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151-参-厚生労働委員会-14号
2001年06月05日


○小池晃君
 日本共産党の小池晃です。
 まず最初に、今回の法案の基本的な性格についてお聞きをしたいと思います。
 九八年十月九日の年金審議会の「次期制度改正の個別検討項目についての考え方」、この中で「企業年金が安定的に機能し、高齢期の所得保障の一翼を担うに足る制度となるためには、厚生年金基金以外の制度も含めて、受給権の保護を中心とした共通の基準の設定を内容とする企業年金に関する包括的な基本法の制定が必要である。」と言っております。
 さらに、昨年二月二十三日の社会保障制度審議会は「企業年金制度全体の在り方について検討を加え、包括的な法的整備を早急に行うべきである。」と答申しております。
 この企業年金に関する包括的な基本法の制定、これは一体どのようになっているのか、大臣にまずお聞きしたいと思います。

○国務大臣(坂口力君) 今、小池委員から御指摘をいただきました企業年金基本法についてでございますが、適格退職年金と厚生年金基金とでいわゆる受給権保護などの制度の仕組みに違いがありますため、受給権保護などを図る観点から、確定給付型の企業年金に関する包括的な基本法の制定を検討すべきというふうにされていたものというふうに思います。
 今回の法案は、この方向性に沿いまして、確定給付型の企業年金について受給権保護などを図ります観点から、積立基準でありますとか受託者責任の明確化でありますとか情報開示でありますとか、こうした点について統一的な枠組みのもとに制度整備を行うこととしたものでございます。
 企業年金基本法の考え方としてはこの考え方に沿ったものだというふうに思っておりますが、しかし、内容が基本法というにはやや具体化したものである、基本的な問題だけではなくて、かなり受給権保護の措置の問題でございますとか、あるいは確定給付企業年金制度の内容でありますとかその移行の問題でありますとか、こういう具体的な問題をたくさん含んでおりますので、基本法というのにはやや問題があるといったようなことから、基本法という名前をとらせていただくことができなかった、こういうことでございます。

○小池晃君 私は、やはり基本法の制定が求められていたと。基本法であるならば、やはり米国のERISA法で定めているような受給権保護、受託者責任、情報開示、さらに支払い保証制度や年金のポータビリティー等も含めてきちっと整備をすべきであるにもかかわらず、本法案は、ちょっとこれから議論をしていきたいと思うんですが、いずれも私は不十分である、あるいは全く欠落している部分もあるのではないか。そういう点では、かつて求められていた企業年金基本法ということとは似て非なるものなのではないかというふうに思っておるんですが、その具体的な問題について次に議論をしていきたいと思うんですけれども、まず、受給権保護の問題であります。
 受給権を保護する上で基本となるのは、必要な年金資産がきちっと積み立てられているか、あるいは積み立てられていなければ不足が生じていないかどうか、不足が生じているとすればその解消をどういうふうに指導するのか、これが厚生労働省に求められていることだと思うんです。
 現状の厚生年金基金の決算報告の審査というのは一体どこで行っているのか、そのスタッフの数は今何名か、お答え願いたいと思います。

○政府参考人(辻哲夫君) 現状の厚生年金基金に対する審査等につきましては、厚生労働省の年金局において十名強、地方厚生局において三十名弱、こういった体制で行っております。

○小池晃君 地方厚生局三十名弱というのは、すべてが厚生年金基金の決算報告の審査に加わっておるんですか。

○政府参考人(辻哲夫君) 地方厚生局はその他のさまざまな窓口の受理事務といったことも行っておりますので、決算審査のためだけの仕事ではございません。その他の仕事も行っております。

○小池晃君 これだけ膨大な企業年金、厚生年金基金の決算報告の審査に本省で十名、地方厚生局は兼務で三十名ということですから、これは恐らく帳簿上の帳じりを見るだけで、実際に積み立てられている資産の中身までチェックするなんというのはとてもできないと思うんですね。
 アメリカでは、年金給付保証公社、PBGCだけで七百人以上の体制をとっている。中身を見ても、経営の専門家や公認会計士、年金数理人、こういった人たちがチームをつくって指導しているんだと。日本はこれから適格年金も含めて厚生労働省で見ていくんだと。八万を超える適格年金がここに加わっていくと、この積み立てについての監視や指導を今のような体制でやっていけるというふうにお考えですか。

○政府参考人(辻哲夫君) まず、今御指摘のアメリカの組織、数百人の体制と聞いておりますけれども、若干この点との違いをまず御説明申し上げておきたいと思います。
 アメリカの組織は、支払い保証をいわばみずから行っているという機能を持っておりまして、支払い保証の発動などに当たりまして企業年金の資産、負債額などについて相当詳細な調査が必要となる、こういった点、全くそういう機能に当たる相当なスタッフが必要である。あるいはアメリカの場合は各基金の資産運用はインハウス運用、自分で運用しているといった点もございまして、そういうことについての直接のチェックが必要だということでございます。
 我が国の確定給付企業年金につきましては、支払い保証は今後の検討課題とされているというのとあわせまして、運用は基本的には外部機関、生保、信託等となっておりまして、これはきちっとしたそれぞれの業法でチェックされておりますので、まずこの点の仕組みの差がございます。それにいたしましても、新制度導入に伴う体制の整備につきましては、法案の成立を受けまして今後検討していかなければならないと考えております。
 ただ、あわせまして、さまざまな私ども効率化のための努力もいたしておりまして、まず、新制度の承認等に係る提出書類の簡素化を相当図りまして実質のところがよくチェックできるようにすること、あるいは実施企業の大半を占める中小企業を対象とした簡易な財政再計算の方法を示して、いわばパターン化することによって中身を審査しやすくできるようにすること、こういった効率化を図りますとともに、毎年度の決算書類など年金数理に係る書類につきましては、これは法律に定められておりますけれども、年金数理人の確認を経て大臣あて提出することとされておりまして、そうした民間の専門家を活用することにより行政事務の効率化を図る、こういったさまざまな工夫をしております。
 いずれにしましても、円滑な運営が確保されるように、必要な体制の整備につきましては今後検討してまいりたいと考えております。

○小池晃君 アメリカの制度との違いはよく承知をしておるわけでありまして、その問題をこれからちょっと議論したいと思うんですが、それにしてもけた違いに違うわけで、幾ら簡素化、合理化を図っても、抜本的にやっぱり体制を強化しなければ積み立て不足の解消のための必要な監視や指導なんというのはとても難しいのではないかという危惧を持つわけであります。
 アメリカとの違いの問題でありますけれども、その中身に入りたいんですが、しかもこういう非常に薄いスタッフでやっている上に、日本のシステムというのは、今度の提案でも、報告に基づく行政指導、財政状況の公開、それから労働組合の監視だけであります。アメリカの場合は労働省、DOL、年金給付保証公社、PBGCの関与と、それにあわせて内国歳入庁、日本の国税庁に当たるわけですが、IRS、この三者が監視をしている。最低拠出義務と追加拠出義務を課している。この拠出義務を果たせないと、不足分に対しては一〇%のペナルティー課税も行われる。納税額は損金扱いできないことになっている。
 非常に厳しい拠出義務を課しているわけでありますけれども、日本でも企業年金の信頼性、安定性を高めるということであれば、やはりもっと強制力のある体制、アメリカのようなこういうきちっと拠出義務を守らせるようなことがなければ絵にかいたもちということになるんじゃないでしょうか。

○政府参考人(辻哲夫君) 我々、これまでも厚生年金基金でいわば積立基準に沿う内容をチェックいたしまして、それについて的確な指導を行う、そして積み立て不足というものが相当解消されてきておるという実績を今まで持ってきておりまして、まずこれに沿った体制を整備することを含めまして作業を着実にやっていきたいと考えております。
 一点、御指摘の措置のうち、いわゆる積み立て不足があったときに、いわばペナルティー的といいますか、罰則的に課税措置を用いるというアメリカの方式、これにつきましては、我が国の現状に照らして考えますと、事業主に対する積み立て不足解消のインセンティブになるという一面があることは事実でございますけれども、我が国の現状におきましては非常に厳しい措置であって、そもそも確定給付型の企業年金を続けていこうというインセンティブといいましょうか、こういう気持ちに対してマイナスに働くんではないかと。
 とりわけ、特に我が国の仕組みのもとにおきましては、その企業の従業員や受給者との関係で積み立て不足が問題になるのを、なぜ課税当局の国庫歳入とする形でこれらに対して行政的な効果をねらった措置をとるのかということが我が国ではなかなか大きな問題となると考えておりまして、その点までの措置、いわばペナルティー的な課税措置によって担保するといったところまで我が国では導入は現在考えていないところでございます。

○小池晃君 いろいろおっしゃいましたけれども、最後の問題、ちょっと議論をしたいんですが、税制上の問題でペナルティーを科すのは制度にそぐわないというふうにおっしゃる。しかし、言ってみれば、税制適格年金でも厚生年金基金でも税制上の優遇による誘導をこれまで行ってきたわけであります。そういう形で税制を使って政策誘導してきたにもかかわらず、なぜペナルティーになるとここで税制の出番ではない、税制ではそぐわないというふうにおっしゃるのか、そこはちょっと納得できません。

○政府参考人(辻哲夫君) これは税当局の御所管にかかわることでございますので、私どもが申し上げることが適切かどうかと思いますが、基本的には、国税なら国税の税収を上げるという目的によって収納するという目的の範囲内で、いわば一定の場合に時には政策的な判断でそれを緩和するという体系が見られるところでございますが、さらにアメリカのような類型のタイプで税収を図るという一つの目的の枠の中を一つ超えたような積極的な目的での体系というものは現在ないものと承知いたしております。

○小池晃君 私は、政策誘導で税制を使っているのであれば、こういう積立義務をきちっと課す目的で税制を使うアメリカのやり方には一定の合理性があるというふうに考えるわけであります。
 それからもう一つ、今おっしゃったように、余り厳しくすると確定給付に入ってこないんだというのは、これは大変私は矛盾した言い方だと思うんですね。一方で受給権保護をきちっと確立するんだ、今回の法案はそういうことを目的としているんだというふうに言いながら、一方で厳しくすれば確定給付年金に入ってこない、出ていってしまうんだと。これは大変矛盾だと思うんです。
 今まさに企業年金に対する信頼性が揺らいでいる、そういうときにやるべきことというのは、やはりきちっと積立義務を企業に守らせる、そういう義務を果たすような企業こそ社会的に認知されていくんだと。また同時に、国民から見れば、公的年金の給付水準を引き上げた上でやっぱり企業年金、受給権保護をきちっと確立して信頼できる制度にする、それこそがやはり将来不安を解消していく道であると私は思うんです。
 年金に対する信頼が揺らいでいることは、日銀の二〇〇〇年度の貯蓄と消費に関する世論調査、これを見ても、老後の生活を心配している、あるいは多少心配しているという方を合わせて七九%。これ若い人ほど多いんです。三十歳代が最も多くて八九・二%です。四十歳代は八七・七%と続く。言ってみれば、我々の世代が最も不安を持っていて、約九割の人が年金制度に対する不安を持っている。
 さらに、この日銀の調査を見ると、公的年金や企業年金で老後の生活を賄えるか、こういう点では、年金だけではゆとりがないと答えている人は、世帯主が七十歳以上の世帯では四四・八%。それに対して三十歳代では八二・四%、四十歳代では八〇・一%。特に、若い層では年金支給額の切り下げ、支給開始年齢の引き上げ、こういったものに対する不安が大変強いわけであります。この数年間に行われてきた公的年金の給付水準の切り下げというのがやはり特に若い層を中心に将来不安をかき立てている、これは間違いないと思うんですね。
 大臣にお聞きしたいんですけれども、これはやはり給付の不確実性に対する私は不安だと。公的年金は支給水準をどんどん切り下げてきた、企業年金は受給権が今のようなままでは非常に脆弱であるということで、私は年金に対する不安というのは解消するどころかますます増幅する一方だと。やはり、私はこの受給権保護というのは、やはりアメリカの制度というのは一つのモデルになると思うんですが、きちっと確立することが企業年金に対する信頼を回復する、そして同時に、これは公的年金もきちっとしなければいけませんけれども、それこそがやはり私は将来不安にこたえていく道ではないか。何か厳しくすれば入ってこないから、そこのところはある程度ちょっと抜け穴をつくっておくんだというようなやり方では、私は今の年金に対する国民の不安を解消することにはならないのではないかというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。

○政府参考人(辻哲夫君) その前に、技術的なことでございますけれども、この法案の位置づけについて申し上げたいと思います。
 もともと、受給権保護が図られていない、あるいは不足であるという税制適格年金という膨大な今の実態がございまして、これはあくまでも企業の任意でございますし、その点、税法以外で何のかかわりもなかった制度でございます。これをまず積立義務のあるものに移行していただこう、我が国の現状はその段階であると。そういう段階のもとでむしろ積立義務を講じた、そしてまた、より明確な年金制を明らかにするような給付設計をお願いするというふうに変えた。いわばこういう経過的な、我が国における企業年金の生々発展の歴史から見ればまだ経過的なそういう時期にあるという意味で、先ほど私御答弁申し上げたような考え方でございまして、やはり今の段階におきましては、一歩一歩。しかしながら、この企業年金につきまして多くの国民が強い関心を寄せられるようになりまして、国民の目も深まりましょうし、それから企業にお勤めになるときも、企業年金がしっかりしているのかどうか、それについて情報開示されているのかどうか、これは企業にいわば就職するときの非常に大きなこれからは視点にもなり、そういったことを一歩一歩積み重ねて、現時点におい?,ては企業年金というものを形成、確立していく、こういう時期における措置であると考えております。

○小池晃君 適格年金に比べれば積立義務の点で前進しているというのは、それは確かだと思いますけれども、私は、制度全体に受給権保護といいながら、やはりグローバルスタンダードと一方で言っているわけですから、それに照らしてみれば余りにも受給権保護の点でもいろんな意味で抜け穴が大きい、非常に問題がまだまだ残っている法案ではないかというふうに私は思うんですが、大臣、やはりこの点で、企業年金に対する信頼という点から見れば、やはり受給権保護をきちっと明確にしていくことは極めて重要ではないかと思うんですが、大臣いかがですか。

○国務大臣(坂口力君) 企業年金にとりまして受給権保護というのが非常に大事なことはもう御指摘のとおりでございます。
 したがいまして、受給権保護というものを確実にしていくのに時間をかけながら、しかしその方向にひとつ向けていこうというのでその努力をする仕組みをこの中につくり上げているわけでございます。我々は、これからも受給権保護というものをさらに守っていくように心がけていかなきゃならないと思います。
   〔委員長退席、理事亀谷博昭君着席〕
 それは御指摘のとおりだと思いますが、今までありました企業年金から新しい企業年金へと移行をいたします中で、一度にこれを確立するということもなかなか難しいわけですから、そこが移行がうまくいけるように努力をしながら行くというふうにしていかざるを得ないというふうに思っております。しかし、最終的にそこが大事だということは、十分に認識をいたしております。

○小池晃君 さらに、積み立て不足の解消の手段として、拠出や運用成績の向上による年金資産の増加、あるいは給付の引き下げによる年金債務の抑制ということにいかざるを得ないと思うんですが、この加入者の給付を引き下げられる場合というのは一体どういう場合なのか、それから受給者の給付を引き下げることができるのかどうか、そしてそれはどのような場合なのか、説明していただきたいと思います。

○政府参考人(辻哲夫君) 現行の厚生年金基金制度において説明申し上げたいと思います。
 現行の厚生年金基金制度におきましては、まず引き下げのケースと申しますのは、母体企業において退職金規程等が変更される場合と。一番極端な場合はもう退職金規程を廃止するといった例もありますけれども、そういった退職金規程そのものが変更される場合。それから、母体企業の経営が悪化している場合、あるいは掛金負担が逆に困難な場合、これ以上引き上げにどうしても合意が得られないという困難な場合、あるいは合併に伴って給付水準を変更する場合、こういった場合に、もとより労使合意のもとでそれぞれの今言った事情に沿って給付を引き下げることも、これは現実的にいわば選択した、あるいは突きつけられた選択肢の中の一つであると考えております。
 また、受給者との関係でございますが、受給者の給付の引き下げにつきましては、基金の存続のためにやむを得ない場合に、全受給者に対する十分な事前説明などを行った上でそれを可能としております。
 ただし、重要なことでございますが、この場合にありましても、受給者が引き下げ後の年金受給を希望せず一時金での一括払いを希望したときには、引き下げ前の給付に見合う一時金を支給するということで、実質的にその水準を受給者については確保するといった措置となっております。

○小池晃君 今の御説明でもあったように、経営の困難などを理由にして給付が切り下げられると。二〇〇〇年には百七十七もの基金で給付の切り下げをやっています。労使の合意があれば加入者の給付の引き下げはできると。既裁定年金についても、受給者の三分の二が同意すれば引き下げられると。
 これもやはりアメリカの制度と比べると、アメリカではもう受給権が発生している給付については、これは引き下げは制度上許されない。それから、企業年金は給与の後払いという考え方が定着をしているわけであります。既裁定分について下げるなんというのは、とんでもないという制度であります。
 私は、既裁定分、受給者の分について、あるいは過去分については、給付の引き下げというのはこれは当然契約違反ということになりますので、これは禁止すべきでないかと。今おっしゃったように、三分の二の同意を得た場合に、受給者でも給付現価で一時金を出すことができる、それとも減額された年金給付かという選択ができるからいいんだというふうなことをおっしゃったけれども、このこと自体、私は受給者にとってみれば既得権の侵害だと、やはり契約違反だと思うんですね。これが選択できるからいいなんてことにはならないと思う。幾ら三分の二の同意を得ても、これは正当化できるものではないというふうに考えるんですが、いかがですか。

○政府参考人(辻哲夫君) 例えば、今御指摘のように、三分の二以上ということで引き下げというのは受給者についても行えるのは事実でございますけれども、ただ日本の企業年金というのは各企業で任意で実施すると。そして、これまでの企業年金の生い立ちというものが、退職金等の雇用慣行、そういったものとの関連においてこれが生まれてきたという実態のもとにおきまして、希望する者については最低積立基準額に相当する額を一時金として、これはいわば年金ではございませんけれども、最低積立基準額に相当する額というものを保証するという歯どめをつけて、今申しましたように、これまでの雇用慣行や退職金制度のバランス上生じたこの制度において認められる一つの考え方、道であると考えております。

○小池晃君 私は、任意の制度だから仕方ないんだということにはならないんじゃないかと。これは、終身の年金として既に退職給付を受給している、そういった人の給付水準を給付が始まってから引き下げることができるなんというのは、これはどう考えてもおかしいなと。これではやはり契約違反だということに私はなると思うんですよ。その点で、今の制度も含めてですけれども、大変問題が大きいと思うんです。
 我が国も国際会計基準の問題が今取り入れられつつあるわけですけれども、国際会計基準では、退職金や企業年金は退職給付債務として計上されることになっている。賃金の後払いという性格が明確に原則になってきていると思うんですね。私は、やはりこういう受給権が発生したものがさらに切り下げられるとか、あるいはもう受給が始まっているのにさらに切り下げるなんということは絶対あっちゃいけないことだと思いますし、そういう点では、やはり賃金の後払いなんだということを明確に位置づけて受給権を保護するということが必要になっているんじゃないかと思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(辻哲夫君) 繰り返し一点だけ確認をいたしたいことは、受給者につきましては、受給者が希望すれば引き下げ前の給付に見合うものを一時金として支給するということで、ここにいわゆる既得権についての一線というものが画されているということと、それから今の賃金の後払いという性格に徹するべきではないかというお考えでございますけれども、いわば企業年金制度や退職金制度、その性格についてはさまざまな考え方があるのが現状でございまして、現時点における我が国の考え方は、必ずしも企業年金、退職金、賃金の後払いの考え方が定着しているというふうには理解いたしておりませんで、私ども、現実としての企業年金の位置づけにつきましては、我が国の雇用慣行や退職金制度等の現状とのバランスを踏まえて、実態に即した取り扱いを行っているところでございます。

○小池晃君 私どもは、いわゆるグローバルスタンダードというのは弱者の切り捨てになるということで肯定しているものではありませんけれども、でも、こういう労働者の保護になるようなところはグローバルスタンダードといいながら取り入れないというのは、私は御都合主義だと言われても仕方ないんじゃないかというふうに思うんですよ。
 さらに、加入の条件の問題でありますけれども、この法案では年金給付の受給資格期間、これは二十年を超えてはならない、二十年までの間に資格が発生するということになっています。加入期間が三年以上の者は脱退一時金を支給することになっている。
 これもアメリカでは五年勤務すれば一〇〇%の受給権が発生するわけです。それから、勤続三年で二〇%、以降一年ごとに二〇%ずつふやしていって勤続七年になったら一〇〇%受給権を与える、このどっちかを選んでいいと。あるいは、このいずれかよりももっと寛大な方法でもいいと。さらに従業員が拠出した分については、これは一括かつ即時に受給権を付与するということになっているわけですね。
 この点から見ても、日本は二十年だと。これはやはりもっと短くすべきではないかと思いますし、従業員の拠出分についてはこれは一括かつ即時に受給権を付与するということが私は当然ではないかと思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(辻哲夫君) まず、二十年の問題でございますが、現在、厚生年金基金の上乗せ部分におきましては、受給資格期間が余り長くなりますと老後の年金を確保するという点からいかがかということで、受給資格期間が二十年を超えないということで余り長い受給資格期間を定めないようにしておりますが、適格退職年金につきましては、退職金の振りかえの過程で、長期勤続の優遇というような思想から、むしろ適格退職年金におきましては二十年未満としてはならない、二十年以上の長期の者に出すということでなければ適格退職年金ではないと、こういった実情があるわけでございます。このようなことから、現実問題として、現行の企業年金におきましては、労使の合意のもとで二十年という受給資格期間を設定している例がかなりあるということでございます。
 そういうことから、確定給付企業年金における老齢給付の受給資格期間については二十年以上としてはならないと。したがいまして、これは労使が話し合えばもちろん短くなるわけでございますが、二十年以上としてはならないというのは規制でございまして、規制としてはこれが限度で、これ以上もっと短くしなくちゃいけないということは難しいと考えております。
 それから、本人拠出分について何らかの受給権を付与すべきという御指摘でございますが、この前提といたしまして、新制度では三年以上加入すれば脱退一時金が、例えば二十年と受給資格期間が認められたときに、二十年に満たなくても脱退一時金が支給されなくてはならないとしておりますが、三年未満の場合には必ずしも脱退一時金が支給されなければならないとなっていないと。
 この点につきまして、本人拠出分については何らかの受給権を付与すべきというふうに御指摘されているものと考えるわけでございますが、これにつきまして、そもそも確定給付型の企業年金は加入者間における相互扶助の仕組みでありまして、本人拠出分についても基本的にはそれを運用して自分に戻ってくるというんじゃなくて、相互扶助のためにまず拠出されたものだということ。それから、本人拠出を設ける場合でありましても、実際は拠出するかどうかは本人の選択で、今は企業拠出が基本でございます。
 このようなことから考えますと、今言いました三年未満のときに本人拠出分を必ず支給しなければならないという規制まで行っておりません。
 ただ、個別の企業年金において労使が合意いたしまして、老齢給付金や今の脱退一時金の三年につきましてももっと短い受給資格期間を定めて、あるいは本人拠出分は必ず返しますというルールにする、こういったことは、労使合意があればこの新制度において何ら妨げるものではございません。

○小池晃君 すべて労使合意で、規定はないわけですね。本人拠出分について法律上その定めすらないというのは、私はこれは法の欠陥だと思います。そのことを指摘しておきたいというふうに思います。
 それからさらに、支払い保証制度の問題なんですけれども、現行の厚生年金基金の問題でちょっと見ていきたいんですが、厚生年金基金の支払い保証制度、これは八九年から全基金参加の任意の共済事業としてやっているわけです。これは加算部分について保証するんですね。
 これ、代行部分は一体どうなるのかと。今まで代行部分を割り込んで、結果として最後まで割り込んで解散した基金はなかったわけですけれども、今後その代行部分を割り込んで解散するような基金が出てくることだって十分考えられると思う。代行部分を割り込んだ場合はどうなるんですか。

○政府参考人(辻哲夫君) 代行部分につきましては、もとよりこれは厚生年金制度の代行として、当然これはもう本体と同様に代行部分は行わなければならないものでございまして、支払い保証制度の対象とはなっておりません。

○小池晃君 いや、当然積み立てておかなきゃいけないってそういう原則論だけで言うけれども、例えば九四年に日本紡績業厚生年金基金が解散した、このとき代行部分の積み立て不足があったわけですね、十三億円。それを中小企業の方たちが拠出して何とか補ってという経過があったわけです。実例はあるんですから、これは代行部分を割り込んだ場合どうするのか、全くそういったことを想定していないということでいいんですか。

○政府参考人(辻哲夫君) 私ども、代行部分につきましては、これは今言ったような例があったのは事実でございますが、これにつきまして、これを割り込んでいることさえも想定してこの制度を運営するというのは、そもそも厚生年金基金の制度のあり方そのものにかかわることでございまして、私ども、この代行部分については、経済の状況によって一時割り込んだという例のあるものがあるわけでございますが、これは必ず不足を補っていただくように法律を運用する考えでございます。

○小池晃君 代行のところは制度上そういったことを想定していないと。しかも、代行部分の上乗せ部分、加算部分についても、代行部分の三割までしか保証しないわけであります。
 実態を見ると、基金の上乗せ給付の水準というのはもうはるかに超えているわけですね。例えば四割未満の上乗せというのは百九十二基金にすぎません。まして、三割というところはもう一割にも満たない。十割以上を上乗せしているところが七百十基金もある。これは積み立て不足で基金が解散した場合の扱いとして、九割以上の基金の労働者というのは給付の切り下げになる。約束されていた加算部分の年金の三分の一か四分の一しか皆もらえないということになるわけですね。これでは基金に支払い保証制度があるといっても大変不十分だと。私はこれは保証を厚くすべきではないかと思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(辻哲夫君) この支払い保証制度につきましては、もとより企業がおのおのみずからの責任で企業を経営し、労使でその企業の年金について話し合っていくという現状のもとで、いわば企業の消長ということを含めましてまず企業責任で企業があり、その中での企業年金である。こういったことから、いわば企業が苦況に陥ったときにそれを補てんする相互扶助の仕組みにつきましては、どこまでやるべきか、やるべきであるか、やらないであるかということについても、相当我が国においては幅の広い立場があるのは現状でございます。
 そんな中で、厚生年金基金につきましては、これは支払い義務を負うた制度でございますので、いわば相当そういう助け合いの合意の土壌があるということから、これは全基金の総意に基づく任意の事業として実施されているものでございます。そして、任意で行うものの合意として、いわば給付における共通のベース、設立認可要件である代行給付の三割相当分を持たねばならないという上乗せのその部分を保証範囲とするということで支払い保証制度が合意されたものでございます。
 したがいまして、これをさらに保証を拡大するかどうかということにつきまして、今言ったような背景から、厚生年金基金関係者の自主的な判断を尊重するということが必要であると考えております。

○小池晃君 支払い保証制度があるという厚生年金基金でもこの程度だ、任意の制度だからしようがないんだと。しかも、この法案で出ている新企業年金にはこの支払い保証制度がないわけであります。この点でも欠陥法案だということを申し上げたいと思います。やはりこの点でも、アメリカは企業の従業員の年金給付の支払い保証制度がある、こういったことに倣って支払い保証制度を私はつくるべきだというふうに考えます。
 それから、基金連合会の問題ですが、この積み立て不足をどう見るか、基金連合会の積み立て不足が最近の数字で幾らになっているか、これは一体だれが補てんする仕組みになっているのか、御説明願いたいと思います。

○政府参考人(辻哲夫君) まず、積み立て不足と申しますか、年金債務に対する年金資産の額は、約二千億円不足しているという現実でございます。
 これにつきましてどのようにそれを補てんするという形になっているのかということでございますが、厚生年金基金連合会の財政運営上、積み立て不足が生じた場合には企業が穴埋めを行うような仕組みとはなっておりません。通常の企業年金であれば企業が追加拠出を行うわけでございますが、厚生年金基金連合会はそのようになっておりません。
 しかし、一般の企業年金と異なりまして、リストラ等による加入者の大量脱退によって急激に給付が発生する、あるいは積立金が減少する、こういったことはなく、いわゆる解散あるいは中途脱退者が、着実にという表現は不適切でございますけれども、コンスタントに加入してくるということで、より長期安定的な運用が可能であるという枠組みを持っております。
 そうしたことから、厚生年金基金連合会は長期的な収益目標を立てて、それを達成できるように債券や株式などの各種資産の資産構成割合を定めて運用しているところでございまして、このような長期的な運用によって、長期的には不足金を回収することが十分可能であると考えております。
 なお、短期的に見ましても、現在の連合会の給付は七千億円程度でございまして、資産規模四・六兆円に比べまして相当小さなものでございまして、そのような意味で運営に不安がよぎるということはございません。
 現在の連合会の給付は七百億円、失礼しました、七百億円ということで資産規模四・六兆円に比べて大変小さなものでございますので、いわば今、そういう運用状況のもとで厚生年金基金連合会がどうこうなるということはありませんで、今言いましたような観点から、長期的な運用によって回収できるものと考えております。

○小池晃君 しかし、現実に積み立て不足が生じているわけであります。制度上これを補てんするものがない、制度がないと。やはりここは制度の欠陥だということを指摘しておきたいというふうに思うんですね。
 さらにお聞きしたいのは、厚生年金基金を厚生省が天下り先として利用してきた面もあるんじゃないか。お聞きをしたいんですけれども、厚生年金基金の連合会と各基金にどれぐらいの厚生労働省の職員が天下りをしているか、お示しいただきたい。

○政府参考人(辻哲夫君) 厚生年金基金に在職している厚生労働省関係OBといたしましては、平成十年十一月現在で千八百十九の基金について、常勤役員として本庁、本省から八十八人、地方庁から六百三十一人が就職しており、また厚生年金基金連合会に在籍している厚生労働省関係のOBとしては常勤役員四名が就職しております。

○小池晃君 この厚生年金基金関連だけで七百人を超える職員が天下りをしている。大臣、こういう実態をお聞きになってどう思われますか。やはり厚生行政の一部門ですね、厚生年金基金という、そこにこれだけ多数の天下りが行われているということは私は異常ではないかというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(坂口力君) 天下りの問題は、この問題に限らず我々が一度検討し直さなければならない問題だというふうに思っているわけでございます。したがいまして、それは中には本当に請われて、この人でなければもうできないというようなことがあって請われて行くという人もそれは中にはあるというふうに思いますが、押しかけでとにかく何が何でもここにはこの次にはこの人だというふうに押しかけて役所の人間が次々に行くということは、これはやはり自重しなきゃならないことだし、それは新しい年金制度にしましても、こういう新しい制度をつくり上げていきますときに決してプラスになることではないというふうに思っております。

○小池晃君 最後に、年金の空洞化の問題についてお伺いをしたいんですけれども、実態調査が報告されました。加入者百万人ふえているのに、納付者が五十万人減っている。完納者は百万人も減っていると。完納者は九百二十四万人ということですね。第一号の未加入者が九十九万人おりますので、本来第一号被保険者となるべき人数は二千二百十七万人、これは納付者と完納者をこれらとの比率で見ると、納付者は五〇・三%、完納者に至っては四一・七%。
 先ほど大臣は、これは国民年金だけ見れば五割という数字になるけれども、年金制度全体で見れば五%なんだとおっしゃったけれども、これは私はちょっと無理のある議論だと思うんですよ。だって、やはり事業所を通じて徴収している被用者保険も含めて見せるというのはこれはおかしい。やはりそれぞれが個別に年金を納入する第一号の対象者から見てどれだけ納入しているのかということが、これがやはり納入率だというふうに見るべきだし、それが五割に至っている事実をやはり深刻に受けとめるべきだというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょう。

○国務大臣(坂口力君) 先ほど大島委員にお答えを申しましたとおり、第一号被保険者、この分野におきまして未納者、未加入者が非常に多いということは、これは御指摘のとおりでございます。
 これは決して私たちはこのことをやむを得ないというふうに思っているわけではございませんで、このことを何とか一人でも少なくしていく努力をしていかなければならないというふうに思っているわけでございますが、その中をいろいろと検討をしてみますと、やはり公的年金というものに対する認識というものが十分に御理解をされていない。中には、経済的な理由でどうしても支払いのできないという方もおみえでございますけれども、しかしそういう人ばかりではなくて、むしろそうではなくて、経済的なゆとりはあるけれども、公的年金に対してもう関心がないと申しますか、公的年金に自分はもう入らない、ほかの個人的な個人年金等でもうやっていくというような方がかなりおみえになるわけでございます。
   〔理事亀谷博昭君退席、委員長着席〕
 その皆さん方には、個人の立場としての年金とそして相互扶助としての年金と、両方との意味合いでひとつ御理解をいただくということをこれからもっともっとやっぱりやっていかないといけないというふうに思っております。
 これはかなり精力的にやらないといけませんので、今まで以上にひとつ新しい皆さん方に対する働きかけをしていきたいと思っているところでございます。

○小池晃君 もう時間ですので質問はしませんけれども、今の認識は私は一致しません。
 公的年金に対する認識の問題だとおっしゃるけれども、実態を見れば、三十歳以上は全部国民年金を当てにしていない理由として、保険料が高く経済的に支払うのが困難だというのがもう六割、七割超えているわけですね。二十代を見ても、これちょっと低いんですけれども、逆に学生であり親に負担をかけたくないという人が大変多いわけです。やはり未納者が約半分にも達している最大の理由は、私はこの保険料の高さだと、それから給付水準がどんどんどんどん切り下げられていることだと、それに対する不信感だと。
 今回の企業年金法も、じゃそれに上乗せする部分で本当に信頼性のあるものかというと、先ほど来議論してきているように、受給権保護という点では数々の問題点が私はあると。やはり年金に対する信頼性を高めるというのであれば、公的年金の給付水準をしっかり国が支える、同時に企業年金については、企業の社会的責任を守らせて受給権保護、支払い保証がきちっと整った制度にしていくということが必要であるということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 

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