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日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

144-参-予算委員会-3号 1998年12月10日

要介護認定問題を国会で初めて取り上げて追及
(予算委員会)

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 長引く不況の中で、今、社会保障制度に対する不安が広がっております。
 まず、総理にお聞きいたしますが、この不況を吹き飛ばす上でも社会保障制度の充実が求められているというふうに思うんですね。その中でも、高齢者介護の問題は国民の将来不安にとって今の最重要課題の一つだと思いますが、総理もそのような御認識をお持ちか、お聞きしたいと思います。
 
○国務大臣(小渕恵三君) 二十一世紀の本格的少子・高齢化社会に向けて、介護を要する高齢者の方がますます増加することは、言うまでもありませんが極めて想定されることであります。そのため、老後生活における最大の不安要因である介護問題を社会全体で支える仕組みとして介護保険制度を創設したものであり、制度実施に寄せられた国民の期待は非常に大きいものと認識いたしております。
 
○小池晃君 おっしゃるとおり、まさに期待もありますが、不安も非常に強まっているのではないでしょうか。
 その最重要問題である介護保険制度の根幹となる要介護認定、この問題についてきょうは質問したいと思います。
 現在行われている九八年度の要介護度認定のモデル事業の規模と概要、それから要介護認定基準について御説明願います。
 
○政府委員(近藤純五郎君) 要介護認定に関します試行的事業の本年度の実施に当たりましては、全国すべての市区町村におきまして共同実施を含めまして千八百三十一地域に分かれまして、一地域当たりにつきましておおむね百名、全国ベースでは約十八万人、こういう方を対象に実施をいたしているわけでございます。
 試行的事業の実施に当たりましては、専門職等でございます訪問調査員によります選択的な調査結果をコンピューターに入力してやります一次判定結果、これに記述して調査していただきます特記事項、さらにはかかりつけ医によります意見書に基づきまして保健、医療、福祉の学識経験者から構成されます介護認定審査会の方におきまして要介護度についての審査判定を行うことにいたしているわけでございます。
 審査判定に当たりましては、要介護に当たりましての要介護認定基準でございますけれども、この介護法案の審議の段階から介護の必要度に応じまして区分をする、こういうことを申し上げてきたわけでございますが、介護の必要度の客観的な尺度といたしまして八十五項目でございますが、八十五項目にわたりまして心身の状況を調査いたしまして、それをもとにいたしまして要介護認定基準の推計をする、こういう形をとっているわけでございます。
 この要介護認定基準でございますけれども、実際に施設等に入っていらっしゃる高齢者約四千人の方につきまして、麻痺しているとかあるいは痴呆があるとかないとか、こういった心身の状況に関します調査結果と、この方々が実際に受けている介護の内容あるいは介護に要した時間につきまして、二日間にわたりまして一分間ごとに内容を記録したいわゆる一分間タイムスタディー調査というのがあるわけでございますが、そのデータを基礎といたしまして推計いたしてございます。
 具体的には、訪問調査で得られます八十五項目の状態の組み合わせが同じようなケースのグループをこの一分間スタディーのデータベースの中から引き出してまいりまして、そのグループについてはあらかじめ介護認定時間というのが出ておりますので、それを集計いたしまして要介護認定基準を推計する、こういうことになっております。
 本年度用いました要介護認定基準は、昨年行いました試行事業の結果に基づきまして審議会でいろいろ御検討をしていただきました上で、若干修正をいたしております。
 主なものを若干申し上げますと、要介護認定時間を算定する介護の内容というものを明らかにいたしまして、その行為に要します時間に基づいて要介護認定を設定する、こういうこととか、あるいは従来の要介護Xの中には最重度のケースと過酷のケースというのが含まれていたわけでございますけれども、この二つを分けましてサービスの枠の充実を図る、こういうふうなことをやっております。
 
○小池晃君 今回、全市町村で行われているモデル事業、一次判定をコンピューターでやって、二次判定は審査会でやる。その一次判定の結果がおかしいのじゃないか、認定審査会の現場からはことしのコンピューターの一次認定が昨年度の場合よりも低く出ている、そういう声が多数寄せられております。
 そこで、資料をごらんいただきたいと思うんですが、私が入手した資料の中から一例目ですね、資料の1。この方は意思疎通が全くできない、経管栄養の寝たきりの方であります。嚥下もできない、寝返りできない、何もできないですね。尿意なし、便意なし、意思の伝達できない、そして経管栄養だと。どう見ても明らかに最重度の介護が必要な方だと思われる。こういう方が要介護Uで出ているんです。
 要介護Uというのはどういう程度か、厚生省ちょっと、厚生省が要介護Uの例を示していると思うので、説明をしていただきたいと思います。
 
○政府委員(近藤純五郎君) 先ほど申し上げましたように、要介護認定は時間数で表示いたしておりますので、時間数ではよくわからないということでございますので状態像を示してございます。
 それで、要介護Uに区分されている状態像では、日常生活を遂行する能力の中では、立ち上がり、両足、片足での立位保持、歩行、座位保持などを自力ではできない場合が多く、排尿後の後始末、排便後の後始末の間接、直接的な介助を必要とする場合が増加し、浴槽の出入りや洗身などの入浴に関する一部介助、または全介助が必要な場合が多い。
 こういうふうなことで、もう少し書いてございますが、この辺で省略させていただきます。
 
○小池晃君 全く違うんですよ。ここに書いてあるような患者さんの状態と厚生省が示している例は全く違う。
 さらに、こんな例もあります。資料2を見ていただきたいと思いますが、この方は体の機能は一定に保たれているんですが、いわゆる痴呆がある方であります。金銭の管理ができない。幻視や幻聴がときどきある。徘回がある。御家族はこういう方を見るのは大変なわけであります。そして、実際どういうサービスを今受けているかというと、訪問看護を月四回受けている。訪問介護、ホームヘルプサービスを月十二回受けている。そして、デイケアは月十二回行っている。こういう方が、結果を見てください、自立ですよ。自立ということは、介護サービスが受けられない、介護保険の対象とならないわけであります。これでは、判定を受けた方も御家族も大変驚くし、お怒りになるんじゃないでしょうか。
 同様なケースが、これは特殊なケースじゃないんです、各地から報告をされている。そして、日本経済新聞でも報道されました。「介護認定ソフト何か変」、「厚生省に苦情殺到」という記事であります。十一月三十日に報道されている。
 厚生大臣、こういう結果が出てくる判定の方法というのは欠陥がある、そういうふうに思われませんか。
 
○国務大臣(宮下創平君) 介護保険制度の実施に当たりまして、認定が公平公正で、しかも納得的でなければならないことは、これは言うまでもございません。
 そこで、厚生省といたしましては、平成八年と九年に一部で試行的事業として実施をいたしました。そして、平成十年に全市町村で実施をいたしたわけでございますが、八年、九年の結果、いろいろの点で問題点があることもわかりました。
 そこで、平成十年度の試行的事業におきまして、それらを勘案いたしまして変更し、そしてそれに基づく検討を十月と十一月の二カ月かけて実施しておりまして、おおむねの様子はわかりつつありますが、まだ全体として発表する段階にはないようでございますが、そういうことでやっております。
 ただ、ここで一つの例を申しますと、確かに従来要介護Xという中に最重度のケースと過酷ケースというものを二つ一緒にしておりました。これは、八年と九年の調査では一緒にしてランクづけをしておりましたが、今回はこれを過酷ケースと最重度というので、過酷ケースの方がXの方で、最重度というのはそれよりも軽いものに認定しております。
 この介護認定におきましては、誤解があってはいけませんが、介護の必要度というところから審査判定するわけでございまして、要介護者の病状がどうであるとかいうことよりも、その方を本当に介護していくためにはどれだけの手数がかかるかと。したがって、局長の今言われましたタイムスタディーが必要になってくるわけですが、そういう意味で審査、認定をしていきます。
 したがって、高齢者の重症度とは必ずしも一致しない場合があるということは、これは御理解いただけることだと思います。つまり、被介護者の方の病状に着目するのではなくて、直接的に介護をどれだけ要するかという視点から認定をしていく、介護保険というのはそういう性格のものであるように思われますので、その点は御理解をいただきたい。
 それから、介護の必要度を示す一次判定結果と重症度を念頭に置いた審査会の考え方が一致しないという事例も発生しておりますので、要介護度に対する判定基準というのは国民に本当に理解されませんと信頼を失いますので、私どもとしてはこの二カ年やり、三回目の試行をやっておるわけですから、これに基づく分析等をきちっとやって、そして適正なものにしていきたいし、今後も試行的の事業を通じまして実施主体である市町村からいろいろの意見をいただきまして改善を図るようにしたい、こう思っております。
 なお、一次判定に用いられますコンピューターソフトにつきましては、今年度の事業の結果を見た上で、コンピューターソフトは一次判定ですが、その基準、ソフト関係は審議会での結論を踏まえまして必要な見直しは行うようにいたしたい、こう思っておるところでございます。
 
○小池晃君 介護される方の重症度じゃなくて介護時間だということを言われましたけれども、寝たきりで鼻からチューブが入って流動食を胃の中に流しているような人ですよ。御家族にとってみれば一番大変な介護が必要だというのは、だれの目から見ても明らかだ。そういう人がUとかあるいはVとかと出ているんですよ。それは介護時間これだけだからと説明して、そんなわかりにくいことを納得できるわけないじゃないですか。
 皆さんだれが見ても納得できる、ああそうだと、うちのおばあちゃん、これだけ大変だ、これぐらいのランクだろうということが、だれから見ても納得できるような制度でなければ、これは介護保険制度に対する信頼そのものが揺らいでくる。
 それから、今、二次判定で変更可能だとおっしゃいました。ところが、ことしは新たな問題がつけ加わっているんですね。要介護状態区分変更等事例集というのを厚生省は出している。去年、モデル事業で一次判定から二次判定に覆った例が二割、三割、四割あったということで、懲りたんでしょうか、変えてはいけない例というのをいっぱいここに出しているわけですよ、列挙している。
 例えば、自立していても全盲なので重度に変更する、これはしてはいけない。褥瘡、床ずれですね、床ずれがあるので重度に変更する、こういうことはしてはいけない。あるいは、徘回、幻覚などの問題行動があるので重度に変更する、介護を行っている妻に腰痛があるので重度に変更する、こういうことをやってはいけませんよと、二次判定で。がんじがらめになっているんですよ。どう考えても欠陥がある、問題がある判定だと言わざるを得ないと思うんですね。
 その上で、何でこんなことになっているのか、その問題に触れたいと思いますが、資料3を見ていただきたいと思います。
 資料3は、これは先ほどから述べられています九七年度のモデル事業、これでの要介護度の判定の結果の分布ですね。それと、その同じサンプルをことしのロジックで分析した場合、すなわち去年の調査票をことしの判定方法、ことしのコンピューターソフトに入れて出た結果を比較してあるわけです。これは厚生省がやっているんですよ。明らかじゃないですか、全く違う曲線なんです。今、要介護度Xの扱いを変えたから、そこがちょっと変わったというような言い方をされていますけれども、明らかに九七年度モデル事業は要介護度V、W、X、ここをピークとする曲線になっております。ところが、これは同じデータですよ、アメリカの例とかじゃないですからね、去年のデータをことしのコンピューターに入れたならば、要介護度Tをピークとするグラフになっているんです。全くこれによって本当にその要介護度が大きく変えられているんですよ。
 こういうことであれば、厚生省の胸先一つでコンピューターソフトに何か手を入れれば、幾らでもその要介護度は変更できるということじゃないですか。そういうふうに思われても全く仕方がないんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
 
○国務大臣(宮下創平君) 私もちょっと詳細の具体的な個々の認定の基準については必ずしも承知しておりませんが、今、委員が御指摘の資料3の問題でございますが、これは確かに九年度は重点がV、W、Xあたりにありました。しかし、今度の結果によりますと、介護をT、U、Vあたりに重点が置かれておりまして、介護Xの方のウエートが少なくなっているという実態を委員は御指摘になりまして、その前提は基準改定をやったんじゃないかと、こうおっしゃられるわけでございますが、私もちょっとその辺の因果関係が必ずしも明確ではありませんが、先ほど申し上げたように、介護する側に立っての問題でございまして、病状とかそういうことになりますと、治療を要する場合は介護保険といえども医療行為が介入してくるわけでございますが、それはもう十分委員も御承知のことだと思いますが、そうした前提の上に立って、なおかつ介護としてはどれだけ必要かという恐らく認定をやっておったタイムスタディーの結果であろうと思うんですね。
 そんな意味で、もしも個々のケースでございますれば、局長の方から答弁させていただきます。
 
○小池晃君 これ、答えられないと思うんですね。
 総理、最後にお聞きしますけれども、要介護度認定というのは、介護サービスの上限を定める介護保険制度の根幹とも言える部分だと思うんです。そこが、このように恣意的にコンピューターソフト一ついじることでかなり変えられる。これはやはり介護保険制度の根本的な問題として、総理の責任で抜本的な見直しをすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 
○国務大臣(小渕恵三君) 介護保険制度におきましての要介護認定は介護サービスの給付の要件でありまして、全国共通の基準に照らして公平公正に行うことが重要と考えております。
 
○小池晃君 終わります。

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