本文へジャンプ
日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

質問第七二号

インフルエンザ菌b型ワクチン接種及び肺炎球菌ワクチンの早期承認に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

 平成十九年七月四日

小池 晃

 参議院議長 扇 千景 殿

インフルエンザ菌b型ワクチン接種及び肺炎球菌ワクチンの早期承認に関する質問主意書

  • 共産党議員に政府答弁書/小池議員に/効果と安全性研究へヒブワクチン(関連記事

 細菌性髄膜炎の日本での患者数は、毎年約一千人に上ると推定されている。その約六割強がインフルエンザ菌b型(以下「Hib」という。)によるもの、約三割が肺炎球菌によるもので、この二つの起因菌によるものが全体の約九割を占める。いずれも日常的に存在する細菌である。細菌性髄膜炎は発症早期には発熱以外に特別な症状がみられない場合が多く、早期診断が大変難しいことが臨床現場でも指摘されている。治療には起因菌に有効な抗生物質を高容量投与するが、近年、特にHibの薬剤に対する耐性化が急速に進んでおり、適切な治療が難しくなってきている。しかも、迅速な治療が施されても、細菌性髄膜炎の死亡例は少なくない。Hibが起因菌の場合三パーセントから五パーセントの患児が、肺炎球菌が起因菌の場合十パーセントから十五パーセントの患児が残念ながら死亡している。さらに、生存した子どもたちの十パーセントから二十パーセントに脳と神経に重大な損傷が生じ、水頭症、難聴、脳性まひ、精神遅滞、けいれんなどを引き起こしており、細菌性髄膜炎は非常に予後の悪い疾患であるという特徴を有している。

 多くの先進国では「細菌性髄膜炎は過去の病」と言われるように、Hibと肺炎球菌による細菌性髄膜炎はワクチン接種によって予防することができる。世界保健機関(以下「WHO」という。)は、一九九八年に世界中のすべての国に対して、乳幼児へのHibワクチン無料接種を求める勧告を出し、ワクチンを定期接種に組み込むことを推奨している。肺炎球菌についても肺炎球菌七価ワクチンが世界七十七カ国で承認され、米国やオーストラリア等では定期接種されている。これらのワクチンを定期予防接種化した国々では発症率が大幅に減少しており、アメリカでは髄膜炎の発症率が約百分の一に激減したと報告されている。

 ところが、日本では、WHOの推奨から十年近くが経過した現在においても、Hibワクチンは定期予防接種化されていない。ワクチンの承認もメーカーの申請から四年近くの歳月を費やし、やっと今年一月に承認を受けたばかりである。現在日本で承認されている肺炎球菌ワクチン(二十三価多糖体ワクチン)は、免疫力の未熟な乳幼児には効果が期待できず、乳幼児に使用できる肺炎球菌ワクチン(七価ワクチン)は日本では現在、治験段階にある。Hibワクチンが国内販売されても定期予防接種化されるまでは任意接種となるが、四回接種で約三万円の自己負担となることが予想されており、誰でも接種できる金額ではない。

 細菌性髄膜炎は早期発見が難しく、迅速な治療を施しても予後が悪く、さらに薬剤耐性の高まりによる治療の困難化が指摘されている。細菌性髄膜炎から日本の子どもたちの命を守るため、ワクチンの定期予防接種化を早期に実現することが重要と考えることから、以下質問する。

 Hib感染症による細菌性髄膜炎は、一度罹患すると予後不良の経過をとる割合が高く、発症後の治療には限界があり、罹患前の予防の重要性が強調されている。Hibワクチンは一九八〇年代後半から海外において広く使われ始め、既に約二十年間の使用実績があり、ワクチンを導入した国々では、Hib感染症が激減しているとされている。多くの国々での使用実績から見て、Hib感染症の重篤化を防ぐ手段として、ワクチン接種が有効であると思われるが、政府の認識を示されたい。
 WHOは、ワクチンの有効性と安全性を高く評価し、一九九八年に世界中のすべての国に対して、乳幼児へのHibワクチン無料接種を求める勧告を出し、ワクチンを定期接種に組み込むことを推奨している。また、我が国でも、二〇〇五年六月、日本小児科学会が厚生労働省に対し、Hibワクチンの早期承認を求める要望書を提出している。これらの勧告及び要望について政府の認識を明らかにされたい。
 早期発見が難しく、発症後の予後も悪く、さらに薬剤耐性の高まりとともに治療の困難な症例が多数報告されている現状からも、Hib感染症を予防接種法に速やかに位置付けるよう、早期に検討すべきであると考えるが、政府の認識を示されたい。
 Hib感染症を予防接種法に位置付ける場合、どのようなスケジュールが想定されるのか明らかにされたい。
 Hib感染症を予防接種法に位置付けるまでの間、Hibワクチンの効果や副作用等について、医療関係者及び感染の危険性が高い乳幼児を持つ保護者に対し、必要な情報を積極的に提供すべきであると考えるが、政府の認識を示されたい。
 Hib感染症を防ぐ有効な手段であるHibワクチンの接種について、低廉で接種できるよう、その費用負担の軽減を図る必要があると思うが、政府の認識を示されたい。
 小児用肺炎球菌ワクチン(七価ワクチン)の承認に向けたスケジュールを明らかにされたい。
 細菌性髄膜炎の発生数は定点報告による把握のみであり、全数把握は行われておらず、ましてや起因菌別の発生状況は把握されていない。原因となる細菌の国レベルでの把握は、先進国では確実に行われ、ワクチン使用前後でその効果を判断し、その有用性を証明している。今後、起因菌別の発生状況の把握は、肺炎球菌ワクチン等の定期接種化検討に際し非常に有益なデータとなり、起因菌別で全数把握可能なシステムが必要と思うが、政府の認識を示されたい。

 右質問する。


答弁書第七二号

内閣参質一六六第七二号

 平成十九年七月十日

内閣総理大臣 安倍 晋三

 参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員小池晃君提出インフルエンザ菌b型ワクチン接種及び肺炎球菌ワクチンの早期承認に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

参議院議員小池晃君提出インフルエンザ菌b型ワクチン接種及び肺炎球菌ワクチンの早期承認に関する質問に対する答弁書

一から三までについて

 インフルエンザ菌b型(以下「Hib」という。)のワクチン(以下「Hibワクチン」という。)について御指摘の勧告がなされたこと、海外においてHibワクチンの使用によりHibによる感染症が減少した例があることについては認識しているが、我が国における感染症対策としてのHibワクチンの使用の有効性については、別途、我が国において検討した上で判断する必要があると考える。

 Hibによる感染症を予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)の対象疾病として位置付け政府が接種を勧奨することについては、Hibによる感染症の重篤性及び発生頻度を十分に勘案しつつ、Hibワクチンの有効性や安全性等に関する知見等を更に蓄積する必要があり、専門家からなる研究班を速やかに立ち上げることとしている。

 また、御指摘の要望書で言及しているHibワクチンについては、平成十九年一月二十六日に薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第十四条第一項に基づき、承認を行ったところである。

四について

 Hibによる感染症を予防接種法の対象疾病に位置付けるに当たっては、一から三までについてで述べた検討を行う必要があることから、現時点において、お尋ねのスケジュールを明示することは困難である。

五について

 厚生労働省としては、Hibによる感染症である細菌性髄膜炎について、疾病の概要やその発生の動向等の情報を提供しているところであり、また、Hibワクチンはまだ販売されていないが、販売される際には、Hibワクチンの効果及び副反応について、医療機関向けの添付文書の外に接種を希望する者向けの説明文書も作成し、適切に情報提供するよう製造販売業者に指導しているところである。さらに、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の医薬品医療機器情報提供ホームページにおいて医薬品の安全性等の情報を提供する中で、Hibワクチンの添付文書を当該ホームページに掲載することとしている。販売後においては、例えば重篤な副反応が発生した場合等には、必要に応じ、製造販売業者に対して、添付文書を改訂する等の措置を採り、速やかに情報提供するよう指導することとしている。

六について

 Hibワクチンの接種についての費用負担の軽減を図る必要性については、Hibワクチンに関する有効性や安全性等に関する知見等を踏まえて判断してまいりたい。

七について

 お尋ねの「小児用肺炎球菌ワクチン(七価ワクチン)」については、当該ワクチンを開発している企業において、国内における治験を終了した段階であると聞いているが、現時点では、薬事法第十四条第三項に基づく承認申請が行われていないため、当該ワクチンの承認に向けたスケジュールを明示することは困難である。

八について

 細菌性髄膜炎の起因菌を確定するためには患者に対し、髄液検査など起因菌の確定検査を行う必要があり、患者及び医師に対して過大な負担をかけることから、起因菌別の発生状況の全数を把握することは慎重に検討すべきものと考える。なお、我が国においては一定の医療機関に対し、細菌性髄膜炎の起因菌が判明した場合には報告を求めており、その分析も行っているところではあるが、今後、諸外国における起因菌の把握方法を調査してまいりたい。

ページトップへ
リンクはご自由にどうぞ。各ページに掲載の画像及び記事の無断転載を禁じます。 © 2001-2010 Japanese Communist Party, Akira Koike, all rights reserved.