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障害者自立支援法を廃止し、人間らしく生きるための新たな法制度を
2008年12月1日 日本共産党

2008年12月2日(火)「しんぶん赤旗」より

 日本共産党は一日、「障害者自立支援法を廃止し、人間らしく生きるための新たな法制度を」を発表しました。全文は次の通りです。


 障害者自立支援法が施行されて2年半余が経過しました。来年は同法の規定にもとづき「3年後の見直し」をおこなう年にあたります。政府は、来年の通常国会に障害者自立支援法「改正」案を提出するとしていますが、法施行後に噴出している数多くの矛盾、障害者、施設の深刻な実態をみれば、部分的な手直しで済ませられない事態であることは明瞭(めいりょう)です。

 この間、原則1割の応益負担による重い負担増のために、施設や在宅サービスの利用を断念・抑制せざるをえない障害者が相次ぎました。報酬が大幅に削減されたために、事業所は職員の労働条件の切り下げを余儀なくされ、離職者が相次ぎ人手不足が一段と深刻化しています。このままでは、障害者福祉の基盤が崩壊しかねない深刻な事態です。

 障害者の批判の声と運動がかつてなく大きく広がり、国を動かし、「特別対策」(07年度)、「緊急措置」(08年度)と2度にわたって利用者負担軽減など改善策を実施させました。しかし政府は、なお矛盾の根幹である応益負担制度に手をつけようとしないなど、根本的な解決に至っていません。

 日本共産党国会議員団が、今年8月、施設・事業所を対象に実施した第3回「影響調査」では、応益負担制度の廃止を求める声が7割にのぼりました。同時におこなった都道府県・政令市・中核市等を対象にした自治体アンケートでも、利用者負担軽減や事業所報酬引き上げなど制度の改善を求める意見が多数寄せられています。

 国連の「障害者権利条約」(08年5月発効)は、すべての障害者にたいして同年齢の市民と同じ権利を差別なく保障することをうたっています。障害者自立支援法は、政府が批准を予定しているこの条約の趣旨にも真っ向から反するものです。

 そもそも、自公政権が強行成立(2005年10月)させた障害者自立支援法は、社会保障費削減をねらいとした「構造改革」路線にもとづくものです。「自立支援」どころか「自立破壊」ともいうべき障害者自立支援法は、おおもとが間違っているのです。

 日本共産党は、生存権侵害の障害者自立支援法に一貫して反対をつらぬき、この間、3度にわたって政策提案をおこない、応益負担制度の撤回をはじめ緊急の利用者負担軽減、事業所報酬引き上げと職員の待遇改善など障害者の運動と連帯して全力をあげてきました。09年の自立支援法の見直しにあたって、障害者自立支援法を廃止して、障害者が人間らしく生きる権利を真に保障する新たな総合的な法制度を確立するために、次のような政策提案をおこない実現へ全力をあげます。

1、障害者自立支援法は廃止し、当事者参加で新しい法制度の確立を

 日本共産党は、「自立破壊」の障害者自立支援法はきっぱり廃止し、新たに、障害者が人間らしく生きる権利を真に保障する、総合的な障害者福祉法を確立することを提案します。

 障害者自立支援法は、「構造改革」路線にもとづき、社会保障費削減を最大のねらいとしてつくられたものです。憲法にもとづいて障害者の権利を保障するという視点はまったくなく、障害者の生活実態を無視し、原則1割の自己負担など介護保険との統合を目的に制度設計されたものです。部分的な手直しで、矛盾や問題点を根本的に解決できるものではありません。

 新しい総合的な障害者福祉の法制度は、日本国憲法と「障害者権利条約」の趣旨にもとづき、すべての障害者が人間らしく生活できる権利を保障することを目的とします。

 現行の縦割り福祉法制度の矛盾である、いわゆる「制度の谷間」に置かれている難病・発達障害・高次脳機能障害をはじめとするあらゆる障害者を対象とする総合的な福祉法制として確立します。

 立ち遅れている障害者福祉の基盤を緊急に整備するために、「障害福祉基盤の緊急整備5か年計画」を策定し、特別立法を制定して強力に推進すべきです。

 新しい総合的な障害者福祉法の確立にあたっては、障害基礎年金の大幅引き上げ、無年金障害者問題の解決など所得保障や就労支援策を抜本的に拡充することをあわせて実現するよう提案します。

 おおもとにある社会保障費抑制路線を根本的に転換すべきことは、当然です。

 日本共産党は、新しい福祉法制の確立にあたって、国が当事者や現場の声にもとづいて検討をすすめることを強く要求するものです。

2、障害者自立支援法の7つの重大な問題点ーーあたらしい法制度でこうして解決する

 日本共産党は、障害者・家族、事業者のあいだで大きな不安となっており、緊急に解決が求められている問題について、新しい総合的な障害者福祉法のなかで次のように解決します。

「応益負担」制度は廃止する

 国は2度にわたって福祉サービスの利用者負担軽減策を実施しましたが、なお大きな負担が障害者・家族を苦しめています。通所施設の場合、給食費とあわせると平均で月1万円近く、工賃収入月額1万1500円(知的通所授産施設の場合、06年度厚生労働省調査)のほとんどが消えてしまうという過酷な負担です。

 日本共産党の調査で、利用料や給食代を滞納している障害者がいる事業所が45%にものぼっている深刻な事実も明らかになりました。

 障害が重い人ほど負担が重くなる「応益負担」制度は、根本が間違っています。障害者が生きていくために必要な最低限の支援にたいして利用料を課すということは、障害を「自己責任」とみなすものです。憲法25条の生存権理念に照らせば、本来、障害者に負担を求めるべきではありません。福祉・医療サービス、補装具給付などすべてにわたって、「応益負担」制度はきっぱり廃止すべきです。当面、「応能負担」制度にもどし、住民税非課税世帯等の低所得者は無料にします。

 また給食費やホテルコストの実費負担は、元に戻して負担をなくします。憲法の基本的人権尊重の理念からも、成人した障害者にたいして、親兄弟の扶養義務は外すことが必要です。

事業所にたいする報酬を引き上げる

 日本共産党の調査でも、報酬単価等の引き下げにより減収になった事業所は実に97%にものぼりました。多くの事業所が、行事の縮小・廃止など利用者サービスの後退と、賃金切り下げ、職員の非正規・パート化など労働条件の切り下げを余儀なくされています。募集しても職員が集まらない事業所が6割近くにのぼり、「このままでは事業所の閉鎖もやむなし」など悲痛な声が数多く寄せられました。障害者福祉に、規制緩和、市場原理主義を持ち込んだ弊害が噴き出ているのです。

 事業所にたいする報酬単価を大幅に引き上げ、支払い方式を「日額制」から「月額制」へ戻すことは切実で緊急を要する課題です。

 事業所報酬を引き上げると、そのまま1割の利用者負担に連動することも自立支援法の矛盾です。八都県市首脳会議(東京都知事ほか)も、「報酬の引き上げが利用者負担増につながることのないよう、勘案すること」(「障害者自立支援法の抜本的な見直しに関する提案」、08年5月)と要求しています。応益負担制度の廃止とともに、日本共産党が提案している、公費の投入による賃金アップなど職員の待遇改善はこの点でも重要です。

 障害者に、ゆきとどいた支援ができるよう、職員配置基準を改善することも待ったなしです。給食・事務・施設長など削減された職員配置基準の復活、グループホーム、ケアホームの夜勤体制の改善などが急がれます。正規職員の配置を中心とした雇用形態ができるよう、報酬を引き上げることも重要な課題です。

就労支援、「くらしの場」のあり方を権利保障の視点で見直す

 すべての施設が、2012年3月末までに新事業体系への移行をせまられています。しかし、「就労第一主義」や報酬がさらに減額になるなどのために、移行をためらう施設が少なくありません。就労が強調されても、障害者の就職を受け入れる企業は依然として乏しく、一般企業への就労が困難な障害者も多くいます。

 障害者が働く意義は、多様でゆたかです。訓練主義や競争主義の持ち込みではなく、就労保障とともに、日常生活の支援策も拡充するなど、新施設体系のあり方を再検討することが必要です。

 障害者の「くらしの場」についても、地域での受け入れ条件がきわめて不十分です。入所型の施設や「医療的ケア」を必要とする人たちへの支援策も含め、グループホームをはじめくらしを支える多様な選択肢を整えることが必要です。

障害のある子どもの発達を保障する

 障害のある子どもの入所・通園など施設の利用、車いすや補聴器などの補装具、育成医療のすべてに「応益負担」が導入され、通園日数を減らす、やむをえず退所する、成長に合わせた車いすのつくり替えをひかえるなどの事態が生まれています。

 成長・発達期にある子どもへの「応益負担」も、すぐに廃止すべきです。食事は療育の一環であり、実費徴収すべきではありません。障害の程度、有無にかかわらず、必要に応じて福祉サービスが利用できるよう、障害程度区分の適用はおこなうべきではありません。

 福祉サービスを利用するにあたっての契約制度は、子どもの成長・発達にたいする責任をすべて保護者に負わせるしくみです。契約制度をやめ、公的責任で適切な福祉サービスが利用できるように改めるべきです。児童施設への入所を必要としている子どもは、障害による行動の問題、保護者の経済的・精神的な負担、虐待など緊急に対応すべき課題をかかえています。行政の責任で手厚い生活の場がすみやかに保障されなければなりません。

 障害のある子どもの放課後や長期休業中の生活を豊かに保障するための制度を早急に確立することも重要です。

自立支援医療は元に戻し、拡充する

 自立支援医療にも定率1割の「応益負担」が導入され、通院医療費が2倍になった精神障害者のなかで病状悪化につながる深刻な受診抑制が起きています。

 精神通院医療、更生医療、育成医療の三つを統合してつくった自立支援医療制度は、国の負担を減らすことが目的です。ただちに廃止し、原則無料の公費負担医療制度にします。

 育成医療、更生医療は受けられる治療範囲を拡大するなど制度の改善をはかることが必要です。更生医療制度は、リハビリテーション医療の観点から身体障害者手帳所持を条件からはずし、障害の除去・軽減のみでなく悪化を防ぐための治療や予防もふくめた医療も受けられるよう対象を拡大すべきです。

 自治体で実施している重度障害者(児)医療費助成制度を国の制度として確立します。

「障害程度区分」認定は根本的に見直す

 知的障害や精神障害をもつ人などから、障害程度区分認定で障害程度が実態よりも低く出たり、「障害程度区分3以下は施設から追い出される」などと不安の声がでています。日本共産党の調査で、自治体からも、「障害程度区分による国庫負担基準が、事実上、利用者へのサービス支給量を制限するものになっている」と改善を求める声も寄せられました。

 「障害程度区分」認定は、利用制限のための制度であってはなりません。障害者の生活実態や支援ニーズを正確に反映し、真に必要な支援を保障するものとして再構築するべきです。国は、長時間介護など必要なサービスを支給できるよう、十分な財政負担をおこなうべきです。

地域生活支援事業へ国の財政保障を十分におこなう

 日本共産党の調査では、障害者の外出などに必要な移動支援事業について、利用制限がある自治体が60%を超えていることが明らかになりました。経営困難で閉鎖に追い込まれた事業所もでており、ヘルパーの派遣が中止されて障害者の日常生活に重大な支障がでています。自治体の姿勢も問われますが、もともとは国が補助金を抑制していることが原因です。

 市町村が地域生活支援事業に積極的にとりくめるよう、国は補助金を大幅にふやすべきです。移動支援事業やコミュニケーション事業、地域活動支援センター(小規模作業所)など必須5事業は、国の責任で財源保障をする制度として確立します。また、手話通訳・要約筆記等のコミュニケーション支援は無料とすべきです。

障害者の生きる権利を保障するための財源は十分に生み出せる

 障害者福祉のために、国民に重い負担をしいる消費税の増税はまったく必要ありません。

 日本は、世界第二位の経済大国でありながら、国内総生産(GDP)に占める障害者関係費の割合は、ドイツの4分の1、スウェーデンの8分の1ときわめて低い水準です。予算のムダを見直し、年5兆円にのぼる軍事費にメスを入れること、また大企業と大資産家にたいするゆきすぎた減税をただし、そのごく一部をまわしただけでも、障害者福祉を飛躍的に充実する財源は十分に確保できます。例えば、憲法違反の政党助成金320億円をまわすだけで障害者福祉サービスの利用者負担(定率1割の応益負担)は廃止できます。

 日本共産党は、大企業中心から国民の暮らし優先の政治への転換とあわせ、障害者・家族・関係者の運動と連帯して、障害者自立支援法を廃止して人権を守る新たな福祉法制度を確立し、障害者福祉・医療の抜本的充実をすすめるために全力をあげます。



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