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165臨時国会 参議院厚生労働委員会「感染症予防法改正案に対する質疑」

  • 結核予算確保したい/小池議員に厚労相答弁(関連記事
2006年11月28日(火)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 この法案に我が党は賛成の立場ですので、その立場で問題点や疑問点をただしていきたいと思います。

 最初に、感染症に対する行政の基本姿勢にかかわる問題で、これは国民の生命、健康を守るということと同時に、患者の人権の尊重ということが極めて重要であると思います。その原点とも言えるのがハンセン病に対する厚生行政への深い反省だと思います。それについて一問、最近起きたことにかかわってお聞きしたい。

 十一月の七日に群馬県の栗生楽泉園で慰霊祭が行われました。これは強制堕胎が行われてその後胎児標本として放置されてきたハンセン病元患者さんの死児の慰霊祭であります。

 しかし、この慰霊祭は療養所自治会の意向に反して、慰霊祭の名称に堕胎という文字を使わずに胎児という名前にさせられました。強制堕胎という事実を隠そうとし、あるいは話合いといいながら自治会の皆さんにそれを押し付ける厚生労働省のやり方に元患者さんの皆さんが怒っていらっしゃいます。慰霊祭というのは、私は何よりも当事者の意向というのが大切にされなければいけないというふうに思いますし、今回のようなことがあってはならないと思うんですね。

 大臣は、公務でこれ出席されなかったというふうにお聞きをしておりますが、現地の皆さんは大臣の出席を心待ちにしていたともお聞きをしています。この場で、元患者の皆さんに対する大臣の思い、とりわけ強制堕胎という事実に対して政府の責任をどうお考えになっているのか、お聞かせ願いたいと思います。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 栗生楽泉園の慰霊祭につきましては、私も就任直後にハンセン病元患者の代表団とお会いしたときに、今後こういう予定があるというようなことで、これのみならず、ほかの慰霊祭あるいは行事についてもお聞きをいたしました。そして、そのときには大変理解のある御発言をいただいたわけですけれども、どれとは言わないけれどももうとにかく一度は必ず来てくださいというようなことで、私も公務の都合が付く限り参りたいというような気持ちを固めておりました。しかし、残念ながら、十一月七日におきましてはそういうことがかなわなかったということでございます。

 私もこの元ハンセン病の皆さん方に対して、この療養所におきますいろんなことにつきましては、大変、そのときにも申したことですけれども、人権にかんがみて許されないことが数々行われたということでございまして、私もそのことで今日まで、個人的な立場ですけれども、心を痛めてきた人間の一人だということを申し上げました。また、大臣に就任したということで、その思いを改めて皆さんに表明申し上げますということをその代表団との会合でも申し上げまして、今日もその考え方に変わりはありません。

小池晃君

 一般論ではなく、強制堕胎という事実に対してどうお考えかということを一言是非いただきたいと思います。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 この点については先ほど私としては、数々の人権を損なうようなことが行われたということで申し上げたつもりでございますけれども、当然その中には強制的な堕胎というようなことも私は含んでいるつもりであります。

小池晃君

 やはりきちっとこうした過去の行政に対する反省というのを原点に据えた感染症の行政でなければいけないということを冒頭申し上げたいと思います。

 その上で、今回の改正によって、結核予防法の廃止で結核対策が後退するのではないかという、その問題について幾つかお聞きをしていきたいと思います。

 日本は結核については中蔓延国というふうに指摘される深刻な状態で、スウェーデンの七倍から八倍、アメリカの六倍、イギリス、フランスの二・五倍という高い感染率であります。患者数全体少しずつ減っているものの、高齢者の感染は非常に多いということが先ほどからも議論になっている。さらに、二十代、三十代の若い世代でもう罹患率が余り下がっていないんですね。横ばいないし一部微増というところもあります。

 高齢者の感染者の再燃については、罹患率の減少という一定の成果が出ていると思うんですが、若い世代で感染率が下がらない、この原因についてどうお考えですか。

政府参考人(外口崇君)

 平成十七年における人口十万対罹患率を見ますと、二十歳代で一五・四、三十歳代で一四・九と、その前の年に比べてそれぞれ〇・一ポイントずつ増加をしております。新規登録患者数ですと、二十歳代で二千十八人、三十歳代で二千百七十九人と、それはその前の年より減ってはおりますけれども、これは全体の分母が減っているというか、その世代の人口が減っているということもあります。それから、働き盛りである当該年齢層におきましては、ほかの年齢層に比して受診の遅れがあるという指摘があります。また、外国籍の患者さんの占める割合が高いということも指摘されております。

 こういったことから、この特に若い世代、御指摘のように罹患率がなかなか減っておりませんので、啓発活動等いろいろな工夫が必要ではないかと考えております。

小池晃君

 もう一点、私、気になるのは、新規登録患者は減っているんですけれども、塗抹陽性患者の減り方がそれに比べると小さいんですね。まあ言ってみれば、より公衆衛生上は対処を要する患者の比率が高まってきている。この原因はどうお考えですか。

政府参考人(外口崇君)

 平成十七年における人口十万対の塗抹陽性結核罹患率は八・九と前年比で〇・一ポイント下がってはおりますけども、その減少率はその前の年より減速しております。その理由として、御指摘のような二十代とか三十代で塗抹陽性結核罹患率が上昇をしているという影響があります。これは、やはり一つは、受診の遅れということが一つ考えられますので、塗抹陽性ということは受診の遅れということでもありますので、やはり先ほど申し上げましたような若年者に対する取組というものが重要であると思います。

小池晃君

 私は、このやっぱり実態というのは結構深刻に受け止めなきゃいけないと思うんですね。

 大臣、やはり若い世代の感染が一定程度存在し、しかも、今も受診の遅れというような背景も説明があったわけです。やはり新たな感染源が、よく言われる高齢者の再燃だけではなくて存在しているということになるわけで、やっぱり引き続きこれは予断を許さないという状況だと思うんです。若者の感染率が余り下がってない、この点だけ見ても、やはり結核というのは一般化できない、感染症の中でもやっぱり特別の位置付けを与えられ続けなければならないものではないだろうかというふうに思っておりまして、今回その結核の名を冠した法律はなくなるわけですが、一層その重要性は増していると思うんですね。

 大臣、結核対策の重要性についての認識、改めて。今後やはり決してこれは後退させてはならない、むしろ今、非常にある意味では危険なサインも出てきているんだということについての御認識をお伺いしたいというふうに思います。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 現行の結核予防法については、先ほど来申し上げておりますとおり、国会の附帯決議における御指摘等もありまして、今回、感染症予防法に統合することにいたしました。その際、従来の結核予防法が持っている数々の施策等については、これをすべて取り込むということと同時に、人権尊重の規定等については新たにそれを拡充するというようなことで、法制面において、従来に比して我々として何ら後退したところはない、むしろ拡充の方向の改正であるということを申し上げたいと思うのでございます。

 そうした中で、新しい法制の下でこれから結核対策を進めてまいるわけでございますけれども、今後とも、薬剤耐性結核菌への対処や都市部におきます対策、あるいは今、小池委員の御指摘になりますように、若者の罹患に対する対策等、結核対策は一層充実してまいらなければならないと、このように考えております。

小池晃君

 法制面で今までのものを引き継いだということ自体は、これは私はいいことだと思っているんですが、しかし実態はどうなのかということをちょっと続けてみたい。

 結核予算の推移を見ると、やはり重視しているとおっしゃるんですけれども、実態はどうなのかと思うんです。これ、予算全体で見ますと、二〇〇一年をピークに、百二十九億円から今年度七十四億円まで大幅にこれ減っております。

 局長にお伺いしたいんですが、結核対策が重要であるというふうに言いながら予算削減が毎年のように行われてきている。これはなぜなのか。正にこれは対策の後退が具体的には起こっているのではないかというふうに思うんですが、いかがですか。

政府参考人(外口崇君)

 近年の結核対策の予算の減少でございますけれども、例えば二〇〇一年度の百七億円が二〇〇六年度七十四億円と減少しています。この減少部分の一番大きいのはいわゆる結核の医療費でございまして、それは結核の患者さんの数が減れば減る数字でございます。ただ、それに加えて、昨今の財政状況等もございまして、結核対策の特別促進事業の減額、あるいは三位一体改革による税源移譲というのも加わっていることはこれは事実でございます。

 結核は依然として主要な感染症であり、高齢者の結核患者が増加しているという現状もありますので、改正感染症法施行後におきましても、引き続き結核対策を推進するための所要の予算の確保につきましては尽力してまいりたいと考えております。

小池晃君

 ちょっと具体的に中身を見たいんですが、まず研究予算なんですけれども、衆議院での審議で局長は、厚生科学研究費は増えているんだという答弁をされています。

 しかし、一方で、結核予防研究所に対する補助金は大幅削減になっているわけですね。結核予防研究所というのは、我が国唯一の結核の専門研究機関であります。結核対策や人材育成に大きな役割を果たしてきた。これ、事前にお聞きをしたらば、削減になったけれども、人件費から減らしてなるべく研究費は減らさないようにしているというふうに説明聞きましたけれども、実際この結果何が起こっているかというと、結研では、研究チームを減らすとか、あるいは常勤だった人を派遣やパートに替えるということが行われていて、結果として研究に支障が出ているということをお聞きしています。研究費も減少しているので、結局、厚生科学研究費にも頼らざるを得ない。しかし、厚生科学研究費と結核研究所の予算をこれ合計して推移見ますと、合計では下がってきているわけですね。

 この点で、研究予算が減少しているということは、これは深刻な事態じゃないですか。いかがでしょう。

政府参考人(外口崇君)

 結核研究所の運営経費についてでございますけれども、これは国庫補助が入っておりますが、平成九年に閣議決定された「財政構造改革の推進について」によりまして、民間及びその他の補助金についての事業の見直し、削減、合理化が求められる中で、結核研究所補助金につきましても組織の再編や事業の合理化が図られているところでございます。

 結核の研究費については、先ほど議員御指摘のような、研究の集約化とかも進めて、できる限り必要な経費を確保しているところでございますけれども、私どもといたしましても、厚生労働省の科学研究費等も含めまして、結核対策のための研究を推進していきたいと思っております。

小池晃君

 いや、その一律カットだからということだけで済まされない問題やっぱりあるはずで、何とかやっぱり予算を増やしていくという手だてを考えるべきだと私は思うんです。重視しているというんだったら、それは実態をやっぱり伴うことが必要だと。

 それから、予算の中で私、見て重要だと思うのは、先ほどもお話ありましたけれども、結核対策特別促進事業費、これは日本版DOTSの立ち上げなどにも使われてきたし、研修・啓発事業にも使われていると。これが大幅に減っていますね。二〇〇一年度八・五億円が、二〇〇六年度は三億円と。これ、地方からの国庫補助要求額は五億七千万円あるわけです。ですから、採択率半分以下で、これでは地方自治体の要望にもこたえられないと思うんですね。

 実態聞くと、このDOTSだけじゃなくて、例えばある自治体ですが、結核の分子疫学研究調査という、これは集団感染対策の有効な研究事業があったんですけれども、これ、ある自治体では、この結核対策特別促進事業費補助金が打ち切られたんでやめてしまうということが起こっております。

 私は、結核対策で頑張っている現場自治体を応援するようなこういう補助金をこれだけもう半分以下に削ってしまうということは許されないと思うし、これでどうして対策が進むというのか、ちょっと御説明願いたい。

政府参考人(外口崇君)

 結核対策特別促進事業でございますけれども、これは地域特性に配慮したきめ細やかな結核対策を推進するための事業でございまして、この事業は自治体にとっては大変言わば使いやすい事業でございます。そういった点で、私どももこの事業は大事にしていきたいと考えておるところでございます。本事業につきましては、これは昨今の財政状況、それから三位一体改革による税源移譲等の影響もありまして減少しているところでありますが、この予算についてもできるだけ確保していきたいと考えております。

小池晃君

 いや、大事だ大事だと言いながら実態減っているんですよ。できるだけ確保したいと言うけれども、実態はそうなっていないじゃないですか。だから、やっぱりここは本気でやらなければ、本当に空文句になると思いますよ。是非来年度の中で検討をしていただきたいと思います。

 それから、これでDOTSでどういう影響出ているかということでいうと、予算額全体が減っているということもあって、しかもその先進的事業に限っているということで、DOTSの事業予算が認められにくくなっているというふうに聞いております。認められても三年程度で打切りということで、打ち切られた自治体は非常にどうやって続けようかと困っているという声も寄せられています。

 しかも、患者数が少なくなってきているところでは本当に大変で、百人切ったようなところではどうやってその予算を確保するか、財政当局を説得するのが大変だという話もある。結核の感染者が少なくなって十分に予算も人員も割けなくなったところが穴になって、またそこから広がるということになったら、これはゆゆしき事態なわけですね。

 私は、患者数が減ったらそのまま補助金が減る、予算が減るというんじゃ、これは非常に深刻な事態になるわけで、やっぱり比較的患者数少ないような地域に対して体制を、最低限の体制を維持するような工夫があってしかるべきではないかと思うんですが、その点どうですか。

政府参考人(外口崇君)

 これからの結核対策でございますけれども、やはり地域によっての差が大分出てきておりますので、地域の実情に応じて進めることが重要であると思います。確かに患者数が少ないと結核に対する意識が低くなって対策がおろそかになるおそれもあると思います。そういったこともありますし、それから、我が国においてはいまだ年間約三万人の結核患者が発生し、諸外国と比較しても大変高い状況にあるということであります。

 今後、こうしたことにかんがみまして、地域における結核対策をどうやって維持していくか、意識を下がらないようにしていくかということについては十分留意して、注意喚起の方法などいろいろと必要な対応に努めてまいりたいと思います。

小池晃君

 注意喚起だけじゃなくてしっかりお金も付けていただきたいと思いますが、一方で、その感染率、罹患率高い自治体をどうするのかという問題もあります。東京、大阪など高齢者、独居、ホームレス、外国人、ハイリスクグループを多く抱えているのが特徴です。

 私聞いたのでは、東京の台東区、ここは山谷があるわけですが、ここは百二十七名の患者がDOTSを受けている。ホームレスも多いですから、ホームレス対象の結核健診も行われています。なかなか健診率上がらないということなんです。治療中断が頻繁で、数年前には三名のホームレスが多剤耐性結核で亡くなっております。

 自治体としても力を入れてやろうというふうにしているんですが、一方で、台東区の実態を言うと、保健所はリストラされていて、浅草保健所がなくなって、台東区内二か所の保健所が一か所になっている。結果的に保健所の体制は、保健師が三名、看護師が一名。この体制で母子保健も含めて通常業務をこなしながら地域の結核対策やらなきゃいけない。大変厳しいと聞いているんですね。

 やはりその結核を本当に制圧していくということに本気で取り組むのであれば、こういう困難な地域にやはりしっかり体制をつくる。特にそのハイリスクグループ一人一人丁寧に対応するためには、やっぱり保健所に対する特別の加配なども含めて、これハイリスクの方が多い地域についてのこれまた特別の手だてが、きめ細かな手だてが必要ではないかと思いますが、その点はいかがですか。

政府参考人(外口崇君)

 議員御指摘のように、我が国の最近の結核の動向の中では、やはり大都市の問題が大きな課題となっております。例えば、人口十万人単位の新規登録結核患者数では、大阪市の結核罹患率五八・八は、最も低い長野県、一〇・七の五・五倍となっております。また、東京や兵庫といった大都市でも罹患率が高い状況にあります。

 この原因としては、結核に感染するリスクの高いグループが特に大都市部に多く存在することや、過去において大都市を中心に蔓延していたことの影響が残っていることなどがあるものと考えられております。このため、罹患率の高い地区においては特にDOTS事業を集中的に行うなど、地域の実情に応じた取組が必要であります。

 こうした対策が推進できるよう、私どもも取り組んでいきたいと考えております。

小池晃君

 大臣にお伺いしたいんですが、今までの議論を踏まえて、先ほども指摘ありましたけど、アメリカで八〇年代に結核が増えた理由というのは、これ、関心が低下したことと、患者数が減ったことで予算を削減した、その結果患者が増えたという歴史的事実があるわけですね。専門家の間でも、この轍を踏むなという声が上がっています。法律変えて、結核予防法は廃止されるけれども重要性は変わらないという、先ほどのそういう答弁ありましたけれども、やっぱり法律が廃止されることによって地方自治体当局者の関心も薄れるということも予想されるわけで、そういったことは絶対あっちゃいけないというふうに思うんですね。

 私は、結核対策は引き続き重要だと、法律では一歩も後退させないというのであれば、やはり予算を、これ、兆の単位の話じゃなくてまあ億の単位の話だと思いますが、これは政府の姿勢を示す上でも、やはり増額することを含めてしっかり対応すべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 結核がアメリカで一九八〇年代に非常に減少したと。そうして、予算が削減されたら、今度はあたかもそれに対する反発のように反転上昇してしまうと、こういうことが指摘をする向きが確かにございます。

 予算の削減だけだったかといえば、まあ移民の増加なぞの背景もあったというふうに伺っているわけでございますが、我が国においてもずうっと戦後、一九九八年ぐらいまでは下がってきたものが、それで少し我々も過去の感染症かというような気持ちになった途端というか、そういう時点からまた反転上昇の傾向がある。最近はちょっとそれがまた収まってきているという動きなんですけれども、何か、確かに結核があたかも、まあこれは言い過ぎかもしれないんですが、予算の動向を反映する感染症であるかのごとく、これを反映するというか、そういう動向が反映するということは非常にまあ皮肉なことだというふうに思います。

 したがいまして、私ども、そういうことのないように、先ほど来御意見が予算の充実のことについて各方面から政府の見解をただすという形で督励をいただいているわけですけれども、私どももその辺りの事情をよく踏まえて、これから予算あるいは人員等の確保について努めてまいりたいと、このように思っております。

小池晃君

 引き続き、結核病床の問題についてお聞きをしたいんですが、これは病床数は入院期間の短縮と並行して全国的に減少傾向にあります。民間は相当撤退して、国公立、公的病院に集約されてきております。一方で、やはり感染防止のための入院治療というのは必要不可欠であるし、移動中の感染リスクということを考えれば、そんなに遠くにあっちゃ困ると。やっぱり一定地域ごとになきゃいけない。

 その点でいうと、やはり今は、自治体にこのくらいはお願いしますみたいな、そういう基準しかないんですが、やはり二次医療圏ごとに最低病床数などの基準も設けて整備に努めていく必要はあるんじゃないかと思うんですが、この点、いかがですか。

政府参考人(外口崇君)

 平成十六年における結核病床の利用率は、病床数一万三千二百九十三床に対して四八・六%となっております。

 このことから、現時点で目標値を示す必要性は少ないものと考えておりますが、一方で、結核については、高齢者等の患者数が増加するなど、依然として厳しい状況にあります。

 こうした動向を踏まえると、この結核病床の扱いについては慎重に判断していく必要があると認識しております。

小池晃君

 満杯になっていちゃ困るわけですよ、これ性格からいって。やはり行って空いていなければいけない病床なわけですから、私は利用率だけでこれは増やす必要はないという結論を出すものではないと思います。まあ慎重に対応するということだったと思います。

 なぜその結核病床が減少してきたかということの最大の原因は、やっぱり不採算問題にある。私は、ある都内の結核病棟を持つ民間病院に昨年の収支聞きました。ここは結核病棟だけで、まあほかにも病棟あるんですが、結核病棟だけで九十一床。この結核病棟に限って収支を見ると、収入が昨年五億四百万円に対して支出が五億四千四百万円、差引き赤字が四千万円だというふうに聞いています。来年度はこれは病棟定数六十まで減らすんだけれども、引き続き同程度の赤字が見込まれるということでした。ここは利用率七六%という全国トップクラスの施設なんですが、それでもこれだけ赤字なんですね。

 このように、ほとんどもう病院側の持ち出しによって結核病棟は支えられているという、これが実態だと思います。しかし、不採算だからということで削減するわけにいかないということで、頑張って維持している。しかし、このままいくと、今後患者が減少していくと、採算面から一県一施設さえ維持できないのではないかということも考えられる。

 結核病学会は二〇〇三年に、結核撲滅前に結核病床の壊滅的崩壊が予想されると、こうしまして、診療報酬の抜本的増額を要望しています。診療報酬引上げはもちろんなんですが、診療報酬だけでは、これ稼働率の低下の問題もあるわけで、不採算要因も大きいわけですから、私は直接の財政的支援なども含めて結核病棟に対する支援という枠組みを考える必要があるのではないかというふうに思うんですが、その点いかがですか。

政府参考人(外口崇君)

 結核病床に対する診療報酬上の取扱いについては、現在、看護配置、看護師比率、平均在院日数その他の事項につき結核病棟入院基本料として評価するなど、結核医療の特性に応じ様々な評価が実施されているところであります。

 空き病床に対する財政措置については現在特段の措置を講じておりませんが、空床の問題につきましては、病床区分の見直しに対する御要望や感染の動向など様々な観点から、総合的に検討していく必要があると考えております。

小池晃君

 何か、言っているんだか言っていないんだか、よく分からないような御答弁でしたが。こういったことは本当に真剣に考えないと、いざというときに大変な事態になるわけですから、前向きに受け止めていただきたいと思います。

 それから、BCG接種の問題についてお聞きをしたいんですが、私、これ昨年質問主意書も出しまして、結核予防法の改正法が施行されたときに、それまで生後四年まで認められていたBCGが生後六か月までになった。今回の改正でこれ、このままになっています。結核予防法から予防接種法に移ったんですけれども、中身はこのままです。

 これ生後六か月を超えて接種ができなかった場合に、これ病気にかかった場合などの医学的な理由も含めて、これは公費負担にならないんですね。私、質問主意書を出して、これはおかしいんじゃないかというふうに言って、それで、まあ自治体で支援してくださいみたいな話に今なっています。

 しかし、私は、これではその地域格差が生まれるわけで、まあ何もやらないよりはましですが、やはり基本的には、せめて生後一年程度は定期接種にすべきだという意見もある中で、少なくとも医学的な理由で接種できなかったような場合、まあやむを得ない場合ですが、こういう場合は六か月過ぎても法定接種にするという対応にやはりしていくべきではないだろうか。そうしないと副作用被害の救済などの対象になってこないわけですから、ここはやはりもう一歩進めていただきたいと思うんですが、その点いかがですか。

政府参考人(外口崇君)

 BCGの予防接種については、WHOの勧告や諸外国における状況等を踏まえ、生後できる限り早期にBCG接種を行うことにより乳児の結核の重症化を予防する観点から、その接種期間を生後六月に達するまでの期間とすることを原則としております。

 医学的な理由でやむを得ず生後六月以内に接種できない場合については、これは結核予防法には基づかないものの、保護者の方の御希望を踏まえ、BCG接種機会を確保する観点から、各市町村の御判断により費用負担について十分配慮するようという助言をしているところでございます。

小池晃君

 いや、それは分かっているわけで、それは質問主意書も出して、そういうふうになったことはそれは良かったと思うんです。しかし、やっぱり一歩進めて、これは別に何か親の都合で行けなかったとかそういうことじゃなくて、病気になって六か月の間に受けられなかったような、そういう人についてはこれはやっぱり法定接種という扱いにすべきじゃないのかということなんですよ。是非検討していただきたいと思います。

 それから、入院の公費負担の問題、最後に幾つかお聞きしたいんですが、非定型抗酸菌症、非定型の抗酸菌症の場合、今までは検査によって結核ではなくて非定型抗酸菌症だというふうに分かればこれは公費負担にならないということだったんですが、今回そこが変わるわけですね。その点で、どうなるのかということをお聞きしたいんですけれども、入院勧告が行われると、入院勧告が行われて入院したと、それで入院勧告が行われた後で非定型抗酸菌症だと判明した場合に、判定されるまでの入院費用というのはこれは公費で負担されるんでしょうか。

政府参考人(外口崇君)

 入院勧告の後に結果的に結核ではないことが判明した場合であっても、判明するまでの間の入院医療費については、これは公費負担の対象とするという方向で考えております。

小池晃君

 それは是非そうすべきだというふうに思います。

 同時に、入院の必要があるというふうに医師が判断して、そしてその医療機関がそう判断した場合に、必ずしも保健所が業務時間じゃないということがありますよね。年末年始であるとか、そういうちょっと長い期間もあるかもしれない。行政機関の側の都合で入院勧告がされずに公費負担できないというふうになったら、これは患者さんにも迷惑が掛かるし、入院費用を理由にして患者さんが入院しないということになれば、公衆衛生上もこれは問題があるわけで、こういうケースについてはどう対処されるんですか。

政府参考人(外口崇君)

 御指摘の、例えば休日等における入院勧告の場合等あると思いますけれども、例えば休日、夜間等に入院が必要な感染症に関する届出があった場合でも、各保健所において必要な対応が取れるようにしておくことというのが、これがまず原則でございます。

 万が一保健所の職員と連絡が取れない等により入院勧告が遅れる場合には、公費負担による入院の始まる時期を明らかに入院が必要と認められる時点にさかのぼって設定することができることとした旨、都道府県知事等に対して通知しているところであります。

小池晃君

 それから、公費負担の原則と人権の問題との関係なんですけれども、例えばこういうことがないのか。公衆衛生上の必要があって入院が求められても、患者さんが自主的に入院すれば入院勧告が行われずに公費負担の対象にならない、こんなことになると非常に大変な問題だと思うんですね。私は結核を始めとして一類、二類感染症の場合は、一定の要件を満たした場合は自主的に入院したか否かを問わずに、これは入院勧告をしたものとして公費治療の対象とするという扱いにすべきだと思うんですが、その点いかがですか。

政府参考人(外口崇君)

 感染症法におきましては、勧告あるいは措置後の入院を公費負担の対象として、勧告前の入院についてはその疾病が入院対象の疾病であったとしても公費負担の対象とはしておりません。

 この考え方ですけれども、これは公衆衛生上の必要性から勧告がなされるものであり、当該勧告に基づく入院により感染症の蔓延防止という公益が確保されることから公費負担の対象としているという考え方であります。

小池晃君

 私は、一定の要件を満たしている場合はそうみなして公費負担の対象とすべきじゃないかということを申し上げたんですけれども。

 やはり、今回の仕組みを見ますと、結局強制措置を伴うことに対して公費負担をするという仕組みになっているわけですね。そうなってくるとどうなるかというと、何というか、要するに予算措置と強制措置というのはイコールにしちゃうと、強制措置から少しはみ出すような部分に対しても私は予算措置を行う仕組みというのが必要なんではないか。つまり、必ずしも強制措置を必要としないけれども公衆衛生上は入院が必要というようなケースはあると思うんですよ。そういうケースに対して、強制措置がなければ予算措置がないという仕組みだと救われない。

 私、これ今後の課題で、将来的な課題にはなるかと思うんですが、やはり公衆衛生上入院が必要であるけれども強制措置必要としないようなケースについても公費負担していくような仕組みをちょっと考えていく課題があるのではないかと思うんですが、その点についてはどうお考えですか。これを最後にお聞きします。

政府参考人(外口崇君)

 基本的な考え方というのは、やっぱり公衆衛生上の必要性から勧告がなされるものであり、当該勧告に基づく入院により感染症の蔓延防止という公益が確保されることから公費負担の対象としているというのが、これが基本的な考え方であります。

 御指摘のその周辺部分がどういうことになるかということでございますけれども、これはちょっとまだ実例がよく分かりませんので、そういった実例を見た上でいろいろ考えていきたいとは思いますけれども、やはり公費負担には公費負担の考えというものがありますので、やっぱりそこを崩してしまうのはなかなか難しいという点もあることは御理解いただきたいと思います。

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