律上、地域における需要等に照らして適切であることなどの要件に適合すると認めるときはこれ承認するものと定められております。
 法人が社会福祉事業に、ニーズに照らしまして、社会福祉充実残額を社会福祉事業のみに投資する場合には、所轄庁は、地域における当該社会福祉事業のニーズを、各種福祉に係る計画に照らしてその確認をしていくということによりまして要件の適合性を判断すべきものでありまして、担当者の裁量で判断がなされるものではないものでございます。
 今後、法人の自主性や様々な地域ニーズに対する柔軟な対応を阻害しないよう、こうした点も含めまして、承認に係る明確な基準を示すとともに、法令に定める要件に適合する社会福祉充実計画の内容について、所轄庁に対して、その所轄庁が変更を求めることがないように指導をしてまいりたいと思っております。

○小池晃君 ちょっと確認しますが、そもそもやっぱり所轄庁が認可審査するに当たって、実施事業の内容にまで変更を求めるような権限は与えられていないという理解でよろしいですか。

○政府参考人(石井淳子君) あくまで法令に照らしてということになります。

○小池晃君 この辺はちょっと微妙なところではないかと思いますが、とにかく地域公益事業をやっていないからという理由で、何かそこに介入していくなんということはやっぱりあってはならないということだと、私、この法律全体の、この法令の関係でいえば、それ最優先でやるということをおっしゃっているわけですから、そういうことだというふうに思うんですが。
 さらに、前回大臣が地域公益活動はそれぞれの社会福祉法人の経営実態に応じ二十六条の範囲内でやってもらうことになるのではないかと答えているんですけど、これ、要は、二十六条というのは社会福祉事業に支障がない限りというふうになっているわけで、社会福祉事業に支障が出るような場合には地域公益活動をしないということでよろしいんですか。

○政府参考人(石井淳子君) 社会福祉法人は、税制優遇措置が講じられている公益性の高い非営利法人として社会福祉事業の中心的な担い手としての役割を果たすだけでなく、営利企業など他の事業主体で困難な福祉ニーズに対応することが求められる法人でございまして、社会福祉法に基づく公益事業として地域の幅広いニーズに対応する取組を行っておられます。
 社会福祉法人が行う公益事業でございますが、その法律二十六条第一項におきまして、社会福祉事業に支障がない限り公益事業を行うことができる旨規定をされているものでございまして、これは委員御指摘のとおり、本来事業であります社会福祉事業に支障が生じない範囲で実施していただくものであります。したがいまして、この地域公益事業についても同様でございまして、社会福祉事業に支障がない範囲で実施をしていただくものと考えております。
 ただ、再投下可能な財産額がない法人におきましても、経営実態におきまして、例えば追加的な費用のない取組を含め、地域における公益的な取組を行っていただくことは期待を申し上げているところでございます。

○小池晃君 今御答弁があった社会福祉事業に支障が出るというのは、じゃ具体的にはどういう状況なのか。例えば、高度障害、強度障害などで手厚い支援を要する障害者を多く受け入れるために通常よりも多い職員を配置して、寄附金などを募ることで何とか経営を維持していると、こういうケースはやっぱり社会福祉事業に支障が出る場合ということに該当するようなケースになってくるんでしょうか。

○政府参考人(石井淳子君) 仮にいわゆる再投下可能な財産額、社会福祉充実残額がないにもかかわらず、地域公益事業を含む公益事業を実施するとした場合には、これは追加的な費用を掛けて公益事業を行うということになれば、それは法二十六条一項の要件は満たさないことになると考えております。

○小池晃君 それから、その社会福祉充実残額のことなんですが、この残額について、これは法文上は計算方法あるいは基準というのは示されていないわけですね。そのことについて、昨日、参考人質疑でも懸念が表明されています。
 純資産から現に行っている事業の継続のために必要な財産の額を控除したというような書きぶりだと思うんですが、この現に行っている事業の継続のために必要な財産の額については、法律上は規定はあるんでしょうか。

○政府参考人(石井淳子君) 法律の第五十五条の二第一項で、今議員がおっしゃったように、現に行っている事業の継続のために必要な財産の額と規定をしているものでございまして、私どもとしましてはこれにより控除対象財産の範囲は限定的になっていると考えております。

○小池晃君 いやいや、限定的といってもこれだけの規定しかないわけで、これ以上はこれは厚生省令でやろうと、そういうことなんですね。

○政府参考人(石井淳子君) 御指摘のとおりでございます。技術的な事項ということでございまして、省令に委任することといたしております。

○小池晃君 私は、技術的といってもこれは非常に大事な問題だと思うんですよ。やっぱりここのところで、本当に今まで答弁にあったようなことが担保されるのかどうか。やっぱり省令ということであると、その時々のさじ加減になってしまうんじゃないかという懸念が出ているわけですね。
 やっぱり少なくとも省令にどんなことを盛り込むのかという中身を示すべきじゃないですか。

○政府参考人(石井淳子君) これは、この問題について御議論いただきました社会保障審議会の福祉部会の報告の中にも明記をされているところでございますが、事業を継続するために必要な財産としましては、現に社会福祉事業等に活用されている土地、建物等の資産、そして二つ目として、現在の建物の建て替えや大規模修繕に必要な費用、そして手元流動資金、これが基本であるというふうに考えておりまして、これを今後省令により具体的な裁定内容として定めてまいりたいと思っております。

○小池晃君 この問題、ちょっと今日いろいろと細かいことも含めて聞きましたけれども、やっぱり既に、国に言われるまでもなく、地域公益活動、地域における公益活動をみんなやっているんだと。
 あり方検討会のアンケートでも、義務化については九三%は強制すべきでない、あるいは既に実施していると答えているわけで、やっぱり社会福祉充実残額なるものがどういうものか把握もしていないという、前回も議論もありましたけれども、そういう中でやっぱり地域公益活動の責務化を法制化すべきでないということを改めて申し上げたいと思います。
 資格の一元化の問題について聞きます。
 前回、厚労省は、これまで施行延期が繰り返されてきた経緯もあって養成施設や学生が円滑に対応するための準備がいまだ十分にできていないという答弁をしていたんですけれども、これは天に唾する話ですよ。だって、これ、九年前に、私、決めたときもこの委員会にいましたけれども、五年有余があったんです。それでもやらないで、五年前に三年延期して、さらに一昨年、再度延期して、もう本当に先送り先送りでやってきたわけですよね。準備するんだったら今まで十分準備する時間があったのにやっていなかったこれ厚労省の責任だと私は思う。
 大臣、今回更に五年掛けて漸進的に導入を図るというふうになっているわけですけれども、昨日も参考人からは、一元化こそが地域向上、そしてやっぱり労働条件の改善につながるんだと、私もそのとおりだと思うんですよ。この期に及んで更に五年も掛けるというのは、これは余りにも時間掛け過ぎなんじゃないですか。これでいいと思っているんですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) これは、審議会はもちろんでありますけれども、与党の中でこういう結論になってまいったわけでございまして、平成二十九年度から三十三年度までの五年間の経過措置を設けているわけでありますけれども、平成十九年の改正法において、国家試験の義務付けを導入した際に五年後の施行としていたこと、そして実情として何度かにわたっての施行延期のために養成施設において学習環境の整備など実効的な準備が進んでいないなどから、必要な期間としてこの五年というものを考えたところでございまして、私どもとしては、今回のこの法律どおり、再び延期するということは考えずにしっかりやっていきたいというふうに考えているところでございます。

○小池晃君 だから、おかしいんだって。やっぱり、夏休みの宿題を八月三十一日になってできていなかったから、子供が九月終わりまで夏休み延ばすってできないのに、あなたたちはそれをやっているわけですよ。本来は、ちゃんとこれだけの、そもそも最初に決めたときに五年の猶予があった。
 しかし、それもやらずにまた延ばし延ばしで来ていると。今度また五年掛けてやるって、私はちょっとこれはとんでもないというふうに思う。
 大臣、これはやっぱり一元化延期に断固反対という声が上がってきた問題で、今度こそ絶対にこれはもう、また延期するというようなことは絶対にやらないということを言っていただけますか。
 これはっきり答えてください、もう二度とこれは延期しないと。

○国務大臣(塩崎恭久君) 国権の最高機関は国会でございますから、国会をオーバーライドするような発言はもちろんできませんけれども、行政府としてお答えを申し上げれば、先ほど申し上げたように、まず今回の改正法案によって現場の声にも配慮をしながら確実に資格取得方法を一元化するという道筋が付けられているわけでありますから、この国家試験の義務付けを再び延期するということは考えておりません。

○小池晃君 今の言葉はしっかり覚えておきたいというふうに思います。
 終わります。

― ― ― ―【以下、反対討論】― ― ― ― ― ― ― ― ―

○小池晃君 私は、日本共産党を代表し、社会福祉法等改正案に反対の討論を行います。
 反対理由の第一は、全ての社会福祉法人に対して、本来の社会福祉事業とは別に、地域における公益的な取組の責務を課するとともに、余裕財産なるものをそれらのために充当することを義務付けるからです。
 貧困と格差の広がり、相次ぐ社会保障の制度改悪の中で、低所得者独り暮らしや夫婦のみの高齢世帯、認知症高齢者などで悲惨な事件が後を絶ちません。しかし、社会福祉制度のはざまで苦しんでいる方々を救う仕事は、本来、国や自治体の責任で行うべきものであり、それを社会福祉法人に肩代わりさせることは公的責任の縮小、後退にほかなりません。
 この法案は、規制改革会議などによる社会福祉法人が多額の内部留保を有しているという根拠のない攻撃に押されて出されたものですが、社会福祉充実残額なるものの保有状況も、既に行われている地域における公益的な取組の実施状況も厚生労働省は把握しておりません。正確な実態の把握があり、そこに何らかの問題点が科学的に見出されて初めて法改正の必要性が生じるのであり、そもそも立法事実がありません。
 重大なのは、利用者への支援の質、量の低下、労働者の処遇悪化につながることです。現在の報酬単価、職員配置基準は、人として当たり前の生活を保障するには程遠い水準です。これを放置したまま新たな責務を課すことは許されません。
 反対理由の第二は、障害者施設の退職手当共済制度への公費助成を廃止するからです。
 営利企業などとのイコールフッティングを口実に公費助成をなくすことは福祉人材確保に逆行します。極めて低い賃金水準の上、退職金も保障されなければ、人手不足に拍車を掛けることは明らかです。
 この間、法案に懸念や反対の意見をお持ちの方から多くの要請文が届いています。私の事務所のファクスは先ほど一千六十八枚になりました。アベノミクスによる福祉の営利化でどんなことが起こっているか知っていますか、十分に審議してください。社会福祉は国の責務です、社会福祉法人に丸投げするのはやめてください。身を粉にして働いている私たち法人はずうっと前から地域貢献しています。本法案は、こうして頑張っている法人や職員の皆さんに更に困難を強いるものであり、社会的支援を必要とする人たちを苦しめるものだと言わざるを得ません。
 日本共産党は、社会福祉制度における公的責任を後退させ、社会福祉法人の役割の変質を図る本法案には反対であることを表明し、討論とします。

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