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155-参議院臨時国会
2002年10月25日 予算委員会

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 今日は、総理に、国民の暮らしと景気について総理がどうお考えか、お聞きしたいというふうに思っています。

 まず始めに、九七年、九兆円の負担増をきっかけにして経済悪化いたしました。それから五年間、暮らしと景気がどれだけ変化をしたか見てみたいと思うんです。

 国税庁にお聞きしたいんですが、民間企業の平均給与は一体どう変化しているでしょうか。

政府参考人(大西又裕君)

 民間企業の平均給与についてのお尋ねでございますが、国税庁が実施しております民間給与実態統計調査によりますと、一年を通じて民間企業に勤務された給与所得者の一人当たりの平均給与は、一九九七年、平成九年が四百六十七万円、二〇〇一年、平成十三年が四百五十四万円となっており、この両年を比較した場合、十三万円の減少、パーセントで申しますと、マイナス二・八%となってございます。

 以上でございます。

小池晃君

 総務省にお聞きします。

 従業員数と失業者数、これはどうなっているでしょうか。

政府参考人(大戸隆信君)

 従業者数につきまして、五年ごとに実施しております事業所・企業統計調査の結果から見ますと、直近の調査は平成十三年、二〇〇一年でございますけれども、六千十九万人でございます。その五年前の一九九六年の調査では六千二百七十八万人ということで、二百五十九万人の減少となっております。

 さらに、完全失業者でございますけれども、直近の十四年、二〇〇二年の八月で申しますと、完全失業者数は三百六十一万人、完全失業率は五・四%、その五年前の平成九年の平均ですと、完全失業者数は二百三十万人、完全失業率は三・四%となっております。

小池晃君

 警察庁にお聞きします。

 自殺された方の数は一体どうなっているでしょうか。

政府参考人(瀬川勝久君)

 一九九七年、平成九年の自殺者総数は二万四千三百九十一人、二〇〇一年、平成十三年の自殺者総数は三万一千四十二人であります。自殺の原因、動機はもとより複雑なものでありまして一様に断ずることは難しいと考えておりますが、警察において経済・生活問題が主たる原因、動機であると推定した自殺者数は、平成九年が三千五百五十六人、平成十三年が六千八百四十五人でございます。

小池晃君

 主な指標を並べてみますとこうなってくるわけです。(資料を示す)

 民間企業の平均給与は十三万円減少をいたしました。それから、勤労者の可処分所得は一世帯当たり毎月三万二千円減少をいたしました。それから、従業員数は二百五十九万人、こう減っているわけであります。

 その一方で増えたものは何かというと、失業者数、これは百三十一万人増えました。五七%の増加であります。それから、自己破産した人は年間十六万人を超えている。九万人もこれ増えています。自殺者は七千人近く増加をした。三万人を超えています。そのうち、経済苦で自殺する人は年間三千人近く増えて二倍になっていると。

 このほかにも、企業倒産は二千件以上増えている。生活保護は、これは厳しい締め付けがやられていますけれども、それにもかかわらず三五%増加をしております。

 昨年の国民生活基礎調査、厚生労働省の調査では、生活が苦しいとお答えになった世帯は五一・四%、ついに半数を超えたわけです。しかも、こうした傾向は小泉内閣になってから更に加速をしています。

 例えば、民間給与の減少は五年間で十三万円ですが、昨年一年間だけでこれ七万円減っているんですね。それから、失業者は小泉内閣になってから十七か月連続して増えているんです。失業、倒産、自己破産、そして自ら命を絶つ、本当に胸の締め付けられるような話だと思うんです。

 私、こういう国民の暮らしというのは大変厳しい状況にあるのではないかというふうに思うんですが、総理はどういう御認識か、お答えいただきたいと思います。

内閣総理大臣(小泉純一郎君)

 今の数字に表れておりますように、大変厳しい状況だと思います。こういう厳しい状況をできるだけ早く脱却するために全力を尽くさなきゃいけないと思っております。

小池晃君

 おっしゃるように、正に危機的な、私大変な状況だと思うんです。こういうときに社会保障の負担を増やす、これはどうなるか。これはやはり暮らしと景気に深刻な打撃になると思うんです。これは政府も分かっていると思うんですね。と申しますのは、例えば政府は年金の物価スライドを凍結する法案、これ二〇〇〇年から毎年出しました。

 厚生労働省にお伺いしたいんですが、その提案理由、一体どういう趣旨だったでしょうか。

政府参考人(吉武民樹君)

 公的年金制度の在り方でございますとか、あるいは物価スライドの特例措置を講じた場合の財政影響を考慮いたしますと、本来は物価変動に応じて年金額を改定するのは原則でございます。

 ただ、平成十二年度から十三年度、十四年度までの三か年度につきましては、当時の社会経済情勢にかんがみ、物価スライドの特例措置を講じてきたものでございます。しかし、特例措置の実施に当たりましては、これに伴う財政影響が生じますので、これを考慮いたしまして、次期財政再計算までに後世代に負担を先送りしないための方策について検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずると、この旨が特例法の中に規定をされておりまして、これに基づきまして将来所要の措置を講ずるということになっているところでございます。

小池晃君

 いろいろおっしゃいましたけれども、端的に言えば、年金切下げしなかったのは景気を配慮したから、そういうことですね。

政府参考人(吉武民樹君)

 物価が下落しているという状況もございましたが、例えば一方では、公務員給与につきましてはマイナスの改定はございませんで、公務員の場合で申し上げますと、いわゆる定期昇給もあるという、こういう状態を総合的に検討をいたしまして、先ほど申しました社会経済情勢全般を検討いたしまして、それぞれの年度で判断をしてきたということでございます。

小池晃君

 当時の国会答弁はもっと明快だったんですよ。当時の副大臣、こう言っているんです。もし、物価に合わせて年金を切り下げれば、大変な、消費者のマインドを一層冷やしてしまう、家計にも更に苦しさをもたらしていく、デフレスパイラルを避けるためにも、そうした事態をやむにやまれず今回も回避させていただいた、今年の三月はこう言っていたんです。

 それなのに、来年度のこの社会保障の負担増は一体どうなっているかといいますと、医療保険は、これはさきの国会で強行採決までして、十月から既にお年寄りの負担は増えている、来年四月からは健保本人は三割負担であります。保険料も引き上げる、そういう方向だと。年金は物価スライド凍結が解除されて、引き下げようという、そういうことになっている。そして、介護保険は来年、三年に一度の保険料の見直しの年だと、引き上げようとしている。雇用保険料も引上げの方向だと。これ、四つ合わせると、合計で大体三兆円超える負担増になるんですね。これだけの負担を増やせば私は結果が見えていると思う。

 だって、今年、厚生省が説明したものに照らしていっても、当然消費マインドを冷え込ませる、家計に打撃を与える、デフレスパイラルを引き起こすということになると。ましてや、景気悪化は去年より深刻なわけですから、こんなときに社会保障の負担を増やすべきだろうかと。私は率直に言って、これは私には到底それは正しいとは思えないんですけれども、総理はいかがお考えでしょうか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君)

 いかなる国民に対する政府のサービスも国民の負担によって成り立っているわけであります。特に社会保障だけではありませんが、社会保障、年金、医療、介護等につきましても、これはお互いの支え合い、お互いの負担によって成り立っていると。そうなりますと、物価がまさか下がるときはないだろうと当時思われたころに、年金の受給者に対してこれは物価スライドにしようと、歓迎されたはずであります。これは当然物価が上がれば年金も上がるからいいことだ、いいことだと、ほとんどの方が賛成したと思います。そのときには物価が下がれば下がるのも当然だと思っていたんですけれども、物価が下がると、これは年金受給者に対してはいろんな事情があるから下げるのをやめようといって、三年間、下げるのを停止しました。

 今、保険料もそうでありますが、そうすると、これは例えば患者負担引上げにしても保険料引上げにしても、なしにしますと、結局国庫で面倒を見よと、公費で負担しろという話になってきます。国庫で面倒を見ろ、公費で負担しろということを分かりやすく言えば、税金で負担しろということであります。どこで増税をしなきゃならないのか、どこでそれでは歳出をカットしなきゃならないのかという問題が出てまいります。

 しかも、少子高齢化であります。黙っていても年金受給者も増えてまいります。お年寄りは増えていきます。逆に、今若い世代、かつてに比べて赤ちゃんの出生数も半分以下になっています。この人たち、今、支え合いですから、高齢者も若い世代もすべてが支え合っているんです。高齢者だけ手厚くしましょうよというと、若い人これ負担してくれよということになります。それも嫌だとなると、じゃ増税だという。これも嫌だと。

 こういう難しい状況に合わせて、お互いやっぱり高齢者も若い世代もみんなで支え合って社会保障サービスを受けていこうという考えから成り立っていることも御理解いただきたいと思います。

小池晃君

 総理、私は今日は、そういう社会保障の将来像も含めて、そのことを議論をしようと言っているんじゃないんです。そのことで意見の違いがあるというのは、この間何度も議論させていただいて分かっているんです。そういうことではなくて、この経済危機を打開するために今何をなすべきか、あらゆることをしなくちゃいけないというふうに総理もおっしゃっていると思うんですね。

 その場合に何をなすべきか、本当に真剣に考えるべきじゃないか。これを言っているのは共産党だけじゃないんです、何も。例えばニッセイ基礎研究所の経済見通し、これを見ますと、私たちの指摘と同じことを指摘しています。四つの社会保険の負担増が、これ年金だけじゃないわけですよ、これ集めると相当な規模になりますと。「来年度の景気動向からすれば急速な負担の増加は景気悪化の引き金になりかねない。」というふうに指摘しております。そして、経済全体を見て調整することが必要なんじゃないか、そう提言しているんですね。私はこれ当然の意見だと思うんです。

 是非、私、総理にこうした声に耳傾けて、やはり真剣に再検討すると、これは景気を回復させるということを本当に最優先で考えるのであれば私は真剣に検討すべきことだと思うんですが、いかがでしょうか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君)

 様々な意見があるのは承知しております。しかし、恐らくそういう考えの背景には将来消費税を引き上げろという考えがあるんじゃないでしょうか。私は、それもまた反対があるんじゃないか。いろいろ多面的に考えなきゃならないと思っております。

小池晃君

 いや、そんなこと言ってないでしょう。消費税引き上げるなんてことは一言も私は言っていませんよ。今の経済危機をどう打開するか。私、総理にはこの今の負担増の深刻さというのが余り分かっていらっしゃらないように思います。

 今回の社会保障の負担増というのは、高齢者とかあるいは病気を持つ人に重くのし掛かる。今回それだけじゃないんですね。今回の特徴というのは、現役世代の保険料が軒並み上がってくるというのが特徴であります。来年から医療も年金も、保険料、総報酬制になる。これ、ボーナス、どんと保険料が掛かるんですね。現在、医療と年金でボーナス保険料は一%弱であります。ところが、これが一挙に一〇%を超えていく。ボーナスの比率が高いと、この負担は物すごく重い仕組みになっているわけであります。

 モデルケースで、私、計算してみました。(資料を示す)これ、計算結果なんですが、例えば四十歳でサラリーマン、四人家族、月給三十五万円、ボーナスが年間四か月と、こういう場合であります。

 こうした人の年間の保険料が来年は、医療は四万六千九百円増えます。年金で八千八百九十円、雇用保険で八千四百円増える。介護保険で三千二百九十円増える。合計で六万七千四百八十円、大幅な引上げになるわけですね。

 これは、言ってみれば労働者の負担だけじゃないんですよ。これ、保険料は企業も折半しておりますから、これは同じだけ企業にも負担になっていくわけです。例えば、仮に一人六万七千円として、百人規模の企業であれば六百七十万円、日本の企業、日本じゅうの企業にそういう負担が掛かってくるという仕組みになっている。

 おまけに、これだけじゃないわけですね。下にもちょっと書きましたけれども、増税の計画もある。総理は参議院本会議で、増税計画、否定されませんでした。配偶者特別控除、特定扶養控除。このケースで配偶者特別控除が廃止されればプラス三万六千九十五円の増税になる。合わせると十万三千五百七十五円の負担増ということになってくる。

 これはお子さん小さいケースですから、お子さんが高校生、大学生だとすると、更に特定扶養控除も廃止されてもっと負担増が大きくなるわけです。しかも、これは健康な人の場合なんです。もし、病気があったり介護をしている人がいれば、ここに医療保険の窓口負担や介護費用が掛かってくると。もっと負担増がかぶさる。これ、労働者にも企業にも、私、大変重い負担増になる。

 こうしたことを来年やれば、景気悪化に更に拍車を掛けるんじゃないか。総理、そのようにお考えになりませんか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君)

 厚労大臣にお答えいただいた方がいいかもしれませんが、私は、これも低所得者にはそれなりの配慮はされておりますし、今のボーナスの保険料の徴収におきましても、これは年収にした方がいいという方が多かったんじゃないでしょうか。なぜならば、ボーナスの多いところだけ負担が少ない、月給のだけやると、ボーナスの出るところはどっちかというといい企業じゃないのかと。そういうところの負担が少なくて、月給が多い、ならした方がいいということから年収ベースになったんじゃないですか。一部だけ取り上げて負担が多くなったというよりも、私は、大方の人は月給とボーナス別にするよりも、年収、総合的にやった方が公平だという形で直したんですよ。

 そういう点でありますから、私は、じゃその負担をなくした場合にどこでこの持続的な社会保障制度を維持するかという問題も出てくるんです。その点もやっぱり考えてもらわなきゃいかぬなと。

国務大臣(坂口力君)

 今その表を拝見をいたしまして、にわかにその表の数字信じ難いんですが、その中で三十五万円の、そして四か月のボーナスということになっていますが、普通四か月はないんですね。厚生年金の計算でも三・六か月なんですよ。総報酬制にしましたら、来年はマイナスになるんです。決してプラスになりません。

 また、医療にいたしましても、政管健保ですと、我々計算しているのは一・九か月、せいぜい二か月ですよ、四か月もありません。そうしますと、増えるとしたら一万四、五千円私は増えるかなというふうに思っています。

 そうした、それから、雇用の問題につきましても、これは多分一・六まで引き上げた数字になっているんだろうと思って、この十月から一・四にはなりますけれども、一・六まで引き上げるかどうかは、それはまだこれからでございまして、そんなこと決めておりません。介護も一・九か月のボーナスで計算をしますと、ごくわずかな、百円か二百円かというぐらいな程度の上昇でございまして、それは四か月ということにしたがためにできた数字であるということを申し上げたい。

小池晃君

 この四か月というのは決して特殊なケースじゃないですよ。百人以上の企業であれば、ボーナス今四・六ですよ、年間で。

 これは私、今おっしゃっていることが正に問題だと思うんです。というのは、今までの社会保障の負担増というのは、これは率直に言って低所得者ねらい撃ちでやってきた。大変弱っている。今回は、そこだけじゃなくて、こういう中堅のサラリーマンにも負担広げたということになるわけですよ。四か月というのは決して特別じゃないですよ、平均的なサラリーマン。そういう場合で大きな負担が掛かってくる。これが私は景気に大変深刻な影響を与えるんじゃないかと。

 社会保障の将来像の問題は意見の違いがあると、さっきこう言っているんです。今この時期に、こういう階層の人たちにこれだけの負担増をかぶせるというやり方が、現下の経済局面において私はとても妥当なやり方とは思えないんですよ。今やるべきことなのですかということを総理にお聞きしているんです。知恵を絞ってこれ回避すべきじゃないかと私申し上げているんです。

内閣総理大臣(小泉純一郎君)

 総合的に経済活性化策を考えているんであって、今、負担増ばっかりと言いますけれども、税制改革一つ取ってみても、経済活性化、それはやっぱり企業にも元気よく働いてもらわないと雇用が減る、企業を活性化するためにはどうしたらいいかと。さらに、税制全体の中で、個人の問題、配偶者の控除の問題についても、今女性が社会に進出しているという問題もあります。そういう点から、配偶者特別控除という制度についてどう考えればいいかという全体の中で考えているんであって、今言った医療と年金と雇用と介護だけが経済活性化策じゃないんです。

 全体の税制改革、歳出改革、金融改革、そして規制改革、そういう中で経済活性化を図っていくことによって企業も元気が出てくる。元気が出てくれば人も雇う。持続可能の成長軌道に乗れば給料もだんだん上がってくるだろうと。そういうことによって、お互い、今のような社会保障制度も持続可能な制度として発展できるだろうという観点から考えているんであって、一部だけ、今この負担上がる部分だけ、しかも何か月、特定の、月給三十五万円と。確かに全体からやれば平均かもしれませんけれども、低所得層に対しては医療費にしても格別な配慮をしている。生活保護世帯には歳出から資金が提供されている。そういう全体の仕組みをやっぱり見て考えなきゃいけない問題じゃないかと思います。

小池晃君

 全体の仕組み見て言っているんです。低所得者には耐え難いほどの負担が既に押し付けられているわけです。生活保護はどんどんどんどん締め付けを強めているじゃないですか。そういう中で更にこういう中堅層にまで負担を広げるということが、私は経済政策としては妥当ではないということを申し上げている。

 しかも、将来将来というふうにおっしゃいますけれども、私、本当に政府は将来のことをまともに考えているんだろうかと。来年のことだってまともに検討していないと思いますよ。だって、この負担増、理由は全部ばらばらなんですよ。医療と雇用保険は保険財政悪化しているから上げるんだ、介護保険は三年ごとに見直さなきゃいけないから上げるんだ、年金は物価が下がっているから給付を下げるんだと、もうばらばらの理由なんですよ。これ四つ合わせてどうなるかというのをまともに検討している節がないんですね。

 例えば、私、九月九日の経済財政諮問会議の議事録見て驚きましたけれども、ここでは、民間議員の本間大阪大学大学院教授が、介護保険料や失業保険料の引上げなど考慮していなかったものもあると言っているんです。要するに、四つ合わせてどれだけ負担が増えるかというのは考えていなかったと正直におっしゃっている。これだけの負担増を、総額三兆円を超える負担増を押し付けながら、これがどれだけ日本の経済に四つ合わせて影響を与えるか考えていなかったというんですから、私は本当に無責任だというふうに思う。

 しかも、年金の問題に立ち戻りたいんですが、現役世代だけじゃありません。年金の問題どうかというと、物価スライド凍結解除すると実際はどれだけ年金が減額されるか、ちょっと数字をお答えいただきたいんですが。

政府参考人(吉武民樹君)

 お答え申し上げます。

 年金の物価スライドにつきましては、年金法の原則どおりの取扱いにいたしますとマイナス二・三%という形でございますが、平成十五年度の厚生労働省の概算要求全体といたしましては、平成十四年度政府経済見通しにおきます物価下落率でございます〇・六%分で計算をいたしております。この計算を基礎といたしますと、国民年金を夫婦二人で満額十三万四千円を受給されている方にとりましては月当たり八百円の減額となります。それから、夫婦お二人で厚生年金の標準的な年金額の二十三万八千円を受給されている方にとりましては千四百三十円の減額となります。

小池晃君

 二・三%の数字言ってください。

政府参考人(吉武民樹君)

 厚生労働省といたしましては、二・三%そのものを急激に引き下げるのはいかがという、こういう考えでございます。それをまず申し上げておきたいと思います。

 仮に、二・三%というお尋ねでございますので、仮に二・三%引下げというふうになりました場合の減額幅は、国民年金、先ほど申し上げましたケースで三千八十円、厚生年金で五千四百八十円でございます。

小池晃君

 過去にまでさかのぼって物価スライドをすれば、国民年金で月額三千八十円、厚生年金で月額五千四百八十円と。

 年金の金額を引き下げるということは、これ年金制度始まって以来のことだと思うんですが、それでよろしいですね。

政府参考人(吉武民樹君)

 物価スライド制につきましては、例えば昭和四十八年の年金改正で物価スライド制が導入をされています。この時点で申し上げますと、例えば物価が五%以上上がったときに引き上げるというような原則でございましたけれども、その場合でも、例えば三%引き上がったときには細やかに引き上げようという努力をいたしております。

 それで、物価が今まで下落をいたしましたのは、この四十八年以降で申し上げますと、平成七年、それから先ほど申し上げました十一年、十二年、十三年でございますが、平成七年の場合で申し上げますと、物価の下落率は〇・一%でございます。

 それで、年金額の改定をいたしますと、ある程度、受給者の方は非常にたくさんおられまして、そのための事務指導というような点もございまして、こういう点も含めまして、平成七年には引下げを行わないという特例法を出しております。

 それから、先ほど申し上げました十一年、十二年、十三年の四か年でございまして、平成十五年度に物価スライドによります一定程度の年金額の引下げを行いました場合には初めてというケースでございます。

小池晃君

 これ制度始まって以来のことなんですよ。三年間物価スライドを凍結してきた、その理由は景気が悪いから。もっと景気が悪くなった今になって、どうして凍結解除するのか。これ支離滅裂じゃないですか。どうですか。

国務大臣(坂口力君)

 確かに、過去三年間におきましては、物価のスライドによりまして減少するのを抑えてまいりました。これは物価が確かに下がったからでございますが、しかしその生活状態等も勘案をして停止をしてきたわけでございます。

 しかし、今回は物価が下がっただけではなくて、いわゆる働く人の賃金も下がってきたと。現在保険料を納めてくれている人たちの賃金が下がってきて、この人たちも大変非常に御苦労をしていただいている。ですから、高齢者の皆さん方もそのことを配慮をしていただいて、そしてその物価の減額、〇・六なら〇・六%分はひとつ御辛抱をいただきたい、そういうふうに思っております。

小池晃君

 景気が悪いから考慮したのに、景気がもっと悪くなったら元に戻すと。これ景気が悪化しているから現役賃金が下がっているわけですよ。それを理由にして年金を下げれば、ますます景気が悪くなる。現役世代の賃金も更に下がっていく。これ私、どう考えたって悪循環だと思うんです。特に高齢者は、所得に対する消費支出を示す消費性向、これ高いわけであります。総務省の家計調査では、勤労者世帯の約七割に対して高齢者世帯は一〇〇%を超えている。すなわち、年金減ると即消費の減少に結び付くわけですよね。これ経済に占める年金の割合高くなりつつあります。

 例えば、家計消費支出全体に対する年金の割合、島根県では一六・五%、高知一四%、秋田は一三・七%。こうした地域は、地域経済、年金削減は地域経済を直撃するわけです。

 これ、年金の物価スライドの凍結解除は、これも高齢者の生活をいじめるだけではなくて、痛め付けるだけではなくて、私は地域経済にも打撃を与えると。これ、断固やるというふうにおっしゃるわけですか。総理、お聞きします。これでも断固やるというふうにおっしゃるんでしょうか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君)

 これは、物価スライド制を上げた時点から、物価が上がれば年金も上がる、物価が下がれば年金も下がる、当然のごとく受け止められていたのを停止していたんです、いろんな配慮で。それで今回、今言ったように、物価も下がっているけれども賃金も下がる、高齢者だけじゃないと、この社会保障を支えているのはむしろ若い世代だと、若い世代の負担というものも考えなきゃいかぬということからやったのであって、私は、この部分だけで消費に影響があると、それは若干影響はあるでしょう、これがすべてではないと思っております。

小池晃君

 私、認識が甘いと。これ高齢者だけじゃないんですよ、年金の物価スライド凍結解除の影響というのは。これは、例えば障害者の年金も下がるんです。それから母子家庭の児童扶養手当にも連動するんです。原爆被爆者の手当にも連動するんです。影響を受ける人は三千万人ですよ。どうしてこれが小さい影響なんですか。私、これは深刻な打撃を与えると思いますよ。

 理由は、今まであれこれあったと言うけれども、景気が悪いから今まで配慮していたんです。それを、景気がより一層悪化したからそれを理由に引き下げる。私は、今までの政府ですらやらなかった、坂道を後ろからけ落とすようなやり方じゃないですか。こんなやり方は、私は、今の経済状況を考えれば、国民に対してきっぱり、やめます、安心してくださいと、これが政治の役割じゃないですか。総理、是非決断していただきたい。いかがですか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君)

 それは、こういう厳しい状況の中でも政府は社会保障に一番税金を使っております。それは、やはり社会保障というのは、国民がお互い、給付の裏には負担がある、お互い支え合おうということでやっているわけでありますので、賃金も下がる、物価も下がる、景気も悪いという状況でありますけれども、何よりも私は、年金、医療、介護、この社会保障制度は将来も持続可能な制度として維持、発展させていきたいと思います。今だけ考えて破綻させて将来増税すればいい、若い人に税を負担させればいいという状況にはあると思っておりません。

小池晃君

 将来、持続可能と言うけれども、国民の暮らし、今危機的なわけです。そこの立て直しなくしてどうして明日に希望を持てるんですか、どうして将来があるんですか。将来、抜本改革、もちろん必要ですよ。しかし、この現下の景気、経済危機をこれは何としても立て直すということは必要だろうと。経済財政諮問会議では九月になってようやくこの負担増の重大性に気が付いている。民間議員が減税規模を拡大しようと言ってきた。ところが、中身は結局ごく一部の大企業向けなんですよ、減税と言ったって。そして、与党からは今日もデフレ対策の大合唱だと。

 これね、私、どう考えたって納得できない、理解できない。だって、これは一方で冷房を入れながら、寒くなり過ぎたから慌てて暖房を入れようと、こんなものだと思うんですね。だったら、すぐに私は冷房を切るべきだと。真っ先にやるべきことは、三兆円の社会保障の負担増をこれを撤回する、増税計画はしないと国民に宣言をする、それじゃないですか。これが最も私は今この局面において効果的なデフレ対策だ、景気対策だと考えますが、総理、いかがでしょうか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君)

 それは、共産党は借金をするなという態度だったんじゃないですか。これは将来どうなるんでしょうか、そうしたら。

 今それなりの、保険料も上げるな、そういう決められた今までの制度も変えろという形で今のを考えて、じゃ、もっとこのまま借金を増やせというのか。それは共産党取れないでしょう、借金し過ぎだと今批判しているんですから。そういう中で、じゃ、どこを歳出カットするのか。これ、全部必要だと言うでしょう。恐らく防衛費をカットしろと言うのかもしれないけれども。

 それだけで、防衛費は五兆円弱、社会保障費は十七兆円を超えている。医療費だけでも七兆円を超えている。こういう状況の中で一番、困った中でも日本は福祉関係に一番最も税金を使っているんです。そういう点もやっぱり考えてもらいたい。

小池晃君

 今、肝心なことを言わなかった。公共事業五十兆円あるじゃないですか、そこにどうしてメスを入れないんですか。

 共産党共産党とおっしゃるけれども、自民党の舛添要一参議院議員は週刊誌でこう言っているんです。今の小泉内閣のやり方はアクセルとブレーキを同時に踏むようなやり方だ。私と同じことを言っているんです。共産党が言っているんじゃない。国民の暮らし支えてこそ経済の再生だと、そのことを訴えて、私の質問を終わります。

委員長(陣内孝雄君)

 以上で小池晃君の質疑は終了いたしました。(拍手)

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