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日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

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155-参議院臨時国会
2002年11月28日 厚生労働委員会・独立行政法案審議

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。今日は、前回に引き続き医薬品機構の問題から質問をしたいと思います。

 まず、医薬品機構の財源の問題であります。

 今までの医薬品副作用被害救済機構も、救済給付の財源はこれは製薬企業からの拠出金で賄ってまいりました。この拠出金率はどのように法定されていたんでしょうか。

政府参考人(小島比登志君)

 副作用被害救済制度におきます拠出金率の上限は、医薬品機構法第三十一条の五項によりまして、当分の間千分の二を超えない範囲の率とするということで規定をされております。

小池晃君

 当分の間千分の二を上限とすると。しかし、ところが設立二年後の、一九七九年に設立されて二年後の八〇年に千分の一になった後は、もう千分の〇・〇二、何と法定上限の百分の一までなってしまう、低下してしまうと。現在でも百分の〇・一であります。上限の二十分の一、これだけの拠出しかさせていない。千分の二というのは上限であるからとおっしゃるかもしれないけれども、たとえ上限だとしても、私は、実際の拠出金率がそれよりもはるかに低い、これでは法定上限に対して余りにも低過ぎるんではないかと思うんですが、この点いかがですか。

政府参考人(小島比登志君)

 今御指摘の医薬品副作用被害救済制度の拠出金率でございますが、これは法律に基づきまして、救済給付に要する費用の予想額それから積立金等に係る予定運用額を勘案し、将来にわたって救済給付業務に係る財政の均衡を保つことができるものとして機構が定めることとされております。

 御指摘のように、現在の拠出金率は法定の上限から見れば低いものとなっておりますが、救済給付に要する費用の状況を勘案して適正な事業運営が図られる率だというふうに考えております。

 しかしながら、近年におきまして救済給付に要する費用の額が増大しておりまして、また一方で積立金等に係る運用利率が低下をしているという状況を踏まえまして、来年度より拠出金率の引上げというのを今検討しているところでございます。

小池晃君

 財源をきちっと全体の予算計算しているからこの率でもいいんだと。ただ、その拠出金率低くても給付が十分だったらいいんですけれども、しかし果たしてこの給付が十分なのかと。

 給付の中身見ると、私いろいろと疑問を持つんですが、例えば抗がん剤は、これは現行法においても今回提出されている法案においても、これ救済給付の対象からは除外されております。これは一体なぜでしょうか。

政府参考人(小島比登志君)

 医薬品副作用被害救済制度におきましては、法律上、がんその他、特殊疾病に使用されることが目的とされる医薬品であって、厚生労働大臣が指定するものについては制度の対象外とされております。具体的には、厚生労働大臣の告示によりまして、抗がん剤等が除外医薬品として指定されているところでございます。

  〔委員長退席、理事武見敬三君着席〕

 こうした措置は、その使用に当たり相当の高い頻度で重い副作用の発生が予想される一方、重篤な疾病等の治療のためにはその使用が避けられず、かつ代替する治療方法がないと、そういった医薬品につきましては、その使用に伴い発生する副作用は受忍せざるを得ないというふうな考え方に基づくものでございます。

小池晃君

 私はこれはおかしいと思うんですね。副作用が非常に多いと、これは治療効果と比べれば受忍すべきものだと。

 これはやはり副作用多いからこそ救済すべきなんだし、七九年に法を制定された当時は、これはやはり抗がん剤の使い方というのはかなり際どい使い方というのもあったかもしれませんが、今ではかなり一般的にがんの患者さんのクオリティー・オブ・ライフを高めるというようなことでも積極的に使われているわけですから、これをずっと対象にしない、副作用被害が最も大きい抗がん剤を省いていると。これで給付が十分だと言えるんだろうかと。

 大変事故を起こしやすい車だから保険に入れないというんじゃ保険の意味ないわけでありまして、そういう車だからこそ、高い拠出金を取ってやはり救済していくということこそ求められているんじゃないだろうか。

 あるいは救済給付の請求期限も大変私疑問持つんです。救済給付の請求期限は医療費の支払から二年間と限定されている。これは一体なぜなんでしょうか。

政府参考人(小島比登志君)

 御指摘のように、救済制度におきます医療費の請求は二年という制限が設けられているところでございますが、これは一つには、医療費につきましては医療保険における自己負担額の補てんを目的とした給付でありまして、各医療保険制度における保険給付の時効も二年というふうに定められておりますし、また一方で、類似の制度と思われます公害健康被害補償制度でありますとか労働者災害補償保険制度、これらも一応二年という請求期限を限っておりまして、私どもの制度におきましても二年という請求期限は妥当なものではないかというふうに考えているところでございます。

小池晃君

 いや、私は妥当なものではないと思いますよ。保険給付の時効と同列に論ずるのは、私はおかしいと思うんですよ。

 副作用の被害かどうかというのは、その症状が起きたとき、治療を受けたとき、その瞬間には分からないということだって一杯あるわけですよね。後でいろんな知見が出てきて結局これはあの薬のせいだったんだと。今までの薬害というのはそういう経過たどっているじゃないですか。

 それから、公害の給付が時効が二年だというのも、私は同列に論じられない。これもその時点で分かるわけですから、公害病の医療を受けるということは分かるわけですから、ですからその点では、これは一律に二年で請求期限を切るというのは私は全く合理性がないと。少なくともカルテの保存期間というのは五年あるわけですから、やっぱりそれに照らしても私はこれはおかしいと思うんです。

 大臣、今までちょっとその給付の不十分さを私、二点だけですけれども挙げました。私は、ここはこれでその副作用被害救済の役割を十分果たしていると言えるのか、私は極めて不十分ではないかというふうに考えるんですが、大臣、この点、がんの問題もそれから請求期限の問題も含めて、お答えをいただきたいというふうに思います。

国務大臣(坂口力君)

 今、局長から答弁があったとおりでございますが、薬の問題は、これは時代の変遷とともに私は変わっていくというふうに思っております。したがいまして、がんの治療薬が今後更に副作用の少ない、そしてがんに対する特効薬的なものが出てくるということになってくれば、当然そのがんの問題も私は将来検討されるであろうというふうに思います。

 しかし、現在の段階におきましては、若干の進歩はあったとはいいますものの、今なおこのがんの治療薬というものは大半の人に副作用が発生をする、むしろ多くの、その半分以上の人に発生をすると言った方がよろしいかと思います。そういう状況の中で、しかし、そうはいいますものの、この副作用を覚悟しながらもそれを使わなければがんが治らないという現状にあるわけでございますので、使います医師の方も、それからお受けになります患者さんの方も、そうしたことを覚悟をしながらお使いをいただいているというふうに思っております。

 したがいまして、こうした場合にはこの被害者救済の制度にはなじまないのではないかというふうに思います。ほとんどの人が使いましても副作用はない、数千人にお一人とかあるいは数万人にお一人とか、特別にそうした副作用に遭われる皆さん方は、それは体質が違うんだからということで対応することはそれはできない。その人たちに対してはやはり手を差し伸べていかなければならないということでありまして、そうしたことを踏まえてこの制度はでき上がったものでございますので、がんの問題、現在早急にこれをそのとおりに副作用の制度の中に入れるということは私は適当でないと考えております。

 二年の問題につきましても、今これはもう局長の方から答弁のあったとおりでございまして、あえて繰り返しをいたしませんけれども、諸制度と比較をいたしましても、この辺のところが妥当ではないかというふうに思っている次第でございます。

小池晃君

 いや、私は、先ほど諸制度と比べて妥当性がないと申し上げたんですから。がんの薬だっていろいろあるわけですから、是非、一律に給付対象としないということは、これはおかしいと私は思うということを申し上げたいと思います。

 先ほど、拠出金率を引き上げる予定だとおっしゃいましたが、しかし今回の法案には、おととい議論したように第九条五項が加わって、拠出金率の変更に当たっては製薬企業の意見を聴かなければならないという条項まで盛り込まれております。結局、製薬企業が認める範囲内の拠出金で、それに合わせて救済対象も狭い範囲のままということであれば、私はこれは副作用被害救済の役割を果たすということはできないというふうに思いますので、この点は問題点として指摘をしておきたいと。

  〔理事武見敬三君退席、委員長着席〕

 さらに問題点を指摘したいんですが、審査費用の問題であります。審査費用も製薬企業からの手数料だけが財源になっていると。医薬品の審査を製薬企業からの手数料だけで賄っていくというやり方で、果たして公平、公正な審査ができるというふうにお考えなのか。その点をお答え願いたいと思います。

政府参考人(小島比登志君)

 現在、承認審査に係る手数料でございますが、当然のことながら承認申請をいたしますすべての企業から個々品目ごとに手数料として審査料を納入していただいているわけでございます。これにつきましては、薬事法上に規定がちゃんとございまして、「審査に要する実費の額を考慮して政令で定める額の手数料を納めなければならない。」という規定があるわけでございまして、手数料の額は実費を考慮いたしましてきちっと政令で定める、また最終的な承認の判断は厚生大臣が行うということでございますし、諸外国の例を見てみましても、承認審査に係る費用を企業からの手数料で賄うというのは、必ずしも審査の公平、公正なものにならないということではないのではないかというふうに考えております。

小池晃君

 今までも法律で決まっていて、手数料でやっていたとおっしゃるんですが、今回新しい独立行政法人では、これは検査の迅速化を図るために手数料の値上げを行うということですよね。だとすれば、製薬企業への財政依存というのはもっともっと高まっていくということは間違いないんじゃないですか。

政府参考人(小島比登志君)

 確かにこのたびの制度改正では、審査体制の充実のために審査手数料の引上げということを考えているわけでございますが、これにつきましては、やはり製造技術の高度化や国際的な規制の調和という観点から、より客観的で綿密な審査を求められておりますし、それに合わせて国際的な標準期間であります一年程度という中で審査、承認をしていかなきゃいかぬというためには、やはりそれなりの人員を確保しなければいけませんし、そういったためにも厳密な審査をより早く実施することが必要だということで審査料の値上げを求めているわけでございまして、それは申請する側にとっても理解ができることなのではないかというふうに考えております。

小池晃君

 諸外国でもこういう仕組みでやっているんだ、だから大丈夫なんだ、公平、公正さは保たれているんだとおっしゃいますけれども、果たしてそうなのか。大臣は昨日、おとといの論議の中でも、審査のスピードが上がっていくというのは良いことなんだ、できるだけ早く国民に薬を、新薬を提供することは良いことなんだとおっしゃいました。

 果たしてそれだけでいいのか、そんな単純な話なのかということを私申し上げたいのは、これが BMJ という、ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル、イギリスの医師会、英国医師会雑誌であります。この九月十四日付けの号なんですけれども、ここでアメリカの FDA の今の問題が取り上げられています。

 どういう話かというと、アメリカで過敏性大腸症候群の新薬のアロセトロン、こういう薬が二〇〇〇年四月に承認をされました。しかし、この薬は副作用で七名が死亡した。九か月後にグラクソ・ウエルカム社が自主回収をしているんですね。ところが、FDA はどう対応したかというと、審議会委員からは反対の意見が出たんだけれども、それを押し切って、医師と患者双方がインフォームド・チョイス、要するに自分はこの薬を使ってこの程度の副作用があってもそれは仕方ないということをサインをすれば、署名をしていることを条件に再承認をしたと。研究者の数字では、このまま発売されて二百万人が使用するというふうに言われているんですが、三百二十九人が死亡するという警告があるほどの薬なんですね。そういう非常に危険な薬が再承認を極めて短期間にされてしまったということに驚きの声が上がっているわけです。なぜこんな再承認が行われたのか。

 この BMJ の論文で書かれているのは、以前は FDA の新薬審査というのは世界的にも厳格で有名だったと。ところが、FDA は新薬審査の迅速化のために製薬企業からの審査料金を大幅に値上げしたそうであります。製薬企業からの資金依存が高まったことが審査を甘くして問題を引き起こしているというふうに結論付けて、これは特集の表紙は FDA の建物の写真が大きく写っているわけですが、一体だれが FDA を所有しているのか、製薬企業なのか国民なのか、これがこの特集号の表紙であります。

 新薬審査というのは正に国民の生命を左右する、私は、このままどんどんどんどん手数料値上げ、製薬企業からの手数料だけに頼っていくということであれば、これは製薬会社からの言いなりになりかねないんじゃないか。本来やはり財源も、これは一定部分国の責任で、もちろん昨日議論したように実際の審査の業務、これ自体も国がやっぱり直接手を下していくということが安全性のためには私はどうしても必要なんではないかと考えるんですが、大臣、この点いかがでしょう。

国務大臣(坂口力君)

 先ほどは拠出金は低過ぎるというお話がございましたし、今度は企業から検査料をもらうということは、それは公平を欠くと、こういうお話でございますが . .. .. .

小池晃君

 性格が違います。

国務大臣(坂口力君)

 性格は違うとは言いますものの、よく似た話でございまして、こちらも戸惑うわけでございますけれども。

 しかし、手数料をもらったからといって私は検査の結果が左右されるということはないというふうに私は思っております。病院がそれぞれの検査機関にいろいろな検査をお願いをしておりますけれども、検査機関は手数料をもらったからといってその内容を曲げるわけではありません。これは公正にその結果を出しているわけであります。同様でありまして、国の方は、その結果を、その検査の検査料をもらったからといってその内容を決して変えるわけではありません。そこは私は明確だというふうに思っております。

 先ほどの期間の話でございますが、治験が日本は、これは先日私が申し上げましたのは総論的なことを申し上げたわけでありまして、日本の治験が余りにも遅過ぎる。アメリカがもう二、三年で、あるいはまたヨーロッパが二、三年、もっと一年以内にやっておりますことが、日本では五年も、長いのは十年も掛かる。そういうことがありまして、そしてこの日本の中で薬を出すということはなかなかもう至難の業だというようなことで、外国にみんな出ていって、そして外国で治験をし、そして承認を得ると、そういう事態に今なっている。

 果たしてそれでいいかという声が上がっているということを御紹介を申し上げ、それは日本の方も治験を急がなければならないということを申し上げたわけでありますが、治験を急がなければならない問題と、そしてその内容、検査をする内容についてはしょってもいいという話とは別でございまして、それははしょることなくちゃんとやはりやっていかなければならない。そこはきちっとしたルールがありまして、そのルールに従ってそれはやっていかなければならない。

 ただし、余りにも長く掛かるのにはそれなりの日本の治験の体質というものがあったからそうなっているわけでありまして、その遅くなっている体質そのものをやはり改善をしていかなければならないということを私は申し上げたわけであります。

小池晃君

 治験を早く進める、早く進めること自体を否定するわけじゃないんです。しかし、今回これは独法になっていけば、企業会計原則、業績評価ということになっていけば、これはとにかくできるだけ早く審査するということが業績評価基準になりかねない。そういう形でやっていけば、私は、質がなおざりにされて、アメリカで起こっているようなことだって起こりかねないんじゃないかと。

 きちっとやります、ちゃんとやりますというのは、口で言うのはたやすいんですが、システムとして、今回独法でそういう仕組みになった場合に、そういうリスクが排除されるということがちゃんと担保されるんですか、独法になって業績評価で審査のスピードばかり求められるということにならないんですか、そういうふうにならないという保証があるんですかということをお聞きしたいんです。

国務大臣(坂口力君)

 今まで独法でない形でやっておりまして、それがスムーズにいっていたかといえばいかなかったことも正直言ってあるわけでございます。したがいまして、いわゆる設立基盤によって私はその内容が変わってくるとは思っておりません。

 要は、そこをどれほど節度を持ち、真剣にそこをやっていくかということでありまして、それは私は体制にもよるというふうに、体制と申しますのはその検査体制等にもよると私は思っております。余りにも少ない人間でそして早くやれと言ったってそれはでき得ない。ある程度の職員はそこに確保をして、そして進めていかないとそこにできないということも今まであったわけでありまして、そうした点では改善をされるものというふうに思っております。

 したがいまして、そうした中で適正にこれが進められるように、厚生労働省といたしましても今まで以上にそこは監督をしていかなければいけない。先日も申しましたとおり、この独立行政法人というものを作って、今までよりも若干手は離しますけれども、決して目を離すわけではありませんということを申し上げたのはそういうことでございます。

小池晃君

 国民の命にかかわる問題に手を離していいのかということなんですよ。やはりアメリカの例を見ると私は非常に危惧を覚えるんです。こういう手数料だけに頼っていく、評価基準を持ち込まれるということになった場合に、公平性、公正性が本当に保たれるんだろうかという疑問があるわけです。

 さらに、昨日論議した審査、研究振興と副作用被害救済を一つの組織で行うということの問題点、やはり私、昨日の議論でもこの疑問はぬぐえていない。これは旧厚生省の組織方針にも逆行するということを昨日議論いたしました。指摘をいたしました。

 私、それだけではないと。これは BSE 事件のときの政府の対応とも逆行するんだということについて今日は議論したい。BSE の教訓を踏まえて、このとき何をやったか。振興と規制をこれ切り離すということをやったわけです。

 これは今年六月十一日の関係閣僚会議の決定、「今後の食品安全行政のあり方について」ではこう言っているんですね。「消費者保護や食品の安全性の確保の観点から、リスク管理部門の産業振興部門からの分離・強化を行う」とはっきり言っているんですね。産業振興とリスク管理は分離すると。そして、農水省内にあった部門を独立した食品安全委員会として内閣府に作った、そしてリスク評価を行うことがこれはきっちり明記されている。坂口大臣はこの関係閣僚会議のメンバーだったわけですね。

 わざわざ今これから新法人作るというのであれば、少なくともこの六月、つい先日のこの方針に照らしても、私は、産業振興部門とリスク管理・評価部門、これは別組織とすると、これ私当然の対応だと思うんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(坂口力君)

 これは、衆議院におきましても私答弁をしたことでございますが、BSE の問題のときには、振興とそして規制の問題が余りにも分離をされ過ぎていた、だから、これは厚生労働省とそして農林水産省とにばらばらにやっているからこういうことになった、もう少し距離を近づけなければならないという議論があったわけであります。そういう議論も踏まえて、そして内閣府にその両方を管理監督をする部門を作っていくということになったわけであります。そうしたことを踏まえて事が起こっているということを私は申し上げているわけでございます。

 規制とそれから振興の問題につきましては、我々の方のこの薬の問題につきましても、これは重大な関心を持って見守っていかなければならないことであり、そういう意味で、厚生労働省の中に、一方におきましては医薬局、そして一方の方におきましては医政局というふうに、それぞれ分かれた分野におきましてそれを管理監督することになっている、そういうことは今までと何ら変わらないということを先日も申し上げたところでございます。

小池晃君

 いや、それはちょっと違いますよ。だって、この関係閣僚会議の文書ありますよ。もう一度読みますね。「消費者保護や食品の安全性の確保の観点から、リスク管理部門の産業振興部門からの分離・強化を行う等所要のリスク管理体制の見直しを図る。」と言っているんです。要するに、農水省内、産業振興を主にする農水省内に安全管理を置いておいたらまずいから、これを分離して内閣府に食品安全委員会を置くということ。分離したわけですよ、これは、はっきり。

 そして、大臣は今、所定どおり、省内の組織は変わらないから心配ないんだと。私、昨日からこういう議論なんですよ。システムが変わる、でも今までどおりやる、心配ない、安全だ、責任を持つと。しかし、厚生労働省というのはこれまで、六〇年代のサリドマイド以来、四十年間ですよ、薬害事件が起こるたびに責任を問われ、反省し、再発防止を誓って、そしてまた過ちを犯してきたわけじゃないですか。私は、きちっとシステムを作らなければ薬害の再発を防ぐことはできないということが、私は歴史が証明しているんだと思うんです。

 薬害を起こさないためには、大臣の決意だけでは駄目なんですよ。責任を持つという口約束だけでは駄目なんです。きちっとヒューマンエラーも含んで入らないように、システムとしてリスク管理をどうやっていくかということをきちっと作っていくということが何よりも決定的なんです。

 私は、今回のシステムというのは、産業振興と安全対策を一体化する、国の関与を後退させる、財政的にも企業に依存していく。私はどう考えてもシステムとして最悪の組合せだとしか思えない。大臣、いかがですか。

国務大臣(坂口力君)

 昨日も申しましたとおり、今までの医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構、ここにおきまして、じゃ今までは分離されていたかといえば、この中に救済をつかさどりますところの業務部があり、あるいはまた研究振興を行いますところの研究振興部があり、また規制を担当いたしますところの調査指導部というものがある、こういうふうに今までもあって、そしてそれを管理監督をするところを明確にしなければならないというので、そして明確にしてきたわけです。

 これは、HIV 訴訟以降、そうした反省も踏まえて、そしてそれを管理監督をします厚生省の中でそれを医政局と医薬局とに分けてきたわけでありまして、今までそれを別々にやっておったのを今度一緒にしたというんじゃないわけで、今までもそうした形で現場は行われていましたけれども、そこを行政的に指導するところ、そして監督するところを明確に分けるということが大事だというので分けてきたわけでありまして、そういう意味でこれからもここはしっかりやっていきますと。

 それは、過去のいろいろの問題を踏まえてそうやっているわけでありまして、そこは私は委員が御主張になりますことは若干違うと思います。

小池晃君

 今までもそうだったとおっしゃいますけれども、最初からそうだったんじゃないんです。昨日それは議論しました。最初は完全に副作用被害救済だけの組織だったんです。そこにどんどんどんどん皆さんがいろんなことをくっ付けて、どんどんどんどん肥大させていって、そして結局、今回決定的に審査部門、巨大な審査部門が加わるということになるわけですよ。私は、今までの薬害の教訓踏まえた、システムの上でも過ちが起こらないように努力していく、そういう方向で進んできたことに対して、私は正に決定的なこれは逆行だというふうに昨日も言いました。

 しかも、システムの後退はこれだけじゃありません。今回、医薬品機構の中にある評議員会を廃止するというふうに私、聞いております。これは、この評議員会というのは、製薬企業の代表団体もおりますが、学識経験者の参加も法律で義務付けられていると。現在の評議員二十名ですけれども、これ、薬業、業界団体の代表は八名、これに対して学識経験者は十二名であります。だから、どっちかというと学識経験者の方が多いんですね。これをなくしてしまうんだと。

 その一方で、新しい医薬品機構法の第十九条では、これは昨日も議論したように、これがそれに代わるものだと説明されました、昨日。これは業界団体だけの意見を聴く仕組みなんですよ、この条項は。今までは少なくとも中に評議員会というのを設けて学識経験者の意見も聴くと曲がりなりにもあったものをなくしてしまって、新法人では業界の意見聴くだけだと。しかも、その法律の説明は前もって業界にしていたという昨日の議論もあります、おとといの議論も。私は、これはどう考えてもおかしいじゃないかと思うんですが、この点いかがですか。なぜこんなことをするんですか。

国務大臣(坂口力君)

 新しく法人ができました場合には、ここの法人の運営に当たりましては、学識経験者等の幅広い意見を伺うことによりまして、また国民の意見も伺って新法人の業務を生かしていきたいというふうに思っております。

 したがいまして、この法人ができましたならば、新しいまたそうした皆さんの御意見を聴く場を作り上げていく。決して業界の意見だけを聴いた、業界のお先棒を担ぐための決して制度ではありません。

小池晃君

 だったらなぜ法律の中にそれを入れないんですか。今の医薬品機構法には評議員会がちゃんと法定されているんですよ。その中に学識経験者を加えるということがちゃんとあるんですよ。しかし、今回の法案には全くそれがないんですよ。大臣は口でおっしゃるけれども、そう言うんだったら何でその法律の中に入っていないんですか。欠陥じゃないですか。

 私、この法案は非常にこういう問題点あると思うんです。業界の言うことを聴くだけじゃないんだからそんな心配しないでくれというふうにおっしゃるけれども、法律の条文だけをたどっていけば、正にそういう方向に持っていこうとしか取れない。全く担保がないわけです。重大な欠陥だということを申し上げたいというふうに思います。

 しかも、評議員会がなくなって、代わりになるものを作るとおっしゃいます。それは絶対必要だと思いますが、全く法律にないのは欠陥だと思いますが、法律で決められている内部の機関は理事長と理事など役員だけです。しかし、役員というのは一体どういう人か。今の役員、現在の理事長は宮島彰氏です。ついこの間まで厚労省の医薬局長をやられていた。理事四名と監事一名はすべて厚労省からの天下りなんです。

 医薬品機構の初代理事長を私調べてみましたら、一番最初に副作用被害救済基金として発足したときの初代の理事長はどなたか。小沢文雄さんとおっしゃる仙台高裁の長官です。司法関係者を呼んだわけですよ。それが、二代目から全部天下りなんです、厚生省の。私は、こういう構成で果たして公正、公平な薬事行政できるのか、極めて疑問だと。

 大臣は、二十六日の記者会見で医薬品機構の役員は公平に判断できる人をとおっしゃったそうでありますけれども、公平に判断できる人というのは一体どういうことなんでしょうか。

国務大臣(坂口力君)

 先日、記者会見でたしかそういう御質問があって答えたんだというふうに思いますけれども、それはもう正真正銘公平でなければならない人でありまして、それはこの仕事柄、その運営において、そしてまた今後の方針をどう立てていくかということについて誤りなきを期していかなければならないわけでございます。そうした意味で、私は、ただ単に役所の方針でありますとかあるいはまた国の方針だけではなくて、多くの皆さん方の、国民の皆さん方のことを十分に念頭に置いて、そして聞き入れてやっていけるような人でなければならないというふうに思っております。

 したがいまして、そうした意味で、過去のケースもいろいろありますけれども、今後の独立行政法人におきましてはすべてを役所出身者の人にするということではなくて、多くのそれは見識のある方におやりをいただきたいというふうに思っている次第でございます。

小池晃君

 公平に判断できる力を持っている方というのは私は当然だと思うんです。公平に判断できる役員構成、これが本当に重要だと思うんです。あの雪印だって、これ信頼回復のために最も厳しく雪印を批判した消費者団体の方を役員に迎えたんですね。私は、国民の薬事行政に対する信頼回復を本当に真剣に考えるんだったらば、薬害の被害者、これをその役員に加えるということは、これは最低限そのくらいのことをやるべきじゃないかと思いますが、大臣、この点いかがですか。

国務大臣(坂口力君)

 これはどういう形の人を加えるかということを今具体的に私はここで述べるわけにはまいりません。

 トータルとして申し上げれば、公平に判断できる人をそこに置くということでございまして、それはいろいろの形の人がございましょう。いろいろの立場の方がお見えになりましょう。その都度それは判断をしていく以外にありません。どういう立場の人だからそれを入れなければならないということになってまいりますと、これまたぎくしゃくいたしまして不公平になってくることもございます。したがいまして、私は多くの国民の期待にこたえ得る人をどうそこに選んでいくかということが大事だというふうに思っております。

 したがいまして、役員等につきましてはその独立行政法人の長が選ぶことではございますけれども、しかし、その役員等の判断につきましては、こうあるべきだというやはり考え方というものは私も明確にしておかなければならないと思っているところでございます。

小池晃君

 医薬品機構の問題を議論してまいりましたけれども、私、先ほど朝日委員からも指摘あったように、これは本当にほかの八法案とは異なる性格を持っている。しかも、様々な問題点がある。そして、薬害の被害者からは本当に反対の声が上がってきている。幸い月曜日には参考人、切り離して、この問題に絞って行われるということであります。

 私は与党の皆さんにも是非呼び掛けたいと思うんですが、私は、本法案はこれはやはり特別な扱いという形でしていくことが本当に良識の府たる参議院にふさわしいやり方だというふうに思いますし、この点でこそやはり参議院の独自性を発揮していくことが求められているんだと、そういう扱いを是非進めていくべきだということを御意見として申し上げておきたいというふうに思います。

 その上で、独立行政法人労働者健康福祉機構法案についてお聞きしたいと思います。

 これ厚労省が、本法案についてですが、二〇〇〇年十二月の再編整備等計画の方向性と基本的に乖離はないとされています。これは労災病院の果たしている役割について基本的に維持、存続していく、そして最近問題になってきている疾患については更に強化をしていくんだと、そういう方向と理解してよろしいでしょうか。

政府参考人(松崎朗君)

 労災病院におきまして、その基本的な役割として取り組んでおりますいわゆる労災疾病でございますけれども、これは御案内のように、じん肺でありますとか振動障害、また産業中毒といったような、言わば従来型、つまり旧来型の疾病に加えまして、最近では、職業性ストレスによります精神障害でございますとか、また過重労働による脳・心臓疾患でございますとか、また働く女性の婦人科疾患、そういったものにつきましてはその範囲を拡大してきているというのが実情でございます。

 したがいまして、労災病院につきましては、今申し上げましたような労災疾病に関します研究機能を有します中核病院、こういったものを中心に再編いたしまして、全国的なネットワークを構築できるようにしていきたいということでございます。

小池晃君

 労災の概況なんですが、今、厳しい労働環境で労働災害の実態はどうか簡単にお聞きしたいんですけれども、年間の死傷者数はどのくらいなのか、その中で亡くなった例はどのくらいに上るのか、数字をお示し願いたいと思います。

政府参考人(松崎朗君)

 平成十三年におきます数字でございますけれども、労働災害によります死傷者数は約五十五万人弱、正確に言いますと五十四万九千九百六十三人でございます。そのうち、死亡者数は千七百九十人という状況でございます。

小池晃君

 一度に三人以上が被災するいわゆる重大災害というのはどのくらい発生しているんでしょうか。

政府参考人(松崎朗君)

 同じく平成十三年における数字でございますけれども、今御質問ございました、一どきに三人以上被災するいわゆる重大災害でございますが、これは二百二十五件でございます。

小池晃君

 今でもこれだけの労災が発生しているのが現状であります。じん肺や有機溶剤中毒などの職業性疾患は今なお八千人以上の患者さんが罹患している。化学物質に係る法定特殊健康診断における有所見者数は年間三万人だと。これに加えて、テクノストレスによる心身症とか、あるいはリストラのあらしによるうつ、神経症、こういったものが増加している。過労死も過労自殺も増えております。これらに対応しているのが、例えば東京労災病院にある産業中毒センターであるとか関東労災病院の勤労者メンタルヘルスセンターとか、これは労災病院の重要な役割だと思うんです。

 しかも、労災病院の重要性を測るもう一つの、私、物差しとして、やはり地域医療に貢献しているということも見逃せない側面があるんじゃないか。今ある労災病院というのは、多くは昭和三十年代に作られている。ベッド数は平均で約四百床、外来患者数もかなり多いです。やはり、当該労災病院が地域に密着して地域医療を行っているかどうか、こういったことも十分に考慮をして、労災にとってどうかという物差しだけではなくて、やはり地域と調整を図りながら今後の在り方を検討していくことが私は必要ではないかというふうに考えるんですが、厚生労働省としての認識をお伺いしたいと思います。

政府参考人(松崎朗君)

 御指摘のように、昨年十二月に閣議決定されました特殊法人等整理合理化計画でございますけれども、そこにおきまして、労災病院につきましては、先ほど申し上げましたような、労災疾病につきまして研究機能を有します中核病院を中心にしまして再編をするということとされております。したがいまして、この再編の対象外となる労災病院につきましては廃止ということになるわけでございますが、地域医療機関としての必要なものにつきましては、民営化でございますとか、また民間、地方に移管するということとされたところでございます。

 それで、具体的な再編でございますけれども、これに当たりましては、今申し上げました勤労者医療に関します全国的なネットワークを構築するといった上で、それぞれの労災病院が労災病院としての機能をきちんと発揮することができるかどうかといったことを、まずそういう観点から検討を行っていくということになります。

小池晃君

 これ、私は地域のやはり状況もしっかり見ていただきたいと思うんです。

 例えば、北海道の美唄の労災病院では、一日の外来患者数は千四百人だと、入院患者数は市内全体の三分の二を超えている。全国労災病院労働組合の美唄支部が、統合縮小、診療科の廃止に反対する署名を集めたらば、人口の八割を超える署名が集まったそうであります。

 やはりこういった病院を、労災病院としての役割が終わったというだけの理由で単純に移譲、廃止していくということはこれは許されないというふうに思いますので、やはりきちっと地域住民の声、現場の声に耳を傾けていくという姿勢を求めていきたいというふうに思います。

 その上で次に、社会保険診療報酬支払基金の問題についてお伺いをしたいんですが、まずお聞きしたいのは、規制改革推進三か年計画で、保険者によるレセプトの審査、支払を認めて通達や省令の廃止を求めていますけれども、厚労省としてはこれは一体どのように対応するおつもりなのか、お聞きしたいと思います。

政府参考人(真野章君)

 診療報酬の審査、支払につきましては、規制改革推進三か年計画の改定の今年の三月の二十九日の閣議決定におきまして、保険者による直接審査につきまして十三年度中に措置することとされておりまして、私どもとしては、この閣議決定に基づき、できるだけ速やかに実施する必要があるというふうに考えておりますけれども、同閣議決定におきまして、この実施に当たりましては、「公的保険にふさわしい公正な審査体制と、患者情報保護のための守秘義務を担保した上で、」ということが求められております。この具体的な措置ということも含めまして、現在検討を進めているところでございます。

小池晃君

 具体的に見ていきますと、例えば JR の鉄道共済、ここですらそれまで自分たちでやっていた審査、支払を、八九年に基金に委託せざるを得なくなったわけですね。ましてや、小規模の健保組合にはより困難が予想されるわけであります。

 一体、健保組合の中で審査、支払が実際にできる組合というのは本当にあるんだろうか、名のりを上げているところは実際にあるんだろうか、その辺をお伺いしたいと思います。

政府参考人(真野章君)

 今申し上げましたように、この直接審査のやり方その他につきまして、現在、閣議決定で付されました条件を具体的にどういうふうに措置が考えられるかというのを検討しているところでございまして、私ども、健康保険組合からまだそういう直接の申請というものは聞いておりません。

小池晃君

 また、具体的に見ていくと、例えば一次審査を健保組合がやって、二次審査を基金がやる、あるいは支払業務だけを基金にゆだねる、こういった形が理論的には考えられるのかなと思うんですが、これは様々な問題があるんじゃないかというふうに思うんですが、どのような問題点があるというふうに厚生労働省としてはお考えか、お聞かせ願いたいと思います。

  〔委員長退席、理事中島眞人君着席〕

政府参考人(真野章君)

 今申し上げましたように、現在、閣議決定で付されました条件の具体的措置を検討しているわけでございますが、その中でいきますと、先生もおっしゃられました一次審査と二次審査を分けるとか、審査と支払を分けるというような、理論的には考えられますけれども、医療機関側の事務手続、また支払基金の効率的な事務処理ということを考えますと、なかなかその点についても難しい問題があるというふうに思っておりますが、今申し上げていますように、この具体的な措置というものをできるだけ早く詰めまして、検討を急ぎたいというふうに思っております。

小池晃君

 実務面を考えると難しいとおっしゃった、その中身をちょっと、どういうふうに難しいのかを御説明願いたいんですが。

政府参考人(真野章君)

 先生御指摘の一次審査と二次審査を仮に分けるということになりますと、どの程度一次審査を保険者がやっていただけるかというのがございます。私どもは、先ほど申し上げましたように、公的保険にふさわしい公正な審査体制を整備をしていただくということを前提に考えているわけでございますが、そこでどこまでの審査をやっていただけるのかと。

 仮に、仮にでございますが、一次審査を余り、そういう体制はしいたけれども、きちっとなさらずに、二次審査だけを支払基金にお願いをされても、支払基金としてはなかなか難しい問題がある。例えば、二次審査を持ってこられるということは、医療機関側との話合いが付かないというケースでございましょうから、そういう医療機関側との話合いが付かないものを数多く支払基金が受けるということは、これはまた基金側としてはなかなか難しい問題があるというふうに思います。またそれから、審査と支払ということは、これはやはり私どもとしては表裏一体、一括して一体として行う方が医療機関側、また支払基金の両方にとりまして効率的であるというふうに思っております。

小池晃君

 さらに、レセプトのプライバシー保護の問題をお伺いしたいと思うんです。

 これは先日、当委員会でも議論ありましたけれども、今年の一月に中古パソコンの購入者が市販のソフトでハードディスクのデータを復元したらば、ハードディスク内に約千人分のレセプト情報が残されていたという事件がありました。

 健保組合がこれは外部業者に審査内容のチェックを委託するケースも多いと聞いておりますので、業者が使ったパソコンにデータが残ったままだった可能性もあると新聞報道で出ております。

 この件について、流通経路等の調査は行われたんでしょうか。これは、データはどこのデータだったのか、判明したのであれば教えていただきたい。

政府参考人(真野章君)

 御指摘の件は、先日、宮崎委員からも御指摘がございました。

 今年の一月に新聞報道がなされまして事実関係の調査を行ったわけでございますが、健康保険組合からレセプトの画像処理を委託された専門業者が用いたリースのパソコンが売却され、そのパソコンを中古販売店にて購入した学生が復元ソフトを用いて消去されたデータを復元したところ、レセプト情報が画像データで残されているというのが分かったということでございます。

 これにつきましてはもう消去をしておりますし、それから健康保険組合につきましても、レセプトの管理の事務に当たってその被保険者等の秘密が遺漏しないよう万全を期すように指導をしているところでございます。

 また、健康保険組合が用いた、健康保険組合から直接出たということではございませんので、その対象については御容赦をいただきたいというふうに思います。

小池晃君

 現在、健保組合の守秘義務は、これは事業運営基準で指導していると思います。これは情報を漏らしても何の罰則もないわけです。健保連の下村副会長も、健保組合としての守秘義務を明確にしなければならないというふうに言っております。

 健保組合に対しては、これは守秘義務、厚生労働省としてはどのようにこれは規定していこう、担保していこうとお考えなんでしょうか。

政府参考人(真野章君)

 レセプトに関します患者情報、これは非常に最も重要な情報だというふうに考えておりまして、これまでも各健康保険組合に対しまして指導をしてきたわけでございますが、今後ともその指導は徹底をしていきたいというふうに思っております。

 ただ、守秘義務につきましての法律の規定ということに関しましては、他の立法例との均衡その他も勘案しながら私どもとしても検討をしていきたいというふうに思っております。

小池晃君

 さらに、経済審査、いわゆる経済審査と言われている問題についてお伺いをしたいと思うんですが、総務省が本年一月に支払基金に勧告を出して、レセプト一件当たりの費用五十七円に対して削減額が五十三円で費用に見合うものとなっていない、審査の在り方を見直す必要があるとしております。

 しかし、こんな単純な話では私はないんじゃないかと。レセプトの審査というのは、保険者は医療費を可能な限り圧縮しようとする、働き掛けていく。保険医、保険医療機関の方は最適な医療の実践を求めて診療の規制に反対をしていくわけであります。その両者の接点を図っていくのが私は審査だと思う。だからこそ三者構成になっているんだと思うんです。

 競争原理とか経済効率というのをここにどんどん持ち込んでくれば、無理やり持ち込んでくれば、私は、経済的側面からだけの審査になっていって国民が十分な医療を受けられないということになりはしないかということを大変心配するわけですが、この点についての厚労省の見解を伺いたいと思います。

政府参考人(真野章君)

 支払基金の設立目的は、言うまでもなく診療報酬の適正な審査、支払でございまして、診療報酬の審査に当たりましては、当然、適切な診療報酬の確保という観点から適正、公正に行われるべきものであるというふうに思っております。

小池晃君

 経済原理、経済効率ということをこの分野にどんどん持ち込んでいくということに対しては私は否定的なんですが、その点についての見解を伺いたいと思います。

政府参考人(真野章君)

 もちろん、適正な審査ということに関しましては十分行うべきでありますし、それは、支払基金は保険者からその負託を受けておるわけでございますので適切な内容をチェックをするというのは当然でございますが、それを、言わば診療報酬額の削減の多寡を見るというような観点からではなくて、あくまでもやはり適切な保険診療が行われているかどうかという観点から審査が行われるべきものだというふうに思っております。

小池晃君

 ここでちょっとお聞きしておきたいんですが、今健保組合の約七割がレセプトの点検を外部のいわゆる、言葉は余り良くないんですけれども削り屋というんですか、に委託しているというふうに言われております。そして、請求額の削減に貢献した点検者に奨励金を出すとか、減額した額の五〇%を成功報酬として支払を受けるとか、そういう減点促進策が図られているという報道がございます。

  〔理事中島眞人君退席、委員長着席〕

 一方、支払基金当局は何を言っているかというと、これは民間法人化を踏まえて、審査の競争相手として保険者とかあるいは点検業者の参入を警戒して、もう競争時代だと職員にハッパを掛けているということも聞いております。

 私は、こうした削り屋、こういったものが競争をしていくと、削り屋との競争というような実態というのは際限のない、先ほど局長おっしゃったような、診療報酬をいかに削るかというだけに着目をしたような査定減点競争を招くことになりかねないのではないかというふうに考えるんですが、その点、いかがでしょう。

政府参考人(真野章君)

 支払基金の設立目的は、何回も申し上げておりますように、診療報酬の適正な審査、支払ということにあるわけでございまして、いろいろ、一方では支払基金の審査につきまして医療関係者また保険者側から御意見があることも事実であります。そういう意味で、保険者、医療機関の負託にこたえて、先ほど来申し上げております適切な保険診療の確保という観点から支払基金の役割を果たすように、職員に一層奮励をするということのためにそういうことを言われているのではないかというふうに考えております。

 そういう意味で、今後とも、支払基金が適正な、公平な審査をするという役割、そして、その両方から、医療機関、保険者両方からの負託にこたえられるような役割を果たす、そして常に効率的、適切な事務執行を行うということに努力をすると、私どもとしてはそういう指導を重ねていきたいというふうに思っております。

小池晃君

 ところで、規制改革推進三か年計画などでは盛んに保険者機能の強化ということが言われています。

 ところが、民間の保険会社に強力な保険者機能を担保したいわゆるアメリカのマネージドケア、これは失敗したというのがアメリカの言わば共通認識になりつつあるのではないかと。一時減少していた医療費も、九六年には底を打って以降、増加をしているわけであります。

 問題点としては、社会的弱者を排除するんではないか、あるいは負の逆進性があるんじゃないかとか、採算重視の経営を加速するんではないかとか、患者の医療へのアクセスが制限されるんではないかというようなことが指摘をされております。

 識者の間でも、マネージドケアは失敗したという声は広がってきているのではないかと思うんですが、この際お聞きしておきたいんですけれども、厚生労働省としては、アメリカのマネージドケア、この実践をどのように今評価されているのか、お聞かせ願いたいというふうに思います。

政府参考人(真野章君)

 マネージドケアにつきましてなかなか厳密な定義があるわけではないと思いますけれども、一般的には、保険者が受診できる医療機関をコントロールしたり、受ける医療内容につきまして積極的に関与するなどによって、医療の質を維持しつつその効率化を図ろうとする仕組みというふうに今説明されておりまして、アメリカにおいて普及してきているというふうに承知をいたしております。

 ただ、マネージドケアにつきましては、要するにアメリカという皆保険制度を取っていない国におきまして、しかも高騰している医療費の抑制、こういうものに一方ではある程度寄与したという評価がある一方で、先生御指摘のありましたように、患者が必要な医療が受けられないと、また、医療提供側の裁量が制限されたというような批判があるというふうに聞いております。

 保険者が被保険者のために医療サービスの質の向上や効率化を図るというのは、これはまた重要な課題でありますけれども、一方で我が国では皆保険制度を維持し、そして患者さんのフリーアクセスを保障しているという状況からいたしますと、こういう我が国の医療保険制度の特徴は今後とも私どもはその基本になるべきものと。

 そうしますと、皆保険制度でない状況を前提下に、しかもフリーアクセスをある程度犠牲にしますといいますか、フリーアクセスを制限していることが前提となった仕掛けというのは、私どもの今の皆保険、フリーアクセスという日本の医療保険制度の基本ということからいたしますとなかなか難しい面もあると。しかし、一方ではまた、先ほど来申しましたように、保険者が保険者として被保険者のためにいろんな活動をする、そういう役割は当然でありますが、それをそのまま私どもの日本の場合に適用するというのはなかなか難しい面もあるというふうに思います。

小池晃君

 以上、いろいろ議論してまいりましたけれども、支払基金の特徴ということで幾つか挙げますと、四者構成の理事会において業務運営が行われていることとか、あるいはその審査が三者構成の審査委員会で行われていること、診療担当者に対する出頭及び説明要求等の権限が付与されていること、役員及び審査委員等には守秘義務が課せられていること、こういう特有の組織形態と特別な権限が付与されていると思うんですね。公正中立な審査を行って、全国の保険医療機関と保険者との間の紛争を防止する機能も担っていると思うんです。

 私は、通達と省令の廃止ということも言われておりますが、これで保険者自らによる審査支払、あるいは民間事業者に委託した場合、これは公的保険にふさわしい公正な審査体制等、その守秘義務を担保する、紛争処理ルールを明確にする、これが果たしてできるんだろうかということを大変疑問に思うんですが、その点いかがでしょうか。

政府参考人(真野章君)

 先ほど来申し上げておりますように、今先生がおっしゃられた三点が閣議決定の際に求められている事項でございますので、その三点を具体的にどういうふうにできるのかということも含めて、現在検討を進めているわけでございます。

小池晃君

 そもそも膨大なレセプトであります。この審査支払を適正、効果的に、効率的に行っていくには、やはりその基金が一元的に行うということが私は合理的だというふうに思います。それなのに、なぜ保険者自らによる審査支払とか民間事業者に委託しなければならないのか、私には全くこれは分からない。

 社会保険診療報酬支払基金は、これは全国同水準の審査、これを保険者と医療機関の事務を簡素化する、こういったいろんな役割、大きな役割を果たしていると思うんです。公的医療保険制度を円滑に進めていく上では欠かせないと思うんですね。こういう中で、今回この基金を民間法人化すると。私は、こういうことは公的医療保険の変質につながっていくんではないかということを大変危惧するわけですけれども、その点について御見解を伺いたいというふうに思います。

政府参考人(真野章君)

 御指摘のとおり、診療報酬の審査支払につきましては、二十万を超えます医療機関と五千を超えます保険者の間におきます診療報酬の審査支払を適正かつ効率的にやるということのために支払基金が設けられているわけでございまして、支払基金が民間法人になった後も、そういう審査支払を適正かつ効率的にやっていくという上におきまして支払基金が中心的な役割を果たしていくということは、基本的な考え方には変わりはないというふうに私ども思っております。

小池晃君

 あと、若干細かい問題なんですが、確認をしておきたい点がございますので、質問を続けたいと思います。

 委託金の問題であります。委託金を今回政令化するわけですね。現在、委託金は一・五か月というふうに法定化されていますが、これを政令化するこの理由は一体何なんでしょうか。

政府参考人(真野章君)

 現在、過去三か月において最高額の費用を要した月のおおむね一月半分ということで法定化をされておりますが、今後、委託側の保険者からのいろんな御意見もございます。それからまた、過去、この委託金を使ってまいりました実績もございますので、委託金そのものは診療報酬の迅速適正な支払を確保するために必要と私ども考えておりますので、法律上の規定は、御指摘のように政令で定める月数分というふうに置いております。あとは、民間法人化をいたしますので、支払基金の方で言わば必要な委託金の水準を柔軟に見直すというようなことができるように政令に委任をしたということでございます。

小池晃君

 これは健保組合連合会、健保連が委託金の廃止を要望されております。ところが、健保組合で納期内納入、診療月の翌々日の二十日ですか、ここまでに納入している組合は八五・六%だと聞いておりまして、やはり委託金制度は、先ほど廃止しないとおっしゃいましたけれども、これがなければ診療担当者に診療報酬を安定して安心して支払うことは私はできないというふうに思うんですが、この点について再度確認をさせていただきたいんですが、この委託金の問題については今後も維持していくということでよろしいんですね。

政府参考人(真野章君)

 今申し上げましたように、委託金は診療報酬の迅速適正な支払を確保するために必要だというふうに私ども考えておりますので、具体的な水準は支払基金が必要に応じて決めれるようにいたしますが、委託金そのものの制度は残していくということでございます。

小池晃君

 最後にじゃ、御質問させていただきたいんですが、支払基金の職員の労働条件の問題であります。

 これは、今回の附則四条で、役員の承継の規定はあるんですね。ところが、職員等については全く法律に規定がされておりませんで、労働組合からも不安の声が上げられています。この点で、職員の身分、あるいはその就業規則、労働協約、こういったものも承継されるかどうかということについて御答弁を願いたいというふうに思います。

政府参考人(真野章君)

 支払基金の今回の改正は、他の特殊法人を独立行政法人化するのと異なりまして、法人格に変更はございません。そういう意味では、登記上も変更しないということでありますので、法人格が変わるという意味で法人格の継承ということはないということでございますので、支払基金は支払基金として、就業規則、労働協約その他労使間で真摯に協議して決めたものというものは、民間法人化に伴いましても当然そのままといいますか、変更等は生じないというふうに思っております。

 ただ、民間法人化後になったのは、その後労使においてきちんと決められるべきことは言うまでもないというふうに思っております。

小池晃君

 特殊法人の改革に当たっては、これは雇用に配慮するということは当然重要なことだというふうに思います。

 支払基金の当局は、全基労などの労働組合に対して、労働条件の問題についてはこれは所管官庁が決めることという対応に終始しているというのが実態だそうであります。私は、今後も労働条件等あるいは定員等についてもきちっとその業務なりに必要な人員を確保するとともに、組合と十分に話し合っていくということが必要だというふうに思っております。そのことを申し上げて、私の質問を終わります。

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