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151-参-厚生労働委員会-7号
2001年04月05日


○小池晃君
 日本共産党の小池晃です。
 まず早速、厚生労働大臣にお伺いをしたいと思うんですけれども、今回見直しがなされるわけでありますが、そもそも今までの欠格条項は一体どのような問題点があったのか、どこがどのように問題だというふうに御認識されているか、お答え願いたいと思います。

○国務大臣(坂口力君) 現在の絶対的欠格事由につきましては、例えば目が見えないとか、あるいはまた耳が聞こえない、あるいはまた口がきけないといったような人には免許を与えないといった形で規定をされておりました。ある障害に該当した場合には、その本人の能力や障害を補う手段の状況等のいかんにかかわらず、一律に免許等が与えられないことになっておりました。

   〔委員長退席、理事亀谷博昭君着席〕

 したがいまして、現行制度におきましては、目、耳、口の障害があることのみをもって資格を取得する可能性が失われることになっており、障害者の方に対して資格等の取得を目指す機会を奪ってしまう結果になっていたというふうに考えております。
 先ほどからも申し上げておりますように、障害の部分に着目をして、障害があればその方が他に大きな能力をお持ちになっていたとしても、その障害の一事をもって資格を与えないということにしてきたというところに今までの大きな問題があり、ここを今回乗り越えて、障害をお持ちではありますけれども、その障害は障害としてそれは社会参加できるようにお互いに乗り越えていかなければなりませんが、それ以外のそのすぐれた能力というものをひとつ認めていく、その能力を発揮していただく場を提供していくということがより大事というところに今回の大きな特徴があるというふうに思います。

○小池晃君 欠格条項がなぜ問題なのかということでは、障害を有している、その属性のみをもって免許を与えない、幾ら能力があっても免許を与えない、これがすなわち、やはり憲法で言うような法のもとの平等とか、あるいは職業選択の自由を侵すようなものだからだというふうに思うんですね。
 さらに、欠格条項を撤廃するだけではなくて、障害者の全面参加ということであればより積極的な社会参加ができるような条件づくりが私たち必要であるというふうに思っておりますが、その前提として、障害を理由としたあらゆる欠格条項を撤廃する必要があるというふうに思っております。
 九八年には、我が党の寺前巌衆議院議員が衆議院の予算委員会でこの見直し検討を急ぐように求めました。今回の見直しについても第一歩であるというふうに受けとめておりますが、幾つか見逃せない問題点があるというふうに思っておりますので、きょうはそういう視点から質問させていただきたいというふうに思います。
 まず、改正案の条文なんですけれども、先ほども話題になっておりましたが、新たな条項として「心身の障害により業務等を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの」と規定しておりますが、これは障害のあるなしでなく業務等を適正に行えることができるかどうかということで免許を与えると、そういう判断規定にすべきであると思うんですが、なぜ「心身の障害により」と加えたんでしょうか。

○政府参考人(伊藤雅治君) 免許または業の許可に係る業務を適正に行い得ない要因といたしましては、心身の障害のほかにも一時的な病気やけがなどさまざまなものが想定されるわけでございますが、治癒に、比較的短時間に治るような一時的な病気等については欠格事由とする必要がないものと考えられるわけでございます。
 このように欠格事由に該当しない病気等の事情を有する申請者にとりましては、業務を適正に行い得ない要因のうちどのようなものが欠格事由となるのかが明らかでなければこの申請を行うかどうかの判断が困難な場合もあり得ることから、この「心身の障害により」という文言を規定することによりまして、欠格事由を可能な限り明確にしたいという考え方に基づくものでございます。

○小池晃君 明確にしたいという意図がわからないわけではないんですけれども、今回の見直しが障害者の社会経済活動への参加を促進するという趣旨であるとすれば、例えばこういう言い方にできないのか。「心身の障害により」ということを除いて、業務を適正に行う上で必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことが著しく困難な常況にある者として厚生労働省令で定めるものと。常況という言葉は、常況の常は常というような言葉を使って、これは成年後見制度なんかであるようなんですけれども、一定の時間的な要素も盛り込んだ表現にして、そういうように置きかえれば、無限定に対象拡大することなく、同時に一定の明確な基準ということになり得るのではないかと私たちは考えるんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(伊藤雅治君) 今回の改正法の規定ぶりにつきましては、関係審議会なりいろいろ関係の検討会等の意見を踏まえまして、そして内閣法制局とも綿密な協議の末にこのような形にさせていただいたわけでございます。委員御提案の趣旨は理解できますが、何とぞこの今回の規定ぶりで御理解、御了解をいただきたいと考えているところでございます。

○小池晃君 この「心身の障害により」という言葉が盛り込まれていることについては、関係団体からもいろんな意見が出ているわけです。これは、今回の改正では実現できなくても、何らかの形で今申し上げたことを生かすようなことをぜひやっていただきたいというふうに思っております。
 それからさらに、法案そのものではない、法の条文そのものではないんですが、厚生労働省が示した改正試案の中では、省令として視覚や聴覚や言語、精神、こういった障害の機能を特定する規定を用いて相対的な欠格事由を定める予定だというふうにされております。法律の方では障害の特定がされていなくても、省令で障害の部位、機能を特定したとすれば結局同じことになりはしないかというふうに考えるのですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(伊藤雅治君) 今回の改正は、心身に障害のある者がその業務遂行能力に応じて免許の取得等ができるようにするものでございますが、国民の安全の確保という観点からは、業務の適正な遂行を確保するという観点もまた必要でございます。
 このため、各資格制度等につきまして、関係審議会の御意見をいただきながら慎重に検討を行った結果、国民の安全の確保の観点から真に必要な事項について相対的欠格事由として残すことになったわけでございます。
 なお、絶対的欠格事由と異なり、省令で規定される障害を有している場合であっても業務遂行能力があると認められる場合は免許等が付与されることになることから、現行と同じであるとの御指摘は当たらないものと考えているわけでございます。

○小池晃君 これは、今御説明があったわけですけれども、省令で特定の機能が明示されているとやはり差別につながるのではないかとか、あるいは社会参加を妨げるのでないかという障害者団体からの懸念は出ているわけです。

   〔理事亀谷博昭君退席、委員長着席〕

 やはり、私は省令を作成するに当たって、こうした不安に十分配慮するような、そういう表現にもう一歩努力できないものか。あるいは、運用において、今おっしゃったような趣旨がきちっと伝わって、これはあくまで一律に機能が障害されていればだめだというんじゃなくて、きちっと一つ一つの機能について個別的に検討していくんですよということが十分伝わるような、そういう配慮がなされるべきと思うんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(伊藤雅治君) 御指摘のとおりだと思います。
 個別に免許を付与するか拒否するかということを検討する場合には、省令で今申し上げたような観点で書くといたしましても、なかなか個別事例の判断に当たりましては難しい問題が伴うことが予想されるわけでございまして、私どもといたしましては、今後この制度の運用に当たりましてはできる限り個別にその人の能力を見まして、そして今回の改正の趣旨に沿った運用をしていくということが何よりも重要ではないかというふうに考えているわけでございます。

○小池晃君 さらに、それでは運用の問題をもう少し細かくお聞きしていきたいと思うんです。
 やはり対象者をある程度厳密に規定することが必要なのではないかと。障害者施策推進本部の対処方針を見ても、欠格、制限等の厳密な規定への改正というふうに言っております。これは法律の問題だと思うんですが、運用に当たっても同じような趣旨が言えるのではないか。やはり、その業務を適正に行う上でどのような能力が必要なのか、どうすれば個々の障害者の能力を発揮できるのかということについて、省令では非常に抽象的なわけでありますけれども、もう少し踏み込んだきちっとした判断基準というものをつくって、それで運用していくことがさらに求められているのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(伊藤雅治君) 先ほども申し上げましたが、障害者の免許取得等の基準につきましては、それぞれの者のこれまでに受けた教育や障害の態様等を個別に判断することが必要であると考えております。
 そのようなことから、御指摘のようなもっと明確な基準を定めることにつきましては、これはそのようなことが必要であるということは御指摘のとおりでございますが、やはり今すぐ非常にクリアカットな基準をつくるということはなかなか難しいわけでございまして、中長期的な課題であると認識しております。私どもといたしましては、当面免許を付与するか否かの判断事例を積み重ねながら、この判断のあり方がより明確となるような、そういう事例の積み重ねを行っていきたいと考えているわけでございます。

○小池晃君 事例を積み重ねながらということでありますと、最初に挑戦する人にとっては、どういう条件であれば実際にクリアしていくのかというのがなかなか見えにくいわけです。ある程度積み重なっていって、こういうのだったらいいんだなというふうになって初めて一定の基準ができるということでは私はどうなんだろうかと。
 この点では、一番どうしたら業務を適切に行うことができるかというのがわかっているのは、私はむしろ現場で努力してきた人たちだと思うんです。欠格条項がある中で挑戦して、いろんな手段を使いながら頑張ってきた人たちだろう、あるいはそれをサポートしてきた障害者団体なんだろうと。例えば薬剤師さんで、口がきけない方で一生懸命薬科大学を卒業してという例が先ほども紹介されていましたけれども、そういった人たちは一体何がそういう場合に適切に行う上で必要なのかということが一番よくわかると思うんです。
 私は、そういう個別ケースを積み上げながらということもやっていきつつ、やはりこうした現場の声、あるいは障害者団体の意見を踏まえて一定の基準をつくっていくという作業を、同時並行になったとしてもガイドラインの策定委員会のようなものをつくるとか、そういう取り組みが必要なのではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(伊藤雅治君) 私どもといたしましては、今回省令をつくってスタートをさせていただきましても、その後いろいろ制度の運用に当たりまして関係の団体、障害者団体も含めまして意見を聞きながら、より的確な運用ができるような制度に心がけていくべきであるというふうに考えております。

○小池晃君 ぜひそういう方たちの声、実際の経験、そういったものを生かすような基準づくりというのを私はやっていただきたいなというふうに思うわけであります。
 それから、個別ケースの検討に当たっての姿勢というか基本的な見地についてお伺いしたいと思うんです。
 先ほども一定のお答えがあったんですけれども、免許をその人に与えるかどうかというときに、できないからだめだというのではなくて、どうしたらできるかという視点がやはり一番必要なんだろうと思うんですね。一つ一つの認定をされていく場合に、業務を適正に行うために可能なあらゆる手段を使って、その上で可能かどうかという見地で判断していくということを、できるだけすくい上げる、できるだけ免許を与えるんだという立場で臨んでいくということをやはり基本に据えていくべきだと思うんですが、いかがでしょう。

○政府参考人(伊藤雅治君) それぞれの資格制度の業務の内容、そしてその人の持っている能力、そしてその利用する補助的な手段が現在の科学技術水準等に照らして妥当なものであるか、それらのことを総合的に勘案して柔軟に対応していくということが基本ではなかろうかと思っております。

○小池晃君 そこで、今出されました補助的手段の問題であります。
 実際の個別ケースの判断に当たっては、補助的手段をどこまで認めるかということが大変大切だと思うんです。厚生労働省の試案を拝見しますとこういう書きぶりなんですね。現に利用している手段やあるいは現に受けている治療だけを考慮するというふうになっているわけですけれども、例えば高性能の拡大読書器とか点字翻訳機とか結構値段も高かったりすると、いろんな理由で現に使っていないけれども、もしそれを使えば業務を適正に行うことができる、そういうケースも幾らでもあると思うんですね。
 私は、この「現に」という言葉の解釈も含めてですけれども、実際にそれを使うことができれば業務を適正に行うことができるということは、そういう立場で配慮していくということが必要なのではないかと思うんですが、この「現に」という言葉の解釈も含めてお願いしたいと思います。

○政府参考人(伊藤雅治君) 「現に」と申しますのは、いわゆる現在の科学技術水準等にかんがみて妥当なものであるかどうかという、そういう意味でございます。

○小池晃君 ということは、ここで書かれている「現に」というのは、その人が現に使っているかどうかということじゃなくて、世の中一般で使われていればいいんだということと理解してよろしいんですね。

○政府参考人(伊藤雅治君) 今申し上げたこと、そしてさらにその人個別のケースに当たりまして、補助的手段によってどの程度その能力がカバーされるかという個別の状況も総合的に判断をしていくということだと思います。

○小池晃君 さらに、この補助的手段の問題でありますけれども、先ほど言ったようにいろんな機械なんかは結構高価であったりするわけです。経済的理由で本人が補助的手段を活用していないという場合に、経済能力の有無で資格取得が決まるということになりはしないか、あるいは、いろんな設備等が地域によって格差があるわけで、それによってその格差が生じはしないかということが大変心配されるわけであります。
 私は、この欠格条項の見直しと同時に、この補助的手段を取得するための公的な支援あるいはその補助的手段を整備するための公的な責任、これがやはり障害者の社会参加を進める上で極めて重要になってきているというふうに、ますます重要になるのではないかというふうに考えるわけですが、いかがでしょう。

○政府参考人(伊藤雅治君) 障害者の資格取得を支援するためには、障害を補う補助的手段の開発や教育機関での障害者に配慮した修学環境の改善が重要であるとの認識をしております。
 御提案の公的支援の問題でございますが、今回の欠格条項の見直しに伴いまして、今後の障害者の社会経済活動への参加の程度等にかんがみつつ、関係者の御意見も踏まえながら検討すべき課題であると考えているところでございます。

○小池晃君 ぜひ、この実際の機器の開発状況とか、あるいは外国なんかはかなり進んでいるわけですから、そういう詳しい専門家とか関係団体の意見も聞いて、どうすれば能力を発揮できるのか、そのためにどういう公的支援が必要なのかということも前向きに追求をしていっていただきたいというふうに思います。
 それから、法案の条文の中で資格取得に関する異議申し立ての規定が見当たらないわけでありますけれども、この異議申し立ての規定というのは必要ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(伊藤雅治君) 今回の欠格事由の見直しに当たりましては、免許申請を拒否された方についてその権利を保護するための手続を整備することが必要と考えております。
 このため、免許申請を拒否しようとする場合には、申請者にあらかじめその旨を通知し、本人が異議を申し出た場合には、厚生労働大臣の指定する職員が意見を聴取することとしているところでございます。
 さらに、実際に拒否処分が行われた場合においても、異議がある場合には、行政不服審査法に基づき、異議申し立てまたは不服審査を行うことが可能でございます。

○小池晃君 さらに、教育あるいは就業のサポート体制の問題をお聞きしたいと思うんですが、医師に限って言いますが、現在、日本の医学部に目の見えない、あるいは耳の聞こえない学生というのは在籍しているんでしょうか。

○政府参考人(工藤智規君) 私ども、大学の学生の入学・在籍状況は大学全体で調査しているものでございますから、視覚障害あるいは聴覚障害の方についての在籍、国立、私立についてしかるべき数は把握してございますが、各学部ごとには必ずしもつまびらかでございません。
 ただ、設置者といたしまして国立大学の医学部について先般照会いたしましたところ、残念ながら在籍者はいないというふうに聞いてございます。

○小池晃君 現在、在籍していないわけでありますが、欠格条項見直しで、やはり大学などの教育機関での受け入れの改善は重要であります。
 先ほどの議論の中でも支援措置はやられているんだというお話がございましたけれども、最近の実績についてちょっと御説明を願いたいと思うんです。

○政府参考人(工藤智規君) 先ほども御答弁申し上げましたように、入学に当たりましても、まず受験がありまして、合格いたしましたら入学後の学習支援、それからキャンパスライフの補助のための支援を行っているわけでございます。
 実際の支援状況ということで、国公私で申し上げますと、国立大学につきまして、例えば拡大読書器等の支援器具の関係の購入予算としまして一千五百万ほどの予算措置がなされておりますが、実際はやりくりしまして三千万ほどの実績もあるわけでございます。そのほかに、身体に障害を有する学生に対する特別の措置、例えば手話通訳の配置でございますとかノートテーカーの配置でございますとかを含めて一億七千万ほどの措置をしてございます。さらには施設の関係で、エレベーター、スロープ、トイレ等の改修、新設等を行ってございますが、それぞれの年によって金額が違いますけれども、平成九年度以降の三カ年で見ますと約九十億円ほどの予算措置を講じているところでございます。
 また、公立大学につきましては、それぞれの設置者が御配慮いただくわけでございますが、その一部について補助をする予算を計上してございまして、平成十三年度では百六十万余りでございます。
 さらに、私立大学に対しましては、バリアフリーのための施設整備の補助、二分の一以内の補助金でございますけれども一億五千万、さらには障害者の受け入れに当たりましてその実績に応じまして補助する仕組みがございますが、それで平成十三年度予算では十二億七千五百万の予算を用意してございます。

○小池晃君 決して十分とは言えないまでも一定のお金が出されていると。
 一方、厚生労働省所管の養成機関における障害者受け入れのための補助金はどうなっていますでしょうか。

○政府参考人(伊藤雅治君) 厚生労働省所管の養成機関に関しましては、障害者受け入れを直接の目的とした補助金交付等の措置は行っておりません。

○小池晃君 これはやはり障害者向けの補助金が厚生労働省所管はないんだと。例えば、看護婦さんの学校とか理学療法士の学校とかいっぱいあるわけで、今回こういった形で欠格条項見直しということであれば、当然やはり厚生労働省所管の学校についての障害者受け入れのための支援を検討すべきだと思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(伊藤雅治君) 御指摘を踏まえて、必要な対応をしてまいりたいと思っております。

○小池晃君 さらに、就職の問題でありますけれども、これは仕事をする上で大変な問題もあるわけです。
 厚生労働省にお聞きしたいんですが、耳が聞こえない人が仕事するために手話通訳者を依頼する場合の国の助成制度、これはどうなっていますでしょうか。

○政府参考人(澤田陽太郎君) 御質問のケースにつきましては、重度障害者介助等助成金という制度で支援を行っております。
 この重度障害者介助等助成金におきましては、聴覚障害者の場合には三級以上等のケースでありますが、そうした方々の雇用管理のために必要な場合には、手話通訳担当者を事業主が委嘱した場合に、委嘱一回につき六千円を限度といたしまして、かかった費用の四分の三を当該障害者が継続雇用されていれば最長十年間にわたって助成することといたしております。

○小池晃君 回数制限。

○政府参考人(澤田陽太郎君) 回数は年二十四回という制限がかかっております。

○小池晃君 これは先日、テレビでも紹介されておりましたけれども、滋賀県内の病院で仕事をされていたお医者さんですけれども、この方は中途失聴者なんですね。患者さんとのコミュニケーションをやるのも全部手話でやって、病院のスタッフが一生懸命勉強して手話を覚えてそれで通訳をやっている。これは全部ボランティアでやっているわけです。献身的な努力なんですね。
 今、厚生労働省の助成制度の御紹介がありましたけれども、年二十四回、だから月二回なんです。とてもこれでは日常的な仕事のサポートには私はならないんじゃないだろうかと。現状はやはり障害を持っている人が、学校に行ってもなかなかままならないし、資格をもしその欠格条項の見直しで取れたとしても、その後の仕事という面ではまだまだいろんな制限がある。サポートが十分にされていない。
 例えば、この手話通訳の回数制限を見直して、助成金制度そのもののあり方を見直して、もっと活用できる制度に拡大するというようなことは考えられないんでしょうか。

○政府参考人(澤田陽太郎君) 現在の手話通訳の配置、年二十四回という趣旨は、聴覚障害者の方の業務遂行のための介助という観点よりは、そういう方々を雇う場合の雇用管理をいかに上手にしていくかという観点での手話通訳者ということになっております。もう少し詳細に申しますと、事業主サイドから見て、雇用管理上、現に就業していただいている聴覚障害者の方々からどういう御要望があるとか、雇用管理上の現にある問題点は何かとか、そういうことを把握するために手話通訳者を介して意見を聞くという仕組みになっております。
 先生のおっしゃいました業務遂行上必要な介助という観点が、この仕組みでは現在のところそう強くないというところがありますので、その点につきましては、障害者にかかわります各種助成金を必要に応じて見直すということにしておりますので、そうした中で先生の御意見を踏まえて十分検討をしていきたいと、こう思っております。

○小池晃君 終わりたいと思いますが、国がこの欠格条項を見直すに当たって、本当に決意、責任が私は問われていると。特に厚生労働省の責任は重大だと思うんです。
 今、助成金の問題ありましたけれども、障害者雇用納付金の収支状況を見ると、九九年度実績では約七十億円黒字が出ているわけです。二〇〇〇年、二〇〇一年度予算でもそれぞれ、これは予算なんでもっと黒字がふえるんじゃないかと思うんですけれども、四十億、三十億の黒字が出ている。私は、障害者を雇用した事業主に支給される助成金の予算、これはもっとふやせると。二〇〇一年度予算を見ると、前の年に比べると一億五千万円減っているわけです。
 ぜひ、今検討するという御答弁がありましたので、これやはり助成金をしっかりと、黒字があるわけですから拡大をして、もっともっと使いやすい、障害者の皆さんが就労するに本当にサポートとなるような制度に拡充していくべきだと、このことを前向きに検討することを求めて、質問を終わりたいと思います。

○委員長(中島眞人君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。----------------------------------------
   
○小池晃君 内閣府にまずお伺いしたいんですけれども、九九年に六十三制度の見直しを決めて、先ほど御答弁で残りは二十二制度、十九法令だというお話でした。これは二〇〇二年までにやるんだというお話でしたけれども、これは必ず、そして早急にやっていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(江崎芳雄君) 御質問にございましたように、今国会にも厚生労働省それから警察庁から法案が提出されてございますし、こういうものが終わりますと残りが二十二制度でございます。
 内閣府といたしましては、平成十一年に決めましたもので十四年度中にはやるということになってございますので、引き続き格段の努力を重ねていきたい、かように思ってございます。

○小池晃君 さらに、現行の新長期計画の中で欠格条項の問題を見てみますと、行数も非常に少なくて、位置づけとしては非常に低かったのかなというような印象を私は受けたわけでありますけれども、これから策定が予定されている二〇〇三年度からの新たな障害者基本法に基づく計画、ここでは包括的な目標を盛り込むべきじゃないか、障害者の差別禁止、権利の擁護の目標、これを新しい次の長期計画にはきちんと盛り込むべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(江崎芳雄君) 現在の新長期計画でございますけれども、その中で、精神障害、視聴覚障害等を理由とする各種の資格制限が障害者の社会参加を不当に阻む障害要因とならないよう、必要な見直しについて検討を行うということが言われております。これに基づきまして、先般御議論になってございます欠格条項の見直し等を行っておるということでございます。
 それで、先生の御質問の包括的な差別禁止等を盛り込むべきではないかということでございますけれども、こういった包括的な差別禁止でございますとか、それから権利擁護に関するこういったものが一体どういう内容になるのか、どういう具体的なものを想定するのかということによるわけでございますが、例えばアメリカのように一般の企業なり事業者に差別禁止を義務づける、こういった制度を我が国に導入するということでございますと、なかなか検討すべき課題が多いのかなというぐあいに考えてございます。
 ただ一方、障害を持つ方の権利が尊重され、社会、経済、文化といったあらゆる分野の活動への参加機会が確保されるということを基本に障害者施策が推進されるべきであるというのは、これはもう当然のことでございまして、平成十五年度からの新たな障害者基本計画の策定に当たりましてはそのような観点を十分踏まえて検討してまいりたい、かように考えてございます。

○小池晃君 さらに、これまで障害者団体が参加をして障害者施策について議論する場が、中央障害者施策推進協議会があったわけですけれども、この一月に省庁再編で廃止をされている。この新長期計画の策定も含めて、こういう組織、障害者団体や専門家が集まって継続的に議論して政府の施策に反映させていく場をやはり設けるべきではないかというふうに考えるのですが、内閣府の方ではいかがお考えでしょうか。

○政府参考人(江崎芳雄君) 申し上げるまでもなく、障害者施策は障害のある方々の多様なニーズに的確にこたえて推進する必要がございます。そのためには、障害のある方々の御意見をお聞きするということが特に大切である、大事であるというぐあいに考えてございます。このため、先ほど御質問にございましたように、中央障害者施策推進協議会が廃止されたわけでございますけれども、現在、内閣府におきまして、障害者施策を推進する上で障害のある方の意見をどのような形で反映させるのがよいのか、その具体的な方法について鋭意検討しておるところでございます。

○小池晃君 ぜひ中央障害者施策推進協議会のような恒常的な議論の場をつくっていただきたいということを申し上げたいと思います。
 厚生労働大臣にお伺いしたいんですが、この欠格条項の見直しの議論を進めてまいりまして、やはり包括的なものが必要なのではないだろうかと。先ほどの参考人質疑でもアメリカのADAの問題が出ましたけれども、雇用の申し込み手続、雇用、昇進、解雇、研修、報酬、こういう一切の問題についてアメリカでは障害を理由とした差別を禁止しておるわけであります。日本でもこの問題を一歩前に進めるためには、四十カ国を超える国でもう既にそういう包括法ができているというお話も先ほどありましたし、障害者に対する差別を禁止して、そして権利を擁護する包括的な法律の制定が我が国でも求められていると考えるんですが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(坂口力君) 差別のない社会、障害者に対する差別のない社会を目指していかなければならない、そういう社会を実現しなければならないということにおきましては、先生の御主張、私も同感だというふうに思います。ただ、それを進めていきます場合に、アメリカ方式の最終的にはすべて裁判でという行き方が、日本の文化と申しますか、日本の行き方にそれが合うかどうかといったようなことは私はよく考えていかないといけないという気がいたします。
 そちらの方向に向かっていかなければならないことだけは間違いがないわけでありますが、それを進めていく進め方につきましてはいろいろの御意見があると思いますので、私はそのいろいろの御意見を踏まえながら一歩一歩前に進めていくべきだろうというふうに思っておる次第でございます。今回のこの法律ができるということも、これも大きな一歩の前進でございますし、そうしたことの積み重ねによって障害者の皆さん方をお守りしていくということにしていかないといけないというふうに思います。
 ただしかし、ほかにいろいろなことをやってみたけれども、やはり最終的に何か強い罰則でも設けないことには、あるいは裁判でもやるということにでもしなければこれが進まないというようなことになれば、それはそうしたことも考えなければならないというふうに思いますが、私は、最初からそうしたことよりも、もっとみんなで前進をしていくような方法がないのか、そのこともやはりよく検討をしていかなければならないのではないかというふうに思っております。

○小池晃君 最後に、この法案について修正案が後ほど提案されるかと思うんですが、五年後の見直しということもあるようであります。
 医政局長にお伺いしたいんですけれども、私どもはもうちょっと早く、三年ぐらいでいいんじゃないかという意見を申し上げたんですが、やはり実施するといろんな問題が出てくるだろうということは容易に想像できるわけです。ぜひ運用に当たっては障害者の皆さんの声に謙虚に耳を傾けて運用していただきたいと思いますし、見直し規定ができたとしても、これは別に五年と見直し規定を置いたらば五年たつまで絶対いじっちゃいけないということではないわけですから、運用においてさまざまな問題点が出てくれば、それはその時点でやはり見直すということも含めて取り組んでいくんだということを確認させていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(伊藤雅治君) この法律の運用に当たりましては、今回の法律改正の趣旨を踏まえて、障害者の関係者の団体はもちろん、いろいろ関係団体の御意見などに耳を傾けながら運用してまいりたいと考えております。

○小池晃君 終わりますが、私は、やはりこの問題、新しい道を開くに当たって、実施すればいろんな問題が出てくるだろうし、本日もいろんな問題を指摘させていただきました。そういった問題点が出てくればぜひ可能な限り早期に見直すということも含めて求めたいというふうに思っております。
 以上を申し上げて、質問を終わります。

 

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