特定疾患治療研究事業の見直しに関する質問主意書
および内閣答弁書

 (質問主意書 2002年2月14日 小池晃参院議員提出)
 (答弁書 2002年3月1日 小泉純一郎内閣総理大臣より参議院議長あて送付) 
                        

(質問前文)
 二〇〇一年九月より厚生科学審議会に設置された「難病対策委員会」において特定疾患治療研究事業の見直しの検討が始まった。
 特定疾患治療研究事業は、特定の難病について医療の確立・普及、患者の医療費の自己負担解消を図ることを目的として一九七二年にスタートし、二〇〇〇年度には四十五疾患、約四十七万人が対象となっている。同事業は、様々な経済的困難を抱える難病患者にとってかけがえのない制度となっており、予算を増額して対象疾患を増やし、充実・発展させることこそ求められている。
 ところが、政府は同事業を法律によらない非制度的補助金として、財政構造改革法による補助金一割カットの対象とし、九八年の一部自己負担導入に続き、二〇〇一年度より認定コンピューター化による大幅な予算削減を行った。二〇〇二年度予算案においても前年に続いて予算削減を盛り込んでいる。
 このような中で、事業見直しの検討が始められたことにより、対象患者・家族を始め関係者に大きな不安が生まれている。
 そこで、以下、質問する。

(質問一)
 二〇〇二年度予算案では、特定疾患治療研究事業費が十八億円の減額となっている。新規申請分と継続患者分それぞれ、どれだけの減少を見込んでいるのか。金額及び人数を明らかにされたい。

 (答弁一)
 平成十四年度予算案においては、特定疾患治療研究事業に係る補助金として約百八十三億円を計上している。この金額は、平成十二年度における同事業の実績を基に、平成十三年度から実施している同事業の対象者に係る認定審査の適正化の効果等を勘案して算出したものであり、平成十四年度における新規申請と平成十三年度からの継続申請に区分した金額及び対象者数をお示しすることは困難である。


(質問二)
 九八年の一部自己負担導入後、大幅な受診抑制があったとの調査結果が報告されている(「日本患者・家族団体協議会」二〇〇〇年一二月)。政府として自己負担導入後の受診状況の推移についてどのように把握しているか。

(答弁二) 
 特定疾患治療研究事業の対象者の入院及び通院の延べ日数は、現時点で把握している範囲内では、平成十年度は平成九年度と比べてわずかに減少している。
 なお、同事業の対象者に対して交付される特定疾患医療受給者証の交付件数は、平成十年度末は平成九年度末に比べて増加している。


(質問三)
 九七年三月の特定疾患対策懇談会「特定疾患治療研究事業に関する対象疾患検討部会報告」では、治療研究事業の選定基準として、「希少性については、調査研究事業の基準(患者数五万人未満)を適用して差し支えないものと思われる」としている。
1  「患者数五万人未満」とした根拠は何か。
2  これは、新規に対象疾患を選定する場合の基準か。
3  既に治療研究事業の対象となっている疾患について、対象患者数が五万人を超えたことをもって同事業の対象から除外すべきでないと考えるがどうか。

(質問四)
 特定疾患治療研究事業は三十年にわたる歴史を持ち、患者・家族の負担を軽減し、難病の治療・研究を進める上で大きな役割を果たしてきた。政府として、この事業をどう評価し、充実させようと考えているか。

(答弁 三及び四について)
  特定疾患調査研究事業の対象となる疾患を選定する際の要件となる希少性については、平成九年三月、学識経験者で構成される「特定疾患対策懇談会」から、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)に規定する希少疾病用医薬品及び希少疾病用医療用具の指定要件がその用途に係る対象者数が五万人未満であることとされていること等にかんがみ、同事業においても患者数がおおむね五万人未満であることを要件とすることが適当であるとの報告を受けた。同報告を踏まえ、厚生労働省において検討を行った結果、同事業における希少性の要件については、患者数をおおむね五万人未満とすることが妥当であると判断したものである。
 しかしながら、同報告が行われた後現在までの間、特定疾患対策研究事業及び特定疾患治療研究事業の対象疾患であつて患者数が五万人以上であると認められたものも、引き続きこれらの事業の対象としているところである。
 特定疾患治療研究事業については、発足以来約三十年が経過し、その間の医療技術の進歩に伴い、治療方法が確立した疾患も生ずる等、同事業を取り巻く環境が大きく変化していることから、厚生科学審議会疾病対策部会に難病対策委員会を設置し、同事業の対象疾患の選定の基準を含め、今日の医療水準を踏まえた同事業の在り方等を検討しているところである。
 同事業については、総合的な難病対策の中核に位置付けてきたところであり、難病対策委員会の検討結果を踏まえ、今後とも同事業の更なる充実に努めてまいりたい。


(質問五)
、難病患者等居宅生活支援事業は、難病患者に対しヘルパーの派遣や生活用具支給等を行う事業であり、「障害者プラン」(九五年策定)に位置付けられているにもかかわらず、二〇〇二年度予算案において前年度二十二億円から九億円に予算が大幅削減されているのはなぜか。同事業の利用を促進するための改善策をどのように検討しているか。

(答弁五)
 難病患者等居宅生活支援事業に係る補助金については、平成十三年度予算において、平成七年度に策定した障害者プランの整備目標に基づき、約二十二億円を計上したが、平成十四年度予算案においては、障害者プランの整備目標、各都道府県等からの申請状況等を総合的に勘案し、約九億円を計上しているところである。
 同事業の利用を促進するための方策を含めた今後の在り方については、難病対策委員会において検討を行っているところである。

 以上
         >>>質問主意書(2002年2月14日提出)
         >>>内閣答弁書(2002年3月1日送付)