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155-参議院臨時国会
2002年12月5日 厚生労働委員会・独立行政法人 9 法案審議
抗ガン剤イレッサ 発売直後に死亡例

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 今日は、前半、医薬品機構の問題議論したいと思うんですが、この医薬品機構の早期承認ということを考える上で極めて重大な事実が明らかになりました。抗がん剤イレッサの副作用の問題であります。まず、この問題からお尋ねしたいというふうに思うんです。

 昨日、このイレッサの問題、私お聞きする、質問通告で資料請求をいたしましたらば、イレッサによる副作用である間質性肺炎、これは二百九十一例、うち死亡例が八十一例と、本当に紙を見たときには愕然といたしましたが、そういう数字が出されました。この事実経過について、まず御説明をいただきたいというふうに思います。

政府参考人(小島比登志君)

 厚生労働省に報告されておりますイレッサ錠使用との因果関係が疑われております急性肺障害、間質性肺炎等の副作用報告例数は、平成十四年十一月二十五日の時点で、先生御指摘のように、二百九十一例、うち死亡八十一例でございます。

 イレッサ錠によります間質性肺炎につきましては治験段階でも三例認められておりましたことから、販売開始時点の添付文書におきまして重大な副作用として注意喚起を図っていたところではありますが、本年七月の供給開始以降、その頻度が増加傾向にあったことから、本年十月十五日に緊急安全性情報を発出することによりまして一層の注意喚起を図っているところでございます。

 厚生労働省に報告されております急性肺障害、間質性肺炎の症例を、副作用発現日により本年十月十五日の緊急安全性情報発出前後で比較いたしますと、緊急安全性情報発出前は百三十八例のうち死亡が五十七例、四一・三%、発出後の九十五例のうち死亡が十四例、一四・七%となっておりまして、このことから、緊急安全性情報による注意喚起の効果はあったものと考えております。

 副作用の発現が確認されて以降、収集された個別症例情報を基に本剤との因果関係やその発生頻度の傾向等につきまして鋭意検討を行ってまいりましたが、対象疾患が手術不能又は再発型のがん領域であり、前治療や併用薬との関係もあることから、特定患者群の発生傾向等についてはいまだ不明でありまして、引き続き情報の収集及び解析等を行い、本剤の適正使用を図ってまいりたいというふうに考えております。

 また、イレッサ錠の輸入販売会社でありますアストラゼネカ株式会社に対しましては、市販後安全対策の体制等の自主点検を行い厚生労働省に報告するよう求めておりまして、先般報告書の提出がなされたことから、今後その内容について検討し、市販後安全対策の着実な推進が図られますよう当該企業を指導してまいりたいと、このように考えております。

小池晃君

 ちょっとまとめてたくさんおっしゃられたんで、一つ一つ事実をちょっと確認していきたいと思うんですが、これはもう八十一名の方が亡くなったということは本当に重大なことだと私思うんですね。恐らく日本の薬害、薬の副作用の史上最大の規模ではないかというふうに思うんです。

 この薬は今年一月二十五日に承認申請が出された、七月五日に輸入承認がされた、七月十六日に薬価未収載、保険未適用のまま発売が開始をされた、販売開始された、八月三十日に薬価収載されて保険で使えるようになったわけです。本当に急げ急げでやってきた。わずか三か月余りで、発売、薬価収載されてからはもう三か月余りですから、それで八十一名もの犠牲者を出したわけであります。

 まず最初にお伺いしたいのは、そもそも一番最初にイレッサの副作用情報、これが厚生労働省に来たのはいつなんでしょうか。

政府参考人(小島比登志君)

 イレッサの情報につきましては、本年七月十六日の販売以降十月十一日までということで、私どもに障害例あるいは死亡例の報告が来ているところでございます。

小池晃君

 十月十一日に第一例があったということですか。

政府参考人(小島比登志君)

 十月十一日までの分として私どもに報告があったということで、十月十五日に緊急安全性情報を発していますから。

小池晃君

 ですから、十月十一日までの分の副作用報告が一回まとめてあったわけですか。それはいつあったのかということをお聞きしているんです。

政府参考人(小島比登志君)

 失礼いたしました。発売直後から順次その報告が出てきているということでございます。

小池晃君

 これは重大な話ですね。十月十五日に報告があったわけじゃないんですね。

 じゃ、一番最初に、厚生労働省に最初の副作用情報が来たのは一体いつなんですか。それ明確に日時を答えていただきたい。

政府参考人(小島比登志君)

 今ちょっと手元に正確な日時というのはありませんので、また調べまして。

小池晃君

 七十分ありますから、この質問時間中に調べていただきたいと思います。

 これ重大なことだと思いますよ。基本的な情報じゃないですか。こんなことも答えないで、質問できませんよ。この質問が終わる七十分の間に必ずお答えいただきたい。

 極めてじゃ早期に来ていたわけですね、七月十六日に販売してから、もうごく早期に来ていたということなんですね。

政府参考人(小島比登志君)

 確認はできませんけれども、そのように思います。

小池晃君

 そして、十月十五日に二十六人が間質性肺炎を発症した、十三人が死亡したという発表がされました。厚生労働省が十月十五日に緊急安全性情報を出している。ということは、十月十五日に情報があったんじゃなくて、もう七月の段階から次々に情報が来て、数がまとまったのが十月十五日、そこでようやく緊急安全性情報を出したということなんですね。

政府参考人(小島比登志君)

 そのとおりでございます。

小池晃君

 本当に重大だと私思うんですね。

 さらに言うと、実はこの段階ではアストラゼネカはもっと多い情報を持っていたということなんですね。アストラゼネカ社の文書を見ますと、十月十五日の時点で既に六十九人の発症、死亡二十七名という情報を持っておりましたと書いてあります。この情報は厚生労働省には来ていたんですか、いなかったんですか。

政府参考人(小島比登志君)

 私どもには来ておらなかったということでございます。

小池晃君

 私のところに来ていなかったということは、厚生労働省の窓口にはその情報は来ていたわけですか。

政府参考人(小島比登志君)

 それは、十月二十四日に私どもの方に報告があったということでございます。

小池晃君

 要するに、十月十五日の段階で隠れていた情報が二十四日に来ていたんだと。何で十月十五日の段階で六十九人、二十七名もの情報がアストラゼネカから厚労省には来なかったのか。アストラゼネカの方がじゃ伝えなかったということなわけですね。

政府参考人(小島比登志君)

 そういうことでございまして、私どもとしては、アストラゼネカに対しましてきちっと重篤な副作用情報等の迅速な提出を促す文書を出したということでございます。

小池晃君

 迅速といったって、もう七月に発売してから次々と死亡症例の報告がありながら、それを手を打たずに十月十五日になってようやく緊急安全性情報を出したということですから、一体どこが迅速なのかという経過だと思うんです。

 十月二十五日に厚労省はアストラゼネカと面談をして、二十六日には百二十五名の間質性肺炎、三十九名の死亡というふうに発表いたしました。この十月二十六日の発表の段階では、十月十五日以前の発症例というのは九十九例で、死亡例は三十五例だったと、これは間違いないですね。

政府参考人(小島比登志君)

 そのとおりでございます。

小池晃君

 そうだったんです。十月二十六日の発表では、十月十五日以前の発症は九十九例だったと。それなのに今回、昨日お示しになった発表では、十月十五日以前の発症が百三十八例、死亡が五十七例と、また増えているわけですよね。これは一体なぜこんなことになるのか。これはアストラゼネカがまたその数字も隠ぺいしていたということなんですか。

政府参考人(小島比登志君)

 この数字でございますが、一たび緊急安全情報を出しますと、今まで報告のなかった医療機関等から次に報告がございまして、その分をうちの方で集計しました結果、十月十五日以前の死亡例であったということで、今先生にお示ししたような数を整理させていただいた、こういうことでございます。

小池晃君

 要するに、十月十五日以前の発症例の報告がいまだに増えてくるわけですよ。二か月前以前の発症の数字がまだどんどん増えているわけです。

  〔委員長退席、理事武見敬三君着席〕

 ですから私は、この八十一例というのだって本当に実数なんだろうかということは極めて疑わしい。実際の被害者というのはもっと多い可能性が当然あると思うんですが、その可能性はあるわけですね。その点をお答え願いたいと思います。

政府参考人(小島比登志君)

 可能性自身はあると思います。

小池晃君

 さらに、発現日不明という例が五十八例あるんですね、今回の発表で。そのうち十例が亡くなっているわけです。これ、なぜ発現日不明というような数がこんなに多いんですか。そして同時に、なぜ発現日不明というふうにされているのか、その理由を御説明いただきたいと思うんです。

政府参考人(小島比登志君)

 この発現日不明の部分につきましてはまだ現在調査中であるということでございまして、十月十五日以前、以降というところまでまだ分けられないというふうなことでございます。

小池晃君

 以上を踏まえて大臣にお聞きしたいんです。

 これ、八十一例という数字自体も極めて驚くべきことだと。今日の議論で私、初めて分かったのは、発売直後から副作用情報、それも死亡にかかわるような情報が来ていたということであります。八月三十日に薬価収載されて、その後わずか三か月で八十一名もの犠牲者を出す。大臣としては、この重大な被害を一体どう受け止めていらっしゃるのか。そして厚労省としては、このイレッサ錠について今後どのように対応されるおつもりなのか、お答え願いたいと思います。

国務大臣(坂口力君)

 確かに御指摘をいただきましたように、八十一名という死亡者というのは非常に多いですね。この薬品が認可をされましてから一万七千名と、使われる方も非常に急に増えた、これもまた事実でございます。

 その一万七千名の中には非常な効果を発揮をした人も中にはおみえになるといったことでございまして、功罪相半ばしていると。しかし、副作用というよりも、これは死亡者でございますから、これは単なる副作用という意味とは私も違うというふうに思っております。したがいまして、この薬を今後どうしていくかということについて緊急に対策会議を今やっておりまして、そして早急に結論を出したいというふうに思っております。

小池晃君

 ちょっと、その程度の対応でいいんですか。これ極めて厚生行政にとって重大な問題じゃないですか。今後の対応について大臣としてその程度の対応でいいのか、いま一つ私には深刻さというか、この事態の重大性を認識されていないのではないかと。そんなことはないとは思うので、是非、この問題についてどのように対応されるおつもりか、御回答願いたいと思います。

国務大臣(坂口力君)

 ですから、非常に重大だというふうに認識をいたしておりますので、早急にこれの対応を検討するということにしているわけでございます。

小池晃君

 当然、薬食審等の開催あるいは行政措置等についても考えられるかと思うんですが、その点についてどのように検討されているか、参考人でも結構ですけれども、お答え願いたいと思います。

政府参考人(小島比登志君)

 先ほどもお答えいたしましたように、今、アストラゼネカ社に対しまして市販後安全対策の自主点検等を求めておりまして、その報告等が今現在出てきております。それを今、うちの局内で検討しているわけでございまして、当然、薬事審議会の安全性部会等々にも相談をしてまいりたいというふうに考えております。

小池晃君

 それで、先ほど局長のお話の中で、安全性情報を出してからの死亡率は低下しているという認識を示されました。私、この問題ちょっと非常に重大なんではないかと思うんです。

 といいますのは、死亡例の比率低下していると言っていますけれども、それでも発症九十五例中十四例が死亡されているんです。これ極めて死亡率高いですよ。しかも、十月二十六日の段階で発表した数字を見ますと、そのときは十月十五日以降の発症というのは十二例で、そのうち一例死亡だったんです。それが、今度の発表では九十五例中十四例死亡になっているんです。ですから、日を追うにつれて、先ほど局長おっしゃったように、まだ掘り起こされていない例、あるいはいろんな形で情報が来ていない例もあるわけですよ。そういったものを見れば、これは、十月十五日以降は緊急安全性情報を出したからこれは改善をしているというふうに今断定することは私は到底できないと。これ十月十五日以降だってまだまだ予断を許さないというふうに私はこの数字を見て思いますが。

 私は、十月十五日以降、安全性情報を出してから改善しているなどという見方は極めて甘いのではないかというふうに思いますけれども、いかがですか。

政府参考人(小島比登志君)

 いろんな見方があろうかと思いますけれども、私が先ほど申し上げましたのは、数字を端的に申し上げたわけですが、しかしながら、やはり緊急安全性情報を出しますと全国の医療機関あるいは患者の皆さん方に広くその情報が行き渡ります。そういう効果というのはあるんではなかろうかというふうに思っているわけでございます。

小池晃君

 この薬の被害自体も大変なんですが、問題はこの承認過程だと思うんです。この薬が異例に速い審査期間で承認され世に出てきたことであります。このスピード承認のやり方そのものがこれほど深刻な被害を生み出した私は可能性があるのではないかというふうに思うんです。

 イレッサの承認申請があったのは今年の一月二十五日。その後わずか六か月で承認審査で発売された。これ異例な速さだと思うんですが、なぜこのように審査期間が短かったのか。扱いの問題も含めて説明していただきたい。

政府参考人(小島比登志君)

 医薬品の承認審査には、当該医薬品の対象疾患が重篤であり、かつ既存の医薬品と比較して有効性又は安全性が医療上明らかに優れていると認められるときは、申出によりまして優先審査品目として他の医薬品の審査に優先して審査ができることになっております。

 御指摘のイレッサにつきましては、対象が肺がんという重篤な疾患であり、また既存の肺がん治療薬を用いて効果がなかった患者を対象にした臨床試験において有効性が認められたことから、優先審査品目に指定し、他の医薬品に優先して審査を行ったと。その結果、五か月余で承認がされたということでございます。

  〔理事武見敬三君退席、理事中島眞人君着席〕

小池晃君

 こんなに短期間で承認審査を行った。そして、発売後わずかの期間で大変な規模の犠牲者を出した。私は承認審査の在り方、内容に問題があったのではないかと思いますが、その点いかがですか。

政府参考人(小島比登志君)

 優先審査の期間がどのくらいかということでございますが、これは当然のことながら一般の標準的な審査期間であります一年よりは短いわけでして、ほかにいろんな優先審査の例があるわけでございますが、物によって大分優先審査期間というものの期間が違います。全体で見ますと大体おおむね六か月程度ということでございますので、それよりは少し短いかということでございますが、実際にはこの五か月よりも更に短い承認期間というものもございます。ですから、一番短いということまでは行かないんじゃなかろうかというふうに思っております。

小池晃君

 そんなことを聞いているんじゃなくて、短いことは分かっているんですよ。一番短いかどうかということを議論しているんじゃないんです。この短い期間の中の承認審査の中身に問題があったんじゃないですかと、そういう認識はお持ちでないんですかということをお聞きしているんです。

政府参考人(小島比登志君)

 私どもといたしましては、審査は専門家の審査センターによりまして適正に行われたというふうに考えております。

小池晃君

 とんでもないですね。これ、私、専門家じゃ、もちろん薬学の専門家でもありませんけれども、この審査報告書、ここにあります。これざっと目を通しても本当にこれどうなっているんだろうというような部分一杯あるんですよ。

 ちょっと幾つか紹介したいんですが、これ、医薬品医療機器審査センターの審査報告書と、それからアストラゼネカが出したレポートであります。

 例えば、ラットの実験で、体重一キログラム当たり五ミリグラム以上の投与で幹細胞の壊死が起こるとなっています。ということは、体重五十キロの人間に当てはめれば二百五十ミリグラムで幹細胞の壊死が起こるということなんです。イレッサ一錠二百五十ミリグラムなんです。ということは、イレッサ一錠を毎日飲み続けたら幹細胞が壊死するということなんですよ。それが動物実験で確認されているわけですね。同時に、抗腫瘍効果があるのは体重一キログラム当たり五十ミリグラムだというんです、最低ラインが。だから、副作用発現の十倍の量を飲まないと抗腫瘍効果がないというんですよ。こんな異常な動物実験結果が出ている。

 さらに、アストラゼネカが出したレポートを見ますと、これはアメリカのデータです。このアメリカのデータを見ると、二百十六例の使用に対して、副作用を含む有害事象による死亡が十五例で約七%です。その一方で、腫瘍縮小効果が見られたものは二百十六例中十八例、約八%です。だから、どういうことかというと、副作用で亡くなった方と、それから腫瘍が少しでも小さくなったという人は大体同じぐらいの数しかいないんですよ。こんな薬をなぜ使ったのかと。それなのにわずか六か月で承認した。しかも、結果としてこれだけ被害が出ていると。

 先ほど、専門家がやったから間違いないというふうにおっしゃいますけれども、この承認審査の過程に問題点がなかったと局長、あなた、問題点なかったというふうにおっしゃるんですか。

政府参考人(小島比登志君)

 今、先生御指摘の問題点についてお答えいたしますが、まずイレッサの動物実験におきましては、御指摘のように承認された人への用法、用量の範囲で動物に毒性が現れていたということは事実でございます。

 しかしながら、一般に抗がん剤などの重篤な疾患に用いる医薬品につきましては、臨床におけるがんの縮小等の有効性と副作用等を総合的に評価して承認の可否を決定していることから、結果として動物実験において毒性が発生するよりも多くその量を用法、用量として定めることもございます。現に、制がん剤その他で動物実験における無毒性量というよりは多い臨床用量の抗がん剤の量というものを定めて使う場合もございまして、その使用に当たりましては、適正な使用が図られるよう添付文書において発現する副作用や使用方法等についての十分な注意喚起を行わせているところでございます。

小池晃君

 しかし、副作用発現の十倍の量を飲まなければ腫瘍縮小効果がないというデータですよ。これを見て、これを使っていいのかなというのは、普通素人はそう思いますよ。専門家は違うのかもしれないけれども、素人は明らかにこれはおかしいと思いますよ、だれが聞いたって。

 更に私おかしいと思うところは、この審査報告書のデータで大変違和感を覚えるんですが、日本人と日本人以外を比較したデータが出ているんですね。これ、同じ薬を日本人と日本人以外に使っているんですよ。日本人百二人、それから日本人以外百八人に使っている。第二層の試験であります。これ見ると、死亡率は日本人以外では二九・九%。日本人では二・九%なんですね。抗腫瘍効果はどうかというと、日本人以外は一〇・四%。これに対して日本人は二七・五%。

 だから、日本人は非常に死亡率、副作用が物すごく少ないと。一方で、効果は日本人以外の外国人に比べると二倍以上。これ、レポートでは何て書いてあるかというと、日本と海外の治療形態の違いだと。日本は入院が多いのでより多く副作用情報が入るからだと書いてあって、レポートの中にもこれは説得力がないと書いてあるんですよ。

 これ、読んだだけで、何でこんなことになるんだ、おかしいじゃないかというふうに思いませんか。私はどう見てもこのレポートの中身というのはもう大変疑問がある。こういう日本人と日本人でない人でこれほどの副作用の出方もあるいは効果も違うと、この格差について何の疑問も持たなかったんですか。そこのところ、説明していただきたいと思います。

政府参考人(小島比登志君)

 その点につきましては、専門家の間で議論が行われて、やはりある程度の用量で、やっぱりこれは肺がんという末期がんに近いがんに対処する抗がん剤でございますので、やっぱり有効性というものと安全性というものを見定めて、それでいろいろ議論した結果、承認をしたということであろうかと思います。

小池晃君

 私は今のお話を聞くと、もうまるで患者さんを動物実験に使ったとしか思えないですよ。

 動物実験でこれだけのデータが出ているわけですよ。素人が見たってこれはちょっと引っ掛かる点は一杯あるんですよ。それでもこれを使うんだということで、一万人ですよ、一万七千人ですよ。動物実験をやって、動物実験を、正に実際の人体実験やっているようなものですよ、こういうやり方は。

 しかも、あなたは末期、末期というふうにおっしゃいますけれども、このイレッサの適用はどうなっているかというと、確かに手術不能の肺がんもありますが、再発非小細胞肺がんというのもあるんですよ。これ、再発がんという場合に、必ずしも末期というばかりじゃないですよ。再発して、ごくごく初期の段階だって、この適用であれば使えるんですよ。

 実際に、今日、午前中私どもは記者会見をやりました。そこに来られた方は三十一歳の女性です、亡くなられた方は。原発性肝がんの転移の肺腫瘍です。普通にもう歩いて通っていたそうですよ、病院に。病院に行って薬をもらったらば、もう二週間ですよ。急速に間質性肺炎が増悪をして入院をした、すぐに酸素吸入した、翌日からは酸素マスクになった。もうすぐにその次には挿管になったと、もうそういう状態ですよ。それで、もう苦しい苦しいという言葉を残して亡くなっていったということであります。

 だから、そんなに末期の方に使われるなんという適用になっていないんです。実際現場でも、使われ方に問題があることは私も認めます。しかし、そういう使われ方でない使われ方も実際しているんですね。そういう中で、末期のがんだから多少の危険はやむを得ないなんという議論は、私は通用しないし、実際に抗腫瘍効果と比べても副作用の頻度の方が高いというような薬をなぜ使ったのかと。何よりもの証拠、何よりも重要なことは、これアメリカでは承認していないわけですよね。これ、実際にアメリカではいまだに承認されていません。世界で今使われているのは日本だけであります。

 しかも、しかも日本で保険適用する直前の八月十九日、日本で薬価収載したのは八月三十日です。この八月三十日の直前の八月十九日に、アストラゼネカ社がアメリカの FDA に対して、イレッサによる生存率には特に有意な効果は認められない、要するに生存率を良くするという証拠はないんだと、そういう報告を出しているわけです。このことは当然、局長は御存じですね。

政府参考人(小島比登志君)

 FDA の状況でございますが、九月十二日にそこの諮問委員会がこのイレッサを承認をするように勧告したと、まだ承認自身は前でございますが、勧告したというふうに聞いております。

 御指摘の寿命効果がないという、指摘された試験でございますが、これにつきましては、海外で行われた抗がん剤治療が、未治療者の患者を対象とした多剤併用試験というふうに思われます。すなわち海外試験におきましては、当該試験は抗がん剤を使ったことのない患者を対象に、他の抗がん剤に本剤を上乗せした場合の効果を評価したということでございますが、我が国の場合には、既存の抗がん剤で効果がなかった患者を対象に、イレッサのみを投与して、イレッサの有効性、安全性を評価したということでございます。

小池晃君

 同一の条件で比較しているわけではないわけですよね。そういうデータはお持ちなんですか。

  〔理事中島眞人君退席、委員長着席〕

政府参考人(小島比登志君)

 同一の条件ということではございませんが、抗がん剤の治験で、使い方は違っているということでございます。

小池晃君

 FDA が今どうなっているかというと、諮問委員会が検討して勧告を待つことになっているということでありますけれども、様々な問題点が指摘をされて、実際にはまだ承認されていないわけです。

 ちょっと局長、お答えになっていないんですけれども、八月十九日にこのイレッサによる生存率には特に有意な効果は認められないという報告をアストラゼネカが FDA に出したことは御存じなんですかと、そこはどうなんですか。

政府参考人(小島比登志君)

 私自身は承知をしていませんが、うちの担当部署の方には、八月十九日の報告というのは承知しているということでございます。

小池晃君

 じゃ、重大じゃないですか。だって、大変危険が強いということだけではないわけですよ。生存率にも有意な変化がないというレポートをアストラゼネカが出していたということを知りながら、八月十九日にそういうのが出ている中で、八月三十日に保険適用したわけですよ。これ重大じゃないですか。何でその情報を現場では伝えて待ったを掛けなかったんですか。これ、重大な責任あると思いますが、大臣いかがですか。

国務大臣(坂口力君)

 細かな経過の方は私ちょっとよく存じませんけれども、いずれにいたしましても、非常に重大な副作用でありますから、先ほど申しましたように、早急に検討するということを申し述べたところでございます。

小池晃君

 いや、大臣、そういう一般論ではなくて、今局長認められたように、八月十九日にはアストラゼネカが生存率には有意な差がないと、要するに使っても使わなくても生存率に変わりないというレポートを出していたことを厚労省の担当者レベルでは知っていたと。知っていながら、それが来ればちょっと待ったと、これはいろんな危険がありそうな薬だということは前から分かっていたわけですから、ちょっと保険適用ストップして、もう少しデータを集めたり検討すると、ブレーキを掛けると、これ当然じゃないですか。ところが、そのわずか十日後に保険適用してどんどん使えるようにした。このことに問題はないのか、その点についての大臣の御認識を伺いたい。大臣にお聞きします。大臣にお聞きします。

国務大臣(坂口力君)

 そのこともよく検討いたします。どういう状況であったかということを、そしてそれがどういうデータ、あるいはどういう論文であったかということもよく見まして、そして早急に検討いたします。

小池晃君

 この八月十九日の問題だけではなく、大臣、今まで議論をしてきた、承認審査の過程を含めて、全体として私は、これはもう事実が証明していると思うんですよ。だって、八十一人の方が命を落としたわけですよ、ごくごく短期間に。だとすれば、やはり大臣、今回のイレッサの承認審査の過程には、これは問題はありである、私は当然そう思うんですが、大臣の御認識をお伺いしたいと思います。

国務大臣(坂口力君)

 したがいまして、先ほどから申し上げておりますように、早急によく検討をいたしまして結論を出します。

小池晃君

 これからのことじゃなくて、大臣の御認識をお伺いしているんです。今後検討するということは問題があったということだと思うんですが、大臣としてはこの承認審査の過程に当然問題があったという御認識をお持ちですねと、このことに素直に答えていただきたいと思います。

国務大臣(坂口力君)

 いろいろの検討すべきことがありますからそう申し上げている、そういうふうな認識を持っているからそう申し上げているわけです。

小池晃君

 先ほど、薬食審でも検討するというふうにおっしゃいました。これは、もちろん今回のイレッサの承認過程、承認審査の過程についても薬食審で当然検討を加えるということと理解してよろしいですね。

政府参考人(小島比登志君)

 当面は、薬食審におきます安全性部会というところで議論をしたいというふうに考えておりますので、今後の対応、対策ということになろうかと思います。

小池晃君

 いや、当然、この承認審査の過程について、その検討の中で検討課題の一つということになっていくんじゃないですか。そのことをお伺いしているんですよ。

政府参考人(小島比登志君)

 私どもといたしましては、審査は適正に行われて承認をしたというふうに考えているところでございますので、あくまでこの死亡例八十一人ということにつきまして、どうやってどのように対処していくかということについて、薬食審の意見を聞きながら早急に対応を決めたいということでございます。

小池晃君

 八十一人の方が亡くなっている。ごくごく短期間で亡くなった薬の承認審査の過程が問題なかったという、そんな認識で検討したって何の結論も出ませんよ。

 ちょっと大臣にお聞きしたい。私は、どう考えたってこれは承認審査の過程に問題があったことは間違いない、この承認審査の過程についてもこれは検討を加えるということは当然のことだと思います。大臣、いかがですか。

国務大臣(坂口力君)

 検討するというのは、それをあらゆる角度から検討するわけでありますから、すべてのものを含めて検討をするということを申し上げているわけであります。

小池晃君

 だとすると、今回の医薬品機構法の目的というのは正に迅速な新薬審査体制を確立するということなわけです。迅速な審査の言わばモデル的な薬だったイレッサがこういう前代未聞の重大な被害を出していると。やはり私は、そもそもこんな重要な情報を、昨日の夜、質問通告でこの問題について聞くからと言うまでは一切発表しなかった。このこと自体、本当に大問題だと思うんですよ。私が聞かなければこのことが世に出ないままこの審議が進んでいたら、どうなるか。これ医薬品機構法の法案審議にとっても極めて重要な情報だと思うんです。

 十月二十八日の安全対策課長のアストラゼネカ社長あての文書は、迅速な情報の提供を求めていますよね。それなのに、十月二十六日以降、昨日まで一切報告しようとしなかったわけです。これはなぜなんですか。迅速に情報の提供を求めているにもかかわらず、一か月以上も厚生省はこの数字を出さなかったのは一体なぜか、そのことをお答えいただきたいと思います。

政府参考人(小島比登志君)

 御存じのように、十月十五日に一度、緊急安全性情報を出すということで数字を発表しました。しかし、私たちの方の方針といたしましては、随時報告は上がってくるわけでございますが、やはりある程度まとまった段階でその対策とともに数字を発表するというのが通例でございますので、その時期を待っていたということで、決して隠していたわけではございません。

小池晃君

 そういうのを隠していたというんですよ。

 これが三十九例だった。それが徐々に徐々に増えていった。じっとその情報を持っていた。そして、こちらから聞いたらば八十一例だというふうに発表する。こういう姿勢こそが、このまま医薬品機構を作ったら一体どうなるかということを象徴的に示しているじゃないですか。都合の悪い情報はひた隠しにする、追及されてようやく出してくる、こういう体質こそ問われているんじゃないですか。

 大臣、お伺いしたいんですけれども、この情報を、私本当に八十一名亡くなったというのを見て愕然といたしましたけれども、これ一か月以上にわたって厚生労働省は、どんどんどんどん日に日に死者の数が伸びていく、その数字を一切外に出さない、そして追及をされて初めて答える、こういう体質こそが、大臣、問われているんじゃないでしょうか。こういうやり方に問題があると私は思うんですが、大臣の御認識をお伺いしたいと思います。

国務大臣(坂口力君)

 いずれにいたしましても、薬に関しますものは副作用を含めて情報開示が大事でございます。したがいまして、毎日毎日出すというわけにはいかないというふうに思いますけれども、それはそれが増えてくるということになれば、やはりはっきりとこれは公開をしていくべきだというふうに思いますし、これからのこともございますが、様々な副作用が出ましたときにはそれをできる限り早く情報開示をする。それは内部の人々だけではなくて、外からごらんをいただいたときにすべての人にそれが分かるようにしていくという情報開示が大事かというふうに思っておりまして、そのようにしたいというふうに思っているところでございます。

小池晃君

 製薬企業にはいち早く情報を開示したわけですよ。一方で、この重大な副作用被害情報、もう次々に亡くなっているような情報はひた隠しにする、隠ぺいすると。こういう姿勢でいいのか。こういう姿勢でこの医薬品機構法案を、やはりこの問題こそ問われているんだと、ここのところを徹底的に解明することこそ私は求められているんだと思うんです。

 その点で、今回の一連の事態、何でこんなことになったのか、早期に承認したというその過程に問題が、どういう問題点があったのか、拙速な審査にどういう問題点があったのかと。この経過の一連の経過を先ほど検討するというふうに大臣おっしゃったけれども、このことをきっちり解明することなしに私は医薬品機構法を進めていくこと、成立させることなど到底認められないと思うんですが、大臣、いかがですか、このことに関して、大臣。

国務大臣(坂口力君)

 このイレッサはイレッサの問題でありまして、これは徹底的にやります。

 こういうことが起こりますから、すべての副作用に対する体制でありますとか安全性に対する体制を強化をしなければならないわけであります。だから、その安全性の強化、あるいはまた副作用に対するそれの把握の強化、そうしたことを行うということと今回のイレッサの問題、個別な問題とはこれは別だというふうに思っております。

小池晃君

 別問題じゃないですよ。正に一体の問題ですよ。現実の薬の承認の過程を総括し、その中からどういう教訓を導き出すかということを抜きにして、それを抜きにしてこれからの新しい新薬審査の在り方なんて考えられないですよ。今やっていることの問題点は一体どこなのか、そこを真摯に検討する中から新しい制度について検討ができるんです。

 しかも、隠ぺい体質というのはあるわけですよ。こういうことを見れば、一方で被害者の方が見れば、またこういう事件が起こっている、そして厚生労働省はこの情報をひた隠しにしてきている、こういうやり方の厚生労働省に医薬品機構、安全審査、産業振興、全部任せたら本当に被害者が置き去りにされるのではないかというふうに思うのは当然じゃないですか。審議しながら、まるで同時にリアルタイムにこういう事件が起こっている、そういう思いを持つのは当然ではないかと思いますが、大臣、これ別問題だとは私は思いません。正にこの問題の解明の中でこそ新しい新薬審査の在り方、安全対策の在り方が検討されていくべきものだと。私は、別物ではなくて正にこれは一体として考えていく、今回の法案を考えていく上で極めて痛切な教訓として議論をしていくべき、そういうテーマだというふうに考えますが、大臣、いかがですか。

政府参考人(小島比登志君)

 今ひた隠しにしているという御指摘がありましたので一言申し上げたいと思いますが、私がこの九月にもう何回も緊急安全性情報を出しております。

 私どもといたしましては、薬というのはやはり有用性といいますか有効性と安全性の兼ね合いで必ず副作用の発現というのはある程度あるわけでございますから、それを見越して、もし何かあったらできる限りひた隠しにはしないで緊急安全性情報を出そうという姿勢で今医薬行政を進めているわけです。

 それで、これも十月十五日に出しました。もう一か月以上たっているんじゃないかという御指摘ですが、私どもとしては、アストラゼネカ社に対しまして市販後安全体制の自主点検等を求めておりまして、それでどうするかというのをまた詰めなきゃいけません。ですから、日々副作用は報告されておりますが、やはりただ発表するというよりはどういうふうな考え方でどうしますというのを一緒に発表した方がむしろ世の中の人も納得いただけるんじゃないかというのが私どもの見解です。

 決して、これをひた隠しにしてずっと抱いておくなんという気は全然ございません。要するに、かなりのもう三回か四回ぐらいの緊急安全性情報を九月、十月中に出しています。そのたびに新聞等で報道されまして、それがまた末端の医療機関でありますとか患者さんに伝わってより良く回っていくんじゃないかという期待も込めてそういう方針でいるということは御承知おき願いたいというふうに思います。(「分かった」と呼ぶ者あり)

小池晃君

 何が分かったんですか。今の説明は全然分からないですよ。

 十月十五日に緊急安全性情報を出しました、それだけの話でしょう。それで十月二十六日に数字を出しました。その後一か月以上全く数字を報告しなかったわけですよ。そういう情報を全部得ていながらね。そういう姿勢こそが私は問われているんだというふうに言いたいんです。

 大臣にお伺いしたいんですけれども、局長は全く反省がないんです。もう一かけらの反省もないですよ。自分は、自分たちがやったことは間違っていない、審査も問題なかった、その後の対処、対策もきちっとやりましたと。八十一人もの方が亡くなった薬を承認して世に出しておいて、厚生労働省がこれ大丈夫ですと判こを押して世に出しておいて、そして八十一人の方が亡くなった。安全審査の過程もその後の対策も問題ありませんでしたと、反省のない態度でいいのか。私は当然これは反省すべきだと、そしてやはりこの中から教訓を学ぶ、最低限はそのくらい、私、大臣言うべきだと思いますよ。大臣、いかがですか。

国務大臣(坂口力君)

 物事は結果でありますから、結果を見て悪ければ、その過程の中でどれほど一生懸命になったといたしましても、それは結果が悪ければ、それはその点を直さなければいけないわけでありますから。結果として八十一名の方が亡くなられた、そして一方において大変効果があった人が何人あったといったことを明らかにこれは科学的にしていくべきだというふうに思います。

 それは今御指摘になりましたように、非常に重い患者さんばかりではなくて、そうでない患者さんもあったかもしれませんし、現場におきましては様々な患者さんにこれは使用されたんだろうというふうに思っております。総勢、何としましてもこの短期間の間に一万七千人もの人がこれをお使いになったということは、やはり肺がんというものに対してもう的確な薬がない、そこに待ちわびていた方もあったんだろうというふうに思いますけれども、一方においてこれだけの副作用が生じた、そこはしかし我々もこれは徹底的に究明をしなければならないというふうに思います。

 したがって、この結果を見てどう判断をし、どのように今後するかということを緊急にやりたい、こういうふうに申し上げているわけであります。

小池晃君

 先ほど数字求めたものはまだ出ないんですか、最初の段階でというのは。出ますか。

政府参考人(小島比登志君)

 死亡例の第一報は七月十八日。それから二例目が八月十六日と。

死亡例としては七月十八日が第一報ということでございます。
小池晃君

 輸入承認が七月五日ですから、二週間後に死亡例が報告されているということですよね。輸入承認して二週間後に死亡症例が報告をされていながら、その一月後には販売を開始をしたわけですよね。そして、八月三十日には保険適用をしたわけですよね。

 大臣、改めてお伺いしますけれども、この初期の段階の対応でもこれは十分にやはりブレーキを掛けるべき私は状態だったんではないかと思いますが、大臣、いかがですか。

国務大臣(坂口力君)

 現場の問題が一体どうであったか、そして届けられたこの数字が一体どれだけの使用に対しまして何例の副作用が生じ、そしてその中の死亡例が何例であったか、その辺のところを押さえなければいけないというふうに思いますし、そうしたことをしっかりと見て判断をしたいというふうに思います。

小池晃君

 輸入承認から二週間ですから、そんなに大量に使っているはずないんですよ。その時点ではまだ保険適用もされていないわけですから、自費で使っている段階ですよね。だから、まだ正式に販売されていない段階ですよ。本当に限られた利用の中で既に死亡例が出ているわけですから、私は非常に重大だと思います。この問題はやっぱり徹底的に解明することが必要だというふうに思います。

 その上で、医薬品機構法の問題で先ほどちょっと大臣が同僚議員の質問の中でお答えになったことで、私非常に重大だと思うんですが、被害者の方々に会うのは国会が終わってからだというふうにおっしゃった。私は全く逆だと思うんですね、それは。だって製薬企業には真っ先に説明したわけでしょう、八月上旬の段階で。そのことに対して、この法案の中身そのものに対する怒りだけではなくて、被害者よりも先に製薬企業に説明したということがもう本当に怒りを呼んでいるわけじゃないですか。だとすれば、その掛け違いをまず元に戻すということこそ必要なんじゃないですか。

 まずやるべきことは、被害者の方たちに会って、この間のやり方についてしっかりとやはりわびるということこそ私は必要だと思いますが、これは法案が何か通ってから、国会が終わってからお会いする、これは全く私、あべこべだと。まずやるべきことは、被害者の方々に会うことだ。そして、先ほどあった中身を説明する、整理するということがあって、それから法案の審議なりというふうになっていくのが筋だと思います。私は、そこが全く逆転していると思います。

 大臣、まず被害者に会って、製薬企業に真っ先に説明をしたということについて釈明をするべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

国務大臣(坂口力君)

 私がお会いをしてお話をする以上、ただ患者の皆さん方、被害者の皆さん方から要望書をちょうだいをして、いただきましたというだけではいけない、それは私の考え方をそのときに述べなければならないということを先ほど申し上げたわけであります。それを整理をして私はお会いをさせていただきますということを言っているわけでございます。しかし、残念ながら、ここまでこの審議が進んでまいりまして、そしてもうこの国会もあと残り少なになりましたこの中でそれをすることは不可能な状況にあるということを申し上げているわけでございまして、先ほど山本議員にもお答えを申し上げましたとおり、少なくとも今年中にはちゃんと整理をし、そして私の考え方を持ってお会いをさせていただきますということを申し上げたわけでございます。

 だから、問題点というのは、ここで指摘されている問題点は明らかになってきているわけでありますから、それに対してどう対応をするかということを私の中で整理をして、そして将来にもこういうふうでいくぞということを言って、そして皆さん方にお会いをさせていただかなければお会いをさせていただくだけの値打ちがないと思っております。

小池晃君

 いや、逆なんですよ。問題点が出ているんだったらば、それをそのままにして国会で通してから後で会うというのは全くおかしいですよ。問題点が出ているのであれば、その問題についてきちっと解明をする、そしてまず何よりも被害者の方々にお会いをする、御意見を聞く。

 私はこの審議を通じて大変痛感するのは、本当にぼろぼろぼろぼろ問題点出てくるんですよ。いろんなところに法案の欠陥もあるし、重大な問題点がある。私これなぜだろうかと。私は、これは被害者の声を聞いていないからだと思うんです。やっぱり被害者の声を聞けば、被害者からいろんな問題点の指摘を受けるわけです、我々も。そして、それを国会でこうやって皆さんにぶつけているわけです。そのことで一つ一つ私は、御答弁も変わってきている、より精緻になっている部分もあると思いますよ、確かに。それは正に被害者の方々でしか分からない角度から指摘があるからこそ、私はいろんな問題点が正に今度の参議院の審議を通じて、私は衆議院の審議よりも参議院の審議の中でいろんな問題点が浮かび上がってきたと思うんです。これは正に被害者の方々の視点があるからこそなんですよ。今回のこの法案の審議の最大の問題はそういう声を聞いていないことです。そして、製薬企業の言うことだけ聞いて法案を作ったりするから、こんなに、だれが見たって穴だらけ、矛盾だらけの法案になっちゃうんですよ。だから、私はまずそこをやるべきだと。

 そして、やはり何よりもこの法律をこのような形で、今日は採決をしないということが確認されておりますが、このままの形で通すなんということがあれば、私はこの間、サリドマイド、スモン、エイズ、ヤコブ、本当に数々の痛切な教訓があるわけですよ。その中で、坂口大臣もヤコブの問題では誠実にお話合いもされたと思うんです。そういう一つ一つ築き上げてきた、そして辛うじて私は一定回復してきたかもしれない、そういうものを全部壊すことになるんじゃないですか。今までの薬害訴訟、薬害の闘いでかち取られたものをすべて台なしにしてしまうんじゃないですか。だから私は、厚生労働省にとっても、今回の法案をこれをごり押しするようなことは、私は厚生労働省にとっても決していいことではない、重大な将来に禍根を残すというふうに思うんですよ。

 是非、大臣、この点についてよく御検討いただいて、これは本当に政治的な決断をするべきだと。これだけ問題点明らかになってきている、与党野党問わずみんな心の中で思っている、大臣自身がこれは内心でいえば問題点があると言わざるを得ないような法律ですよ。まずそこを解決をする、そして被害者の方々と真摯に話し合う、そういうところからもう一度スタートしようじゃありませんか。大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(坂口力君)

 そこは小池議員と私は意見を異にいたします。

 現在まで様々な問題があったことは私も率直に認めなきゃならないというふうに思っております。エイズの問題あり、ヤコブの問題あり、またその前にもいろいろなことがございました。そうした問題がなぜ起こってきたかということを私も謙虚にこの二年間考えております。それがなぜ起こってきたかというのは、皆がいい加減に仕事をしてきたというふうに一言では言い切れない問題がある。それはやはり人の配置が余りにも少な過ぎたということに私は一つは尽きると思っております。制度の問題、それはあるかもしれません。しかし、すべての問題を制度の問題にそれをしてしまうと、そうすると大事なところを見過ごしているということが私は起こり得るというふうに思っております。

 ですから、必要な研究、あるいは必要な安全性なら安全性の確認、あるいは審査、それなりの陣容を整えてやらないことには、これはこの禍根を繰り返すことに私はなるのではないかというふうに思っている次第であります。

 そうしたところを乗り越えるために、これは厚生労働省なら厚生労働省の中でそれだけの人材を集めることができればいいですけれども、しかし諸般の事情でこれは全体の枠というものがあってそれが不可能だと。不可能であればそれを可能にする方法を考えなければならない。そうした意味でこの制度に私は賛同をしたというのが現実でございます。

 したがいまして、副作用なりあるいはそういうことを起こしちゃならない、繰り返しちゃならないというところは小池議員と私と同じでございますし、そこを乗り越えていかなきゃならない、乗り越えるためにどうしたらいいかということの判断が少し違うというところを申し上げているわけであります。

小池晃君

 私自身も人を増やすということに一切異論を唱えるつもりはありませんし、人手が少ないことが薬害被害を生んできた一番大きな原因の一つであるということは大臣と全く同意見であります。人を増やすことには何の異論もないです。やるべきだと思います。

 ただ、今回の仕組みが、人を増やすだけではなくて、もうあらゆる余計なものが一緒にくっ付いてきているわけですよ。ここのところに異論を唱えているわけですから、そこのところをちょっと引き続きまた議論したいと思います。

 ただ一点だけ、ちょっとこれは参考人で結構なんですけれども、安全性情報の独法と国との分担の仕方の問題が先ほども議論になりました。これは、独法が副作用情報を集めると、その中から独法はそれをしっかり監視をして、重要と思われる情報をピックアップするというふうにおっしゃった。国は国でまたリアルタイムで同時に見ているんだというふうに言われた。だとすると、国も独法も同じ情報を同時に一緒にチェックしているわけですね。じっと国も独法も同じようにこの副作用情報、あるいは海外からの文献情報なども含めて見ていると。これ、結局、国も独法もじゃ同じことをやるということになるんですか。

 これはどこが違うのか、もう一度その点についてちょっと説明していただきたい。

政府参考人(小島比登志君)

 医療機関あるいは製薬メーカーからの副作用情報等は独法が受理をするということになりまして、その受理結果はリアルタイムで厚生労働省につながります。それを基にして、緊急に対応すべき事項を見付け出した上で私ども緊急安全措置を行うということでございまして、独法の要するに業務は受理ということですが、その受理した情報を独法の方では、一件一件のデータではその疫学的性格が読み取りにくいような情報につきまして、現在の私どもの体制では十分実施し得なかった時間と人手を掛けた解析や疫学的な調査を独法の方で行うと。その結果につきましては私どもにすぐに報告がございまして、それを見て私どもはまた緊急安全措置でありますとか各種安全対策の立案でありますとかそういう業務を行うと、こういう整理になっているわけでございます。

  〔委員長退席、理事中島眞人君着席〕

小池晃君

 その違いが私には大変何かよく分からないんですね。

 同時に、先ほどお話があったんですけれども、独法が見逃した、国もその重要性に気が付かなかったという場合は、これは見逃した独法の責任だというふうにおっしゃった。しかし、独法の業務方法書というのはこれは主務大臣が認可するわけですよね。ということは、独法が重要な情報を見逃したというのはこれ国の責任、主務大臣である厚生労働大臣の責任ということになるんじゃないですか。この点いかがですか。

政府参考人(小島比登志君)

 要するに、すべての情報は厚生労働省の方に入ってまいりますので、やっぱり見逃したということになりますと厚生労働省なり厚生労働大臣の責任だということになろうかと思います。

小池晃君

 だから、同時に、独法が見逃したという場合についても、これは通則法では業務方法書は主務大臣が認可するわけですから、その点で厚生労働大臣の責任は問われないのかということを確認しているんです。

政府参考人(小島比登志君)

 業務方法書レベルになりますと、業務方法書に基づきまして実施した場合には、御指摘のように業務方法書は厚生労働大臣の認可を受けていることから、これは法人の責任は免責をされるんだと思いますし、一方、新法人が業務方法書に従わなかった場合ということでございますが、その業務は、厚生労働大臣の不作為等につながる場合には厚生労働大臣が責任を負うとともに、新法人に対しても、場合によっては役員の解任でありますとかその他の一定の責任を取ってもらうということになろうかと思います。

小池晃君

 ちょっとこの問題は引き続き議論をさせていただきたいと思います。

 最後に、今回の九法人全体の問題を最後にちょっと議論させていただきたい。

 この九法人、厚生労働関係の九本、この常任の理事長、副理事長、理事の中でいわゆる天下りをした人の比率、割合はどうなんでしょうか。

政府参考人(鈴木直和君)

 今回、提出をしております法案に関係する特殊法人等の常勤役員のうち国家公務員出身者ということになりますと、これは常勤役員総数五十五名のうち四十三人ということで七八%となっております。

小池晃君

 常勤役員中七八%が天下りと、もう本当にひどい状況だと思うんです。

 しかも九法人の歴代の理事長、これを、ちょっと全部これは無理ですので、今日資料で持ってきましたのでこちらでもう御説明をさせていただきたいというふうに思うんですが、例えば労働福祉事業団、昭和三十二年から七代の理事長すべて天下りであります。それから社会福祉・医療事業団、これ昭和二十九年から十四代の理事長すべてが天下りであります。それから日本労働研究機構、次のページですね、これ平成二年から、二代になりますか、二人とも天下り、労働事務次官経験者。会長はこれ名誉職、非常勤ですので参考にならないと思います。心身障害者福祉協会、ここは昭和四十六年から九代すべて天下りであります。次のページ見ていただくと、勤労者退職金共済機構、これ昭和三十八年から六代すべて天下りであります。以前、建設業の退職共済などとか入っていたときは若干違いますけれども、今の形態になってからはほぼすべて天下りであります。もう一ページめくっていただいて、大臣、ちょっと見ておいていただきたいんですけれども、後でお聞きしますので。雇用・能力開発機構、昭和四十四年から六代天下りであります。日本障害者雇用促進協会は昭和五十二年から八代すべて天下りであります。それから医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構は昭和五十四年から七代すべて天下りだと。そして、最後の社会保険診療報酬支払基金、昭和二十三年発足以来、十四代すべて天下りなんです。だから、今回提出されている、これから採決に付されようとしている医薬品機構以外すべての特殊法人が、ほぼすべて発足以来、理事長、会長職は天下りで占められている。もう驚くべき実態ですよね。

 この点、今私が申し上げたこと、間違いないかどうか、政府参考人に確認の答弁をお願いいたします。

政府参考人(鈴木直和君)

 今、御指摘のありました資料の各法人ごとの理事長等の件につきましては、この表のとおり、御指摘のとおりでございます。

小池晃君

 大臣にお伺いしたいんですが、本当に特殊法人改革だというのであれば、正に利用者である国民のニーズに合った行政サービスなどの提供が必要だと。医薬品機構だったら、そういう医薬品の被害者の声を代弁できるような人、障害者雇用促進協会であれば障害者の声が代弁できるような人。特殊法人がこんなふうに、いつまでたってもすべて天下りの受皿になっているということでは、私はそういう国民の要求にこたえた特殊法人改革はできないというふうに思います。ここにこそ私、特殊法人改革と言うんだったら、今回法案を出すんだったら、ここにこそメスを入れる必要がある、天下りの全面禁止が私は必要だというふうに考えますが、大臣、いかがですか。

国務大臣(坂口力君)

 今度は独立行政法人になりまして、独立行政法人というのは、やはりいわゆる自立をしてある程度やっていかなきゃならないところであります。したがいまして、今までいわゆる行政的な面で明るければいいというわけにはいかないんですね、これからは。それをやっていく経営的能力もなければなりません。

 また、国立病院等が、今度なります独立行政法人でしたら、たくさんの病院があって、本当に多くの皆さん方を抱えて、すごくたくさんの職員を抱えていかなきゃならないわけですね。その皆さんとも組合交渉もやらなきゃならないわけですね。そうした今後の進むべき方向について、やはり経営的能力もなければならないし、あるいはまた学問的な知識もなければならない、あるいはまた組合との間の交渉もやはりやらなければならない。そうした、これはかなり違った角度でやらなければこれはやっていけないポジションなんですね。ですから、私はここは変えていかなければならないというふうに思っております。

小池晃君

 本当の特殊法人改革というのであれば、今回のように問題だらけの医薬品機構ではなく、こういう天下りを正す、なくす、そういう仕組みをきちっと作っていく、そういうことこそ私は本当の特殊法人改革だということを申し上げて、私の質問を終わります。

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