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153-参-厚生労働委員会-4号
2001年10月25日


○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 まず最初に、小規模作業所の助成問題をお聞きしたいんですが、これまで法定外施設として国の助成は一カ所当たり年間百十万円、ことしから定員十人以上の小規模作業所、障害者の施設ですが、法定化されて年間千百万円の運営費補助と。ことしは百二十カ所予算がついておりますけれども、身体、知的、精神、それぞれの予算とそれからこれまでの補助決定状況についてお示しいただきたいと思います。

○政府参考人(高原亮治君) 平成十三年度予算におきます小規模通所授産施設に対する補助対象箇所数と補助承認件数についてお答えいたします。
 身体障害者小規模通所授産施設につきましては、補助対象箇所数四十五カ所に対して承認件数四十三カ所、知的障害者小規模通所授産施設につきましては、補助対象箇所数二十九カ所に対して承認件数百四カ所、精神障害者小規模通所授産施設については、補助箇所数四十六カ所に対して承認件数四十二カ所となっております。

○小池晃君 合わせて補助決定百八十九カ所、法定補助が決まっております。
 来年度の概算要求では何カ所ふやすことになっているんでしょうか。全体の数で結構です。

○政府参考人(高原亮治君) 十三年度予算におきましては百二十カ所でございましたが、十四年度概算要求におきましては百二十カ所増の二百四十カ所としておるところでございます。

○小池晃君 百二十カ所ということなんですけれども、ことし百八十九カ所、かなり要望にこたえて補助をされていると。その数字から比べれば少ないわけであります。
 これは非常にやっぱり現場の切実な要求が強いわけですよね。もう皆さん御存じだと思います。ですから、大臣にぜひこれはお答えいただきたいんですが、やっぱり要望には極力こたえるんだということでこれは対応していただく、私はこの百二十という数字自体ももっとふやすべきだと思うんですけれども、やはり現場の要求に極力こたえるんだという方向でやっていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(坂口力君) ちょっと違っておりましたら後で御指摘ください。
 平成十三年度が百二十カ所でありましたものを、平成十四年度要求におきましては二百四十カ所、これは小規模通所授産施設の方でございますがいたしております。しかし、今、先生が御指摘の部分というのは小規模作業所のところでございますね、小規模作業所……

○小池晃君 小規模通所授産施設。

○国務大臣(坂口力君) わかりました。
 この小規模通所授産施設が二百四十、この十四年度予算におきましては二倍といたしましたけれども、これではまだ十分ではありませんからもう少し頑張ってくださいという御意見ならば、できるだけ頑張ります。

○小池晃君 要するに、私が言いたかったのは百二十と予算がついて、ことし百八十九と頑張ったんですよ、だからことしも百二十という予算そのものももっと頑張ってふやすべきだし、実際はやっぱり現場の要求に極力こたえるべきだと、そのことをお伺いしたいんですけれども、一言でいいですから大臣に答えていただきたいと思うんです。

○国務大臣(坂口力君) もろもろの条件もございますけれども、できるだけ頑張ります。

○小池晃君 これは本来はもっとやっぱりふやすべきだと思うんです、私は。というのは、私ども去年今田障害保健福祉部長にお会いしたときに、五年間で千カ所つける方向で頑張るんだとおっしゃった。今これ毎年百二十カ所ということでは五年で六百カ所にしかならないんですね。やはりせめて五年間で一千カ所法定、運営費補助をつけるんだというペースに私は引き上げるべきではないかと思うんですが、これはいかがでしょうか。

○政府参考人(高原亮治君) 五年間で一千カ所というもくろみというふうなものはあったというふうに聞いておりますが、予算上の制約等ございます。予算上の数以上のものを昨年も努力して他のところからやりくりをした事情もございます。そういうふうな方向で拡充を図ってまいりたいと考えております。

○小池晃君 そもそも百二十カ所ずつつけていっても、今約六千カ所あるわけですからこれを全部やろうと思ったら五十年かかるわけです。ですから、私は五年で千カ所というもの自体ももっと引き上げるべきだと思うんですね。一カ所当たりの金額も、これは既存の障害者通所授産施設と比べて低いし、地方自治体の基準と比べても十五の県と政令市で下回っているのが実態だそうであります。対象と金額の引き上げ、これは緊急の課題だということで、私、強く要望したいというふうに思います。
 さらに、法定化されていない無認可の小規模作業所、こっちの問題に、大臣、今度はそちらの問題になるんですけれども、この予算が年間一カ所当たり百十万円。ところが、来年度の概算要求では、前年度三十億六千万円から二十九億三千万円、四・三%削減されているんです。数でいうと、身体、知的、精神、それぞれ四十カ所ずつ計百二十カ所減らされるわけですね。
 これまで無認可小規模作業所に対する助成、この予算を削減したことはあるんでしょうか。あるかないかだけお答えいただきたい。

○政府参考人(高原亮治君) 過去において、対前年度に比べ小規模作業所につきまして削減されたことはないというふうに認識しております。

○小池晃君 要するに、毎年毎年これは箇所数ふやしてきたと。それでも、その百十万円では少ないという声もあったし、現時点では六千カ所のうち二千七百八十五カ所、半分もついていないと。私は、こういう状況では予算を毎年毎年ふやすことこそ当然だと。それなのに初めて減らすと。これはどういうことかというふうに思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(高原亮治君) 厚生労働省といたしましては、小規模作業所の運営の安定化を図る観点から、小規模通所授産施設への移行の道を開き移行を促進していること、御案内のとおりでございます。このため、平成十四年度概算要求におきましては、実態を踏まえまして小規模通所授産施設の補助金について増額したというふうにただいまお答えしたところでございます。
 小規模通所授産施設と小規模作業所は、規模の点で、御案内のとおり、小規模作業所のうちの比較的規模の大きいもの、そして経営の安定しているものについて、ある一定の基準を満たしたものについて移行を促進しているところでございます。これを合わせてみますと、小規模作業所、小規模通所授産施設合わせた予算で見ますと、平成十四年度概算要求におきまして前年度比一四・八%になっているということでございますので、よろしく御理解いただきたいと思います。

○小池晃君 いや、これはよろしく御理解できないんですよ。だって、一千百万円のところと百十万円のところがあるわけですから、一千百万円の補助箇所をふやしていけばトータルとしてふえると、そういう議論でしょう。
 そうじゃなくて、私が言いたいのは、毎年百二十カ所法定箇所ふやしても、実際小規模作業所というのは毎年三百カ所ふえているわけですから、百二十カ所幾ら法定化された施設をふやしても、全く助成金を受け取れない小規模作業所の数というのはふえていくわけですね。ですから、私、もちろんその法定化する小規模通所授産施設、この数自体もふやしていく、これは当然やっていただきたい。それと同時に、やはりどんどんどんどんふえている無認可の小規模作業所に対する助成をせめて減らすということはないじゃないかと。そういうふうにすれば、これは全く補助金が一切受け取れない小規模作業所の数というのはふえていくわけですから、そういうことはやめていただきたいというふうに申し上げているんです。
 ぜひこれは、大臣も所信のときに、障害者施策、ノーマライゼーションの理念に基づいて障害者プランの着実な推進を図ると。小規模作業所の果たしている役割は極めて大きいんだというのは、これは共通の認識になっていると思うんですね。ぜひ、こういう助成金の削減というのは障害者の自立、社会参加、そういう点からは逆行すると思いますので、補助金の削減はやめていただきたいということを私強く申し上げたいというふうに思います。
 その上で、きょうはちょっと医療の問題を取り上げていきたいというふうに思うんですけれども、まず最初に国保のことであります。
 国民健康保険の実態が大変なことになっている。昨年の保険料の滞納が、これは全国で三百七十万世帯と。非常に不景気のもとでリストラ、失業がふえているわけです。滞納、ことしのはまだ発表されていないんですけれども、恐らくさらにふえているだろう。滞納だけじゃなくて、やはり国保法が改定されて、一年以上の滞納者に資格証明書の発行が義務づけられました。これで資格証が今大量に発行されているという実態があります。
 例えば京都。京都府は昨年六月で二千二百件だった、府でですね。ところが、ことしの三月で京都市だけで三千四百件。それから大阪府。大阪府は昨年二千七百件。これがことし四月時点で寝屋川と東大阪の二つの市だけで四千三百件。それから大分県は、県として昨年百七十件だった。今、大分市だけで二千件であります。
 これは、厚生省が調べた数字まだ出ないんで実態、全国把握できていないんですけれども、私ども調べた範囲でも本当に激増しているという実態があるんじゃないか、このように激増しているという実態あるんじゃないかと思うんですが、いかがですか。把握されていますか、厚生省として。

○政府参考人(大塚義治君) 今お話のございました被保険者証、通常の被保険者証にかえまして資格証明書を出すということが昨年の四月から義務づけられたわけでございますけれども、一年間の滞納ということでございますから実質的には本年の四月から動き出している、こういう状況でございます。
 御質問の点につきましては、毎年六月一日現在で資格証明書の交付状況あるいは滞納世帯の状況について各市町村の状況を都道府県を通じて調査をいたすこととしておりまして、間もなく取りまとまる予定でございます。増加はしておるようでございますが、激増といいましょうか、増加の傾向であることは間違いございませんが、大幅な増というような感じでも……

○小池晃君 資格証。

○政府参考人(大塚義治君) 資格証につきましても、大幅な増というような感じではございませんが、増加の傾向でございます。

○小池晃君 それは六月だからなんです。九月、十月に物すごいふえているんです、私ども調べたら。
 なぜこんなふえているかというと、かなり現場では機械的、一律な資格証の発行というのがあるんですね。例えば、北九州市は半年滞納するとすべて資格証を送りつけているそうです。それから、愛媛県の松山市ですけれども、これは昨年六月に資格証明書は二百二十八、ことしの九月には二千二十四。滞納世帯の二割なんですね。市の担当者の方は、昨年までは母子家庭とか障害者家庭、これは滞納があっても一回でも納入されれば発行を留保していたと、資格証の発行を。ところが、今回、法を遵守して全部一律に資格証を発行したとおっしゃっているんです。こういう一律なやり方がやられている。
 私、こういう事情にかかわらず一律に保険証を取り上げるようなことはこの法の趣旨にも反するのではないかというふうに考えるんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(大塚義治君) 国保制度の基本を支えるのが保険料でございますから、市町村におきましては個々の被保険者の実情を十分考慮しながらも、できるだけ納めていただくというのは当然の事務、また責務でもあるわけでございますが、おっしゃいますように、それぞれの家庭の事情もございます。また、法令上も一定の要件もございます。そうした要件に照らし機械的に処理するのはいかがか、これはおっしゃるとおりだろうと思います。個々の実情、それから法令の規定に照らしまして、よくよく事前に十分な納付相談なども行いまして適用するというのが妥当だろうと考えております。

○小池晃君 さらに、保険証がなくて資格証になった場合に窓口で全額払わなければいけない、これが深刻な事態を生んでいます。北九州市では、保険証がなくて病院にかかれなかった三十代の女性が亡くなっているという事態もあります。
 資格証明書を発行する理由とか目的というのは一体どういうことになるんでしょうか。

○政府参考人(大塚義治君) ただいま申し上げました点と繰り返しになるかもしれませんが、一つには全体として申し上げれば的確な保険料の徴収、逆に申しますと保険料を納めていただくように被保険者に御協力をお願いするというのがベースでございますけれども、当然のことながらいろんな事情がございますから、できるだけ被保険者と接触をし、その実情も考慮しながら適切な運用をするという点に究極の、究極のと申しますか、制度の趣旨の基本はあると考えております。

○小池晃君 要するに、これはペナルティーといいますか罰則的なものということじゃなくて、きちっと来ていただいて事前に十分な相談をやる、個別の具体的な事情を考慮する、そのために発行しているんだというふうに理解してよろしいんですね。

○政府参考人(大塚義治君) 基本はそのとおりでございます。

○小池晃君 ところが、実態はどうかというと、札幌市で資格証の患者さんが心不全で意識もなく緊急入院した。ところが、自治体はどういう対応をしたかというと、保険料を全額払わないと保険証を交付しないと、こういう対応をしているんですね。
 私は、この資格証明書を発行された人が重い病気で緊急入院したような場合、これはまさにいわゆる特別な事情だと思うんですよ、緊急な入院で家計にも大変な影響を与えるわけですから。ですから、こういう特別な事情の場合ということではやはり直ちに保険証を発行すべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(大塚義治君) その辺になりますと、まさに個々のケースによらざるを得ないと思いますけれども、特別な事情の場合には資格証を交付していた場合においても被保険者証を交付することができる規定がございます。その中に、例えば世帯主あるいはその世帯主と生計を一にする親族が病気あるいは負傷いたしまして保険料の納付に支障が生じているというような状況の場合には被保険者証を交付することができる規定もございます。
 こうした規定を活用すべきだと思いますが、また逆に急病ですべてというのもこの制度の趣旨に反するわけでございまして、これは市町村の事務はなかなか容易でないでしょうけれども、やはりケース・バイ・ケースによって判断をせざるを得ないのだろうと考えております。

○小池晃君 私、一律に発行しろとは一言も言っていないんです。急病になってもいわゆる悪質滞納者ということだったら、それは窓口で払えるケースが多いと思うんです。急病になってもさらに窓口で払えないという人は、全額自己負担できないという人は、これはまさにやはり特別な事情の人が私は圧倒的に多いんだろうというふうに思うんですね。
 ですから、一律に出すという意味ではなくて、やはりそういう急病で入った場合、特別な事情に該当すると。そういう場合はかなりせっぱ詰まっていることが多いわけですから、私、保険証を発行するという対応は、今お話しになりましたけれども、やはりそういう場合は直ちに発行するということがこの法の趣旨にのっとった運用ではないかと思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(大塚義治君) 例えば、それこそ先ほど来お話が出ていますように、事前納付相談などで保険料納入に誠意あるといいましょうか、その意欲と計画もある、その実績もあるというようなケースで急病になったと。それがゆえに当初の計画ないしは納入の状況がスムーズにいかなくなったというようなことになりますと、その被保険者証を交付するケースに当たり得るとは思います。
 ただ、いかんせん、いろんな条件のもとでの判断でございましょうから、一つのケースとして申し上げれば十分可能性はあると思いますけれども、あとは個々の市町村で御判断をいただかざるを得ないと考えております。

○小池晃君 今まさに現場で実態として起こっているのは、この資格証の発行、短期保険証の発行。そういう中で、その収納率が、逆に大阪市なんかでは短期保険証を一万件以上発行して収納率下がっているわけですね。
 収納率が下がると調整交付金が下げられる、そうすると国保財政が悪化してさらに保険料が値上げされる、そうすると払えない人がふえて収納率が低下する、まさに悪魔のサイクルのような状況になっているんだと。私、こういうペナルティー的なやり方はやめるべきだし、この調整交付金の引き下げというやり方もやめるべきだし、そもそもこの高過ぎる保険料を正すために国庫負担をふやすべきだ、払える保険料にする、このことこそ解決の道なんだということを申し上げたいというふうに思うんです。
 その上で、医療制度の改革試案の問題をお聞きしたいんですけれども、健保本人三割負担に引き上げということが言われております。この負担増の実例をちょっと挙げてみたいんですが、例えば気管支ぜんそくで通院中の二十九歳の方、現行の負担、薬局での負担を含んで計算したんですけれども、二千百八十円から三千百九十円、千十円の増加であります。進行胃がんで通院中の五十八歳の方、二万二千五百八十円から三万三千二百四十円に一万六百六十円の増です。それから、大腸ポリープの切除で二日間入院した五十四歳の方、二万三千四百五十円から三万四千七百九十円、一万一千三百四十円負担増、それから、そけいヘルニアで手術した五十七歳の方、四万五千三十円から六万五千二百円、二万百七十円の増加、これは入院の場合は食事代も含む負担ですが、こういう負担増のケースが生じるということはお認めになりますね。

○政府参考人(大塚義治君) どのような具体例を前提に試算するかにもよるわけでございますけれども、自己負担の割合を今回私どものお示ししております試案では被用者保険本人を二割から三割に引き上げるということでございますから、全体に御負担がふえるということは事実でございます。
 ただ、念のためでございますけれども、その一方で薬剤の一部負担制度、これは廃止をするわけでございますから、単純に二割から三割に引き上がるわけではございません。しかし、ケースによってはお示しのようなケースが生じ得るということについてはおっしゃるとおりかと思います。

○小池晃君
 今のは薬局の負担も含めて計算した数値です。
 九九年の患者調査で三十五歳から六十四歳までの患者数、これは九六年に比べると一二・五%減少しております。九七年に健保本人二割負担の引き上げがやられた。私はこの影響がこの患者減の主要な原因であるというふうに思うんですが、そのことはお認めいただけますね。

○政府参考人(大塚義治君) 今御引用になりました患者調査、これは三年ごとの調査でございますので、ちょうどその間の状況の変化もございます。ただ、一般的に申し上げますと、負担の仕組みが変わりますとそれによって何がしか患者の受療行動に変化が生じる、これは経験的に私どもも承知をしておることでございます。
 したがいまして、その影響が皆無とは申しませんけれども、ただいまお示しになりました患者数の減は、実は全般的に申しますと昭和六十年以降その減少傾向が続いているわけでございまして、それの流れの中で、制度改正による影響も皆無ではございませんけれども、両方重ね合わさった数字かなという感じはいたします。すべてがあるいは主要な原因かどうかということについてはにわかには判断できないと考えております。

○小池晃君 一二%の減なんというのはないんですよ、かつて。せいぜい数%台ですよ。これはやっぱりどう考えたって、これは日本医事新報も患者負担の引き上げが主要な原因だと書いているんです。だれが見たって一番の原因はそれですよ。
 大臣、二割負担にしたことで受診抑制がいわゆる現役世代にかかったということは周知の事実だと思うんです、これは証明済みだと。これを三割負担にすれば、やはり私はさらにこの事態は悪化することは目に見えていると思うんですね。こういう形で現役世代の労働者の負担増ということをすれば、私は必要な医療を抑制されるという事態だって生まれ得る、非常にそういう危険があるというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(坂口力君) 医療制度の改革につきましては、年末に向けてさらに議論を重ねているところでございますので、今限定的なことを申し上げることは差し控えさせていただきたいというふうに思いますが、二割から三割へのもし増加をされるとするならば、どういう影響があるかということでございます。
 これは前提といたしまして、この医療保険制度というのは一元化の方向へ向かうのが私は一つの好ましい方向だという考え方を持っておりますが、そうした前に、その前提としてさまざまな条件というのは一元化をしていくことが望ましいというふうに思っております。
 それで、もし仮に二割から三割にするということになれば、当然若干のその影響が出るだろうということは思いますけれども、しかしその方が医療にかからないということに直接結びつくのかどうか。といいますのは、ちょっとした病気でありますとどの患者さんも、私が過去に一度調べたことございますけれども、大体二・五カ所ぐらい病院におかかりになっている。すなわち、二カ所か三カ所病院を渡って渡り鳥をしておみえになるという現実がございます。そうしたことが、あるいは三カ所でありましたところが二カ所になるとか、二カ所でありましたところが一カ所になるとかといったようなことが影響することは、当然私は考えられるというふうに思っております。

○小池晃君 今これだけ景気悪いんですよ。三十五歳から六十四歳の人が暇だから病院に行くとか、そういうことはないですよ。やっぱり必要だから行っているんですよ、みんな。それは減るということはやはり大変な健康に対する重要な影響が出てくるということは、私はこれは厚生労働大臣として当然心配すべきことだと思う。何がしかの影響が出るというような認識では私は困ると。
 もう一回後で大臣にはお伺いしますけれども、引き続きちょっと高齢者の問題も聞いた上で大臣にもう一回再度お尋ねしたいと思うので、高齢者の問題に次に行きたいと思います。
 高齢者の負担増でいうと、高血圧、糖尿病で月二回通院中の方、実例ですけれども、現在の負担が定額で千六百円の方、この方が七十五歳以上だと一割負担で四千二十円、二・五倍です。七十四歳以下だと二割負担で八千五十円、五倍であります。また、上下の総義歯、総入れ歯ですね、これを入れる場合は、実例で現在三千二百円の方、七十五歳以上だとすると六千七百円、七十四歳以下で一万三千三百八十円、三千円台が一万円を超えるわけであります。
 在宅治療だとどうか。慢性呼吸不全の九十歳の方、月二回の往診で今までの負担が千六百円、これが一割定率で一万二千三百二十円、七・七倍です。それから、胃がんの末期で自宅療養中の往診を受けている方、この方も今までの負担が三千二百円に対して四万二百円、上限に達してしまう。十二・六倍であります。
 これも、こういうケースがあることはお認めになりますね。

○政府参考人(大塚義治君) どうも先ほどの御質問と類似でございますけれども、どういうケースをとるかということにもよると思います。もちろん、逆に今回の改正によりまして軽減される方もございます。そういうケースもございます。したがいまして、どういうケースによるかということでございますが、おっしゃるようなケースをとればそういうケースもあり得るということはおっしゃるとおりだと思います。
 ただ、念のために申し上げて恐縮でございますけれども、例えば月額三千円というのが現在の外来の上限でございますけれども、これ以下の医療費が外来ですと全体の八六%でございます。五千円以下、負担でございますと五千円以下ということになりますと九五%でございます。したがいまして、お示しのようなケースもあり得るわけでございますが、全体を見ますとほとんどの場合には五千円以下あるいは三千円以下の御負担というのがデータによるケースでございます。

○小池晃君 上限に達している人はそれだけだといっても、一割でも非常に深刻な事態は生まれ得る。二割負担になればさらに負担がふえることは明らかなんです。上限を外しただけの影響じゃないわけです。
 私、これ非常に矛盾が大きいと思うのは、高齢者の自己負担の問題ではもうつい一年も前に議論したばっかりなんです。そのときに、私は高齢者に定率負担を導入したらば大変なことになるというふうに言ったらば、当時の津島厚生大臣も森総理大臣も何と言ったか。負担額の上限を設けるなどいたしましてきめ細やかな配慮を行っておりますと答えたんです。一年もたっていないんです、それから。それなのに、この上限を撤廃して、さらに高齢者の負担を引き上げる。高齢者の場合は、先ほどの規格でいけばほとんどの方は負担増になることは間違いないです。若年者の場合は薬剤の一部負担との関係でいろいろあっても、高齢者の方はほとんど負担増になるのは間違いないんです。一年もたたない時期に、配慮はしているから大丈夫だと言っていたのを、上限を外して負担を引き上げる。
 あれから一年もたたないのにもはや配慮は必要ないというふうにおっしゃるんですか。

○政府参考人(大塚義治君) 前回の健康保険法等の改正の際にいわゆる一割負担を導入したわけでございます。そのときにも御議論がございましたわけですけれども、昭和五十八年に老人保健制度を創設して以来十七年間続きましたいわゆる定額制を定率制に変えるということで、その円滑な施行を図るために、基本的には大きな負担の変化がないようにという配慮で三千円、五千円という上限をつけると。当時もそういう御答弁を申し上げたと思いますけれども、そういう趣旨でございました。
 一方、今回御提案申し上げております試案では、今後の高齢化の進展、あるいは医療保険制度全体の持続可能性ということを考えますと、制度間あるいは世代間の負担と給付のあり方を全般的に見直すという観点で、低所得者等には十分な配慮を加えつつ応分の御負担をいただくという考え方で御提案をしているということでございます。

○小池晃君 あのときは高齢者に対して配慮して、今度は制度に対して配慮するということなんでしょうか。おかしな話だと思います。
 私は、これは世界的に見てもこの公的医療保険における自己負担の比率が日本は高い。厚生省の調査でも、フランスは一一・七、ドイツは六%、イギリスは二・四、それに対して日本は一五・四%だ。これは九八年の数字ですから、ここに前回、今回の改悪の影響を加えれば、まさに世界的にも突出した自己負担比率になる。
 大臣にお聞きしたいんですけれども、私、これは景気という点から見て、先ほどはそういう観点からお伺いしていませんけれども、今これだけ景気が冷え込んでいる中でこれだけの患者負担増をするとまさにその景気の悪化につながるのではないか、私はこの患者負担増というのは撤回すべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(坂口力君) 先ほども申しましたとおり、年末に向けましてこの医療制度の改革の最終案を固めるわけでございます。今、厚生省試案なるものを示して、そして皆さん方にそれを中心に御議論をいただいているところでございます。したがいまして、その結論がどうなりますか、もう少し様子を見て、そして結論が出ましてからまたいろいろと御議論をいただきたいというふうに思っております。
 今御指摘になりました経済との関係につきましても、十分私たちは念頭に置きながら、そして最終結論をしたいと思っているところでございます。

○小池晃君 これは、今の経済状況から見れば、こんなことをやるのはまさに愚策だということを私は申し上げたいと思います。
 さらに、今、中医協で検討されている、試案でも出されました療養病床の入院期間が六カ月を超えた場合の特定療養費化の問題です。
 これは富山県の保険医協会が十月に行った調査結果があるんですけれども、県内の七割の療養病床を有する病院から回答を得ている。これを見ると、大体六カ月を超える入院というのが六割超えるというんですね。医療経済研究機構の調査でもほぼ同様の結果が出ている。
 現在の入院基本料の相当額というのは約四十万円、四十二万円だ。これ、もし特定療養費になって患者負担になるというふうになれば、六カ月以上の入院継続困難な患者というのは続出するだろう。現在の医療保険適用の療養病床は約二十五万床、その六割とすると十万人以上の入院継続に影響が出かねない。私、大変な事態になるんじゃないかと思うんですが、これ、いかがですか。

○政府参考人(大塚義治君) この問題はいわゆる長期入院あるいは社会的入院と言われるような、そういう言葉で議論されますような課題にどうこたえるかということの一つの提案であるわけでございますけれども、その基本には医療と介護の機能分担をもう少し明確化をしていかなきゃならないという基本がございますし、それとの関連で診療報酬あるいは特定療養費の活用ということを御提案しているわけでございますが、当然のことでございますけれども、入院医療の必要性が低いにもかかわらず、主として患者の方の御事情によって入院が長期にわたるというケースを念頭に置いているわけでございますから、例えば難病の患者の方、あるいは精神疾患で長期になられる方、こうした方々については当然今議論をしております仕組みの対象にはならない。当然その療養を続けられるということでございますし、特定療養費の活用といいますのも、もし給付の必要がないということになりますと給付外となるわけでございますが、そういう現実を踏まえますと、特定療養費制度がございますから、どこまでその特定療養費という形で給付をし、どこまで御負担をいただくかという議論になるわけでございます。
 そうした全体的な仕組みの中で、冒頭申し上げましたようないわゆる社会的入院と言われるような、あるいは長期入院問題に適切に対応したいと、こういう提案でございます。

○小池晃君 かなり、十万人を超える入院継続ということに影響を与えるような大変な問題だということを否定されませんでした。これ、私、撤回すべきだと。受け皿もなしに、在宅医療の整備も進んでいない、介護保険の施設整備も進んでいない、こういう中でこんなことをやったら、もう本当に多くのお年寄りは、お年寄りだけじゃない、これは若い人も含めてだそうですから、長期入院が必要な患者さんが路頭に迷うことになりかねない、大変な混乱を生むやり方だというふうに思います。これは断固撤回すべきだということを求めたい。
 その上で、医療費の伸び率管理制度の問題が出ているんですけれども、これは高齢者の伸びの数は見込むんだというのが大臣の御答弁でした。しかし、その上の部分というのは削減対象だとおっしゃった。これは厚労省の「医療制度改革の課題と視点」を見ても、何と言っているかというと、それ以外の四%、老人人口の伸びの四%の上の四%というのはこれは若人も同様に上昇しているんだと書いてあるんですね。これは要するに年々の医療技術の進歩とか環境の改善など、そういうものなんです。
 その部分、お年寄りだけ伸び率抑制するということになれば、これはまさに老人と若年世代との差別医療を助長することになるんじゃないかと、大変なそういう事態を生むんじゃないかと思うんですが、大臣、いかがですか。


○国務大臣(坂口力君) いや、そういう議論になりますと若人も全部同じ扱いにしろという意見になってくるわけであります。だから我々は、そうではなくて高齢者には配慮をしなければならないということを言っているわけです。

○小池晃君 私は、こういうやり方は本当に、今提案されている中身、例えば一年間の予算を決めるわけですね、それを超える、そうすると翌々年の診療報酬で一点単価を変えると。そうなれば現実にどういう問題が起こるかというと、お年寄りの一点単価は十円じゃなくて八円だというふうになれば、同じ注射をやるのも若人には百円でお年寄りには八十円、二割引きということになるわけですよ。こんなことをやれば本当に現場では老人患者が忌避される、そんなことだって起こりかねない。あるいはやっぱり保険外負担で徴収しようという病院が出てくる、こういうことだってあるだろう。本当に私、こういうやり方というのは老人医療の現場を荒廃させるやり方になるんじゃないかと思うんです。
 そもそも私、今のやり方、医療費の伸びを経済の伸び率の範囲に抑えるそのものが私間違いだと思う。だって、景気が悪くたって医療の必要性というのは変わらないわけですよ。幾ら景気が悪くても医療というのは常に最善でなきゃいけないはずです。しかも今景気が悪化しているわけです。失業やリストラのあらしが吹いているわけです。今のような時期ほど生存権を保障するために社会保障制度の役割は増大しているわけです。財政的にもしっかり支えるということが大事なんじゃないですか。景気が低迷している今だからこそ、むしろ医療や社会保障をしっかり支えるんだ、それで景気の回復を図るんだ、私、これが日本国憲法の示している立場だというふうに思うんですよ。
 だから、私、根本的に考え方が間違いだというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(坂口力君) 我々が今考えておりますのは、この少子高齢社会の中で現状だけではなくて将来も安定した医療制度がどう確立できるかということであります。したがいまして、現在はいいけれども、将来、私たちの子供や孫の時代になったら大変なことになるというのではいけません。我々は、将来も見ながら、将来も安定できる制度改革というものを目指していかなければならないというふうに思っています。したがいまして、負担の方も、それは三割よりも二割、二割よりも一割、少ない方がそれはいいかもしれませんけれども、しかしただ単に負担の割合だけで我々はこの制度を考えているわけではありません。将来安定してこの制度が成り立っていくかどうかというところに目を据えて今度の改革に取り組んでいるところであります。
 したがって、例えば二割から三割にふえるといったことによってあるいは受診が抑制されるのではないかというお話もありますけれども、私はそんなにそのことによって受診が抑制されるとは思っておりません。必要なところにつきましては必要な制度をその中に導入をしていくという最終案を私たちはまとめたいというふうに思っているところでございます。

○小池晃君 もう時間ありませんので述べるだけにとどめますが、抑制されるということは明確だと思います。既にそれは実証されています。こんなことをやったらば、もう明らかに高齢者も若年者も受診抑制される。そもそも受診抑制が目的でやるわけでしょう、医療費を抑制するためにやるわけでしょう。まさに矛盾していますよ、言っていることが。
 私、将来が大変心配だ心配だ、大変だとおっしゃるけれども、例えば六月十四日に国立社会保障・人口問題研究所で講演されたアメリカのミシガン大学のキャンベル教授、この方は何と言っているか。経済が悪くなるといろんな面で改革が必要だと言われるが、日本の医療保険制度は諸外国に比べて効率的だ、構造改革の対象とするのは間違いだと言っています。そもそも日本の対GDP比の総医療費はOECD加盟国でチェコと並んで二十位です。決して日本の医療費というのは非常に肥大化しているわけじゃない。私は、主要国の比較でも、経済力に比べて決して日本の医療費は高くない。今必要なのはやはり医療に対する国庫負担、しっかりそれを支えていくことだ、それこそ国民に対して日本の将来が、社会保障が安定していると、そのことを示すことが、私、政治の責任だ、今こそ示すべきメッセージだというふうに思います。
 そのことを申し上げて、私の質問を終わります。
 

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