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2002年12月2日(月)「しんぶん赤旗」特集より転載

安全より効率優先

医薬品機構の独立行政法人化

医薬開発と審査・監視 アクセルとブレーキを同一化

 副作用被害救済の文字消える薬害事件の教訓に逆行し、医薬品の安全に対する国の責任を後退させる――。参院厚生労働委員会ではいま、国民の命と安全にかかわる医薬品機構(医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構)を独立行政法人化する法案を審議中です。このなかで問題点が次つぎと明らかになり、薬害被害者の団体からも反対の声が高まっています。

国の責任後退

 薬害被害者の救済や医薬品の研究開発振興をおこなっている現在の医薬品機構は廃止されます。新しくできる独立行政法人には、いまは厚労省が担当している新薬の承認審査や、副作用の調査など安全対策の業務も移されます。安全で有効な医薬品を国民に供給するという仕事から、国の責任が大幅に後退してしまいます。

 医薬品機構は、もともと副作用被害を迅速に救済する目的で一九七九年「医薬品副作用被害救済基金」として、薬害のスモン患者の運動で設立されました。しかしその後、研究開発の振興や治験指導などの業務を次つぎと追加し、副作用救済の業務は縮小され続けてきました。現在は約百六十人の職員のうち、副作用被害救済の担当は十五人しかいません。

 独立行政法人化にともなって、名称を「医薬品医療機器総合機構」に変更します。ついに「副作用被害救済」の文字が消えてしまうのです。患者団体からは「本来の被害者救済から、医薬品の開発が中心の機構に変質してしまう」との批判が出ています。

 医薬品の開発振興と安全対策という対極の部門を一つの機構に統合することは、過去に繰り返された薬害事件の教訓にも逆行するものです。

 厚労省はこれまで、薬害エイズ事件を受けて九七年七月に組織改編を行い、省内の研究開発振興部門と安全対策部門を分離。「企業活動の支援というアクセルの部分と医薬品の審査・監視というブレーキの部分に分けた」(旧厚生省)と説明していました。日本共産党の小沢和秋議員は「アクセルとブレーキの部門が一つの機構に置かれれば、研究開発の部門が圧倒的な力をもち、審査や安全対策がおざなりになる」と指摘しました。(十一月十二日、衆院特別委員会)

反対の声高まる

「こういう組織をつくることで一番喜ぶのは製薬企業ではないのか」。日本共産党の小池晃議員は十一月二十六日の参院厚生労働委員会で、法案提出の二カ月も前に、厚労省が製薬業界に新組織について事前説明をしていたことを示す内部文書を明らかにし、こう追及しました。

 被害者団体ではなく、まっさきに製薬企業に説明する。その姿勢にあらわれているように「一日も早く新薬を世に出したいという製薬業界の要求にこたえて新組織をつくるものだ」と小池氏は指摘しました。実際、日本製薬団体連合会は今年一月、坂口力厚労相に対し、薬剤の承認審査の迅速化のために「審査体制の見直しも必要」と要望書を提出していました。

 新機構ではさらに、製薬企業が支払う医薬品の審査手数料の引き上げも予定されており、財政面でも企業への依存が高まることになります。

 審議のなかで坂口厚労相は「責任は持つ」「心配するな」と決意は表明しましたが、これでは、今までの薬害事件の教訓を生かしたことにはなりません。

 政府はこの法案を含め四十六の「特殊法人改革」関連法案を一括して審議し、一日も早い成立をねらっています。しかし、薬害被害者からは「国の責任で薬害を繰り返さないとした厚労省の反省に反する」など、反対の声が急速に高まっています。

 問題点が明らかになるなか、二日には、参院厚生労働委員会で参考人質疑がおこなわれることになりました。同日昼には薬害オンブズパースン会議が、厚労省前と東京・有楽町で、法案反対のリレートークを計画しています。

薬害訴訟の成果崩す――東京 HIV 訴訟原告弁護団の水口真寿美弁護士(薬害オンブズパースン会議事務局長)の話

 医薬品の安全確保という国民の命にかかわる法案を、他の特殊法人関連法案と一括して審議し、成立させようというのは極めて強引です。

 新しくできる独立行政法人は、国民の安全よりも製薬企業が国際競争に打ち勝つことを重視し、とにかく効率を優先することに主眼がおかれています。それは、薬害被害者の意見をまったく聞かない一方で、製薬企業には事前に法案情報を流して熱心に説明するという厚生労働省の姿勢にもあらわれています。

 法案は、これまで薬害訴訟の歴史のなかで積み上げてきたものを一気に崩してしまうものです。廃案に持ち込むことをめざし、全力で取り組みたいと思います。


> 医薬品機構法案について
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