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164通常国会 参議院厚生労働委員会(日本・カナダ社会保障協定特例法質疑・採決)

  • 無年金障害者への特別給付/支給4分の1のみ/小池氏質問に(関連記事
2006年4月11日(火)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 日本・カナダ社会保障協定の特例法は年金の二重払いなどを防ぐ当然の措置であり、賛成をいたします。

 今回の協定は年金のみの調整になっておりまして、医療などほかの社会保障制度は対象としておりません。年金局長にお伺いしたいんですが、ベルギー、フランス、アメリカとの協定では医療や労働保険も対象にしていたんですが、今回、年金だけになった経過を御説明いただきたいと思う。

政府参考人(渡邉芳樹君)

 御指摘のとおり、この日本国とカナダとの間の協定につきましては、カナダにおきます医療保険制度及び労災保険制度については州が権限を有しており、連邦政府がこれらの制度を含めた社会保障協定を締結することが不可能であったという事情のために対象とされておりません。

 また、雇用保険制度につきましては、カナダがこれまでたくさんの国々と社会保障協定を締結される中でカナダの雇用保険制度を含めてこなかったという理由で、カナダ側の主張としては、同様に日本国との間でも雇用保険制度は外してほしいと、こういう強い御要請がございました。これにつきましては、今回含める可能性はないのかということで種々調整の場面もあったわけでございますが、最終的には、申し上げましたように、カナダ側の立場、主張を受け入れ、今回の協定の対象としなかったという経緯でございます。

小池晃君

 いろいろな事情はあったんでしょうが、医療が連邦政府の所管でないということで対象となっていない、まあそういう国はほかにもあると思うんで、やはりこれから各国と結んでいく際にはどういう手段が必要なのか検討する必要があるというふうに思っております。

 その点、やっぱり医療の問題で、これから出張、海外派遣というだけではなくて、リタイアした後に海外で長期に暮らされるというような方が増えてきております。そういう方にとって、やはり年金だけではなくて、医療保険の調整というのも非常に大事になってきているんではないかと。

 今日ちょっと御紹介したい例はドイツなんですが、これ我が国とは社会保障協定結んだ国なんですが、医療保険が協定の対象となっていないということがあって、医療保険に入れない経済的な不利益だけではなくて、市民的権利まで制限されたという実例であります。

 今日は新聞記事もお配りしましたが、これ千葉県の習志野市に住んでいた八十七歳の女性です。夫が亡くなった悲しみをいやすために、二〇〇二年九月にドイツ在住の息子さんのところに半年行くという予定で当初訪問した。これ翌年の三月におふろ場で転倒して骨折して、帰国できなくなったそうなんですね。国保に加入されていたので海外療養費制度で治療を受けておられたけれども、高齢でちょっと心臓の機能も落ちたということで飛行機に乗ってはいけないということで帰国ができなかった。

 滞在期間一年超えたために滞在許可申請をドイツ政府に対して行ったそうなんですが、ドイツというのは、何か健康保険に加入していないと正規の手続経て入国した人であっても不法滞在者と同じ扱いを受ける、そういうことになっているそうであります。

 一方、習志野市の国保課、こちらはどう対応したかというと、二〇〇四年の七月に国保の保険の納付書が返送されてきたと。それまで保険料ちゃんと払っていたのに、返送されてきたということを理由にして住所を有しないというふうに判断をしたと。八月に被保険者資格を失効させたわけであります。

 しかし、一方で、住民基本台帳には載せたままなんですね。選挙権もある。選挙はがき来ているんです。介護保険の被保険者資格は継続していて、介護保険料を払い続けていたというんですね、その後も。

 これ息子さんは驚いて、習志野市からそういう連絡があったので、国際電話を掛け、一時帰国までして事情を説明したと。どうしても帰れないんだと、治療が済んだらすぐに帰国するから国保の継続をしてくれというふうに頼んだけれども、聞き入れられなかったという話なんです。

 国保資格を喪失したことによって、先ほど言ったように、この女性は不法滞在者と同じ扱いを受けて、人口千二百人の村に住んでいたそうなんですが、そこから一歩も出られないと。非常に不自由な生活を強いられ、病気も悪化をして、昨年十月にドイツで亡くなられたと。こういう実例なんです。

 厚生労働省にお聞きをしたいんですが、これは元々六か月以内に帰国する予定でドイツに出掛けて、国内の住居も転出届も出してないという人で、これが病気や事故によるけがで一年過ぎてしまったと、こういうケースなんですが、こういうケースで国保の資格まで奪ってしまうということに問題はないんでしょうか。

政府参考人(水田邦雄君)

 国民健康保険の資格についてのお尋ねでございますけれども、通常でございますと、一年を超えて海外に滞在される場合には、国内に住所を有しなくなるということで、国保の加入者とはしないと、このような取扱いをしているところでございます。

 御指摘の事例につきましては、個別の事例でございますし、事実関係を詳細に把握はしてございませんけれども、国保における住所の取扱い、それから住民基本台帳における住所の取扱い、この食い違いがあったという御指摘でございますけれども、基本的には国保における住所の認定、これは実態に即して判断されるべきものでございますけれども、その点は住民基本台帳も同様でございますので、基本的にはこの問題につきましては、国保と住民基本台帳の住所の認定との間にそごが生じないように、市町村において関係部署間が相互に連携を取りながら住所の認定を行っていただくべきものであろうと思いますし、そういったことがなされていれば今回のような混乱は生じなかったんではないだろうかと考えております。

小池晃君

 正にそごが生じているわけですね、このケース。ちょっと少し詳しく聞いていきたいんですが、総務省おいでいただいていると思うんですが、その自治体の関係部局が、例えばこの場合は国保課なんですが、ある関係部局が住所を有しないというふうに判断した、そういうふうになったとすれば、これはまず住民基本台帳の担当部局と相談をし、協議をして、住基台帳法に定める手続を経て住民基本台帳から削除をして、その上でその国保の資格喪失などの手続を行っていくというのが住基法が予定している手続ではないかと思うんですが、その点いかがでしょうか。

政府参考人(高部正男君)

 お答えを申し上げます。

 住民基本台帳は、住民に関する各種行政事務処理の基礎となるものでございますので、各市区町村におきましては、住民に関する正確な記録が行われますように、関係組織間の連絡を密にする必要があろうというふうに認識しております。

 具体的にこの連携を密にどういうふうにしていくのかということについては、各市町村でいろんなやり方をしておられることと思いますけれども、いずれにしても、十分な連絡を密にして対処していただくことが必要であるんじゃないかというふうに思っておるところでございます。

小池晃君

 国保制度と住基制度で別の住所認定が行われるということは、これは法の四条によって禁止されていることということでよろしいんですね。

政府参考人(高部正男君)

 先ほど申し上げましたように、住民基本台帳は市区町村におきまして選挙人名簿の登録でございますとかその他の住民に関する各種行政事務の処理の基礎となるものでございます。このために、住民基本台帳法第四条におきまして、住民の住所に関する規定について関係法令ごとに個々ばらばらに住所を認定してはならないというような旨が定められておるというふうに認識しているところでございます。

小池晃君

 正におっしゃるとおり、関係法令というのは公選法、国保法、地方税法等々で、これ統一してやらないと住民に関する記録がめちゃくちゃになってしまうわけですから、前提としてこれは統一的に行うということだと思うんです。

 厚労省にお聞きしたいんですが、これ国保法には、被保険者資格を有する国保法五条に該当するか否か、すなわち自治体内に住所を有するか否かということについては認定の手続を置いてませんね。これは正にその住民か否かの認定というのは一義的に地方自治法の定めによることになっていて、基本的には、具体的には住基台帳法の手続によるからということでよろしいですね。

政府参考人(水田邦雄君)

 ただいま委員御指摘のとおり、通常は国民と住民基本台帳の住所の認定というものは同一でございます、同一であるべきものでございます。したがいまして、繰り返しになりますけれども、本件の場合にはやはりその市町村、同一市町村の判断でございます。したがいまして、そこでの判断にそごがあったということは、これは避けるべき事柄であったと、このように考えてございます。

小池晃君

 いや、そごが起きないように、まあ少なくとも住基と手続は連携して行うということがこれは法令上予定されていることだという解釈を厚労省としても持っているということでよろしいですね。

政府参考人(水田邦雄君)

 そのように連携して処理されるべきものだと思ってございます。

小池晃君

 そうすると、国保法は住基制度の認定と独立して住所の認定を行うものではないと、やっぱり連携してやらなきゃいけないということだとすると、習志野市はこの女性を住基台帳に記載をして、選挙権、介護保険の被保険者資格を有し、保険料まで徴収していた。で、一方で国保の被保険者資格を剥奪したというのは、喪失させたということは、これは違法ということになるんじゃないですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 御指摘の事例につきましては、事実関係、詳細に個別事例でもございますので把握してございませんけれども、国民健康保険における住所の認定に即しましては、これは国保法上の問題としてまず実態に即して判断する必要があるということでございまして、国保の住所と住民基本台帳の住所が異なることが直ちに違法であると、このようには考えてございません。

 ただ、先ほどの住民基本台帳法の精神からいいまして、これはやはり連携を取ってそごがないようにすべきであると、このように判断しているところでございます。

小池晃君

 連携、全く取れてないじゃないですか、このケースで言えば。そごが起こっているわけじゃないですか。で、深刻な被害が出ているわけじゃないですか。これを正しいと、これは適正な手続だったというふうにおっしゃるんですか。これは私、どう考えてもおかしいと思いますよ。

 しかも、もう一つの問題というのは、これは住所を有するか否かについて一年ということを習志野市の担当者はこの御家族に言って、一年というのは法律で決まっていて例外がないんだと。

 これは総務省にお聞きしますが、住所を有するという認定ですね、手続上、これはどういう要素を考慮するのか。例えば病気やけがなどの事情であるとか、あるいは居住したいという意思など主観的要素、主観的事情、こういったものは考慮事項になるのかならないのか。それから、一年といいますけれども、これは法令上の規定としてあるのかどうか、お聞きをします。

政府参考人(高部正男君)

 住所の認定は市町村長がするわけでございますが、この認定に当たりましては、客観的居住の事実を基礎といたしまして、これに当該居住者の主観的居住意思を総合して決定するものと、かように考えているところでございます。

 個々のケースにおきます住所の認定は市町村長が行うわけでございますが、私どもの方で昭和四十六年に一定の通知を出してございまして、今先生御指摘、一年というのはそのやり取りの中に出てきているものかというふうに思っておるところでございますが、この通知の中で一年の期間というものについて、法令上の明文の根拠はないというふうに考えておりまして、市町村長が判断する上での一つの考え方をお示しさせていただいたものだというふうに認識しているところでございます。

小池晃君

 今お話あったように、いろんな要素を考慮して判断しなきゃいけないにもかかわらず、厚生労働省にお聞きしたいのは、習志野市は住所を有するか否かについて、一年間不在であると、期間だけを考慮して、考慮要素にして判断したと。これは問題じゃないですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 その一年という期間についてでございますけれども、正に私どもは、その住民基本台帳法上の住所の考え方、そこで今示されている、市町村長の判断として示されている事柄、これを踏まえて国保法においても同様の解釈を行っているところでございます。

小池晃君

 しかし、全くこれ法令上のその根拠はない、一年というのはね、ものなわけですね。

 で、ちょっと大臣、今までいろいろと手続の問題について取り上げてまいりましたけれども、これ、そもそも海外療養費制度というのは海外で病気にかかった人を救済するための制度なんですが、それが病気になって帰国できなくなるとこれ適用されなくなるというのは、私は制度の抱えている矛盾点ではないかというふうに思っております。

 こういう制度の在り方について改善の必要性があるのではないかというふうに思いますが、御意見をお聞きしたいのと、それからもう一つ、やはり広い意味でこれから団塊の世代の退職ということが起こってきて、国保の加入者が外国に長期滞在をすると。そうすると、高齢ですから、病気が悪化したり、あるいは病気になったりということで、こんなふうに帰ってこれないというようなケースも出てくると思うんですね。習志野市のようなケースも再度起こり得るのではないかと。これは、邦人保護という観点からもこれは看過できないのではないかというふうに思っておりまして、やはり今後の社会保障制度の在り方の検討あるいは国際的な協定の検討の際には、こういう事態が起こらないような配慮、検討ということをしていく必要があるのではないかというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょう。

国務大臣(川崎二郎君)

 今御議論いただきましたけど、まず原則は、国保の加入者が一年以内の短期の海外滞在や旅行等で外国で病気になった場合に給付を行うという原則はございます。

 一方で、今のように例外的なケース、一年のつもりで行ったけども、そこで病気をして一年以上のその地域での滞在になってしまった、かつ病気療養の必要があると、こういうケースだと思います。一年以内の短期滞在中に病気になり、帰国が一時的に困難となった場合に、我が国の医療保険制度に即して合理的な範囲で海外療養費の支給が行われるべきものと考えております。

小池晃君

 そんなにたくさん起こる事態ではないかもしれませんが、やはりこれからの国際化ということに際して検討しておくべき課題だというふうに申し上げたいと思います。

 それから、無年金障害者の問題をちょっと聞きたいんですが、二〇〇五年四月から始まって一年たちます。現在のその給付金の支給決定の総数、内訳、学生、主婦別に示していただきたい。それから、不支給決定数も教えてください。

政府参考人(青柳親房君)

 特別障害給付金のお尋ねについてお答え申し上げます。

 直近の平成十七年の十二月末現在までの数字でございますが、まず特別障害給付金の受給者の数は五千六百二十人となっております。そのうち、学生の要件に係る方が二千八百二十二人、配偶者の要件に係る方が二千七百九十八人となっております。また、不支給の決定件数は五百八十一件でございます。

小池晃君

 この数をお聞きすると、学生と主婦が大体一対一ぐらいなんですが、事前の話では主婦の方が多かったはずで、ちょっとやはり主婦のところで支給決定が遅れているのかなということと、何よりも全体が五千六百件と。

 ちょっとお聞きしたいんですが、これ、当初対象者数は二万四千人というお話だったわけです。厚労省として今支給決定が四分の一にとどまっている原因についてどのようにお考えですか。

政府参考人(渡邉芳樹君)

 この制度を導入するに際しまして、国会での御議論の中でも、私ども、対象受給者数につきましては、二〇〇二年七月の無年金障害者に対するいわゆる坂口試案というものの中で、平成八年の身体障害者実態調査を基に、調査対象地区を決めて年金を受給していない障害者の方がいる場合の事例を調べまして、それをまた全体に置き直して推計した数字として今御指摘のありましたような学生が約四千人、専業主婦の場合が約二万人という見積りをさせていただき、それを基に、この二万四千人をベースに制度施行のための必要な予算を確保してまいったわけでございます。

 まだ私ども、約六千件ということでございますが、本来受給できるのに申請していなかったり等々の事情にとどまっておられる方がいらっしゃらないかと、こういう姿勢で臨むべきであろうと思っております。可能な限り、引き続き実態を把握する、障害関係部局との連携を図る、関係者の方々に周知徹底に努めると、こういう基本動作で対応してまいりたいと考えております。

小池晃君

 これは手続の簡素化、柔軟化などはしていただいたわけですが、これ、昨年九月の市区町村、県別の照会件数見ますと、かなりアンバランスがあります。例えば、大阪は一万三百八十四件に対して東京が二千四百四十三件あると。いろいろ事情を聴くと、大阪は障害者の皆さんに地下鉄の乗車パスを送るんだそうですね。そのときに、そこに一緒に特別給付金のお知らせをセットで送っていると、これが非常に効果的だということをお聞きをしました。周知の仕方をもっともっとやっぱり工夫する必要があるというふうに思うんです。

 それから、今のお話の中で、平成八年の実態調査から二万四千人というふうに推計をしたということなんですが、既にこれ十年たちました。今年度、この身体、知的、精神も含めた実態調査を行うというふうに聞いておりますが、この調査は学生、主婦だけではなくて、無年金障害者の人数、生活実態、こういう全体を把握するための調査にする必要があると思うんですが、この点での御見解をお伺いします。

政府参考人(中村秀一君)

 お答え申し上げます。

 障害者の所得などの生活状況につきましては、五年に一度、全国で障害の種類や程度、福祉サービスの利用状況等々を把握する調査を実施しております。御指摘ございましたように、平成十八年度において調査を実施することといたしておりまして、障害の種類、程度、原因等、日常生活、就業の状況、公的年金の受給状況等の調査を行うこととしており、御指摘の無年金障害者の方などの実態も把握できるものと考えております。

小池晃君

 せっかく議員立法でつくった制度ですので、きちっと生かされるように、周知されるように引き続き御努力をお願いしたいというふうに思います。

 終わります。

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