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2004年5月12日(水)159 通常国会

年金改悪法案にたいする
小池政策委員長の質問(大要)

2004年5月13日(木)「しんぶん赤旗」より転載

 日本共産党の小池晃政策委員長が十二日の参院本会議でおこなった、年金改悪法案にたいする質問と答弁は次の通りです。(大要)


 安心して暮らせる年金をという願いは、年金加入者七千万人、受給者三千万人に共通する切実なものです。憲法二五条に保障された生存権を支える柱である年金制度のあり方は、国政の最重要課題の一つであり、法案への賛否にかかわらず、十分に時間をかけて審議をつくすことは、国会の最低限の責務です。徹底審議を強く求めます。

「空洞化」に拍車かける保険料引き上げ

 最初に、年金保険料の連続する引き上げについて総理に質問します。

 厚生年金では支え手である加入者の激減という事態が起こっています。厚生年金の加入者数について政府が九九年にたてた予測では、二〇〇二年度から減少をはじめて、二〇一五年度に三千百七十万人になるとされていました。ところが実際には、政府の予測よりも十三年早く、〇二年度ですでに三千百七十万人にまで減少したのです。失業、倒産の影響に加えて、青年労働者の非正規雇用、いわゆるフリーターの激増がその原因です。

 厚生年金加入事業所は、この五年間で七万カ所減っています。しかも〇二年度の新規法人九万六千のうち、18%にあたる一万七千法人が厚生年金に未加入です。厚生年金の空洞化は、年金の根幹を揺るがす事態となっています。ところが本法案には、こうした空洞化に対する手だてが何一つないのではありませんか。

 国民年金も空洞化がすすんでいます。保険料の未納率は〇二年度で37・2%にのぼり、未納、未加入、免除をあわせると保険料を支払っていない人は一千万人を超えると推計されます。一番多い未納の理由は「保険料が高くて経済的に支払うのが困難」で全体の62・4%を占めています。

 こうした中で厚生年金や国民年金の保険料を連続して引き上げれば、年金の支え手をいっそう減らしてしまうのではありませんか。日本の雇用と経済にどのような影響をあたえるとお考えか。お答えください。

 保険料の連続引き上げが、年金の空洞化をさらにすすめ、年金財政をますます悪化させることはあまりにも明白です。国民のふところも経済情勢も無視した年金保険料の連続した引き上げは、やめるべきではありませんか。答弁を求めます。

給付水準削減は生存権、経済を破壊

 つぎに、年金給付水準の削減についてうかがいます。今回、「マクロ経済スライド」によって、すべての年金水準が国会審議抜きで自動的に15%引き下げられます。

 国民年金の受給額の平均は月四万六千円にすぎません。しかも介護保険などの社会保険料や医療費の負担は増加を続けています。今でも、基礎的な衣食住の支出すらまかなえない水準の年金をさらに15%もカットすることは、憲法二五条に保障された生存権をいっそう破壊するものではありませんか。平均四万円台の国民年金の給付水準を15%引き下げても、国民の日々の生活が可能だというなら、その根拠を示していただきたい。

 今や年金が国民所得に占める割合は9・9%です。北信越、中国、四国、沖縄県をのぞく九州では、全県で県民所得の一割をこえ、最高の島根県は13・3%です。年金は日本の経済にとって無視できない巨大な存在となりつつあります。15%もの引き下げは、経済に深刻な影響を与えるのではないでしょうか。

 年金給付の削減は、憲法で保障された生存権を乱暴に破壊するだけでなく、日本経済にも大きな打撃となります。年金給付削減はやめ、真に生存権を保障する制度に改革することこそ、求められているのではありませんか。明確な答弁を求めます。

二つのうたい文句が崩れた

 しかも最近になって、重大な問題点が明らかになってきました。

 政府はこれまで、本法案について「これまでのように五年ごとに改定するのではなく、将来の保険料の上限と給付水準の下限を明らかにし」たから「これまでの改正とは大きく異なる抜本的な改正」だと説明してきました。これは、はたして本当だったのか。

 保険料については「固定方式」で上限を定めたとしていますが、国民年金の保険料は、賃金の名目上昇率に連動するので、保険料が固定されると政府が説明した二〇一七年を過ぎても上がり続けます。今後の実際の国民年金保険料はいくらになるのか。二〇一七年と、その十年後、二十年後はどうなるのか。厚労大臣、示してください。

 二〇一七年を過ぎても実際の保険料が上がり続けるのであれば、「保険料に上限を設けて固定する」とした政府のこれまでの説明は、事実に反するものだったのではありませんか。総理の明確な答弁を求めます。

 さらに、政府はこれまで「現役世代の収入の五割を保障する」と説明してきましたが、それはごく限られた「厚生年金モデル世帯」だけ。しかもそうした「モデル世帯」ですら、五割保障されるのは年金受給がはじまる時点だけで、その後は五割を下回ることが明らかになりました。

 現在六十五歳、五十五歳、四十五歳の世帯で、現役世代の収入に対する給付の割合が受給開始後どのように変化するか。厚労大臣、受給開始十年後、二十年後の割合を示していただきたい。

 給付水準の切り下げにより、今後年金を受給するすべての世代で、現役世代の収入の五割を切るのであれば、政府の「五割保障」という説明の根拠は崩れたのではありませんか。総理は衆議院本会議で、「給付水準についても、現役世代の平均的収入との対比で50%を維持することを明確にしている」と答弁していますが、これは誤りだったのではありませんか。総理、ハッキリ答えていただきたい。

 今回の政府案のたった二つのうたい文句が、二つとも崩れたのですから、当然のことながら、政府案を廃案とし、最初から、出直すべきではありませんか。

 日本の年金制度が抱える最大の問題点は、保険料を払わない人が一千万人をこえる深刻な年金空洞化や、低額年金が放置されていることです。改革というならここにこそメスを入れるべきです。

「最低保障年金制度」は世界の流れ

 先日、日本共産党は、年金制度の劣悪な現状を抜本的に打開するために、最低保障額を当面月額五万円とする「最低保障年金制度」の実現に、すみやかに踏みだすことを提案しました。「最低保障年金制度」は、厚生年金、共済年金、国民年金の共通の土台として、全額国庫負担による一定額の最低保障額を設定し、そのうえに、それぞれの掛け金に応じて、給付を上乗せする制度です。

 財源は、大型開発など歳出の徹底した見直しと、大企業、高額所得者に応分の負担を求める歳入の見直しで生み出そうというのが、私たちの提案です。

 総理にうかがいます。国民所得に対する企業の税と社会保険料の負担水準について見ると、日本はヨーロッパに比べて低い水準です。社会保障の負担の原則は「応能負担」であり、その見地からも、大企業に応分の負担を求めるべきではありませんか。

 イギリス、ドイツ、フランスでは、低額の年金しか受け取っていない人のために、公的扶助とは別に、年金の最低額を保障する制度がつくられています。さらに北欧諸国やカナダ、オーストラリアなどには、全額国庫負担による最低保障年金制度があります。生存権を保障するために、国の責任で年金受給者の所得の最低額を保障するのが世界の流れなのではありませんか。

 二〇〇一年九月に、国連の社会権規約委員会が日本に対する勧告の中で、最低保障年金制度が存在しないことについての懸念を表明しています。政府はこの懸念にどうこたえるつもりですか。国連の指摘にもとづいて、一刻も早く最低保障年金制度を実現するべきではありませんか。

消費税大増税に道ひらく「三党合意」

 最後に自民、公明、民主の「三党合意」について総理にお聞きします。

 この合意によって、政府案にある年金保険料の連続引き上げはどのように変わるのか。また、年金給付水準の15%カットはどうなるのですか。結局「三党合意」によっても、この政府案に盛り込まれた年金制度改定の内容には、一切の変化がないのではありませんか。

 また、三党合意では「年金制度の一元化を展望」するとしていますが、ここでいう一元化はいったい何を意味するのですか。年金制度間の格差をなくし、国民から見て公平な制度をめざすことは重要な課題です。しかし、現状の枠組みのままで、国民年金や厚生年金などの保険料や給付水準の統一を「一元化」の名の下におこなえば、保険料の大幅な引き上げか、もしくは給付水準の引き下げになるだけではありませんか。

 そもそも三党合意で「社会保障制度全般について、税、保険料等の負担と給付の在り方を含め、一体的な見直し」をおこなうとしたことは、「二〇〇七年度から消費税を含む抜本的税制改革を実現する」とした昨年十二月の与党「税制大綱」合意に沿うものにほかなりません。

 年金大改悪法案の採決強行を容認しただけでなく、消費税大増税に道をひらく三党合意に対して厳しい批判の声が上がっています。年金空洞化をさらにひどくする負担増と、生存権を破壊する給付の削減を押しつける本法案は、廃案とすべきです。最低保障年金制度の実現による本当の年金改革に向けてすすむことを訴え、私の質問を終わります。


小池政策委員長への小泉首相、坂口厚労相の答弁 (大要)

小泉純一郎首相

 (厚生年金の空洞化について)働き方や生き方の多様化に対応できるよう、在職老齢年金制度の見直しをおこなう。短時間労働者の適用も見直しに向け検討していく。厚生年金からの違法な脱退には、該当しなくなった場合の事実確認の強化などで対応している。(保険料の引き上げについて)現行では26%程度まで引き上げが必要だが将来の現役世代、企業負担が過大とならないよう配慮して18・3%と、相当程度抑制した。

 (経済や雇用等に与える影響)保険料引き上げで企業や個人の負担は大きくなるが、年金は労働者の老後の不安等を解消することで活力ある経済の基盤となる。保険料を引き上げない場合、かなり大幅な給付の抑制が必要となり、高齢者の消費に与える影響や現役世代の老親扶養負担が増加する。総合的に考える必要がある。

 (給付水準の削減について)時間をかけておだやかに水準を調整し、前年度の年金の名目額を下回る改定はしないこととしており、生活の安定等にも十分配慮している。健康で文化的な最低限度の生活は、生活保護、その他の施策が相まって実現されるものであり、生存権を定めた憲法に抵触する問題ではない。

 (保険料水準の上限について)二〇〇四年度価格で二〇一八年以降の最終の国民年金の保険料水準を固定し、法案に明記した。二〇〇四年度以降、経済が発展し物価や賃金が上昇していけば、実際に徴収される保険料の名目額が上がっていくのは当然のこと。厚生年金も保険料率を固定しても賃金が上昇すれば名目額は上がっていく。現在の賃金水準との比較で表示することは合理的であり国民をあざむくものではない。

 (給付水準の下限について)年金を受給しはじめる六十五歳の時点はそれまでの賃金上昇を反映して年金額が算定され、それ以降は物価スライドで購買力を維持することとしている。これまでも現役の平均手取り賃金と比較した給付水準については六十五歳の時点における割合で示しており答弁に問題はない。

 受け取る年金額と現役世代の平均手取り賃金を比較すれば徐々に比率は逓減していくが、高齢になるほど消費水準は低下する傾向にあり、高齢者の生活の安定が大きく損なわれることはない。

 (社会保障分野での企業負担について)社会保障負担は今後急速な少子高齢化の進行により増大が不可避。企業にも応分の負担をお願いしていく必要がある。

 (最低保障年金制度の創設について)年金制度は自助・自立の精神に立脚し、現役世代の拠出の実績に応じて給付している。最低保障年金制度について国連から指摘を受けているが、自助・自立という社会保険の長所を放棄するのではないか、生活保護との関係、巨額の税財源をどうまかなうのか等の問題がある。

 (三党合意について)三党合意で、年金保険料について社会保障全体のあり方の検討状況や社会経済情勢の変化などの事情を勘案して検討し、年金一元化問題を含む社会保障制度全般の一体的見直しをおこなうこととされた。年金一元化は、国民年金対象者の所得の捕捉をプライバシーとの関係でどうするかなど問題があり、どのような形で一元化するかについてもさまざまな意見のある中長期的な課題。与野党間で建設的な議論を期待している。

坂口力厚生労働相

 (国民年金保険料の名目額について)保険料は現在の賃金水準を基準とした二〇〇四年度価格で上限を固定しており、二〇一七年以降の保険料水準は法律上、一万六千九百円と明記している。実際に徴収する名目額は今後の賃金上昇の状況に応じて変化し、一人あたりの賃金上昇が名目2・1%と仮定すると、二〇一七年で二万八百六十円、二〇二七年で二万五千六百八十円、二〇三七年で三万千六百十円となる。

 厚生年金の保険料も上限固定後も賃金上昇により増加する。国民年金でも上昇することは当然。

 (受給開始後の給付率について)年金の給付水準を示す所得代替率は、六十五歳で年金をもらい始める時点における現役世代の平均手取り賃金と比較し、その下限を50%とした。受給以降の年金額は、六十五歳時点よりも低い水準となる。現在六十五歳の場合、十年後は51・3%、二十年後は43・2%。五十五歳は十年後に45・4%、二十年後に40・8%。四十五歳は十年後に45・1%、二十年後に40・5%になる。パーセントは低下するが年金額は増加する。

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