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日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

147-参-予算委員会-14号 2000年04月25日

介護保険の利用料負担軽減をせまる
(テレビ中継質問、予算委員会)

○小池晃君 私は、切実な声が寄せられている介護保険の問題についてお聞きしたいというふうに思います。
 私たちの調査では、介護を受けている人の一五・三%が利用料の負担などの経済的な理由で介護サービスを低下させている、こういうことがわかりました。なぜこんなことが起こったのか。今まで八割の人が無料で受けていたヘルパーの訪問介護、これは一時間で約四百円になるんです。それから、今まで一回二百五十円の負担で受けていた訪問看護、これは一時間で約八百三十円になります。一月にすると大変な負担増であります。こうした負担が払えないから必要な介護も断る人が出ているんじゃないでしょうか。
 総理にお伺いしたい。介護のために介護保険をつくったわけですね。ところが、介護保険ができたために介護が受けられなくなっている。こんなことがあってはおかしいと思うんです。一割の利用料の軽減を図ること、これは緊急の課題じゃないかと思うんですが、どうでしょうか。──総理に聞いているんです。
 
○委員長(倉田寛之君) 実務的なことでしょう。
 
○国務大臣(丹羽雄哉君) まず、この四月からスタートいたしまして私どもが一番懸念をいたしましたのは、これまでサービスを受けていた方のサービスが途切れるんじゃないか、こういうことでございまして、私ども厚生省といたしましてはケアプランの作成、こういうことに大変な力を注いでまいりました。おかげさまで、市町村の御努力にもよりまして八三%近くの方々がケアプランをつくっていただきまして、とにもかくにも大きな混乱なくスタートをいたしておるわけでございます。
 そこで、委員の御指摘の点は価格、価格といいますか利用料の問題に関連してくる問題だと思っております。
 私どもは、低所得者に対しましては当然のことながら上限、限度額というものを設けておるわけでございます。しかも、一般の方に比べましてよりきめ細かくということで、限度額を二段階に分けておるわけでございます。また、例えばホームヘルプサービスなどは、これまでどちらかというと比較的低所得者の方に利用を受けている方が非常に多かったわけでございますので、こういった観点から激変緩和に立ちまして、経過的に一割の負担を三%に軽減する、こういうような措置を行っておるような次第でございます。
 それから、低所得者の方に関しましては、今申し上げましたように一般より低く設定をいたしておるほか、利用者負担が困難な方に対しましては生活福祉資金貸付制度、委員も御案内だと思うのでございますが、こういうことの拡充などの措置を講じまして、そのようなことがないようにやっております。現に、介護保険を導入する前と導入した後を比較しました場合、サービスを利用する方が二三%ふえておるわけでございます。
 それから、全般的な傾向といたしましては、認定度が重い方がサービスの給付がふえる傾向になっておるわけでございます。さまざまな問題がございます。私もドイツへ行ってまいりまして、ドイツでは五年たってもまだ試行錯誤でございますけれども、おかげさまでまずまず順調にスタートしておる、このような認識に立つものでございます。
 
○小池晃君 新しい保険制度が始まったんですから、サービス量がふえるのは当然なんですよ。
 今いろいろおっしゃいましたけれども、一つは上限があるんだと。ところが、高額介護サービス費、これ上限を設けたというんですが、上限は三万七千二百円です。在宅サービスは、最高の要介護度五で限度いっぱいフルに使っても自己負担三万六千五百円ですから、上限の意味ないんですよ、これ。それから、低所得者に対して特別対策をやったと言いますが、これは訪問介護に限って、しかも従来からヘルパーサービスを受けていた人に限って、もう二重三重のただし書きつきだと、これでは全く不十分だと私は思うんです。
 きのう、政府はホームヘルプサービスは低所得者が多いから、そのほかに軽減を拡大するのは適当でないというふうに御答弁、衆議院でありました。ヘルパーを受けている人というのは決してヘルパーだけじゃないんです。ほかの訪問看護あるいはデイケアを受けていたりデイサービスを受けていたりする。だから、ヘルパーだけ軽減しても低所得者対策にならないんじゃないですか。
 そもそも、私たちは一割の利用料を住民税非課税の方から取るべきでないということをずっと主張してまいりました。もしそれができないというのであれば、せめて特別対策で訪問介護に設けた今おっしゃった特別措置、特別対策、これをほかのすべてのサービスに拡大すべきじゃないか。そういうふうに拡大する、あるいは新たな利用者にも拡大する、そうしなければ低所得者対策としても私は不十分じゃないかと思うんですよ。そこのところをぜひお答えいただきたい。
 
○国務大臣(丹羽雄哉君) ホームヘルプサービスにつきましては、今私は答弁の中で、どちらかというと低所得者で無料といいますかそういう方が非常に多かった、こういうことで激変緩和をとらせていただきましたと、こういうことを申し上げました。
 もう一つ、今、委員が御指摘になりました、例えばデイサービスであるとかそれから訪問介護サービス、こういうものは、これは介護保険導入以前から利用者全員から一律の負担を求めていたわけでございますので、これと一緒にするということはいかがかなと、こう思っておるような次第でございます。
 当然、私どもは、保険料であるとか、今、委員が御指摘になりましたような上限におきましても、きめの細かな措置を講じておるわけでございますが、これは介護保険に限らず、社会保障というのはやはり今後の、将来の少子高齢化社会を見据えて安定的な制度というものを築いていかなければならない、いわゆる負担と給付というものをどういうふうに考えるのか、いわゆるばらまき福祉であってはならない、こういうことも十分に考えていかなければならないと思います。
 私は、デンマークへ行ってまいりました。デンマークでは医療無料です。一部の特養は有料をとっております。ちょっとばらばらでございましたけれども、消費税は二五%でございます。これに対して国民の皆さん方に御理解をしていただいておると、こういうふうに聞いたわけでございますけれども、果たして我が国においてこのような高額な消費税というものが受け入れられるかどうか。今五%の問題でもさまざまな御意見があるわけでございますので、やはり財源問題を含めてこういった問題というのは御議論をさせていただくことが本筋ではないか、このように考えるような次第でございます。
 
○小池晃君 税や社会保険料負担の七〇%から八〇%が社会保障給付として返ってきている北欧諸国と四〇%台しか返ってこない日本とを同列に比較するのは全くおかしい議論だと私は思います。
 さらに言えば、ホームヘルプサービスは無料だから激変緩和したと言うけれども、デイサービスは五百円から千五百円、訪問看護だって二百五十円から八百三十円、これだって激変なんですよ、受けている人にとってみれば。だから、何でここに広げないのかと私は申し上げている。
 厚生省にお聞きをしたいと思うんですが、ホームヘルパーだけじゃなくて、在宅の介護サービスすべてに全体の自己負担額を一〇%から三%に下げる、こういうふうにした場合に必要な費用は大体幾らになるか、計算をお示しいただきたいと思うんです。
 
○政府参考人(大塚義治君) お尋ねの計数を正確に算出することはなかなか困難でございますけれども、一定の前提を置き、かつ粗い概数で機械的に計算をいたしますと、平成十二年度におきまして在宅サービスの給付費見込み、これが約一兆四千億円と私ども見込んでおります。これをベースにいたしまして、これに見合う原則一割に相当いたします利用者負担、細かいところは省略をいたしまして利用者負担が約一千五百億円と見込んでおります。したがいまして、ただいまのお尋ねがこれの七%相当だというお尋ねの趣旨でございますれば、この一千五百億円に七割を掛けまして約一千億と、こういう計数でございます。
 
○小池晃君 一千億円だと。これは所得階層にかかわらず、すべての利用料を軽減した場合です。ですから、住民税を払っていない方に軽減の対象を限定すれば、多く見積もっても八割、大体八百億円程度、これだけあれば低所得者の在宅サービス全体の利用料を三%に引き下げることができるわけであります。
 総理、ここではぜひお答えいただきたいんですが、この現場の切実な声に私はこたえるべきだと。利用料の負担というのは、これは手厚い介護が必要な人ほど重くのしかかるわけであります。だから本当に切実なんですね。やはり緊急に、八百億円程度でできるのであれば利用料負担の軽減、これに足を踏み出すべきだと思うんですが、いかがですか。
 
○国務大臣(丹羽雄哉君) この特別対策につきましては、昨年来いわゆる自自公三党の間でいろいろな議論をしてまいりました。その結果、半年間は保険料を免除することにしました。これにつきましても、いや、保険料を取るべきだという声もかなりあったことも事実でございます。しかし、実際にふたをあけてみますと保険料を取っている市町村はどこもありません。すべてが保険料免除でございました。
 私どもは、そういう観点から見ましてもわかりますように、とにかく世紀の大事業でございますし、先ほども申し上げましたけれども、ドイツは五年たってもまだ試行錯誤をしておりますし、基盤整備におきましても認定におきましてもすべての面でドイツよりもはるかにすぐれておる、私はこう確信を持っておるわけでございます。
 そういう中において、さまざまな問題がこれから起こり得ることも十分に想像はできますけれども、私どもはあくまでもこの介護保険というものをみんなで育てていくんだと。今、寝たきりのお年寄りというのは全国で二百六十万から二百七十万人になる。これが将来は五百二十万人になる。大変切実な問題、人間の尊厳にかかわる問題でありまして、私どもは、基本的にこれを利用者の声を聞きながら柔軟に正すべき点は正しながら直していきたい、こういう観点に立っておるわけでございます。
 
○小池晃君 世紀の大事業だということであれば、だからこそ私は言っているんです。正すべきところを正すのであれば、今まさにそういう切実な声が上げられているんだからこたえるべきじゃないですかと申し上げているんです。
 総理、ぜひ答えてください。
 
○国務大臣(森喜朗君) 大変大きな関心を持ち、今、厚生大臣からもお話しのとおり、まさに世紀の大事業だろうと思います。そして、多くの皆さんの英知を集めてこの制度が四月一日からスタートしたわけです。これだけの大きなテーマでありますから、さまざまな問題が出てくることは当然だろうと思います。しかし、現実は、今極めて安定した形でそれぞれ市町村の皆さんや関係者の皆さんによってまずはスムーズにスタートしている、私どもはそういう判断をいたしております。
 今、委員がおっしゃいますように、細かな問題をいろいろ挙げてくれば、それは多くの問題が出てくることは十分承知はできるわけでありますけれども、しかし、それぞれの国においてもそれぞれいろんな試行錯誤を繰り返しながら続けている。今、厚生大臣のお話のように、ドイツも五年たってもまだなかなか定着をしない。あるいは、北欧などは、すぐれているとはいいますが、それだけ税の負担が大変多い。それだけ還元された国と比較するのはおかしいと先ほど委員はおっしゃいましたけれども、やっぱりそれだけの負担を求めて、そういう財源というものをしっかりその国民が理解をしているということからスムーズに進んでいる面もあるわけでありますから、まずはこうして今四月からスタートした点をみんなでしっかり守り育てていくという努力をしていかなきゃならない。
 もちろん、政府としては、委員もおっしゃいましたように、いろんなさまざまな意見は謙虚に耳を傾けて今後の参考にしていくということは当然であろうというふうに考えております。
 
○小池晃君 決してスムーズに進んでいないから私は申し上げているんです。
 この利用料負担というのは、決して小さい問題じゃないですよ。新聞の世論調査を見ても、介護保険で一番心配なこと、筆頭は利用料と保険料の負担ですよ。これは重大な問題なんです。
 さらに、別の問題も指摘をしたいと思います。
 介護保険には、要介護度別に利用限度額というのがあるんです。これも大問題なんですね。この限度額を超えた部分というのは丸ごと全部自己負担になる。今まで一生懸命苦労してようやく在宅の生活を支えてきたような方に大変な被害が今起こっている。
 幾つか紹介しましょう。例えば、奈良の九十一歳の女性の例です。この方は、毎日の滞在型ヘルパーと週三回の訪問看護、これに加えて一日二回の巡回ヘルパー、これでようやくひとり暮らしをしていた。介護保険になると限度額を超えてしまうということで、巡回ヘルパーがとめられた。状態が悪くなって緊急入院されたそうであります。
 鹿児島の八十歳の御夫婦。この方は週三回のデイケアの入浴で清潔を保っていた。おうちにおふろがないのでデイケアに行っておふろに入っていた。限度額を超えるためにデイケアを週一回に減らした。疥癬という皮膚病にかかってしまった。こういう報告があります。
 利用限度額を超えた分が払えずに必要な介護が受けられない。一割の利用料が払えないという例もあるし、利用限度額を超えた部分が払えない、そういう面もあるんです。これはどうされるんですか。これも解決する必要があるんじゃないですか。これもやむなしと言うんですか。
 
○国務大臣(丹羽雄哉君) まず、委員、この介護保険制度というのは、ある意味におきまして地方分権の試金石であるのです。ですから、これまでもこの介護の問題に対して非常に積極的に取り組んでいるところと、率直に申し上げて、離島などを抱えましてこういう問題に対して非常に認識の希薄なところがありまして、非常に温度差があるわけでございます。
 個々の問題につきましてはさまざまあると思いますけれども、先ほども私が申し上げましたけれども、まず全体的に介護保険の導入前とそれから介護保険を導入した後では利用者の数が二三%もふえているんだということは、これは紛れもない事実でございますし、それからこれは具体的に名前を挙げてもよろしいのでございますけれども、滋賀県のある町では、要介護度が重度の方の場合を中心にしてサービス利用が非常にふえている、こういうことがあります。
 確かに一つ一つとらえればそういう問題が出てくるかもしれませんけれども、全体的に底上げをする、そしてこれから先はそれぞれの市町村がどういう姿勢で町づくりを進めていくのか。これまでは、まあさまざまあるでしょう。あるAという町が例えば学校をつくればBという町も学校をつくる、そしてAという町が図書館をつくればBという町も図書館をつくる。こういうような、どちらかというと日本の町というのは画一的な金太郎あめのようなことを言われていた。しかし、いわゆる先進的な地域においてはこういう問題に積極的に取り組んでいる。こういう地域がこういう問題を引っ張っている。私どもは、この介護保険というのは、介護というものは人間の尊厳にかかわる問題で、これまでは一家庭の問題でありましたけれども、社会全体で支えていく、こういう観点に立って、どうかひとつ委員もこれを大きく育てていく、こういう観点から御協力を賜れれば幸いだと思っています。
 
○小池晃君 私は介護保険制度をよくするために提案をしているんですよ。それに対してまともに一切答えていないじゃないですか。
 さらに聞きますよ。利用限度額を超えた場合、そういうケースの場合、これは二十四時間のホームヘルパーなんかを受けていて大変なぎりぎりの努力をしているケースが多いんですよ。これを超えた部分は保険の範囲ではないわけですから、やはり福祉の制度で、政府の責任で福祉的な措置を講ずるべきではないかというふうに思うんですが、いかがですか。
 
○国務大臣(丹羽雄哉君) ですから、私どもは、先ほども申し上げましたように、あくまでもこれは地方分権でございまして、それぞれの地方がそれぞれ独自に、例えば乳幼児医療の場合、この問題もさまざま意見があります。しかし、長期的、安定的、そしてひとしく利用する方と利用されない方を考えれば、私は現在の方法は正しいと思っておるわけでございますので、これはそれぞれの姿勢の問題であり、まさに力量の問題であり情熱の問題である、このように考えているような次第でございます。これをすべて国で賄うというには、当然のことながら委員の方から、じゃどういうようなことでやっていくのかということを、当然負担と給付の問題ということもお挙げいただかなければ、この問題というのは、今後ますます少子高齢化社会というのは深刻になっていくわけでございます。
 私どもはこれまでは、話は変わりますけれども、例えばお年寄りにおいても、所得のある方も所得のない方も七十歳以上の方は一律に五百三十円の負担をいただいてきた。しかし、これからそういうことで日本の皆保険制度が維持できるか、これと同じようなことでございまして、介護保険制度を将来とも伸ばしていくためには、さまざまな形で私ども国が実際問題として基準を示して、公的な範囲の中でどこまでするのか、そしてそれぞれの市町村のニーズに応じて自分たちの住民というものはどういうものを求めていくか、そういう観点からこういう問題というものはおのずと決まっていくものではないか、このように考えるものでございまして、決して私どもはこれによって低所得者を切り捨てるとか、そういう考え方に立つものではございません。
 
○小池晃君 一〇%の利用料を取るという問題も、利用限度額を超えた部分は全部、大体利用限度額というのを設定することも、利用限度額を超えた部分は全部自己負担にするということも、全部国が決めた仕組みなんですよ。それを押しつけたから地方でこれだけ矛盾が生まれているんじゃないですか。それを解決するのは地方の責任に回す、全く無責任なやり方だと。こういう形を押しつけるからこそ大変な矛盾が今現場で生まれているわけで、それに対して、もうこれだけの矛盾があるんだったら、穴ぼこだらけになっているんだから一生懸命それを埋めるようにしようと、それが政治の姿勢じゃないですか。そのことを申し上げているんです。
 介護保険で保険料まで払うようになるんだと。大抵の人は、これ、今よりはいい制度になるだろうというふうに思っていたと思うんです。しかし、逆に必要な看護とかリハビリが受けられなくなる、あるいはヘルパー派遣を断って、家族が仕事をやめて家族介護に戻っちゃった、こんな例があるわけです。介護保険が始まったことで今まで受けていた介護の水準が低下する、介護の社会化といいながら家族介護に逆戻りをする、こんなことは私は決してあっちゃいけないと思うんです。
 こういうことがあっていいと思うのか、こういうことは制度の始まりだからやむを得ないんだというふうにおっしゃるのか、これ、ぜひお聞きしたいと思うんです。
 
○国務大臣(丹羽雄哉君) 先ほどから私が申し上げておりますように、日本という国は確かに豊かな国になりました。しかし、今、老老介護と言われる中において、大変介護に疲れて、例えばお年寄りの夫婦が同時に命を絶つなんという悲惨な事件があるわけでございます。そういうことをなくすように、これまでは一家庭の私的な問題であったわけでございますが、今後は社会全体で支え合っていこうと、こういうような発想で要するにこの介護保険構想というのはなされたわけでございます。
 そういう観点に立ちまして、私どもは、あくまでも、これまでどちらかというと介護の問題というのは社会の片隅に放置されていた嫌いがなきにしもあらずでございますが、この介護保険の導入を契機に、いわゆる要介護のお年寄りだけでなく、お年寄り全体のあり方、そして地域システムの変革まで、今大きく変わろうといたしておるわけでございますので、どうかひとつ委員におかれましてもその点を十分に御理解をいただいて、私どもとともに力を合わせてこの介護保険というものをよりよい介護保険の方に育てていく方向でひとつ御協力を賜りますようお願いを申し上げる次第であります。
 
○小池晃君 あなたの今言われたことと現場で起こっていることはこんなに違うんですよ。そのことを一番よく知っているのは介護の現場で介護を受けている方たちなんです。その声を私は申し上げているんです。そういう声に耳を傾けなければ私はいけないと思いますよ。
 介護の利用者には重い負担が押しつけられております。その一方で、介護の現場、働く現場はどうなっているか。きのうの衆議院の予算委員会で、政府は、ホームヘルパーの需要は大変ふえており、着々と手を打っているというふうに答弁されました。しかし、実態はどうだろうか。
 厚生省にお伺いしたいんですが、大阪市が社会福祉協議会に委託してきたホームヘルプ事業から撤退することになったそうであります。その経過について説明をしていただきたいと思います。
 
○政府参考人(大塚義治君) 大阪市を通じて承知をしている範囲でお答えを申し上げます。
 大阪市及び市の社会福祉協議会におきましては、介護保険制度の導入に伴いまして民間事業者の進出状況も見込まれるといったような状況を勘案いたしまして、この四月から従来の方式を変えたわけでございますけれども、簡単に申しますと、当協議会のホームヘルプサービス事業を縮小する方向で市と社会福祉協議会と、また職員団体などとも昨年来協議を進めてこられたというふうに聞いております。
 具体的な内容でございますが、三点ほどございまして、一つは、これまで九百名のヘルパーが従事をしておりましたけれども、平成十二年度、十三年度の二年間で三百五十名程度、就労のあっせんの努力をしつつ早期の退職勧告を行うという点が一点。二点目は、残りの、約五百五十名になるわけですけれども、そのうちの百五十名は障害者の担当ヘルパーとして継続して雇用をする。三点目は、その他の四百名程度の職員につきましては新たな事業開拓を行うということで引き続き雇用の確保を図る、こういった内容だとお聞きをいたしております。
 
○小池晃君 ヘルパーの需要が高まっているんだと、介護保険が始まって、大切なヘルパーだと。まさに逆を行く事態ですよ。九百人減らしてしまうと。事務職に転任をさせられてせっかくのヘルパーの資格が生かせない人も出ております。さらに、民間に行くからというお話がありましたが、受け皿の民間の求人を調べてみました。これはほとんどがパートタイムの登録ヘルパーであります。
 労働大臣にお伺いしたいんですが、常勤のヘルパーと登録ヘルパーの労働条件の違い、労働省としてどのように把握されているでしょうか。
 
○国務大臣(牧野隆守君) 日本労働研究機構、この機構が平成九年に行った調査によりますと、一日六時間以上、週五日以上勤務している非正規職員である常勤ヘルパー、この方々については月収二十万円未満の者の割合が八三・七%となっております。また、常勤ヘルパー以外の非正規職員である週三十時間以下のパートヘルパーにつきましては、月収十万円未満の者の割合が九一・四%と、こういうようになっております。
 
○小池晃君 これが現実なんです。常勤ヘルパーそのものも決して労働条件がいいとは言えない。八割の人が月収二十万円未満だ。ところが、パートになると月収十万円未満が九〇%を超えてしまう。
 常勤からパートになって、これでは低賃金で生活もできないからヘルパーの仕事は続けられないという声もこの大阪の事態では上がっております。労働条件が悪化するということは、これは介護の水準の低下に直結をするわけですね。お年寄りからこんな声が出ている。何で介護保険になった途端に今までのヘルパーさんが来てくれへんようになるんや、こういう声が出ているそうであります。
 これは決して大阪だけの話ではありません。公的なヘルパー事業の撤退は、東京二十三区のうち二十区、川崎市、名古屋市、こういう大都市で軒並み各地で起こっているんですね。これは決して在宅介護の現場だけじゃなくて、施設介護の現場でも同様の傾向があります。
 総理、これはお聞きしたいんですが、ホームヘルパー不足だと、一生懸命ふやさなきゃいけない時期だと、介護保険まさに始まったんだと、そのときに逆に公的事業が撤退していく。これはまさにあべこべの事態じゃないだろうか。これを放置していいんですか。
 
○国務大臣(丹羽雄哉君) このホームヘルパーの需要というものがここに参りまして大変急激にふえておるわけでございます。そこで、それぞれの地方自治体の事業計画に基づきまして私どもは新たにゴールドプラン21、こういうものを策定したところでございます。ホームヘルパーにつきましては、十七万人であったものが三十五万人に引き上げを見込むわけでございますし、毎年八万人規模でふえ続けておるわけでございます。
 それから、委員が先ほどから御指摘のいわゆる公的な主体によって行うのか、それから民間事業にゆだねるかについては、これはあくまでもそれぞれの利用者の判断であり、それからそれぞれの地域の実情を踏まえた各市町村の判断でございますけれども、私はやはりいろいろな競争の中からより質のよい、そして確実な給付サービスをしてくれるところが生き残っていける、それがまさに介護保険の導入の最大のねらいだと。
 これまでどちらかというと、いわゆるサービスというものは行政の方から措置ということで、要するに利用者の方にサービスは与えられたものでございますけれども、今後はいわゆる利用者と事業者が対等な立場に立って契約をしていく、そういう中において質のよいよりよい給付サービスが受けられるものと、このように確信をいたしているような次第でございます。
 
○小池晃君 あなたのおっしゃっていることは、介護保険の最大のねらいというのは、そういう競争を起こさせて、こういう大阪のように公的事業が撤退して、民間のヘルパーにどんどん移っていって労働条件が悪くなる、そういうことが結果として生まれるということですよ。それでいいんですか。
 こういうことで介護の量も質も低下をしているじゃないか、穴がいろいろあいているじゃないかと。介護保険は国が始めた制度なんですよ。だから、国にやはり責任があるんです。至るところで穴があいているのであれば、自治体と国が一体となって努力をしてこういう問題点を解決していく、それこそ求められているんじゃないですか。
 それを逆に、介護保険というのはこういうものなんだ、仕方がないのだということで許されるんですか。私はこれは重大な問題だと思うんです。あなた方の言うことは、利用料負担が重くて介護を受けられない人が出ても、あるいは公的事業の撤退で介護の水準が下がっても、何でも仕方がない、介護保険で支えられる側も支える側もどうなってもいいということじゃないですか。
 そもそも介護保険というのは何のためにつくったのか。
 厚生省は介護保険でサービスが選択できるようになると言いました。しかし、実際はサービスの不足で選択などとてもできない。在宅を重視する制度だ、そういうふうにも宣伝をされました。ところがどうですか。実際は在宅の介護の維持が困難になって施設にどんどん入るという例も生まれている。介護の社会化がうたわれた。しかし、実際は家族介護への回帰が起こっているじゃないですか。これでは何のための介護保険かという声が上がっても私は仕方がないと思うんです。
 地方議会の意見書はどれだけになっているか。三月末で、厚生省の調べで千三百四十九地方議会から意見書が上げられています。こうした声にやはり耳を傾けるべきだというふうに考えるわけです。
 その他にも介護保険の問題ではいっぱい課題があります。時間がないので、きょうはもう触れられませんが、サービス不足の解消のため、特におくれている訪問看護やデイサービス、ショートステイなどの整備を集中的に進めることも必要だと思います。さらに、現行の認定制度。これはとりわけ痴呆の方に低く出る傾向が各地から報告をされています。高齢者の生活実態や痴呆の実態も反映できるように改善することも急務だというふうに思います。
 私は、残った時間、こうした責任を果たすための財源がないのかという問題を取り上げたい。介護には実に冷たい一方で税金投入の蛇口が開きっ放しという部門があります。銀行支援であります。この問題をお聞きしたい。
 三月末の時点で銀行のために使った公的資金、この総額は幾らになりますか。
 
○国務大臣(谷垣禎一君) 委員のお尋ねの公的資金、二種類、二つのものがございまして、一つは預金保険機構が政府保証で借り入れた借入金でございますが、この残高が十二年三月末時点で十五兆五千三百二十一億円であります。それから、いわゆる交付国債を償還した使用額が四兆七千九百一億円となっております。
 この政府保証による借入金の十五兆五千三百二十一億は、その中にいろんな性格のものがございます。長銀の保有していた株を買い取ったものやら不良債権を買い取ったもの、あるいはいわゆる資本注入で資本の増強をしたもの、いろんなものがございまして、これは最後に締めてみなければわかりませんが、おおむねこれは原則として返ってくるものでございます。
 それから、四兆七千九百一億円の交付国債の方は、いわゆる預貯金等の全額保護という前提からロス埋めに使われたものでございます。
 
○小池晃君 返ってくる、こないという話をしているんじゃないんです。政府保証のついている公的資金の総額は二十兆円ということですね、今の二つを合わせて。そして、銀行に投入された公的資金の中には、今議論があった、もう返ってこないということが明白なものもあるはずです。
 日債銀も含めた破綻処理で返ってこない公的資金、幾らになっていますか。
 
○国務大臣(谷垣禎一君) まだ処理の過程でございますから、現時点では何とも申し上げようがないんですが、今申し上げた四兆七千九百一億円の方には長銀等の処理の費用が含まれているわけでございます。
 それから、今、委員のおっしゃった日債銀等につきましては、去年九月期の債務超過相当額が約三・二兆円となっておりますが、今後の処理でどのようになってくるか、現時点では申し上げようがないんですが、あえて数字を挙げれば、変動要因をアルファとしますと三・二兆円プラスアルファということが日債銀でございます。
 ですから、それを、あと全部で幾らになるかということはちょっと現時点では申し上げにくいと思います。
 
○小池晃君 今のを足してください。交付国債と足して言ってください。
 
○国務大臣(谷垣禎一君) いや、ちょっと私、計算能力がございませんので……
 
○委員長(倉田寛之君) 大臣、お待ちください。一問一答はいけません。
 
○小池晃君 今のは足し算ですよ。八兆円プラスアルファという御答弁のはずです。
 八兆円プラスアルファというのは、これは極めて控え目な数字ですよ。地方銀行の破綻処理などの分も含めれば、もはや返ってこない公的資金は九兆円に達していることは、これは明白であります。既に投入した二十兆円の半分近くが失われたことになるんです。
 それだけではありません。銀行の統合の動きが進んでおります。企業統合の際の登録免許税の大幅な減税が出てきております。銀行業界で見ると、みずほグループ、三和・あさひ・東海、東京三菱・三菱信託、こういう三グループの統合があります。
 大蔵省にお聞きしますが、みずほグループの統合が産業再生法で言う事業再構築と認定された場合、登録免許税は本則と比べてどれだけ軽減されることになるでしょうか。
 
○国務大臣(宮澤喜一君) これは調べてメモをもらってまいりました。
 産業活力再生特別措置法の規定により、認定を受けて株式会社の設立または資本の増加の登記に対する登録免許税については、税率を千分の一・五に軽減する特例が設けられております。それは十二年度の改正でございます。
 この法律は、事業再構築計画等の認定を受けることができるものについて適用することができまして、金融機関に限っておりません。
 ただいま御指摘の金融機関がこの認定を受けるか受けないか、ただいまのところ未定でございます。したがって、お答えは未定でございますが、課税標準はその会社の資本金とされておりますから、大きい会社が適用を受けますと減税額も大きくなります。これはどの業種でも同じで、金融機関に限りません。
 なお、御指摘の金融機関の持ち株会社設立のケースについては、具体的な内容が確定しておりませんので現時点でお答えを申し上げることができません。一つは、どの範囲について認定を受けるなら受けるか、それから資本金額のうちどの程度の額を資本繰り入れにするかということにつきましてもはっきりいたしておりません。
 なお、今年度こういう改正をいたしましたのは、会社組織形態の変更を伴う産業活力再生に向けた事業再構築の動きが、いわゆる先年御議論いただきました法人のリストラなんかと関係いたしまして、今後に向かってこういう動きが大きくなると考えましたので、軽減税率の引き下げをお認めいただいたものであります。
 
○小池晃君 今のを資本金に当てはめると幾らになるか。富士、第一勧銀、日本興業銀行の三行で百四十億円。それから、東海、三和、あさひで百二十億円。東京三菱、三菱信託で六十億円の減税です。これ、こういうふうに当てはめれば、機械的に当てはめればそうなることは間違いないですね。
 
○国務大臣(宮澤喜一君) ちょっと私、計算さえ間違っていなければそういうことになると思います。
 
○小池晃君 これをごらんいただきたい。今議論した中身であります。(図表掲示)
 銀行への公的資金の投入の枠が七十兆円。これまでに使った額は二十兆円だと。そして、もう返ってこない額、ほぼ確定しているのが九兆円だと。そのほかに、中でも長銀、日債銀には六兆円を超える公的資金が投入されて、八千百億円の持参金までつけられたわけです。そして、おまけに今の話にあったように、大銀行が統合する際には三百二十億円も減税をする。
 一方で、介護保険にはあれだけ冷たい介護で、お年寄りには冷たい介護、そして銀行にはこれだけの手厚い介護、これどう考えても税金の使い方が間違っているというふうに思うのは当然じゃないですか。総理、お答えください。
 
○国務大臣(宮澤喜一君) 今のは金融機関だけの特例ではございませんで、リストラに伴う措置であることは申し上げたとおりです。
 それから、銀行に対して確かに金融システム安定のためにいろんな措置をいたしておりますこともそうでございますが、それをみんな銀行にただで上げるというようなことではもちろんございませんで、おのおのの目的を持って国会のお許しを得ておる。それと介護のこととは別段関係がございませんので、それについてはお答えができません。
 
○小池晃君 介護が必要なお年寄りに比べて銀行というのはもはや要介護でも要支援でもない、もう自立だと。そういうところにこれだけあの手この手で税金投入するやり方は断じて認めることはできないということを申し上げて、質問を終わります。

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