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164通常国会 参議院厚生労働委員会(男女雇用機会均等法改正案質疑)

  • 均等法「改正」案/転勤条件に昇進差別/政府 対象として検討せず(関連記事
2006年4月25日(火)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 法案そのものに入る前に一問、三月三十日に取り上げたファミリー・フレンドリー企業表彰制度の問題なんです。

 これ、前回も問題にしましたけれども、企業の表彰対象として男性の育児休業の取得とか、あるいは短時間勤務制度の活用などについて、これ表彰を受けているんだけれども、実績がどれだけかっていうのは公表できないと、企業の事情もあるんでと、そういう答弁で、場内からも、与党の議員からもおかしいじゃないかっていう声が飛んで、大臣もあのときいらしたんで御記憶まだ残っていると思うんですね。

 私、やっぱりおかしいと思うんですよ。こういう表彰制度を持ちながら、実績が一切公表されないと。やはり、この制度について、これは相手もあることではありますが、やはり基本的に中身公表すると。むしろ、表彰していいことをやっているんであれば、それを明らかにすることによってその表彰には逆に、何というか、説得力というか信頼性というか権威というか、備わってくるものでもあると思うんですね。ですから、やっぱりこれは前向きに公表という方向で考える必要あると思うんですが、大臣いかがでしょう。

国務大臣(川崎二郎君)

 まず、それぞれ表彰を受けた企業が様々な形で努力していることは間違いないだろうと。その数字を見ながらファミリー・フレンドリー企業として表彰しているわけでありますけれども、一方で、切り口にございました男性の育児休業取得率、これについては正直言ってまだまだ胸が張れるほどの数字になっていないということから多少答弁側が懸念をしたようでございます。

 しかし、現実はやはり企業の了解を得て公表できるようにしていくというのが筋道だろうと思いますので、その方向で進めてまいりたいと思います。

小池晃君

 やっぱり、表彰したんですからね、了承を得るといったってそんな抵抗ないはずなんで、これは基本的にやっぱり公表するというふうにすべきだというふうに、当然のことだというふうに思います。

 さて、法案なんですが、最初にちょっと大臣に基本的な認識をお伺いしたいと思っております。

 大臣は先日の質疑でも、まだまだ問題が残っているんだと、女性に対する差別事案の複雑化、妊娠等を理由とする解雇や解雇以外の不利益取扱いの増加、セクシュアルハラスメントの相談の増加等の状況が見られると、管理職に占める割合の上昇のテンポが遅い、あるいは男女間の賃金格差が依然として大きいと、これは問題だというふうに答弁されて、私もそのとおりだというふうに思うんです。

 今回の法案というのは、今日も傍聴席もうぎっしり障害者自立支援法のとき以来ぐらい埋め尽くしていらっしゃいまして、やはりその関心の高さ、期待もあるんでしょうが、それを上回る不安と不満というか、そういう気持ちがやっぱり渦巻いてこういう状況になっているんだろうというふうに私思うんですが、大臣は、先日述べられたこういう今の基本的な問題意識、現状認識に対して、今度の法案というのはこれにこたえるんだと、これを、雇用における男女平等というのを徹底するために出した法案なんだというふうにおっしゃるのであれば、その思いというか、どういうところでそこを打ち出しているのかということについて、最初に御認識をお伺いしたいと思います。

国務大臣(川崎二郎君)

 今御指摘いただきましたように、本会議の答弁でも、また先日の委員会の答弁でも、二十年たってどう考えるか、一定の進展があるものの、女性に対する差別事案の複雑化、妊娠等を理由とする解雇や解雇以外の不利益取扱いの増加、御指摘いただいたセクシュアルハラスメントの相談の増加、こうした意味でまだ大きな事案を抱えておると。その上に、管理職に占める女性の割合の上昇テンポが緩やかである、男女間の賃金格差が依然として大きい、こうした問題を抱えております。

 したがって、今回、これらの状況を踏まえた上で、差別的取扱いを禁止する雇用ステージの明確化、追加及び間接差別の禁止を含む性差別の禁止の範囲の拡大、妊娠、出産等を理由とする解雇その他不利益取扱いの禁止、セクシュアルハラスメントについての規定の強化等の措置を行うことにより、更なる男女雇用機会均等の推進を図ることができると、このような見地で出さしていただいたものでございます。

小池晃君

 そういう御答弁なんですが、私どもは極めて不十分な点が多いというふうに考えております。日本共産党としても修正すべき点が多々あるというふうに考えておりますので、具体的に聞いていきたいと思います。

 まず最初に、仕事と家庭の調和を図る、このことを法の目的に据えるということであります。これは、九七年の均等法の見直しのときに、これは職業生活と家庭生活との調和を図るというのは削除されました。で、前回の改定時には、その時点での法の目的と基本的理念に女性についてのみこれが規定されていたので、これは家族的責任の比重を男女ともにというILO条約の趣旨に合わないのではないかということが問題になって削除されたというふうに聞いているわけであります。

 しかし、今回の改定案というのは、これは男女労働者両方に対する性差別禁止法に法の枠組み自体変わったわけですから、それによって前回削除した理由はなくなるわけで、やはりその考え方を均等法に戻していくということを取るべきではないかと思いますが、局長、いかがですか。

政府参考人(北井久美子君)

 平成九年の均等法改正におきましては、今御指摘のような議論、理由もあったわけでございますが、その目的規定から、職業生活と家庭生活との調和を図る等の措置を推進し、という文言が削除された最大の理由は、具体的な規定としてそれまでありました、国等の女性労働者に対する職業生活と家庭生活との調和の促進等に資するために必要な指導、相談、講習その他の措置という規定があったわけでございますが、この具体的な規定を削除をしたことに伴いまして目的規定からも文言を削除したところでございます。

 今般の改正におきましては、職業生活と家庭生活との調和に係る措置ということは具体的に盛り込んでおりませんことから、目的規定に職業生活と家庭生活の調和という文言を規定することは適当ではないというふうに考えております。

小池晃君

 いや、前回、その担保措置も含めて取ったのは、それは目的変えたから同時にそれは両方なくなったわけで、これは広い意味でいえば、担保措置ないないというけれども、私は男女雇用機会均等ということそのものが、これは仕事と家庭の両立支援の担保そのものではないかと、重要な担保ではないかというふうに思うんですね。

 ちょっと御認識をお伺いしたいんですが、性差別の禁止というのは、仕事と生活の調和にとって、これを実現する上で重要だっていう認識は、それはもちろんお持ちでしょうね。局長、いかがですか。

政府参考人(北井久美子君)

 均等法それ自体は性差別の禁止のための法律でありまして、何度も御答弁申し上げておりますように、仕事と生活の調和という課題とは切り口が違うと考えておりますが、私ども行政は雇用の分野における男女の均等な確保と、それから仕事と家庭生活との両立支援ということについては車の両輪で取り組んでおります。そして、この二つの課題がともに非常に重要な課題であるというふうに考えております。

小池晃君

 車の両輪だと。だからこそ目的にしっかり明記すべきじゃないかということだと思うんですよ。

 大臣、私はこれは、現状を見れば、女性の働き方も女子保護規定が撤廃されて非常に長時間労働を余儀なくされているし、一方で厚労白書などを見ますと、子育て期の三十代男性の四人に一人が週六十時間以上の就業をしていると。男性も家庭責任を負うことができないような深刻な状況にあると。やはり以前にも増して今仕事と家庭の調和ということがこれほど大事になっている時期は私はないというふうに思うんです。

 で、先ほどいろんな法律に書く、もっとなじむ法律があるようなことをおっしゃいましたけど、そういうところに入れても別にいいと思うんですよ。それを否定はしません。しかし、今せっかく均等法を作り替えると、より実効あるものにするという議論をしているときであると、しかも昔はこれは載っていたということがある。

 大臣、にじませるとおっしゃったけど、それじゃ駄目で、はっきり言わないと駄目なことじゃないですか。幾らにじませたって、実態はこれ変えられないんです。やっぱり今こそ均等法にはっきり明記をして、いや、ほかの法律でもどんどん載せていいと思いますよ、全部、労基法にも時短法にも載せていいと思うんですが、せっかく今均等法の議論をしているんだから、そこで載せたらどうなんだと、前もあったんだしと、こういう議論なんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 これは先ほどからお答え申し上げていますとおり、この法律自体がかなり目的を絞ってきているなという感じを受けております。性差別禁止のための法律であると。そういう意味では、先ほどからお答え申し上げているように、様々な法律構成の中で、私はにじませた方がいいと考えているんですけれども、先ほどからどこかの法律にきちっと書けと、こういう御下問をいただきました。そうなると、やっぱり労働時間というものに着目した法律の中にきちっとうたう方がいいのかなという感じを私は持っております。しかし、これはまだ、それじゃどこに書こうかというところまで決めておりませんので、今日は御提案をいただいて、検討事項ということにさせてください。

小池晃君

 私は、これは是非、しっかり目的に書くことによって逆に性差別禁止というものの持つ意味もはっきりしてくるんだろうというふうに思っておりますので、これは明記すべきだと思います。

 引き続いて、賃金の問題を均等法にどう位置付けるかという問題なんです。

 これ、男女間の賃金差別という場合に、同じ正規労働者で同じ仕事をしていても、雇用管理区分などによって男性のみがという問題がずっとこう問題になって男女の賃金差別ということが起こっているわけです。

 これ、実態としてどうかというお話をしますと、例えば私どもの事務所なんかによく来る相談なんかでも、例えばこうなんですね。昇進による賃金差別の解決を求めて労基署に行ったと、ところが労基署では昇進に伴って生じた賃金格差というのは一般に労基法四条違反とは言えないと、これはうちではなくて均等室に行ってくださいというふうに言われるんだと。じゃ、均等室へ行ってどうかというと、均等室では、これは均等法には賃金についての規定がないので対応できませんと、昇進、昇格の基準も男女差別とはすぐには断定できませんと、こう言われちゃうと、こんな相談なんですね。配置、昇進等々の均等待遇原則と性による賃金差別というのが均等法、労基法、それぞれの法律で禁止されているのに、こういう悩みを持っている方が実際にその解決に行っても行き場がないと、こういう実態が現実には起こっているというふうに聞くわけです。

 これはもう言うまでもないことですが、労基法四条には、使用者は、労働者が女性であることを理由にして、賃金について男性と差別的扱いをしてはならないとなっていて、直接的差別は禁止していますが、これは昇進などの雇用管理などを理由とした差別は規定がないわけですね。また、均等法には確かに賃金に関する規定は見当たらないわけです。

 局長ね、現実にこういう窓口対応起こっているんですが、やはり今の法の枠組みでいうと、こういう今指摘したような対応になってしまうんじゃないですか。

政府参考人(北井久美子君)

 御指摘のようなケースにつきましては、昇進において差別的な取扱いを受けたことによって、その結果として賃金に格差が生じているような場合であると考えられるわけでございますが、そのような事案につきましては均等法上の問題として雇用均等室において対応を行うべきものであると考えております。

 今後とも、そんなような取扱いが起こらないように徹底を図っていきたいというふうに思います。

小池晃君

 いや、行うべきものであると、そういう対応に現場がなってないという話が一杯来ているわけで、そういうふうにそうするべきであると言うんだったらちょっと現状を見守りたいと思いますが、しかし現実には門前払いになっていることが非常に多いと。

 やっぱり今日の職場で起こっている男女の賃金格差を生み出していることに対して、有効にこれだと言える対応できる法律がないということが大問題なんだろうというふうに思うんです。だからこそ、今回の均等法案への日弁連の意見書では、現行均等法六条の差別禁止に賃金を加えるべき、均等法上も性別による賃金差別禁止を明確にすべきと、こういうふうに求めているわけです。

 大臣にお伺いしたいんですが、労基法にあるからというだけじゃなくて、やはり均等法にも性別による賃金差別禁止をこれ規定してこそより実効あるものになるというふうに考えるんですが、日弁連のこういう提案を大臣、どう受け止めていらっしゃいますか。

国務大臣(川崎二郎君)

 これは同じ答弁になって申し訳ないんですけれども、賃金についての差別的取扱いの禁止は労働基準法四条に規定されております。したがって、今の御指摘をいただいて私の方から労働基準局にしっかりこの問題について相談を乗っていくようにということは申し上げておきたいと思います。

 一方で、先ほど北井局長から答弁いたしましたように、昇進において差別的取扱いを受けたということになりますと、これは雇用均等室の仕事でございます。そういった意味で両局室が連携を取りながらきちっと対応するように私の方から徹底をさせていただきたいと思います。

 その中で、それでも男女雇用機会均等法に規定をしろというお話でございますけれども、そこはそれぞれの法律の中でやらせていただきたいと、このように思います。

小池晃君

 私は両方に禁止規定を置いてこそ有効に実際に現場で使える法律になるというふうに思いますし、同一価値労働同一賃金の原則を労基法にも均等法にも明記をするということを行うべきだというふうに思います。

 引き続いて、間接差別の問題ですが、今労基法四条でそういう要請は満たすんだというような答弁ですが、本当にそうだろうかと。差別にいろいろありますが、賃金差別というのは最大の問題であります。今実際に男女間の賃金差別取り締まることできるのは労基法四条しかない。しかし、これは明らかな直接的な差別を対象としたものです。昭和二十二年というまだ本当に女性の職場進出そのものが少ない時代に、公然とした男女差別というのはこれで対応できたかもしれません。実際、ある程度是正が進んだというふうに聞いております。

 しかし、現在全く様相が違うわけで、公然とした四条違反というのはほとんどありません。これは直近の二〇〇四年一年で四条違反は全国でわずか八件であります。職務、能率あるいは技能が違えば差別に当たらないとなれば、これは労基法四条に違反しない。そこで、先ほどから議論されているような雇用管理区分、コース別というようなやり方がどんどん持ち込まれて、その典型が総合職、一般職という職務である、あるいは非正規雇用の激増であると、これが今の実態で、これに対応できる法改正でなければならないというふうに思うわけであります。

 そこで、幾つか局長に確認をしたいと思うんですが、本改正の目玉の一つは間接差別の禁止で、実際これに苦しめられている女性はある程度解決するのかと期待をしたわけですが、前回もそうですし、今回も多くの議員からなぜ限定列挙なのかという基本的な疑問が寄せられています。これでは救われないという声が上がっているわけですが、もう何度も答弁されていますが、改めて簡潔に、なぜ限定列挙にしたのか。

政府参考人(北井久美子君)

 間接差別は性中立的なものであればおよそどのような要件でも俎上にのり得る広がりのある概念でございますので、間接差別を違法とするに際しましては、対象となる範囲を明確にする必要がございます。

 このために、改正法案では対象となる措置を省令で規定することとし、必要に応じて対象となる措置の見直しができるような法的枠組みとしたものでございます。

小池晃君

 法律改正しなくても間接差別の範囲を広げられるようにするために、均等法上の違法行為は省令で定められるようにしたと。そうすると、今回均等法で定める間接差別というのは、行政処分の対象となる違法行為として定められたものだと。これはあくまでも均等法上の違法行為であって、均等法上の違法でなくても民事法上違法な間接差別を含む性的差別というのは別個に存在するということでよろしいですね。

政府参考人(北井久美子君)

 今般の改正法案の七条が設けられることによりまして、この厚生労働省令で定める措置につきまして、合理的な理由がない場合にはそうした要件を設けることやその要件を用いて措置を行うことが均等法上違法となって、行政指導の対象になるということでございます。しかし、省令に規定されておらない事案でありましても、司法の場で個別に民法九十条の適用によりまして公序良俗違反として無効と判断されることが今般の改正によって妨げられるものではないと考えております。

小池晃君

 均等法で定める違法行為以外にも違法な間接差別はあるということだと思うんです。

 もう少しお聞きしますが、それでは、今回均等法で定める間接差別というのは、民事法上違法な性的差別のうちで、特に行政が関与して速やかに解決することが求められる特に悪質かつ明白な行為ということになるかと思いますが、いかがですか。

政府参考人(北井久美子君)

 厚生労働省令で定めたいと思っておりますのは、間接差別として均等法上違反として行政指導の対象としていくことが適当であることについて、社会的にコンセンサスが得られたものを規定していきたいというふうに考えております。

小池晃君

 ちょっと私の言ったことにストレートに答えていないように思うんですが。つまり、聞きたいのは、民事法上違法な行為を定めるんではなくて、民事法上違法な行為のうち均等法上違法な行為として行政が関与して解決すべき行為という性格のものですねということをお聞きしているので、イエスかノーかでも結構ですから答えてください。

政府参考人(北井久美子君)

 我々が問題意識を持ってきたものを均等法上の措置として規定しようとするもので、御指摘のとおりだというふうに思います。

小池晃君

 改正案というのは、合理的な理由がなければ、均等法上違法な間接差別について判断基準を示した上で、均等法上違法な行為とする決定権を厚生労働省に与えるものではないかと思うんですね。つまり、本改正は合理的な理由がなければ間接差別と認められる行為について、いろんな段階があると思います、募集、採用、配置、研修、昇進等、あるいは福利厚生、職種、雇用形態の変更、退職勧奨、定年、解雇等、それぞれについて男女比その他の事情を勘案して実質的な差別になるおそれがある行為という判断基準を示したと、こういう理解でよろしいでしょうか。

政府参考人(北井久美子君)

 省令で定める措置の基準としては、御指摘のとおりであると思います。

小池晃君

 いや、私が聞いているのは、省令で定める基準ということではなくて、これも民事法上の判断基準にもなり得るということですねということをお伺いしているんです。

政府参考人(北井久美子君)

 間接差別の法理の一般概念としては、性中立的な要件であって、そして一方の性に相当の不利益があって、そして合理的な理由がないものと、こういうことでございますから、そういうことから考えると、その真ん中の趣旨の意味が入っているというふうに考えますけれども。

小池晃君

 真ん中の趣旨というのはちょっとよく分からないんですが、議事録残りますので正確にお願いします。

政府参考人(北井久美子君)

 法律で定めております「措置の要件を満たす男性及び女性の比率その他の事情を勘案して実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置」という意味は、一方の性に対して相当な不利益があるという趣旨が入っているということでございます。

小池晃君

 そして、それはだから、民事法上の判断基準にもなり得るものであるという理解でよろしいんですねということなんですが、どうでしょう。

政府参考人(北井久美子君)

 そういうことになると思います。

小池晃君

 本来、改正法というのは、募集、採用、解雇、退職という雇用の全ステージにわたって間接差別を定めることを予定しているのに、厚生労働省令では、募集、採用における全国転勤要件、昇進の際の条件だけに限るとしか言っていないと。実際にはいろんなステージで、いろんな場面で、いろんなステージの差別が絡み合って、結果として男女格差を生じているわけでありますが、これも何度も繰り返されている質問ですが、なぜそれなのにたった三つに限ったんでしょうか。

政府参考人(北井久美子君)

 間接差別は我が国で初めて明文的に導入をする概念でございます。そして、性中立的なものであればどのような要件でも俎上にのり得る非常に幅の広い概念でございます。そうした中で、均等法上の違法ということにするに際しましては、対象となる範囲を明確にする必要があるということで、省令で定める方式を取ったわけでございます。

 そして、具体的に何をこの省令で規定するかということでございますけれども、この改正法案成立後、審議会の議論も経て定めることになりますけれども、具体的に現時点で考えておりますのは、審議会においてコンセンサスが得られております三つの措置を規定することを予定しているわけでございます。

小池晃君

 検討会報告の中では、福利厚生の対象に世帯主要件を付けることによって実質的に男女間で差別を付けるという形態、これも間接差別類型として挙げているわけです。これは社宅とか家族手当に世帯主要件を課して実質的に男女差別が行われている、こういう実態があるわけですが、こんなのは本当に明らかな形態ではないかと。

 しかもこの種の差別というのは、かつて公務員宿舎への入居が、これは世帯主要件ということが大問題になって、我が党の議員も国会で取り上げたし、女性の運動もあって、政府自身がもうこれ是正してきた行為なんですね。政府自身も問題がありと認めたからこそ是正してきたはずであります。それから、これは労使関係の裁判ではありませんが、阪神大震災の被災者自立支援法の支給をめぐる訴訟で、世帯主要件を支給要件とすることは公序良俗違反という判決もあります。

 これだけはっきりしている。なぜ盛り込めないんですか。

政府参考人(北井久美子君)

 この世帯主要件については、均等政策研究会においても議論になったわけですけれども、それを踏まえた労働政策審議会の議論におきまして、幾つかの理由で結果的にコンセンサスが得られなかったということでございます。

 具体的には、世帯主が夫婦のどちらになるかということについては世帯の中での選択が可能な事項であって、女性が世帯主になることが排除されていないであるとか、あるいは家族手当、住宅手当というようなこと、あるいは福利厚生については生活補助的なもので労使協議の中で積み上げられているというような意見もあり、そして制度自体に対して導入企業割合も依然として高い、そういったことでは実際の制度の中で根強い支持があるというようなことが様々ございまして、現状ではコンセンサスということに至らなかったわけでございます。

小池晃君

 導入企業割合が高いものを入れなかったら何の意味もないじゃないですか。コンセンサス、コンセンサスと言うけれども、大臣、これ基本的な考え方として、この議事録、コンセンサスと何回出てくるか後で数えようと思いますが、すべてこれで片付けるんですけど、私は、行政というのは、コンセンサスがあってそれに従ってやるだけが行政じゃない、コンセンサスつくるのだって行政だと思うんですよ。今みたいに労使全部太鼓判を押してだれも文句ないとなったら行政が静々と進んでいくような、こんなやり方でこういう問題が解決するんでしょうか。私は、これでは現状一歩も解決しない、現状追認にしかならないと思うんですよ。

 私はそんなに別にむちゃくちゃなこと言っているわけじゃない。ちゃんと検討会では課題として挙げられて、ある程度そういう意見は大方の意見になっているけど、一定部分から反対が出たらこれはもう入れない、こういうことでいいんだろうかと。コンセンサス、コンセンサスということでこういうものを切り捨てていったら、私は行政の前進ないと思いますけれども、大臣、いかがですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 審議会また労使の話合い、そんなものを踏まえながら最終的に内閣として判断していく、厚生労働省として判断していくということになりますけれども、新しい間接差別という概念を入れて問題が動き出そうとするときに、今委員が言われるように、少し無理してでもいろんなことを入れてしまえという御主張も一つでありますけれども、私どもは、まずこの三つの概念でスタートさせていただいて、しかしその他のものをまたいろいろ議論はしてまいりますと、こういう仕組みで今回は提案をさせていただいた。

 そういう意味では、やはり労使間なり様々な職場の中で理解が進むような努力を私どももしていくということになろうかと思います。

小池晃君

 私は決して無理なことを言っているつもりないんですけれども、これは全くない話ではなくて、研究会ではちゃんと挙がっていたものですからね。

 じゃ、その三つについてちょっと聞きたいんですが、一番目の募集、採用における身長、体重、体力という要件ですが、こういう要件が問われた日本での裁判例みたいなものはあるんでしょうか。

政府参考人(北井久美子君)

 我が国におきましては、現在までのところ、裁判例は、間接差別法理に立って判断された裁判例は雇用の分野においては見いだせません。

 そして、御指摘の募集、採用における身長、体重、体力要件についての裁判例もないというふうに承知をいたしております。

小池晃君

 実例ないわけで、これからもし起こった場合の禁止項目ということですから、これで多くが救われるとは言い難いわけであります。

 二番目のコース別雇用管理制度における総合職の募集、採用における全国転勤要件、これ建議では、これは例として支店、支社がない、又はその計画もないにもかかわらず、全国転勤要件が可能とするとなっているんですが、こういうふうになっちゃうと、これは一つでも支店があればいいということになる、あるいは計画だけありゃいいということになるじゃないかという懸念が寄せられているわけですね。

 指針でこの建議に示された内容を書くということになっちゃうと、私はこれ違反対象となるものはほとんどもう現実には存在し得ないことになるのではないかと思いますが、局長、いかがですか。

政府参考人(北井久美子君)

 建議におきましては支店や支社が一つでもあれば合理性があるということを言っているのではないと思います。例えば、支社等がありましても、支社等の間で全く人事異動が行われていないような場合には合理性がないということになります。

 いずれにしても、合理性の有無についての具体的な例示については、法案成立後、審議会における議論を経て、指針において定めていく予定でございます。

小池晃君

 三項目めの、じゃ昇進における転勤経験要件ですけれども、現在昇進に当たって転勤の経験を要件としている企業というのはどれだけあるんですか。

政府参考人(北井久美子君)

 労務行政研究所の平成十七年の実態調査によりますと、管理職への昇進に当たって転勤、職務異動歴などの職務経験を問うこととしている企業割合は一七・二%ということでございます。

小池晃君

 直接その昇進の要件としていると、転勤経験を、そういう企業についての調査はあるんですか。

政府参考人(北井久美子君)

 調査はないと思います。

小池晃君

 要するに、転勤経験を昇進の要件としている企業は実態としてどれだけあるかも分かんないわけですね。

 実際には、様々な要件を課して事実上女性が昇進できないシステムになっております。到底、今回の限られた要件で対応できる実態ではない。

 実例をちょっと御紹介したいんですが、社会保険診療報酬支払基金では、この職場では、これは七九年から二十年余りの闘いで、職場内での研修実施に男女差別があること、昇進昇格差別の是正の裁判を通じて、係長職への昇進にかかわって起こってきた男女差別はなくすという判決が出て、これは多くの女性を励ましてきたわけです。

 現在、四級から三級、三級というのは係長職ですが、ここまでは男女比がほぼフィフティー・フィフティーになっているんです。しかし、この上ですね、三級から二級へ、係長職から課長職へとなると、男女比は、八年前には八十四対十六だったのが昨年は八十七対十三へ、格差は歴然としているし、むしろ拡大している。なぜかというと、この二級は課長なんですが、二級の課長職になるには女性にとって厳しい全国転勤の要件が課せられているということなわけであります。

 そこでお聞きしたいんですが、今回三つ目の項目にあります募集、採用時の全国転勤要件と、この現実に支払基金で行っているような昇進の際の全国転勤要件というのは、これは同じなのか違うのか、違うとすればどこがどう違うのか。

政府参考人(北井久美子君)

 厚生労働省令で定めようとしておりますのは、募集、採用時に全国転勤ができますねという要件を課しているような場合でございまして、御指摘になりましたケースは、昇進をさせるときにこれから全国転勤ができますねということを要件としようとする場合であると思っておりまして、これと厚生労働省令で定めようとしていることとは異なるというふうに思います。

小池晃君

 いや、何で異なるんですか。同じ雇用におけるステージにおいて、片や入るけれどもこっちは入らないと。何で採用時、募集時は入るけれども、昇進の際は入らないんですか。

政府参考人(北井久美子君)

 昇進時の全国転勤要件につきましては、コース別雇用管理の募集、採用のときの全国転勤要件と異なって、労働政策審議会において議論がなかったわけでございまして、そうしたことで対象としなかったわけでございます。

 今後の省令の見直しに当たりましては、御指摘の措置についても検証の対象となり得るものと考えているところでございます。

小池晃君

 ちょっとこんな大事な問題、議論なかったで済ませるのはひどいんじゃないんですか。これ重大問題ですよ。これ、至急検討していただかなければいけないというふうに思いますが。

 この支払基金の場合の昇進の際の全国転勤要件、じゃこれも議論してなかったということになるのかもしれませんが、研究会報告の七例のうちの四つ目の項目に、昇進に当たって転居を伴う転勤経験要件というふうにありますね。その昇進の際の全国転勤要件と、じゃ昇進の際の転勤経験要件というのは、これはどう違うのか。昇進の際の転勤経験要件には昇進の際の全国転勤要件というのが含まれるのか、該当するのかしないのか、お聞きします。

政府参考人(北井久美子君)

 省令で定めることを予定しておりますのは昇進時の転勤経験要件でございまして、昇進をさせるときに転勤をしたことがあるという経験を要件とするということでございますので、昇進させるときにこれから全国転勤ができますねという要件とは異なると思います。

小池晃君

 こういうふうに異なる、異なると言っていくと、実際に救われないんじゃないかという不安がどんどん広がっていくわけですよ。

 この職場で今どういう実態になっているかというのを紹介すると、昇進での格差というのは直接賃金格差になります。この職場の女性の多くが昇進を阻まれている課長職、係長職の賃金差を計算すると一体どうなるかなんですが、平均的な昇格年齢の四十五歳から六十歳までの十六年間では一人当たり千三百万円、五十歳で昇格した場合でも九百万円の賃金差が生まれることになります。さらに、退職金や年金にもこの差別、格差広がっていくわけです。

 問題なのは、今この職場で何が起こっているかというと、新たに、今までは係長職はなかったんですが、係長職に昇進する場合、つまり四級から三級に昇進する場合にも更にこの全国転勤要件を逆に広げようとしているんですね、ここでは。せっかく均等待遇になってきた男女の格差を更に一層広げるということが起こってきているんですね。これ、聞くところでは、今回の均等法が限定列挙にしたことが現場ではこういう事態を生んでいるんだというふうにも聞いているわけです。

 この支払基金というのは、一般的な企業じゃありません。厚生労働省管轄の公法人であります。こういうところでこんな事態が起こっているということを、局長、放置していいんでしょうか。これ、どんなふうに思われますか。

政府参考人(北井久美子君)

 個々のケースについてちょっと論評することは差し控えたいと思います。

小池晃君

 しかし、正に逆行するような事態が起こっていて、それが今回の均等法が一つの口実にされているという事態が起こっているとすれば、これは調べていただきたいと思いますが、いかがですか。

政府参考人(北井久美子君)

 個々のケースについてということで、できるだけ調査をしてみたいと思っております。

小池晃君

 実態としてはこういうことになっているわけですよ。本当に、検討会で検討しなかった、入れなかったと、それだけで現場の労働者にとってみれば天と地ほどの違い出てくるわけですからね。やっぱり余りにももうそうやって、私は無責任だというふうに先ほどの答弁は思いますね。

 先ほどのその全国転勤要件について、昇進の際については検討してなかったということであれば、これは私は直ちに検討して、これ直ちに是正をするということをお約束いただきたいと思いますが、局長は重ねていかがですか。

政府参考人(北井久美子君)

 国会での御議論はもちろん踏まえていくわけでございますが、こうした御議論も踏まえて審議会において改めて議論いただいた上で省令を定めていくことになりますので、そうしたときの検討ということになるかというふうに思います。

小池晃君

 大臣、私、限定列挙というのは正にこういう問題を生んでいくんだというふうに思うんですね。本当に、細かく決めれば決めるほど、そこから漏れたものが堂々と合法的な行為としてまかり通っていくということになりかねない危険性を持っているというふうに思うんです。

 こういう事態は支払基金の場合に何もとどまりません。これ転勤要件でなくても、出張できるかどうか、このことをわざわざ昇進の要件というふうに考える企業も出てきているというふうに聞いています。これも結果として男女間の大きな差別を生むことは明白であるというふうに思うんです。

 こうして見ますと、私は、研究会で論議された七項目、それでもあったのがわずか三項目に絞り込まれていること、しかもそれが例示列挙ではなくて限定列挙にしている。その部分にしか違反とならずに、明らかにだれが見ても、常識的に考えてこれは間接差別だと思われるようなものについても対応できないし、いろんな複雑なケースについては全くお手上げになってしまうことになりかねない。これで間接差別の禁止だと言えるのかどうかということすら私は疑わしくなるような規定になっているというふうに言わざるを得ないんです。

 そもそも、国連女子差別撤廃委員会の勧告というのは、これは法律による間接差別規定がないために、裁判一生懸命闘ってもその主張が認められずに来たと、多くの日本女性の訴えがこれ反映した結果なわけです。今回、間接差別限定列挙という規定では極めて狭い部分的なものになってしまう。私はこの勧告の、間接差別を含む女性に対する差別の定義が国内法に取り込まれることを勧告する、この国連の要請にこたえるものとはなっていないというふうに言わざるを得ない。だからこそ、労政審でも例示列挙にすべきであるという、言わば異例の意見も付いたんだろうというふうに思うんですね。

 大臣、限定したことによって立証しやすくなるんだという議論が先ほどありましたけれども、それはそれとして、じゃ、それは例示列挙という形にして、それ以外にも広げ得るという枠を作っておかなければ行政としての発展が今後保障できないではないかと。しかも、これだけ、ほとんどもうコンセンサスと思われるものですら、もう一つでも反対意見が出れば入らないという現状を見ると、私はここで三つに決めたらば、これは、かなりこれがそのまま行ってしまうんではないかという不安を持つ。そういう不安を皆さん持っているのは私当然だというふうに思うんですね。

 ですから、少なくとも、私は研究会で検討された項目を対象にして、限定列挙ではなくて例示列挙とすると。そして、やっぱりこれからの行政の中で、間接差別について広く救済していく。これは間接差別なくすというのが目標なんですから、できるだけなくさないための法律作るんじゃなくて、できるだけなくすための法律作るんですから、私は例示列挙とするというのが法の正しい趣旨に沿ったやり方ではないかというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 何回かお答え申し上げております。労働政策審議会、また検討会での様々な議論、また労使間での議論を踏まえながら今日の法律を出させていただきました。一方で、改正法案、必要に応じて対象となる措置の見直しができるような法的な仕組みにもなっております。

 そういった意味で、委員の御主張は御主張として、私どもは今回、男女比率等も勘案して対象となる措置を厚生労働省令で規定し、これらについて合理性の判断の参考となる考え方をあらかじめ示した上で、個々の事案ごとに合理性の有無を判断する仕組みということで今回は提案をさせていただきました。今後の状況変化に対応していくということをお話しさせていただいて、御理解を賜りたいと思います。

小池晃君

 私は、せっかくこの法の見直しをするのであれば、本当にこの問題で現場で闘ってこられた、いろんな問題抱えてこられた方々が歓迎できるような中身にするのがやっぱり行政としての責務だというふうに思うんですね。是非そういうものにしなければいけないというふうに思っております。

 その点では、修正が必要だというふうに思っております。

 仕事と生活の調和を第二条に盛り込むということ、間接差別の禁止の対象に賃金を加えるということ、間接差別については限定列挙ではなく例示列挙とすること、ポジティブアクションを義務化すること、そして、こうした措置をその実効あらしめるにふさわしい常設機関、男女雇用平等委員会のようなものを設けること、こういう中身で修正が何としても必要であるというふうに思っております。

 やはり現場の声にこたえて、本当に現場で使える法律にしていくのが私ども立法府に課せられた使命だというふうに思っておりますので、是非、党派を超えてそういう検討をしてくださるように心からお願いして、私の質問を終わります。

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