本文へジャンプ
日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

145-参-日米防衛協力のた…-9号 1999年05月20日

戦争法案について徹底追及
(ガイドライン特別委員会)

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 昨日、TBSテレビ「NEWS23」で世論調査の結果が発表されております。今審議中のガイドライン法案についてあなたはどう考えるか、こういう質問に対して、賛成するという方が、四月にも同じ調査をやっているんですが、四月は四一・四%に対して三七%と減っているんです。そして、反対という方は、二五・五%から二八・五%にふえている。わからないという方も三三・一%から三四・五%とふえている。
 審議が進めば進むほど反対の声もふえている。わからないという人もふえている。皆さんさっきから、わかっていないから反対だなどと非常に失礼なことを言っているが、わかってきているから今反対の声がどんどん広がってきているんじゃないでしょうか。
 いまだに法案の根幹部分である周辺事態の定義、これも不明確だ。周辺地域の周辺とはどこなのか、事態とは一体何なのか、明らかになっていないじゃないですか。
 そもそも憲法九条で武力による国際紛争の解決を禁じた日本が、何で日本が攻撃をされてもいない周辺事態で戦争への参加ができるのか。新ガイドライン関連法案で日本が行う後方地域支援は、これは憲法違反の武力行使そのものじゃないか。こういうことに答えてないんですよ。きょうはこうした点について質問をしていきたいというふうに思います。
 まず最初にお聞きしますが、日本国憲法も国連憲章も、これは二度にわたる悲惨な大戦の教訓を踏まえて、紛争は平和的に解決をする、こういう決意の上につくられております。国連憲章は、紛争の平和的な解決の手段を尽くした後の安保理の決議に基づく軍事的な措置を認めていますが、憲法はこの軍事的な措置への参加は認めておりません。
 紛争の平和的な解決に徹するのが憲法の立場だ、これは憲法制定時の衆議院本会議で、当時の吉田茂首相が憲法第九条に触れてこう述べておられる。憲法制定時の衆議院の本会議の議事録ですが、「斯かる思い切った条項は、凡そ従来の各国憲法中稀に類例を見るものでございます。」、「此の高き理想を以て、平和愛好国の先頭に立ち、正義の大道を踏み進んで行こうと云う固き決意を此の国の根本法に明示せんとするものであります。」、こう言われている。
 日本は世界各国の先頭に立って紛争の平和的な解決を目指そう、これが憲法の立場です。このこと、この立場は今日でも日本政府は変わらない、そういうふうに言えますね、お答えください。憲法問題ですよ、法制局です。

○政府委員(大森政輔君) 昭和二十二年に憲法が制定されまして以来、憲法に盛り込まれました平和主義の理念、これはその後定着し、その後憲法が改正されたわけでもありませんから、依然としてその方針は変わっておらないということはそのとおりでございます。

○小池晃君 その立場は変わってないんだと。
 この観点から、政府はこれまで日本がとれる軍事行動については国連憲章、国際法の基準と比べても制約がある、そういう見解を示してきております。例えば、八一年の角田法制局長官はこう答弁している。「いわゆる個別的自衛権、こういうものをわが国が国際法上も持っている、」、「ところが、個別的自衛権についても、その行使の態様については、」「たとえば海外派兵はできないとか、それからその行使に当たっても必要最小限度というように、一般的に世界で認められているような、ほかの国が認めているような個別的自衛権の行使の態様よりもずっと狭い範囲に限られておるわけです。」、こう言っているわけです。
 日本国憲法で認められる行動は、国連憲章で認められるものよりも狭い範囲に限られている、これも確認できますね。どうですか。

○政府委員(大森政輔君) お尋ねの日本国憲法と国連憲章等との間の差の問題でございますが、委員が言外に御指摘されているような意味における差があるかどうかはともかくといたしまして、御承知のとおり、日本国憲法は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」。そして二項におきまして、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」、こういうふうに規定されておりまして、この第九条の解釈といたしましては、我が国を防衛するために必要最小限度の実力組織を保持し、そしてその組織に基づく自衛行動を行うことはともかくとして、それ以外については一切武力の行使に当たる行為等は行わないという方針を採用しているわけでございます。
 それに対しまして国連憲章におきましては、まず第七章におきまして集団的安全保障措置に関する規定があり、安保理の決議がありますと陸海空軍の行動もとることを認め、また五十一条におきましては、ある一定の制約のもとで個別的自衛権あるいは集団的自衛権の行使を認めているというように、武力の行使についてある許容の範囲、例外の範囲というのは日本国憲法との間で制度的な差があるということは、そういう意味におきましては御指摘のとおりではなかろうかと思うわけでございます。

○小池晃君 私が言った違いというのはそういうことなんですよ、長々と言われたけれども。もうちょっと素直に答えていただきたいと思うんです。
 こういう憲法のもとで、こうした点から見れば、新ガイドライン法案というのは明らかにこうした憲法の制約を踏みにじるものである、そういう疑念を晴らすことができないわけであります。
 そこで次に、今国連憲章を触れられましたが、国連憲章についてお伺いしたい。国連憲章では、どういう武力の行使が禁止をされておるのか聞いていきたい。
 国連憲章二条四項ではこう言っております。
  すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。
こうしております。
 二条四項で言っている武力の行使とは、軍事力をもって物事を解決することであり、それを禁止する、そういうことでよろしいですか。

○政府委員(東郷和彦君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のように、国連憲章二条四項に、
  すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。
と規定されております。
 ここに規定されておりますところの武力の行使、ユース・オブ・フォース、これにつきましては、起草の経緯などからして政治的、経済的圧力の行使は含まれておらず、専ら実力の行使に係るものと解されております。

○小池晃君 要するに、この国連憲章二条四項で言う武力の行使というのは、政治的、経済的な圧力は除くと、そういう議論は確かにあります。しかし、それ以外の実力による軍事的な圧力は含まれるんだと。つまり、これは戦闘行為だけではなくて兵たん活動など戦闘行為を支える活動も含まれる、そういうふうに理解してよろしいんですね。

○政府委員(東郷和彦君) ただいま申し上げましたように、専ら実力の行使に係るものと解されております。したがいまして、通常理解されておりますところの兵たん活動、こういうものは含まれていないというふうに解すのが一般的であるというふうに考えております。

○小池晃君 軍事的な実力の中に兵たん活動を含むなんて国際的な軍事的な常識じゃないですか。全くおかしい。

○政府委員(東郷和彦君) お答え申し上げます。
 法的な観点から申し上げれば、国連憲章二条四項におきますところの武力の行使、これは実力を指すというのが現下の国際社会の理解と申し上げて間違いないと思います。事実の問題として、兵たん活動を行えばそれは実力の行使と関係がある、ない、こういう議論がございます。しかし、法的な議論といたしましては、武力の行使というのは実力の行使ということで間違いないというふうに考えております。

○小池晃君 それでは聞きますけれども、この国連憲章二条四項で言う武力の行使、これは戦闘行為だけ、それに限定をすると、そういう決定が今まで国連の場で行われたことはありますか。どうですか。

○政府委員(東郷和彦君) 国際法上、この武力の行使自体の定義について、条約等、そういう成文法上の明示的な規定があるわけではございません。それから、国連におきましてはいろいろな国連総会の決議等というのはございました。しかし、法的な意味でこの武力の行使を定義したというものはございません。
 しかし、私が申し上げたのは、このような武力の行使に対する国際的な解釈といたしまして、専ら実力の行使を指すものであるというのが現下の国際社会の理解であるということを申し上げたわけでございます。

○小池晃君 ないということなんですよ。この戦闘行為だけに限定するという決定は今まで国連ではされていないということなんです。武力行使を戦闘行為に限る、こんなことは国連憲章の解釈からは全く出てこないんだ。国連のほかの決定に、今ちょっと決議等にも触れられましたが、その問題で次に議論を進めていきたいというふうに思います。
 一九七四年十二月に、国連総会で侵略の定義に関する決議というのが行われております。これは国連が国際関係において何をもって何を侵略というふうにするのか、これは二十四年間かけて議論を重ねてコンセンサス、全会一致で確認をしたものであります。
 この国連での審議の過程で日本も含めた六カ国、カナダ、イタリア、イギリス、北アイルランド、アメリカ、ここが共同修正案を出しております。これは一九六九年に提案をされている。これです。(資料を示す)
 ここに現物がありますが、これを見ますと、侵略を構成し得る武力行使には以下のものが含まれるというふうにして、目的として五項目、そして行為の内容、態様として八項目を挙げております。
 その八項目を見ると、他国の管轄下にある領域に対する爆撃、他国の軍隊、艦船、航空機に対する組織的な攻撃を行うこと、こういった直接のいわゆる戦闘行為。これ以外にも以下のような項目が含まれております。武装部隊もしくは非正規軍、義勇軍を組織、支援、指揮すること。支援というのはサポーティングという言葉を使われている。暴力的な内乱や他国に対するテロ行為を組織、支援、指揮すること。そして、他国の政府転覆を目的とした破壊行動を組織、支援、指揮すること。これは日本が提案しているんですよ、共同修正案。
 ここで禁止をされている武力行使は、これは戦闘行為に限定されていないじゃないですか。どうですか。

○政府委員(加藤良三君) 一九七四年の侵略の定義に関する総会決議、それから一九六九年の日本を含む六カ国提出の共同修正案についてお尋ねがございましたのでその順序で申し上げますが、最初に七四年の侵略の定義に関する決議、これは武力の行使それ自体に関する定義規定を有しておりません。この決議はあくまでも国連総会が安保理による侵略行為の認定のための指針として基本的な原則を定めようとしたものでございます。それにとどまるものでございます。
 この決議は、六条に明記されておりますとおり「憲章の範囲をいかなる意味においても拡大し、又は縮小するものと解してはならない。」のであり、当該決議中の武力の行使とは憲章第二条第四項の武力の行使、先ほど条約局長から説明がありました武力の行使と同義であって、専ら実力の行使にかかわるものと解されます。
 次に、六九年の日本を含む六カ国共同修正案を提出して、その内容について委員から御紹介がございました。確かにこの案文は、侵略の認定は国際の平和と安全の維持に主要な責任を有する安保理が行うものであるという観点から、侵略とは安保理が用いる用語であるとした上で、侵略という言葉の定義及び侵略を構成する武力行使の目的及び手段を例示しているということでございますが、基本は七四年の決議について今私が申し述べたとおりでございます。

○小池晃君 だから、この侵略の定義に書いてあるんですよ。侵略と武力行使というのは全く別じゃないんですよ。最も深刻かつ危険な違法な武力行使なんです、侵略というのは。ですから、侵略に対して定義をしたということは、侵略というのは武力行使の一部分なわけですから、その態様を定義したということは、それは武力行使というのにこういう態様のものが含まれるということじゃないですか。だから、武力行使というのは単に直接の戦闘行為だけではなくて、その戦闘行為を支える数々の支援活動、組織活動、指揮活動、こういったものが武力行使に含まれるということを、これは一九六九年の時点で日本の政府が提案しているんじゃないですか。そのことを言っているんです。

○政府委員(加藤良三君) ただいまの御指摘は正確でないと思います。
 侵略の定義に関する決議というのは、まさに第三条に「次に掲げる行為は、いずれも宣戦布告の有無にかかわりなく、」「侵略行為とされる。」ということが書いてありますが、その前に「第二条の規定に従うことを条件として、」という縛りがかかっております。
 第二条、これが何が書いてあるかと申しますと、国家による憲章違反の武力の先制的行使は、侵略行為の一応の証拠を構成する。ただし、「安全保障理事会は、国際連合憲章に従い、侵略行為が行われたとの決定が他の関連状況に照らして正当化されないとの結論を下すことができる。」。すなわち、安保理は安保理として最終的な決断を下すということはこの七四年の決議において明記されているわけでございます。そしてさらに、前文に「侵略行為が行われたか否かの問題は、個々の事件ごとのあらゆる状況に照らして考慮されなければならない」云々という記述があるわけでございまして、その例示された侵略の行為というものがすぐ武力の行使につながるということではないと考えます。

○小池晃君 そんなことを聞いているんじゃないんですよ。これに書いてあるからこれで自動的に武力行使になるんだって、そんなこと一言も聞いていないでしょう。武力行使の形態として挙げているんです、こういうものを例示的に。だから、こういうふうに示しているということは、武力行使というのは戦闘行為に限られないという見解をその当時日本政府は持っていたということなんじゃないですかというふうに聞いているんです。答えてください、そこのところ。

○政府委員(加藤良三君) まず、一九七四年の決議、六九年の共同修正案ということの性格なんでございますが、委員がおっしゃっておられるのはむしろ一九三三年ごろの侵略の定義に関する条約というものに近いのかなという感じがいたしまして、こちらの方はそういうものではございません。
 確かに、今申されたような一国による例示列挙ということがございますけれども、同時に一国による国連憲章に反する兵力の先制使用は侵略行為の一応の証拠を構成する、これは第二条に書いてあります。そういう推定規定を設けながら、この定義が安全保障理事会による国連憲章三十九条に基づく侵略行為の存在決定に当たっての指針である、これ自体が物を決めているわけではない、決めるのは安保理なのである、安保理がその権限を有しているのである、具体的ケースにおける侵略行為の存在、認定の権限を有する安全保障理事会の裁量権を第二条が確認しているわけでございまして、そのことを私は申し上げたつもりでございます。

○小池晃君 全然説明になっていないです。安全保障理事会で決定するのは当たり前ですよ。総会決定というのは法的拘束力はないんでしょう。一々の事態について、個々の事態についてそれを安全保障理事会で決定していくわけでしょう。これは当然のことを言っているだけですよ。
 その際に、いろんな形態の武力行使が行われるであろう、そのことが武力行使に該当するかどうか、例えばテロ行為に対する支援というのは武力行使なのかどうなのかというときに、これを指針として示したわけじゃないですか、そういうことも含まれると。そして、それを日本政府が提案したわけではないですか。ということは、その時点では日本政府は、武力行使というのは戦闘行為に限られるということではなくて、それを支えるさまざまな行動も武力行使の形態としてあり得るというふうに考えていたということじゃないですか。そのことに正面から答えてください。

○政府委員(加藤良三君) ちょっと経緯について説明させていただきますけれども、国際法違反行為として制裁の対象となるべき武力行使としての侵略、これを定義するということについては、定義の可能性と有用性という問題が当時ずっと提起されていたわけでございます。
 第一に、いかなる行為がいかなる状況のもとで国際法上違法な武力行使としての侵略であるかを外延と内包を全部確定して一般的に妥当する定義で決定することは不可能に近いという認識が当時国連であったわけであります。
 それから第二に、具体的行為が具体的状況のもとで国際法上違法な行為としての侵略であるかをそういった一般的な定義の適用によって設定することは極めて危険であって、したがってそのような定義は仮に可能であったとしても有用ではない、こういう議論が盛んに出されていたわけでございます。
 そういう議論の流れを受けて、私が先ほど申し上げましたように、安保理が明確な決定の権限を持つ、そのためのガイドライン、基本原則みたいなものを例示的に示すということでおさまりがついた、こういう流れであったわけでございます。

○小池晃君 私の質問に正面から全く答えていただけない。
 特別委員会が最終草案を採択したときに、日本代表は席上でこう発言しております。この侵略の定義が総会二十九会期に採択されると、国際法の歴史に新しい一章が書き込まれ、多くの高名な学者の夢が実現することになるだろう、こういうふうに言っているんです。少なくとも一九六九年のこの修正案を出した時点ではこれは禁止すべき武力行使に支援も含めていた、外務省、日本政府はそういう見解であったということは否定できないはずです。このことはどうですか。このことに答えてください。

○政府委員(加藤良三君) 正面からお答えしているつもりなんでございますけれども。
 その決議案の作成段階における提案、議論の内容については交渉過程にかかわるということもございますので、その決議が採択された後の時点において逐一コメントすることは私は適当でないと考えまして、一般論として申し上げるわけですが、交渉中に各国がとった立場が最終的立場としてその国を拘束するということはもちろんないわけでございます。
 いずれにしても、侵略の定義に関する総会決議は、先ほど来申し上げておりますとおり、国連憲章上、侵略行為の存在を決定する権限は安保理にあるということを前提として、安保理が侵略行為の存在を決定する際の指針として作成されたものであるということでございます。
 今議論になっております両文書というのはあくまでも総会決議でございまして、それ自体としては委員が示されたとおり法的な拘束力を有するものではございません。また、両文書ともその中に国連憲章の関連規定の範囲をいささかも変更するものではないということを明記しておるわけでございます。そのようなものとしてこの両方の決議ともコンセンサスで採択されたものでございますし、日本もそのような認識に立ってコンセンサスに参加したということでございます。

○小池晃君 正面から答えないんです。この時点で認めていたことははっきりしているんですよ。
 そしてさらに、個々の事態を安保理で認定する、これは当然のことです。個々の事態がどう認定されたか、そういう問題を議論したい。
 国際司法裁判所のニカラグア事件判決、この問題を取り上げたいと思います。
 この判決が武力行使の範囲について認定した唯一の国際司法裁判所の判決である、このことは認められますね。

○政府委員(東郷和彦君) お答え申し上げます。
 武力行使との関連ということでございますけれども、御指摘のニカラグア事件判決、これは武力行使の問題にICJが正面から取り組んだ主要な事例であるというふうに理解しております。
 武力行使に言及したもの、あるいは武力行使にかかわる例としては、例えば一九四八年のコルフ海峡事件あるいは一九八六年のブルキナファソ、マリ間の国境紛争事件、さらには同じく一九八六年の核兵器の違法性に関するICJ勧告などがございますけれども、武力行使というものはどういうものかということに正面から取り組んだ主要な判決はこのニカラグア事件判決というふうに心得ております。

○小池晃君 これは大変大切な判決なんですよ、武力行使というのを国際法上考えていく上で。
 何でこの裁判について取り上げるのかちょっと説明をしたいと思います。
 この裁判は一九七九年にニカラグアにサンディニスタ左翼政権が誕生してからの話であります。ニカラグアの隣にエルサルバドルという国がある。アメリカはこのエルサルバドルと友好関係にあった。このエルサルバドルの政権に対して武力闘争をしているゲリラがいたわけです。それに対してニカラグアが援助をした、これがアメリカの言い分だったわけであります。そして、アメリカはこれを理由にしてニカラグアへの経済援助を停止した。ニカラグアの反政府勢力コントラに対する軍事援助を行った。そして機雷封鎖、ニカラグアへの直接の武力行使もやったんです。このことに対してニカラグアは、これは国際法違反だということで国際司法裁判所に提訴をした。そういう話であります。
 何でこの裁判を重要視するのか。これは裁判では、ニカラグアのエルサルバドルのゲリラに対する武器供与、兵たん援助、これが問題になったんです。アメリカはこれを武力攻撃だと言ったんです。これは武力攻撃だからこれに対して集団的自衛権を発動する、それを正当化したんです。ニカラグアというのは当時、人口三百万人、小さい国です。軍といったって歩兵部隊ぐらいで、対空兵器もない。そんな小さな国が隣の国に銃を運んだんだと、これは状況証拠しかないんですけれども、それをアメリカは、武力行使じゃないです、武力攻撃だと言ったんです。これに対して判決では、これは武力攻撃とまでは言えないが武力行使とみなし得るというふうにしたのがニカラグア事件判決の最大のポイントじゃないか。大きな意味があるんじゃないかというふうに思うわけです。
 五月十日の当委員会で、我が党の筆坂議員の質問に対して外務大臣は、国際社会におけるICJ、国際司法裁判所の判決は厳粛に受けとめておりますという答弁でしたが、これは武器、兵たんその他の支援の供与は武力の行使とみなされるという国際司法裁判所の判決の内容を認める、そういうことですね。

○国務大臣(高村正彦君) 御指摘のICJ判決は、ある国が他国内のゲリラ等の反政府勢力に対して行う支援等の論点につき法的評価を行ったものであります。政府といたしましては、国際社会における主要な司法機関である国際司法裁判所の判決は厳粛に受けとめておりますが、その判決の具体的内容については、それぞれの論点につき個別の事件の文脈に照らして理解すべきものと考えます。
 そうした前提のもとで申し上げれば、ICJの判決においては、一般に外国の反政府勢力に対する武器、兵たん、その他の支援の供与の形でなされる援助がその外国に対する武力の行使や干渉とみなされることもあり得ると述べていることは承知しております。しかしながらこの判決は、同時に、米国によるニカラグアの反政府勢力に対する支援のすべてが武力の行使等に該当するものではないとも述べていると承知をしております。
 したがって、一般論として、何が武力の行使とみなされることになるのかについてこの判決で明確にされているとは全く考えておりません。

○小池晃君 今ちょっと二つの問題を一緒におっしゃられたと思うんですが、まず最初のニカラグアのエルサルバドルのゲリラに対する支援とアメリカのニカラグアの反政府勢力に対する支援、この裁判では二つ認定されているんです。
 ところが、裁判の中心点は、これはニカラグアのエルサルバドルのゲリラに対する支援、これを問うている。そこでそれはどう表現されているかというと、サッチ アシスタンス メイ ビー リガーデッド アズ ア スレット オア ユース オブ フォースと。みなされるですよ。みなされることもあるというふうに今言ったけれども、みなされるというふうにはっきり言っているわけです。
 確かに、支援のすべてが武力の行使に該当する、そういう認定をしたわけじゃないです。それはそうです。けれども、少なくともこの判決からこういうことを言えるじゃないですか。一つは、武力行使というのは戦闘行為に限られる、そういうことじゃないんだということが言えると。それから、この全文を読むと、武力行使の範囲から除外されるものについては、一応資金援助というのは排除されているんです。それ以外に、明示的に武力行使の範囲から排除するものはないんです。
 すなわち、この判決で認定をしたのは、国際法上の武力の行使というのは戦闘行為だけに限定はされていない、兵たんなどの支援活動も含まれるということは認められるんじゃないですか。これは具体的な事例じゃないです。一般原則としてそういう判決を書いたんですから、その中身はICJの尊重され得る判決の中身として認められるんではないか、そういうふうに聞いているんです。

○政府委員(東郷和彦君) 委員より判決の条文についての御指摘がございましたので、念のために一点申し上げたいのでございますが、委員の御指摘になられた部分は、武器、兵たんその他の支援の供与の形でなされる反政府勢力の援助については、武力による威嚇または武力の行使としてみなされるかもしれない。英文で申し上げれば、サッチ アシスタンス メイ ビー リガーデッドということでございまして、常にみなされるということをこの判決が言っているわけではないというふうに理解しております。

○小池晃君 何を言っているんですか。メイというのは何々し得るというのが最も適切な訳ですよ。
 それからフランス語版を見ればさらに明瞭なんです。フランス語版を見ると、オン プ ボワールというのが書いてあるんです。明らかにこれはみなし得るという以外に訳せないんです。かもしれないなんという訳にはならないです、これは。明確です。
 この判決が、先ほどもちょっとおっしゃいましたけれども、個々の文脈で理解するんだと、これは当たり前ですよ。裁判というのはそういうものでしょう。当事者間だけ拘束する、それは当然であります。
 しかし、国際司法裁判所の判決というのは、これは高野雄一さんという方が「判例研究 国際司法裁判所」に書いておりますが、「それは当事国のみを拘束するものではあるが、争われ問題となっている国際法の規則そのものをあきらかにし確定する。それによって国際法に確実な発展の基礎を与える。」と言っているんです。
 ですから、先ほどから議論しているような武力の行使というものに対して、この国際司法裁判所の規定というのは、武力の行使というのは直接の戦闘行為だけではない、さまざまな援助活動、支援活動もそれにみなされる、そういうことを認めたということははっきり言えるんじゃないですか。そのぐらいは認めてくださいよ。

○政府委員(東郷和彦君) メイの訳し方についてはいろいろな見方があるかもしれませんが、ただ委員の御指摘にいたしましても、また私が申し上げたことにつきましても、そういうことがあり得る、すべての場合そうではないけれども、そういうこともあり得るという点では共通の理解があるのではないかと思います。
 この判決につきまして、外務大臣よりも申し上げ、私よりもぜひ申し上げたいのは、この判決というのはゲリラ等の反政府勢力に対して行う支援、そのゲリラに対する支援の実態については先ほど委員より御説明がございましたけれども、そういうゲリラに対する支援についての判決であったということでございます。
 今委員会の審議との関係で申し上げれば、冒頭、私より、いわゆる兵たん活動、つまり米軍が行動していてそれに対して自衛隊が兵たんとして支援をする、このようなケースとは全く違う、みずからが活動することなくゲリラに対して支援をする、そういう特殊な、特殊という言葉がもし適当でないとすれば、そういう特定の案件に対する判決であったということでございまして、そのような事案に対する判決として拘束力を持っているということでございます。

○小池晃君 これはゲリラに対する支援ですら武力行使となったというところなんです。正規軍に対する兵たん活動というのは武力行使じゃないと言うんですか。そんなはずがあるわけないじゃないですか。正規軍に対する兵たん活動が武力行使に当たるのは当たり前なんですよ。ゲリラに対する非常に特別な特殊な援助活動ですら武力行使だというふうに認定したというところがみそなんですよ。ゲリラに対する支援が武力行使だったら正規軍に対する兵たん活動なんて明らかに武力行使じゃないですか。全く話になっていない。
 もう一度聞きます。
 この判決が武力行使というのは戦闘行為だけに限定していないんだということを認めた判決であることは認めますね。

○政府委員(東郷和彦君) 繰り返しになって恐縮でございますけれども、ICJの判決というのはあくまでそれぞれの論点につき、個別の事件の文脈に照らして理解すべきである。そして、本件ニカラグア判決について申し上げれば、これは一般に外国の反政府勢力に対する武器、兵たん、その他の支援の供与の形でなされる援助がその外国に対する武力の行使や干渉とみなされることもあり得るということを述べているということでございます。
 以上が私どもがこのニカラグア判決に関して理解していることのすべてというふうに御理解いただきたいと思います。

○小池晃君 全然だめです。私の質問に全然答えていないです。
 武力行使を戦闘行為に限らなかった、そのことを認められるかというふうに言っているんです。イエスかノーかで答えてください。

○政府委員(東郷和彦君) 繰り返しになって恐縮でございますけれども、ICJの判決についての理解というのは、個別の事案について判断し、個別の事案の文脈に照らして理解するということでございます。
 この事案は何かと申し上げれば、これは外国の反政府勢力に対する武器、兵たん、その他の支援の供与でなされる援助、これがその外国に対する武力の行使や干渉とみなされることもあり得るということでございます。
 以上でございます。

○小池晃君 ということは、個別の事案、ニカラグア事件の判決に限って言えば、この判決はこのニカラグアの問題については武力行使を戦闘行為に限らなかった、これは言えますね。

○政府委員(東郷和彦君) ただいま申し上げましたように、この判決においては武力の行使や干渉というふうに、武器、兵たん、その他の支援の供与というものの援助がみなされることもあり得るということでございます。
 他方、一般論として、何が武力の行使とみなされることになっているかについて、この判決では全く明確になっていないということでございます。

○小池晃君 この判決では武力行使というのは戦闘行為に限っていないんですよ。そして、武力行使、戦闘行為以外のいろんな支援活動もみなされるということを認めている、これがこの判決なんです。これははっきりしています。答弁は回避されましたけれども、明確だと思います。
 それからもう一つ、この判決について、五月十日に条約局長は答弁の中で、「一方の当事者である米国の参加がないままに判決が行われた」というふうに言いました。しかし、これはおかしいと思うんです。一般原則として、訴訟のどの段階における一方当事国の欠席というのも、これは判決の効力に影響を与えるものではないんです。
 さらに、アメリカというのは、この件について国際司法裁判所が管轄権を持つかどうか決める管轄権審理、この段階には参加しているんですよ。そして、ICJは管轄権を持たないと主張したんです。ところが、ICJは、本件に対する管轄権は確定した。管轄権が確定された以上、アメリカはそれ以降ボイコットしたわけですけれども、訴訟の当事者という地位はこれは否定できないんです。
 そして、アメリカが管轄権がないというこの主張もひどいんです。アメリカは、一九四六年に管轄権を一般的に受諾する宣言を出した。ところが、ニカラグアが提訴する三日前になって、中米の紛争には適用しない、こういう通告を突然行った。これを理由にして、ほかにも理由はあるんですが、管轄権が適用されないと、こう主張したんです。これは、むしろアメリカというのは本当に身勝手な国だということを物語るエピソードじゃないかなというふうに私は思うんです。
 まさか外務省は、こうした経過をもって、このICJの判決の効力に疑問があると、疑問があるというふうに言うんですか。

○政府委員(東郷和彦君) 外務大臣及び私から累次申し上げておりますように、この判決に関しまして政府として申し上げたい点は二点でございます。第一点は、国際社会における主要な司法機関であるICJの判決は厳粛に受けとめているということでございます。第二点は、この判決の具体的内容、これは繰り返し申し上げておりますが、それぞれの論点につき、個別の事件の文脈に照らして理解すべきものであるということでございます。
 先般、当委員会で私が申し上げましたのは、このような政府の判決に関する立場に加えまして、できるだけこの判決に絡まる事実関係について御報告したいと発言した次第でございます。

○小池晃君 全然答えになっていないです。要するに、判決の効力に関係ないですね。アメリカが出なかったということは関係ないですね。それだけ答えてください。

○政府委員(東郷和彦君) 繰り返しになりますが、判決の効力の適否、当否について私はコメントした次第ではございません。この判決はICJの判決として厳粛に受けとめているということに尽きるということでございます。
   〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕

○小池晃君 要するに、関係ないということなんですよ。
 それからあともう一つ、これはもう聞きませんけれども、五月十日には、「学説上この判決については種々の見解もある」というふうに条約局長は言った。ところが、先ほど私が話したように、見解はいろいろ出ているけれども、アメリカというのは、小さなニカラグアという国のエルサルバドルのゲリラに対するその支援を武力攻撃だと言った、武力行使というふうに認定されたというのが経過なんです。武力行使とみなし得るというのは、アメリカにとっては当然なんですよ。だから、この「武力の行使とみなしうる」という部分に対する、これを真っ向から否定する見解、すなわち武器や兵たんの支援は武力行使ではないというふうにいったような見解は一つもないんですよ。ないんです、これははっきりしていると思うんです。ですから、やはりこの判決、ICJの決定として大変尊重する必要があるんだ、その尊重すべき国際司法裁判所の決定で、武力行使というのは戦闘行動に限られるものじゃない、兵たん支援も含まれ得るという決定をしたところに大きな意義があるのではないかというふうに思うんです。
 さらに、友好関係原則宣言、これも国連総会決議で全会一致で一九七〇年に決められています。ここでも、武力不行使宣言、武力不行使原則ということで、行ってはならない武力行使の例として幾つか挙げております。その中には、「傭兵を含む不正規軍又は武装集団を組織し又は組織を奨励すること」、「他の国において内戦行為又はテロ行為を組織し、教唆し、援助し若しくはそれらに参加すること又はこのような行為を行うことを目的とした自国の領域内における組織的活動を黙認すること」、こういうのが武力行使だというふうに言っているんです。禁止されるべき武力の行使として例示をされているわけであります。
 ですから、今まで触れてきた国連憲章に基づく国連総会の侵略の定義に関する決議、そして友好関係原則宣言、これはコンセンサスですから、全会一致ですから、単なる決議じゃない、重視されるべき決議なんです。ここでも、武力行使の中には、単に直接戦闘行動じゃなくていろんなものを含むんだという決定をしておるわけです。そして、国際司法裁判所のニカラグア判決も、兵たん支援、武器の援助は武力行使とみなされ得るというふうに認定をしているわけです。国際的には、禁止をする武力行使を戦闘行動などに限定していない、これは当たり前のことだと思うんです。
 私は、内閣法制局に武力行使とは何かというふうに聞いたら、資料を送ってくれました。有斐閣の「国際法キーワード」という本であります。これを見ると、「国連体制下での武力行使禁止の範囲」、そういう項にこう書いてあります。「「武力」の態様については、単に正規軍による他国領域への侵入・砲爆撃といった直接的なものに止まらず、不正規軍や武装集団の組織・奨励等を通じての間接的なものまでも含めて広く捉えられる傾向にある。」と。国際的には武力行為の範囲というのは直接的な戦闘行為にとどまらず広がっているんだ、これが国際的傾向であります。
 私は改めて聞きますが、国際法では武力の行使を戦闘行為に限定していない、兵たんなども含む概念として使っている、このことがICJのニカラグア判決、国連のさまざまな決議の到達点だというふうに思うんですが、いかがですか。

○政府委員(加藤良三君) ニカラグアの件については既に御議論が随分ございましたので、私から今御説明することはいたしませんけれども、先ほどの二つの決議にいたしましても、また友好関係原則宣言におきましても、これは法的拘束力を有するものでないということは当然の前提でございますけれども、やはりその中で、冒頭で国連憲章の第二条四項の文言を引用しながら、武力の行使は国際法及び国連憲章に違反するものであってはならないということを述べているわけでございまして、こういったものの中には武力の行使それ自体の定義というものは、繰り返しになりますけれども、ないわけでございます。
 決議中にも明記されているということを申しましたが、これらは国連憲章の規定の範囲を拡大したり縮小したりするものではなくて、決議及び宣言の中の武力の行使というのは専ら実力の行使に係るものというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、ある国の個々の行為が直ちに今例示になられましたようなカテゴリーのものである、武力の行使や侵略行為に当たるということにはこれはなっていないということは先ほど来申し上げたとおりでございます。
 その上であえて申し上げますと、これらの決議のあるいは宣言の中で支援といったものに言及している部分があるといたしましても、例えば友好関係原則宣言における該当部分というのはいわゆる間接侵略について述べたものでございまして、また侵略の定義の該当部分というのは他国の侵略行為を前提とした侵略幇助というべき支援であって、そういうものについての話をしているということは実は明らかだと思いますので、この委員会の流れとの関係で申しますと、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態である周辺事態において、国連憲章及び日米安保条約に従って行動する米軍に対する支援とかいったものとはそもそもの前提を全く異にする話だと思います。

○小池晃君 全くのすりかえだと思いますよ。私は、禁止されている武力、その定義を聞いているんです。そして、違法であれ合法であれ、武力行使というのはどういうものか。これははっきりしているじゃないですか。もちろん、禁止される範囲が違法な場合と合法な場合で変わる、これは十分あり得ますよ。でも、武力行使の範囲が何で変わるんですか。違法な戦闘行為に対する支援を行ったらそれは武力行使で、合法な戦闘に対する支援をやったらそれは武力行使ではない、こんな話あるわけないじゃないですか。違法だろうが合法だろうが、それは違法な武力行使か合法な武力行使かの違いであって、武力行使であることに変わりないんですよ。あなた方、完全なすりかえですよ、今のは。全く説明になっていない。
 やはりこれはこの間の国連の決定を見れば、それを読めば、明らかに武力行使というのは戦闘行為だけに限るなんて決定はないんだと。兵たん支援、これが武力行使だと認定しているのはいっぱいあるんです。
 ところが、武力行使イコール戦闘行為だと認定したものは一つもないんですよ。ゼロです。このことを認めるでしょう。このことを認めてくださいよ。

○政府委員(東郷和彦君) お答え申し上げます。
 国連憲章二条四項に言う武力の行使、これは専ら実力の行使であるという国際的な理解というのは、本日の種々の議論にもかかわらず私は絶対に正しいというふうに確信しております。
 そして、委員がおっしゃられました武力の行使を超える範囲として種々御指摘になられたものは、ただいま同僚政府委員からも御説明いたしました、いわゆる間接侵略ということに収れんする例のみと申し上げてよろしいと思います。
 むしろ、本日委員より御指摘いただきましたニカラグアの判決、それから侵略の定義、それから侵略の定義について日本から提出した修正案、さらには友好関係原則、これらのものはいずれも、本委員会で御審議をいただいている米軍の行動に対する自衛隊の通常の兵たん活動、兵たん支援、こういうものは実力の行使という範疇の中には全く入ってこないということをこれらの文書が示しているのではないかというふうに考えます。

○小池晃君 では、お聞きしますが、国連憲章二条四項の武力の行使というのは実力の行使だと。実力の行使と戦闘行為とどう違うんですか。

○政府委員(東郷和彦君) 先ほど来申し上げましたように、国連憲章二条四項における武力の行使、これを明文上定義しているものはないわけでございます。
 したがいまして、武力の行使、実力の行使、戦闘行為、こういうものを国際法上どういうふうに仕分けするのかということは、確たる説明というものは申し上げにくいのでございますが、要するに武力を実際に行使する、これをもって実力の行使と言い、これをもって戦闘活動と言うというふうに概略御理解いただいてよろしいと思います。

○小池晃君 もう全然だめです。あんなので条約局長なんて大変ですよ。じゃ武力と実力、どう違うんですか。フォースとアームドフォースでしょう。全然違わないんです。同じことでしょう。武力の行使、実力の行使の中に何で兵たん活動が入らないんですか。実力の行使と言ったらばそれは兵たん活動も含む、当然のことじゃないですか。もう話になりませんよ。
 国際的には武力の行使というのは、これは戦闘行為に限定などされていないんです。武力の行使、実力の行使というのは言葉のすりかえをやっただけです。何の説明にもなっていません。国際的には武力の行使というのは戦闘行為に限定していない。さまざまな活動が入るんです。もちろん、すべて入るとは言いませんよ。民間企業が業務で協力したらば、その企業が武力行使した、そういうふうには言えないかもしれない。しかし、軍隊がその任務として紛争当事国の合意なしに行う活動、これは国際法の世界では明らかに武力の行使なんですよ。兵たん活動が武力の行使の一部である、こんなことは軍事的な常識です。
 その上でお聞きをしたいんですが、日本の政府というのは、日本国憲法九条で禁止をされている武力の行使、これをどう定義されておりますか。

○政府委員(大森政輔君) 憲法第九条第一項に規定をしております武力の行使の意味でございますが、これはいろいろなところで御説明いたしておりますが、文書の形で提示いたしたものといたしましては、平成三年九月二十七日のいわゆる衆議院平和協力特別委員会に出しました「武器の使用と武力の行使の関係について」と題する書面の中で、「我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」というふうに説明しております。

○小池晃君 今までの議論から言えるのは、日本の政府が言う武力の行使の範囲、これはもう明確なんですよ。戦闘行為だというふうにおっしゃっているんです。要するに、人を殺傷したり物を壊したりすることが、これが戦闘行為であり、これが武力の行使である。これが日本政府の統一見解です。
 一方、国際的な、国際法の世界での武力の行使というのは決して戦闘行為などに限定されていないわけです。どこまで含むかという定説がない、これは確かだけれども、戦闘行為に限定するなどということはいまだかつて一度も国際社会の場で認定されたことはないわけです。
 違うではないですか。日本政府が考える、日本政府の言う武力行使の範囲と世界の言う武力行使の範囲が違うじゃないですか。これはどうなっているんですか。

○政府委員(大森政輔君) 先ほど武力の行使をどのように定義しているかというお尋ねでございましたので「我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」、このように説明いたしたわけでございますが、ただ、我が政府も、憲法九条の意味する武力の行使は、今述べたような形式的意味における戦闘行為だけに限られるものではないということは述べてきているわけでございます。
 それがいわゆる一体化論でございまして、従来から補給、輸送協力等それ自体は直接武力の行使等に該当しない活動を我が国が行うことにつきまして、他国による武力の行使等と一体となるような行動としてこれを行う場合には、やはり憲法九条との関係で許されない行為に該当するというふうに答えてきているわけでございます。
 先ほどから委員は、武力の行使は戦闘行為に、行動に限られるものじゃないということ、そして他の諸形態があり得るんだ、特に兵たん支援の一部もこれに含まれるのは国際法上は常識であるということをるる御主張になっているわけでございます。それと全く同感ではございませんが、我が憲法の解釈といたしましても、それ自体は戦闘行為に当たらないものでも、他国の武力の行使と一体化する関係にある行為は我が国も武力の行使をしていると法的に評価されざるを得ない関係上、憲法九条の禁止する武力の行使に当たるとして許されないというふうに解してきているところでございまして、委員の批判は当たらないのではなかろうかと思う次第でございます。

○小池晃君 今の話は、要するに、我が国は武力の行使というのを戦闘行為に限定を言葉の上ではしているけれども、実態としては一体化した部分もあるから同じだというふうにおっしゃるんですか。だとすれば、武力行使という、まず言葉の問題をはっきりさせましょうよ。武力行使という言葉で意味するものは、国際法で規定されているものと日本国憲法、日本政府が認める武力行使と違うんですね。このことは認めるんですね。

○政府委員(大森政輔君) 武力の行使の定義を具体的な事案に適用して判断した場合に結果が同じになるか異なるかはともかくといたしまして、我が国の憲法第九条に規定している武力の行使という言葉の定義は、先ほど述べたように解しているわけでございます。
 これは何も政府が意図的にあるいは狭く解しているというようなことじゃございませんで、憲法解釈に関する学説等を参考にして、その通説的意見に従って述べている見解でございまして、何らの意図はございません。

○小池晃君
 全く答えられません。
 これは武力行使という言葉が明らかに違うんです。国際的な、国際法の世界での武力行使とそして日本の政府が言っている武力行使と、明らかに違うんです。これはどう見てもそうなんです。
 そして、そこに一体化という話が今つけ加わってきているわけですけれども、同じだというような言い方をするけれども、その一体化というのも全然違いますよ。大体、一体化という言葉は、外務大臣おっしゃいましたよね、まさに武力行使と一体というのは我が国憲法の解釈の中で出てきた概念というふうにおっしゃったですね。ということは、これも日本独自のものなんですよ。武力行使の概念も日本独自であれば、それに一体化するかどうかという概念もまた日本独自、日本だけでしか通用しない議論なんです。日本が禁止をしている武力行使も、国際法での武力行使とは言葉の使い方も実際に意味する活動も全然違うんだ。
 私が今まで議論をしてまいりまして本当に痛感いたしますのは、一番最初に憲法九条の問題をやりました。日本は憲法九条を持っている。世界で最も厳しく武力行使を禁止したそういう憲法を持っているのが日本であります。その日本が、世界の常識よりも国際法の定義よりもずっと狭い解釈をしているんだ。
 世界の趨勢はどうでしょうか。不戦条約では第二次大戦勃発を防止できなかった。国連憲章では武力行使の禁止を決めた。そして、先ほど言ったように国連総会の友好関係原則宣言、侵略の定義、武力行使の範囲というのは広げる方向で、できるだけ武力行使をやらせないために広くとらえる方向で世界は進んできているんです。ニカラグア事件判決というのはその一つの到達点なんですよ。
 それなのに、武力行使を厳しく禁じた憲法九条を持つこの日本で、世界の進む方向とは全く逆に、武力行使を狭めることで逆に戦争への道を今広げているんだ、まさに世界の歴史に対する逆行だというふうに私は言わざるを得ない。その点で、この新ガイドライン法案というのは、憲法で明確に禁止した武力行使そのものに道を開く憲法九条廃止法案と言うべきものであるというふうに申し上げたいと思います。
 昨日の沖縄での公聴会でも、沖縄の歴史と実情を踏まえ、本法案に対する切実な声が出されております。この声をぜひ審議に生かすとともに、小沢自由党党首の発言と政府の見解の食い違い、これは憲法にかかわる重大問題ですから、現在理事会で協議が続けられておりますが、政府・与党統一見解を出すよう私も強く求めて、そしてこの法案の廃案を強く求めて質問を終わりといたします。(拍手)

▲「国会論戦ハイライト」目次

ページトップへ
リンクはご自由にどうぞ。各ページに掲載の画像及び記事の無断転載を禁じます。 © 2001-2010 Japanese Communist Party, Akira Koike, all rights reserved.