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日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

162通常国会 参議院厚生労働委員会

2005年6月7日(火)


参考人

全国町村会常任理事 沖縄県嘉手納町長 宮城篤実
社団法人日本経済団体連合会常務理事 紀陸孝
日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局次長 花井圭子
鹿児島大学法科大学院教授 伊藤周平
特定非営利活動法人特養ホームを良くする市民の会理事長 本間郁子
小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 伊藤参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほどからちょっと保険料の対象年齢の引下げの議論がされていますけれども、この点については伊藤参考人はどういう見解をお持ちか、ちょっと最初にお伺いしたいと思います。

参考人(伊藤周平君)

 保険料を二十歳から取るといういわゆる被保険者の範囲の拡大の問題だろうと思うんですが、つまり二十歳から取るということと同時に、被保険者の範囲を拡大すると同時に、いわゆる障害者福祉も介護給付の部分は介護保険に入れていくということだろうと思うんですが、基本的に私は障害者福祉についてもこれは税金でやるべきだと思っているので、範囲を拡大する必要は一切ないと。

 一つ問題なのは、先ほどから言われている範囲の拡大について決定的に抜け落ちているのは、障害者自立支援法もそうなんですが、結局今までの支援費制度の中での障害者の福祉サービスの利用が応益負担になるということです。厚生労働省は応益負担という言葉を使わないで定率負担と言っていますが。

 さらに、給付に限度額が付けられると。つまり、介護保険を普遍化する、介護保険は普遍的なシステムだからそこに二十歳以上の人あるいは零歳から全部対象にするといいますが、介護保険は普遍的なシステムではありません。必要な介護をすべて保障しません。お金のない人は利用できません、給付限度額を超えた介護は保障しません、そういう仕組みなんですね。

 だが、そもそも福祉というのはそうじゃなくて、給付限度額を超えてもサービスが必要な人はたくさんいらっしゃるわけです。さらに、私の知っている人で、福岡に住んでいる人で、いわゆる老老介護の方ですが、奥さんは要介護五で、だんなさんは奥さんを介護されているんですが、要介護五だと月額三十六万円までのサービスが利用できます、介護保険ではね。在宅でやっていらっしゃるんですが、ただ、そのためには三万六千円が払えなきゃいけないんです。そうですね、一割負担だから。そこの家庭は、もう夫婦合わせて八万も年金がないので一万円しか払えないというんです、介護サービスに。すると、十万円のサービスしか利用できません。

 結局、介護保険というのは、一割負担が払えなかったりあるいは給付限度額を超えてしまえば、お金がなければ利用できないという仕組みなんですね。だから、そういう仕組みにそもそも高齢者福祉を入れること自体は私は間違いだと思うし、ましてや障害者福祉をそういうところに入れてきたら、私、多分いろんな形で、今は障害者自立支援法を別のところでやっていると思うんですけれども、利用者負担に耐え切れなくてサービスの利用を抑制すると。その結果、孤独死とかあるいは一家心中とか、そういうのが起こってくる可能性は極めて高い。現実にもう介護保険でそういうことが起こっているわけですね、利用者負担が払えないとか、あるいは限度額を超えてしまって、老老介護でとてもやっていけないから、月額三十万円も請求されたからということで、佐賀の方でありましたね、一緒に心中したと。

 そういう悲惨な事件がたくさん起こっているわけで、私は、先ほど言われたように、保険料を払う人の拡大、それを若者に納得させるかどうかの問題じゃなくて、そもそも、介護保険やそういった非常に限定的なシステム、お金がないとちゃんとした介護を受けられないというものを、更に保険料を負担しなきゃいけないというものを広げること自体が反対なので、もちろん被保険者の範囲の拡大は反対です。

小池晃君

 引き続いて、新予防給付の問題について、先ほどのお話もお聞きしたんですが、やはりここが今回の法案では一番問題になっております。軽度の人に対するサービスが悪化させるということも根拠ないし、新予防給付で提供されるというサービスが要介護度を改善させるということも科学的根拠がないということが国会の審議の中でほとんど明らかになっているにもかかわらず、これがやられようとしているという点では本当に重大問題だと思うんですが、この点について問題点、先ほど述べられた点以外で何か御指摘すべき点があればお聞かせ願いたいと思います。

参考人(伊藤周平君)

 新予防給付、つまり先ほども参考人の方がいろいろおっしゃっていましたが、予防の効果を上げるためにはやはりちゃんとした専門家をそこに付いて、それなりのスタッフをそろえていないと駄目なんですね。そういう介護報酬にならないと思うんです、私。

 そもそも予防の効果自体が、先ほどお話があったように非常に不明確な上に、科学的根拠に基づいているのかどうかもよく分からない。結果的に、支給限度額を低くしてしまえば、要支援の人はお金、全額自己負担しないと限度額を超えたサービスは利用できないということになれば、実質的にサービスの利用はできなくなるわけですね、ある一定限度までしか。しかも、予防給付、予防給付というけれども、結果的に、じゃ実際に予防給付やったところで、それが先ほど言いましたように給付費の抑制につながるかどうかというのも極めて疑問ですね。

 だから、その給付費の抑制につながらない、つまり厚生労働省は恐らく私は新予防給付についてもそれほど効果は見込んでないと思うんですね。つまり、早い話が要支援や要介護一の人はもう給付から外したいんでしょう、多分、その給付費の抑制のために。そのために、今そういう人たちのサービスの利用を制限したいんだろうと、そういうふうに考えていまして、これは明らかに国民の反発を買いやすいし、現実問題として、もし、新予防給付のためにもたくさんの公費を費やすわけです、モデル事業をやって。しかも、いろんな形で公費を費やしていても効果が上がらないと。コンピューターの全部ソフトも替えなきゃいけませんね、認定するときに。となると、これは公費の無駄遣いじゃないかと思うんですね、私。はっきり言って、効果が上がるか分からないもの、しかも上がる可能性が極めて低いものをこんな簡単に通してしまっていいんですかと私は思っています。済みません。

小池晃君

 続いて、ホテルコストのことをお聞きしたいんですが、ちょっと本間参考人にお聞きしたいんですけれども、これは私も質問で取り上げたんですが、ホテルコストで一番大変になってくるだろうというのは新第三段階の人で、年金が大体七十万円から百万円ぐらいの層ですね。新第三段階は非常に広い範囲なので、こういう人たちは恐らく年金額をはるかに超える負担が掛かってくる。まあ、特養に入れないと。こういうことを私、政府に追及したらば、政府は何と言っているかというと、社会福祉法人の減免制度があるから大丈夫だと言うんですが、これが果たして十分な対策になっているとお考えかどうか、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。

参考人(本間郁子君)

 これ、八十万円から二百六十六万円の第三段階のあれは非常に幅があって、この私の表からも分かるように、百四十万円以下は個室にさえ入れないという設定になっております。ただ、これは年金だけで考えられているものでして、預貯金は考えられておりません。というところで、八十万円でも、預貯金のある人は恐らく個室にも入ることができるということになりますけれども、本当に困っている人が救える状況にはなっていないということですね。

 じゃ、本当に困っている人を救える手段として減免措置という、社会福祉法人の減免措置ということが考えられているんですが、とても今の経営状態では、減免措置やって困っている人を入れようという施設が私は少なくなっていくというふうにとらえております。

小池晃君

 このホテルコストの問題、伊藤参考人に続けてお伺いしたいんですけれども、十月からやると。私のところにも地方議員の方から、もうとんでもない話だと、九月議会で条例を作って十月から取れというのかと。これ地方自治法違反じゃないかというような話まで来ているんですが、こういうやり方も含めて、ホテルコストの中身も含めてちょっと問題点指摘していただければと思います。

参考人(伊藤周平君)

 先ほどお話あったように、公費で造ったものについての減価償却費を取るということ自体もちょっとおかしいんじゃないか。だから、今までの社会保障の理念のやっぱり大転換ですよね。あるいは社会福祉の考え方の。

 結局、社会保障というのが、先ほどお話があったように自助ということもありますが、何かというとやっぱり、私は大学で教えているんですが、憲法二十五条に基づいて、失業しようが、介護が必要な状況になろうが、障害を持とうが、高齢になろうが、病気になろうが、すべての人に健康で文化的な最低限度の生活を保障することを社会保障というふうに教えているんですが、結局これは、お金がない人は健康で文化的な最低限度の生活が保障されないということになる。それはおかしいんだろうと思うんですよ。

 だから、そういう意味でも、そもそもやっぱり公費で保障すべきものはすべきだと思うんで、それを自己負担にさせるとか、そういうことは間違いだろうと思いますし、それからもう一つは、やっぱり手続的な問題があると思うんです。

 今お話があったように、なぜ、じゃ最初に食費やそういう居住費を保険給付にしておきながら、その根拠も示さない、あいまいなまま、なぜ今になってそれを転換するわけですか。それは単に財政が苦しくなったということだけで説明できるんですか。しかも、そのやり方といえば、今お話があったように、もう九月の条例で決めて十月から取ると。

 実際に私も何人かの人に話を聞きましたけれども、利用者、知りませんよ、こんな状況。施設の人も説明できないと言うんです。それは、いいことを説明するならいいですよ。でも、今から負担が上がるということを説明するわけです。しかも、食費に至っては一日千五百円か千六百円ぐらいでしょう。もしそういうことを説明したら私は二食にしてくれというのが出るかもしれないと言っていました。それはとても食べれない、そんな千五百円。あるいはコンビニで弁当を買ってくるとかね。

 結局そういうことになって、本当に私ここに出て、参考人の方もそうなんですけれども、やっぱり組織の代表の方が多くて、本当に高齢者本人の、当事者の、あるいはそこで働いている人の意見が十分反映されていないと思います、今回の法案は。反映されていないどころか全く無視して、そういう財政の論理だけで突っ走って、しかも時間は全然ない。

 私は思うんですが、やはり人間、後ろめたさがあるときは急いでやろうと思いますね。やっぱり厚生労働省も後ろめたさがあるんじゃないかと。だから、問題点が知られないうちに早くここを通してしまおうと。だから、やっぱりこういうことだけは避けてほしいと思うんですね。是非その意味では、この問題はちゃんと慎重に審議してもらって、十月から実施なんという暴挙はやめてほしいと私も思っております。

 済みません。以上です。

小池晃君

 保険料の問題、引き続いてちょっとお伺いしたいんですが、宮城参考人に。

 宮城参考人の嘉手納町というのは月額の保険料五千二百二十五円だというふうにお聞きをしていまして、高齢化が進んでいるんで本当に大変な状況だと思うんですが、これを解決するにはどうしたらいいのかということで、町村会も言っているように、やはり給付の適正化ということを先ほどおっしゃっていましたけれども、そういったことよりも、やはり国としての減免制度をつくるとか、あるいはやっぱり国庫負担の今の比率を町村会で提起しているような引上げをやるということ、根本的な施策がなければ、あるいは保険料の取り方の問題とか、そういったところにメスが入らなければこれは解決しないのではないでしょうか。その点、どうお考えか、お聞かせ願いたいと思います。

参考人(宮城篤実君)

 保険料の負担については本当に、私どもだけではなくして、全国的にもどこでもみんな高いという実感をしております。

 それだけ、どういう仕組みでそれを軽減させるのか。一つはやはり、法律の方でもうスタートしておりますから、一つは、地域住民がどういう自助努力ができるか、あるいはまた自治体がどういう形でそれを軽減するための措置ができるのか、そういう支援も一つだろうと思います。

 そして、あと一つは、やはり国の負担、税制の仕組みそのものもありますけれども、これから総合的に国民全体がどういう形で負担をし、このいわゆる介護保険が健全に運営できるのか、そういうことについてもやはり、軽減させる手段として国からこれを持ってこい、あれを持ってこいということは簡単に言えるわけですが、しかし、全体としてそれじゃ国民の負担のその覚悟があるか、決意があるかということも含めて私は国会でもこれは真剣に議論していただき、保険料の負担を軽減させて、その上で健全な運営が維持できるように、持続できるように図っていただきたいと、希望をいたしております。

小池晃君

 この点、保険料の徴収の問題について伊藤参考人に、やはりどういう改革が求められているのかという点をお聞きしたいのと、今回の法案で遺族年金あるいは障害年金からの天引きという問題が出てきているんですが、この問題点、どのようにお考えか、お聞かせ願いたいと思います。

参考人(伊藤周平君)

 私のレジュメの七ページの方に介護保険料負担の問題についてはまとめてあるので、そちらを参照していただきたいんですが、一言で言いますと、先ほど、今、町長さんがおっしゃいましたが、第一号被保険者、六十五歳以上の人の介護保険料の取り方は極めて逆進性が強いと思います。つまり、五段階、今度六段階になるとか言っていますが、所得段階が非常に粗くて、世帯単位の算出方法が導入されていますので、最高保険料額は最低保険料額の三倍ですかね、三倍にぐらいしかならない。つまり、どんなに所得のある人でも、標準額が三千円であれば四千五百円しか取られないと。これは実際、裁判にまでなっているんですね、大阪で。私は意見書を書きましたけれども、ちゃんと。今度、六月の二十八日が判決らしいですが。

 つまり、これだけ逆進性の強い仕組みであれば、当然、特に低所得の人は保険料負担に耐えられません。したがって、保険料が高くできないと思うんです。どこの自治体もそれ頭を悩ませていると思うんですね。

 保険料が高くできないということは、給付が伸びた分だけ保険料負担ができないということですよ。そのためには給付を抑制するしかないです、だから今回の法案のように。

 そうするんであれば、やっぱり保険料負担を私はドイツのように定率にしていけばいいと思うんですね、一・七%に。ああ、別に一・七%にする必要はないですが、そういう形で取っていくしかないだろうなと。あるいは、国の負担の部分を上げて、高齢者の負担をやっぱり低くしていくような仕組みにしないと。

 つまり、今の仕組みは、ない人から取ろうと思っているから無理があるんですよ。ある人から取らないと財政は安定しません。幾ら被保険者の範囲を拡大して払う人を増やしても、結局、一万五千円の老齢退職年金から天引きしているような仕組みではね。介護保険料が一万五千円になったらその人は年金なくなるんですか、一万五千円の老齢退職年金から天引きされている人は。だから、そういう仕組みを、やっぱり低所得の人からはもう取らない、あるいは高額所得の人の保険料を高くするというような仕組みにしていくべきだろうと思います。そこに書いてあるので、読んでいただければ。

 それからもう一つ、今回の改正法案で、何と公租公課の禁止原則というのがあるんですね、遺族年金や障害年金、次の八ページをごらんいただければ分かると思うんですが。

 百三十一条ですか、改正法案の。百三十一条に、老齢若しくは退職、障害又は死亡を理由とする、そういう年金の給付から特別徴収を行うというようなことを書いてありますが、これはよく考えてみると、私は大学でも教えているんですが、社会保障給付については受給権保護規定が置かれていまして、社会保障給付には課税なんかはされないわけですね。ただ、公的年金については、厚生年金法の四十一条と国民年金法二十五条において、同様の規定があるんですが、老齢厚生年金と老齢基礎年金及び付加年金については同条ただし書でそれぞれ対象から除外されている。だから、天引きできるという解釈だったと思うんですよね。厚生労働省の何かそういう介護保険の実務にはそう書いてあるんですが。

 とするならば、もし遺族年金や障害年金は、公租公課の禁止規定があるにもかかわらず、天引きができないから公租公課の禁止規定を外さなきゃいけないんじゃないかなと。つまり、国民年金法等を改正しなきゃいけないんじゃないかなと思うんですが、どうもそこら辺が余り議論されていない。何か天引きという形で別の方からやるから別に付加するわけではないというような解釈が取られているみたいですが、やはり私はこれはちゃんと議論すべきだろうと思いますね。単に市町村の徴収が簡単になるから、そういう問題じゃないでしょう。社会保障の給付とは何か、障害年金とは何か、その法的性格は何かということをちゃんと議論しないと、これはまずいんじゃないかと思うんですけれどもね。そこら辺はまた今後の議論にゆだねていきたいと思うんですが。

 何にしても保険料をやっぱりこういう逆進性の強い取り方でやっていると、制度としてはやっぱり保険料負担に限界がありますから、余り給付を伸ばすということはできなくなる。だから、どうしてもやっぱりそこで給付抑制に回っちゃうという限界がありますので、やはり保険料の取り方も含めて抜本的な改革をやるべきだろうと思います。制度の持続可能性と言うのであればね。

 持続可能性という言葉は私余り好きじゃないんですが、制度がなくても人は生きていけるんですけれども、制度を持続するために人が死んでどうするんですか、負担増のために、耐え切れなくて。私は、これは根本的にやっぱり発想が間違っていると思うんですよ。制度の持続可能性ばかり言われているけれども、やっぱり生きている人のこと、そこで暮らしている人たちの方に全然目が向いていないと思うんですね、今度の法案は。

 その意味でも、私は、市民参加と言われているけれども、全然市民参加されていないし、当事者の意見は無視されたまま財政の論理だけで突っ走っているこの法案には全く賛同できないし、余りにもこれ私は人権を無視しているんじゃないか、そういうふうにも思いますね、そこで高齢者の人々の。

 以上です。

 済みません、長くなって。

小池晃君

 ありがとうございました。

 終わります。

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