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日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

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151-参-共生社会に関する調査会-4号
2001年02月21日

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 ありがとうございました。
 育児休業の問題について最初にお聞きをしたいんですけれども、厚生労働省が女性少年問題審議会の建議に基づいて今国会に育児休業、介護休業法の改正案を提出しております。
 この建議を見ると、給付水準が二五%から四〇%に引き上げられたと。休暇を取得した女性の割合が五六・四%と半数を超えるに至ったというふうに述べているわけですけれども、これは先ほど永瀬参考人もお話ありましたけれども、もともとの母体が非常に少ないというか、学卒後の約八割が正社員として勤務をするんだと。結婚を機に四割程度が専業主婦となる。四割程度が正社員として残って、その六、七割が出産を機に専業主婦となるということで言えば、働き続ける女性というのは約一割。そのうち結婚しない方もおられるし、子供を産まない方もおられるということで言えば、有資格の女性全体で見た場合に、過半数が育児休業を取得していると言っても、出産年齢の女性から見ると本当にごくわずかだと。非常に占める割合は低いんだと思うんです。
 最初に都村参考人にお伺いしたいんですけれども、参考人もお書きになっているんですけれども、我が国の育児休業給付の水準、これはGDP比で〇・〇〇五%と。フィンランドとかスウェーデンと比べて二百分の一という指摘をされていますけれども、この大きな開きの原因が一体どこにあるのか。
 それから、支給期間の問題もあると思うんですけれども、これも国によって違いがありますけれども、どのぐらいが適当であり、どういうふうに改善すべきなのかということについて御意見をお聞かせ願いたいと思います。

○参考人(都村敦子君) お配りしました図表20の資料に書いてあります「季刊 年金と雇用」の一九九九年五月号です。そこで家族政策の国際比較ということで、育児休業の先進諸国の導入年、それから育児休業給付がつくかどうかという資料も一覧表として出していますので、また御参照いただきたいんですけれども、導入された年次がまず違います。それから、先ほど取り上げましたように育児休業給付の給付率が違います。
 給付率というのは、育児休業給付が休む前の給与の何%の所得保障がなされるかということで、日本は四〇%ですけれども、先ほど申しましたように北欧諸国は八〇%とか高いわけです。それが違うということと、それから取得率が、前もってお配りしました人口動態ショックを緩和する方法の最終ページのところに書きましたように、先進諸国では受給資格要件を満たしているほとんどすべての親が育児休暇を利用しているということがあるんですけれども、日本の場合はやっと五〇%を超えたというところです。
 ですから、取得率が違うということ、それから給付率が違う、あるいは導入年が違うということで、外国でも、児童手当なんかのGDP比に比べると育児休業の対GDP比というのは今ふえつつあるところなんです。増加しつつあるところなんですけれども、ここに書きましたように八年間でそれぞれの国について上がってきています。それは、取得する者がふえてきたとか給付率の改善が行われているとかいうことがあるので、日本は導入された年次が若いので、そのためにまだ低いんですけれども、若い割には、労働省が大変努力されて、二五%をことしの一月からの四〇%へのレベルアップというのは、私は大変大きな改善であるというふうに評価しております。なかなかこういうふうに急速に制度というのは変わらないんですけれども、これは非常に大きな改正で、これによってことしからまた取得率は上がるだろうというふうに思います。
 なぜ育児休業を取得しないかというのは、一位は職場の雰囲気というのがあるわけです。それから二番目に多いのがやっぱり経済的な理由ということで、若いカップルの場合は、二人で働いているときに一人が一年間育児休業をとって所得がゼロになると、家族は三人になるので厳しいわけです。ですから、経済的理由でとらなかったという人が多いわけですけれども、それが休む前の四〇%の所得保障がつくということになると、これから取得率はもう少し上がるんじゃないかと。
 ですから、先ほど提言しましたように、さらにもう一歩給付率を将来的には引き上げるように御努力をいただきたいというふうに思います。
 以上です。

○小池晃君 その育児休業の問題、永瀬参考人にもお伺いしたいんですけれども、これをどう変えていくべきか、どの点を改善していくべきかということなんですが、参考人が事前にお配りいただいた中にもあるんですけれども、育児休業法施行前と施行後で、それ以前に結婚した人とそれ以後に結婚した人を比べてどうなったかと。結婚後の就業の継続はふえるけれども出産自体はふえていないと、実際の出産と出産後の継続を引き上げる効果はいまだ生み出していないんだという御指摘がされています。
 全体をどう変えていくべきかということと、参考人が指摘されているこの点で、引き上げていくために育児休業制度のどこをどう改める必要があるというふうにお考えかをお聞かせ願いたいと思うんです。

○参考人(永瀬伸子君) これは九七年の調査を使ったもので、その後何年かたちましたので少しは変わった可能性もありますが、九七年時点で見た限りでは、育児休業が導入されたことで、ああ、勤め続けられるかもしれないなということで結婚後の就業継続はふえた。しかし、現実問題として、いざとろうかなと思ってみると、やはりとって働き続けることにはなかなか支障があるということで出産自身をふやすには至っていない。
 ちなみに、育児休業の取得率が大変高いと言われる公務員だけを取り出しますと、公務員では、実は専業主婦よりもさらに早く子供を産んでいるんですね。ですから、必ずとれそうだということであれば若いうちに産もうということにもなるのかもしれませんが、とりにくいということであれば、なるべく勤めて、やめて産むということになるのだろうというふうに思います。
 労働省の調査では、育児休業の取得率というのは四五%ぐらいですか、最新の調査はもう少し上がった数字が出ていたような気がしますけれども、女性雇用管理調査。これは、産んだときに企業に籍を置いていた人がとったということで、残りは産休明けで出てきたと、そのようなことですので、産む前に無理そうだなと思ってやめてしまった人というのは出てこないんです。それからあと、妊娠中まで勤めていたけれども申請しなかった、つまり妊娠でお腹が大きくなってやめようと思った人も出てきません。
 ですので、全体においてどのくらいとっているかというのは実はほとんど調査がなくて、この国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査でわかったことなのですが、それによりますと、九二年からの出産、九五年からの出産というので見ていきますと、やはりだんだん取得率は上がってはおります。上がってはいるんですが、一番高い九五年から九七年の出産でもたしか九%だったと思います。つまり、生まれた子供の九%程度がこの育児休業を利用しているということです。
 ですので、四〇%に改善されたというのは、私もああ随分改善されたんだなとちょっとびっくりしましたけれども、国際的に見て、北欧諸国に比べれば低いかもしれませんが、これはそう悪くはないというのが私の印象です。
 いや、むしろお金よりも時間が要るのかなと。その時間というのは具体的にはどういうことかというと、例えば育児休業というのは一たん明けると、子供が病気になったからまたもう一度育児休業にしますとか、そういうことはなかなかできないんです。それから、保育園の入園が三月がやりやすいので早目に切り上げちゃう人が多いんですけれども、じゃその部分というのを少し短時間勤務で振りかえさせてくださいと、子供がもう少し大きくなるまで。例えば、一年分を短時間で削ると倍ぐらいに延びるかもしれませんけれども、そういうふうな融通というのはないのです。ですから、何度かとるとか、それから短時間パートに振りかえてそれを少し長い期間にするとか、そういうような融通性というのはございません。
 それから、もう一つは保育園との連結の悪さです。四月に枠が大変広がるのでそこで入れなくてはといって早目に切り上げてしまうといったようなことです。その辺で柔軟性が必要かなというふうに思います。

○小池晃君 引き続き永瀬参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほどのお話の中で、百三万、百三十万のいわゆる主婦の優遇策の問題で、これを児童のケアとか高齢者ケアに対する考慮というふうに置きかえるべきだという御提案が大変興味深かったんですけれども、それを行うことによって具体的に、だれにどういう階層にどのようなメリットがあるのか、また逆にデメリットが生じるような階層はどこなのか、その辺をちょっとわかりやすく説明をしていただければと思うんですけれども。

○参考人(永瀬伸子君) 都村参考人の方からおっしゃっていた児童手当ですとかそういった給付を大幅に、つまり本当はもっと全体を大きく変えなくてはいけないのですが、そのための提案を全く自由にしてほしいというのであればそれもまた別にあるかもしれませんが、それはなかなか難しいであろうということを考えて手直しという点で考えるのであれば、子供を養育している、あるいは要介護者がいるところだけに限るというのがいいのではないかという、そういうことなのです。そして、それでどういうことになるかというと、子供が一定年齢になった世帯については増税になります。あるいは、要介護者がいない世帯については増税になります。
 ただし、税はどういうふうに決めるかというと、同じ生活水準だったら同じぐらいの負担ということだと思うのですが、同じ収入で二人が食べていくのと、つまり夫と妻が食べていくのと夫だけが食べていくのだったらば、夫と妻が食べていく方が生活水準が下がるだろうという、そういうことだろうと思います。
 特に片方が働けない要因があるんだったらば、確かに生活水準は下がるだろうと。それから、仕事がないとか身障者のケアをしているとか、そういったことで働けないということだったら生活水準が下がるからそこを考慮すべきだということですが、そうではなくて、自分の選択として、仕事もあるけれども、家にいた方がむしろ生活水準が高いというふうに自分で考えて自宅にいることを選択したところについては、それはその方が生活水準が高いから家にいることを選択したわけですから、それについて税をカットするというのはややおかしい。つまり、余暇を楽しんでいるのかもしれませんし、あるいは外で働いていたら手づくりできないようなものを家庭内でつくって生産している。お金ではないかもしれないけれども、実物として生産しているわけですから、そういうところではむしろ税は本当はふえるのが、同じ生活水準なら同じ税という議論になるわけです。
 ですので、そこの部分では増税になりますけれども、それはそういう生活を選択したということに対する負担であるので、働けない事情がないのであれば、また、夫の所得の高い層の方がその影響というのは大きいわけですけれども、世帯に与える税額の影響というのは大きいわけですけれども、余り、ということです。

○小池晃君 最後に、男女の賃金格差の問題が先ほどから出ておりますけれども、おとといの日経新聞でも、以前参考人で来ていただいた鹿嶋編集委員が、賃金格差が今逆に広がっているんだというような指摘もされています。
 そういった中で、パートの賃金の問題、パートの壁の問題を解決することが前提としてはあると思うんですけれども、やはり今賃金格差が逆に広がっているような状況の中で、パートに対する同一労働同一賃金、平等待遇の確保あるいは不利益処遇に対する法的な規制、こういったものが必要になってきているんではないかというふうに私どもは考えているんですけれども、この件について永瀬参考人の御意見をお聞かせ願えればというふうに思います。

○参考人(永瀬伸子君) この問題は法律の問題だろうというふうに思うんです。
 私は経済学が出身でございますので、経済学で考えた場合には、生産性が高いところには高い賃金がつくであろうというのが基本的な経済学の考え方です。しかしながら、有能な方等が自主的にインセンティブを阻害してしまう、働く意欲を阻害されてしまうのであれば、その結果、高い賃金はつかないというのが経済学の理論です。
 同一賃金を法律で施行することが果たしてどのくらいの効果があるかということで、生産性の差があるのにもかかわらずそうした法律をしくことがあったとすると、それはいろんな意味で回避されてしまう可能性もあるのですが、実効を伴わない可能性もあるわけですが、経済学の立場としては、やはり同じような賃金、同じような労働に対しては当然同じような賃金がつくような、そういう環境を整備すべきであると。それを法律でそうするというんではなくて、例えばそういうふうに人々が能力を発揮できるような、そういう環境を一つは整備するということであるかなと思います。
 それから、あと具体的には、経済理論どおりに動いておりませんで、さまざまな賃金制度等があって、私は以前、日経連か何かが出している賃金のつけ方のような本を読んでああっと思ったんですけれども、それは、総合職にはこういう賃金のつけ方をしなさい、一般職に対してはこういう賃金階段にしなさいということが書いてありまして、なるほどこれは一たん一般職になったらばもうその賃金階段でしか上がっていけないんだなということを明確に提示している本なのです。そうすると、同じ能力であったら本当は賃金が上がるはずだというふうに経済学が思っても、そういう制度をつくってありますと、そう簡単には別の階段には移れないのだろうというふうに思います。
 それと同じように、今度パートについては全くそれとは別に相場で採用されているのではないかと思うのですが、そういった方々がより昇進経路に乗れるためには、法律もあるでしょうけれども、使用者側、それから労働組合や労働者側、そしてまた政策全体でやはりそういう社会に変わっていかなくてはいけないのだということを認識して変えていくのかなという気がいたします。

○小池晃君 ありがとうございました。

 

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