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日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

156-参議院通常国会 厚生労働委員会 労働基準法改正案審議

2003年6月26日(木)


裁量労働制 事業所では違反だらけ 厚労相“サービス残業拡大なら指導”

郵政公社で横行 サービス残業根絶を


小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 裁量労働制の問題についてお聞きをしたいと思います。

 今まで企画業務型の裁量労働制の対象となる事業場は本社に限定されていたわけですけれども、しかし、本法案ではこれを本社以外に拡大すると。企画業務型はその企画、立案、調査及び分析という業務すべてを行う労働者対象ですけれども、裁量権があるかどうかということについては、なかなかこれは外からは見にくい、判断がしにくい問題だと思うんです。だからこそ、この原則本社という外形的要件が極めて重要だったというふうに思うんですね。

 この外形的要件というのがなくなれば、これはその最大のやっぱり有効な歯止めがなくなっていってホワイトカラー全体に広がるんじゃないかという懸念を私ぬぐえないと思うんですが、いかがお考えですか。

政府参考人(松崎朗君)

 今回の企画業務型裁量労働制の見直しでございますけれども、これは御指摘のように二点ございまして、一つは要件としてのいわゆる事業場要件、本社、本店等に限定するといった限定されておりましたところを緩めるという点、それからあともう一つ、もう一点は手続でございますけれども、大きく二点ございます。

 その最初の事業場要件でございますけれども、これは、当初この企画業務型の裁量労働制を導入といいますか、制度化したときの状況と若干違ってまいりまして、実態を見た場合に、やはりここで想定をしておりますいわゆる企画業務といったもの、経営戦略でございますとか人事戦略、そういったものを考えるといった業務というのが本社、本店だけでしか行われないというのではなくて、やはり産業活動の実態として、やはりある程度の規模といいますか、権限を委譲されました支店、支社、そういったところでも行われているという実態、こういったものに合わせて行っていこうというものでございますので、制度の基本的な考え方といったものに変更があるというふうには考えてはおりません。

小池晃君

 それは理由をね、そちらの理由を言っただけであって、私の質問に答えていないんです。

 外形的要件を外せばホワイトカラー全体に広がるんじゃないかという懸念はないのかと。

政府参考人(松崎朗君)

 この企画業務型の裁量労働制の要件でございますけれども、今申し上げましたように法律上にいろいろ要件が書いてございますが、さらに、御案内のように、それを説明いたしまして、平成十一年の告示で指針がございます。指針の中にいろいろ、結構大部なものでございますけれども、いろいろ事業場要件でございますとか、それから対象業務の考え方、それからどういうものが当たるか当たらないか、そういったものについてもかなり具体的にお示しをしているわけでございますけれども、こういった考え方にございますように、この業務の考え方、企画業務といいますように、業務の考え方は基本的に変わっておりませんので、対象業務という外形的要件といったものを外すことによって無限定にいわゆるホワイトカラー全般に広がるというものではなくて、あくまでも業務というところに着目をして、業務の性格、性質上大幅な裁量権をゆだねることが必要である業務という客観性を求めているわけでございますので、無限定な拡大というふうにはならないものというふうに考えています。

小池晃君

 これ、大臣も衆議院の委員会でこの裁量制に入る人の基準をどう決めるかに尽きるというふうに言っているわけです。各企業が勝手に決めるのではなくて、ここに入る人はこういう人ですよということがどの企業でも分かるようにしなければならないと、これはもうそのとおりだというふうに思うんですね。

 この指針があるから大丈夫だとおっしゃるんですが、今回これ本社以外にも拡大するわけですから、それであればやはりもっと厳格に、拡大解釈の余地がないようにやはり私は指針の中身も見直すということもやるべきではないかというふうに考えるんですが、局長、いかがお考えですか。

政府参考人(松崎朗君)

 今申し上げましたように、具体的なこの業務の内容でございますとか考え方、内容、どういった業務が対象になるか、またどういった業務がならないかといったことにつきまして、現行制度におきましても御指摘のように指針でもってかなり具体的に決めておるわけでございます。

 今回の改正が成った場合には、大きく要件のところでいいますと事業場要件というところが外れるわけでございます。したがいまして、そういうことによりますと、この現在の指針におきましてもいろいろ、例えば現在の指針、第 1 の趣旨がございまして、第 2 としまして事業場の要件がございます。こういったところは変更せにゃいかぬということになりますし、またいろいろその業務の中身につきましても、本社・本店に限定された書き方になっている部分といったところは修正が必要かというふうに思っておりますけれども、いずれにしましても、今回の改正に併せまして、具体的に基準を示しておりますこの指針、この内容につきましても見直しが必要であるというふうに考えております。

 いずれにしましても、こういったこの趣旨に沿いましてこの指針の内容の見直し、これにつきましては労働条件分科会の御意見を踏まえながら定めていくということになります。

小池晃君

 この指針について、その本社以外の拡大の部分を除けば、ほかのところにまた緩和するようなことはこれはしないと、これは当然そうだというふうに受け止めてよろしいんですね。

政府参考人(松崎朗君)

 最終的には、私ただいま御説明いたしましたように、この指針の内容の見直しでございますけれども、これは労働条件分科会の意見を聞きながら検討ということになるわけでございますけれども、この今回の改正というのが基本的にこの業務の内容でございますとか考え方、そういったものを変更するわけではございませんで、御指摘のように、要件としましては事業場要件を外すということでございますので、その部分に限った、緩和についてはその部分に限った変更ということになろうかと思っております。

小池晃君

 それから、四つの要件のうち、本社の特定削除しましたが、それ以外の三つの要件について、これは守られるのかと。

 例えば、「業務の性質上」「その遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、」と。「大幅に」の解釈があるわけですが、こういったものが指針において変更されたりするとか、この本社以外の部分の指針の拡大みたいなことはまさか考えておられないかと、その点について確認をさせていただきたい。

政府参考人(松崎朗君)

 ただいまの質問は、この指針の第 3 の 1 の(1)かと思いますけれども、ここでイロハニと、イロハニはいわゆる四要件といいますか、四つ要件がございまして、イが企業全体の運営に影響を及ぼすもの、ロが企画、立案、調査、分析云々、それから三が、業務の性質上、客観的に労働者の裁量にゆだねる必要性があるもの、ニが広範な裁量が労働者に認められていると、これ四要件の指針だと思いますけれども、このうち、イの企業全体の運営に影響を及ぼすものという点につきましては、今御指摘のように、本社・本店等という事業場、いわゆる事業場要件といったものを緩和するということでございますので、ここについては変更する必要があるというふうに考えておりますけれども、そのほかのロハニにつきましては、繰り返しになりますけれども、基本的な考え方、そういったものを変更しているわけでございませんので、今のところ変更する必要はないというふうに考えております。

小池晃君

 本社に限定するということがこれは大事な歯止めだったわけで、これが外れるということは、これはもう歯止めなく広がる危険があるというふうに思います。この点、許されないということを改めて指摘をしたいと思うんです。

 それから、労使委員会の要件緩和についてお聞きしたい。

 これは、これまでは措置の実施状況その他厚生労働省令で定める事項を行政官庁に報告しなければならないというふうに規定があった。ところが、この条文のうち厚生労働省令で定める事項が削除されて、苦情処理の措置の実施状況とか労使委員会の開催状況の報告というのが廃止されるわけですね。こういう報告事項が廃止されるというのは、私、重大だと思うんです。

 例えば、前回も議論しましたが、裁量労働制の労働者の出退勤時刻が客観的に把握されていなかったと。それで、労働者が苦情を言うと。ところが、その措置がどうだったのか、労働基準監督署へ報告する義務がなくなってしまうと。あるいは、裁量労働制ってよく分からないということで合意したけれども、やってみたらこれはひどいと、何とかこれやめてほしいと苦情を労働者が持っていっても、苦情が出たことも、それに使用者がどう対応したのかということも、これでは行政に届かないということになる。

 今回、拡大をするわけでしょう。そういうときに、一方でこういう届出を廃止するというのは私は極めて無責任ではないかと、こんなことで果たして労働者を守れるのか。いかがですか。

政府参考人(松崎朗君)

 御質問は定期報告のことだと存じますけれども、今回のこの改正におきましては労働者からの苦情の処理に関する措置の実施状況、それから労使委員会の開催状況、これを定期報告から外すということで御提案しているわけでございますけれども、まず一点目の苦情処理でございますけれども、これは、使用者は苦情処理につきましても講じた措置の内容を三年間保存するという義務ございます。したがいまして、私ども現場の監督署におきましては、これは定期監督といった道もありますし、また労働者からいろいろ相談が行われた場合とか申告が行われた場合、こういったものもございます。そういったいろいろ監督指導、そういった場合に、現実に監督署の職員が事業場へ行った場合に、事業場に保存されておりますそういった苦情処理措置の内容、そういったものをきちんとチェックすることができるわけでございますので、ちゃんと労働者の保護に欠けるといったことはないというふうに考えております。

小池晃君

 書面の保存義務があるといったって、後で問題になったって遅いんですよ、これは。その都度その都度やっぱりチェックするということは必要でしょう。後で問題起こったら書面を見ればいいって、そういう話じゃないんですよ。過労死起こってからじゃ後の祭りなんですから、やはりこれは書面が保存してあるからいいんだということは、私は言い訳にならないと。

 こういう大事な情報をやっぱり報告事務を廃止するということは、これは撤回すべきだと。せめて、今回、この削除する要件については、私は、今広げるわけですから、一方で裁量労働制の拡大するわけですから、それによってどういう問題が起こってくるか見た上で、少なくともせめてやるべきじゃないですか。だとすれば、例えば施行規則などで担保するとか、こういう最低限の報告事項などは当面残して、やはり労働者の健康状態にどんな影響あるのかとしっかり見極めるべきじゃないですか。いかがですか。

政府参考人(松崎朗君)

 現行の運用におきましても、いろいろ現場における監督署が行きます監督指導、そういった場においてチェックをしておりますし、今後におきましても、繰り返しになりますけれども、そういった実際の指導監督、そういった場におきましてそういう書類、そういったものをチェックすることによりまして確認ができるということで、欠けることはないというふうに考えています。

小池晃君

 そういう事後チェックでは遅いんだと言っているんですよ。こういう問題は、やはり労働者から、問題起こった、そういったことをやはりきちっきちっと把握するシステムがあってこそ担保されるんだと私申し上げているんです。こういう大事な要件を廃止するということも、これは大問題だと。

 さらに、決議は委員会全員合意を五分の四の多数に引き下げることになっているんですね。これも重大です。

 これは九八年の労基法改悪の際の本会議質疑で、我が党の市田忠義議員の質問に対して、当時の小渕総理、こう言っているんです。新たな裁量労働制について、労使委員会において全員一致で決議し、労働基準監督署に届けることとしておりますことから、適正な運用が確保できると考えておりますと。改正法案は、委員の全員一致で決議しなければならないことを規定いたしておりまして、労使の十分な話合いによる適正な運営が確保されるものと考えておりますと、二度もお答えになっている。それほどこの全員一致制というのが裁量労働制の適正な運営の非常に重要な担保だったというふうに認識をされておられたと思うんですね。

 さきの法改正時にはそういう認識だったということは確認したいんですが、そういうことでよろしいですね。

政府参考人(松崎朗君)

 当時、この企画業務型裁量労働制が初めて導入されたときにおきましては、いろいろ今後の問題といいますか、まだ未知の部分があったということで、こういった修正がなされたというふうに理解はしております。

小池晃君

 これは重要だったわけですよ。一人でも反対があれば裁量労働制導入できないと。そうなれば、懸念される問題をみんなで解決しようと努力する。導入の協議が非常に緊張感の中で行われることになったと思うんです。このやはり運用の適正化の非常に重要な担保をなぜ廃止するのと。

 仮に、これ、労使五人五人の委員会だとすると、労働者の二人が懸念を表明して反対してもこれは導入できるということになるわけでありまして、これは労働者の少数意見、これを法律上踏みにじるということにもなる。私これは重大だと思うんですが、これはなぜこういうことをやるのかについてお答えいただきたい。

政府参考人(松崎朗君)

 これは労使委員会の仕組みでございますけれども、これは通常労使委員会の前に労働基準法の仕組みでございますけれども、労働基準法といいますものは、御案内のように最低基準というものを罰則付きで設けまして、それを緩和するに当たっては、労使協定とかそういった格好で労使の協定によって一部緩和したり適用除外したりといった仕組みが基本でございます。

 そういった仕組みの中でやっているわけでございますけれども、労使協定というのは厳密に言えば一対一でいいわけでございますけれども、労使委員会の仕組みというのは、これも御案内のように二人以上ということでございまして、二対二以上、同数ということになっておりまして、正にこれは合議制というような仕組みを取っております。したがいまして、さらに合議制といった場合にはいろいろ議論がなされるわけでございまして、その議論の経過、議事録につきましても、きちんとそれを保存して関係労働者に周知するという義務付けがなされております。

 したがいまして、より、ちょっと言い方は悪いかもしれませんけれども、従来の労使協定方式よりも合議制による労使委員会方式というのは逆により民主的だというふうにも考えられるわけでございまして、そういった合議制による決議という仕組みで考えた場合には、何も全員一致ということの必然性というのはやはり理論的にはないわけでございます。

 ただ、導入の際には、そういういろんな経緯があってそういう修正があったわけでございますけれども、その導入後の運用、そういった実態、さらには運用しております当事者、そういった御意見を聴きました場合に、そういった弊害が認められないということから緩和をすることにしたわけでございますけれども、さらに、この五分の四というものは、今おっしゃったように、片一方が全員賛成した場合、もう片一方が過半数が賛成しなければ導入できないということでございますので、正に少数といいますか、少数の反対があったらすべてできないというものではなくて、やはり全体の中での合議制というもの、そういったものを重視するということからこの制度の趣旨というものは守られるというふうに私どもは考えているところでございます。

小池晃君

 そもそもこれはいい制度だったのに、最初は懸念があったから全員一致にしたんだというふうにおっしゃるんですがね。しかし、裁量労働制が導入されてから労基法三十八条四にかかわる違反件数というのはこれは毎年どれだけ出ているんですか、主な内容を簡単に御紹介いただきたい。

政府参考人(松崎朗君)

 これは企画業務型の裁量労働制の導入が十二年でございますので、十二年以降でございますけれども、大体これは個別のあれは別にしまして数で申し上げますと、平成十二年には、四十四の事業場を監督いたしまして二十四件。この二十四件といいますのは、一つの事業場で二件以上あった場合、これは二件以上とカウントされますので、二十四事業場という意味ではございません、二十四件。また平成十三年におきましては、八十九事業場を監督した結果、四十六件、また平成十四年では、八十事業場を監督した結果が、何らか違反があったところが二十二件という状況でございます。

 中身でございますけれども、主なものを申し上げますと、裁量労働制の対象業務に従事することについて、この御本人、労働者の同意を記録し保存をしていないといったもの、また裁量労働制に係ります労使委員会の議事録が労働者に周知されていなかったといったもの、さらには裁量労働制に関します定期報告を、これは六か月、最初は六か月以内にせにゃいかぬわけでございますけれども、六か月以内に所轄の監督署長に提出しなかったといったもの、こういったところが見られているところでございます。

小池晃君

 そもそも企画型の適用事業場、百八十二か所しか前はないわけですよね。そういう中で既にこれだけ違反が出ているわけです。それにもかかわらず、適正に行われているから拡大していいなどと言えるんだろうか。

 ちょっと大臣、今までの議論を踏まえてちょっとお聞きしたいんですけれども、今回本社以外の拡大で、これは裁量制を取る職場というのは恐らく増えるでしょう。かなり私は増えるのではないかというふうに危惧をしております。一方で、こういう違反の実態もあると。そういう中で、今必要なことは、少なくとも労基法の手続を厳格に守らせると。今のルールを守らせることを徹底的にやるべきであって、こういう中で、本社以外に拡大するだけではなくて、さらに手続要件まで緩和して拡大しやすくするというのは、私は一気に水門を開けるようなこういうやり方は到底納得できないんですが、大臣いかがですか。

国務大臣(坂口力君)

 労基法をきちっと守らせなければならないことは御指摘のとおり、私もそう思います。それはそういうふうにしていかなければいけないというふうに思いますが、しかし、今回の裁量労働制を導入をするということは、それは一つは労働者にとりまして、労働者が自分に見合った働き方と申しますか、自分の考え方に沿った働き方ということをある程度は選択できるわけでありますから、決してマイナス面だけではないと私は思っております。

 そうしたことも考慮に入れながら、しかし全体として裁量労働制が、先ほどからお話のありますように、長時間労働あるいはまたサービス残業といったようなことに大変な大きな拡大をしていくというようなことになればこれは問題でございますから、できる限りそういうふうにならないように我々も監督指導を強化していかなければならないというふうに思っております。

小池晃君

 私は、こういう実態の中で、適用拡大だけではなくて手続要件まで緩和するということは、本当に裁量労働制の持っている危険性を日本の労働者全体に広げる危険性が非常に強いということを改めて指摘をしたいと思うんです。

 有期雇用について若干お伺いしたいんですが、十四条の二で「その他必要な事項についての基準を定める」というのがあります。これは「労働者と使用者との間に紛争が生ずることを未然に防止するため」というようなことで書かれているわけですが、この項をなぜ設けたのか、一体どういう紛争を想定して設けているのか、お答え願いたいと思います。

副大臣(鴨下一郎君)

 有期労働契約におきましては、これは契約更新の繰り返しによりまして、一定期間雇用を継続したにもかかわらず、突然契約更新をせずに期間満了をもって退職させると、こういうようないわゆる雇止めのトラブルが一番多いわけでありまして、有期労働契約が労使双方にとって良好な雇用形態として活用されるようにするためには、このようないわゆる雇止め等をめぐる紛争の防止、解決を図っていくと、これが極めて重要なことだろうというふうに思っておりまして、今回の改正におきましては、これは厚生労働大臣が有期労働契約の締結及び更新、雇止めに関する基準、これを定めることとしておりまして、この当該基準に基づいて労働基準監督署が必要な助言、指導を行う、こういうようなことによって紛争の発生、そしてその未然の防止をしていきたいと、こういうふうに考えているところであります。

小池晃君

 先日、大臣も私の問いに対して歯止めが必要だと、何らかの歯止めを作らなきゃいけないというふうにおっしゃったと思うんですね。この基準というのはそれに当たってくるんだろうと思うんですが、歯止めという点では一体どのようなことをお考えになっているのか。さっきから労政審で決めるとおっしゃるんですけれども、これは国会ですから、何か大事なことは審議会で決めるとなったら国会は何のためにあるのかということになるんで、基本的な考え方としてどのような歯止めを考えているのか。ちょっとここは大臣に考え方を示していただければと思うんですが。

国務大臣(坂口力君)

 歯止めを作らなければならないということを私は申したわけでございますが、具体的にそれをどうするかということは、それは専門家にお任せをしなければいけないというふうに思っております。

 その中には、それは現場のことをよく知った人たちもその中に入っていただいて、どういうことをするのが一番歯止めになるのかということを考えていただかないといけないわけでありまして、言ってみればこの委員会等で、国会での議論はその大枠を決めて、より具体的なことはそうした現場のことを熟知した人に決めていただく、これがやはり大事だと、私はそう思っております。

小池晃君

 いや、だからその大枠を今お伺いしたつもりなんですけれども、大枠としてどういう歯止めが必要だというふうに大臣として考えておられるのかということなんですが、いかがですか。

国務大臣(坂口力君)

 だから、歯止めが必要だということが大枠であります。

小池晃君

 それはもう当然のことなんです、歯止めは。どういう歯止めが必要かという大枠を私はお伺いしているんですけれども、ちょっとお答えないんですが。

 それからもう一つ、三年有期の問題で退職の自由を明記されているんですけれども、これは衆議院の修正で明記されたわけですが、五年有期については、これは先日の参考人質疑でも、特例労働者についてこそ歯止めが必要なんだ、使用者の足止め、拘束が強まることが明らかであり、何らかのものが必要なんだという懸念が表明されております。

 参考人にお聞きしたいんですが、三年の場合に限らず五年の特例労働者についてもこれ拘束されることなどあってはならないと思うんですが、法の運用に当たる厚生労働省としてどう考えておられるか、お答え願いたいと思う。

政府参考人(松崎朗君)

 この今回の五年に延期をするいわゆる専門職の方でございますけれども、こういった方につきましては、やはりその労働者の範囲といったもの、これが使用者とのいろいろな交渉、そういった場におきまして、決して使用者に対しまして下といいますか劣位に立つものではないということを予定しております。したがいまして、中途で解約といいますか、辞めるといったことにつきましても、これにつきましては、やはり契約でございますので、契約は結んだ以上、双方は誠実に守らなければならないというのが基本でございます。

 そういった今申し上げましたような方につきましては、そういった拘束も含めて、その処遇、報酬、そういったものも含めてすべて総合的に判断をして自らの責任において決めていただくわけでございますので、こういった方について一方的に片方だけこの解約の自由ということを認めるというのは、やはり民法の大原則に非常に大きな修正を加えるということになろうかと思っております。

小池晃君

 しかし、その意に反して不当な拘束などあってはならないということについては考え方は同じということでよろしいですね。

政府参考人(松崎朗君)

 この意に反して不当な拘束というのは、どういう具体的なあれかはちょっと分かりませんけれども、少なくとも労働基準法におきましては強制労働の禁止というのがございます。したがいまして、肉体的に拘束をしたりするのは基準法違反になりますけれども、残るのは、別の場でも申し上げたかもしれませんけれども、いわゆる損害賠償の問題、民事上の損害賠償の問題というのはこれは残ろうかと思っております。

小池晃君

 あと、サービス残業のことで具体例をちょっとお伺いしたいんですが、資料を配られていると思うんですけれども、郵政公社のサービス残業の問題です。

 これ、昨年末近畿局で是正勧告が出て、今回九州支社で勧告がありました。これは配られている資料の一枚目を見ていただくと、これは出勤簿なんですね。それから二枚目が超勤の命令簿であります。

 これは、職員の話では、資料 1 の出勤簿、これが管理職の前に置いてあって、ここに出勤時に判こを押すと。出勤時間も退勤時間も書き込む欄はないんです。残業時間については二枚目の超勤命令簿で管理すると。これ、二つしかないわけです。超勤は上長が認めた場合だけ事前に書き込むという中身になっておりまして、急に残業が入ったり残業が延びた場合は翌日自己申告すると。

 厚生労働省は、時間管理を使用者自らの現認又はタイムカード、IC カード等による客観的な記録ということを指針で出しているわけですが、このやり方、郵政公社のサービス残業、これだけ実態として起こっている。なぜ起こっているかというと、こういうやり方で、残業時間をあらかじめ記載する超勤命令簿が後で修正なかなかしづらいと、翌日自己申告で修正するんだけれども、上司には修正報告しにくいという問題もあって日常的に起こっているのではないかという声が現場からも上がってきている。

 私は、こういうやり方の時間管理ということでこの間サービス残業が多発している、そういう疑いが強いんではないかというふうに考えるんですが、厚生労働省として、こういうやり方、放置してよいのか、ちょっと簡単にお答えいただきたい。

政府参考人(松崎朗君)

 御指摘のように、この労働時間の管理、これは基本的に裁量労働制を除きまして使用者の責任でございます。

 そのやり方につきまして、御指摘のように、三三九号通達によりまして、現認するなり、またタイムカード等客観的な記録を基礎とするということで、それが原則だということを言っておるわけでございますけれども、このいわゆる自己申告制につきましても、これは自己申告制を取らざるを得ない場合というのがあるわけでございますので、これもきちんと適正にやるということを条件に認めておるわけでございます。

 また、具体的にどういった方法を時間管理の、労働時間の把握方法としてそれぞれの事業場において採用するかといったもの、そういったものにつきましては、それぞれの事業場の実態に応じて事業場の中で判断していただくということでございますので、自己申告制につきましても、この運用を適正に行っておれば問題はないというふうに私どもは考えております。

小池晃君

 しかし、問題ないと言うけれども、これだけ何度も指摘されているんですね、郵政公社は。近畿局の場合、これは六百六十人、二年遡求で、一月平均一万七千円、およそ二億七千万円支払ったんです。なぜできたかというと、これは年間総実労働時間千八百時間の取組で、たまたま近畿局だけが出退勤時間を記録していたためだというんですね。私は、この点から見ても出退勤時刻を把握することの重要性があるんだと。

 全逓の関東地方本部のアンケートを見ますと、四百五十二人のうち、六二%の二百八十三人がサービス残業をしていると回答しているんです。これは、外勤、内勤、役付け、一般を問わず過半数がサービス残業という異常な実態なんですよ。これは正にこういうやり方で起こっているのではないか。

 今日、郵政公社、お見えいただいていますけれども、これ、繰り返し是正勧告を受けていることをどう考えておられるか。これね、実は国会で何度も取り上げられているんです。一昨年五月に我が党議員、取り上げました。その後、そのときに郵政事業庁長官は、もう根絶しますというふうに言っている。しかし、昨年十二月に近畿郵政局で起こっている。今年の五月に参議院の総務委員会でも取り上げられて、生田総裁は、今後、法規を守ることを徹底すると言っている。そしたら、六月にまた九州支社に勧告出ているんですね。

 郵政公社として、これ根絶するために、どういう具体的な取組が必要と考えているのか、お答えいただきたいと思います。

参考人(稲村公望君)

 大変恐縮でございます。

 職員が時間外勤務を行った場合に超過勤務手当を支給するのは当然のことでございまして、いわゆるサービス残業はあってはならないものと考えておりますし、それから勤務時間の適正管理につきましては従前からるる指導を行ってきたことでございますが、今般、九州支社におきましてこのような事態を招いたことは誠に遺憾と存じております。

 超過勤務につきましては、超過勤務命令の徹底、いわゆる付き合い超勤の防止等、従来行ってきました取組を更に徹底を図りますとともに、新たな施策につきましても現在検討を進めておるところでございます。

 御案内のとおり、日本郵政公社では、始業時刻は出勤簿で、終業時刻は超勤命令簿で確認また対応しておりますので、更に徹底を図ってまいりたいと思います。

 どうかよろしくお願い申し上げます。

委員長(金田勝年君)

 時間です。

小池晃君

 時間がない。

 もう質問しませんけれども、これもうやりますというのを国会で二回答弁されているんですよ。やりますと言った後で起こっているんです、また。そういう点では、私は客観的な記録による時間管理やるべきだと。それからもう一つ、やはり郵政公社の中期経営計画では今後二年間で一万七千人の削減を計画しているんです。こういうことはきっぱりやめるべきだと。

委員長(金田勝年君)

 時間ですので、これでお願いします。

小池晃君

 やはりきちっとサービス残業を根絶するための取組を進めるべきだということを申し上げて、質問を終わります。

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