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151-参-厚生労働委員会-11号
2001年05月24日


○小池晃君
 日本共産党の小池晃です。
 ハンセン病の問題をまずお伺いしたいと思います。

   〔委員長退席、理事亀谷博昭君着席〕

 ハンセン病の感染力が極めて微弱である、絶対隔離は不要である。これはかねてからの常識のように言われていた。一八九七年の第一回国際らい学会、このときから認められていたということなんです。日本で最初に法律を制定した一九〇七年の帝国議会でも同様の指摘がされています。
 そのときの国会答弁をちょっと紹介していただきたいと思うんですが。──通告してあったはずですけれども。
 明治四十年二月二十六日、貴族院の議事録で「此病気ハ其発病カラ経過ナドガ頗ル緩慢ナ病気デアリマス」と、吉原三郎内務次官。「局部ヲ……患部ヲ暴露シテ居リマス所ヲ通ッタト云フ、其クラヰノコトデ直グ感染スルト云フモノデハナイ」、これは内務省の衛生局長の答弁です。「一個ノ健康ナル人に対シテ、ソレデ感染スルト云フコトハ余ホド少イ」。これは明治四十年の帝国議会でこういう答弁がされているんです。
 続いてお伺いしたいんですけれども、ハンセン病療養所ができて九十年。この間、患者さんから職員に感染したという例は報告されていますでしょうか。

○政府参考人(河村博江君) 過去の歴史をどこまでさかのぼれるかという問題もあるわけでございますが、一つは国家公務員災害補償法が制定された昭和二十六年六月以降、国立ハンセン病療養所の職員について、ハンセン病に感染したことによる公務災害の認定申請が行われたという事実はございません。また、それ以外につきましても、職員が患者からの感染で罹患したという事実は確認できておりません。
 戦前の文献で、職員の感染、発症例の存在を示唆する文献もあるわけでございますが、先ほど述べましたとおり、国家公務員災害補償法で、昭和二十六年六月以降、公務災害の認定申請というものは行われていないということは事実でございます。

○小池晃君 答弁は簡潔にお願いします。
 極めて感染力の低い病気であるということははっきりしている。明らかな証拠、職員に感染したということがないということが一つの証拠であると思うんです。一九四三年には特効薬であるプロミンも開発をされている。それにもかかわらず、こうした患者さんあるいは元患者さんを九六年のらい予防法廃止まで強制隔離という形で閉じ込めて当たり前に生きる権利を奪ってきた、このことが問われたわけであります。この誤りを国が認めて控訴を断念した。患者さんの命の叫びが政治を動かしたんだというふうに思います。
 私たち国会議員の責任も問われているわけであります。ぜひ委員長にこの委員会でも真相究明と再発防止のための集中審議を行うことを求めたいと思います。

○理事(亀谷博昭君) 後ほど理事会で協議をいたします。

○小池晃君 同時に、直ちに求められるのが全面解決に向けた取り組みであります。まず行うべきは真相究明と再発防止のために国が持っている情報はすべて開示をする、これは直ちに取り組むべきことではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(坂口力君) 国が持っております情報の中で、プライバシーその他に、個人のプライバシーにかかわります問題はこれは別でございますけれども、それ以外のものは極力これは開示すべきものだと私も思っております。

○小池晃君 ぜひこれはやっていただきたい。
 それから、先ほど大臣からもお話があったように、元患者及び患者の皆さんに経済的補償、社会復帰を可能とするためにも、訴訟の原告に限定せずに新たな年金制度をつくる、住居の確保を行う、あるいは日常生活の介護を、社会生活に復帰した場合の介護を行う、こういう支援をぜひ行っていただきたい。
 さらに、療養者は高齢化しておりまして、やっぱり医療の心配が大変深刻なわけです。療養所がふるさとだと言う方も少なくないわけです。こういう方にとって、国立療養所での生活を希望されている方、こういう方は、今、療養者がだんだん減少しているわけでありますけれども、療養者が減少していったとしても療養所の統廃合というのはせずに、やはり終生在院を保障するということをすべきではないかと思うんですが、いかがでしょう。

○国務大臣(坂口力君) 先日も私、東京の全生園にお邪魔をさせていただきました。四月十八日にお邪魔させていただきまして、そして自治会の皆さん方ともいろいろ懇談をさせていただきました。

   〔理事亀谷博昭君退席、委員長着席〕

 今、御指摘のありましたように、かなり高齢化をいたしておりますので、特にその中でいわゆる不自由者棟というふうに言われておりますところにお入りの皆さん方は、夜間におきます問題でございますとか、そうした看護の問題も含めて、非常に御指摘になりました点が多くございました。それらの点を私も十分に聞かせていただいて帰ったところでございます。この療養所にお入りになっておみえになる皆さん方が、最後までここにおりたいという御希望の方があります限り、ここで生活をしていただけるように私たちもしていきたいと思っております。

○小池晃君 今、大臣からも一言触れられましたけれども、不自由者棟の皆さん、大変寝たきりの方なんかもふえている。私はハンセン病の療養所の医療体制、大変問題が多いんではないかと。医師の定員の配置で見ると医療法定員を満たしているところは十三カ所、一つもないそうであります。
 それから、今お話ありました不自由者棟については、やはり介護者、看護者をふやして三交代で、寝たきりの方を見るわけですから手がかかるわけでありますのでやはり三交代制度による看護、介護が行われるようにきちっと増員を図るべきではないかというふうに考えるんですが、いかがでしょう。

○政府参考人(河村博江君) 国立ハンセン病療養所におきましては、従来より入所者の高齢化、合併症の増加等の実態にかんがみまして、入所者の方々の障害の程度に応じた看護職員あるいは介護職員の増員計画を立てまして実施してきたところでございます。今後とも、看護婦、介護員の増員に努めてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
 不自由者棟につきましては、現在二千人の方々が入所されておるわけです。全体四千四百人のうちで二千人の方々が不自由者棟に入居されておると。不自由者棟には看護婦約百七十人、介護員約一千百人が配置されておりまして、夜間においては当直により対応しておるところでございます。
 他方、療養所内にあります病棟では三交代制の看護を実施しておるところでありまして、入院医療の必要な方々に対応しておるところでございます。不自由者棟におきます夜間の対応につきましては、病棟との関係も含めまして、医療の必要性に応じた適切な看護、介護のあり方について検討していきたいというふうに思っておるところでございます。

○小池晃君 ちょっと今のでは余り納得いかないわけでありまして、この新しい事態を踏まえて、大臣、政治家としてこういう医療体制を一歩前進させるという意味での取り組みを強めるということもやはりなされるべきではないかと思うんですが、いかがでしょう。

○国務大臣(坂口力君) それらも含めてこれからお話し合いをさせていただきたいと思っております。

○小池晃君 控訴を断念したというのはもう本当に当たり前のことだと我々思っておりまして、これは第一歩であると。ここから本当の全面解決の取り組みが始まるんではないかというふうに考えておりますので、ぜひよろしくお願いをしたいというふうに思っております。

 次の問題に入りたいんですが、肝炎の問題であります。
 三月二十二日の当委員会で私はいわゆる第四ルートからの肝炎発症の問題を取り上げました。その時点で、旧ミドリ十字、ウェルファイド社のフィブリノゲンによる感染者は三百十五例という報告でありました。ところが、五月十八日に、このフィブリノゲンを使用した患者からの肝炎発症率は三%だと、推定で八千五百二十五例に上るという極めて驚くべき報告がウェルファイド社からなされております。
 三月の委員会で、私は、こうしたフィブリノゲンの投与者にも公費負担で検査を行うべきだというふうに申しました。大臣は、そのときに、これは輸血も一緒にやった人が多いんだと、だから、輸血によって肝炎を起こしたのかフィブリノゲンによって起こしたのか定かでない例がある、判断は難しいとおっしゃったんですね。ところが、今回発表された例というのは主治医がフィブリノゲンによる発症だというふうに認定した例で、これが八千五百例あると。
 私は、これだけ多くの感染例が、感染の可能性があるわけですから、これはやはり第?因子、第?因子の投与者だけではなくて、フィブリノゲンを投与された方にも広く呼びかけて検査を公費で行うべきではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょう。

○国務大臣(坂口力君) 今回報告のありましたものは、その内容を見ますと、昭和三十九年から五十四年までの十六年間における医療機関への納入状況等の記録が残されていない、また納入記録が残っている医療機関におきましても診療録の保存期間が十年以内のものが八割を超えている等々の問題がございまして、ほとんどのものが、患者さんと申しますか、このフィブリノゲンを投与された人がどなたであるかということを確定することが非常に難しい状況にあるということは事実でございます。
 また、この使用の状況等につきましては、データの残っております昭和五十五年以降におきまして今お話が出ました七千を超える医療機関等において使用されておりますし、また産婦人科疾患でありますとか内科疾患、あるいはそれらの手術時等の二十を超える診療科におきまして広く使用されていることが明らかになっております。
 しかし、これらのことが明らかになっておりますが、わかっている人、わかっていない人があったりするわけでございまして、これらのこういう漠とした状況の中で特定をして公費負担というわけにもなかなかいかないものでございますから、まずここから先、どのようにしてこの患者さんが存在するか推定して、八千五百という数字が出ているわけですけれども、その人たちをどのようにして発見するかということの方がより大事であるというふうに思っている次第でございます。

○小池晃君 さらに把握を進めるのは結構なんですけれども、やはり呼びかけて、自分でわかっていらっしゃる方はいるわけですし、カルテが残っている方もいらっしゃるわけですから、少なくともそういう方には呼びかけて検査をしていただく、公費で面倒見ましょうと。
 やはり私は、確かに自分が投与されているかどうかわからないし、カルテがなくなっている方が大変膨大にいるということは事実だと思うんです。前回も申し上げたように、これはフィブリノゲンを投与されただけじゃなくて、九二年以前の輸血を受けた方は感染の危険性を皆持っているわけですから、一番合理的なやり方は、やはり輸血をされた方も含めてすべての方に、そういう身に覚えがある方はもう公費で検査をしましょうと。あるいは、老人保健制度の基本健診という仕組みがあるわけですから、そこですべての国民に一回は肝炎のウイルスマーカーの検査を受ける機会を設けると。こういう形で国が財政的にもしっかり支援をしていくというような取り組みが一番合理的なやり方ではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(坂口力君) これは、後半におっしゃいましたように、高齢者の健康診断というのがあるわけでございますし、そうしたところの、どこが節目かわかりませんが、節目のところのどこかで検査をするということ、一つのこれは方法だというふうに私たちも思っているわけであります。毎年やる必要はありませんので、例えば四十五歳なら四十五歳、五十歳なら五十歳というところで毎年やっていけば、そこでかなりの人がチェックされるのではないかというふうに思っています。

○小池晃君 やはり第VIII、第IV因子の方だけ公費で見るというのでは極めて不十分だと思うんです。今、大臣が言われたような方向を、これは有識者会議もそういう方向を出してきておりますので、ぜひやはり一歩進めて国民全体を視野に入れた肝炎対策をやっていただきたい。
 さらに一歩踏み込んで言えば、これは結核に対する公費負担医療のような公費負担制度による治療ということも含めて考えていくべき課題なのではないかというふうに思っていることも申し上げておきたいというふうに思います。
 さらに、次の問題に行きたいんですけれども、国立病院の統廃合の問題であります。
 厚生労働省は、四月二十日に国立病院・療養所の統廃合、移譲の対処方策を発表しました。八六年の再編成計画を実施していない三十二の施設のうち、十七を移譲、十五を廃止ということであります。これは国立医療機関の役割を充実してほしいという国民の願いに私は背くものであると思うし、地域医療を切り捨てる、そういう点では非常に乱暴なやり方だということで、まず抗議をさせていただきたい。
 その上で、今回廃止決定された十五施設の中に、これまで移譲対象とされてきた稚内、弟子屈、登別、秋田、この四病院があります。私は、もともと移譲対象施設であったということは、その当時は地域の一般医療のために必要な病院だから国以外の経営主体に移譲するというふうにしていたはずだと思うんですが、このことは間違いないでしょうか。イエスかノーかでお答えいただきたい。

○政府参考人(河村博江君) 昭和六十年の国立病院・療養所の再編成・合理化の基本指針では、「地域住民の一般的医療の確保の役割は果たしているが、病床数、診療機能、診療圏等を総合的に勘案して国が直営するよりも他の経営主体が経営することが適当と考えられるものについては、経営移譲の対象として検討する」ということになっておるわけでございます。これは、当該施設が一般医療の確保のために引き続き必要であると判断される場合には、他の主体によりまして引き続き経営を行ってもらうことが望ましいということから経営移譲を検討するという趣旨でございます。
 今般の対処方策で廃止を決定した……

○小池晃君 そこまで聞いていないですから。いいです、後で。
 とにかく、その当時は地域の一般医療のために必要だから移譲対象となったんだと、私はそのことを聞いたんです。地域医療に必要と判断したからこそ移譲対象となっていたのに、今回の問題ですけれども、これが引き受け手がないから廃止だというのはちょっとおかしい話じゃないか。
 五月四日の北海道新聞の社説ではこう書いてあるんですね。計画で経営移譲とされた病院は、本来、診療機能や地域での役割が認められていた、それが地元自治体でも引き受けられなかったのは厳しい財政事情や過疎の進展などで経営見通しが立たなかったからだと。そのとおりなんです。地方自治体は、今、財政難で大変なわけですよ。そういう中で、引き受けたくてもこれは引き受けられないんだと。
 しかも、これは総務省、かつて自治省ですけれども、毎年毎年地方自治体に何と指導していたか。経営移譲については慎重にやれという指導をしているんですよ。経営移譲については自治体病院の厳しい経営環境に十分配意をして慎重に対処されたいという事務次官通知が出ております。
 一方で、自治体には、もうこれは大変だから引き受けるなというふうに言っている。自治体の方だって財政難で大変だと。自治体としては医療の継続は必要だと思っていてもどうしても引き受けられない、そういう事態なわけでありまして、そういうときに国というのはあるんじゃないですか。民間がやれない、自治体がやれない、だからこそ国がやるんじゃないですか。それなのに、引き受け手がないからこれはもうやめるんだ、廃止するんだというんじゃなくて、引き受け手がないんだったら、だからこそ国がそれを存続させていくというのが私は物事の筋道だと思うんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(河村博江君) 経営移譲の対象施設という意味は、その施設が一般医療の確保のために引き続き必要であると判断される場合には、他の主体により引き続き経営を行ってもらうことが望ましいという意味で対象施設としておるものでございます。
 廃止四ケースにつきましては、基本指針の考え方に沿いまして、地元地方公共団体あるいは医師会等の関係者によりまして再編成推進協議会を設置して、地域医療の状況を踏まえた一般医療の確保の必要性等につきまして検討を行っていただきまして、その協議結果を踏まえて厚生労働省として廃止が適当と判断したものでございます。

○小池晃君 地元で協議したと言うけれども、どこが合意しているんですか。例えば、稚内、登別、ここでもこれはやむなく、大変厳しい事情でしようがないという結論になっているようですけれども、依然として存続を要望しているんです。
 さらにはっきりしているのは秋田。これは私直接行ってきました。これは、国が廃止を決めてから地元の本荘市長、助役にも聞いたんですけれども、廃止してもいいなんというのは一言も言っていないぞと言われております。本荘市議会は存続・拡充決議、去年の九月二十七日に上げています。住民の会も反対しています。きょうもたくさんお見えですけれども、労働組合ももちろん反対しています。一体どこが地元の理解を得て進めているんですか。全く合意なんかないじゃないですか。

○政府参考人(河村博江君) 再編成推進協議会におきましては、表現ぶりはさまざまでございますけれども、後医療の必要性が低い、あるいは後医療が確保されなくても支障は生じない、あるいは後医療の計画がないことから跡地の利用について検討を行うというさまざまな表現が用いられておりますが、総じて申し上げまして、やはり私どもの廃止の対処方策につきましては理解が得られているというふうに思っておるわけでございます。

○小池晃君 今いろんなことをぐちゃぐちゃにおっしゃいましたけれども、今、医師会が言っていることとか市が言っていることとか全部ごちゃまぜにしておっしゃいましたね。
 じゃ、再編成協議会の報告書の中で本荘市は何と言っているか、説明してください。

○政府参考人(河村博江君) 再編成協議会の中ではさまざまな御意見をいただいておりまして、本荘市あるいは地元代表からは存続、拡充の立場は変わらないという意見が当初示されておったわけでございますけれども、しかしながら国立病院・療養所が平成十六年度には独立行政法人に移行するという時代の趨勢等から、とにかく後医療について検討しようということで後医療について検討いただいたわけでございまして、後医療計画はないということでございまして、跡地利用について別の場を設けて検討することになったというのが協議会の報告書で、これは全員一致のもとにまとめられた報告書でございます。

○小池晃君 全くでたらめです。
 後医療の計画がないと。後医療の計画がないというのは、先ほど私、前段で言ったじゃないですか。後医療を引き受けたくても、今、地方財政の危機の中でできないんですよ。ただ、今あなたおっしゃったように秋田病院存続、拡充の立場は変わらない、これははっきりこの報告書にも市の立場は明記されている。大体、市議会が決議を上げているんですから、これははっきりしているんですよ。
 そういう中で、跡地利用について別途検討するというふうに確かに書いてあります。ただこれは、実際、現地で聞くとこういう話なんですよ。跡地利用について合意なんてとてもじゃないけれどもしていない、この場は医療について考える場なんだ、だから跡地利用について考えましょうという議題が出たときに、それはここの議題じゃないというふうに医師会も言ったし、本荘市の方もそれはここで話し合う問題ではないと主張したんです。大体、病院を存続させようというふうに言っている人たちが何で跡地利用について合意するんですか。もうあなたの言っている論理はめちゃくちゃですよ。
 この協議会の報告書をもって地元が理解している、厚生労働省がこういうふうに判断したなんというのは私とんでもないと思うんですが、大臣、いかがですか。この報告書をもって地元が合意しているというふうに判断をして進めていくということに私は大変疑問を持つんですが、いかがですか。

○国務大臣(坂口力君) 具体的なお話につきましては、先般、小池議員からお話がございましてお聞かせをいただいたところでございますが、一般的な立場で総論的に申し上げれば、この国立病院・療養所というものを今までのままで全部置いておくかどうかというのは、これは検討しなきゃならない問題であって、この国立病院・療養所を縮小していく、数を少なくしていくというのはやはりやむを得ない措置だというふうに私は思っております。
 私もかつて地元で直面をいたしました。私のすぐそばに立派な大きい国立病院がございまして、移転をいたしました。それは個人の立場からいたしますと、いつまでもそこにあってほしい、行ってほしくない、あるのとないのとどちらがいいかといえば、それはあってほしいというふうに思いましたが、経営的な問題だとかいろいろの問題を考えましたときに、より効率的でよりよい病院が合併をしてできるということになれば、それはやむを得ないというふうに私も判断をした一人でございます。
 したがいまして、個々のケース、私はいろいろあるだろうというふうに思います。そして、それぞれの地域でその国立病院なり療養所がなくなりました場合に、それにかわるべき病院あるいは医療機関というものが、それにかわるべきと申しますか、それがなくなってもそれを補う医療機関があるかどうか、そうしたことがその地域地域で議論をされるのであろうというふうに思っております。
 それぞれの地域で、いや、この国立病院なり療養所がたとえなくなったとしても、あるいは移転をしたとしても、そこは住民にとって、住民の医療としてやっていけるということであれば、それは合意として得られるということになっていくのではないか。それはやはりその地域の住民の皆さん方のお話し合いの中で決められていかなければなりませんから、私も先日も担当官にも申しましたとおり、そこは地元の意見というものは無視しないようにということを申したところでございます。

○小池晃君 だから、その地元の人たちがみんなこぞって反対しているんだと。厚生労働省が地元が理解していると言う最大の根拠は、後医療を引き受けないというふうに言っていることだけなんですよ。これは決して医療が必要ないと言っているんじゃなくて、後医療を地元自治体として担っていくことが経済的に困難だと言っているにすぎないわけであります。
 拡充、存続が地元の立場だということは、私、市長さんにも会ったし、助役さんにも会ったし、明確なんです。市議会の決議だって上がっている。こういう中で廃止をするというのはとても許されることじゃないと。本荘市だけじゃないです。秋田県議会でも決議が上がっています。県内六十九市町村中九割の六十二市町村でも存続決議が上がっているんです。地元の理解を得ているなんて、私、とんでもない話だと思いますよ。
 それからさらに、合理的な統廃合計画だったらというお話ありましたけれども、これは私はどう見ても合理的とは思えないんです。これは実際見てきましたけれども、秋田病院というのは十三万平米の物すごく広い土地なんです。地区一万人の医療を担っております。ここが廃止されたら大変だ、市の中心部に行かなきゃいけないんだと。そうすると、タクシーで往復で三千円かかっちゃうという住民の方々の声も聞きました。
 この病院の特徴は、県内で唯一、重度心身障害児の施設なんです。東北で最大の施設なんです。病院の裏には県立の養護学校があるんです。その病院棟に密接をして非常にいい環境にあるんです。これを廃止して、二十キロ離れた岩城町というところの道川病院というところにくっつけるんだ、統合するんだという話。そうしたら、せっかく今すぐそばの学校に通える子供たちをどうするんだという声も上がっている。
 さらに私はお聞きしたいんですけれども、その道川病院の整備、これにどれぐらいのお金がかかるのか。町が今造成をしているんですね、がけを削って。土地を買ってそこに新たな病院を建てるんだという話なんですけれども、これは一体幾らかかるんですか。

○政府参考人(河村博江君) 今年度から国立療養所道川病院の地に同病院の筋ジス病棟と秋田病院の重心病棟をあわせて整備する計画でございまして、現在基本設計を作成中でございます。
 整備額につきましては、入札の実施前でありまして、予定価格に関連いたしますのでお答えは差し控えさせていただきたいというふうに思います。

○小池晃君 こういう国民の税金を使うことをそういう形で隠すのはよくないですよ。これは地元紙が報道しています。五十三億円かかるんだという報道であります。
 これは私が実際行ってきた道川の場所の写真です。(資料を示す)日本海吹きすさぶ、日本海のがけみたいなところです。そこに今、がけを削って造成しているんです。重度心身障害児を、こんなところに施設をつくって、冬の寒い中で一体外に散歩なんか連れていけないじゃないかと。秋田病院というのは広大な施設で非常に環境がいいんです。地元の人たちもみんな言っていますよ、何でこんないいところをつぶして、そしてこんながけを削って五十三億円もかけて新しい病院つくってと。道川病院の方が小さいんですよ。そこに広大な秋田病院から重心病棟を持っていってそこに統合するんだと。どう考えたってこれはばかげた話じゃないですか。
 先ほど大臣は合理性があればとおっしゃいましたけれども、私、この統廃合計画には合理性のかけらもないと思います。どうですか。

○政府参考人(河村博江君) 秋田病院には重心病棟があり、道川病院には筋ジス病棟と結核病棟がある。重心、筋ジスという比較的機能が類似する二つの国立病院が隣接している、市町村を挟んで二つ併存しておるのが現状でございますけれども、その二つの施設をそのままの形で残す、あるいはそのままの形で残すんじゃなくて、さらに機能強化をするということは困難な状況でございます。むしろ、再編成によりまして一方の施設に機能を集中、集約して政策医療の推進が図られるように適切な整備を行うことが決してむだであるというふうには考えておりません。
 また、道川病院につきましては、筋ジス親の会の要望というものも踏まえまして、筋ジス病棟を一単位から二単位に増床する考えであるということでございます。

○小池晃君 これがむだ遣いじゃないというのは本当にとんでもない話だと思います。
 何でこんなことになったのか。実は、秋田病院というのはある病院に移譲する計画があったんです。厚生連の病院があって、そこが新築するから、だからここは移譲対象になっていた。ところが、この移譲先の厚生連の病院が移譲できなくなったということでこの話は御破算になったと。だから、結局、条件がよくて広大な秋田病院を廃止して、非常に療養条件も悪い、小さい方の病院に統合するという極めて不合理なことが起きている。これは一たん始めた公共事業がもうとまらなくなっているのと私は同じだと思います。
 こういう不合理なことがあれば、そこで一たん立ちどまって白紙に戻して考えよう、小泉政権というのはそういうやり方をするんじゃないんですか。こういうふうに昔どおりどんどんやっていくというのが私とても合理的なことだとは思いませんけれども、大臣、いかがですか。

○政府参考人(河村博江君) 御指摘のとおり、秋田病院につきましては、六十一年当時、地元が経営移譲を求めていたという特殊事情にかんがみまして、その段階から重心病棟を道川病院に移転するということを前提にいたしまして経営移譲対象施設にしたわけでございます。
 ちなみに、厚生連病院はこちらに移転するという計画もあったわけでございますが、中途で断念いたしたわけでございます。ただ、それで済んだわけではございませんで、近隣五キロ以内の地点に七百五十床の厚生連病院ができた。その中で厚生連病院自身も移転してきたわけでございますけれども、その段階で百六十床の増床が行われたということも事実でございます。
 秋田病院につきましては、ちなみに申し上げれば、秋田病院の病棟の多くは築後三十五年程度経過いたしておりまして、仮に残すといたしましても早晩かなりの投資が必要になるということは確かだろうというふうに思っております。

○小池晃君 それは、秋田病院がいつまでも永遠にもつとは思いませんよ。でも、今現に使えている、そして条件も非常にいいところを何でつぶすんだと。それで、新たにがけを削っているんですからね。全然今のは説明になっていませんよ。もう話にならない。
 この秋田病院の廃止計画というのは、地元の合意を得ていない。さらに中身も合理性がない。それから、これはもうきょうは言いませんけれども、この土地は地元の住民たちが寄附をしたという土地なんです。これは戦前の話なんですけれども、国立病院を廃止したらそのときにはお返ししますという念書も、財産区の議事録とか、あるいはその一方の軍事保護院の総裁の文書なんかもあるんです。地元の人たちは、もし廃止するんだったらこれを訴える、訴訟で土地は返してもらうというふうに言っています。もう大変矛盾だらけの廃止計画。私は、これは直ちに撤回すべきだというふうに思っております。ぜひ撤回の方向で検討していただきたい。
 それから、最後に確認をしたいんですけれども、この再編成の計画はこれからも進んでいくんだろうと思うんですが、これを進めるに当たって地元の意見をよく聞いていくということは、私はこれは当然のことだと思います。一たん決めたら地元の意見はもう聞かないなどということはない、しっかり地元の意見を聞きながら進めていくんだということを大臣に最後に確認をさせていただきたいと思うんですが、いかがですか。

○国務大臣(坂口力君) そこはそのとおりと思っております。

○小池晃君 最後に高齢者医療の問題についてちょっとお聞きをしたいと思うんですが、この間、社会保障改革大綱と、それから厚労省の「課題と視点」というパンフレットも出されました。ここでは、老人医療費の伸びを経済動向と大きく乖離しないようにするという中身になっています。今までは、国民医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲内にするというような政策目標だったと思うんですけれども、それを老人医療費に置きかえたというのは、私は大きな転換だというふうに思うんです。
 しかし、九八年度で見ると、国民医療費の伸びというのは二・六%、それに対して老人医療費は六%。これは老人医療費の対象者がお年寄りがふえていますから四・六%伸びているからだと。高齢者人口がふえているのに老人医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲内に抑えると。もしこういうやり方をしたら、一人当たりの医療費が削減されるということになってしまうんではないか。それもやむを得ないということなんでしょうか。

○政府参考人(大塚義治君) ただいまお話ございましたように、高齢者の医療費は、過去十年程度を平均いたしますと年率八%程度の伸びが続いておりますし、医療費全体の三分の一を占めるという状況でございます。
 これもお話にございましたが、高齢者人口の増加に伴いまして老人医療費が増加すると。これは、それ自体は避けられないものというふうに考えておりますけれども、一方で医療保険財政が極めて厳しい状況でございますので、今後とも持続可能な医療保険制度を実現していくという観点からいたしますと、老人医療費の伸びが経済動向と大きく乖離しないような、そういった枠組みを検討していくということにつきましては重要な課題だろうと思っております。
 高齢者が相当数伸びるという状況の中で、医療の質というものを維持しながら制度を運営していくためにはどの程度の医療費の伸びの水準が必要なのか、またそのための方策としてどういったことが考えられるのか、これから十分検討してまいりたいと考えております。

○小池晃君 高齢者人口増加により老人医療費というのは伸びていくわけですけれども、人口高齢化の一方で非老人人口というのは減少するわけですから人口の高齢化に伴う影響というのはこれから鈍っていくんだと、これは近藤局長がさきの健保法の審議の中でお答えになりました。それなのに、老人医療費そのものを国民経済の動向に合わせる、国民所得の範囲内に抑えると。これはもうこれまで以上にけた違いの医療費の抑制ということになっていかざるを得ない、これは国民の健康に深刻な打撃を与えることになりかねないということが今の答弁で私ははっきりしたというふうに思います。
 さらにお伺いしたいんですけれども、高齢者医療制度について四方式が提案されていて、その「課題と視点」の中でも財政試算を出されています。私がお聞きしたいのは、現行制度のもとで老人医療給付費に対する国庫負担を一〇%引き上げる、そうすると財政試算はどうなるか示していただきたいと思います。

○政府参考人(大塚義治君) 例えば平成十二年度をベースにいたしまして、おっしゃいましたように現在の制度を前提とし、現在国庫負担は給付費の二〇%でございますけれども、これを一〇%引き上げる、つまり三〇%にするということで、単純ではございますけれどもそういう前提で試算をいたしますと、他の制度への影響もございますが、トータルで申しますと国庫負担が追加的に七千六百億円程度必要になるというふうに計算されるわけでございます。
 国庫負担がふえると、その影響を受けまして拠出金が減少するという、そういう仕組みになるわけでございます。拠出金の中にも国庫負担が投入される場合も、そういうケース、国保などそうでございますが、国庫負担も含めましてで申し上げますと、政管健保では三千億円、健保組合では二千六百億円、市町村国保であれば三千億円程度それぞれ減少すると、こういう計算ができるわけでございます。
 さらに、これもそれぞれの制度の加入者の数で単純に割るということで御勘弁をいただきたいわけでございますが、ただいま申し上げました影響額を加入者一人当たりで割るということにいたしますと、政管健保では七千円程度、健保組合関係では八千円程度、市町村国保では四千円程度の保険料の減少と、こういう計算になります。

○委員長(中島眞人君) 時間が来ています。

○小池晃君 終わります。終わりますけれども、四つの方式が提起されていますけれども、さまざま問題点があるわけです。私は、これは国庫負担を削ってきたことにこの老人医療制度の最大の問題があるというふうに思うし、現行制度のままで国庫負担額をふやすという形でいくことも一つのやはり合理的な進み方なのではないか。そういうことによって当面の基本的な問題点が解決されるんじゃないか。もちろん一〇%ではちょっと不十分だと。患者負担もそのままなわけですから、これでよしとはとても言えないんですけれども、今後の制度を考える上で、四つの方式だけではなくて、現行制度の枠組みの中で国庫負担をふやしていくというあり方もやはり大いに考えていくべきではないかということを最後に申し上げて、質問を終わります。

 

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