本文へジャンプ
日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

154-参-厚生労働委員会・薬事法等一部改正案審議(速記録)

2002年05月30日

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 薬事法、血液事業法の改正、これは悲惨な薬害を二度と再び繰り返さないためのものでなければならないと思います。その点で、法案審議に当たって、私は、現在大問題となっているC型肝炎をめぐる事実を徹底的に解明することが求められているんではないかと、そう思います。
 そもそもC型肝炎は、これは感染の経路が輸血あるいは注射、集団予防接種、そして血液製剤の投与、そういったことを通じて感染が広がったとされている。中でもフィブリノゲンによるC型肝炎というのは、これはその規模の大きさからも薬害エイズあるいはヤコブ病を上回るような、規模としては、薬害というふうに言えるんではないかと。
 私、大臣にまず基本的な認識をお伺いしたいんですが、日本ではフィブリノゲン製剤を二十八万人以上が使用した、そして一万人余りがC型肝炎に罹患した、感染したとされている。大臣はこのことの重大性と厚生労働省としての責任、このことについてどのように認識をされていらっしゃいますか。

○国務大臣(坂口力君) C型肝炎が非常に蔓延をしたということは、これは重大なことだというふうに思っております。
 フィブリノゲンのお話がございましたけれども、フィブリノゲンももちろんでございますが、その他、これは保存血液を含めて、かなり長い間に拡大をしてきたことは事実でございまして、大変重大なことだというふうに思っております。
 ただ、今までのHIVやCJDなどの場合と若干趣を異にしておりますのは、このC型肝炎のビールスが発見されたのは一九八八年ですか、八九年ですか、大体その辺だというふうに思いますが、それ以前から、血清肝炎あるいは輸血後肝炎として肝炎が発生するということ自体はずっと以前から分かっていたということであります。しかし、それは分かっていながらも、しかしその血液を使わなければその生命を維持することができないというようなことがあってずっとこれは使われてきたという経緯がある。そこは若干趣を異にしているというふうに私は思っておりますが。
 しかし、この血液、とりわけ血液製剤によりましてC型肝炎が広くこれが拡大をしたということは重大な問題であるというふうに思っておりまして、今日広がりました状態といったものにつきまして現在調査をしているところでございます。

○小池晃君 極めて重大だと思うんですね。そういう一般論で済ませられる問題なのか、フィブリノゲンについて今日はちょっと徹底的に議論をしたいと思うんですが。
 これは一九六四年に製造承認されます。まず最初に、医薬局長にお伺いしたいんですが、一九六四年のフィブリノゲン製剤の製造承認の時点で、当時の厚生省はこのフィブリノゲンの肝炎発症の危険性をどのようにその時点で認識をされていたんでしょうか。

○政府参考人(宮島彰君) 今お話しありましたように、昭和三十九年にフィブリノゲン製剤が承認されたわけでありますけれども、当時の厚生省がこの製剤を承認するに当たり肝炎の危険性をどの程度あるいはどのように認識したかということにつきましては、もう既に三十年以上経過しておりますので、現在ではなかなか明らかではないわけでございます。
 ただ、先ほど大臣からもお話ししましたように、今関係の調査を進めておりまして、その中で何かそれに関するものが出てくるかどうか分かりませんけれども、現在の段階では明らかではないということでございます。

○小池晃君 昔のことだから分からないということで済ませられないと思うんですね。
 このフィブリノゲン使用による肝炎発生の危険性については、これは一九六四年の製造承認当時の添付文書があります。これは先日ミドリ十字、三菱ウェルファーマの方から厚生省に提出されているはずであります。
 この六四年当時の添付文書には、紫外線照射を施してあるが、この方法による滅菌は必ずしも血清肝炎ウイルスを含む全ウイルスの完全不活性化を信頼できないと記載をされております。ということは、この製造承認の時点で肝炎感染の危険性があるということは当然厚生省としては認識をされていたんじゃないかと思うんですが、どうですか。

○政府参考人(宮島彰君) 御指摘のように、三菱ウェルファーマ社から提出された承認当時の添付文書には、今お話しありましたように肝炎ウイルスの完全不活化は信頼できない旨の記載がされております。したがいまして、旧ミドリ十字社としては肝炎感染の可能性を認識したものというふうに考えられますが、一方、厚生省側においてその当時この肝炎感染の危険性についてどの程度、どんな形で認識していたかということについては、ちょっと今の、現段階では明らかでないということでございます。

○小池晃君 そんなとんでもない話ないでしょう。製造承認したときの添付文書の中身を何で知らないんですか。添付文書の中身見ないで製造承認したんですか。そんなばかな話ないですよ。少なくとも製造承認の時点での添付文書で副作用の危険があるということは認識していたはずですよ。どうですか。

○政府参考人(宮島彰君) 今、三菱ウェルファーマ社から出された添付文書の中の記載は今申し上げたようなことでございますけれども、いわゆる厚生労働省側で承認に当たりましてどの程度危険性について評価といいますか認識していたかということについては今定かではないということであります。

○小池晃君 いや、おかしいです。だって、薬事法でも添付文書の記載というのはこれは規定されているわけですから、承認されるときの添付文書の中身について、当然厚生省としてそれは知らなかったで済まされないでしょう。それは当然厚生省として内容については確認しているんじゃないですか。それをどう評価したかは今記録が残っていないにしても、その時点でその中身について厚生労働省として承知をしていたということはこれは当然のことじゃないですか。どうですか。

○政府参考人(宮島彰君) 承認当時においてはおっしゃいますように添付文書に記載された事項について承知していたものと推測されるわけでありますけれども、その肝炎危険性の、どの程度、レベルとしてどういった形で危険性を認識していたとかということについては、ちょっと現在では定かではないということでございます。

○小池晃君 当然これは見ていたんですよ。承知していたんですよ。
 そしてさらに、製造承認時の効能、効果ですが、これは添付文書には、フィブリノゲン欠乏症に用い、特に早期胎盤剥離に伴って起こる重症な出血を防御する、臨床応用としてはフィブリノゲン欠乏症による急性胎盤早期剥離、広範な外科的処置、先天性又は後天性慢性低フィブリノゲン血症を挙げております。
 これは、先ほど議論あった先天性低フィブリノゲン血症の場合はこれはフィブリノゲンの投与が欠かせないと。しかし、これはごくまれな疾患であって、二〇〇〇年度の全国調査報告書によれば全国でわずか四十三名ということであります。一方、そのほかの、いわゆる後天性ということでくくられていますが、出産時の胎盤早期剥離、あるいは重症の外科手術の場合、広範な外科処置の場合、これははるかに症例数が多いわけですね。
 私は、この承認時に効能、効果についてこのように幅広く用法を認めたということがその後の被害拡大につながったと言えないかと思うんですが、その点いかがですか。

○政府参考人(宮島彰君) 今御指摘のように、昭和三十九年の承認時におきまして、いわゆる低フィブリノゲン血症の治療ということで先天性のほかに後天性のものについてもこの効果を認めて承認しているわけでありますけれども、そのときにいわゆる肝炎感染の危険性をどのように認識してそういった承認を行ったかということは、ちょっと現在のところ明らかではありません。
 ただ、平成十四年四月五日付けで三菱ウェルファーマの報告書、出された報告書によりますと、現在におきましてもドイツ、オランダ、オーストリア等のヨーロッパ諸国においては先天性以外に後天性の低フィブリノゲン血症についても適応として認めているということも報告されておるところでありますので、現在、外交ルートを通じまして、こういった海外規制当局についても事実関係を今照会して調べているというところでございます。

○小池晃君 都合のいいことだけはよく覚えているっしゃるようですけれども、分からない分からないって、昔のこと分からないで済ませるんだったら厚生省なんて要らないんですよ、素人がやっているんじゃないんですから。こういう重大なことをきちっと記録も残しておかない、こういうところに本当に血液行政に対する不信感をあおる私は大きな原因があると思いますよ。
 分からないとおっしゃるけれども、分かる部分がかなりあるんですよ。その問題をちょっと議論していきたいと思う。
 このミドリ十字のフィブリノゲンの添付説明書を読みますと大変面白いことが分かります。これは副作用についての記載が年々年々変化していくんです。年を追ってだんだんだんだん安全だという書きぶりに変わってまいります。
 例えば、一九六四年六月、ウイルスの完全不活性化を信頼することはできない、わざわざ四角で囲んで強調してあるわけですね。それが六五年の十一月には、血清肝炎予防に最善を尽くしているが現段階では完全不活性化は保証することができない、ちょっといろいろただし書が付いてくるわけです。そして、六六年の十二月にはどうなるか。肝炎発症率は極めて小さく、また罹患してもその症状は重篤ではない、こう書いてあるわけですね。六八年の六月になると、こうなります。わずかに二例の黄疸、肝炎発生の告知を受けただけであった、多くの医師において本品の使用による肝炎発生は経験されていない。もうどんどんどんどん安全だというふうに書いていくんですよ。
 この六八年の添付文書は七四年までそのままなんですね。多くの医者は、肝炎発生経験していないと書かれたら、これは安全だというふうに受け取られるでしょう。安全な薬だというふうに、これ添付文書でお墨付き与えているようなものなんですよ。医者に対して、これは安全だからどんどん使いなさいと言っているようなものなんですよ。
 私は、先ほどの話に立ち返りますけれども、厚生省はこんなふうに当然添付文書がどんどんどんどん内容が変わっていったと知っていたはずだと思うんです。こんなふうにどんどんどんどん安全だと書き換えられていったことについて、これをそのまま放置したんですか。それとも、何かこれ対処したんですか。

○政府参考人(宮島彰君) 添付文書に対する対応につきまして、過去の状況を調べましたところ、添付文書につきましては、昭和五十六年一月以降につきましては、その記載状況を把握し安全対策の推進を図るため、その内容を変更した際には当該添付文書を提出するよう指導をしてきているということでございますが、他方、いわゆる五十六年一月前につきましては、添付文書の内容の変更についてはその都度旧厚生省に報告するよう指導はしていなかったということから、添付文書の内容をその都度把握していたかどうかということについては不明であるということであります。
 いずれにしましても、今、フィブリノゲン製剤につきましては調査をしておりますので、その中で何か明らかになってくればまた御報告したいというふうに思っています。

○小池晃君 うそを言っちゃいけませんよ。三菱ウェルファーマの報告書にちゃんと書いてあるじゃないですか、一九七四年に厚生省薬務局細菌製剤課が指導をしたと。そして、旧ミドリ十字は本剤の使用によりまれに血清肝炎に罹患することがあると改定したと、ウェルファーマ社の報告書に書いてあるじゃないですか。七四年に当時の細菌製剤課が旧ミドリ十字に指導したんでしょう。書いてありますよ。どうなんですか、その点は。

○政府参考人(宮島彰君) 今御指摘の報告にはそういった記載がありますけれども、いわゆる厚生省サイドといいますか、行政サイドにおいてそれについて指導が行われたか否か、またどんな形、行われたとすればどんな形で行われたのかという点については、現時点ではちょっと確認できていない状況であります。
 このため、更に三菱ウェルファーマ社に対しまして、四月二十二日付けで承認取得以降現在までの添付文書の記載内容の変更理由を厚生労働省に報告するよう今報告命令を出しているところでありますので、その報告を待って、その変更についての理由を明らかにしていきたいというふうに思っています。

○小池晃君 大臣、お聞きになっていたと思うんですけれども、おかしいと思いませんか。
 これ、私は、どう考えたってこのストーリーは、これミドリ十字の添付文書はどんどんどんどん安全だというふうになっていったと。それで恐らく厚生省、これじゃまずいと思ったんだと思うんですよ。このまま放置しておいたらまずいということで、私はこれは正しいことをやったんじゃないかというふうには思うんですが、細菌製剤課はこれ書き直せと指導したんじゃないかと。だから、ウェルファーマ社の報告書にもそう書いてあると。私、そういう経過だと思うんですけれども、これ、どうですか、大臣、今のお話聞いていて、ちょっとお聞きしたいんですけれども。

○国務大臣(坂口力君) 推測する以外にありませんからよく分かりませんけれども、しかし、その添付書類にどう書いてあるかは別にして、もう多くの人の血液を集めて作り上げましたフィブリノゲンから肝炎が発生することはだれしも予測できることであります。普通の保存血液、一人一人の血液ですら出たんですから、二〇%も三〇%もこれは出たわけでありますから、ましてや何千人という血液を集めてそこから作り出したものは、当然のことながら、そこから起こるということは、それは添付書類云々の話ではなくて、医療従事者の皆さん方はよくこれは御存じであったと私は思うんです。
 二例とか三例とかというようなことがたとえ書いてあったとしても、それをお使いになる先生方は、自分が使った中から何人この血清肝炎の人が、その当時はまだC型肝炎ということは分かりませんでしたから血清肝炎あるいは輸血後肝炎とかいうような言葉で言われておりましたし、もう少したちますと非A非Bというような言い方に変わってはきましたけれども、C型肝炎というのはまだ菌もビールスも発見されていないし分からなかった時代でありますから、肝炎が発生するということはお使いになる先生は十分に私は御存じであったと思うんですね。
 その一九八〇年代におきましても、例えば産婦人科なら産婦人科の書物を見てみましても、重篤な出血の場合に最も使うべきものとしてフィブリノゲンが挙げられているというようなこともございまして、これはやっぱり医学界においては、かなりいろいろ問題はあるけれども、しかしいざというときにはこれは必要だという認識が強かったというふうに私は思っております。いい悪いは別ですよ、いい悪いは別だけれども、そういう医学界における雰囲気があったことは事実だと私は思っております。

○小池晃君 その当時、C型肝炎ウイルスは発見されていなかったと、そういう議論は私は成り立たないと思うんです。だって、ヤコブ病だってプリオンというのは発見されていなかったんです。そのときのことが大変問題になっているわけです。
 私は医療現場の問題を言っているんじゃない。日本全体の血液製剤、薬剤についてもう全体を、責任を持って当たるべき厚生労働省としての姿勢を問うているんです。その点でいうと、これ、私、大変この添付文書の経過というのは非常に問題が大きいと。
 私、この経過を見ると、どう考えてもその時点で、七四年の時点で厚生省は、当時の厚生省はフィブリノゲンによる感染肝炎の危険性というのを単に知っていただけではなくて、局長お聞きしたいんですが、これは単に知っていただけじゃなくて添付文書の改定を指導する、それほど重大視していたというふうに私は考えるんですが、そういう指導を行ったんじゃないですか。そういう立場で指導を行ったということなんじゃないですか。

○政府参考人(宮島彰君) 繰り返しになって恐縮ですけれども、三菱ウェルファーマ社からの提出した報告書には、四十九年、一九七四年の改定には細菌製剤課の指導があったという記載がありますけれども、それがどういう指導であったかということについては、全く今こちらのサイドで今のところ明らかでないわけでございます。
 したがいまして、先ほど言いましたように、今調査を進めておりますので、そういった中で何か明らかになってくればまた改めて御報告したいというふうに思っております。

○小池晃君 七四年にそういうことをやっていたとしたら、七七年にFDAの取消しを見逃したということの重大性が一層これは重大になってくるわけですね。
 ちょっと引き続き議論したいんですが、この指導の結果どうなったか。七五年十一月にはフィブリノゲンの使用上の注意にこういう文章が加わります。アメリカでは本剤の使用により一五%から二〇%の急性肝炎の発症があるとの報告があり、使用の決定に際しては患者のリスク負担と投与によって受ける治療上の利益とを秤量、はかりに掛けて比べるべきだとされている。
 ちょっとお聞きしたいんですが、この記述の根拠となっている文献、御存じですか。

○政府参考人(宮島彰君) ちょっと今、手元にございません。

○小池晃君 これは、これなんです。一九七三年のアメリカ医師会のAMAドラッグエバリュエーション、薬剤評価という文献です。これ、ちゃんとミドリ十字の添付文書に引用、これだって書いてありますよ。
 これ、取り寄せてみました。全く同じ文章が書いてあるんです。ここには、フィブリノゲンによって起こる急性肝炎の発生率は一五%から二〇%という研究があるというふうに紹介されている。これがミドリ十字の添付文書に引用されているんですね。
 もう一度お聞きしますが、厚生省はこの一九七三年のアメリカ医師会の指摘を知っていたからこそ、これ七四年に細菌製剤課は指導したんじゃないですか。私はその疑いが極めて強いと思うんですが、 どうですか。

○政府参考人(宮島彰君)
 繰り返しで恐縮でございますけれども、いわゆる厚生省サイドでどういう指導をしたかについてはちょっと現段階では明らかでございませんので、今その調査を進めているというところでございます。

○小池晃君 全く同じことしか言わないんですが、これフィブリノゲン投与の危険性についてはこの論文以前から指摘があるんです。
 私たちが調べたところでは、一番古いのでは、一九六六年、雑誌JAMA、アメリカ医師会雑誌、極めて有名な雑誌です。このJAMAの一九六六年二月七日号に、メインウェアリングというんですか、ちょっと発音分かりませんが、論文が出ています。フィブリノゲンにより感染した肝炎のコントロールスタディと。これによれば、フィブリノゲンによる肝炎発症率は六%から三五%とされています。この論文、こう書いてあるんですね、フィブリノゲンの投与は肝炎感染の相当な危険があるため、生命の危機的な状態に限って使用されるべきである。一九六六年にこういう指摘がJAMAでされております。それから、一九七二年五月一日のJAMA、ここに掲載されたグラディらの論文、合衆国における輸血後肝炎の危険性、ここでは肝炎の発症率は一九%と指摘をされています。さらに、アナルス・オブ・インターナル・メディスン、これも有名な雑誌ですが、この一九七二年六月号に掲載されたウェストファルらの論文では、二五%から三〇%の肝炎発症率と指摘をされている。
 このように、フィブリノゲンの投与による肝炎の感染率は極めて高率であった。これが一九六六年の段階からアメリカのかなり有名な医学雑誌で明らかになっていた。
 こうした事実、厚生省としては御存じだったんじゃないんですか。だからこそ、ミドリ十字のこの添付文書を書き直させると、そういう指導を行ったんじゃないかと思うんですが、その点、どうでしょう。

○政府参考人(宮島彰君) 何度も恐縮でございますけれども、今御指摘の点も含めまして現在ちょっと幅広く調査しておりますので、そこで事実関係が判明したものにつきましては、また改めて御報告したいというふうに思っております。

○小池晃君 外国の研究だから知らないんだというふうに言われるのかもしれませんが、ここに一九七三年に発行された生物学的製剤基準解説というのがございます。これは社団法人細菌製剤協会の発行です。厚生省薬務局監修とされているんです。あなた方が作った文書ですよ。外国の雑誌の文献じゃないですよ。この一九七三年の厚生省薬務局監修の文書に何て書いてあるか。
 ここではWHOによる研究が紹介されている。血液及び血液製剤による血清肝炎の頻度についての報告が紹介されているんですね。全血の肝炎感染の頻度が通常一%以内なのに対して、フィブリノゲンによる肝炎感染の頻度は七%以内と紹介されている。アメリカの文献より頻度は低い。しかし、全血に比べてフィブリノゲンの感染率が高いということが明らかになっている。
 これ、厚生省、しかも薬務局が作った、監修した文書に一九七三年の段階で出ていた。厚生省が七〇年代の前半に、今問題になっている七七年以前の七〇年代の前半、遅くともこの文書で、これが発行された一九七三年より以前に、フィブリノゲンによる肝炎感染について、この危険性注目していた。だからこそ、添付文書改訂行ったんじゃないか。
 私は七〇年代前半にあなた方薬務局がフィブリノゲンの危険性について注目していたということは間違いないと思うんですが、その点、どうでしょうか。

○政府参考人(宮島彰君) 今御指摘の基準は、当然、私どもの方で作った文書でございますので、そこに書かれている記載事項については、当時のいわゆる薬務局が認識したということは推察されるわけでございます。
 ただ、そういった感染率についてどのような評価をし、またこの旧ミドリ十字に対してどういった指導をしたのかという点については、ちょっと現在のところまだ明らかではないということでございます。

○小池晃君 これ私重大だと思うんですよ。新聞報道も含めて、七七年のFDAの承認取消しの前後の問題が非常に問題になっていますけれども、それ以前に、七〇年代前半から、あるいは遅くとも七三年にはフィブリノゲンの危険性ということについて承知をされていた、非常に注目していた可能性が極めて高いと私は思うんです。
 昔のことだから分からないというふうにおっしゃるんですが、大臣、お聞きしたいのは、今、厚労省、内部調査をやられています。しかし、この内部調査の対象は七七年のFDAの製造承認取消しの経緯についてだけなんです。その前後の担当官にしか聞いていません。これでは全く私は不十分だと思うんですよ。少なくとも、この七四年の添付文書を改訂した、指導したというふうに三菱ウェルファーマは言っているわけです。そして、その前後の文献からも、厚生省知っていた可能性あると。
 私はこの内部調査の対象について、特に七四年の添付文書の書換えの経緯について徹底的に調査をすべきだというふうに考えますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(坂口力君) ですから、先ほどから私は申し上げておりますように、それは昭和三十年代からもうこの保存血液から肝炎が発生することは言われていたわけでありますから、そこから作ります血液製剤によって肝炎が発生することは、これはもう医学的常識として当然のことでございます。だから私は、それは厚生労働省といえども、現場に当たっていない人間といえども、やはりその最初から、フィブリノゲンによって肝炎が発生する確率があることは当然私は知っていたと思うんですね。
 ただし、そのことが、それと医療行為、それによって、医療を行ってそれによって患者を救うということとのこれはバランスの上でどう考えていたかということが今問題だというふうに私は思いますけれども、その当時はそれは、先ほど申しましたように、C型肝炎というビールスがあることはそれは分かっていなかった。しかし、肝炎を起こすということは分かっていた。それは僕は当然だと思うんですね。

○小池晃君 全然答えになっていないですよ。私が言ったことに全然答えていないです。
 私が言っているのは、あなた方分からない分からないとおっしゃるから、七七年まで、七七年前後の経過しか調べていないでしょうと。そうではなくて、七四年の添付文書の書換えの経過についても非常に重要なこれ疑いあるから、ここ調査すべきだと言っているんですよ。そのことについて大臣にお伺いしたい。

○国務大臣(坂口力君) ですから、そこは私は、その添付の問題云々ではなくて、それはやはりもっと前から血清肝炎が発生するということは分かっていたということを私は言っているわけです。だから、その時点がどうのこうのではなくて、その前から続いてきたということは、それは私は十分察することができるというふうに私は申し上げているわけです。

○小池晃君 大臣は一般の医療現場の問題と血液行政の全国の中心に座る厚生省の役割を混同されていると思いますよ。幾ら現場でそういう医学常識がまかり通っていって使用されたとはいえ、厚生省というのは、最新の知見を常に、国民に対する責任あるわけですから、それをとらえて、それを実際の行政に生かす責任があるわけですよ。門番としての、危ない製剤が入ってくるかどうかということの日本の門番としての役割があるわけでしょう。それがヤコブ病の和解でもちゃんと指摘をされたじゃないですか。そのことが全く分かっていないんじゃないですか。
 私、驚くべきですよ。この調査もしないんですか。だって、さっきから言っているじゃないですか。七四年に厚生省が指導しましたというふうに相手方は言っているんですよ、ウェルファーマ社は。で、厚生省の方はそのことが分からないと言っているんであれば、少なくともこの経緯について調査をすると。これぐらいやらないでどうするんですか。少なくとも最低限の責任果たしたことにならないんじゃないですか。
 私は、今の調査では不十分だから、七七年のFDAの取消しの経緯だけじゃなくて、七四年のこの経緯、かなり重大だと思うんで、ここまで調査対象を広げるべきだと言っているんです。この点について、イエスかノーかというふうに答えていただきたい。

○国務大臣(坂口力君) それは、その調査もそれは必要でしょう。しかし、先ほど申しましたように、保存血液のときから、最初は、売血のときには一つの、一人一人の血液であるにもかかわりませず五〇%の人が血清肝炎にかかっていたわけでありますから、そうおっしゃるのであれば、もうその時点にさかのぼって、なぜその保存血液をそれじゃ認めたかというところからいかないとこれはいけないわけで、かなり前にさかのぼって考えなければならない問題だということを私は指摘をしているわけです。

○小池晃君 調査の必要性認めたんで、それ調査広げていただきたいと。調査必要だというふうにおっしゃいましたね。調査はやっていただきたいと思います。代わりになる手段の問題は後で議論したいと思います。
 この危険性が指摘をされて、添付文書を書き換えられた。危険性が判明して添付文書まで書き換えられたならば、使用量というのは減少していくはずなんですね。
 そこでお聞きしたいんですが、昭和四十一年以降の分かっている範囲で、フィブリノゲンの販売量はどのように推移をしているでしょうか。

○政府参考人(宮島彰君) 本年四月に三菱ウェルファーマ社から提出されましたフィブリノゲン製剤の添付文書の記載事項から推測いたしますと、昭和四十一年から四十二年におきましては年間平均約一万六千五百本、昭和四十三年から四十五年には年間平均約二万五千六百本、それから昭和四十六年には年間約三万四千七百本、その後の昭和四十七年から五十年の実績は不明でございますけれども、再評価申請資料の記載事項から推測いたしますと、その後の昭和五十一年から六十年には年間平均約六万二千三百本であったというふうに推測されます。

○小池晃君 驚くべきですね。もう倍々ゲームのように増えているわけです。激増しているわけですね。危険だということが指摘をされていながら、逆にその使用量が増えているわけです。
 私は、このように肝炎感染の危険性が指摘をされ、同時に治療上のリスクと利益をはかりに掛けて、できるだけ使用すべきでないというふうに指摘されていた薬が、このようにどんどんどんどん年々使用量が増えていくと。私はこれは異常なことだというふうに思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(宮島彰君) いわゆる、今、大臣からお話しありましたように、輸血後肝炎の発症率が高いことは従来から明らかになっておりましたけれども、フィブリノゲン製剤について、昭和四十年代、今申し上げましたように昭和四十年代以降販売量が増加してきているということですけれども、その理由は現在のところ定かではございません。
 しかし、ちなみに、フィブリノゲン製剤以外の輸血用血液製剤の年間供給本数を見てみますと、昭和五十年から六十年までの十年間に三百二十万本から一千四百七十万本と四倍以上に増加しているということもございます。

○小池晃君 全体が増えているからフィブリノゲン増えてもいいんだという話にならないでしょう。フィブリノゲンについてはとりわけ危険性指摘されていたわけですから、そういう中でどんどん増えているのはおかしいじゃないかと。これ、フィブリノゲンについては、危険性だけじゃなくて有効性についても疑問だという声が出ていた。それなのにどんどん増えている。おかしいじゃないかと言っているわけですよ。
 お聞きしますけれども、その添付文書の書換えが指導されたとされる七四年当時の厚生省薬務局長、だれでしょうか。

○政府参考人(宮島彰君) 昭和四十九年当時の薬務局長でございますけれども、昭和四十九年十月までが松下廉蔵氏でございます。その後は、十月からは宮嶋剛氏が就任しております。

○小池晃君 松下廉蔵氏の厚生省退職後の経歴を紹介していただきたい。

○政府参考人(宮島彰君) 松下氏は、この薬務局長を最後に退官いたしまして、その後いわゆるミドリ十字、旧ミドリ十字の会長、それから財団法人の内藤医学研究振興財団理事長などを歴任しております。

○小池晃君 七九年ミドリ十字副社長、八三年ミドリ十字社長。フィブリノゲンの危険性を指摘をして、添付文書の改定を指示したとされる七四年当時の薬務局長は松下廉蔵氏なんです。その松下氏が退職後ミドリ十字に天下っている。初めての天下り社長になったんです。そして、松下氏が社長のときにフィブリノゲンの販売量は毎年のように激増していった。正にこれ、官と業の癒着によってこれだけの危険な製剤の危険性にふたがされて、企業はどんどん売上げを伸ばした、深刻な被害が拡大した。
 しかも、ミドリ十字は七八年一月にはアメリカでの承認取消し知っていたんですね。これはフェデラルレジスターが出て、それを社内で回覧している文書、厚生省の文書の中にもあります。知っていた。それにもかかわらず販売拡大し続けたんだ。八一年にはフィブリン糊研究会を開いた。薬事法の承認外であるのりとしての使用を知らせるパンフを配付をした。八〇年からピークの八六年までに約二万本、三割の販売量が増えている。私は、このミドリ十字の責任というのは極めて重大だと考えますが、その点はいかがですか。

○政府参考人(宮島彰君) 今の御指摘のありました経過につきましても、旧ミドリ十字、現在の三菱ウェルファーマ社に対しまして事実関係を解明するためにいろいろ報告を求めているところでございます。そういうものを総合的に評価いたしまして、事実関係をできるだけ早く明らかにしていきたいというふうに思っております。

○小池晃君 私は今、事実関係だけを言ったんですよ、既に明らかになっている。松下氏の経歴も事実関係です。フィブリノゲンの販売量も全部事実です。そして、ミドリ十字が七八年承認取消し知っていたのも事実です。全部事実です。この事実を踏まえてどう考えるかというふうに聞いているんですよ。
 大臣、お聞きしたいんですが、この経過を見て、このミドリ十字の責任、私が申し上げたのは今の事実経過だけですよ、これは明らかに、危険性、FDAが取り消したというのを知っていたんですから、その中でどんどん増やしていったということの責任は明らかじゃないですか。大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(坂口力君) 私は、ミドリ十字、旧ミドリ十字の責任というものもやはり明確にしていかなければならないというふうに思いますが、私は、このC型肝炎の問題というのはフィブリノゲンという問題だけに矮小化してはならない、もっと私は範囲の広いことだというふうに思っております。したがって、そこを明確にもっとしていかなければこの問題の本格的な解決にならない。ただフィブリノゲンの問題だけを、これを片を付ければこのC型肝炎の問題が片を付くわけではありません。そのことを私は主張しているわけです。

○小池晃君 そんなこと言っていません。私だって最初に言ったでしょう、このフィブリノゲンの問題だけじゃないと。輸血の問題もある、注射の問題もある、予防接種の問題もあると最初に言ったじゃないですか。その中でとりわけこの問題については厚生省の関与が極めて私は明確だということで取り上げているんですよ。こういう問題の解明なしに、私、本当に国民の立場に立った血液行政、薬務行政なんてあり得ないと思いますよ。徹底的に事実解明する必要があると。
 先ほどから言っているように、厚生省はこの危険性を知っていた可能性があると。ミドリ十字の責任ということは大臣おっしゃった。同時に、販売量がどんどんどんどん増えていった。このことを放置した。そして、アメリカが承認取消しを行った一九七七年に至っても何の手も打たなかったわけです。これ、私、薬害ヤコブ病を思い出すんですよ。以前からいろんな指摘があった。しかし、アメリカは承認取り消した。そのときに何の手も打たなかった。そして日本では販売続けた。そして被害が広がった。私は、危険性を承知しながら見逃した厚生省の責任というのは極めて大きいと。
 大臣は先ほどから、輸血やっていたんだと、輸血については危険性みんな知っていたんだと言うけれども、やはりとりわけその中でも濃縮製剤で非常に危険性が高いということが以前から指摘されていたフィブリノゲンについていえば、これは、とりわけやはりこの経過についての厚生省の関与というのは、私は、徹底的に調査する必要あるし、責任を解明する必要があるというふうに考えますが、いかがですか。

○国務大臣(坂口力君) ですから、私は、このフィブリノゲンのことについて、ある時点から厚生省が知っていた可能性があるというふうにおっしゃいますけれども、私は当然知っていたと思うんですね、それは。可能性どころじゃなくて、それはもう当然のこととして私は知っていた。そのことを医療とのバランスの上でどう考えたかということが私は問題だと、問題点としてはそうだと私は思っています。

○小池晃君 だとすると、いよいよ重大なんですよ。七七年にFDAが製造承認取り消したときに、大臣も記者会見で、厚生省は知らなかったようだというふうにおっしゃっている。厚生省は危険性を知っていたと、当然知っていたはずだというのであれば、それは注目してしかるべきですよ、この薬についてどうなのか。それで、アメリカが製造承認取り消した。だったら、直ちに日本としてどうすべきか、直ちに手を打つべきじゃないですか。知っていてFDAの承認取消しを見逃したとなったら、これは責任重大だと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(坂口力君) FDAのことを知っていたかどうかは、私は分からなかったから、知らなかったようだというふうに言ったわけです。
 しかし、事この血清肝炎が起こるということは医療の場にある者は分かっていた、そのことを私は申し上げているわけであります。

○小池晃君 いやいや、大臣、ごまかされていますよ。先ほどおっしゃったのは、フィブリノゲン危険だというのは知っていたというふうに大臣言ったんですよ、厚生省は。そうおっしゃいましたね。フィブリノゲンの危険性は当然厚生省は知っていたんだと、そういうふうにおっしゃったと。確認したいんですが、いかがですか。

○国務大臣(坂口力君) 当然のことながら、血液製剤でありますから、血液によって血清肝炎が起こります以上、その多くの人の血液を集めて作ります血液製剤はやはり起こる可能性があるということは当然それは分かっていたでしょう。しかし、そのこととこの効果との見合いの問題であった、それをどう判断をしたかということが私は問題だということを指摘しているわけで、当然のことながら、それは分かっていたのではないかということを私は申し上げているわけです。

○小池晃君 ですから、当然のことながら、特に輸血、保存血あるいは濃厚赤血球等よりも極めて危険性が高いということを当然知っていたと。だとすれば、一九七七年にアメリカが製造承認取消しを行ったということについて知らなかったということでは済まされないんではないかと。当然、危険だということであれば、そのことについて注意深く見守るべきだし、もしアメリカで取消しなんということになったらすぐに日本でもそういう対応を検討すべきだったんじゃないですか。全く注目していないで、アメリカでそういう措置をして知らなかったという話じゃないわけですから、当然危険性を承知していたと。
 危険性を承知しながら見逃した責任というのは私は大きいのではないかというふうにお聞きしているんですが、その一点に限ってお答えいただきたい。

○国務大臣(坂口力君) それは、アメリカでそういうことがあったということをあるいは知らなかったかもしれない、それははっきりしないわけですから、その当時の人が知らなかったと言えば知らなかったんでしょう。
 だから、私は、そのことを今言いましても、知っていたか知らなかったかということははっきりしない。ただし、アメリカの方がそれを取り消したその理由としてはB型肝炎のことを挙げているわけですね、かなり。そのことも私たちは今整理をしていかなけりゃならないというふうに思っています。

○小池晃君 いや、それは三菱ウェルファーマの言い訳そのまま言っているだけですよ。フィブリノゲンの投与によって発生した肝炎はB型肝炎だけだったんですか。違いますよ。これはB型でない肝炎も発生していたわけですよ。
 ちなみに、一九七四年にはもう非A非B型肝炎というのは概念はできていたと。だとすれば、B型肝炎のリスクだけ除去すれば安全なんて言えるわけないんです。あのアメリカFDAの勧告あるいはフェデラルレジスターを見ても、あれを見てB型肝炎だけが心配なんだなんということは読めないですよ。
 その証拠に、このミドリ十字の社内の回覧した文書の中にも何と書いてあるか。FDAはヒトフィブリノゲンの認可を取り消し、販売等を禁止したと、この処置はフィブリノゲンの効果が疑問であり、肝炎伝播の危険性が高いことだと。B型肝炎なんて一言も書いてないんですよ。B型肝炎がどうのこうのというのは後知恵なんですよ。
 大臣、もう一回聞きますけれども、私が聞いていることに答えていないんです。私は、知ったか知らなかったか、大臣が知っているかなんというそんなことを聞いているんじゃないんです。もし、危険性を承知していた、危険性を承知をしているというふうに大臣おっしゃいました、このフィブリノゲンの危険性は当然承知していたと。当然、危険性を承知していたんであれば、それを見逃したということの責任は重大なんじゃないですかと、私は極めて当たり前のことをお聞きしているというふうに思うんですが、いかがですか。

○国務大臣(坂口力君) そのことを言うならば、保存血液を認めたこともこれはどうだということになってくるということを私は申し上げているので、私、そのフィブリノゲンがいいと言っているわけじゃないんですよ。だけれども、フィブリノゲンだけにこの問題を矮小化してしまっては大きなものを見落としてしまうということを私は申し上げているわけです。
 それはB型肝炎もあったでしょう。そのほかの肝炎も当然あったでしょう。しかし、そのころはC型肝炎のビールスというのは発見されてなかったんですから、だからそれは輸血後肝炎とか血清肝炎という言葉で表現されていた。だから、肝炎というものが起こり得るということはやはり私は分かっていたというふうに思わざるを得ないということを私は言っているわけです。

○小池晃君 ちょっと、全然答えないので、全く答えられないので、ちょっと論点変えたいと思うんですが、大臣は仕方ない仕方ないと、仕方ない仕方ないというふうにおっしゃいますが、フィブリノゲンによる肝炎の危険の一方で、確かにフィブリノゲンの不足による出血というのもこれ重大なんです。だから、ほっとけというふうには私も言いません。手だて必要だったということは確かだと思うんです。だからといって、フィブリノゲンの使用がやむを得なかったのか、ほかの手段なかったのかと。そうじゃなかったんですね。フィブリノゲンの代わりになる製剤はあったわけです。それはクリオ製剤であります。
 七七年にFDAがフィブリノゲンを承認取り消した理由でも、このフェデラルレジスターでは指摘しているんですね、クリオ製剤があるからいいんだというふうに言っているわけです。七〇年代の研究を見てもクリオ製剤の使用が推薦されている。
 例えば一九七七年のトランスフュージョン、この雑誌の第一号には、クリオ製剤のフィブリノゲンの生体での安定性についてという論文が出ています。クリオ製剤のフィブリノゲンは肝炎のリスクが低く、フィブリノゲン投与の際には優先される材料であるというふうになっている。
 また、雑誌トランスフュージョンの一九七八年の第二号、フィブリノゲン、危険性に値する利益があるか、こういう論文が載っています。ここでは、大抵の場合フィブリノゲンの投与は必要ないが、もしも必要であればクリオ製剤を使用することが適切であると言っている。フィブリノゲンの欠乏症の場合、望ましい治療はクリオ製剤によって達成されるともある。
 さらに、先ほど私紹介したアメリカ医師会、AMAのドラッグエバリュエーション、ここにも何とあるか。一九七三年ですよ。クリオ製剤はプールされた材料の持つ肝炎の高いリスクを避けることでフィブリノゲンの効果的な原料として使われるというふうに指摘をされているんです。
 フィブリノゲン危険だからクリオ製剤を使用すべきだと七〇年代前半から指摘をされていた。これしかなかったんじゃなくて、クリオ製剤あったわけですから、私は、フィブリノゲンの代わりにクリオ製剤の使用を進めるべきでなかったのか、厚生省はそういう措置を取るべきでなかったかと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(宮島彰君) フィブリノゲン製剤と今問題になっています肝炎との関係につきましては、現在、当時の省内関係者に対する調査と併せまして、当時のフィブリノゲン製剤と肝炎との関係の知見に関する文献等も併せて調査を行っております。
 そういった中で、今御指摘のクリオ製剤についても、低フィブリノゲン血症に対する有効性、安全性についてどういった知見、評価があったのかということも今調査しておりますので、その調査結果で明らかになったものについては御報告したいというふうに思っております。

○小池晃君 この点では、先ほど私紹介した厚生省薬務局の文書にもクリオ製剤のこと出ているんですよ。直接クリオ製剤と言ってはいないんですが、一九七三年の厚生省薬務局監修の「生物学的製剤基準解説」、ここでBPC、イギリス薬局方の見解が紹介されている。それによれば、感染しやすさは用意されたプールの大きさによるとして、三百人以上の献血によって作られる材料よりも十人程度の献血による小さなプールの方が危険性が少ないということが紹介されている。
 私は、もう既に厚生省はフィブリノゲンではなくクリオ製剤を使うことでこの感染の危険性を更に減らせるということを知っていたんじゃないか、ちゃんとこの厚生省薬務局監修の文書にもそのことを指摘されていたわけですから。
 私は、このような措置を取らなかったということは厚生省の責任であるというふうに考えるんですが、その点いかがですか。

○政府参考人(宮島彰君) 一つは、今御指摘のクリオ製剤について低フィブリノゲン血症に対する有効性、安全性についてどう評価していたのかということと、今委員の御指摘のように、その代替としての検討というのが本当になされたのかどうかと。そういうことも含めまして今調査を行っているところでありますので、調査結果の中で明らかになったものは御報告したいというふうに思っております。

○小池晃君 ミドリ十字はこれだけの重大な薬害を起こしました。それを引き継いだ三菱ウェルファーマの報告書、これを読むと、最後にこんなことが書いてある。
 近年、製剤を製造、供給した時点では最善の安全対策を講じていたとしても、後に感染事例が発生した場合、その時点の進歩した科学水準からレトロスペクティブに当時の対応が問題にされるのが常になっている。まるで言い掛かりだとも言いたげなんですね。後からいろいろ言われてもけしからぬというようなことを言っているわけですよ。
 しかし、問題になっているのは今の時点での研究成果じゃないんです。供給した時点での研究成果、あるいはアメリカ政府の対応、こういったことすら見逃してきたことの責任を問うている。私は、この三菱ウェルファーマのこの報告書、旧ミドリ十字を引き継いだ企業としての企業倫理のかけらもないんじゃないかと、社会的責任を放棄した恥ずべき態度だと思う。
 しかも、三菱ウェルファーマは何と言っているか。医療の現場で本剤の投与が不可欠と判断される患者さんのために、売上げは極めて僅少ながら製薬企業としての責務を果たすべく供給を継続してきたけれども、今後は本剤の販売を中止したいと言っている。これは先天性の低フィブリノゲン血症の方にとってみれば、なくなったらもう命取りになるんです。ところが、今まで余りもうからないけれどもやってきたけれども、こんなこと言われるんだったらもう作るのやめるというわけです。私、こういう無責任な態度、許されるのかなと。
 厚生省にお伺いしたいんですが、厚生省はこの報告書をそのまま受け取っていらっしゃいますけれども、こんな態度、許していいんでしょうか。少なくとも先天性の患者さんに対する供給というのはこれは続けさせるべきじゃないかと、企業の責任として、考えるんですが、その点はいかがですか。

○政府参考人(宮島彰君) 低フィブリノゲン血症患者の治療にはフィブリノゲン製剤が不可欠であるということは御指摘のとおりでございますし、現在、我が国では三菱ウェルファーマ社がこれを製造している唯一の会社であるということから、正に同社は安定供給について強い社会的責任が求められているというふうに考えております。
 私どもとしても、三菱ウェルファーマ社に対しまして、今申しましたこのフィブリノゲン製剤の重要性というものを十分認識し、引き続きフィブリノゲン製剤の製造を継続するということを指導しておりますし、同社もその点は十分自覚し、引き続き製造を継続するというふうに認識しておるところでございます。
 今後とも、この件につきましては注意深くフォローいたしまして、先天性低フィブリノゲン血症の患者さんの治療に支障を来すことのないように、この製剤の安定的な供給が図られるよう指導していきたいというふうに思っております。

○小池晃君 今日はこの経過について議論してまいりましたけれども、答弁はほとんど医薬局長は同じようなことをずっと繰り返されましたけれども、分からない、分からないと、調査中だと。だとすれば、これは調査結果を直ちに出していただいて、委員長、これは重大問題だと思いますので、私は当委員会としても責任を果たすべきだというふうに思います。これは集中審議をすべきだというふうに申し上げたい。
 それから、参考人として、これは次回の予定されている参考人質疑とは別ですが、この問題について直接の当事者を国会に呼ぶべきだと。一九七四年当時の薬務局長、その後のミドリ十字社長の松下廉蔵氏、それから七四年当時の細菌製剤課長の近寅彦氏、それから現在の三菱ウェルファーマ社の社長飯田晋一郎氏、この三名の参考人招致を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。

○委員長(阿部正俊君) はい。それじゃ、理事会でまた協議して取り計らいます。

○小池晃君 また、先ほどから大臣言われるように、フィブリノゲンだけじゃないと、輸血も含めて非常に大きな被害が出ている。
 このC型肝炎、肝がんに移行すると毎年約三万三千人もの方が亡くなっているわけです。肝がん患者の九割が肝炎ウイルスによるものであって、八割がC型肝炎。この間、老人保健の健康診査にウイルス検査が実施されたりインターフェロンの適用が拡大されたという前進はありますけれども、まだまだその検査体制、健診体制も不十分であるし、それから多額の費用が掛かる治療に対する支援、これは全くやられていないと思うんですね。
 大臣は、過去の患者さんに対して、C型肝炎に罹患をしてしまった人たちに対して一体どうするかと、これが最大の課題だと言っている。一番大事なことは救済だと、この皆さん方の治療をどうするかと言っていますが、どのような支援策を考えていらっしゃるんですか。

○国務大臣(坂口力君) やはりC型肝炎に現在も罹患をしているかどうかということを検査することが一番でありますから、いわゆる節目健診と言われる年齢のところでおやりをいただく。しかし、節目の、例えば四十五歳とか五十歳とかというような節目の方々だけではなくて、過去に私は輸血をしたことがある、あるいは血漿製剤を使ったことがあるといったような方につきましては、節目の年齢でなくてもお申し出ください、その皆さん方については一緒に検査を一日も早くやりましょうと、こういうことを申し上げているわけでありまして、そして早く検査をしていただいて、そして安心していただく方は安心をしていただく。そして、不幸にして現在このC型肝炎に罹患をして、なおビールスが活動をしているというような方につきましては、早く治療に移っていただかなければなりません。
 治療につきましては、インターフェロンが今までかなり使われておりましたし、今回、何でしたかね、もう一つ、リバビリンという新しい薬も出てまいりましたし、いたしますので、それらのお薬でひとつ治療を受けていただきたいというふうに思っております。
 今まで診療報酬で六か月で一つ切っていたわけでございますけれども、それを今回取っ払いまして、そして継続的にインターフェロン等をお使いをいただきますときにも保険の対象にするといったことにしたわけでございます。

○小池晃君 私、議論をしてまいりましたけれども、この経過について、やはりほかの疾患とはとりわけ違う対応を国としてはする責任が私はあると思います。国の責任をやっぱり認めて、この検査だけでなく、治療や生活支援、全体に対する支援をすべきだと。
 当面の対策として提案したいんですが、今お話しあったこともありますが、まず経済的支援が必要だと思うんです。これ非常にお金掛かる。例えば、C型肝炎の治療のためにインターフェロンの注射を週三回六か月間続けると、二割自己負担の患者で一回の負担が一万八千円以上です。患者さん、患者会の調査では、進んだ肝炎あるいは軽い肝硬変ということでいうと年間三十万円から三十五万円の負担になると言われています。しかも、最新の治療を受けようとすると保険適用にならないという問題がある。私は、国の責任で抜本的な負担軽減を図るべきだと。
 第一に、療養が長期にわたり高額な医療負担に苦しんでいるウイルスに起因する肝硬変、そうしたものは保険、健康保険の高額療養費に特定疾患という制度があります。これで認定をすべきだと。それから第二に、肝機能障害を身障福祉法の内部障害として認定すべきだと。これはいずれも薬害エイズの被害者の方には適用されています。私はC型肝炎の患者さんにもこれ広げるべきだというふうに思います。
 それから、治療法については三つ提案したいんですが、一つは、肝臓がんを減らすために肝硬変に対するインターフェロン投与、今慢性肝炎については使われていますけれども、ヨーロッパ、アメリカなんかでは肝硬変に使うことによってがんを抑えるという結果が出ている。これを是非やるべきだと。それから第二に、肝臓がんの局所治療として効果、安全性が実証されているラジオ波の焼灼療法というのがあります。これは針を刺してラジオ波で焼くわけですけれども、非常に再発率が低いと、安全であるということも確立してきている。これを是非保険適用してほしいという声が強い。
 それから第三に、ヨーロッパでは今インターフェロン治療の主流はペグインターフェロンであります。ペグインターフェロンというのは、インターフェロンにポリエチレングリコールがくっ付いていて、体に残るわけですね。だから、週一回注射をすればいい。普通のインターフェロンは毎日とかあるいは週三回に比べると非常に便利だと。しかも、その効果が非常に高いということも証明されている。これはヨーロッパやアメリカでは既に主流になっている。しかし、日本ではまだこれ使われていません。こうしたものについてやはり保険できちっと受けられるように、まだ申請が出ていないものもありますけれども、出たら直ちに対応するということを私は求めたい。
 それから最後に、検査の問題ですが、大臣が言われたように健診やったというんですが、これは実は厚労省のアンケートでも、実際は節目健診で一割、節目外の健診で約三割、実施のめどが立っていないんですね。これは全自治体でやはりやれるようにすべきだと。
 これは、私たちの提案として申し上げたい。一つ一つ答えなくて、もちろん時間もないですから結構ですけれども、大臣として是非これ全体としてできるものはしっかり前向きに取り組んでいくというふうにお答え願いたいんですが、大臣、いかがですか。

○委員長(阿部正俊君) じゃ、時間も来ていますので、簡潔に大臣、お願いします。

○国務大臣(坂口力君) 既に前向きに取り組んでいるわけでありますから、これからも一生懸命にやっていきたいというふうに思っています。
 どういう治療方法がいいかは、これは医療機関にお任せをする以外にありませんので、ここで議論をしても始まりません。今までも一生懸命やってまいりましたが、この問題、更に取り組んでいきたいと思っております。

ページトップへ
リンクはご自由にどうぞ。各ページに掲載の画像及び記事の無断転載を禁じます。 © 2001-2010 Japanese Communist Party, Akira Koike, all rights reserved.