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日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

2000年11月14日

医療改悪徹底追及第1弾(健康保険法の巻)

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 健康保険法及び医療法改正案は国民生活に深くかかわる法案であります。衆議院では厚生委員会で強行採決という暴挙が行われたわけでありますけれども、本院では徹底した審議を行うということをまず私は求めたいというふうに思います。
 その上で、きょうは健康保険法の問題に絞って質疑をさせていただきたいというふうに思っています。
 健康保険法の問題、この法案の最大の問題は高齢者に対する定率負担の導入であるということは論をまたないわけでありまして、まず最初にこれによって大変な負担増になるケースがある、このことを指摘したいと思います。
 私は、実際の病院のカルテ等から引き出してきた実例でお尋ねしたいんですが、四例挙げたいと思います。
 一例は、気管支ぜんそくと脳梗塞で診療所から月一回の往診を受けている患者さん。点数が今まで診療所で千百三十一点、薬局で千五百一点だと。今までの自己負担でいうと診療所で定額の五百三十円であります。これが改悪後は二千六百三十円と五倍になるわけです。
 二例目ですが、糖尿病と高血圧で月一回通院中の患者さん。インシュリンの自己注射を自分で自宅で注射をされている。二百床以上の病院にかかっている。こういう患者さんの場合、今まで病院の点数が二千五百八十点、薬局の点数が三千三百二十四点だと。この方の場合、今までの自己負担は定額の五百三十円だけだったわけですが、改悪後は負担の上限に達しますので五千円ということで九・四倍になります。
 入院のケース。胆石で腹腔鏡下の胆摘術を受けた。七日間入院したと。総点数が五万五千七百七十五点であります。食事代を除いて今までの自己負担は八千四百円。これが改悪後は三万七千二百円で四・四倍になります。
 四例目、これは大腸ポリープ、内視鏡的切除する場合。三日間入院をして総点数は一万五千百四十四点。食事代を除いて今までの自己負担は三千六百円であります。改悪後は一万五千百四十円で四・二倍。
 こういう負担増になるケースが出るということは事実としてお認めになりますね。

○政府参考人(近藤純五郎君)
 御指摘のケースでございますが、その前提などにつきまして詳細な検証が必要だと思いますけれども、お示しされたような患者負担額になるものと考えております。
 ただ、個々のケースで見ますれば、先生が御指摘のケースはすべてふえるケースであったわけでございますけれども、負担の方式を一日当たりの定額制から定率制に改めるということでございますので、高い医療費がかかっていた患者さんにつきましては現行制度に比べまして負担が増加することがあるわけでございますが、低い医療費であった方につきましては定率制になることによりまして負担が現行制度より低くなるケースがあるということでございます。

○小池晃君
 低くなるケースが事実としてあることはあるでしょうけれども、例えば定額にしても、五百三十円の定額が八百円になるわけですから、これは一般的に言えばふえていくということは間違いないわけです。
 それから、上限の問題を、衆議院の議論でも盛んに上限を設けたんだというふうにおっしゃっております。入院の上限でありますけれども、これは入院の負担の上限が一万五千円になる場合、いわゆる住民税非課税で老齢福祉年金受給者、こういう方は全国で何人程度いらっしゃって、高齢者全体の何%に当たるのか、お示しいただきたい。

○政府参考人(近藤純五郎君) 市町村民税が非課税の世帯で老齢福祉年金の受給者になられる方でございますが、実績として把握はいたしておりませんけれども、国民生活基礎調査の結果などから推計いたしますと、現在約十万人程度ではないかと推計しておりまして、これは老人医療受給対象者の〇・七%に相当いたします。

○小池晃君 高齢者の約〇・七%しかこの一万五千円というのは適用にならないと、本当にごくわずかなんです。
 それから、さらにその次の段階。住民税非課税世帯で二万四千六百円という上限ですけれども、これもあくまで一カ月の上限ですから、定率制になる以上は、先ほど示した実例でも、これは低減されても現状より負担はふえるわけです。理屈の上から言えば、二十日間以内の入院であれば、今まで二十日間の入院というのは定額で二万四千円ですから、二十日間以内の入院であれば今までよりも負担増になる、大幅な負担増になるケースが出てくるということは間違いないと思うんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(近藤純五郎君) 入院につきましては、低所得者の方につきまして月額の上限額を引き下げているわけでございますが、一般に一日当たりの医療費は一万二千円を超えるケースが多いわけでございまして、御指摘のような短期間の入院という場合には負担がふえるというケースがあろうかとも思うわけでございますが、入院が長期にわたる、こういう場合につきましては負担減になるのが一般的でございます。

○小池晃君 短期間の入院の場合は負担増になるんだと。短期間というのは、二十日間以内の入院の場合は負担増になるケースが多いんだと。
 それから、低所得者対策の問題でいうと、入院については低所得者は上限額が低減をされておりますけれども、今回の改正案の中で外来医療について自己負担の一体どこに低所得者対策がされているのかということについてお示しいただきたい。


○政府参考人(近藤純五郎君) 外来につきましては、お年寄りに過度な負担が生じないように三千円なり五千円なりという比較的低い額の上限額を設定しているわけでございます。若い人の場合には、これは入院、外来を問わず高額療養費ということで限度額を設けているわけでございますけれども、特にこの老人医療につきましては三千円なり五千円という上限を設けている、こういうことでございますので、低所得者の方々に対します特例は特に設けておりません。

○小池晃君 外来については低所得者対策もないんだということです。
 この問題、衆議院の委員会でも参議院の本会議でも、御答弁の中で、総理も厚生大臣も、全体として現行制度とほぼ同水準の負担であるというふうに繰り返し答弁されています。これは私はおかしいと思うんです。なぜ同水準というふうに答弁したのか。これは薬剤一部負担も含めたものとの比較であるということであって、実態に合わないんじゃないかと思うんですが、参考人、いかがですか。

○政府参考人(近藤純五郎君) 現行制度では薬剤の定額負担というのは厳然としてあるわけでございまして、ただ暫定的に特例的に国が肩がわりして埋めている、こういうことでございますので、制度の比較といたしましては、改正前というのが七・七%で、改正後は七・九%という自己負担率でございますので、現行制度とほぼ同水準なものと、こういうふうに私どもは認識しております。

○小池晃君 今の議論というのは大変とんでもない議論だと私は思うんですね。
 これは、薬剤の一部負担を含めれば負担水準が変わらないんだという議論でありますけれども、この薬剤の一部負担というのは、御存じのように、九七年の医療改悪で導入されたと。国民の批判を受けて昨年の七月に免除されているわけであります。これは暫定的特例措置だとおっしゃいますけれども、特例措置だと言うけれども、昨年七月からずっと続いているわけですから、これは現場では常態化しているわけです。国民にとってみれば、今のが特例措置だろうが何だろうが、免除だろうが廃止だろうが、負担していないことは負担していないわけでありますから、現在負担していないということは、これは紛れもない事実なんですよ。
 だから、現行制度との負担水準で比べるのであれば、薬剤の一部負担が免除されている現行と比べて今回の改定によって負担がふえるということは、これは紛れもない事実だと思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(近藤純五郎君) 先ほど申し上げましたように、薬剤の臨時特例措置というのは、薬剤負担の免除というのは本来的な措置ではないわけでございます。そういうことで、制度の比較論として行う場合には、今回の改正後の特例措置を前提にした比較というのは適当でない、こういうふうに考えております。

○小池晃君 適当でないか適当であるか判断するのは国民ですよ。皆さん方が判断する問題じゃない。
 大臣、これは事実の問題ですよ、私がお尋ねしているのは。要するに、薬剤の一部負担というのはもう既に昨年七月からないわけであります。国民からしてみれば、これは理屈がどうあれ、どういう理屈づけでなくなっているかというのは別にして、払っていないことは払っていないわけでありますから、もしこの制度改正を国民に示すのであれば、現行の負担水準と比べて、薬剤の一部負担が免除されている現行と比べれば負担はふえるんだと率直におっしゃるべきじゃないですか。大臣、お答え願いたいと思います。

○国務大臣(津島雄二君) 小池委員のお話を聞いていますと、負担をしない状態がいい、何であれ負担をしない状態がいいと聞こえます。私は、患者さんの自己負担があるとかないとかいう話は別として、だれかは負担しなきゃならぬ、だれかは。私はそのことを問いたいんです。
 それで、先ほどから、やれ一割負担になったらお年寄りは気の毒だとおっしゃる。光栄なことに私は高齢者です。そして、例えばポリープの手術を受ければ一万五千円今度は負担になる。私は、それを若い人にかぶせるより、私が払いたいんですよ。今、それができない状態でしょう。ですから、負担がふえれば高齢者がみんなかわいそうになるという議論は私は思想を異にします。
 ただし、低所得者のためには必要なことはやらなければならない。私どもの案が妥当かどうか、それは御議論をいただいて結構でございます。

○小池晃君 話をそらされましたけれども、私は、あなたはことし老人保健制度の対象者になりましたけれども、あなたが支払うことを別に必要ないとは思いませんよ。支払っていただいた方がいいんじゃないかというふうに思いますよ、あなたのような方は。
 私が言っているのは、今回の制度があまねく高齢者に定率負担を押しつけるというやり方が低所得者対策も極めて不十分な中で大変問題なのではないかと申し上げているのであって、高齢者一般が、あなたのような方も含めて、一切負担すべきでないなどとは申し上げておりません。
 それから、私の質問に答えていない。今回の、それだけ胸を張って堂々とおっしゃるんだったら、国民に負担増を堂々と示したらいいじゃないですか、事実なんですから。薬剤の一部負担を現在していない現状と比べれば、これはどう考えても無理がありますよ、現行制度と負担水準が変わらないというのは。負担は明らかにふえるんですから、昨年七月から免除されているんですから。そのことを事実として、評価の問題ではなくて、事実としてお認めになって国民にしっかり私は説明するべきだと思うんですけれども、そのことにお答えになっていないので、もう一回お尋ねしたい。

○国務大臣(津島雄二君) それはもうちゃんと資料でもあれですから、そのとおりでありますよ、特例制度がそうであれば。
 ただ、一言申し上げます。今若い方は薬剤費をまだ負担していますよ。そのことだけ言わせていただきます。

○小池晃君 そんなことは承知の上の話であります。今のは議論と関係ないと思う。
 さて、負担増になるんだというふうに大臣もお認めになりましたけれども、この負担増が高齢者の受診にどのような影響を与えるかということであります。
 厚生省、今回の定率負担の導入で、満年度ベースでどれだけ老人医療費が減少するか、それからどれだけ自己負担がふえるか、見込みの数字を示していただきたい。

○政府参考人(近藤純五郎君) 先生御指摘の薬剤一部負担がないと、こういう前提で申し上げれば、一部負担は千四百六十億円の増、それから医療費は九百九十億円の減と、こういうふうに見込んでおります。

○小池晃君 医療費が九百九十億円減るんだとすると、その高齢者の一割負担で老人医療費、高齢者医療費の何%が減少するということになるんでしょうか。

○政府参考人(近藤純五郎君) 十二年度の老人医療費の見込みは、予算ベースでございますけれども、総額で十兆六百億円と見込んでおりますので、医療費減少額九百九十億円は一%弱になるわけでございます。

○小池晃君 要するに、一割負担の導入によって約一%の医療費が減るんだと、受診抑制が起こるんだということであります。
 さらに、先ほどの自己負担増一千四百六十億円ということでありますけれども、これ高齢者一人当たりにするとどれだけになるんでしょうか。

○政府参考人(近藤純五郎君) 千四百六十億円が総額でございますが、対象者の方が千四百七十万人いらっしゃいますので、年間で約一万円弱でございまして、一月当たりで八百三十円程度でございます。

○小池晃君 今回のその定率負担によって、これは医療を受けている人も受けていない人も全部一緒くたにした数字でありますから、医療を受ける人にすればもっとふえるわけでありますけれども、平均すれば年間約一万円だと。
 さらに、先ほどお話あったように、受診が抑制される分を含めた給付全体で見ると一人当たり一万六千六百円程度、要するに約六千七百円分の受診を控えて、さらに一万円分の自己負担がふえるということになるわけであります。
 私、きょうパネルを用意させていただいたんですけれども、(図表掲示)これは高齢者の生活実態であります。全体で見ると高齢者は豊かだなどという議論はありますけれども、確かに厚生大臣のように恐らくこの辺に入る豊かな方もいるでしょうが、全体として見れば、これは所得を十分位に分けて、約七割の方が平均所得未満であります。これが生活実態なんです。一人当たり年収百万円以下が三〇%おられる、こういう実態があるわけです。私、高齢者全体が貧しいというふうに言っているわけじゃないです。全体として見れば、豊かな方もいらっしゃるけれども、全体としては極めて下の方に低い分布をしていると、非常に貧しい高齢者というのは依然として多いんだという実態があると。
 こういう中で、先ほど一万円の負担増になると。それから、介護保険の利用料の徴収、そして十月からは保険料の徴収も始まっているわけであります。年金についてはことしの四月の改定で給付の抑制が行われているわけであります。こうした全体としての社会保障負担の増加、こうした中での今回の定率負担による負担増、こういう負担増が高齢者の家計に及ぼす影響、これは極めて大きいんじゃないか、こういう生活実態に照らせば一万円の負担増であっても極めて大きいのではないか、そのように考えるんですが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(津島雄二君) 先ほどから一人当たり幾らとかいう御質問をされておる。そうしておいて、今の所得分布をお出しになっていろいろあるというお話。
 私は、今回の改正の影響というのは、もっともっと具体的な、一人一人の国民にとってどういうふうに感じられるかというレベルで物を考えていただきたいと思うんです。ですから、所得の低い方々に対してそれなりの配慮をしなければならないというのは当然のことであります。
 したがって、私どもは、今お示ししている配慮がどうか、定率一割負担の導入に当たっては定額の月額上限を設け、現行制度とほぼ同水準の御負担に頭打ちをしているということをどう評価されるのか、さらに低所得者の方々の入院時の負担については負担の限度額を現行の三万五千四百円から二万四千六百円に引き下げたことをどう考えるか、もう少し具体的にお考えをいただきたいんですよ、一人当たりどうかということではなくて。
 それから、さらに申し上げますけれども、社会保障のコストというものは老齢化が進みますと当然ふえていくわけであります。これをどのようにしてみんなが分かち合うかということは国民全体共通の問題であります。その場合において、私どもは高齢者という名のもとに一切合財負担は悪であるという考え方はとらないんです。高齢者も若い方々が負担をしているということを考え、またもし負担をしなければその分は保険料やあるいは一般会計から国民の税金でいただかなければならないということを考え、どういうやり方が一番お互いに理解をし合えるかという議論をしているところでございまして、私は平均してどうなるかという議論に対してはお答えをする立場ではございません。

○小池晃君 厚生大臣であれば、国民全体がどうなるか、平均でどうなるのかということに対して明確なやっぱり見解を示すべきですよ。こういう負担増が今の高齢者の生活実態に照らしてどういう影響を与えるか、これお答えを避けましたけれども、私、答える責任があると思いますよ。
 それから、具体的に言っていないと言われましたけれども、私、具体的に今まで議論してきたんです、具体的にこれだけふえるケースがあるじゃないかと。それから、負担の上限というけれども、低所得者対策になっていないんじゃないですかと。一万五千円の低減というけれども、わずか〇・七%しか適用にならない。二万四千六百円の軽減といっても、二十日間以内の入院であれば、先ほどおっしゃったように、一日単価一万二千円を超える例が多いわけですから、こういうケースはほとんど軒並み負担増に現状ではなるわけであります。そして、外来については低所得者に対する対策が全くされていないじゃないですか。
 こういう中で、所得に関係なく一律に定率の負担を課すというやり方が、こういう生活実態にある高齢者の生活に果たして打撃を与えるものでないのかと、私、具体的に申し上げているんですよ。お答えいただきたい。

○国務大臣(津島雄二君) 具体的に私もお答えしているのでありまして、一人一人の高齢者の方、所得の多い方も少ない方もあるでしょう。低所得者対策として外来には定額の上限を設けました。入院の費用は下げました。そういう形でお互いに負担を分け合いましょうという極めて具体的なお答えをしているわけでございまして、これは平均して一人当たり幾らという議論よりずっと私は意味のある議論だというふうに思っております。
 それからもう一つ、委員の御質問で欠落しておりますのは、どういう医療サービスを受けるかということです。さっき、例えばこういう手術を受ければこういう負担になる、それは一割だからそうなる、こうおっしゃった。しかし、それはそれだけの良質の医療サービスを受けているわけでありまして、その医療サービスを支えるためにだれかが負担しているんですよ。天から降ってきているんじゃないんですよ。その場合に、その医療サービスを受けた方はこの程度持っていただく、それ以外は保険でみんなが持とう、こういうお話を皆さん方に申し上げているわけで、バランスのあるひとつ判断をしていただきたいと思いますね。

○小池晃君 おかしな議論だと思いますけれども、私は、やはり窓口の自己負担というのが直接に患者さん、高齢者にとっては襲いかかるわけでありますから、その負担が全く考慮されていないんじゃないかというふうに申し上げているわけであります。この程度の負担であれば、恐らく大臣は影響ないんではないかという、先ほども低所得者対策がやられているから大丈夫だということであります。しかし、私はこれは既に実証されていると思うんです、こういう負担がいかに大変かということは。これは介護保険であります。
 先ごろ厚生省が発表された数字でも、介護保険で一七・七%の方が今まで受けていたサービスより利用を抑制しているわけですね。私、これは机上の空論じゃなくて、定率の一割負担というのが今の高齢者の生活にとってみればいかに過酷な負担になるかというのは、既にこれは介護保険で実証されているわけですよ。それにもかかわらず医療にまで広げるのかと、そして低所得者対策だって不十分じゃないですかというふうに申し上げているわけであります。
 これはもう実証されているにもかかわらず、今の御答弁でもあるように、まともにその検討も反省もなしにもう定率負担、医療にまで広げようというやり方であるということは、私、到底これは認めがたいというふうに思うんです。
 この定率負担の問題でちょっと補足でお聞きしたいんですけれども、衆議院の議論を通じて上限の設定の仕方についていろんな議論があって、最初は院内処方か院外処方か、これによって医療機関ごとに上限額を設定する。要するに、薬局の持ち分と医療機関の持ち分を設定するということをお示しになった。ところが、その後、患者ごとに設定するというふうに変更されましたね。これで新たに矛盾が生まれてくるということについてもちょっと触れたいと思うんです。
 例えば、毎月検査のために来院している方がいる。この方が例えば二百床未満の病院で処方がないとすると、この方の上限は三千円であります。ところが、この人が月初めの来院で例えば三千円の上限額に達した、三千円払うと、その後予期せぬ風邪なんか引いてかかったと、院外処方せんが出たと、そうすると病院の上限は千五百円になるわけです。そうすると、この差額の千五百円は一体どうなるんでしょうか。

○政府参考人(近藤純五郎君) 個人単位にするかどうかということにつきましては、現在関係団体と話し合いを進めているところでございまして、まだ最終的な決定ではないわけでございますけれども、その方向で検討させていただいているわけでございますが、先生御指摘のようなケースでは、最初に院内で処方されていて、あるいは処方がなくて最後になって処方せんが出てくる、こういうケースだと思いますけれども、こういう場合には、医療機関は大変でございますけれども償還をしていただくと、こういうふうに今考えております。ケースとしては極めて少ない、こういうふうに認識しております。

○小池晃君 非常にわかりにくいし、手間なわけであります。
 さらに、二百床未満の同じ病院に、例えば糖尿病で通院しているAさんとBさんという人がいるとする。これは二人とも診療費が三万円だとする。Aさんは処方がない、Bさんは例えば五千円分の処方があるとする。そういう患者さん、同じ病院で同じような医療を受けている人です。この場合、Aさんの自己負担というのは、これは病院のみでありますから三千円ということになる。一方、Bさんは病院で処方せんが出ていますから千五百円になる。薬局は一割ですから五百円、すると合計で二千円だと。
 このように、処方せんが出た途端に同じような医療内容で同じ病院にかかっていても、処方せんの出る人と出ない人で負担額が変わってくるということは、これは新たな矛盾なんじゃないか。全体の医療費が高いのに自己負担は逆に少なくなる。これが公平なんでしょうか。

○政府参考人(近藤純五郎君) 今回の外来の一部負担につきましては、定率制の一割定率、その上で比較的低い上限額を設けたと、しかも医薬分業が進んで院外処方の割合も多くなったと、こういうことで無視し得ないと、こういうふうな中でどういう選択をするかということでございます。
 私どもの考え方といたしましては、窓口での患者負担が月額上限額を超えないようにする、それからお年寄りに償還の手間暇とか医療現場で無理な事務負担を課さない、この二つの条件を満たすようなやり方を考えて、当初は主として院外であるとか院内であるとかいうふうなことで、医療機関ごとにそういうことをやろうということであったわけでございますけれども、これもいろいろ矛盾が出てきたと、こういうことで、患者負担にした方がより矛盾は少なくなる、こういうことであるわけでございます。
 したがいまして、患者ごとに負担が異ならないようにするためには、個々の患者の負担額につきまして医療機関と薬局を通じました負担合計額を常時把握し合う、こういうシステムができれば先生が御指摘のような矛盾は生じないわけでございますけれども、実際、医療機関と薬局で連絡をとり合うというのは、一回や二回はできるでしょうけれども、常時できるとは限らない。現実的には不可能であるということで、先生御指摘のようなケースも場合によってはあろうかと思うわけでございますけれども、これは今のような問題の中で仕組むということでございますので避けられないと、こういうふうに思っているわけでございます。総合的に勘案すれば、これから提案申し上げようという案が最も適切ではないのかな、こういうふうに思っているわけでございます。

○小池晃君 何か矛盾を解決する案のように説明されていましたけれども、これでも矛盾はあるわけでありまして、そもそも定率負担を導入することによってこういう矛盾が生じるんだと私は思います。
 さらに、高額療養費制度の改悪の問題について議論を進めたいと思うんですが、これは高齢者以外も負担増になっていくわけであります。この高額療養費制度の改定によりましてどういう事態が生じるか、これも実例でお示しをしたい。
 まず一例目、膵臓がんで手術した例、三十日間入院した患者さんです。点数は二十五万二千五百六十点。今までは六万三千六百円だった負担が改悪で八万五千六百七十六円、二万二千七十六円の負担増であります。この方がもし上位所得者だと十四万九百六十六円になりますので、七万七千三百六十六円の負担増。
 二例目ですが、肺がんで手術した場合、二十四日間入院した患者さん。これも実例ですが、点数は十三万三千九百九十九点。今まで六万三千六百円の負担が改悪で七万三千八百二十円、一万二百二十円負担増です。上位所得者だと十二万九千百十円、六万五千五百十円の負担増になります。
 三例目、心不全と糖尿病で二十二日間入院した患者さん。点数は九万八千四百十九点。この方の場合、今まで六万三千六百円の負担が改悪で七万二百六十二円、六千六百六十二円の負担増。上位所得者だとすると十二万五千五百五十二円となりますから、六万一千九百五十二円の負担増。
 こうした負担増になるという事実はお認めになりますか。

○政府参考人(近藤純五郎君) 先生が事前にお示しいただいておりましたので、私ども検証しましたところ、御指摘のような金額になろうかと存じます。

○小池晃君 この高額療養費制度の改悪によって患者負担増がどうなるかということでありますが、これまた患者一人当たりでどれだけになるか、お示しいただきたいと思います。

○政府参考人(近藤純五郎君) 現在、高額療養費に該当する方々の平均的な医療費でございますが、一月六十六万円程度でございます。したがいまして、計算式で当てはめますと、一般の方で三千四百円程度の増、それから上位所得者に該当する方で平均的に五万九千円程度の負担増になります。

○小池晃君 さらに、この高額療養費制度を支える側の問題でちょっと見てみたいと思います。
 今回の高額療養費制度の改定を保険料負担に置きかえるとすると、被保険者一人当たり一体どれだけの額に相当するのか、お示しいただきたい。

○政府参考人(近藤純五郎君) 今回の高額療養費の見直しによりまして、保険料負担がその分だけ減少することになります。これは事業主負担でございますとか、それから国庫負担を除きました被保険者本人一人頭で申し上げますと、政府管掌健康保険では年に三百円程度、それから健保組合では年に四百円程度、国保では年に四百円程度ということでございます。

○小池晃君 高額療養費制度の対象となるというのは一体どういうケースか。これはもう御承知のとおり、悪性腫瘍で手術するとかあるいは心臓病や脳卒中で急性期治療をやると、一家の大黒柱が突然非常に大変な病気になるという事態ですね。そういうときに、経済的な負担までさらにかぶさってくるということが、果たしてこんなことで救いがあるのかということだと思うんです。
 厚生省の答弁では医療を受ける者と受けない者の負担の公平というふうに盛んにおっしゃっておられました。ところが、先ほどお示しいただいた数字を見ても、この高額療養費制度、今回の改悪の部分、保険料負担に置きかえると年間せいぜい三百円から四百円程度だということになるわけですね。
 これは重い病気になったときの負担軽減のためにこの程度の保険料負担をするということに被保険者がクレームをつけたり、言ってきているんだろうか、私、こういうことに不公平感を持つんだろうかと。そんなことよりも、むしろ大変な病気になったときのために、きちっとしたセーフティーネットとして、定額の上限として安心できる金額が示されている方が国民にとってみればずっと安心できる制度なんじゃないだろうか。医療保険制度の本旨に照らせばそちらの方がずっと意味があることなんじゃないだろうかというふうに私は考えるんですが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(津島雄二君) 何度も御答弁しておりますが、この医療保険というものはみんなで負担を分かち合う制度でございます。高額な医療の費用も被保険者などだれかが負担をするものでございまして、医療を受ける方にも応分の負担を分かち合っていただくということは、これは基本的に必要でございます。
 今、参考人から御答弁いたしましたように、平均的な高額医療費を払っておられるケースで、今回の改正によりまして負担がふえるのが三千四百円程度であると。高額な医療を施していただいて、そして受けた側も応分の負担をするという場合に、その程度の金額もお願いしてはいかぬという考え方には私は同意することはできません。

○小池晃君 私、これこそ平均で論じるべき問題じゃないと思いますよ。これはやはり大変な事態なわけです。一千万円を超える医療費がかかることだって、例えば厚生大臣、あなただってそういうことになる可能性だってあるわけです。そういうときのための安心の制度として高額療養費制度があるわけですよ。だから、平均でこの程度だから大丈夫だという議論は、これこそ私、通用しないと。
 やっぱりセーフティーネットとして、幾ら大変な病気になっても定額であるんだということの意味というのは極めて大きいだろうと。それを、全体で分かち合うことを何も私は否定していません。むしろ高額療養費制度としてきちっとした定額で設定されていることの意味が極めて大きいんじゃないかと聞いているんですが、いかがですか。

○国務大臣(津島雄二君) 先ほどの御答弁を繰り返すほかはないと思いますが、例えば月に一千万円という非常に高度な医療サービスを受けた。その場合に、あなたは十六万円を払うことに反対するか、ちゅうちょするかということでございますが、若い方々に一千万円を払っていただくより、私は十六万ぐらいは払わせていただきたい、私はそういうふうに思っています。

○小池晃君 一人が一千万払うわけじゃないんですから、そういうデフォルメした議論は私はやめていただきたい。分かち合えばそれほどの大きな負担ではないじゃないかということはお示ししたとおりであります。
 負担のことをおっしゃるけれども、これだけじゃないんですよ、高額療養費を受けるようなケースというのは。差額ベッドが取られたり、保険外負担も大変大きいケースが多いわけです。一方で、収入の道を断たれるというケースもあるわけです。
 そういうときに、きちっとした上限が設定されていることの意味は、これはセーフティーネットとしての医療保険の本旨に照らして私は大きな意味があるだろう、それを何で崩すんですかというふうに言っているのに、まともにお答えにならない。私は、重病に苦しんでいる、本当に心ならずも重病になった患者さんにコスト意識を持てと言ってこういう負担を押しつけるやり方というのは到底認められないというふうに申し上げたいと思います。
 その上でさらに、高齢者の医療費の問題について議論する際に厚生省は、老人の一人当たりの医療費が若人の五倍というお話を出される。この内訳をどう見るかということなんですが、これは五倍といっても、内訳を見ますと、一日当たりの診療費は外来で一・二倍、入院では〇・九倍です。それから、一件当たりの受診日数を見ても、外来は一・四倍、入院は一・三倍とほとんど変わらないわけですね。
 一件当たりの診療費、それから受診率で比較するとどうなるでしょうか。

○政府参考人(近藤純五郎君) 一件当たりの医療費でございますが、入院で一・二倍、それから外来で一・六倍でございます。それから、受診率では入院で六・二倍、外来で二・六倍でございます。これは平成十年度の医科の医療費の実績でございます。

○小池晃君 老人医療費が若人の五倍というふうに言うと、何か五倍濃厚な医療を受けているような印象を与えるんですが、決して実態はそうじゃないわけですね。一件当たりの診療費で見ると、実際には入院で一・二倍、外来で一・六倍。日数も余り変わらないわけです。違うのは受診率だと。
 これはどういうことかというと、一人当たり老人医療費を、健康な人も病院にかかっている人も全部一緒くたにして高齢者の人口で割っているからこういう数字が出てくるわけで、当然、若人は病気の人が少ないですから一人当たりの医療費は少なくなるわけです。これは生物学的に当然のことでありまして、十人の老人と十人の若人がいれば、老人の方に五人病気の人が多い。これはいわば当たり前のことなんですね。
 この格差が問題だとおっしゃるのであれば、この格差をどうやって減らすのかということであれば、この受診率がどうなんだと。年をとっても病院に行かなくても済むように健康づくりを進めることだ、それから、がんの早期発見とか、あるいは心臓病、脳卒中の予防のための早期治療、コントロールをきちっとやっていく、これこそ求められているんじゃないだろうか。
 それなのに、今回の制度改悪のように自己負担を強化して病院に対するアクセスをしにくくする、病院にかかりにくくするということは、老若格差の是正という点からいっても、むしろ早期発見、早期治療をおくらせて、逆に、結果として老若格差を広げることになるんじゃないか、まさに逆行じゃないかと思うんですが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(津島雄二君) しばしば答弁をしておりますように、高齢化の進展により老人医療費がどんどんふえておりまして、これが高齢者はもとより若い方々に非常に大きな負担になっている。つまり、高齢者の療養費を健保組合あるいは政管健保で払っていただいているわけでありますが、相当大きな負担になっている。これは恐らくあなたもお認めになると思います。
 このような現状を踏まえて、今回の改正は、老人の一部負担を見直し、定率負担制を導入して若い方々とのバランスを考慮していただきたい、若い方は、御本人は二割、御家族は三割自己負担をしているわけでありますから、そのバランスも考えていただきたい、こういうことをお願いしているわけであります。この一割負担の導入に当たりましては、定額の月額上限を設け、高齢者の方々に無理のない範囲内で現行制度とほぼ同水準の負担をお願いしている、それからまた、低所得者の方々の入院時の負担につきましては現行制度より限度額を引き下げるなど、高齢者の状況に応じたきめ細かな配慮を行っているところでありまして、お年寄りにとって必要な受診が抑制されるということにはつながらないと考えております。
 ちなみに、老人医療費は、昭和四十八年に老人医療費無料化制度が創設をされてしばらくやってまいりましたが、これを改めて一部負担をお願いする直前の状態で、今の委員のおっしゃる生物学的な状況、つまり若い人に比べてどのくらい医療費が多いかということは大体五倍でございました。その後、自己負担をお願いして今日まで来ておりますが、この数字は変化をしておりません。

○小池晃君 だから、そういう自己負担を強化するやり方が効果がないということが明らかなんですよ。
 さらに、お年寄りの医療費を抑制する必要があるというふうにおっしゃるんですが、将来の医療費推計の問題についてちょっとお聞きしたいと思うんです。
 九七年九月の厚生省の推計では、二〇二五年の国民医療費というのは百四兆円でした。この国民福祉委員会の調査室の資料にもその資料が載っております。ところが、これが最近大きく変わったんですね。先ごろ社会保障の有識者会議に提出された最新推計では八十一兆円だった。この三年間で二十兆円、二〇二五年の国民医療費が減少した。この理由は一体何でしょうか。

○政府参考人(近藤純五郎君) 将来の推計でございますので、現状を起点といたしまして、現在の医療費の伸び、こういうものを見込んだ上で推計をするということで、宿命的に医療費推計というのは時点時点で異なってくるわけでございます。
 しかも、二十五年先を見込むわけでございますので、ある程度の狂いというのはお許しいただきたいと思うわけでございますが、前回と今回での違いで申し上げますと、医療費全体の伸びというのが、平成九年の推計時点では制度全体で約四%毎年伸びるという推計をいたしていたわけでございますけれども、今回の推計では直近の実績も踏まえまして見直しを行っております。制度全体といたしまして三%伸びるということで、一%の差があるわけでございます。これを機械的に伸ばすということでございますので、二十五年間で見ますとやはりこの程度の差が出てくるのはやむを得ない、こういうふうに考えております。

○小池晃君 三年前は医療費の伸び率は年間四%、それが三年たって三%になった。
 なぜこんなふうになっているかというと、今御説明があったように、最近の一人当たり医療費の伸び率が鈍ってきているということだと思うんです。国民医療費全体についてももちろんそうだし、老人医療費についてもやはり一人当たりの医療費の伸びというのは鈍ってきているという実態があるわけです。
 この一人当たり医療費の伸びに加えて、さらに厚生省の推計では、人口高齢化による医療費全体の伸び率への影響も、これまではピークにあったけれどもこれからは次第に下がっていく、今後は高齢化による医療費の伸び自体も鈍化していくというふうにされていると思いますが、よろしいですか。


○政府参考人(近藤純五郎君) 確かに、御指摘のとおり、これから人口の高齢化に伴う影響というのは次第に鈍化するだろう、こういうふうに考えておりますけれども、しかし当面はかなりの急速な勢いで高齢化が進みますので、若干低下するということではございますけれども、高齢化によります医療費の増加というのは今後二十年間以上の長期にわたって続くだろう、こういうふうに見込んでおりまして、その累積効果というのは大きなものになる、こういうふうに考えております。

○小池晃君 高齢者一人当たりの医療費の伸びというのは鈍ってきているわけであります。さらに、高齢化による医療費全体の伸び率自体は今後鈍化していく。今おっしゃったように、高齢者の数自体はもちろんふえますから、累積すれば額はふえる、これは当たり前であります。しかし、額はふえるけれども伸び率は低下すると。
 これは、高齢者の数がふえるということ自体は当然喜ぶべきことであります。数がふえる分までそれを補う形で医療費を抑制しようとする、そのために、これ以上政策的に高齢者一人当たりの医療費の伸びを抑制していくということは、これは医療の質の低下を招くのは間違いないというふうに思うんですが、いかがですか。

○国務大臣(津島雄二君) 委員は、医療費全体の額が減っていけば、減っていけばというか伸びが鈍化をすれば医療の質は低下することは間違いないとおっしゃいましたが、私はそういうふうには思っておりません。
 むしろ、本当に必要なところに良質な医療を提供するという努力こそ限られた医療資源を最も国民にとって望ましく利用する道であって、十把一からげに総額が幾らであってその伸びが幾らであるという議論はちょっと粗過ぎるのではないかと思っております。

○小池晃君 私はそのような粗い議論はしておりません。
 私は、高齢者一人当たりの医療費の伸び率は既に鈍ってきているじゃないかと。そういう中で、今政策目標として、高齢者の数自体はふえるからその分も含めて下がるように、逆に今よりももっとその伸び率を低下させるということが、これ以上高齢者の一人当たりの医療費の伸び率を抑えるということは医療の質の低下につながるんじゃないかという危惧を表明しているんですが、いかがですか。

○国務大臣(津島雄二君) 当委員会でけさ大変に厳しい議論が専門家であられる委員との間でございました。
 今井委員が先ほど指摘されましたように、我が国の医療の現場においては、例えば病床数がどうであるとか、あるいは入院日数がどうであるとか、あらゆる面でこれは改善を今しなければならないところに来ておるわけであります。そのことを抜きにして、今のままで医療費が伸びていくのがいいのであってその伸びが抑制されるのは質の低下につながるという議論は、私は粗過ぎるのではないかと申し上げておるわけであります。

○小池晃君 私は伸び率を何が何でも伸ばせと言っているわけじゃなくて、数がふえることは当然のことであるからその分は見込んだ形にしなければ、それすら割り込むような一人当たり医療費の抑制をすれば医療の質の低下がさらに進むだろうというふうに言っているんです。
 さらにお聞きしたいと思うんですけれども、健保財政の問題でありますけれども、健保財政の悪化が言われておりますが、その最大の原因は一体何か。

○政府参考人(近藤純五郎君) 健保財政につきましては、平成十一年度に大きな赤字決算になっていっているわけでございます。政管健保、健保組合それから国保、いずれにおきましても全体として大変厳しい財政状況に置かれているわけでございます。
 個々の保険者にとっていろいろ原因はあろうかと思うわけでございますけれども、主な原因として考えられますのは、先ほど来議論になっております高齢化の進展によりまして老人医療費の拠出金が大きくなっている、こういうことでございます。これまでは経済成長という形で保険料率を上げなくても保険料はふえてきた、こういうのを踏まえた上での運営であったわけでございますけれども、長い経済の低迷が続きまして、最近ではどちらかといえば賃金が下がってきている、こういうふうな状況にあるというのが大きいわけでございますし、被用者保険について言えば、さらに被保険者の減少まで出てきている、こういうのが主な理由ではないのかな、こういうふうに推測をいたしております。

○小池晃君 これは、政管健保にしても組合健保にしても国保にしても、保険料収入の低下、いわば被保険者数が減少している、加入者が減少しているという問題、それから標準報酬月額も低下をしている。年金もそうですけれども、社会保険全体そういう傾向にあるわけですけれども、老健拠出金の増大というのももちろんありますけれども、やはり昨今の健保財政の悪化の一番大きな原因というのは、これはまさに日本経済の低迷、景気が悪くなっている、労働者の生活が弱っている、中小業者の生活も弱っているということが最大の原因であるということは明らかだと思うんですね。
 そういう中で、今政府がやるべきことは一体何だろうかというふうに考えれば、これはまさに弱っている労働者や中小業者を支えることなんじゃないか。そういう点でいえば、社会保障制度の所得再分配機能を強めると。やはり給付水準を切り下げたり、あるいは負担を強化するというやり方は、まさにこの健保財政の現状に照らしても、私はこれは逆行ではないか、逆効果しか生まないのではないかというふうに考えるんですが、いかがですか。

○国務大臣(津島雄二君) 健保財政の悪化が日本経済の現状と深く関連をしている点は、珍しく委員と私と認識は一致しておるわけであります。
 こういう状況の中で一体何が一番必要かといえば、それは確かに勤労者もまた経済界も全体として活力を取り戻してもらう、早く取り戻してもらうことが大事で、そのために私どもは日本再生計画等を打ち出して一生懸命努力をしているところでございます。
 しかし、もう一つ大事なことは、この社会保障制度が、毎度申し上げておりますように、二十一世紀の高齢化の到来に備えて持続可能な制度としてしっかりと機能していくようにしなければならないということでございまして、そのために、抜本改革の歩みが遅いと大変おしかりを受けているわけでありますが、私どもは可能な限りこの点についても努力をし、国民にもお訴えをしておるわけでありまして、そういう中で今回のお願いをしている改正は、日本の社会保障制度をみんなで少しずつでも支えていこうという考え方に沿ったものであると受けとめておるところでございます。
 現役世代を対象として高額療養費制度の見直しもしていただいて、将来給付を受ける方とこれを支える方と両方が理解をし合って、双方の立場が公平であるという国民の支持を受けながら、これからの社会保障制度の確立を目指してまいりたいと思っておるところであります。

○小池晃君 分かち合う、分かち合うというふうにおっしゃるけれども、明らかに財源から見ても果たしてこれは分かち合っているんだろうか。
 例えば、製薬企業大手十五社、この三年間の経常利益、一〇%伸びているんです。そういうことに果たしてメスが入っているんだろうか。それから、老人医療費の負担額の推移を見ても、昭和五十八年から見て、国庫負担の額というのは四四・九%から三四・四%まで低下をしている。こういう中で本当に分かち合っているんだろうか、負担が国民や高齢者に押しつけられているだけじゃないかというふうに思っているのが国民の率直な実感なんじゃないだろうか。
 抜本改革というのであれば、そういう国の財源の使い方、あるいは製薬企業が、全体として医療機関も厳しい経営を強いられ、患者さんも厳しい生活を強いられている中でひとり勝ちとも言えるような状況がある、このことを放置していいのか、そういう問題に果たして抜本改革というメスが入っているのか。これは大変疑問が広がると思うんですよ。
 私、今回の改悪というのはまさにそういったことをなおざりにして国民に負担を押しつける、お年寄りには定率負担という、所得に関係なく一律に負担を押しつけるというやり方、そして現役世代に対しても高額療養費制度の改悪ということで、セーフティーネットとしての安定性を極めて損なうような改悪をやる、こういうことでは社会保障に対する将来不安は高まるばかりだというふうに思います。今回の健康保険法の改悪というのは、やはりそういう点で大変問題がある。
 それからさらに、私、最後に申し上げたいのは、施行日時がこれ一月一日なんですよ。今までこういう医療改悪、一月一日施行というのはあっただろうか。私、なかったと思うんですね、こういうやり方というのは。来年の一月一日、どういう日か大臣もよく御存じだと思いますけれども、二十一世紀のまさに始まる日であります。二十一世紀のまさに始まる二〇〇一年の一月一日に、お年寄りにとっては大変過酷な定率負担が始まる。私は、こういうやり方は断じて、本当に血も涙もないやり方じゃないだろうかというふうに思うんですね。
 きょうは健康保険法の問題に絞らせていただきましたけれども、次は医療法の問題、医療供給体制の問題も議論させていただきたいと思いますが、きょうの議論を通じて私は新たな問題も浮かび上がってきたというふうに思っています。これは、やはり衆議院のようにああいう強行採決などということは断じてさせるべきでないし、徹底的に時間を尽くして討論すべき問題だということがますますはっきりしたというふうに思っています。
 引き続き議論をさせていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。

○委員長(中島眞人君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。
   午後零時一分散会

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