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164通常国会 参議院厚生労働委員会「北海道地方公聴会」

  • 緊迫 医療改悪/地域に大打撃/北海道千歳 公聴会で批判続出(関連記事
2006年6月12日(月)

〔参照〕

期日
平成十八年六月十二日(月曜日)
場所
千歳市 千歳全日空ホテル

派遣委員

団長 委員長
山下英利君
理事
岸宏一君
理事
津田弥太郎君
理事
円より子君
理事
渡辺孝男君
清水嘉与子君
西島英利君
水落敏栄君
足立信也君
朝日俊弘君
小池晃君
福島みずほ君

公述人

奈井江町長
北良治君
北海道医師会常任理事
山本直也君
医療法人社団平成醫塾苫小牧東病院理事長・院長
橋本洋一君
株式会社トータルヘルスサービス代表取締役社長
細川曄子君
北海道勤労者医療協会副理事長
堀毛清史君
社会福祉士
片山憲君

〔午後一時開会〕


団長(山下英利君)

 ただいまから参議院厚生労働委員会北海道地方公聴会を開会いたします。

 私は、本日の会議を主宰いたします厚生労働委員長の山下英利でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず、私どもの委員を紹介いたします。

 自由民主党所属の岸宏一理事であります。

 民主党・新緑風会所属の円より子理事でございます。

 同じく、民主党・新緑風会所属の津田弥太郎理事でございます。

 公明党所属の渡辺孝男理事でございます。

 自由民主党所属の清水嘉与子委員でございます。

 同じく、自由民主党所属の水落敏栄委員でございます。

 同じく、自由民主党所属の西島英利委員でございます。

 民主党・新緑風会所属の朝日俊弘委員でございます。

 民主党・新緑風会所属の足立信也委員でございます。

 日本共産党所属の小池晃委員でございます。

 社会民主党・護憲連合所属の福島みずほ委員でございます。

 以上の十二名でございます。よろしくお願い申し上げます。

 参議院厚生労働委員会におきましては、目下、健康保険法等の一部を改正する法律案及び良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案について審査を行っておりますが、本日は、両案について関心の深い関係各界の皆様方から貴重な御意見を賜るため、当地において地方公聴会を開会することにいたした次第でございます。何とぞ特段の御協力をよろしくお願い申し上げます。

 次に、公述人の方々を御紹介申し上げます。

 奈井江町長の北良治公述人でございます。

 北海道医師会常任理事の山本直也公述人でございます。

 医療法人社団平成醫塾苫小牧東病院理事長・院長の橋本洋一公述人でございます。

 株式会社トータルヘルスサービス代表取締役社長の細川曄子公述人でございます。

 北海道勤労者医療協会副理事長の堀毛清史公述人でございます。

 社会福祉士の片山憲公述人でございます。

 以上の六名の方々でございます。

 この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 皆様には、御多用中の中、本公聴会に御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。

 両案につきまして皆様方から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の委員会審査の参考にいたしたいと存じておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の進め方について申し上げます。

 まず、公述人の方々からお一人十分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、これより公述人の方々から順次御意見をお述べ願います。

 まず、北公述人にお願いいたします。北公述人。

公述人(北良治君)

 それでは、早速でございますけれども、まずは参議院の厚生労働委員会の先生方、御遠方のところ大変御苦労さまでございます。また、私どもの意見を聞いていただくことに深く感謝を申し上げます。

 早速でございますが、本論に入らせていただきたいと思います。

 まず、国民皆保険の堅持についてでございますが、少子高齢化の進行に伴いまして、医療保険財政の破綻を回避し、国民の生命を守る国民皆保険を堅持いたしまして、持続可能な保険制度を構築する必要がある。高齢化の進展に伴いまして将来的な医療費の増大が見込まれ、医療費の適正化を進めていく必要があると思いますが、しかしながら生活習慣病予防対策、入院日数の短縮等によりまして医療費適正化を進める上では、国民の生活の質の向上、医療の安全確保や質の向上を図ることが前提でなければならないと思います。

 特に、生活習慣病予防対策につきましては、保険者が中心となりまして、健診、保健指導を始めとした各種事業を展開することとされたが、保険者が効果的な取組を行うために、保健師の配置、生活習慣病の要因分析データの提供等、都道府県、国としての支援措置を講じていただきたいと思います。

 地域において住民が安心して生活できる地域づくりを進めるためには、保健、医療、福祉の総合的、一体的サービスの提供が必要であります。このような理念の下、都市部を除き、地方の市町村では合併による統廃合、病院医師確保の問題を抱え、特に地域医療を取り巻く環境は非常に厳しいものがございます。

 奈井江町では、平成六年より、地元診療所の医師と町立国保病院医師とのいわゆる病診連携事業に取り組み、病院の一部病床、十二床でございますが、診療所の医師に開放いたしまして、継続してかかりつけ医として診療に当たり、また高度医療機器や検査業務の共同利用を行いまして、医療費の削減に努力しております。

 また、町内の老人保健施設、特別養護老人ホームの入所者に対しましても、病院同様、地元開業医医師が引き続き診療に当たっておりまして、さらには、病院内に設置している在宅支援室における退院から在宅へのサービスのつなぎの時点では地元開業医師がかかわり、地域医療を核として地域包括ケアシステムの体制が確立されております。

 今後は、さらに広域的視点に立った病院間、診療所等のいわゆる機能連携、機能分担を目指すとともに、あわせて医師確保の問題をどうするかが重要となります。

 このような中で、隣の市における二次医療圏のセンター病院と、昨年十月に、医師の派遣に関すること、機能分担の中の病床の有効利用に関すること、高度医療機器の共同利用に関すること等、八項目にわたりまして医療連携の協定を結びまして、地域における医療資源の有効活用による安定的、継続的な医療体制づくりに取り組んでおります。

 また、北海道では、道内三医育大学、北大、札幌医大、旭川医大、二市七町の各市町村長、北海道医師会、二十二機関三十二名で構成されている北海道医療対策協議会を設置して、協議会の主な検討、協議の内容等として、医師確保が困難な市町村立病院に対して三医育大学、市町村、民間病院、北海道がネットワークを組みながら調整を行う新たな医師派遣紹介システムの構築について、医師養成のために三医育大学の大学入学定員の中の地元地域枠の設定、市町村との連携の中の奨学金制度導入について、新しい地域医療体制の在り方として病院間の機能分担、広域連携推進の方策について、この三点を協議の柱といたしまして、現在、取組を進めているところであります。

 このような地域医療の新たな姿を模索しながら、また医師確保問題に積極的に取り組みながら、予防、入院から在宅医療までの切れ目のない形での医療と介護の両面にわたる総合的な地域医療・ケア体制の整備といった取組を、国とともに都道府県で作成する医療費適正化計画の中に盛り込みながら取り組んでいただきたい。

 また、療養病床の廃止についてでございますが、今回の改正で療養病床を大きく再編することとなっていますが、医療と介護を明確に区分しながら、本来の医療の必要度の高い方への適切な療養病床での提供と、医療の必要度が低い方への介護施設、在宅ケアへの結び付きの中で、個々の状態に適したサービスの提供を推進するということでは大変重要なことであり、評価に値するものだと思います。

 しかしながら、現在入院している方の状況の中では、慢性的疾患等医療の必要度が低い方で寝たきり状態、又は認知症を持つ介護度四又は五の重度で、在宅に戻りたくても家族介護の問題等で戻れない、いわゆる社会的入院のケースが非常に多いことも現実であります。

 今後、六年間の経過措置の中で、中長期的に老人保健施設、ケアハウス等また在宅ケアの整備以外にこのような方々たちが安心して移行できる受皿づくりを含め、整備をお願いしたいと思います。

 保険給付の内容、範囲の見直しについてでございますが、今回の医療制度改革法案の中では、高齢者の医療費負担の見直しが挙げられているが、これからの高齢化の波、医療保険制度の維持、継続していくためには、国民全体が制度を守り、ともに支え合うことが重要であると思います。その点については、現役並みの所得者に関してはある程度必要なことと認識しております。

 しかしながら、高齢者の中では低所得者が非常に数多くおります。少ない年金の中で、医療ばかりでなく介護を含めた医療費用負担の中で大変つらい生活を送られている方も数多く存在いたします。

 このようなことから、今回の改革に当たりましては、低所得者への対策を十分考慮して進めていただきたいと思います。現在の改正案については、現行のままでございますから、このことを堅持していただきたいとお願いを申し上げるところでございます。

 次に、医療保険制度の一本化についてでございますが、負担と給付の公平化を図るため、我々市町村は、かねてから医療保険制度の一本化を主張してきました。一本化により、保険運営の広域化による保険基盤の強化及び負担と給付の統一化が図られることとなる。今回の医療制度改革大綱においても、医療保険制度の一元化を目指すことが明記され、基本方針に示される方向が再認識されていることでございます。これは前進ととらえているところでございます。

 また、高齢者医療については、時間がちょっとございませんからはしょって申し上げますが、国保財政を単独で運営することが財政的に非常に厳しい、事務的にも困難でございますから、そこで、平成十年八月に、私どもは既に一市五町で空知中部広域連合を設立いたしまして、十二年から介護保険とともに国民健康保険、老人保健事業の広域的保険者として運営を進めているところでございます。

 今般の改革案におきましても、後期高齢者医療制度の財政運営の主体が広域連合となったことは、財政運営の広域化及び安定化という観点から評価できるものと考えておりますが、これは市町村だけでなく、国、都道府県の責任を分担すべきものと考えております。保険料の未納や見込みを超える医療費の増加によって、必要な給付を保険料で賄えないという財政リスクは広域連合としても起こり得るものでありまして、こうした財政リスクの軽減を図るためには、広域連合や市町村だけでなく、都道府県や国の役割が欠かせず、それぞれに財政責任を果たしていただくシステムづくりが必要であると思います。

 国民健康保険の財政──まだいいですか、もう少しよろしゅうございますか。国民健康保険の財政安定化についてでございますが、我が国の医療保険制度につきましては、自営業者や無職者等を対象とする市町村国保と政管健保及び組合健保から構成される被用者保険に大きく二分される構造となっておりますが、国民健康保険制度は、ほかの医療保険に属さない人をすべて受け入れる構造となっておりまして、近年の急速な少子高齢化の進展、リストラ、フリーター及びニートの増加に起因する無職者、低所得者の増加、毎年一兆円規模で増加している老人医療費など、多くの問題、課題を抱えております。

 失業者の増加により所得のない加入者が増加し、保険料未納の増加につながっております。収納率が低下すれば制度を維持することに非常に難しいものがありますから、一般会計よりも補てんしているのが現状でございますから、これらについての支援をよろしくお願い申し上げて、私からの発言を終わらしていただきます。

 以上でございます。ありがとうございました。

団長(山下英利君)

 ありがとうございました。

 次に、山本公述人にお願いいたします。山本公述人。

公述人(山本直也君)

 この発言の機会を与えてくださいました先生方、本当にありがとうございます。

 北海道は今日はもう寒さの中におりますけれども、我々北海道人も寒さの中におって、本当に御苦労さまでございます。

 それでは、北海道医師会、医療者の一員としまして、北海道の地域医療を担っております現場の医療担当者の一員としまして、今回の医療制度改革関連法案に対して意見を簡単に申し上げます。数字をできるだけ参考のために申し上げたいと思いますので、後ほど、資料をお手元に配付してございますので、参照をお願いいたします。

 基本的には、今回の改定は、副作用を伴う苦い薬を飲むといいますか、合併症のあり得るつらい手術を前に決断をする患者さん方の気持ちというのはこんなものなのかなという、改めて考えさせられたものでございました。

 少し残念だなと思っているようなことは、我が国の医療制度の基盤を成す財源の在り方というものを、負担と給付の整合性、それから管理運営主体の中立性ということ、中長期的な視野の取組らの国民に真っ正面から問うべき課題が十分に論議されたのかなと、そういう思いをいたしました。

 我々の立場からいいますと、まず第一に国民全員で最初に最も重要な議論すべきことは、近い将来も含めましての日本の国民医療費、公的給付というものが国民所得の何%程度が振り向けられるべきものなのかと。財源というのは、この五十年も続いております税、保険の割合、形というものはこんな形でよいのだろうかと、そういう基本的な論議をしていただきたいなという切実な思いを持っておりました。

 また、弊害あるいは無駄が多いと一般的にはOECDの先進国でよく言われております中央政府によるその日暮らしのごとき単年度主義の社会保障あるいは社会保障基金の財源の管理運営を、生活に密着する部分というものは何とか中立性の高い効率的な管理主体に変えていくべきではないかと。また、中長期的な視点で財政運営をしていくべきでないかという当たり前の論争をもっと深くやっていただきたかったというのが私たちの立場でございます。

 ちなみに、現在の日本の国民所得の七・三%という数字は、やはり極めて低い水準ではないかと。従来より我々は、せめて一〇%ほどの、先進国では世間並みの当たり前の値ではないかと我々は主張してまいりました。

 現在のマスコミの方々を中心にする、流れてくる、我々、情報操作にも等しいのではないかと思われるようなよく分からない、根拠の何か薄弱な財政破綻キャンペーンというんでしょうか、誠に声高な、改革に名をかりた支出の抑制策しかもうあり得ないというような、非常に劇場型のポピュリズムとやゆされるようなやり方、状況には、怒りというよりもちょっと悲しみを感じております。

 一方で、私たちにとっては良かったなというような思いを一方では感じてございます。経済財政面からの医療費の抑制に隔たった、経済財政諮問会議が打ち出した、いわゆるキャップ制とか伸び率管理といった極めて乱暴で、我々専門的な現場の立場からいうとちょっと粗野な意見ではないか、そういう主張が排除されまして、少なくとも良識ある人々、特に先生方を始めとする医系の先生方、保険医療を長い間専門的になさってきました厚生省の官僚の方々を中心にする真っ当な、下からの政策の積み上げの案として少なくともこの政府案が出てきたということに、それで、その内容があくまでも患者中心の国民皆保険制度を将来も持続可能にすることを目指してという、医療の質の向上や安全の確立、制度の効率化を掲げて法改正が行われたことに関しましては評価をしてございます。

 時間が制限されておりますので、総論的な私たちの気持ち、考え方は以上で終わりにいたしまして、今回の生活予防対策、あるいは扶養家族の健診の保険導入ら、新しい取組に対しまして評価することは多々ございますけれども、そういうことは抜きにいたしまして、我々の北海道の地域医療の直面する現場からの問題点、それから苦しみというものを二点ほど、現実的な厳しい数字を基にして説明さしていただきます。

 まず第一点でございます、医師の偏在と不足。これは、今まで十分論議されております北海道の状況でございます。お手元の資料を参照してください。

 これは、第二次保健医療福祉圏といいまして、二十一の区域に分けてございます、北海道は。これに北海道の状態が書いてございます。

 右上を見ていただきますと、北海道もついに減少、人口の減少という状態に入りました。左の上を見ていただきますと、千人当たりの周産期死亡率、新生児の死亡率、乳児死亡率が提示してございます。これは平均値でございます。全国とそう変化はございません、この数字はですね。

 地域ごとの数字を示してございます。

 濃い黄色の枠をごらんください。この濃い黄色の枠は、すべてが平均値をオーバーして死亡数が多いという数字でございます。その地域でございまして、代表的に選んでございます。根室の方の地域、南の方の日高の方の地域、宗谷の方の地域、オホーツクの北網というところと、それから羽幌というところと、こういうところはすべての数字が、千人当たりの子供の死亡率も高うございます。こういう数字が出てございます。

 二枚目の資料をお願いします。

 これは、北海道のそこの同じ地域における産婦人科のお医者さんの数でございます。その代表的な場所をイメージとして数字を抜いてございます。

 まず、右の根室の方の数字を見てください。この一番最初の赤で書いてある数字は、人口当たりのあってほしい産婦人科医の数でございます。六名という数字。実際には三名しかおりません、右の数字でございます。その下は勤務形態でございます。一番左が開業医の方の数で、真ん中は常勤の勤務医の数でございます。右は大学や大手の病院から参ります非常勤の先生方の数でございます。こういう形になっている。三名のうち一人の方が開業医で、市立病院にお二人の方が勤務してございます。こういう状態です。人口が八万六千ございます。年間八百七十件ございます。これは我々医療の現場から見ますと、この体制で不可能な数字でございます。あり得ないことが起きているということは、近隣の医療施設の整った地域に行っているということでございます。同様のことが一番下の日高の地方も、ここは、五・八人必要なところに二人しかいらっしゃいません。こういう状況です。

 これを後ほど、またあれば説明申し上げます。

 三枚目をお願いいたします。

 これは小児科医の数でございます。同様の傾向がございます。医療資源の乏しい地方があるということでございます。

 その次の四ページ目をお願いします。

 こういうことに対しまして、やはり医療の安全ということを考えまして、北海道ではこのような周産期のセンターを示しながら機能を集中してございます。

 五枚目をお願いいたします。

 これはもう本当に命にかかわることでございますので、小児救急ということで、このような地域に集中した大型病院に機能を集中してございます。このためにはどうしても、北海道は広域で寒冷で広うございますので、搬送手段を何としても整備しなければなりません。これは医療の世界だけでやれることでございませんので、是非この北海道のこういう状況を御理解いただきたい。

 次の資料でございます。

 これは、お年寄りの対象の療養病床の問題でございます。北海道にも三万ございますけれども、一万七千床、恐らくこの六年の間に削減されるであろうと思われますが、一番困ることは、根室の方を見ていただきたい。同じ黄色でございます。もともとベッド数が少のうございます。一番下に百九床がマイナスと書いてございます。あるべき基準値より少ないんでございます。その上で、この百八十七と三施設が持っている療養型がある程度削減されたときにまた大きな問題が起きるという、これが北海道の現状でございます。日高もそう、羽幌、すべてそうでございます。こういう地域ごとの差があるということを御理解いただきたいと思います。

 あと資料ございますけれども、何か質問がありましたらそのときに説明申し上げたい。

 高齢化率がほぼ三五%を超えてございます。在宅介護力などというのは、我々の現実でいいまして家捜ししてもないような状況でございます。是非とも、地域ごとに違うと、そういう困難な状態を御理解いただきまして、この法案を生かす形で、個別の強い優遇策あるいは弾力的な法の運用と、政治の真の力と行政の心をいただきたいと思っております。

 以上で終わります。

団長(山下英利君)

 ありがとうございました。

 次に、橋本公述人にお願いをいたします。橋本公述人。

公述人(橋本洋一君)

 私は、苫小牧で病院を経営している苫小牧東病院の橋本と申します。このような意見を述べる機会を与えていただきましたことに対しまして、深く感謝申し上げる次第でございます。

 さて、私の方からは、民間中小病院の一経営者及び毎日、直接患者と接している一医師として、このたびの健康保険法等の一部を改正する法律案の医療費適正化推進の中で、特に療養病床の再編とそれにかかわる今年四月の診療報酬改定につきまして、やや具体的な内容となりますが、意見を述べさせていただきます。

 まず初めに、当院の紹介をさせていただきます。

 「私たちは、医療サービスを通じ、地域社会に安心・安全を提供します」を理念として、平成元年、北海道苫小牧市の東部住宅街に開院し、今年十月には満十七年を迎えます。急性期、亜急性期、慢性期の領域に対応する二百六十床の内科・リハビリテーション病院ですが、平成十六年十一月には、日本医療機能評価機構の病院機能評価をバージョン四・〇で新規取得しております。

 当院の特徴といたしまして、開院当初よりリハビリテーションの充実を図ってまいりました。回復期リハビリテーション病棟は、平成十二年十二月、北海道内の第一号の認定を受け、平成十五年八月には、東胆振地域リハビリテーション推進会議の事務局病院として指定、平成十六年七月、日本リハビリテーション医学会研修施設に認定、今年一月には、日本医療機能評価機構のリハビリテーション付加機能の認定を全国七番目、道内二番目で取得するなど、東胆振地域、日高地域におけるリハビリテーションの中核病院としてリハビリ機能の向上に努めています。

 さて、今般の医療制度改革関連法案の全体について整理いたしますと、昨年十二月、政府・与党医療改革協議会で決定された医療制度改革大綱で、国が進める今後の医療制度改革の方向性が明示され、柱として、一、安心・信頼の確保と予防の重視、二、医療費の適正化の推進、三、新高齢者医療制度の創設、四、診療報酬の引下げの四つが掲げられました。

 これは、中長期的な改革の展望というよりは、当面、二〇〇六年から二〇〇八年の三年間の予算対策の色彩が強く、以上の二から四においては財政問題が直接的に扱われたものとなっており、中でも、四の診療報酬の引下げについては、マイナス三・一六%、本体部分一・三六%という過去最大の下げ幅で決定し、実施されたことは周知のとおりでございます。

 この医療制度改革大綱に基づいて、医療制度改革関連法案が今般の健康保険法等改正案と良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等改正案、いわゆる第五次医療法改正の二本立てで審議されているところですが、健康保険法等改正案の中で、医療費適正化につきましては、中長期の対策である在院日数の短縮と生活習慣病予防など、短期の対策では、患者負担の見直し、括弧、自己負担等ですけれども、引上げ等ですが、と診療報酬改定、療養病床の患者分類に基づく評価導入等などを組み合わせ取り組むことで医療費の伸びを抑えることを主眼としております。

 また、医療法等改正案につきまして、目玉としては医療計画制度の見直しがあり、一、医療機能の分化、連携を推進し、切れ目のない医療を提供すること、二、早期に在宅生活へ復帰できるようリハビリテーション及び在宅医療の充実を図ることを二本柱としております。

 これらの制度改革は、医療保険だけでなく医療提供体制、診療報酬、介護保険、健康増進などの対策を一体的に推進するものですが、そうした中で、特に療養病床の再編とそれにかかわる診療報酬の改定に絞って意見を述べたいと思います。

 療養病床を抱える民間病院として、今回の改定は、地域に良質かつ安定的な医療を継続的に提供し、社会に還元していくには余りにも厳しい改定内容であり、経営に大きな打撃を与えることはもちろんのこと、淘汰される病院の続出が予想され、医療業界は戦後最大の転機と言っても過言ではありません。

 先般、診療報酬と介護報酬の同時改定が実施されました。慢性期入院医療については、病態、日常生活動作能力、ADLですね、それから看護の必要度等に応じた包括評価を進めるとともに、介護保険との役割分担の明確化を図るという平成十五年三月の閣議決定を受け、その後の各種審議会等の議論、昨年十月、厚生労働省の医療制度構造改革試案及び医療制度改革大綱を踏まえ、今回の改定がなされましたが、療養病床すべてを介護保険適用にすべきとの考え方が強かった中で、突然、六年後に介護保険適用の療養病床を廃止し、療養病床を医療保険適用に限定、さらには、北海道でも地方において在宅分野の整備が不十分な中で、介護を含む療養病床三十八万床を十五万床まで削減すると打ち出されたことは誠に寝耳に水の感があり、十分に審議を尽くす必要があると考えます。

 導入当時から物議を醸していた療養病床の医療保険適用型と介護保険適用型の問題が未解決のままであったことに対し、療養病床を医療保険適用に限定することは一つの決着には違いありませんが、今回の療養病床にかかわる診療報酬改定の特徴と問題点について申し上げたいと思います。

 まず、今回の療養病床にかかわる診療報酬改定の最大の特徴は、入院基本料を看護職員の配置による評価から患者の医療必要度やADLに応じて点数を付ける、主に医療必要度ですが、患者分類による包括評価に転換したことと、患者分類の適用に伴い、重度障害者など向けの特殊疾患療養病棟入院料が七月から廃止、一般や精神病床を除きますが、廃止される点です。

 お手元の資料三ページを御参照ください。

 患者分類による包括評価は、医療療養病棟で医療区分、ADL区分に基づいて九分類、認知機能分類を加えて十一分類に患者が分類されていますが、医療必要度のないかあるいは少ない人、医療区分一、これはすべて介護保険でといった考え方が適切であるかどうか。特に、医療区分の一の範疇には医療必要度の少ない人も入るという点で疑問を持たざるを得ません。

 また、医療区分の分類について、資料四ページにございますが、かつて特殊疾患療養病棟入院料一の範疇であった医療必要度の高い神経難病、一般に進行性であり、原因不明か原因が究明されていても根治療法がないか、あっても効果が限定されている特徴を有する神経・筋疾患や脊髄損傷、主に頸髄損傷で四肢麻痺による著しいADL障害のみならず、神経因性膀胱、知覚障害を有する等に加えて、一般病棟での治療対象である肺炎、尿路感染症等が医療区分三ではなく医療区分二に含まれていることは理解し難く、一方、医療区分三は医師及び看護師による二十四時間体制での監視、管理を要する状態とされ、さながらICUを思わせる極めて重篤な病態とされている点も同様に理解し難いと考えます。病院機能の分化という過程が平成になってからの医療改革の柱のはずが、一般病棟で対応するような患者を療養病棟入院基本料の医療区分に入れるのは病院機能分化の面でも逆行と言えるのではないかと思っています。

 また、一般病棟、精神病棟の特殊疾患療養病棟については、資料六ページにございますが、三か月の猶予ではなく二年間の経過措置を設けた点について、一般と療養の病床区分の違いはあったとしても、今年三月までは同じ施設基準での特定入院料として算定し、患者状態も同様のはずなのに、病床区分の違いのみをもって経過措置に格差を付けるのはいかがなものかと考えます。現に、病床区分を療養から一般へ移行し、その上で特殊疾患療養病棟を届け出直すことを検討している医療機関もあります。

 最大の問題として、従来の特殊疾患療養病棟入院料と新しい医療区分における新点数との差が余りにも極端過ぎる点が挙げられます。

 当院は、一般病棟、回復期リハビリテーション病棟、特殊疾患療養病棟一が二病棟、二が一病棟の合計五病棟を有していますが、中でも特殊疾患療養病棟は三病棟あり、特殊疾患療養病棟を運営している病院には一層深刻な改定となっています。特殊疾患療養病棟入院料一と比較して、医療区分三のケースで約一二%減、医療区分二のケースでは実に約三二%減の点数となっております。特殊疾患療養病棟入院料二でも、医療区分二のケースで約一六%減、医療区分一のケースに至っては約五二%減と制裁的な点数設定であり、六年後の療養病床十五万床達成のため、あるいは医療必要度の低い患者の療養病床から介護保険施設又は在宅へシフト促進のためとしても、民間病院が地域医療を支え健全経営を維持していくには、減少幅をせめて閣議決定した三・一六から五%程度とするか、又は段階的な引下げをするなどの対応が不可欠と考えます。

 この間、全国各地からの同様の声があり、厚生労働省も四月に入ってようやく特殊疾患療養病棟入院料等の見直しに伴う措置として、医療区分における経過措置を通知しました。資料の七ページです。これは神経難病等に該当する患者を二年間に限り医療区分三にみなす措置ですが、これにつきましては是非とも期間限定をせずに対応すべきであり、今後も強く主張していきたいと考えております。

 非常に時間が差し迫ってますが、看護師の問題、医師の問題については、今、北海道医師会の山本先生からもお話がありましたので、割愛させていただきます。

 最後になりますが、当院の場合、第一段階での収入シミュレーションでは、神経難病等に該当する患者の経過措置が不明であったため、暫定数値で年間二〇%を超える減収でした。いずれにしても、特殊疾患療養病棟三病棟だけでこれほどの減収となれば、民間病院として収益維持・確保の限界を超えており、経営の大幅見直しを余儀なくされるものでした。

 今般の改定及び制度改革は、リハビリテーションや在宅医療の重視、療養病床の削減などの方向性が打ち出されていますので、この方向性を十分に踏まえ、当院の機能、特色を生かし、二つ目の回復期リハビリテーション病棟を特殊疾患療養病棟から移行を予定しております。

 当院といたしましては、今後も地域及び患者の医療ニーズにこたえ、質の高い医療を安定して提供し、地域医療に貢献していきたいと考えております。

 御清聴ありがとうございました。

団長(山下英利君)

 ありがとうございました。

 次に、細川公述人にお願いいたします。細川公述人。

公述人(細川曄子君)

 細川でございます。大きな時代の変革のときに、このように私見を述べさせていただける機会を得ましたことをとても幸せに思っております。

 私は、自治体の保健婦をやりました後、三年やりました後、小学校と高校の養護教諭を務めまして、二十年の公務員生活の中で多くのいろいろな思いを胸に秘めまして、そちらに、お手元にございますような、ちょっと御紹介させていただいておりますが、脱サラ、いわゆる脱サラをしまして、もう行政から離れたと。とにかく自分の思いを、本当に世の中を見て今必要だと思うことをやってみようということで、十六年前に会社をつくりました。これも今考えますとNPOで良かったわけですが、そういうことで夢中で今日まで参りましたが、その中で幾つかの立場でお話ししたいと思いますが、多分、このことは医療というような段階の前の生活者の立場の世界ですので、多分こういうお話は余り今回意義がないかなとも思いますが、お話ししてみたいと思います。

 行政の中におりましたときに、健康診断をしたり保健指導というものでお話をしたりという機会の中で、でも、どうしてもっと世の中には病院じゃなくて健康院というのが何でないんだろうと本当に思いました。今この人がちょっと生活に、具体的に一緒に歩いてやったり一緒に味わったりすることによって、この人は今日、今から頭の中のスイッチが一つ変わって、価値観が変わって、三年後は病院に行かなくてもいいんだよなというような、そういうものに対する大きな焦りがありまして、私が地域の中でこういうことをやってみたいと思っているときにちょうど、労働省と厚生省が別でしたので、労働省の方からトータル・ヘルス・プロモーション・プランというのが出ました。本当にこのときは、私だけじゃなくて、多くの全国のドクターや公衆衛生で働く人たちは時代が変わったと思ったと思います。なぜならば、本当に具体的な健診の結果に基づいて、生活者の立場で生活改善を提案することによって、その費用は国と企業から出て、要するにその人の幸せになるためのことに私たちがようやく手が行くというふうに思ったわけです。

 ですが、なかなか本当に、今も思っておりますが、すべてのことに規制緩和がなくて、それでもう全国が全部特区になってくれればいいというふうにそのときも思いましたんですが。本当にオホーツクの小さなエリアですので、そこのエリアの中では中央がこんなにすばらしいことをやるといったことが同じようにできないということに気が付きました。

 では、田舎ならではのやり方でそのメッセージを、逆にこんなふうにできるんだよということを中央の方に向かって言ってあげようと、そういうぐらいの思いになりまして、地域の先生方にも多くの御協力をいただいて、いわゆる私たちが未病という、病気にならないための手だてというもの、これが本当にいいサービスであれば、世の中の生活者の自立と幸せのために必要なことであれば、お金を出してでも、自費ででも成り立つはずだと、それが成り立たないんだとしたら多分私の方に問題があるというふうに飛び出しました。具体的なことはそちらに書いてありますので、本当に何も持たずに頭の中の理念一つで飛び出してしまいましたんですが、多くの仲間をおかげさまで全国に持つことができました。

 この十六年の間で今やっていますことは、具体的には一つは、健保組合ございますね、健保組合はいろんなことをやっていらっしゃいますが、財政云々のことでなかなか、保健施設活動といいますか、保健師を置けないというようなことがあります。それで、そこの委託を受けております。ですから、道外の製薬会社ですとか大きな企業の、北海道に赴任をしたというだけでマイナスイメージで体を壊しちゃったり、特に北海道は、北方うつ病というのをお聞きになったことがあるかもしれませんが、日照時間が少なければやはりうつっぽくなります。そういうようなことに対する寂しさを、じゃ私が北海道全部を引き受けようということで、各企業の健保組合やそれから財団、道外の財団と契約を一つ一つ取っていきました。そこにも紹介していますように、一番こういうようなことに感度のいいのは大企業でして、NTTとか北海道電力のおかげで本当にここまでやってまいりました。

 それだけに、私の願いますことは、本当に世の中、文明はどんどん進歩しているんだ、で、医療というか治療ということを受けなくても、もっともっと情報が豊かであれば私たちはそういう不幸な道を行かなくても済む、要するに、医療依存でなくてよろしいんじゃないかというふうな考えでおります。これは本当に幸せな人たちを対象としているから言えることかもしれませんが。実際には、企業戦士である人たちの、今メタボリックシンドロームとか言っておりますが、私は会社設立当初からシンドロームXという名前で、今おなかの回り、脂肪を付けたら大変だよという話を、今は本当にこれが説明が明快にできるほどに新聞、テレビでも言われるようになってまいりました。このようなことに、全部これは自費です。

 私は、今大きなこの制度の、財政破綻とかいろいろ言っておりますが、医療経済機構そのものの中に、価値あるところに本当に経済、お金はリンクしているだろうかということではないかなというふうに思っております。それは、もう本当にゲノムの医療の時代が目の前にありまして、いろいろな情報がありますときに、規制緩和の云々で問題になっておりましたんですが、薬に頼らなくてもちょっと熱は耐えてみよう、下痢はちょっともう少し耐えてみようというような、生活者としての能力をアップする情報とそれから文明の手だてを本当に伝えることが幸せに結び付くのではないかというふうに思いますので、今回のように大きな変革のときに、制度の設計理念といいますか、脈々と私たちに哲学を投げ掛けてほしいと思います。

 ところが、見ますと、まだ本当に不勉強ですが、経済破綻ですとか医療費が掛かるとか、もうお金、お金、お金、お金の論理しか出てきていません。私は、そうであるから、もう本当にもっと自分で自分を鍛えようぞと思う人たちまでも、例えば七十五歳から後期高齢者と、そうかと。私たちは、活動としてはサードエージというジャンル含みまして、サードエージというのは、要するに、これから社会に貢献するんだと、自由を得てもっともっと人間らしく、果敢に闘うといいますか、能力アップしながら生きていくんだという人たちにとってみれば、七十五、えっ、もう後期かというようなインパクトも与えかねないなというふうにも思ったりもいたします。

 私が本当に申し上げていることは、勝手な持論でございますが、例えば健保の中で取り上げられようとしている特定健診なんかも糖尿病云々ということだけになっておりますが、私たちはもう百歳まで生きます。であれば、白内障になったり緑内障になったり、男の方だったら前立腺肥大になったり、もうおよそ予測の付くそういう人生イベントがありますので、そういうものに対して啓蒙活動と未病対策というものを是非進めるようなことも盛られてはいいのではないかというふうに思ったりします。また、そういう予防給付のようなことがどこからか生まれてこないか。また、生活者の自由裁量が利くようなそういうような設計がなければ、今幾ら健康保険があるといっても、独自で皆さん、小児保険とか、まあペット保険は別ですが、そういうふうにいろいろな民間保険に行って自由裁量しようというほどに健康意識や生活能力、判断能力ですね、こういうことは上がってきているというふうに思います。

 今、イギリスなんかの情報も、随分医療破綻を起こして、医療従事者の問題とか起きているようですが、最近、私の周辺にいるドクターたちは本当にこの予防活動ということに大変に進んでいらっしゃいます。本当にそういう面では、病院の中での医療給付経済構造よりも、もうちょっとそのシフトをずらして、予防の方に、今お医者様たちの多くの深い経験と英知をそちらの方に持っていく。要するに、医療法人の規制じゃなくて、規制緩和の方に向けることによって、もっとウエルネスのジャンルに医療従事者がどんどん、正しいといいますか、これはそういう方向に導くようなことができていれば私たちにとっても幸せであるし、その結果ですね、その結果、保険財政は絶対にいい方向に向かっていくというふうに考えたいというふうに思います。

 最後になりますが、WHOの健康定義の中にはスピリチュアルという言葉が入って、ここ十年以上いろいろ議論されておりますが、やはり終末医療や何かを考えますときに、もっと心のケアといいますか、それから私たちの死生観をも規定するような多くの情報と、そういうことが、この医療だけじゃなくて、私たちの生きていく力になることではないかなというふうに考えております。それは必ずしも宗教とかそういうことではなくて、音楽だったり、芸術だったり、大自然の空気だったり、景色だったり、小川の音だったりするかもしれませんが、そういうことも本当に私たちの免疫力を、それから未病というふうに、究極のところ医療費の軽減というふうにつながっていくのではないかなというふうに思っております。

 大変早口で思いのたけだけを述べさせていただきました。ありがとうございました。

団長(山下英利君)

 ありがとうございました。

 次に、堀毛公述人にお願いをいたします。堀毛公述人。

公述人(堀毛清史君)

 北海道勤医協の堀毛でございます。本日は、こういう公述の場を与えていただいて、本当にありがとうございました。

 私は、この三月まで釧路の勤医協の病院で療養病棟を持ちながら釧根地域の医療に当たってきた者として、そしてまた北海道全体の医療や介護について強い危機感を持っている一人の医師として今法案についての意見を申し述べたいというふうに思います。

 私のレジュメの一番後ろのところにカラーの一枚のレジュメが付いております。せっかく今日は委員の皆さんに北海道に来ていただきましたので、私の撮った写真で少し北海道気分を味わっていただこうと思いまして、一枚目は氷の摩周湖なんですけれども、これを使いながら御説明したいと思います。

 今年の三月末でもって根室市の隣保院附属病院が閉院となりました。根室は約三万の人口ですが、この病院はその根室市の唯一の療養病床を有する病院でした。閉院によって入院中の五十七人の患者さんが、言葉はいいかどうか分かりませんが、強制退院となりました。行き先がなかなか決まらずに、最終的には十八人が市外の病院、施設へ転入し、十四人が転入先が見付からないために在宅の条件が十分整わない中での自宅への退院となりました。既に四人が亡くなられたというふうに聞いております。退院されて自宅へ戻って、その日に熱発、肺炎で市立病院に入院された方もありました。

 この中で、八十四歳の男性、隣保院に入院されたときには寝たきり状態だったのですが、少しずつリハビリを続けておりました。今回の事態でおうちに帰ることを余儀なくされ、五十七歳の息子さん、二人暮らしになったわけですが、建設会社に勤めておられた息子さんは、父親を見るために会社を辞められ、約三十万あった収入がアルバイトの五万円となり、朝から晩までお父さんのおむつ、それから車いす介助をやるというような生活への変更を余儀なくされております。

 また、ある患者さんの家族は漁業をしておられて、朝三時から夕方まで仕事をしておられたのを、その親の面倒を見るためにお昼に一遍現場から帰ってきて、そしてもう一度漁業に出るというような生活をされている方もあります。

 根室全体がこのことで大変な状況になりました。私が今回最も強調したい発言の趣旨は、今回実施される療養病床の診療報酬上の改定及び本法案での病床数の縮小案は、ある病院が存続できるかどうかのみならず、そのことを通じて地域の医療そのものが崩壊しかねないのではないか、そういった危惧を強く持つという点でございます。

 今回の隣保院附属病院の理事者は、政府による六年後の療養病棟全廃の方針でもって将来の見通しを持てなくなった、あらゆるケースを想定して検討したが、どの方針を取ろうとしても医師や看護師の確保が必要になる、その確保が現状では道内、見通しが持てない、やむを得ない判断だというふうに発言をされました。

 私は、これが根室だけの事態ではないと考えております。例えば釧路市、人口が十九万の北海道の中では中核都市に相当しますが、市内の医療機関は現在、急性期病院、専門科を主とした病院、療養型病院に分けられます。

 私のレジュメの右上をごらんください。

 一九八〇年代から九〇年代初頭にかけては、それぞれの病院が単独で言わば外来も入院もその後のフォローもしておられる時代がございました。しかし、高齢者人口の増加に伴い、そしてまた第四次医療法が制定される際に、それぞれの病院が地域においての役割を鮮明にすることが強く求められました。現在、釧路では、この黄色と緑とブルーに分けておりますような形での、急性期を担当される病院、専門科病院、療養病棟を中心にした病院となっています。高齢者は、肺炎だとかいろんな病気が悪化しますと急性期病院や専門分化した病院に運ばれます。そこでは入院期間が非常に短くなっておりまして、一週間、二週間という単位で退院の方向が出されます。

 しかし、高齢者の場合には、いったん急性病変化した場合に全身の様々な臓器が一緒に悪化することが多く、一遍に元の体に戻れるわけではございません。したがって、その際にリハビリ機能を持った病院や療養病床を持つ病院への転入院が必要になってまいります。そして、そこでの一定在宅への準備が進んだ段階で在宅ないし施設へというのが一般的な方向かと思いますが、釧路の場合には、まず在宅で自分の家族を見る力が極めて弱うございます。在宅で見るためには、家族がしっかり介護ができるか、そのことを経済的にやっていけれるかどうか、医療機関や行政との連携が十分か、地域の町内会で支えがあるかどうか、そういったことが必要になってくると思いますが、極めて不十分な状態です。

 そして、一方でも、一つのついの住みかとなるべき特別養護老人ホームが三百七十ベッドほどありますが、そこは今満床で、待ちベッド患者数が千四百人から千五百人。特養は、基本的には死亡退院以外には簡単に空きませんので、これらの方が大勢待っておられる。どこで待っているかというと、在宅の条件のない中での在宅で待っておられるか、療養病床で待っておられるわけです。したがって、療養病床が空かない。療養病床が空かないので、急性期の病院の先生方は大変な御苦労をなさって急性期病棟でそういった患者さんを診るか、何とか引き受けてほしいといって釧路以外の近隣のところへ頼むか、大変な御苦労をされているわけです。

 そうしますと、療養病床がその中で閉院あるいは内容的に縮小ということになってきますと、そこへ送っていた患者さんが送れなくなる、急性期のベッドが空かないために急性変化した患者さんを診るところがなくなる、こういう構図になるわけです。したがって、療養病床が閉鎖するかどうかではなくて、その地域全体の医療、介護を支える機能が崩壊しかねない構図になっています。

 こういったことは決して釧路単独の問題ではなくて、道内の地域病院の、あるいは地域の実情がほとんどがこれと同様なものというふうに考えられます。

 北海道内では療養病床が三万床、法案が実施された場合には一万二千床まで減ることになります。この中で各地で苦労が続く。いわゆる医師も看護婦もいなくてベッドもない、介護が必要な、医療が必要な人が難民となってあふれ返るという事態が想定されるわけです。しかも、医療区分一の御老人は、一見安定して見えても、感染や転倒などで容易に病状は悪化します。そういう点での医療の必要性ということを全く抜きにして、社会的入院だからといって地域にあたかも吹雪の中に裸で追い出すようなことは、とっても残酷なことだというふうに私は思います。

 今必要なのは、在宅で暮らしたいという高齢者の希望をかなえるために、行政の責任で基盤整備を整えて、そして医療機関や介護に携わる人々が一緒になって町づくりを進める。急変時の対応はもちろんですけれども、広くリハビリ、介護を充実させて、急性期医療から療養、在宅、そういったものを全面的に支えていく中でお年寄りを温かく見守ることだというふうに思います。

 私は、北海道の高齢者が本当に誇りを持って、みんなから尊敬されて暮らしておられるのかということを心配いたします。釧路でこういうことを聞きました。高齢者は尊敬されているんだろうか。釧路では、国鉄がつぶれ、漁業が駄目になり、炭鉱が駄目になり、酪農があえいでいる、そういう中で、高齢者は自分たちが伝えるべき技術や経験がどんどんなくなってきた、誇りと一緒になくなってきたんだというふうにおっしゃった方がありました。

 そういった高齢者につらい思いをさせない、温かい私は行政と、そして周りのみんなでネットワークをつくることが今こそ必要だということを強調して、私の発言とさせていただきます。

団長(山下英利君)

 ありがとうございました。

 次に、片山公述人にお願いをいたします。片山公述人。

公述人(片山憲君)

 御紹介ありがとうございます。片山と申します。

 まずは、本日、このような貴重な機会を与えてくださいました皆様に感謝申し上げます、また、日ごろより厚生労働行政に御尽力されている皆様方に敬意を表したいと思います。

 私は、社会福祉法人北海道社会事業協会岩内病院で社会福祉士として、また精神保健福祉士として、現在では介護支援専門員として日々業務を行っております。今日は、日々の実践から今回のテーマに関しまして幾つかの御意見を述べさせていただきたいと思います。

 早速、レジュメに沿って話を進めたいと思います。

 初めに、我が国における現代社会の一側面は、長期的に人口の少子高齢化と経済の低成長が続いている状況にあります。この問題は、現象として高齢者に対する財政支出の増大とそれを支える若年者の財政負担の増大をもたらし、税収と財政支出のギャップは財政赤字をもたらし、医療、福祉の支出を含めた政府支出の効率的な使用が求められています。

 私が働く岩内病院は、北海道の南西部に位置する地域にあり、診療圏域人口二万六千六百十四人、有床病数二百四十六床で、うち療養型病棟九十床を有し、本地域における唯一の基幹病院として子供から高齢者までの幅広い医療を担っています。しかし、病院経営は地域住民にとっての医療機関としての重要な役割とは裏腹に非常に厳しい状況にあり、経済的な効率が求められるようになっています。

 その一つとして、在院日数の問題があり、継続して医療を受ける必要があると思われる患者の受入先をめぐり、対応に苦慮しています。また、看護やリハビリテーションの実際では、自分たちの持てる知識や技術が十分に発揮されないまま退院をさせなければならないというジレンマも存在しています。私の十二年余りの医療、介護、福祉をつなぐ実践を通し、地域医療を守るということ、個人の福祉に貢献するということに難しさを感じています。

 しかし、医療や福祉の目的は、競争して個人的な利益を得ることが重要なのではなく、すべての国民がひとしくサービスを享受できることに大きな意味を持つと考えます。

 日々の実践から、事例を通し意見を述べさせていただきます。事例紹介に移ります。

 M氏、八十歳、男性。家族構成は、主介護者の妻七十六歳、長男五十一歳との三人暮らしで、農家を営んでいます。

 これまでの経過としまして、平成十三年八月、交通事故により受傷。救急処置後、ヘリコプターで二十分のS市立病院へ搬送、形成外科にて緊急手術が行われています。傷病名は、左眼球破裂による失明、左頬骨骨折、左上顎骨骨折等でありました。

 約一か月の入院治療が終了し、主治医より在宅生活を勧められましたが、在宅生活への具体策が示されず、当院への入院紹介となっています。

 平成十三年九月、リハビリテーションを目的として転院、三か月後退院。その後、在宅生活を送り、在宅生活では徘回等の認知症状が認められていたようですが、福祉サービスを利用することなく家族が介護を続けていました。

 次に、平成十七年二月、多発性脳梗塞にて当院内科に入院。入院中、肺炎を併発し、症状は消失しましたが、その間の長期臥床によると思われる身体機能の低下と食欲不振、経口摂取でのむせ込みが強く、口から取る食事から経管栄養に変更され、身体障害者手帳一種一級を取得。平成十七年六月より療養型病棟へ移り、療養型病棟では嚥下訓練が開始され、訓練により口からの食事摂取へ変更され、六か月後退院となりました。

 現在の障害特性としましては、日常生活動作では、すべての動作においてほぼ全介助の状況にあります。認知症のレベルは、不快なものについては言語、非言語でアピールすることはできますが、介護についての協力や理解はできない状況にあり、昼夜の逆転も見られ、介護者の負担となっています。

 具体的な介護の手間としましては、洗顔、ひげそり、食事介助、口腔ケア、移乗、移動の介助、ベッド上での体位変換、服薬、点眼薬の介助、受診介助等が挙げられます。また、介護に対して拒否、抵抗を示すときもあり、介護者の手にはひっかき傷が絶えません。介護保険で言う介護度は要介護度五です。

 現在利用している福祉サービスは、訪問看護週二回、通所リハビリテーション週一回、通所介護週一回、移送サービス月一回、福祉用具のレンタル、ベッドと車いすということになっています。

 現在の生活上の問題点としては、一、誤嚥、転倒、床擦れの危険性は依然として高く、医療との連携が不可欠です。二、在宅で利用できるサービスに限界があり、在宅生活では家族介護に大きく依存しています。三、農家を営んでおり、農繁期は介護者も労働に駆り出されるため、一定期間の入院を考慮してくれる医療機関との連携が必要です。四、俗に言う老老介護であり、身体機能の低下と認知症を呈している本事例では、長期的な在宅介護は困難と言わざるを得ません。

 最後に、意見に代えて述べさせていただきたいと思います。

 一、本事例では救急医療が病状の予後を最小限にとどめることができました。北海道という広大な地域性を考慮した救急医療の充実が予後の医療費削減に連動すると考えられます。二、在宅生活を支える上で、サービス利用者の基礎疾患と要介護状態への支援の在り方は、医療保険と介護保険の具体的施策の連携、融和が求められています。三、医療依存度の高い人へのショートステイは現行の介護保険制度では制限されていることが多く、病院を利用してのメディカルショートステイが要求されていると考えます。四、主介護者の高齢化に伴い、老老介護の実態が明らかになりました。介護者のレスパイトを目的としたショートステイの充実は緊急課題であると考えます。

 以上、つたないお話で失礼しましたが、御清聴ありがとうございました。

団長(山下英利君)

 ありがとうございました。

 以上で公述人の方々の御意見の陳述は終わりました。

 それでは、これより公述人に対する質疑を行います。

 なお、委員の質疑時間が限られておりますので、公述人の方々には御答弁を簡潔にお願いを申し上げます。また、御発言は、挙手の上、私の指名を待ってからお願いを申し上げます。

 なお、質疑者は、答弁をお願いする公述人を指定の上、質疑をされるようお願いを申し上げます。

 それでは、質疑のある方は順次御発言願います。

水落敏栄君

 自由民主党の水落敏栄でございます。

 公述人の皆様には、お忙しいところありがとうございました。また、貴重なお話をお聞きいたしまして、大変参考になりましたことを感謝いたしております。

 十五分という限られた時間でございますので、奈井江町長の北公述人と医師会常任理事の山本公述人のお二人にお考えをお聞きしたいと思います。

 健康保険法等の一部を改正する法律案並びに良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案でありますが、新たな高齢者医療制度の創設、生活習慣病予防等による医療費の適正化、医療の質の向上を主眼としておるわけであります。

 そうした中で、社会的入院、つまり入院治療の必要がないのに、家庭の事情や介護施設が見付からない等の理由で退院できない方々が少なくないという問題への対応が課題となっております。その多くは高齢者の方々であります。

 そこで、厚生労働省は療養病床の実態調査を行い、その結果として、医療保険適用型、介護保険適用型のいずれでも医師による医療の提供をほとんど必要としない、そうした患者が半数、週一度程度で済む場合を合わせると約八割に上ったというデータから、法案に療養病床の六割削減を盛り込んでおります。六割削減の内訳は、介護療養病床、これは十三万床でありますが、二〇一一年度末までに全廃する、医療型療養病床は二十五万床ありますが、これも二〇一二年度までに十五万床に減らすということであります。

 そこで、公述人にお伺いします。私が心配しているのは、病院からの退院を余儀なくされた入院患者の皆さんがどこに行くのかということであります。特別養護老人ホームも老人保健施設も満床のところがほとんどであります。また、自宅療養といっても、家族は勤務や授業があり面倒を見ることができない。こういうことから、介護難民が生まれるのではないかと危惧しております。

 つまり、療養病床の再編に伴う受皿整備が必要ですけれども、北公述人に町長の立場から、また山本公述人に医師会の立場から、それぞれどのように考えておられるのか、お聞きします。

公述人(北良治君)

 それでは、今、水落先生の御質問といいますか、に私なりの考えを申し上げたいと思う次第でございます。

 そこで、今お話ございましたように、いわゆる療養型病床群、介護型、医療系、特に介護型が全部廃止される、医療系についてもこれまたベッド数を大きく減らすということについては、私どもも非常に困惑しているところでございます。

 ただしかし、その中で、先ほどもちょっと申し上げましたように、医療と介護を明確に区分していかなければ、将来、中長期的に見ますると、何といいましても、いわゆる医療の制度を確保していくという点では、そういった点では、やはり必要度の低い方といいますか、医療の必要度の低い方についてはできるだけ在宅に持っていかなきゃいけない。

 しかし、今ここで申し上げましたように、在宅の介護力は非常に弱まっているということもありますから、この六か年の経過期間の中で私ども自治体として身近な皆さん方をどう支えていくかということを真剣に検討しなけりゃいけませんが、同時に、老健施設だとか、あるいはまた様々な介護的なグループホームなんかもそうでございますし、在宅もそうでございます、受皿整備をこの間にどうしていくか。

 やはり、国も真剣になって考えていただくと、私どもも真剣になって考えていく、そしてその中で介護難民が絶対に起きないように、せっかく、申し上げましたように、医療と介護を明確に分けていくという中でございますから、その区分分けの中で介護難民が出ないような方策を整備していかなけりゃいけない。国はやはりある面ではそういう、何といいますか、受皿整備をきちっとした処置をしていただかなけりゃいけないだろうと、方向性としてはそうせざるを得ないだろうというふうに私どもも考えています。そのためには生活重視型施設の整備も視野に入れた安心感のあるサービスの受皿づくりの必要があるんでないかと私なりに考えている。

 以上でございます。

公述人(山本直也君)

 ただいまの御質問でございますが、私の方は、では資料の六を用いて御説明申し上げます。

 先ほどの根室のことが一例でございますけれども、北海道の場合は、この問題でやはり大きな影響を受けるのはこの濃い黄色の地域でございます。札幌や旭川という都市には、ほとんどこういう問題ということでは大きな影響は受けないんだろうと思いますけれども、この地方の問題をどうするかという、これが、ただ介護の問題ではなくて、医療と密接な問題なんですね。

 根室の例を取りますと、これがただでさえマイナス百九床という、平均値から低いベッド数の中で療養型という形で何とか維持していた医療の要素、薄いながら用意していたものが、それさえも少なくなるということ、これは大変な苦しみでございまして、これを何とか地域ごとの幅のある対応をしていかなければならないというのが我々の立場でございます。

 もう一つ、私たちの悩みを申し上げますが、家族の介護力といいますか、そういう問題に対しまして、北海道はやはり長野のようなモデルと言われるような地域と全く違いまして、離婚率は日本で一番の地域でございますし、持家もそんな高い率ではございません。それから、高齢化率は非常に高いと、一番高いところは四〇%ほどございますし、この地方は大体三五%を超えてございます。ということは、先ほど家捜ししても介護力なんかないという、私、極端な言い方をしました。それが我々北海道の地方の現状だろうと思うんですね。

 特に北海道は産業構造の転換が遅れてございます。物や機械は効率を考えて移すことはできますけれども、人というものは簡単にそういう効率だけで動かすことできないというのが現状だろうと思います。

 我々は、医療の現場で直面してございます、人に接する仕事でございます。是非ともソフトランディングするための幅の広い対応力を考えていただきたいと。こういう流れは国としては当然の流れだと思うんですけれども、そこにいわゆる幅の広い対応力を与えていただきたいというのが私たちの現実のお願いでございます。

水落敏栄君

 ありがとうございました。

 次に、高齢者の負担増についてお聞きしたいと思います。

 少子高齢化がますます進む中で、高齢者医療費の増加を少しでも緩和するために高齢者の患者負担を見直そうということで、法案に示されております。その内容はもう御承知のとおりでございますが、七十歳以上の現役並み所得者、この場合、単身で年収三百八十万円以上、夫婦二人世帯で年収五百二十万円以上の方ですが、これらの方々について窓口負担を現行の二割から三割に引き上げる、七十歳から七十四歳の窓口負担を現在の一割から二割負担にする、療養病床に入院している高齢者に食費、居住費の負担を求める等であります。

 そこで、北公述人と山本公述人にお伺いしますけれども、私は、少子高齢社会の中で支え手である現役層が減っていく以上致し方ないのかなと、こうも思います。また、現役並み所得の方々については相応の負担もやむを得ないんじゃないかな、このようにも思いますが、一方、低所得者の方には十分な対策を講じるべきだ、このようにも思っております。

 こうした高齢者の窓口負担増についてお二人の公述人はどのように思っておられるか、端的にお聞かせいただきたいと思います。

公述人(北良治君)

 今ほどのお話でございますが、私どもはできるだけ、言うまでもございませんが、高齢者の医療費負担を上げないようにしていただきたい、こういう願いは同じだと思います。

 ただしかし、今お話ございましたように、やはり世代間で支えていく、世代間の公平性ということを考えますと、ある程度の負担というものはやむを得ない点もあるだろうと。しかし、やはり何といっても懸念され心配されることは低所得者層でございまして、これがやはり耐えられない、そういう人たちに対しては、やはりきちっとした対策を、政策を掲げながら、取りながらやっていただかなければ、私どもも、直接住民に接する者といたしましては、一番その線が心配でございます。

 特に、私どもの地方については高齢者が多い、低所得者が多いと、こういうこともございますから、そのシフトをきちっとしていただく、ネットワークをきちっとしていただくということが一番大切なことで、ただ、私どもといたしましては、国民皆保険あるいは医療保険制度、これをやはりきちっと皆保険というのは守っていただかなけりゃ、守らなけりゃいけない、持続可能なこととしなければいけない。その範囲の中で様々な政策展開というのはあり得ると思いますから、そういった意味で、今先生がお話あったようなことと同じ意見になるかと思いますが、そういうつもりで私もおります。

公述人(山本直也君)

 それでは、私の方から。

 ただいまの高齢者の窓口負担のことでございますけれども、私たちの実感としましては、北海道という現実の中では、こういう高い収入を持っているお年寄りというのはかなり少ないという印象を持ってございます。これが私たちの実感です。

 私の母は、例を申し上げまして、お金を払ってもいいだろうと思っております。収入のある方は当然そのくらいの責任取ってもよろしい、私個人としてはそのように思っております。しかし、一般的には大変少のうございます、そういう方々は。

 それから、高齢者の場合は、一般的なイメージでございますが、有病率がやはりかなり高いというのがありまして、外来で掛かる数はやっぱり三倍から四倍というのがこれは通常でございます。まあ外来だけを取っただけの場合ですけれども。そうなりますと、同じ割合の負担をしていても、若い人よりはそれだけの、三倍、四倍のお金を払うということが、これが現実でございますから。入院で高額療養の枠というのはございますけれども、それでもその枠というのは大変な負担だろうというのが私たちの実感でございます。

 もう一つ、例を挙げて本当に申し訳ありませんけれども、畑正憲さんという動物作家を御存じだと思います。私たち北海道の人間にとってはとてもすてきなすばらしい方でございました。北海道の自然に恵まれて、あこがれて参りまして、動物農場というものをお造りになり、子供たちに大変夢を与えていただきました。

 高齢になられた段階で奥様が御病気になられまして、根室の近くの大変豊かな自然の中で皆さんとすばらしい仕事をなさってございましたけれども、奥様の病気ということで、医療資源の大変少ない中で、急遽、お友達の関係もありまして、周辺の都市ではございません、東京にお戻りになりました。奥様、日本でも一流だと言われる、赤坂にございます前田先生のところの病院にお世話になりましてお元気になられ、大変良かったと思いますが、先生は大変ショックを受けたと言われておりまして、その後、悩みながら栃木の方にお戻りになりまして、その農場をお造りになったと。苦しんだ記事を読んだことがございます。

 お金のある方はそのくらいのお力があるんで、私たちはもうそれはそれでやむを得なかったんだろうなと思いますが、私たちのように、北海道で生まれて現実に長くいる人間にとったらそのようなことは不可能でございまして、現実にいる現場の人間を何とか大切に守っていきたいというのが私たちの切実な気持ちでございます。

水落敏栄君

 医師不足について、先ほど山本公述人からるる説明がございました。私も本当に大変だと思っております。

 小児科につきましては、休日であろうと夜間であろうと診察が求められる大変な過重労働、それから産婦人科も、生まれてくる赤ちゃんはもう昼ばかりではございませんからこれまた大変な重労働で、そうした意味からもお医者さんになり手がいなくなってくると。私の出身は新潟でございますけれども、私の出身地の新潟県の阿賀病院では、常勤医の大量退職で診療科の一部を閉鎖したと、こうした事実もございます。

 政府は、へき地や小児科、産科を始めとする医師の確保については、都道府県が中心となって大学病院など地域の医療関係者と話合いを行って医師の効果的な確保とか配置を図る仕組み、医学部の卒業生が地元に残るようにする方策、また小児科、産科の診療報酬上の評価を充実させる、こうしたことを考えておるようでありますけれども、しかし医師不足問題についてこれらの方策に即効性が期待することはできない、こう思っています。

 先ほど、本当に北海道の深刻な医師不足のことについて山本公述人からお話ございましたけれども、山本公述人としてはそうした状況をどのようにこれから対応していかれるのか、また今後どうしたらいいのか、また政府に対してこうしたことをやったらいいかというふうな御要望があったら、残り時間があとちょっとしかございませんので、二分以内でおまとめいただければと思います。

公述人(山本直也君)

 資料の四をちょっと説明させていただきたいと思います。

 これは、周産期の母子の医療センターのモデル図でございますが、北海道も、やむを得ずといいますか、安全のために医療の効率化を図る制度として医療資源をこのような形で集中してございます。その次の五ページでございますが、小児の救急医療体制も、このような輪番制の地域とそれから拠点病院構想とを用いまして、何よりも効率というのはあくまでも制度の効率でありまして、患者さん方にとって効率がいいということではございません。あくまでも安全を優先するしかないというのが現状だろうと思います、北海道の場合は。ですから、大変な負担が患者さんや家族には掛かるだろうと思っております。

 そのような中で、産婦人科の数の激変ということはもう目を覆うような状態でございます。これは二ページにあるとおりでございます。このようなもう過激といいますか、大変な状況の中で産科の先生が働いておられます。西島先生もお医者さんでございますから、いろんな細かいことをお分かり。

 私の同級生の個人のお話をさせてもらいます。産婦人科の医者として、私の同級生三人産婦人科の医者になりましたけど、二人は心筋梗塞と急性期の病気で五十代に亡くなりました。年間百四、五十の出産をやっていた、地域の中で、やらざるを得ない状況に追い込まれ、これは個人の数字ですから何とも言えませんけど、そのような厳しい、私たちの仲間からとりましたら大変だったんだなという意識しかございません。そのようなのが北海道の現実でございます。

 それから、御存じのように、医療の安全ということで、裁判の多発ということで若い先生方がもう婦人科の産科を拒否しているという状況は、これは、一つのことを解決すれば解決するような問題だとは決して思いません。多くの原因を排除しながら、直しながら、何とか小児科と産科の方に若い先生が夢を持っていけるような体制をつくっていくのが我々みんなの責任だろうと思っています。一つの答えでどうにかなるという問題ではございません。このように考えております。

水落敏栄君

 ありがとうございました。

 終わります。

円より子君

 民主党の円より子でございます。

 今日は皆様ありがとうございます。

 参議院では、これまでに対政府質疑を二十六時間やってまいりました。そして、参考人質疑も二回、そして今日、北海道にお邪魔いたしまして、皆様方に来ていただいて地方公聴会という形になったのでございますが、私ども、今回の医療制度改革は医療費を抑制することが主眼であって、こういうことをしていては、我が国の医療制度、もう壊れて、一度壊れてしまえばもう元には戻らないんじゃないか、そういう思いがしておりまして、反対の立場から審議を進めてきたんですが、今の自民党の水落さんからのお話でも、私どもと同じ、実は私も質問したかったことが出ておりますし、参考人の方々も、与野党からの推薦でいらしても、皆様大変問題だということを言っていらっしゃいます。

 こうした大変問題のある、まだまだ審議を尽くして、それこそ修正をしなければいけないような法案が、残念ながら今週、国会が閉じられてしまいまして通ってしまうかもしれないというような状況にございまして、今日せっかく皆様方のお話を聞く機会でありながら、私は何ともむなしい気持ちで質問をさせていただくという立場にあるんですけれども、まず橋本公述人、堀毛公述人にお聞きしたいと思いますが、先ほどの質問にもありましたように、療養病床の削減問題です。

 社会的入院は確かに重要な問題でございますけれども、これが社会的入所になるだけではないかとも言われておりますし、それから在宅については、先ほど片山さんからもお話がありましたように、私の周りでも、在宅で介護をするために仕事を辞めざるを得なくて食べていけないという人たちはもう十何年前から何人も、大勢、ケースがございます。

 そうしたときに、往診ができる医者とか二十四時間の医療機関とか、そういう医療体制だけを整備しても在宅医療というのはできない。住宅問題もありますし、それから北海道のような広いところでは例えばドクターヘリのようなことも整備しなければいけませんし、何よりも経済が疲弊していては、それぞれの方が経済的にどんなに家族を介護したくてもできないという状況があるわけで、もう政府が、どの省ももうこぞってこのことをしっかりやらなければいけないというときに、先ほど山本さんからもソフトランディングが必要だと、六年の経過措置の間にどれだけのことをやれるかということがあるんですが、実際、橋本さん、堀毛さんにお伺いしたいんですが、閉鎖とかそういうものが起きてきたり、また待機で特養が入れないというようなときに、在宅やそういった人たち、難民が出ないようにするには本当にどんな具体的な施策があるのかどうか、できればお聞きしたいと思います。

公述人(橋本洋一君)

 非常に難しい御質問なんですけれども、実際、今おっしゃられましたように、受皿の問題が非常に緊急課題としてクローズアップされてきまして、現在でも特養で入所一―三年というのは常識でありますし、特養ですね、老健も大体半年ぐらい掛かるというのが現状です。

 確かに今、社会的入院というものが療養型病床群のある部分ではかなりの位置を占めているんだという御指摘も一部は正しいことだと思いますけれども、今までの日本の歴史をずっと見ていった中において、療養型病床群が他の先進諸国にない、そういうナーシングホーム的な役割の一端も担ってきたということなんですね。

 そういう、ちょっとお答えに合致することばかりじゃなくて申し訳ないんですけれども、そういう経過があることを、やはり時間を掛けて少しその受皿づくりをきちんと整備していくことが必要だと思うんですけれども、現況で、現在そういうことがこれから起きてくるということに対して、私たちは、一つは、当院でやっていることは、訪問診療というんですか、それをかなり整備していって、実際に自宅にいらっしゃって、いつでも入院するというんですか、そういうようなことに対して、緊急避難的な状況を、ここまで行ったらこれはもう大変だというような方がかなりいらっしゃいますから、そういう方をそういうことで察知するという形にしています。

 ただ、残念ながらまだパワー不足でございまして、それが完璧な状況になっていないことは事実でありますが、少なくとも、目の前に患者さんがいて、そういった方々が高齢であってもやっぱりそれなりの治療を、一般病棟での治療を必要とするような方々である場合、やはりそういう形で逐次モニタリングしていくということが必要だと思いまして、それを実施しております。

公述人(堀毛清史君)

 堀毛でございます。

 私は、今の御質問、在宅が出ないようにするにはどうしたらいいかということで、短期的な課題と長期的なものがあると思います。

 最も短期的には今回の法案を廃案にしていただくことだというふうに思います。このことを抜きにして、通ったときにどうしようかという話ではなくて、是非とも今日の公述人の意見も受け止めていただいて、今日おいでの委員の方には国会での大活躍を私は是非期待したいというふうに思います。

 中長期的には、基本的には人に金を掛けるというふうに私は考えております。先生方がそれぞれおっしゃっていますように、実は、在宅の受皿ということで受皿だけを増やして物事が解決するということでは決してございません。社会的入院と言われている医療の一の方も、先ほど申し上げましたように、いつでも急変することがあり得る医療と介護がともに必要な人だという認識が私は必要だと思います。行政上で医療と介護を区分して対応することは大事であっても、同じ患者さんを、この人は医療の方、この人は介護の方というふうに分けるのは、人間を臓器別に分けるのが不自然なのと同じように不自然なことだと私は思います。

 したがって、そこの地域で暮らしていく、先ほど円理事がおっしゃった諸条件、経済的な、家のことも含めて、そして何よりも、医療機関や行政の皆さんや、それから介護福祉を担当する人方がネットワークをつくって、そこでそういう人方を支えていけるような社会づくりを長期的にはする、そのためには人にお金も掛けるし、そのことを尊重する社会をつくり上げることがどうしても必要だというふうに私は考えます。

円より子君

 ありがとうございます。

 細川公述人にお伺いします。

 財源とか医療費の方からばかり見ていて、本当に人を見ていないというような法案がたくさん、医療の今回もそうなんですが、ありますが、地域で予防、未病ですね、未病って大変面白い言葉だと思うんですが、そういうことをやっていらっしゃると。医療でやはり、地域で見ていらっしゃる人というのがすごく大事だなというのがあるんですが、今の日本では医療費、人にちゃんと使われて、適正に使われているとお思いでしょうか。

公述人(細川曄子君)

 本当に私見ですけども、私は、介護保険がスタートするときに、もちろんケアマネの試験も受けて勉強もしたし、大変期待をしました。見ていると、すばらしい、見たこともないような立派なのがどんどん建ちまして、それを、私はドクターのネットワークがたくさんありますので、相談に来られたのは建設屋さんでして、実はこういうのをしたいと言うので、私は私の周辺のドクターとお話ししました。細川さん、それはやめた方がいいと。で、私も、制度の方向性を見る意味でそうだなと思いましたし、今も本当に介護予防の活動をやっていて初めて、何かもう一度炎が付くような思いをしておりますんですけど、本当に大きな流れの中で、国の大切な税金とか、最も効果良く、最終的に国民の幸せにこう流れてこう使われるのだというところが本当に大事ではないかなというふうに思います。

 言葉は悪いですが、病院の院長の高級車になったり、それから、言葉は悪いですが。実際に私は検診車も、今胃がん検診車持っています、対応として。その前ももう一度。本当に何も持たないんですが、ネットワークと創意工夫と、苦しいからいろいろな方法を考えて、多くの人材の人と働き具合を相談することによって、今は道外の先生方とのネットワークも大変良くて、実際に検診のようなこともできています。その検診は、検診をやりたかったわけではなくて、その後の保健指導をするために、やはりメディカルデータが即自分のところにあって、説得力があって、効果が測定できてと、そういうことの実際にやるにはどうしたらいいかということで作り出したことですが、決してビルを建てなくてもできております。十何年やっております。もう管内では年間三千人ほどの健康管理をしております。本当に事業所は、もう二十人とか三十人の事業所に検診車が行きますので、本当に皆さんが心配してくれて、社長さんたちも心配してくれて、もうかってんのとか言いながら、これは大変だということで慌てて機材の持ち運びから、いろんな御紹介をしてくださったりします。

 そういうふうに、お金に頼ったり、受け手のところが、薬代に、の大きな巨大な製薬会社に流れたりというような、どこかに何かひずみがあるのではないかと。このことは断固、本当に政治と政策の理念で修正していかなければ、文明の進歩に合ったような幸せ感が実感として出てこないのではないかと。

円より子君

 山本公述人と橋本公述人にお伺いしたいと思います。

 医療というのは国民の財産でございますけれども、これがすべての国民が効率的に平等に分け合える改革と今回の法案がなっているのか。そういう意味で医療費適正化というものが、適正化なんて何となく美しい名前に聞こえますけれども、この下に医療費の削減や抑制を図るだけで医療現場が更に苦しめられるのではないか。今回のこの医療費適正化が北海道の医療にどのような影響を与えるか、お話ししていただきたいと思います。

公述人(山本直也君)

 私も、大変つらい、北海道の人たちは今大変な状況だろうなという。実は、昨年の予算の決算が税収不足で二十億近い赤字になるということが分かりました。北海道の予算は二兆八千億ほどこの数年ございますけれども、赤字団体に落ちる寸前であると、これが現実でございます。私の兄弟も実は役人でございましたので、その悩みはよく分かります。

 産業は福祉の糧であるという有名な言葉がございます。北海道の今の産業の状況は先ほどの釧路のお話にあったとおりでございまして、社会そのものの構造が変化している中で、お年寄りに大変な負担を、悲しみを与えていっているんだろうということは誠につらいことでございますけれども、私たちの世代も含めて次の世代のことを考えましたときに、本当につらいことを耐えながら物をやっていかなければならない。

 このたびは、政府の方から、私たちが願った案とは少しは違いますけれども、最悪の形でなくて、よく頑張ってくれたなと思えるような仕組みで僕は案が出てきたのではないか。これは苦しんで手術を受けるしかないんでないかなと。医者というものは一〇〇%求めることはいつもいたしません。常に不完全な形でしか患者さんに接することができません。それが現実でございますので、次の世代のためにも私たちはやはり大変なつらさを今耐えていかなければならないんだ、お年寄りとともに逃げるわけにはいかないんだろうと思う。これが私の今の切実な気持ちでございます。

公述人(橋本洋一君)

 非常に今、七十五歳以上の後期高齢者というんですか、今までは六十五歳以上を高齢者と言っていたのが、七十五歳は前から後期高齢者でしたけれども、そのうちに七十五歳以上だけが高齢者になるんじゃないかなというふうな危惧を抱くぐらい、お年寄りといいますか、確かに先進諸国どこも、その中で日本が特に高齢化率が非常に加速している状況にはありますが、高齢化ということに基づいてエージングに伴う医療的な疾患の合併率が非常に高くなると。この医療区分二に書いてありますパーキンソン病関連疾患なんかもその代表でありますし、ここに書いていませんけれども、アルツハイマー病とかアルツハイマー型痴呆とか、そういった高齢化とともに増していく疾患が非常に多うございますね。だから、高齢者という年齢、そういった方々が社会で今活躍できないという状況があるからという、ちょっと私自身の独断と偏見もあるかもしれませんけれども、そういった方に対する費用というのはできるだけ抑えようという試みが片っ方でされていることは事実だと思うんですけれども、しかしそれと反対に、いわゆる合併率の高さという面ではやはり高齢になればなるほどそうだという、そういうデータは客観的にはいろいろな発表をされています。それを薬物治療に偏った治療だけでやれるとは私は思っていませんし、リハビリテーションがすべてをかなえるとも思っていませんが、そういったものを複合的に活用して、やはりそういった方々のQOLを高めるということが現在の医療に課せられた課題だと思うんですけれども。

 今回のこの医療区分の分類は、アメリカのRUG3分類に準じたものとはいえ、非常に、さっきも申し上げましたけれども、本当にこれをモデル病院として、国の方でそういうことで適正なこの金額できちんと運営していけるモデルを見せていただきたいと。私は、正直言いまして、これはきちんとしたことは絶対できないと思っています。

 だから、その対症療法として、先ほどちょっとお示ししましたけれども、この七ページですけれども、厚生労働省の。神経難病等に含まれるものの中において、今度、仮性球麻痺とかそういったものをそこに加えて暫定的な措置を二年間とりましたが、この仮性球麻痺というのは多発性脳梗塞とか何かに多い、特に出る。もちろんそれ以外に、ちょっと専門的な話になって恐縮ですけれども、錐体路というものの上の障害ですね、その神経核の上の障害が両方に現れた場合において出てくる疾患ですけれども、そういう重症なものを今回は暫定的に医療区分三に加えるということでしたけれども、これは是非、何回も申し上げますけれども、暫定的にするんじゃなくて、これからもずっとこれを維持していただきたいと思いますし、実際にそういった方は嚥下障害とか構音障害、言葉が出ないとか、特に嚥下障害というのは命にかかわりますから、栄養摂取の面で。そういった方々はやむを得ず、いろいろ議論はあるでしょうけれども、胃瘻造設なんかするんですけれども、そういった方のある部分で肺炎とか何かで亡くなる方が非常に多いというのも事実なんです。

 だから、今までこの社会の中において一生懸命頑張ってこられた高齢者の方にとって無慈悲にならないような、やはりそれぞれの障害とか、いろいろ持った方が一般の我々の社会の中において生きていくという感じの中で在宅を進めていくことについては私も賛成ですし、今行っています回復期リハビリテーション病棟の結果として、日本全国で毎年、今までのデータで七万数千人が自宅に帰られているという、そういう実際の実態もあるんですね。

 だから、私は、療養型病床群自身が一番最後の住みかと考えるべきかどうかということについてはちょっと疑問ですけれども、でも現実的にそういう部分もやっぱりあることは事実です。それを完全にもうそうなんだと決め付けることはやっぱりしないで、やっぱりそれをできるだけ自宅復帰にしていきたいというか、私たちが自分が住みたいところはどこなのかということを自分で自問自答しながらそれが実現していくような社会をやっぱりつくっていくべきだと思います。

円より子君

 ありがとうございました。

渡辺孝男君

 公明党の渡辺孝男でございます。

 今日は公述人の皆様に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

 まず最初に、北公述人の方にお伺いをしたいんですが、やはり病気になってから、重症化してから医療を行うと高額な医療になってしまうということで、やっぱり保健ですね、健康を保つ方の保健に力を入れていく、治療から予防の方に力を入れていくということで、北公述人の方でも大変努力をされているということでありまして、何か子供さんの方からの健康対策というものもされているということでございますので、この点ちょっとお聞かせいただければと思います。

公述人(北良治君)

 今、渡辺先生のお話でございますが、私どもの町はやはり今お話があったように予防と。そして、そのためには何といっても、名前でも生活習慣病になっておりますから、その予防対策として、やはり子供のときからその生活を変えていく努力、そのためには実態を把握しようということで、小学生、中学生、高校生も含めてでございますけれども、児童に対して、子供たちに対して健診をやっております。健康診断をです。そのデータを見ますると、非常に肥満が多いだとか、あるいは場合によっては貧血が多いだとか、あるいは疾病内容のものを含んでいるだとか、こういった人たちが意外に多かったと。

 ということは、やはり今、朝食をきちっと食べて、さらにはまた生活をきちっとするということがなかなかなくなってきた。したがって、そのデータを皆さん、家庭のお母さん方に示します。お母さんたちは、だんなさんがちょっと具合悪くなっても余り関心ないんですが、子供たちがやはり異常であるということになりますと大変な関心を示しまして、それが保健運動につながっていっている。

 そして、それがいわゆる子供たちから家庭へ、家庭からまた地域社会全般に、奈井江町の場合は保健運動、そして予防運動ということで大きく広まっている事実がある。大変効果が、予防運動に効果があるのではないかと思います。そのゆえをもって奈井江町は高齢者医療も若干ずつ下がってきておりますし、言えば健康で、健康寿命長くて幸せにしていくということが子供のときからいわゆるその習慣を付けていくという展開をしているということでございます。

渡辺孝男君

 今回の医療法あるいは様々な医療保険制度の改革ではそういう予防を重視していくということでありますので、そういう地道な努力が本当に大切なのかなというふうに思っているわけでございます。

 もう一つは、やはり医師不足というお話も今ございました。地域で医師の偏在といいますか、診療科におきましても数においてもなかなか不足を解消できないということでありますけれども、北公述人の方では、地域の広域の市町村で連携をしながら、病院の方も共同の病床を持っておられて、開業医、かかりつけの医師がそこを利用しながらやっているということでございますけれども、これは非常に多くの地域でも参考になるのではないかなと思いますが、これの効果等につきましてお話をいただければと思います。

公述人(北良治君)

 今、渡辺先生からお話ありましたように、先ほどもお話し申し上げましたけれども、病診連携をやらせていただいております。これは、いわゆる民間医の皆さん方が私どもをリードしていただきまして、指導していただきまして、奈井江町の町立国保病院で、開放型病院という共同型病院ということで、民間の先生方が、患者さんが入院が必要になると奈井江町立国保病院に入院していただく。そして、併せて診療、検査等も全部、町立国保病院の医療機器を全部使っていただいて、そして医療の継続性、それから町立国保病院と共同でカルテを持ち合わせながら一人の患者に対してきちっと対策を練る。そして、私どもはプライマリーケアを中心としておりますから、専門的になりますと専門医のところに行かなけりゃいけません。そこも先ほど申し上げましたように病病連携で、これまた隣の病院と連携し合いながら、患者に安心、安全のネットワークをつくっていっております。

 それが効果として地域住民の安心、安全をつくっていると同時に、先ほどもちょっと申し上げましたが、あの地域としては老人医療費も下げてきているということが結果として出ておりますし、予防活動、疾病予防とも、お医者さん自体が、ただ治療をするのでなく、いかに予防をしていくか、そして病気になる前に健康運動を何をしなけりゃいけないかという、お医者さん自身がそれを考えていただいておるというシステムづくりをしております。

 以上でございます。

渡辺孝男君

 高齢化率、お話を聞きますと三〇%ぐらいになっているということでありまして、今、そういう国会の方で議論をされているのは、二〇二五年のときに、どう、高齢者の医療費が上がった場合にそれを適正化するかということでありますけれども、二〇二五年の段階では大体三〇%ぐらい高齢化率になるのではないかと、まあ全国ですけれども。それの、現在三〇%でありまして、しかも、そういう病病連携あるいは病診連携、そしてまたそういう予防対策、そういう健康を保つ方の保健対策をしっかりやっていると、医療費も下がってきているというようなデータがあるということで大変参考にさせていただいたわけでございます。

 それで、山本公述人からちょっとお伺いをしたいんですが、そのように病病連携あるいは病診連携で地域の皆さんに良質な医療を、サービスを提供していくということは非常に大事なんですが、しかしまた北海道のことを考えますと、地域の医師不足というのは本当に大変深刻だということであります。

 様々な形で医師が地域医療に参加してもらうことが大切なんですが、先ほどのお話ですと、道内の三つの医育機関が協力をしていただいて、そういう地域医療にも貢献をしていただくということでありますけれども、なかなか地域、北海道内でそういう医師を十分に確保するというのは難しいと思うんですが、道外からもそういう地域医療に従事するという方をどう確保していくのか、その点は何かいろいろ協議がなされているんでしょうか。

公述人(山本直也君)

 私の資料の、一番最後の資料、九枚目の資料でございます。平成十六年度と十七年度の医学部を卒業した研修医の二年間の状況でございます。一番左の数字が研修医の数でございます。それから、大きな病院のことは四角い枠に書いてございますけれども。

 では、一番分かりやすい場所で一番下の方を見てください。日高の方でございます、日高地方でございます。上の列が十六年、下の列が十七年ということになります。一番左が研修医の数、ゼロでございまして、施設数、実際にやっているのが二番目でゼロでございます。私のところはやりますよと言って手を挙げているところがこれは一つございます。そういうふうにこれは表してございます。北海道全体で見ますと、大変中央に出ていく研修生が多うございまして、研修制度のなかったときに比べますと本当に少ない状態になっているというのがこの数字でございます。

 例えば、旭川医大というのを見てください。右側の上に書いてございます。一年目が六十四人の枠があったんでございますけど三十八人しか応募がなかったと。翌月は二十五名でございます。今、旭川医大の私の友達の教授たちは悲鳴を上げているというのが現状でございます、どうするんだと。この研修医制度の形というものがどれだけ大きな影響を今残しているかと。良かれと思ってやったことでございますけれども、弱いところに大きな影響を与えているということだろうと思います。北大も札幌医大もそれほどいい数字ではございません。北海道全体がこのような数字でございます。

 この中で私たちが考えていかなければならないことは、予防は今言ったように本当に大切でございますから、そういうことをやっていかなければなりませんが、現実問題としては、大学の医局という今まで医師の供給を何とか支えてきた制度がもう崩壊寸前にあるということでございます。

 室蘭にある大手の四百床近い病院の産婦人科が医者がいなくなって大学引き上げたと、医局が成り立たないから引き上げるという話でございます。そういうことが現実に今起こっておりまして、まあ本当にどうしようかということで目の前が真っ暗な状態だというのが実情と。

 ただ、北海道というのは、努力、地域のために、定年で、就職なさってお辞めになった方を熟年ドクターバンクということで選んで積極的に送るようなシステムと、女性のお医者さんが増えておりますので、これをいかに活用するかということで、保育その他含めて、女性の休眠状態の先生方をできるだけ社会的に活用すると、女性ドクターバンクというのも今動いてございます。

 そのような中で何とか、産科、小児科の減少する大きな流れの中で、北海道のこの困難な状況の中で、我々今努力していることでございますけれども、何せ制度の効率化を図りながら、安全第一に何とか図っていきたい。そして、医師の応募を、どのような魅力のある研修制度を設けながら全国から多く引き受けるような、そういう努力もしてございます。しかし、本当に大変な状況だというのがこんな数字で表れております。

渡辺孝男君

 北海道、大変広い地域をカバーしているわけでありまして、先ほどもお話がございました救急の患者等、地域に専門医がいないときにはやはり専門の病院に運ばなければいけない、そこで治療を受けなければいけないということでありますけれども、北海道ではドクターヘリという事業が一事業行われておりますが、これが非常に、そういう医師の偏在の解消にも多少ともお役に立つんではないかと私どもは考えて、公明党は推進をしているわけですが、北海道の広い地域を考えますと、今後どの程度そういう救急等でドクターヘリのニーズがあるのか、もしお考えがございましたらば教えていただければと思います。山本公述人です。

団長(山下英利君)

 山本公述人、お願いします。

公述人(山本直也君)

 四番目の資料、ごらんになっていただきたいと思います。

 今、私、この地図を見まして、札幌を中心にしてグリーンの線が走ってございます。患者の搬送の方向を示しておると同時に、これは患者の年間の数を太さで示してございます。ちょっと大分前に作った記録で、これ、ちょっと記憶に十分ないんですけれども、釧路からこの細い線で行っているのが十名単位だったと思いますので、この太いところはかなりの数なんですね。こういうふうな形でドクターヘリが動いてございます。これが北海道の今の、機能の集中している札幌を中心にして動いている現状でございます。

 このようなものが、これだけでなく、整備された高速道路を使いながら救急患者を運べると。冬六か月間、私たちの土地は雪で埋まりますので、何としてでも安全に患者さんを図ると。大変不便でございますけど、効率というのは制度のための効率で、患者さんにとってはもう効率どころではございませんで苦しみですけれども、安全を優先してと、何とかこのように医療の資源を集中してやっていきたいという、是非ともドクターヘリを始めとしました社会的な基盤を応援していただきたいというのが私たちの希望でございます。

渡辺孝男君

 先ほど、未病の対策というものも健康を保つために大事であるということで、今、公明党の方も未病を含めた統合医療ということで推進をしているわけですが、健康保険の中での健康を保つ事業、保健事業を推進をしていくと同時に、また、自助努力でそういうヘルスプロモーションをしていくということは大変重要だと思うんですが、時間がありませんけれども、北海道でのどのような展開をされているのか、少し短い時間ですけれども、お話をいただければと思います。細川公述人の方ですけれども。

団長(山下英利君)

 細川公述人、簡単にお願いいたします。

公述人(細川曄子君)

 今のは、本当に道内の、具体的に言いますと、例えば信金健保組合というのがあります。ですから、函館信金から稚内信金まで、皆さんの健康診断後のデータをパソコンの中に入れまして、それを持って、実際に、データとか文書は行くけれども、やはり人をその日から、今日から変わろうというようなことは、やはりフェイス・ツー・フェイスでなければ説得力がありませんので、今年はこれに絞ろう、五年間で体重十キロ以上増えたのに絞ろうとかですね、協議をしまして、本当に五年間で十七万キロ走っていますので、私の車も。本当に広いです。

 ただ、十分にそれに対して費用が出るんであれば私も多くの人をネットワークでつなぐことができるんですが、何分にも命懸けでまだ走って、そうかというようなことですので、これはなかなか、企業としてどんどん自力で増やしていくということにはちょっとなっておりません。

 ただ、道外からいらっしゃる企業の方たちは、例えば政府系の金融機関ですとか、それはもうほとんど、あるところは全部一手に引き受けていますので、大体具体的にこういう働き盛りの人と面談で指導するというのは、年間五百人くらいはいろんなところからやってます。

 そのほかに、あと、健康づくりの講演とか、明日も実は帯広の中で道内の精糖会社の、東京からの健保組合の依頼を受けまして、確かにそのメタボリックシンドロームのことについて、エクササイズを含めてそういう時間を持ったりします。そういうことは、やはりやってみせることによって意識が変わっていって広まっていくという、もう本当にそれしかないと思います。

 管内のものについては、本当に健康診断、たった一回の労働時間ですので、本当にそのときに、教育のチャンスとして本当に、お酒を飲み過ぎちゃいけないとか交通事故を起こしちゃいけないというような話から含めて、事前に何時間かを事業主が時間を取ってくれると。貴重な労働時間でも、みんな講堂に集まって話を聞こうというようなことを実際にしていただいております。

渡辺孝男君

 ありがとうございました。

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 国会の中では、法案の枠組みについて言わば議論をしているんですが、実際に施行されるのは現場であり、医療現場ということでいえば、本当に今日のお話でリアルな実態をお聞きすることができたというふうに思っております。

 堀毛公述人にまず最初にお伺いしたいんですが、やはり北海道の場合、医師不足の問題が非常に深刻だということが先ほどからも話に出ております。この問題について、その原因とかあるいは解決方法について御意見をお聞かせください。

公述人(堀毛清史君)

 堀毛でございます。

 北海道の医師不足は本当に深刻だというふうに思っておりまして、この二年間で医師派遣を打ち切られた自治体病院が全体の四分の一に上るというふうに言われております。内科が一番多いんですけれども、産婦人科と小児科が多くって、北海道には無医地区と呼ばれるところが一杯あるわけですけれども、無産科医地区、無小児科医地区が増えてくると。ですから、私は、地産地消といいますけど、無産無小なんですよね、こういうところは。こういう地域が次々と生まれて、安心して子供を産めない地域が広がっているというのが実態です。あるいは、そこの地域にたった一つしかない医療機関や、それから先ほどのようなたった一つしかない療養病棟が崩れていくというのが大きな特徴になっているわけです。

 私は、この医師不足についてどうしても一言申し上げたいのが臨床研修制度についてです。この間実施されましたこの制度については、当初、多くの問題を抱えながらも、私は基本的には大きな前進面が主たる評価だというふうに考えています。この新しい研修制度の下でそれぞれの医師が、本当に総合的な力量のある医療、患者さんに対して誠実に向き合う医師がたくさん生まれてきているということを強く実感しております。

 しかし、その一方で、この制度が一つのきっかけになって大学からの派遣が引き揚げられた。これは、大学の先生が何か楽をしようだとかそういう思いでやったことではなくて、大学そのものが今大変な状況になっております。旭川医大では実際に大学に残られる先生方が三十を切るというような事態になっていまして、大学の基本的な診療や研究そのものが本当に崩壊の危機にさらされているというようなことがございます。

 私は、今回の医師不足については、確かに科における偏在、地域における偏在もあるには違いないんですけれども、そもそも日本においての絶対的な医師不足が根底にあるという見方をしております。ここをどう見るかがやはり一番大きいと考えています。その元々の絶対的医師不足のところへ、研修の先生方を基本的には直接的な医師労働から外すという研修の位置付けをすれば、日本全体の一〇%の医師が減った勘定になるわけなんですよね。ですから、直接的にはそれが問題のように見えているということかというふうに考えています。

 私は、この医師不足問題については、長期的に見たときには間違いなく、日本の政策として医師を充実強化するという方針を取らない限りは、そのほかのどんな方針を取っても、根底が絶対的医師不足にあるということを乗り越えることはできないのではないかというふうに考えます。

 したがって、そこのところが一番の強調点ですが、それと同時に、そうなるまで私たちは手をこまねいているわけにはいきませんので、私は、先ほど山本先生が具体的な提案を幾つかされました。本当に私も賛成です。それと同時に、大学、医育機関とそれから民間の研修病院、これが今一緒になってニポポの会というものをつくりまして、北海道全体の研修医養成に責任を持とうという大変意気高い取組が行われております。これと、地域の自治体病院や医師会の先生方、こういった力を結集して道内全体の研修のレベルを上げると同時に、場合によっては、そこで医師の派遣も含めた検討をできるようなネットワークづくりが必要なんではないかというふうに考えます。

 そうしなければ、やはりいろんな条件の下で、単純に現在いる医師の中で個人の責任だけに任していては、その医師の研修やそれから医師の生活そのものがいろんな困難にぶつかるわけです。ここには、公的な責任と私たち医療機関に従事している者が一緒になってそれをつくり出す力、それが必要だというふうに考えています。

小池晃君

 ありがとうございました。

 加えて、この法案の問題点、療養病床のことを公述人は中心にお話しされたんですが、何といっても負担増ということが当面の問題としてもあるわけですが、これについての地域の皆さんの声、患者さん方の声、ありましたら御紹介ください。

公述人(堀毛清史君)

 実際に私のところへ見えている患者さんでは、圧倒的に多いのが薬の間引きでございます。薬を毎日飲まなければいけないのを、二日、三日に一回にする。それから、話題になっておりますジェネリック製品を是非とも導入してほしい。これには極力私どももこたえるようにしておりますが、そういうことがあります。しかし、それと同時に、食べるものを食べないで何とかしのいでいるというお年寄りがたくさんあるのも事実です。

 この間、私どもは、今回の負担増に関してアンケート調査、それから新聞にはがきを折り込んでの御意見をいただきました。約六千通の返信がありましたので、その中の声を紹介したいと思います。

 私は目が見えないのでみんなに世話になっているものですから、何があろうと病院には行きたくない、家で死んだ方がいい、どうしてお国は意地悪ばかりするのですか。別の方、まじめに働いて税金を納めて、老後は安らかに暮らしたいと思っていたが、あらしが吹き荒れようとしています。私の一生は何だったのかと自問自答の毎日です。さらには、九十歳の父は入院中です。何とか医療費は支払っているけれど、いつまでもつか分かりません。病院に行くたびに早く死ねばよかったと言う父。一体いつから年寄りにこんなことを言わせる世の中になったのか。戦後頑張ってきた両親に豊かな老後を送らせてあげたい。

 こういった声がたくさん寄せられております。

小池晃君

 ありがとうございました。

 続いて、山本公述人にお伺いしたいんですが、療養病床の問題で、この七月からもう診療報酬の大幅な改定があります。これが急性期病院も含めて地域の医療に大きな影響を与えるのではないかという点については公述人はどんな御意見をお持ちでしょうか。

公述人(山本直也君)

 もう一度、急性期病床との……

小池晃君

 いや、療養病床の削減の大方針が出て、七月にはもうすぐにこの診療報酬の医療区分の問題が持ち込まれて、かなり病院の経営自体も深刻になるし、あるいは追い出しという事態も想定し得ると思うんですが、これが北海道の医療全体に、急性期の医療も含めてどんな影響を与えるというふうにお考えかということです。

公述人(山本直也君)

 先ほどから申していますとおり、やはり地域に圧倒的な差の違いが出てくるというのが現状でございます。

 医療資源の弱い地域は、慢性期の病床が急性期病院と何の差もない形で働いているというのが現状だろうと思うんです。必要な病床と、基準病床そのものなんだろうと思います。それが同じような形で、条件の悪いという、経済的な条件が悪いというだけで同じ比率で減っていった場合に大きな打撃を恐らく、このような不利な資源の状況にあるところは圧倒的な影響を受けるだろうと、それを大変心配しております。

小池晃君

 続いて、橋本公述人に療養病床のことをお伺いしたいんですが、七月からすぐに診療報酬の問題が始まる、一方で参酌標準はそのままにしておくと。これ見直すのかということを国会で問われて、厚労省の方はこれは変えられないと言うんですね。言わば、出ていけということだけあって、受皿としては当面転換できないと。こういう実態をどういうふうにお考えになりますか。

公述人(橋本洋一君)

 ちょっと先ほどは時間がなくてお話し申し上げなかったんですけれども、今おっしゃったように、参酌標準によって平成二十年まで三年間、結局、何といいますか、そういう規定の数自身が撤廃されない限り、いわゆる療養病床の方からは、医療区分の一の人とか何かというのは、片っ方でもう病院には入院する必要ないんだと言わんばかりの点数を付けられて、実際そのことで医療機関から、そちらから強制退院という言葉はいいかどうか分かりませんけど、そういう状況になりつつある中で、受皿の方は全然変わっていないわけですね。

 だから、これは早速、まず受皿づくりを緊急避難的というか、まずこの参酌標準をすぐ撤廃していただかなかったら、もうおっしゃるとおりどうしようもないと思いますね。だから、受皿自身をつくりますよといっていてもそれが全然動いていない。しかし実際に、その大本の言わば社会的入院だと言われている医療区分の人たち自身に対するこういう点数が実際にもう七月一日から実行されようとしていますから、これはもう早急にそういうことについて手当てしていただかない限り、正に療養難民は目の前にもうあふれ出てくるだろうということは必至だと思います。

小池晃君

 ありがとうございました。

 北公述人にお伺いしたいんですが、低所得者対策の重要性を強調されておりました。私の方も、この間、医療、介護、年金、それぞれそれなりの低所得者対策あったかもしれないけれども、こう立て続けにやられると、全体としてどういう影響が出るのかということをまともに検討しているんだろうかというのは非常に疑問に思うんですが、そういうトータルとして、この間、連続して毎年のようにやられている社会保障の制度改定による、特に低所得者への影響をどんなふうにお考えですか。

公述人(北良治君)

 今、小池先生がおっしゃったことなんですが、医療、介護、年金含めて全般的に大きく変化してきておる。しかも、特に介護についても、介護保険等の負担も増えたこともこれまた事実でございますけれども、そしてまた今回、医療の問題ありますけれども。

 ただ、私ども考えるに、確かに低所得者、私のところも、非常に地方は多いものですから、先ほど申し上げましたように、この対策をきちっとしていただくということが大前提だと、こういうふうに思っております。その中では、この法案そのものの中では、現在のところですよ、低所得者対策といいますか、医療制度改革等についても従来の形をある程度取ってきているんでないかと、こういうふうに考えています。

 それから、そういう意味では先生のおっしゃった、いわゆる全般に、トータル的にどんな影響があるか。確かに地方は大変になる、ますます大変になってきておりますけれども、この辺についても、やはりきちっとした受皿づくりといいますか、低所得者対策に対してなお一層継続してこれいっていただきたい、こういう願いを込めております。

小池晃君

 最後に、堀毛公述人、国会審議についておっしゃりたいことを是非、一言でもいいですから、お聞かせください。

公述人(堀毛清史君)

 先ほどから低所得者層の人の問題がありますが、決して一部の限られた人ではなくて、本当に大勢の方があえいでいるというふうに私は感じています。

 私が実際に診ていた人の中でも、医療費が掛かって払えないこともあって、暖房を止めて釧路川で流木を拾って暖を取っていた方ですとか、これは報告を聞いたんですが、同じような理由で、食費を切り出せなくて草を食べて飢えをしのいでいた人だとかがこの間、報告をされております。

 私は、医師になるに当たって、日本国憲法二十五条になぜ最低限という言葉が入っているのかということが非常に疑問でした。どうして最高の医療を目指さないのかというふうに思ったことがありました。勉強して、社会権であるから最低限という言葉を入れて、これより下の、人間としての尊厳を切るような生活あるいは人のありようは絶対にないように国が責任を持つんだという意味だというふうに勉強いたしました。こうした方が本当にこの最低限を切っていないのか、それから、医療の面での憲法二十五条を支える国民皆保険制度が根本から崩れようとしているのではないかということを多くの医療従事者と一緒に非常な危惧を持って見ております。

 私は、今回の中身がそういった問題でもあるというふうに考えておりますので、是非とも、日本の医療をどうするのか、憲法二十五条に保障されている基本的人権を守るためにどうするのかということをうんと時間を掛けてしっかりと議論をしていただきたい、このことを強く願っています。

小池晃君

 ありがとうございました。

 終わります。

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