日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 小池あきらホームページへ

小池あきらのかけある記


2003年2月8日

「安全・安心・信頼」の医療すすめる耳原総合病院への攻撃は許せない!

 今日は大阪へ。全医労近畿支部代表者会議で国会報告、大阪民医連後援会決起集会で講演の後、堺市の耳原総合病院へ。
 2月6日の衆議院予算委員会で、自民党・西野あきら議員により民医連と日本共産党に対する誹謗中傷が行われました。攻撃された民医連の病院にたいし、党国会議員団として調査を行ったのです。
 西野質問は、真摯に再発防止に取り組む医療機関への許しがたい攻撃でした。同時に民医連の医療事故をめぐる国会質問の中でも、初めて日本共産党に対する直接の攻撃をおこなったものでした。
 そのために、日本共産党としても、事実を把握して国会で必要な反撃をおこなっていくことと同時に、医療事故、院内感染などをどうやって根絶していくのか、必要な政策提言を行っていくことを目的とした調査です。
 日本共産党からは、石井郁子衆議院議員・党副委員長、宮本岳志参議院議員と私。耳原総合病院側は、大野穣一同仁会理事長、山村弘成専務理事、澤村雅美看護部長をはじめ幹部のみなさんが参加されました。
 まず西野質問で「耳原総合病院が2000年のセラチア菌の院内感染で7人の入院患者が死亡してしまった」と指摘されたことについて聞きました。
 病院側は「病院としては痛恨の極みであり、ご遺族や住民のみなさんに心からお詫びするとともに、真相の究明と再発防止に全力をあげてきた」ことを説明されました。その上で、「7名が死亡」と国会で指摘されていることについては、堺市が組織した専門調査班のDNA分析を含む細菌学的検査の結果、セラチア菌による院内感染と判断された患者は3名であることが報告されており、「院内感染で7人死亡」というのは事実と異なることが明らかになりました。
 また、「なぜ法的な届け出義務がないのに保健所や国立感染症研究所に届け出たのか」の問いには、「6月29日に血液培養で3名にセラチア菌が検出という結果が出た。法律で届け出義務がないことは承知していたが、院内感染の疑いがあり被害拡大を避けるためには行政の協力を得る必要があると判断したため届け出た」とのことでした。
 自主公表による病院への影響は甚大だったそうです。その日は、朝からNHKのヘリが病院の上空を飛ぶなど異様な雰囲気で、警察による看護婦の事情聴取が連日行われたということでした。
 関係者は「マスコミの異常な報道には疑問を感じる。志位委員長が国会で紹介した、大阪大学の本田教授の発言のように、このような報道は院内感染の根絶に逆行すると思う」と述べておられました。
 また、真相究明への協力については、堺市が組織した専門調査班にすべての資料をつつみかくさず提供し、全面的な協力を行ったとのこと。厚労省から派遣された「国立感染症研究所疫学調査団」の6名のチームが、7月19から28日までの10日間入って調査したときにも、全面的に協力したそうです。
 そして、事件発生直後から再発防止の検討に着手し、5つの反省点と改善点にまとめ発表しました。その後、この経験をもとにして全日本民医連として感染制御ガイドライン「みんなで始める感染予防」を作成。他の医療機関からの依頼も相次ぎ、4万部を配布したのです。
 また、事件直後から堺市医師会での報告や学習会での講師活動、各種学会でも発表してきました。日本看護協会の機関誌「看護」にも依頼され寄稿したとのことでした。
 びっくりしたのは、感染対策の責任者である大田豊隆副院長が、昨年と今年の一月に、2年続けて厚生労働省主催の「院内感染対策研修会」の講師として招請を受け、「セラチアの院内感染対策」のテーマで1時間の講義を行っているという話でした。厚労省もお墨付きの感染対策だということです。
 院内感染対策にかかる費用や人的体制についてもお聞きしました。
 耳原総合病院の新しいマニュアルに基づいて院内感染対策を行った結果、2001年の院内感染対策にかかるコストは約7300万円(入院患者一人当たり一日約700円)と、従来のコストの約2,8倍となったそうです。診療報酬で院内感染対策にあてられているのは一日わずか50円で、しかも2002年の診療報酬改定では、院内感染対策を行った場合に50円加算する制度が、対策を「とらなかった」場合に50円の「減算」と改悪されました。これではまともな院内感染対策などできません。耳原の場合も経営的には完全な「持ち出し」でやっているとのこと。
 政府や政党はこういう問題にこそ知恵をしぼって支援の施策をとるべきではないでしょうか。
 院内では、各病棟に感染担当看護婦(リンクナース)を配置し、病院全体で医師や薬剤師も加わったICT(感染制御チーム)を発足させ、徹底した院内感染の監視と機敏な対策をとっているそうです。細菌検査結果はリアルタイムでチームに報告され、チームのメンバーが現場に出かけてチェックをする。感染が発生しやすい「3方活栓の使用」「ヘパリンロック」は届け出制。抗生物質の使用状況もチェックし、不適切な場合は医師に注意も喚起する。このような厳密な対策をとっている病院は日本でも数少ないと言ってよいでしょう。
 なお、耳原のセラチア感染を取り上げた謀略ビラが他の地域ではまかれていますが、「耳原周辺では一切まかれていない」とのこと。地域住民が事件の真相を一番よく判っているからではないでしょうか。
 耳原総合病院がどのように創設されたのかもお聞きしました。当時、この地域は未解放部落で医療機関がなく、結核・トラホームが蔓延していた地域だったそうです。1950年に300人の地域住民が一人100円を持ち寄り、診療所をつくったのがきっかけでした。それが急速に発展し、3年後には病院となって現在に至っているとのこと。誇るべき歴史です。
 事件以来、「安全・安心・信頼の医療」を合言葉にしてがんばってきたのが耳原総合病院です。こうした病院に対する不当な攻撃は断じて許すことができません。


記事目次 

> かけある記 TOP

リンクはご自由にどうぞ。各ページに掲載の画像及び記事の無断転載を禁じます。 © 2001-2010 Japanese Communist Party, Akira Koike, all rights reserved.