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164通常国会 参議院環境委員会

  • 実態調査反映させよ/小池議員(関連記事
  • 石綿救済法が成立/共産党反対「不十分な制度」(関連記事
2006年2月3日(金)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 政府提出の救済法案ですが、これは国の行政責任、関連企業の加害責任をあいまいにしたもので、すべての健康被害者、遺族の生活を維持する上では極めて不十分な制度だというふうに言わざるを得ないというふうに思います。そもそも、工場の中と塀の外の間に格差があってはならないというふうに思います。こうした救済法になっているのは、先ほどから議論あるように、スピードスピードと称して、原因解明や被害実態の把握に基づかない拙速な対策に陥っているからだというふうに言わざるを得ない。

 そこで、最初に原因の解明について伺いたいんですが、環境省は昨年九月から尼崎市などに委託をして、一般環境経由によるアスベスト暴露の健康影響調査を実施していますが、調査結果はいつまでにまとまるんですか。

政府参考人(滝澤秀次郎君)

 御指摘の調査につきましては、兵庫県尼崎市等の協力をいただきまして、人口動態調査のデータを活用いたしまして、平成十四年から十六年の三年間に尼崎市を含む兵庫県内で中皮腫でお亡くなりになった方を対象に、御遺族の御協力をいただきながら、一般環境原因による石綿の健康被害について調査を行っているものでございます。

 内容といたしましては……

小池晃君

 いつまででいい、いつまで。

政府参考人(滝澤秀次郎君)

 はい。年度内にはまとめたいと考えております。

小池晃君

 もうすぐまとまるわけです。この調査、今ちょっと説明ありましたが、アスベスト暴露の可能性、経緯、暴露量の推定、暴露期間の推定、潜伏期間、これを分析をして、一般環境経由によるアスベスト暴露と中皮腫発症の関連について知見を得るものだと思うんですが、この調査結果で、尼崎では、これはクボタと周辺住民の健康被害との原因が究明されると思うんですが、いかがですか。

政府参考人(滝澤秀次郎君)

 今回のこの石綿の暴露の関係、影響の関係、非常にほかの疾患と違った特性がございます。そういう特性ももちろん前提といたしまして、目下この関係の専門家検討会がございます。そこで十分専門家の御検討もいただきながら、そうした因果関係等について解明を進めていくということになろうかと思います。

小池晃君

 ですから、そういう因果関係、原因究明の大切な調査になるわけです。

 尼崎市に聞くと、人口動態統計での五十名の中皮腫対象者については既に地図に住所地をプロットしていると。今は市に相談に来られたクボタ周辺の中皮腫死亡者・罹患者百五十名程度について作業をしているというふうに聞いているんですね。また、当時のそのクボタのアスベスト取扱施設の配置状況の調査も終わっているというんです。

 ですから、約二百名程度のこの中皮腫による死亡、罹患患者の地域別のプロットがされれば、これはクボタとの因果関係は明らかになるんじゃないですか。

政府参考人(滝澤秀次郎君)

 地図上のプロットという話が出ましたけれども、そのクボタ以外にも様々な事業所もございます。それから、それぞれ個々の生活形態、あるいはどういった範囲の通勤をしていたかとか、そういった細々とした各個別の亡くなった方々の調査でありますけれども、そういう分析も踏まえて慎重に検討されるべきものと考えております。

小池晃君

 しかし、基本的なその因果関係というのはかなりの部分解明されるはずだと思うんです。加えて、やはり大気汚染公害のように飛散のシミュレーションをすれば、これはもっと明確になるのではないかというふうに考えますが、この点についてはどう考えますか。

政府参考人(滝澤秀次郎君)

 シミュレーションにつきましては、市の方から御提案がございました。そこで、私どもとしましては、複数の専門家に技術的な観点から実施が可能かどうか等について御意見を伺いました。その結果、アスベストはどのように拡散するかなどについての知見が十分でないことから、既存のシミュレーションモデルとして単純に当てはまらないのではないか、あるいは当時のアスベストの排出源、排出量、環境中の濃度に関するデータがないことなどから、なかなか科学的に妥当な結果を得ることは困難ではないかという御助言をいただきましたので、市の方にもそういった専門家の助言の趣旨はお伝えしたところでございます。

小池晃君

 これは現地に行ったときも伺った話なんですが、尼崎市の担当者に聞くと、これ、シミュレーションをやれば、この今やっている健康影響調査の結果と重ね合わせて、特定発生源の影響範囲、労災以外の健康被害者との関係は明確になるということで、これ千四百万円余りの予算で実施することにしてたそうなんですね。ところが、今言ったように、いろんな理屈を付けてこれをやめさせてると。

 これ、環境省で尼崎市の担当者が会った際にこう言われたっていうんですよ。不確実の要素が多い中で実施すれば、結果だけが独り歩きし、要らざる議論を呼ぶおそれがある、行政が苦しい立場に立つ場合があると、こういうふうに環境省の担当者から尼崎市の担当者は言われたっていうんです。尼崎市としては、この結果、環境省がこういうふうに言うんであれば、これは実施を見送らざるを得ないというふうに判断したと。これ、正に圧力じゃないですか。こうした経緯があったことは認めますか。

政府参考人(滝澤秀次郎君)

 担当のやり取りについては、私、承知しておりません。今先生の発言で初めて知りました。そういう言い方をしたとすれば不適切だったと思います。

 それから、先ほど申し上げたように、専門家の検討会という場もございますので、この御提案について複数の専門家に聞いたというふうに申し上げましたが、こういう問題提起がございますので、更にそこは検討会の場でも検討していただこうと思っております。

小池晃君

 何でも専門家専門家って言うけれども、尼崎市は健康影響調査やり、更にシミュレーションまでやろうじゃないかと、一千四百万円の予算付けてやろうとしたら、これを環境省が、これではかえって行政苦しい立場に立つ場合があるんだと、こう言われたら、弱い立場の市はできませんよ。

 私、原因解明だとか言いながら、環境省は結局この石綿による健康被害者の救済のために本気で原因究明する気があるのかというふうに言われても仕方ない経過じゃないですか。大臣、こういう経過があったことをどう考えますか。

国務大臣(小池百合子君)

 担当者がそう言ったかどうかの事実は私は把握をいたしておりません。いずれにいたしましても、原因究明ということでこれからのモニタリングも含めてしっかりと対応していくことについては変わりはございません。

小池晃君

 原因究明して救済するというのであれば、大臣、じゃなぜ、この三月の末に調査結果が出ると言っているわけですね、尼崎市の健康影響調査は。尼崎市の市長も、去年の十二月二十六日に要望書を出していて、人口動態統計の死亡小票などによる健康影響実態調査への着手が遅れたことから実態の解明が不十分なままでの立法措置となっている、多数の環境暴露による健康被害者が生じていることが推測される本市にとりまして不十分な内容になっているというふうに市長さん言っているんですよ。

 だとすれば、これせっかく今、尼崎、健康影響調査やっているわけですから、少なくともこの三月末の年度末には調査結果が出ると先ほど答弁ありました。これを踏まえて、やはり実態を反映した法案を提案すべきだったんじゃないですか。──大臣に聞いているんです。

国務大臣(小池百合子君)

 まずその分析の調査を待ちたいと思います。

小池晃君

 だから順序が逆だと言っているんですよ、こういう原因究明の調査が今やられているんだから。それを待たずにやれば、補償じゃなくて救済だという中途半端なものになる。きっちり因果関係を究明して、それで法案作って提出すべきじゃないかと、順番が違うんじゃないかと私申し上げている。

国務大臣(小池百合子君)

 適切な段階を踏んでここまで持ってきているという、このように思っております。

 そもそも救済というのは、やはり今回の石綿によります中皮腫などの患者さんたちのその原因ということがなかなか特定ができないということでございまして今回の救済法に至っていると。なおかつ発症までに四十年、暴露から発症までに四十年、さらにその発症からは非常に厳しい一、二年という予後の情報、平均的にですね、そういったことが伝えられているわけでございますので、ここで救済策をスピーディーに設けていくというのは、これは必要なことだと考えております。

小池晃君

 それは私は違うと思いますね。やはり一般環境による中皮腫の発症というのは、例えば奈良県立医大の車谷教授の疫学調査でも、このクボタ周辺住民の中皮腫による死亡率というのは、全国平均と比べて工場の半径五百メートル以内では九・五倍ですよ。五百メートルから一キロ以内では四・七倍ですよ。これ、明らかに異常な高率になっているわけです。だとすれば、このことをしっかり今、更に裏付けをする調査を尼崎市やっているわけですから、スピードスピードと言うけれども、別に何年先という話じゃないんですよ。年度末には結果が出るというんですよ。だったら、この結果踏まえて、より因果関係明確になる中で原因企業の責任追及をはっきりさせた法案にして提出するというのが筋ではないかと私申し上げているんですよ。どうですか。スピードという言葉では私はこれは説明になってないと思います。

国務大臣(小池百合子君)

 この石綿の被害ということ、そして中皮腫などの被害者の方々が発生しているのは尼崎のみならず泉州地域など各地域にわたっているわけでございます。そういったところから全体を考えますと、特定の原因者というのを追及する、そこを突き止めるというのはそう容易ではないということから、今回、この新法の設計をさせていただいたところでございます。

小池晃君

 私、今の議論をやっぱりやってて、どうも因果関係明らかになってからでは提案されている法案の不十分さが一層明らかになってしまうから、これは健康調査結果が出る前に急いでこれ提案したというふうにしか思えないんですよ。

 やはり、その環境暴露による健康被害者が労災と著しい格差がある。あるいは公健法と比べても著しい格差がある。こういう問題、いろんな方から指摘をされているわけですが、私は、この調査結果でクボタのアスベスト飛散による健康被害が明らかになるわけですから、尼崎市もこの結果を待ってほしいというふうに言ってるんですよ。だとすれば、しっかりこれを踏まえて、環境暴露による被害者に対して労災補償並みの補償を制度化するというのが私は行政として当然のあるべき態度であるということを申し上げたいと思います。

 さらに、その中身であります。被害実態に基づいた救済対策になっているか。

 今日、資料をお配りしております。先ほど他の議員からも指摘があったような問題をちょっと私取り上げたいんですが、健康被害者が救済法案では中皮腫、肺がんに限られているわけですが、この尼崎市のアスベスト健診の実態調査を見ますと、要精検者二百七名のうち、びまん性胸膜肥厚が百六名、胸水が十一名、プラークが四十一名、そのほか中皮腫一名、肺がん一名という実態なんですね。こうした実態がある。こうした中で、すき間のない救済と言いながら、お金の集め方だけは中小企業から地方団体から全部すき間なく集めながら、補償は全然すき間だらけじゃないですか。こういう人たちに対しては何の補償もない。特に、この調査では居住歴しかない要精密検査者七十三名のうち、胸膜肥厚三十六名、胸水二名、プラーク十二名、この被害者は全く救済されないということになる。

 私は、職業以外の環境暴露の被害実態を把握して、きちっとこの労災と同じようにびまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水、石綿肺、これをきちっと救済していく必要、指定疾病にしていく必要当然あると思いますが、この点いかがですか。

政府参考人(滝澤秀次郎君)

 指定疾病に関する考え方は昨日の検討会で一定のまとめをしていただいたところでありまして、おっしゃるその他の関連疾患については一般環境経由のものが報告されていないという整理を今のところされているわけでございます。

 御指摘の尼崎市の健診の結果でございますが、私どもも市から情報もいただいておりますし、内容も確認いたしました。一次スクリーニングを経て、あなたはもうちょっと詳しく調べた方がいいですよという所見として胸膜肥厚とか胸水とかプラークとかの方々が、いろんなエピソードのグループ別でありますけれども、あるというふうに承知しておりまして、そうしたその胸膜肥厚とか胸水とかといったものがどういうふうな、何といいましょうか、疾病なのか、鑑別診断も含めて今後、さらに、正に要精検ですよという段階だと聞いておりますので、それが結果的にどういう病気なのか、結核なのか肺がんなのかというようなことも含めて、これは一概にこの所見だけでは、今言われているその他疾患の方々ですよという結論は今の時点では出せないと思います。

小池晃君

 いや、常識的に考えて、健診やってこれだけ異常所見が出ることないですよ。胸膜肥厚がこれだけ出る、胸水が出る。それは中には精査すれば恐らく石綿由来でないものもあるかもしれません。しかし、私、実際の健診に当たった方にも聞きましたけれども、きちっと問診取ってやってるんだと。だから、基本的にはアスベスト関連ということでこういう診断結果が出ていると。

 だから、私、そういうふうに言うのであれば、こういう結果を持っていながらですよ、報告受けていると言いましたね、この結果を知りながら、昨日のこの検討会、何ですか、じゃ。一般環境における発症例の報告はない。これだけその可能性がある資料が提示をされていながら、これはないという結論を昨日の段階で出してしまうというのは余りにも拙速なやり方じゃありませんか。

政府参考人(滝澤秀次郎君)

 お示しいただいたデータではないんですが、個別に三例、四例、石綿肺が疑われる、あるいは胸水、良性胸水と思われる症例について、いろいろ検討会でも個別には話題になりました。その都度医療機関にも確認して、石綿由来のものではないという確認もいたしております。

 先生方が昨日いろいろ結論をまとめていただいたものは、報告あるいは文献として、国際的なことも含めて、当面の取りまとめをあのようにしていただいたということですので、先ほど来申し上げてますように、いろいろ情報収集、引き続き努め、さらに中環審での御審議も踏まえて決めていきたいと考えております。

小池晃君

 全然説明になってないですよ。こういう結果が出てるんでしょう、現実問題としてこれだけの数字が。

 じゃ、検討会の皆さんはこの数字どう受け止めたんですか。こういう数字、これがすべて、じゃこの一般暴露によるアスベスト由来のものではないという結論を出したんですか。どうなんですか。

政府参考人(滝澤秀次郎君)

 そこまでの議論はしておりません。

小池晃君

 無責任ですよ、余りに。こんな検討で、昨日の段階で一般環境での発症例の報告はないと。余りにもずさん、いい加減なこれは検討じゃないですか。大臣、どうですか。こういう、これだけの数字が一方で示されていながら、一般環境で石綿肺、良性胸水、貯留、びまん性胸膜肥厚ないと言い切っていいんですか。

国務大臣(小池百合子君)

 昨日の専門家の先生方によります結論として、その取りまとめをお願いしたところでございます。その取りまとめが行われたところでございます。訂正いたします。

小池晃君

 こういう取りまとめでは、私は被害者の皆さん絶対納得しないと思う。私、当然これを、この実態を見れば、必ずこの中には一般環境による発症があることは間違いないと思いますし、例えば、この尼崎の調査では石綿肺はありませんが、大阪泉南地方の健康調査の結果を見ますと、石綿肺の方も多数出ているという実態を私聞いております。大阪泉南石綿健診では、石綿肺四名、石綿肺の疑い三名いると。

 その中のFさんという方、紹介しますと、この人は石綿肺というふうに診断されているんですが、両親が一九五五年ごろから石綿工場で勤務してた。工場に隣接する社宅で暮らしていたと。工場の外では石綿の粉が舞っていて、日光が当たるときらきらきらきら光っていた。仕事を終えて帰宅した両親が石綿まみれの作業衣着替えると、もうもうとその石綿の白い粉が室内に充満したと。家族、知らず知らずのうちに吸引してたんだと。このFさんのお父さんは肺がんで九五年に亡くなっている。お母さんは続発性の気管支炎で治療中である。Fさんは、石綿肺胸膜肥厚斑と診断されているんですが、看護師さんをやられていると。夜勤明けなどせきがひどくなり、しんどい思いをすると言っておられるんですね。どんなこれからこの法案で補償が受けられるのか心配だというふうに私聞きました。

 この、こういう被害者が多数今現に存在している、それにもかかわらず一般環境における発症例の報告がないというふうに断言をして、当然救済の対象とすべきところから最初から除外してしまうというのは、私はどう考えたって被害者の皆さん納得しないと思いますよ。大臣、このような形で指定疾病に入れないということで被害者の方納得されると思いますか。

国務大臣(小池百合子君)

 専門家の先生方の御意見を取りまとめさせていただき、また中央環境審議会において御議論いただくと、このような経過をたどりながらできるだけ早く救済措置をとっていきたいと、このように考えております。

小池晃君

 専門家専門家とおっしゃいますけども、じゃ環境省は、この尼崎の検査結果、調査結果は承知してたというんですが、これは検討会に提出したんですね。

政府参考人(滝澤秀次郎君)

 先ほど二月九日に予定されておりますということを関連で申し上げましたが、この二月九日の検討会にこの健診の方のデータが議題として上るかどうかというのはまだ決まっておりません。先ほど申し上げた死亡者の調査の方は進んできておりますので、ちょっとそういう意味で、検討会に、この二月九日の検討会にこの案件が精査、かかわるかということは私レベルでもまだきちっと連絡を受けておりません。

小池晃君

 ということは、この結果は検討会の検討対象になってないということですよ、現時点では。そういう段階でありながら、一般環境における発症例の報告がないというふうに結論付けてしまったことは、私は本当にこの検討会の中身はずさん過ぎるというふうに思います。これに基づいて指定疾病を決めてしまうようなことは絶対にあってはならないということを求めたいというふうに思いますが。

 さらに、それなら加えて聞きたいんですが、中皮腫の発症に至ってないけれども、経過観察必要になった健康被害者は一杯いるわけです。尼崎市では現在六十名程度いる。こういう人たちに対して必要な健診が無料で受けられるようにする、安心して健康管理できるようにする。その点では労災の健康管理手帳と同じような措置を当然講じるべきだと思いますが、その点はどうなんですか。

政府参考人(滝澤秀次郎君)

 いろんな検討会がありまして恐縮ですが、この関係では、厚生労働省にこの専門家会議がございまして、近々最終的なまとめが行われると。つまり、健康管理が必要な人に対してどのようにしていくべきかという考えがまとまるというふうに聞いております。私どももそこの検討会はオブザーバーとして毎回出席させていただいております。

 そうした検討を踏まえまして、厚生労働省と環境省がどのような形でこういうリスクの高い方あるいは所見のある方を健康管理的にフォローアップしていくかという方法について、更に詳細に検討を進めたいと考えております。

小池晃君

 更に聞きますが、今、尼崎市ではアスベスト健康診断、自己負担六百三十円でやっているんです。こうした健康診断やった場合とか、あるいは経過観察者に必要な健診、これを尼崎市が無料で受けられるようにというようなことを実施した場合は、これはやはり技術的にも財政的にも支援をする必要があると思いますが、その点はどうですか。

政府参考人(滝澤秀次郎君)

 既に今年度、市が実施している調査については、わずかではありますけれども、私どもの方の予算も御支援させていただいております。

 それから、ちょっと話がずれるかもしれませんが、一次スクリーニング的なことをどうするのかということと関連してお答えしますと、一般の住民健診でありますとか、厚労省所管でありますが肺がん検診でありますとか、そういう場を通じていろいろ適切な問診を追加するとか、そういうことで広く網を掛けてリスクの高い人を絞り込んでいく。そのリスクの高い人を何らかの形でフォローアップシステムを構築していくと、こんなことも考えているところでございます。

小池晃君

 今まで議論してきたように、私は、そのアスベスト被害については、工場の中と外で各救済に、救済のもちろん水準にしても対象疾患にしても格差を付けるべきでないというふうに思います。

 これは、今年の三月末までに尼崎市の健康影響実態調査の結果が出るということですから、やはりその調査結果を踏まえて、法の見直しはこれ五年後と言わずに、新しい知見が出てくれば、本当にすき間のない対象を補償とするために、やはりその救済法という枠組みからやはり補償法という枠組みへ発展させていくことも含めて、これは当然見直しをしていく必要があると思いますが、その点はいかがですか。

政府参考人(寺田達志君)

 お答え申し上げます。

 環境省としては、当然のことでございますけれども、石綿による健康被害の実態について十分調査、把握しまして、因果関係の解明に努めてまいりたいというふうに考えております。

 ただ、ただいまのお尋ねでございますけれども、科学的知見の進展、特に因果関係の解明に対応して補償制度への移行というのが検討課題となるのかという御質問であると思いますけれども、そうした将来得られる知見の内容を今現在予見できないということでございますので、具体的な制度見直しの方向について確たることをお答えすることは困難でございます。

小池晃君

 まあ、予見できないけれども、そういう可能性を否定はされなかったというふうに理解はしたいというふうに思います。

 最後に、ちょっと小池大臣に私どうしても聞きたいことがある。昨年十一月二十六日に、大臣は尼崎で中皮腫の患者、家族と懇談されました。懇談後のその大臣の発言、これは新聞でも報道されましたが、がけから飛び降りるという気持ちでやるということが報道もされた。この問題、衆議院でも問われて、大臣はその言葉使ってないというふうにお答えになって、私は、そういうふうに言われたんで、はいと答えただけだというような趣旨でお答えになったかと思いますが、実際にその言葉聞いた方に私はお聞きしたら、全く違うんです。

 その懇談に参加された古川和子さん、今日もお見えになっています。土井雅子さんからも私、直接話聞いたんです。大臣は、記者会見終わったらば、私たちのところに歩み寄ってきて、古川さん、飛び降りますよ、頑張りますよ、土井さん、またお店に行きますからね、土井さんというのはその大臣の元選挙区でお好み焼き屋さんやっていて、大臣も行かれたことが……

国務大臣(小池百合子君)

 たこ焼き屋さん。

小池晃君

 たこ焼き屋さん、ということだそうですけれども。でも、そういうふうに言ったと、力強く言われたんだと、私、直接お聞きしたんですよ。

 で、今回の法案の、そのもちろん不十分さにも被害者の皆さんは怒っていらっしゃるんだけれども、やっぱり、こういう発言しておきながら、実際出てきた法案は違うじゃないかということに、本当に怒りをかき立てられているんですよ。

 私、政治家の言葉というのは重いと思うんですよ。大臣のこの言葉によって期待をし、実際出てきた法案見て裏切られたというふうに考えていらっしゃる方がたくさん現地にいらっしゃる。私、その責任をどう考えるのかということを大臣に問いたいと思います。

国務大臣(小池百合子君)

 私も言葉を大変大切にしていると自覚、自負しております。

 古川さんががけから飛び降りるつもりでというふうに御発言をなさいましたので、私はその言葉は使いませんでしたけれども、しかし環境大臣である限りは、この法、新法を構築していくというのはこれは当然のことだと、このように思っているわけでございます。

 そして、今回、被害者の皆様方は、基本的に労災、特に尼崎の場合は工場と民家が本当に隣接している。例えば、ほかの地域、例えば奈良の方に参りますと、かつては田んぼの真ん中に工場があったなどという形で、全国、状況が違うところがございます。

 ただ、いずれにしても、尼崎で住んでおられる方々はクボタにお勤めになっていた方々と、それからその近隣に住んでおられる方々と、その非常に近いところで住んでおられるというので、今回いろんなお気持ちがあるということは重々理解を私いたしているつもりでございます。

 そういった中で、この中皮腫そして石綿によります病を被っておられる方々、非常に三十年、四十年という長い潜伏期間があって、そして、ましてやそれがなかなかその間は発見できない、さらに発症されてからは非常に短い時間でお亡くなりになるケースが多いというような特殊性にかんがみますと、今回、この二法を提出させていただいておりますが、特に救済法ということはこの形で制度設計の中で進めさせていただくのが適当と、このように考えているところでございます。

 いずれにせよ、環境大臣といたしまして、これまでこういった新法がなかった、法律がなかったということから、制度のすき間の中に入ってしまわれる方々を一日でも早く救済してまいりたいと、どこから飛び降りようが、なすべきことはなしていきたいと、このように思っているところでございます。

 今申し上げましたのは、国会のこの答弁で答えているわけでございますから、確かに私が言ったということは記録に残るかと、このように思っております。

 また、被害者の方々の心境につきましては、これは人間である限り、その御苦労であるとか、それから中には、かつて尼崎信用金庫にお勤めになって、私のおりました母校に何度か通ったこともあるんですよといってお答えになっていた男性もおられました。何度も何度も入退院を繰り返し、そして手術を繰り返しというその皆様方を見ていますと、これについて何にも感じないという政治家の人は一人もいないんじゃないかと思っております。

 一日も早く、そういった方々の救済、さらにはこれからの新しい被害者が出ないために何を講ずべきかということを判断して、この新法によって一日も早く救済の措置がとられていくことを私自身望んでおりますし、また先ほど来申し上げておりますように、附則の項目の中に五年以内の見直しということも設けてございます。これは、後から修正といったような形でなされるものではなく、新しい法律が運用されるその過程におきまして、様々な措置を、必要な措置をとるべきものについては見直しは行うということでございます。

 いずれにいたしましても、今回の法律がより的確に、そしてまた迅速に被害者の皆様方の生活に対しまして支えになるということを期待をいたしているところでございます。

小池晃君

 長々おっしゃいましたけれども、出てきている法案は今のお言葉とは全く違う中身になっているということなんですよ。だから皆さん怒っているんですよ。

 それから、大臣はごまかしましたけれども、やはり、がけから飛び降りるというふうにはっきりおっしゃったことの責任は私重大だということを改めて申し上げたいと思います。

 そして、もう一言付け加えますと、長い経過だから長い経過だからというふうにおっしゃる、四十年。だからこそ、周辺疾患まで含めてきちっと救済の枠組みにのせて管理をして、その中から中皮腫の人、がんの人が出ないかどうかということをしっかりフォローしていく体制をつくる、今回法律を作るスタート地点が大事なんですよ。そのときにそれを除いて決まったらば、正に二十年、三十年、四十年たったときに、そういう周辺に取り残された人から中皮腫やがんの人出てくるじゃないか。正に行政の不作為、立法の不作為が改めて問われるような事態になる私は法案だというふうに思いますので、断じて今の大臣の答弁では納得できないというふうに申し上げて、時間なので終わります。

反対討論

小池晃君

 私は、日本共産党を代表して、石綿による健康被害の救済に関する法律案に反対する討論を行います。

 この救済法案は、これまで石綿による健康被害でありながら一切救済されなかった周辺住民等の被害者遺族と、労災補償を受けずに死亡した労働者の遺族、そして今後健康被害が発生する周辺住民等に対して初めて救済対策が制度化されることになるもので、長年にわたる被害住民の運動を一定反映したものです。

 しかし、以下の理由から賛成できません。

 第一に、この救済法案は、国の行政責任と関連企業の加害責任をあいまいにした救済制度となっていることです。

 七〇年代初めから既に石綿使用の有害性が医学的に指摘され、国際的にも明らかになっていたにもかかわらず、七五年に吹き付け作業の原則禁止の措置をとっただけで、発がん性が特に強いとされる茶石綿、青石綿の製造も九五年まで放置してきました。主な石綿製品の使用の原則禁止措置がとられたのは一昨年のことでした。

 こうした安全対策も不十分なまま、大量の石綿の製造と使用を続けてきた企業と、危険性を認識しながら長期にわたって使用を容認してきた政府の責任は重大です。今、行政の不作為はないなどとして、国の責任と加害企業の責任をあいまいにしたままの救済を容認するわけにはいきません。

 第二に、すべての健康被害者、被害者遺族が生活し、通院、治療を受ける上で極めて不十分な救済制度となっていることです。

 対象疾病を中皮腫、肺がんに限定せず、労災で認定されている石綿肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水を追加し、健康被害者をより広く救済すべきです。また、給付内容も、労災や公害健康被害補償の水準に引き上げ、健康被害者が生活を維持できる上で十分な補償とすべきです。こうした極めて不十分な救済制度を認めるわけにはいきません。

 なお、民主党提出の修正案は、療養手当の加算、就学援護措置など、極めて不十分な本法案の救済内容を一定程度改善するものであり、賛成とします。

 以上で討論を終わります。

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