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小泉総理の「医療改革」をただす

(5月30日予算委員会・集中審議1)

○小池晃君
 日本共産党の小池晃です。きょうは、総理の構造改革について、医療分野に絞ってお聞きをしたいというふうに思います。
 まず、九七年、政府の医療抜本改革案、二十一世紀の医療保険制度、総理が厚生大臣時代に提案をされたものですけれども、これは衆議院の予算委員会で、これについて、「当時提案された方向に向けて、せっかく総理大臣に就任したわけですから、その実現に向けて全力を尽くしていきたい、」と答弁をされています。
 お聞きしたいんですけれども、あなたの言われる医療分野での構造改革というのは、この二十一世紀の医療保険制度に示されているというふうに理解してよろしいんですか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 医療改革についても、これから持続可能な制度を構築していかなきゃならないな、皆保険制度を維持しながら、あるべき改革の方向を探っていかなきゃならないなと、そういうふうに考えております。

○小池晃君
 ですから、総理が言われる持続可能な制度の一つの土台として、九七年に提案されたものがあるということですね。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 基本的なそういう方針に沿って改革していかなきゃならないなと思っております。

○小池晃君
 この九七年の改革案の中心は、いろいろありますけれども、負担増について言えば、高齢者は二割負担、現役世代は三割負担、大病院の外来は五割負担というものであります。
 これは総理の書かれた「小泉純一郎の暴論・青論」と。ここにも、高齢者は一割か二割の負担、現役世代は三割負担、大病院の外来は五割負担にしなければならないとはっきり書いてある。そして、それは理想の給付と負担の配分だ、「この素案をまとめた厚生大臣である私は、これを実現しない限り、日本の医療の将来はないと自負しています。」と、こうはっきり言っているんですね。この考えに今も変わりはないですか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 それは一つの考え方であって、大病院に五割負担とはっきり言っているわけじゃないんです。特定機能病院に対して、ほかの一般の診療所と差を設けていいのではないかということを言っているのであって、だれでもかんでもすぐ大病院へ行くよりも、まず地域の診療病院、こういうものがあるわけですから、診療所も、そういう点と差を設けてもいいのではないかと。場合によっては特定の、特別の病院だったら五割でもいいじゃないかと。一部であって、それは全部五割にしろとなんか言っていませんよ。余りいいところだけ、特別の、特定のだけとらないで、誤解しないでください。
 私は、全体として、全部の病院が同じ料金でいいとは言っていないんです。それは、たくさんの優秀な機器がそろっている大病院と個人でやっている病院と同じでなくてもいいのではないか、あるいは大病院集中の弊害をなくす、三時間待って三分診察ということをなくすためには、そういうすばらしい特定の病院に対してはある程度予約制とか料金の差を設けてもいいのではないかということを言っているということを御理解いただきたいと思います。

○小池晃君
 大病院の定義はどうあれ、現役世代は三割負担にするんだと。それから、その線をどこで引くかは別にして、病院の中に機能分化を持ち込んで、そこは五割にしてもいいんだと、そういう考え方は今も変わっていないんだということだと思う。
 私、この医療抜本改革のいわば核心部分とも言える負担増というのは、これは国民に大変な痛みを強いるものだというふうに申し上げたい。
 まず、一部はもう既に始まっているわけです。高齢者の一割負担はこの一月から始まっている。その一割負担について、医療現場で悲鳴が上がっているわけです。さらに、高齢者は二割負担にしようと。健保本人二割負担が九七年、総理がやられた。これ、景気を冷え込ませた一つの大きな原因になっている。それにもかかわらず、さらに現役世代は三割だと。こんなことしたら国民生活は壊滅的な打撃を受けるじゃないですか。どうお考えですか、その辺。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 そこは共産党と私ども違いますね。医療というのはまず税金、公費が入っています、保険料負担が入っています、患者の自己負担です。このバランスをとらなきゃいかぬ。税金をどんどん投入しろといったら増税しなきゃならないんですよ。どこを増税するんですか。そういうことを考えると、私は全体で考えてもらいたい。
 しかも、国保に入っている人は三割負担ですよ、健保は二割負担ですよ、高齢者は一割負担でいいじゃないかと私は言っているんです。何で無理があるんですか。しかも、上限が設けられております。国保は三割負担といっても、百万円の三割だったら三十万払えないでしょう。しかし、六万三千六百円と、月、上限が入っているじゃないですか。そういう点を考えれば、高齢者だって一割負担したとしても上限が入っています。百万円かかった場合に十万円払えなんて言っていませんよ。当然、何千円という上限が入っているんですから、それは特別配慮していると。
 今言ったように、患者負担ゼロにしなさい、保険料払わない、じゃ税金、どこを増税するんですか。そういう観点は述べてもらわないと、一方的な一部だけとらえてもらったら困りますよ。

○小池晃君
 私は、自己負担を減らして、その分を増税しろなんて一言も言っていないんです。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 公費負担……

○小池晃君

 公費負担にしろということは、国の税金の配分を変えなさいと言っているんです。税金であろうが保険料であろうが、国民の負担をふやせなどとは私は一言も言っていないんです。国の財政の配分を大型公共事業優先から社会保障に変えろと、医療にもっと財政投入をすべきだということを私は申し上げている。
 それからもう一点、総理は上限があるから大丈夫だとおっしゃったけれども、大変な誤解をされていると私は思うんです。高額療養費制度の問題だと思うんですが、これは本当にごくわずかなんですよ、大手術をした場合とか。レセプトの件数でいえば〇・七%です。ほとんどのケースは三割にすれば三割丸々負担になるんですよ。しかも、この上限もこの間の改悪で青天井にしたんです。それから、高齢者も上限があるとおっしゃったけれども、これは入院費の上限、外来は一切上限がない。それから、低所得者対策があるということも別の場所でおっしゃっているけれども、これは入院費だけなんです。外来についての低所得者対策というのはないわけですね。
 私、あなたはちょっと医療の現状の認識が足りな過ぎると。負担をふやしても上限があるから大丈夫なんだと言うけれども、実際、今起こっていることを見てくださいよ。高齢者一割負担にして何が起こっているか。患者数激減しているじゃないですか。ことしの一月以降の高齢者の医療費は三・二%減少している。四月からはずっと一%ずつふえてきたのが急に三%減ですから、激減しているわけですね。
 私のお話ししたある開業医は、患者さんから手紙をもらったと。定率負担になってもう来れません、さようならという手紙をもらったというお医者さんがおられる。現役世代はどうでしょうか。現役世代はこれはもっとはっきりしている。あなたが九七年、厚生大臣時代にやった二割負担でいまだに患者が減っているんですよ。これは九九年の患者数、三十五歳から六十四歳を見ると、九六年に比較して一二%減少している。これは総理が九七年に二割負担にして二年後ですよ、二年たってもまだ一二%も減っている。
 こうした負担増は、みんなあなたが手がけた医療の抜本改革のいわば部分的な改革によって起こっている事態なんです。これをもし全体的な改革を、被用者負担三割、大病院五割なんという改革をやったらば、部分的な改革ですらこれだけの被害が出てくるんですから、もっともっと大きな被害が国民に出ることは間違いないと思うんですが、大臣、いかがですか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 全部の大病院を五割なんて言っていませんよ。

○小池晃君
 僕はそんなこと言っていませんよ。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 今言っているじゃないですか。それは誤解しないでくださいよ。
 しかも、医療のむだを徹底的に省かなきゃいけないということも言っているでしょう。三日分の薬でいいものを十日分やったらむだでしょう。風邪薬をやって、そして胃が悪くなるから、飲み過ぎて、また胃の薬をやるとか、人に上げるぐらい薬をやるとむだだと。こういう薬の使い過ぎというものも直さなきゃならない。
 それは、さらにちょっとした見立てでわかるかもしれないのを何でも検査する、風邪引いたのに頭から足から全部検査したら、これまたむだじゃないかという議論もあるわけですよ。  そういう点も含めて、医療のむだはどういうものがあるか。お医者さんにとっては、患者が多ければ多いほど収入になるからいいでしょう。出来高払い、診た治療は全部費用になっていくというのもいいでしょう。しかし、国民全体、医療費はだれが賄うのかといったら国民なんですよ。病気にならない人も毎月保険料を払っているんですよ。そういう人のことを考えて、保険料の負担と税金の公費負担と患者の自己負担、これはバランスとって見てもらわなきゃ、私はあるべき改革の姿は見えないのじゃないかと。
 しかも、いろいろ福祉に足りない、足りないといいますけれども、国の予算で一番使っているのは福祉関係ですよ。公共事業よりもはるかに福祉に使っているんですよ。そういう点も考えて、日本がこの福祉水準を、世界の先進国と比べて低過ぎるということは私はないと思う。今まで皆さんの努力によって、だんだんだんだん水準上がっているんです。しかも、今、五%の消費税で二五%の消費税を持っているスウェーデン、デンマークの水準に近づけようと努力しているんじゃないですか。今、二〇%の消費税にしろといったらあなたの言っていることできるかもしれない。そうしたら、国民、二〇%の消費税増税とんでもないという反発が起こりますよ。
 公費負担、公費負担、税金じゃなきゃできないじゃないですか。そのバランスを持った感覚で私は改革をしなきゃいかぬということを言っているだけであります。

○小池晃君
 私は、そのバランスが日本はおかしいんだと言っているんです。
 社会保障費に対する国と地方の負担、保険料も含めればそれは大きくなるかもしれないけれども、国と地方の負担は、国立社会保障・人口問題研究所の調査で、九八年は二十一兆九千八百八十二億円です、国と地方の負担。一方、公共事業は、総務省の行政投資で四十七兆二千六百十三億円。社会保障の方が多いなんというのは全く、総額としては多いのは当然ですけれども、国の負担は公共事業の方が二・五倍も多いんですよ。これが実態です。外国と比べるとどうでしょう。日本の社会保障給付は、対GDP比で一三・七%です。アメリカ一六・八、イギリスは二二・五、ドイツは二九%、フランスは二九・七%、スウェーデンは三二・一%。一体どこが日本の社会保障給付が厚いんですか。
 それから、スウェーデンのことをおっしゃった。スウェーデンは消費税が二五%だと。ただ、国の税収全体に占める消費税の比率というのは、スウェーデンは二二・一%です。日本は二〇%、大して変わらないんです。何でそうなっているか。免税品目がある。それから、スウェーデンは所得税の最高税率七五%です。高額所得者からしっかり取っているんですよ。しかも、払った分の見返りもスウェーデンは大きいんだ。税と社会保障負担に対する社会保障給付の割合、いわば見返りですね、これはスウェーデンは六三%、ドイツは六六%だと。日本は四七・八%です。払った分がしっかり社会保障で返ってくるなら別ですよ。返ってきていないんですよ。こういうことも見なければ、消費税二五%だというところだけ見て、そういうことは言えない。
 しかも、スウェーデンは九〇年代後半に財政再建、どういうやり方でやったか。見事に成功させているんです。高額所得者の所得税率を五%引き上げた、食料品の付加価値税を九%引き下げたんですよ。日本がこの消費不況を、金持ち減税と消費税の引き上げで消費不況を引き起こしていることと全く正反対なんです。学ぶんだったらこういうところをあなたは学ぶべきだと。
 私は、あなたの言っていることは、本当に医療の現場の実態も見ていないし、私もう一つ言いたいのは、バランスも考えるとおっしゃったけれども、逆効果なんですよ。むだが多いんです。むだを削るのは当然です。それはどんどんやるべきです。薬剤費のむだが非常に多い、それは言うとおりだ。日本の薬剤費は二三・五%だ。もっともっと削るべきです。そういうことをやった上で、やはり問題は負担増です。負担増を起こせば、例えば軽い病気のうちに病院にかかろうとしなくなる。そうすれば、重くなれば医療費かかるんですよ。高血圧をほっておけば脳出血を起こす、手術になれば医療費かかる。糖尿病をほっておく、ひどくなったら透析が必要になる、医療費かかる。まさに逆効果なんです。
 それから、もう一つの逆効果を申し上げたい。景気の足をどんどん引っ張っている。国民に負担増を押しつければ景気を冷え込ませる、そうすれば保険料収入が下がる、健保財政が悪化する、さらに負担を押しつける、まさに悪循環じゃないですか。こういうやり方はもはや破綻しているんじゃないかと私、申し上げているんです。大臣、どうですか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 やはり、自民党と共産党は全く違いますね。
 今、国民の多くがスウェーデンみたいに重税負担でいいと思っていますか。そうじゃないですよ。そんな重税国家になりたくないということから、できるだけ税金は低くということを考えているんです。高額所得者だから七〇%でいいという国民は多数いないと思いますよ。そうしたら、働く意欲がなくなっちゃうと。企業にしても個人にしても、できるだけ税金を納めてくれる人が多い方がいいんですよ。そういうことも考えなきゃいかぬ。
 しかも、五%じゃ高いといって九%も下げると。日本は今九%下げたらマイナスでなくなっちゃうんですよ、五%、下げようがない。二〇%だから九%下げられるんでしょう。五%の消費税を三%に下げると共産党言っているんじゃないですか。
 そういう点も考えて、しかも社会保障と公共事業を比べますけれども、公共事業を言う場合は国と地方両方を言っている、五十兆円。社会保障を言う場合は国だけの公費を言っている、十七兆円。しかし、国、地方入れれば、社会保障給付費は七十二兆円を超えていますよ、保険料入って給付費ですから。公共事業が五十兆円弱で、社会保障の合計が国、地方全体で見れば日本は公共事業の一・五倍使っていますよ、社会保障費全体で。一部だけ、公費だけ見て、公共事業は地方まで入れる、社会保障は国しか見ない。これはもう意図的な比較としか思えない。もっと整合性のある見方をしていただきたい。

○小池晃君
 あなたの今のは、本当によく勉強していただきたい、でたらめです。保険料を含めているんですよ。保険料というのは国民負担も入っているんです、事業主負担も入っているんです。そういったことも含めた額が今の七十八兆円という数字でしょう。
 私が申し上げているのは、国と地方の税財源から出ている、国と地方が公的に支出をしている社会保障費は、これは国立社会保障研究所の調査ですよ、二十一兆九千八百八十二億円。公的支出を比べれば公共事業の方が多い。これはもう明らかなことなんですよ、事実ですよ。あなたの今言われた数字は全くでたらめだ。
 私が申し上げていることに全く答えていないと思いますよ。自己負担をふやすというやり方が健保財政も悪化させるじゃないか、病気もどんどん悪化させて、そうすればお金がかかるようになるだろうと。それから、健保財政が悪化すれば保険料がまたはね返ってくる、さらに景気が悪くなる。景気が悪くなれば保険料の収入が下がる。まさに悪循環じゃないですか。この悪循環を断ち切るために、今までの自民党のやり方はこの悪循環をどんどん進めてきた。財政が悪化すれば負担増で乗り切ろうと、本当に目先のやり方しかとってこなかった。そうではなくて、まさに今、ここに悪循環を断ち切るために公的な支出をすべきじゃないかと私は申し上げている。
 きょう配った資料を見ていただきたいんですけれども、諸外国と比べて八〇年代から九〇年代にかけて、グラフを見ていただきたいんですけれども、社会保障に対する国庫支出を対GDP比で減らした国は日本だけであります。あとは大体ふやしている。しかも、その日本は八〇年代から九〇年代にかけて最も高齢者人口の比率がふえている。これだけのスピードで高齢化が進んでいる中で社会保障に対する国庫負担を削ったら、一人当たりの給付が下がる、負担増になる、これは当然のことじゃないですか。
 私、申し上げているのは、こういうやり方はやめて、高齢者人口がふえる、将来不安が広がっているんですから、これからは社会保障重視の政策でいきますよというのが国の責任じゃないですかと。そのために公共事業に思い切ってメスを入れるということが今こそ求められているんじゃないかというふうに申し上げている。どうですか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 公共事業の見直しというのは当然であります。しかしながら、社会保障関係にしても、患者負担を減らせば必ず公費負担がふえていきます。その場合は税金か保険料。保険料を上げるという場合、病気にならない人の保険料もいただきます。それで実際、医療保険制度が成り立つのかどうか。病気にならないけれども、保険料を負担している方のことも考えなきゃいかぬと。余り保険料を上げちゃって、患者負担を減らして、じゃ、おれ病気になった方が得だと思われたら、医療保険は成り立たないんですよ。やっぱり保険料もある程度低くしておかなきゃ困る。じゃ、公費だけやる。増税、これ嫌だという声がある。だから、保険料負担と公費の負担と患者負担、これをバランスをとって考えなきゃいかぬと。
 それで、これから見れば、あと十年見れば高齢者がどっとふえます、日本は。今の制度を維持するならどんどんどんどん給付費がふえていきますよ。その場合はもう、じゃ、どうやってだれが支えるのかと。若い人は減っていく、高齢者はふえてくる。今の制度を現状を維持するどころか、もっと公費負担するといったらどれだけ増税しなきゃならないんですか。こういうことも考えてもらわないと、私はあるべき社会保障改革というのは成り立たないんじゃないかと。
 どこかでだれかが必ず負担しているんですから、患者負担が低いという場合は健康な人が負担してくれている、あるいは全部病気になっていない、税金で負担している。この三つのバランス、これを考えないと、これからの高齢者が外国に比べてどっとふえてきて、若い世代がどっと減ってくる日本の社会保障というのは大変なことになる、現状維持じゃできないということも御考慮いただきたい。

○小池晃君
 私、そのことにはもう既に反論しているつもりなんですが、もう八〇年代に高齢者はどんどんふえているんですよ。その中でどんどんふやしてきてもう大変だというんだったらわかりますよ、少しは。でも、八〇年代に高齢者がふえてきている中で公的支出をどんどん削っているじゃないですか。これからさらにそうなるときに、国民は将来に不安を持っている。だとすれば、この不安にこたえるんだとすれば、これからは給付はふやしますよ、しっかり国が支えますよ、国が税金の使い道を根本から変えますよというメッセージを国民に届けることこそが今の将来不安にこたえる道じゃないですか。
 さらに申し上げたいのは、抜本改革で計画されているのは窓口の負担増の問題だけじゃないんです。財源としてはすべての高齢者から保険料を徴収するということも検討されている。
 これは今所得が少なくて、被用者保険の被扶養者になっている高齢者は保険料を払っていないわけですけれども、こうした高齢者は全国で何人いらっしゃいますか。

○国務大臣(坂口力君)

 七十歳以上の高齢者についてであれば、平成十二年九月現在で約三百万人。よろしゅうございますか。

○小池晃君
 三百二十万人。

○国務大臣(坂口力君)
 約三百万人。

○小池晃君
 今お話があったように、約三百万人の高齢者は医療保険料を払っていないわけです。
 今検討されている抜本改革案では、すべての高齢者を保険料の徴収対象とする、介護保険と同じタイプです。介護保険で年金からの天引きというのが非常に怒りを呼んでいるわけですね。さらに、医療保険も三百万人上乗せされる、これは大変な問題じゃないかと思うんです。窓口では自己負担を二割、現役世代三割、それから大病院、どこで線を引くかは別にして、一定の病院は五割、それから三百万人の高齢者に新たに医療保険料を徴収する、これがあなたの言う医療の抜本改革の具体的な姿なんですよ。
 もう一度聞きますけれども、こんなやり方をすれば、消費不況、これだけ冷え込んでいる、さらに拍車をかけることになるんじゃないですか。国民の将来不安にさらに将来不安をあおることになるんじゃないか。総理、どうですか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 消費不況というのは医療費だけじゃないと思います、もっといろんな要素が絡み合っている。そして、社会保障の問題についても、単に医療改革だけの問題だけでもない、ほかの年金の問題も考えなきゃいかぬ。そして、これから世代間の負担の割合はどうあるべきかという点も考えていかなければならないと思っております。
 ですから、今後、今言ったような医療改革につきましても、今まで高齢者は収入がないという前提で考えていた面が多かったと思いますが、最近、いろいろな調査によって、むしろ高齢者も二十代、三十代にまさるとも劣らない収入がある方も多いわけですから、ある場合によっては高齢者に応分の負担をしてもらってもいいのではないかという考えが出てきてもいいのではないかと思っております。

○小池晃君
 高齢者が総体として豊かなんというのはとんでもない話です。塩川さんのように五億円も収入がある人は中にはいるでしょう。そういう人から応分の負担をとることは私は否定しません。しかし、圧倒的多数の、これは高齢者の平均所得というのはごく一人の高額所得者によって引き上げられている。平均所得二百万円未満の高齢者は七割です。非常に特殊な分布をしているわけです。そういう実態を見なければ、一律に高齢者は豊かであるなどという認識のもとに社会保障制度を立てられたら、今、介護保険で起こっているような大変な問題がさらに医療にも広がっていく、大変な問題だということを指摘したい。
 それから、介護も年金も考えなきゃいけない、当然であります。社会保障財源全体を考えなくちゃいけないんです。そのときに今のようなやり方でいいんですかと。どんどんどんどん景気が冷え込んでいる、保険料収入が減っている。だから、国民年金だってそうです、厚生年金だってそうです、医療もそうです、全部財政が悪化しているわけですよ。そういう中で、この今危機を乗り切ろうというあなた方のやり方は、保険料をふやしたり負担をふやしたり、そういうやり方でしかないじゃないですか。こんなやり方をすれば保険財政の危機をさらにあおる、そういう悪循環に入っていくだけなんじゃないですか。当座しのぎの負担増と給付減で乗り切ろうとするやり方、これが抜本改革だとすれば、総理、あなたの進もうとしている道は今のこの社会保障の危機をさらに一層深刻化させることになる。
 それから、持続可能な制度と言うけれども、まさにこんなやり方でいけば、社会保障の危機を進行させて持続不可能な制度にしていくことにならざるを得ないんだと。大臣、どうですか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 今のままいけば持続可能でなくなっちゃうから、持続可能な制度を考えようと言っているわけです。

○小池晃君
 ほとんど答弁できないということだと思います。
 私は、やはりこの悪循環を断ち切る、本当に政治がそういう姿勢に立つ必要があると。やはり、国の財政構造を変えて、社会保障中心の国づくりに大もとから切りかえる、このことが、社会保障の方が公共事業よりもより雇用創出効果も高いし、生産波及効果も高いんだということもはっきりしてきているわけですから、やはり本当の景気回復に進む道はここだということを主張して、次の問題に移りたいと思います。

 

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