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日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

166通常国会 参議院厚生労働委員会 2007年度政府予算案に対する質疑(総理出席の総括質疑)

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2007年3月6日(火)

委員長(尾辻秀久君)

 次に、小池晃君の質疑を行います。小池晃君。

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 貧困と社会的格差の広がりは大変深刻であります。とりわけ国民健康保険の高過ぎる保険料、そして保険料を払えない人からの保険証の取上げ、これが命の格差まで生み出している。マスコミも深刻な社会問題として取り上げております。

 昨年度の国民健康保険の保険料の滞納は四百八十万世帯を超えました。そのうち一年以上滞納して保険証を取り上げられて資格証明書を発行された世帯は三十五万世帯で、いずれも過去最高であります。特に、九七年に国保法が改悪をされまして市町村にこの資格証の発行が義務付けられた、これ以降、激増しています。

 資格証が発行されるとどうなるか。窓口では十割払わなければいけないわけですから、支払額が余りも多いということで受診を控えるという傾向が指摘をされています。

 厚生労働省にまずお伺いしますが、保険証を取り上げられてしまった人が一体どういう影響が出ているのか、どれだけ受診を控えているのか、何らかの調査をやっていますでしょうか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 国民健康保険は住民相互扶助によって成り立つ社会保険制度ですので、まずすべての被保険者に公平に保険料を負担していただくというのが制度の存立の基盤であります。

 そして、しかし、低所得者等の事情のある被保険者の方々には、もう委員もつとに御承知の負担軽減措置等が講じられているところでございまして、負担能力があるにもかかわらず保険料を納めていないという未納の方については、公平の観点から資格証明書を交付しております。

 資格証明書の交付を受けた被保険者の医療費は、いったん支払った後に今度は市町村から給付費相当額の償還がされることになっておりますので、言わば保険者と同じ扱いをさせていただいておると、財政的にはそういうことになりますので、御指摘のような調査は行っておりません。

小池晃君

 結局調査やってないという答弁ですね。私は、払うことができるのに払えない人のことを問題にしているのではない。もう保険料払うことができない人のことを私は問題にしているんです。

 私は、保険証の取上げを自治体には押し付けながら、その実態を一切調査していない、影響を調査していないというのは余りにも無責任だと思います。

 全国保険医団体連合会の調査結果があります。資格証発行全国一位の神奈川県では、資格証を発行された人の受診率は一般被保険者の三十二分の一です。全国二位の福岡県では百十三分の一です。これでは必要な医療を受けられないんです。

 このたび、日本共産党の国会議員団としても、全国のすべての病院を対象にして国保の保険証取上げによる被害などについてアンケート調査をやりました。今日の時点で六百を超える御回答をいただいております。この中で、過去三年間で保険証を取り上げられ受診が遅れて重症化したケース、全部で九百三十件もありました。

 三十六歳男性、風邪だと思っていたら熱が下がらず肺炎になった。高血圧で治療を中断して脳出血になった。がんの治療を途中で中止した。四十五歳の男性、腹痛を放置したら虫垂炎が悪化した。こんなケースがたくさん寄せられている。しかも、最悪の場合は命も落としている。

 これは私どもの調査とは別の調査ですが、全日本民主医療機関連合会が、保険証取上げによって患者さんの受診が遅れ、その結果亡くなられたケースをまとめています。過去二年間で二十五名の方が亡くなられている。例えば、三十二歳の男性、気管支ぜんそくの発作を繰り返していたが、保険証がないため受診せずに売薬のみ。夜間に激しい発作で市民病院に搬送されたが、翌朝亡くなられた。五十五歳の男性、自営業。腹部や背部の痛み、倦怠感があったが、保険料三十五万円を滞納しており、保険証が取り上げられて受診せず、市販の薬だけ飲んでいた。ようやく受診したときには既に膵臓がんが肝臓に転移した状態で、二か月後に亡くなられた。

 総理、日本というのは国民皆保険制度の国のはずなんです。ところが、実態としては、保険証取り上げられ、受診が遅れて病状が悪化して命まで落としている、こんなこと絶対にあってはならないことだというふうにお考えになりませんか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 今の委員の御質問をお伺いをしておりますと、突然いきなり保険証を取り上げられてしまうようなそんな印象を受けたわけでありますが、決してそんなことはないわけでありまして、まず、次のような理由によって保険料を納付することができないと認められる場合には被保険者証を取り上げることはしません。

 例えば世帯主がその財産について災害又は盗難に遭ったこと。世帯主又はその者と生計を一つにする親族が病気にかかり、又は負傷したこと。世帯主がその事業を廃止し、又は中止したこと。世帯主がその事業につき著しい損失を受けたこと。こうした事項があった場合には保険証を取り上げることは当然ないわけであります。

 また、どちらにしろ、いきなり保険証を取り上げるということはなくて、この資格証明書を発行するまでの交付事務の流れでありますけれども、通常、滞納が発生した場合には、納付相談を行う中で、災害等その後の事情により保険料を納めることができない場合には、条例に基づく保険料の減免の検討を行います。また、どうしても支払が困難な方については、生活保護の申請の援助等を行います。

 そうした事情がないにもかかわらず、なお納付をしない方には、通常六か月又は三か月の有効期間の短い被保険者証を交付して納付相談の機会を確保をするわけでありまして、さらにそれでも納付しない方については、災害等保険料を納付することができない特別な事情がないことを確認した上で資格証明書を交付をしていると、このように私は承知をしております。

小池晃君

 そんな丁寧なことが現場で行われていたらこんな事例が生まれるはずないでしょう。こういう実態がたくさん出ているんですよ、実際に受診を控えね。病気の場合は除外する特別な理由入っていますよ。しかし、病気の人が次々保険証取り上げられている。そういう実態が現実にはあるんです。これは現実なんです。

 もちろん特別な事情であるかどうかは自治体が判断します。保険証取り上げるなという運動広がっていますから、取り上げない、きちんとやっている自治体も中にはある。しかし、多くの自治体では機械的な保険証の取上げやっている。それがこうした私が紹介したような事態を生んでいるんですよ。

 こうした方々というのは、決して払えるのに払えないわけじゃないんです。だって、病気になって悪化して命まで落としているんですから、そういう人が払える能力があるわけないじゃないですか。払いたくても払えない人たちなんです。こういう人たちだって、これまでは大変だけれども一生懸命保険料払っていた。しかし、政府の進めた構造改革路線の中で切り捨てられ、振り落とされ、生活が苦しくなって保険料払えなくなっている人たちなんです。

 私が聞いたのは、例えば商店街でクリーニング店経営していたけど、大手スーパーが出店をして売上げが三分の一に激減してしまって保険料が払えなくなった、保険証取り上げられたというんです。あるいは、タクシー運転手だったけれども、規制緩和で台数が増えて収入が激減して、そしてリストラをされ、健保から国保に移って保険料払えなくなった。保険料払えず、本当にみんな苦しい思いしているんです。

 しかも、先ほどいろんな事情でちゃんとやっているとおっしゃるけれども、じゃ、こういうことはどうなんですか。子供だって取り上げられているんですよ。千葉市では、乳幼児医療費助成対象の子供たち、小中学生約九百人の保険証が取り上げられています。東京の板橋区では、気管支ぜんそくで東京都の公害医療の助成を受けている通院していた小学生の保険証まで取り上げられているんです。実際やられているのは、現場で起こっているのは、きれい事いろいろおっしゃるけれども、生活に困って保険料払えない、そして保険証取り上げられ病院にも行けなくなっている、こういう事態が起こっているんです。

 あなたたちがやっていることは、正に政府がやっていることはそういう人たち切り捨てることばかりなんですよ。私問いたいのは、こういうこと続けていいのか。そういう建前だと言うけど、実態は違うんだから。だとすれば、こういうやり方をやめさせるということをしっかりこの場で述べるべきじゃないですか。どうですか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 先ほど申し上げましたようなルールに基づいて相談をしながら対応する、これは私どもの方針ですよ。いきなり今言ったような御事情で、しかし、今言ったような御事情が、そのものが本当にそうであれば、そんなことはしないように指導しなければいけない。しかし、それぞれの個々の事情については、その滞納に至った経緯を、全体をよく見てみないと私もここでは答えようがございません。どういう経緯で未納に至ったかということについては、よくこれは全体を見てみなければ、これは何とも答えようがないわけでございます。

 いずれにしても、国保も国民の皆様の保険料で成り立っているわけでありますから、その保険料を払っていただくということが前提になっている。しかし、様々な理由がありますから、特に健康保険であれば、病気になったらそれは保険料が払えないという事情もある、そういう事情は勘案するような仕組みになっていますから。そしてまた、それでもなお難しい状況の場合は、生活保護ということになっていけば、これはもう医療費が全く無料になっていくわけである、そういう手続を取るように、そういう指導もされるようになっているわけでありますから。もちろんこの相談の窓口においてはきめ細かな対応ということは当然私は必要であろうと、そのように思います。

小池晃君

 そうなってないのであればそういう指導をするというふうにおっしゃった。そういう指導をきちっとしていただきたい。

 実態としては、正に生活に困窮している人からも保険証取り上げているんです。こういうことはしないんだということを明言していただきたい。──いや、総理に聞いているんです。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 今もう総理が本当にきめ細やかな御答弁をしてくれたと、私はそのように思います。委員も御承知のとおりでありますけれども、資格証明書でいきなり保険証を取り上げるなんというような手続にはなっておりません。

 それから、本当にその過程で要するに納付の相談をきめ細かにやるという前提であります。それにもかかわらず資格証明書にせざるを得ないというところになっているというのが我々の考え方でありますが、今総理が言われたように、具体の問題については更に何か目こぼしがあるのかないか、こういったことについてはよく見るように、よくまた相談に乗るようにと、こういうような指導は徹底させていきたいと、このように考えます。

小池晃君

 実態としてはそういったことはやられてないんです。しかも、資格証は滞納者との接触の機会を増やすためだというふうにおっしゃった。納付率を上げるためだとおっしゃったけれども、滞納率がどんどん伸びるのと同時並行で資格証が伸びているんですよ。資格証を幾ら発行したって国保の滞納者は減ってないじゃないですか。これが現実なんですよ。全く機能してないし、しかも命すら奪う事態になっていることについて、私は真剣にこの実態を、調査もしてないんですから、まず調査していただいて、そういったことをなくするという努力をすべきだというふうに思います。

 しかも、何でこういう事態になっているのかをやっぱり正面から見る必要がある。やっぱり国保料高過ぎるんですよ。そういう実態があるんです。

 例えば大阪市の例を紹介したい。(資料提示)これは大阪市の夫婦、四十歳以上の夫婦子供二人の世帯です。これ、収入が二百八十万円で、自営業であればこれがそのまま所得になりますから、所得二百八十万円、こういう世帯の国保料が年間四十五万円です。介護保険料八万円、国民年金保険料、夫婦で約三十四万円、所得税、住民税で四万円、残るのは百八十九万円しかないんです。こういう本当に莫大な国保料が掛かってきている。

 これ、極端に高い自治体じゃないですよ。全国で一番高いのは大阪府の守口市ですから、そこはこの同様のケースで五十三万円の国保の保険料になっている。正に国保が貧困をつくり、ワーキングプアをつくる、こういう実態になっている。

 首相にお聞きしたいんですが、保険料を払う払うと簡単に言うけれども、総理、こういう所得二百八十万円で四十五万円の保険料、支払能力を超えた保険料だと思いませんか。──総理、総理が手を挙げているんだから。いいですよ。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 今、二百八十万、所得。所得ですか、これ。所得ですか。それから、基本的に引かれるのはいろんな控除があります。ただ、国民健康保険の場合には控除は独自にやっております。

 それはどうしてかというと、もう国保に加入している人たちについては広く薄くもうみんな負担をしてもらわなければ保険として成り立たない、こういう考え方でやっておりますが、ただ、その具体の話として、今いきなりそういう数字をぶつけられて、それについてコメントをしろと言われても、私でも、ちょっと今計算をし始めましたけれども、なかなかちょっと計算が答弁の時間までには間に合わないという状況です。全然もうこれでは問答にならないと思いますね。

小池晃君

 これのどこが広く薄いんですか。四十五万円、これはちゃんと自治体当局にまで確認している正確な数字ですよ。総理、これが実態なんです。年間所得二百八十万円の世帯で四十五万円、これ決して、先ほどから繰り返していますが、極端に高い自治体ではない、これが実態なんです。これは、こういう保険料にしてきたのは正に政府なんです。まあ頭割り、人頭割、要するにそういう応益負担の保険料の比率を高めるという指導をしてきた結果、こういう実態に今なってきているんです。こういう保険料の水準でいいと思いますか。総理、率直な感想をお伺いしたいんです。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 この国保については、大体おおむね国庫負担五〇%で推移をしているわけであります。

 この数字については、私ども初めて拝見をしているわけでありますから、この場ですぐにこれが正確だということを前提にお答えをするわけにはいかないわけであります。

 いずれにせよ、これは保険制度でありますから、国民みんながお互いに相互扶助の観点から保険料を払っていただいて、そして半分は国が国庫負担をしていくという中で、この仕組みが、安心の仕組みができていると、このように思います。

小池晃君

 さすがにこれが払える水準だとはとても言えないと思うんですよ。しかも、何でこういうことになってきているか。暮らしを支えるべき社会保障制度が暮らしを壊す、襲い掛かってきているような実態があるわけですね。

 これ、経過をちょっと見ていただきたいんです。(資料提示)一九八四年と現在を比べてみますと、国保世帯の所得というのは、平均で約百八十万円から何と二十年間で百六十五万円へと減少しているんです、実額で。いったん上がっていますけども、結局下がっているわけです。この二十年間で住民一人当たりの保険料というのは、三万九千円から七万九千円へと二倍以上になっています。これは、世帯で見たとしても、一世帯当たりの保険料で見ても、十万三千円が十五万二千円へと一・五倍になっているんですね。所得、収入が減りながら保険料が上がっているわけですからこれは払えるわけがない、そういう事態が起こっているわけなんです。

 ところが、国は八四年の法改悪で国庫負担の比率を下げました。先ほど五〇%で推移したと言うけれども、違います。八四年に大幅に国庫負担の比率を下げたわけです。その結果、一九八四年度から二〇〇四年度までに市町村国保に対する国庫の支出比率、これ四九・八%から三四・五%に下がってまいりました。総理、この国庫負担の削減というのが正に国民健康保険の高過ぎる保険料をつくってきたんです。

 国民健康保険自体は性格が変化してきているわけです。農業や自営業者中心の保険だったのが、だんだん無職者、失業者、不安定雇用の労働者、低所得者中心の保険に変わってきた。だとすれば、国の手厚い援助があって初めて成り立つはずなんです。ところが、この二十年間を見れば、逆に国保が低所得者中心の保険にどんどんなっていく中で国は国庫負担の比率をどんどん下げてきた。その結果、保険料が高騰して払えない人がたくさん出てきている。私は、国民健康保険の保険料を払える水準にするためにも、そして国保財政を本当にしっかり立て直していくためにも、国庫負担比率を引き上げるということが待ったなしの課題になっているというふうに考える。

 総理、全国市長会、全国町村会、国保中央会も国保の財政基盤を確立するべく抜本的な財政措置を講ずることという意見を上げています。私、こういう声にしっかりこたえるべきじゃないかと思いますが、総理、いかがですか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 これは若干細かい議論でありますが、国民健康保険の国庫負担については、先ほど私が答弁をいたしましたように、医療給付費等の比率で見れば、平成十六年度までおおむね医療給付費等の約五〇%の水準で推移をしています。保険料の水準上昇の背景に国庫負担の引下げがあるという指摘は私は当たらないと思います。

 いずれにしても、国民健康保険が保険制度であることを踏まえれば、主たる財源は保険料とすべきであって、また他の医療保険制度との均衡や厳しい国の財政状況をかんがみれば、現状より国庫負担を引き上げることは困難でございます。

 なお、国保財政は、高齢化の進行や低所得者の増加等によって厳しい状況にあることを踏まえて、低所得者を多く抱える保険者を財政的に支援する保険基盤安定制度等について平成十八年度以後も当面継続することとしたわけでございます。

 先ほど委員がおっしゃったのは、昭和五十九年に退職者医療制度を導入した際に、退職被保険者以外、この退職被保険者の国庫負担が減少したことからそのパーセンテージが、国庫負担のパーセンテージが低下をしたということを指摘をされているんではないかと思いますが、退職被保険者以外の一般の被保険者に対する国庫負担の割合は、平成十六年までの間、五〇%で推移をいたしています。

小池晃君

 一九八四年に医療費の四五%から給付費の五〇%に下げたわけでしょう。国庫負担比率を大幅に下げたんですよ。それが大きな原因である、そのことをお認めになりますね。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 それは今私が申し上げたとおりでありまして、それは昭和五十九年の退職者医療制度のこの給付費等について、医療給付費等については、これはこの退職者医療制度が導入されたことによって、先ほど申し上げましたように、退職者の保険者以外の、退職者保険者の割合が増加したと、これは国庫負担の少ない退職者、退職被保険者が増加したということであって、この退職被保険者以外の一般被保険者の医療給付等に対する国庫負担の割合は、平成十六年度までの間、約五〇%で推移をしております。

小池晃君

 ですから、この間の制度改悪で国庫負担比率下がったことは事実なんです。これは否定しようがない、今お話があったように。

 私、財政が厳しいから仕方がないんだとおっしゃるけれども、だったら、何で金持ち優遇の一兆円の証券減税は継続するんですか。六割以上の大企業の法人税の設備投資の減税をやるんですか。そういったところにはお金をばらまきながら、こういう大変な思いをしている国民健康保険の加入者からは悲鳴が上がっているのに、それを救う手だても、手も打とうとしない。本当に冷たい政治だと思いますよ。金がないんじゃないですよ。こういう人たちの痛み感じる心がないのが今の自民党、公明党の政治じゃないですか。私は国保の今の現状にそこははっきり現れているということを申し上げたい。

 もう一つ、国の責任が医療において深刻に問われているのが医師不足の問題だろうというふうに思います。この問題、取り上げたいと思います。

 全国各地の医師不足は病院や診療科の閉鎖といった深刻な事態を招いています。住民、患者の命と健康を脅かしています。過重労働やストレスによって医師や医療スタッフの心身むしばまれて、医療事故の背景にもなっています。

 日本医労連がまとめた実態調査の中間報告によれば、勤務医の九割以上が当直勤務を伴う連続三十二時間の勤務を月三回、さらに三割近くは月に一度も休日を取れない過酷な勤務状態にあると言われています。この報告では、医師自体が過労死する状態にあるとまとめている。

 私は日本の勤務医というのは極めて過酷な勤務状態に置かれていると思いますが、総理の認識はいかがですか。──総理が手を挙げているじゃないですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 そんな、医療の勤務形態なんというのは私、答えさせてくださいよ。

委員長(尾辻秀久君)

 柳澤厚生労働大臣。

小池晃君

 手を挙げているじゃないですか。あなたはいいよ。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 平成十七年度に、日本医労連の調査は私は存じませんけれども、私どももその問題については関心を払って、それを踏まえまして平成十七年度に医師の勤務状況に関する調査をいたしました。

 病院勤務医の一週間当たりの勤務時間でございますけれども、休憩時間や研究に当てた時間などを含めて言わば病院に拘束されていた時間、始業から終業までということで見ますと、確かに平均で約六十三時間ということになりますけれども、休憩時間等を除いた実際の従業の時間は平均で約四十八時間でございます。これでも開業医の方々に比べて病院勤務医の方々の勤務状況は大変厳しいということは、私どもも認識をいたしております。

 そこで、厚生労働省としても病院勤務医を取り巻くこのような厳しい環境、勤務条件を改善していくことは喫緊の課題であるというふうに認識をいたしておりまして、第一に医師の集まる拠点病院づくり、それから第二にネットワークの構築、さらには病院勤務医と開業医の連携を取るための電話相談事業等のいろいろな手だて、それから労働基準法に違反している事例等に対する基準監督署の指導の徹底、このような対策を引き続き推進してまいりたいと考えております。

小池晃君

 医師の勤務実態というのは研究時間だって十分な勤務時間なんですよ。しかも、待機と言うけれども、休憩と言うけれども、患者さん来るまで待機している時間、こういうのは全部無視するんですか。こういうのは立派な勤務時間ですよ。厚労省の調査というのは、そういうのは全部無視して、実際に現実に診療やっている時間だけを勤務時間だと。これほど医師の勤務実態と私、懸け離れた話ない。大体これ国民の実感にも、日本のお医者さんたちのみんなの実感にも全く反する今の話だと、とんでもない認識だと。こういう認識でやっているから、私はこの問題解決できないと思うんです。

 産科医療の実態、先日、岩手県の花巻市に行ってまいりました。ここは県立の花巻厚生病院という唯一の県立総合病院の産科休診が最初の引き金引いたんですね。二軒だけだった産科開業医のうち一軒お医者さん亡くなられた。今では病院と診療所が一か所ずつだけなんです。妊娠が分かった時点で予約してももう満杯だというふうになっている。妊婦さんは盛岡やあるいは北上市まで行かなければいけない。花巻市というのは東京二十三区より広いんです。新幹線も止まるんです。ところが、そんな町でお産ができない。妊婦さんが健診で隣町まで行くのに自分で車を運転する、こういう実態がある。隣町の遠野市というところでは雪のあるときは三時間も掛かるんだと聞きました。間に合わずに車の中で出産したという例も一年に一回も二回も起こっている。

 私は、これはある地域の話ですが、総理に基本的な認識、これ今国民的な関心です。みんなが心配しているんです。やっぱり深刻な医師不足が原因でお産ができない、命が脅かされる。あってはならない事態が広がっていることについて総理はどうお考えですか。──総理。いいよ、もういいですよ、ちょっと。ちょっと、ちょっと。お呼びでない、お呼びでない、お呼びでない。(発言する者あり)

委員長(尾辻秀久君)

 安倍内閣総理大臣。総理、お答えください。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 産科の不足、医師不足状況については我々も十分に認識をしております。

 医師全体の数は増えているわけでありますが、地域においてのこれは不足の状況、そしてまた、あるいは科目、特に産科、小児科が不足をしているという現状については十分に認識をしているわけでございまして、地域によっては必要な医師が確保できない状況が生じている。公的医療機関においても分娩を取り扱っている施設は減少しています。

 この背景としては、産科医をめぐる厳しい勤務状況、我々もこの厳しい勤務環境があるということは十分に承知をしております。産科医療のリスク、訴訟の増加の懸念、少子化による出生数の減少などが影響していると、こう認識をしています。

 このために我々は、対策といたしましては、医師が集まる拠点病院をしっかりと整備をしていく。そして医師が不足する病院への医師派遣の仕組みを構築をしていきます。こういうネットワークをつくって派遣もしていく仕組みをつくっていく。また、産婦人科医師に多い女性医師の就労を支援するための女性医師バンクの設立を行います。産科医療のリスクや訴訟の増加に対応する、産科の先生は割と訴訟されるリスクが大変高い、このように言われておりまして、最近は産科医を志望する医学生も減少してきたと、このように思います。そうしたことを勘案をしながら、産科医療補償制度の創設に向けて検討をしてまいります。

 こうしたことを総合的に取組を進めているわけでございまして、また、平成二十年度の診療報酬改定においても産科などへの対応を含めた診療報酬の在り方について検討することが必要と認識をいたしております。国としては、いま一度それぞれの地域の実情をしっかりと把握をいたしまして、都道府県と協力をしながら地域ごとに具体的で実効性ある医師確保対策を講じてまいります。厚生労働大臣には強力な指導力を発揮をしていただくことになると思います。

小池晃君

 具体的で実効性のある措置をとらなければいけないというふうにおっしゃる。じゃ、具体的に国が何をやってきたか。国公立病院などが産科や小児医療を守る先頭に立つべきだと私は思います。ところが、花巻でも産科医療の危機のきっかけになったのは、これ県立病院の撤退なんです。

 厚生労働大臣、ここで初めてお答えいただきたいんですが、九六年から二〇〇五年の間に産婦人科のある病院というのは二八・七%減少しているんですが、国立病院の産婦人科は三五%減っているんです。全体より突出しているんですよ。これが実態なんです。正に国が率先して、あるいは公立病院などが率先して産科、小児科削ってきているんですよ。

 産科、小児科確保する、先ほど総理は実効性ある措置をとるとおっしゃるのであれば、国立病院の産科、小児科の切捨てやめると、これまで産科、小児科をやめてきた病院は復活をさせる、このくらいのことは当然やるべきではないですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 地域によってお医者さんが不足をしているというところがあるということは我々も承知をしております。

 そこで、先ほど来申し上げているように、一般的なネットワーク、拠点づくりというようなことももちろんこの中から出てきているわけですけれども、やはり都道府県が中心になって医療対策協議会を開く。そのときに、この国公立の病院の人たち、公的な医療機関も積極的にこれに参画してもらいまして、そして医療の連携体制に必要な協力をしてもらうということを考えております。

 加えまして、私どもは、ただ中央の会議を持って指針を決めて、それを、画一的にこれを地方に伝達するということで事を終わるというようなことではなくて、実際に役所の中にチームを、ブロックごとのチームを、担当のチームをつくりまして、そしてその協議会が行われるときには実際にその中に相談に参画するような形で、今言ったような具体的でかつ実効性のある体制をつくってまいりたいと、このように今考えてこれを、体制をスタートしているところでございます。

小池晃君

 私が言ったことに全然答えてないんですよ。いろいろやると言ったけど、国公立病院減らしてきたのを、じゃ早期に復活させる、このぐらいのことをせめてやるべきじゃないかって、一切答えていない。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 そうした具体的で実効性ある解決策、これを構築する中で、その中で国公立病院がどのような役割を演ずるか、これについて私は腰が引けたような対応は許さない、こういう形で私は参画をさせようと、こういうことを申し上げたつもりでございます。

小池晃君

 今までどんどんどんどん率先して減らしてきたのに、そういうこと言ったって具体的なことが全くないじゃないですか。私はやはり、そういう意味では本当に国は口先だけじゃなくて、それこそ今まで廃止した病院を復活させる、そのぐらいのことを決意を持ってやるべきだと思いますよ。当然やるべきじゃないですか。

 しかも、先ほどあったような診療報酬の問題もある、出産一時金の大幅な増額も必要だと私ども思っています。助産師の役割ももっと重視すべきだと。助産師の養成数を増やして院内助産所をつくる、あるいは助産所と救急病院との救急搬送システムをつくる、これが実効性ある制度だと思うんです。こういったことを本当に本気でやるべきだというふうに思います。しかも、より根本的な問題があるんですが、日本の医師の数が果たして今のままでいいのかという問題なんですよ。

 これ、パネルを持ってまいりましたが、(資料提示)一九七〇年から日本の医師数をグラフにしております。一九七〇年には大体世界の平均と日本の医師数というのはパラレル、同じぐらいでした。一九七〇年、日本の医師数は人口十万人当たり百十二名、そのときOECD平均は百二十名です。当時日本政府は、いわゆる一県一医大政策を立て、医学部入学定員を増やす政策を進めたんです。ところが、一九八二年の臨調第三次答申を受けた閣議決定でこれは方針転換をする。八六年に医学部の入学定員を一〇%削減するという方針を出す。九七年にも定員削減を続ける閣議決定をしています。

 一方、OECDはその後も医師の数を増やしている。医療水準やあるいは患者さんたちが求める医療の質、これが高まっているんですから、私は世界の流れというのは当然の方向だと思う。ところが、日本は抑えてきた。その結果だんだんだんだん格差が開いているわけです。このOECDの平均に照らせば、大体十二万人から十四万人日本の医師数は少ないという指摘もございます。

 総理、私はこの流れを見れば日本は世界の水準から大きく立ち遅れてしまった、こういう認識を持つべきだと思いますが、いかがですか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 医師の数は現在毎年三千五百人から四千人程度増加をしています。確かに現時点においては過剰な状態ではないわけでございますが、将来的には必要とされる医師の数を上回る数の医師が供給されることが見込まれています。

 また、なお、平成十六年末における我が国の人口千人当たりの臨床医師数は二・〇人とOECD平均を下回っておりますが、例えば米国やイギリスなどはこの医師に対して患者のフリーアクセスが言わば制限をされているわけでありますが、日本は皆保険制度の中で完全にフリーアクセスが保障されていると、こういう違いもございます。また、人口密度も違って効率的な診療も可能な地域があると、結構それも、そういう地域も多いということも言えると思います。

 しかしながら、地域間や、先ほど申し上げましたようにこの小児科、産科等のこの診療科目において医師の偏在、不足があるのは事実であります。このために、我々は何にもしていないわけではなくて、平成十八年度補正予算と十九年度予算において医師確保対策として合計で百億円を計上をいたしております。これは十八年度の当初、まあ約上回ること倍になっているということでございます。

 先ほど申し上げましたように、医師が集まる拠点病院から医師不足病院へ医師派遣を行う際の助成や、臨床研修における医師不足地域や小児科、産科等の重点的な支援を始めとして、各般にわたる取組を進めてまいります。

小池晃君

 今総理は偏在だというふうにおっしゃったんですね。厚生労働省の見解も、医師は足りないんじゃない、偏在なんだと言うんです。

 偏在という言葉は、どこかで余っている、どこかで足りない、こういうのが偏在と言うわけですね。厚生労働省は病院と診療所の偏在とか診療科目による偏在とも言っていますが、地域による偏在とも言っている。偏在と言うからには、足りない地域があって一方で足りている地域があるということになると思うんです。

 ところが、人口当たり医師数トップは日本で今徳島県ですが、徳島県もOECDの平均より少ないんです。だから、一体どこに過剰な地域あるいは十分な地域があるんでしょう。これ実態として見れば、偏在ではなくて日本じゅうどこでも不足地域だというのが実態だと思います。私、充足している地域があるんだったら一体どこか言ってほしいと思いますよ。だから、今の日本の医師数の実態というのは、これは偏在ではなくて絶対的不足なんじゃないですか。そのことについてお答えいただきたい。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 今委員はOECDの例を、これを基準として物をおっしゃっているわけですけれども、私どもとしては日本の国内の状況について観察してそういうことを申し上げております。ですから、例えばある県においてこれを幾つかの医療圏に分ける、あるいは第三次医療圏ぐらいに分けてみるというようなことをした場合も、それで非常に、そこにお医者さん方、厚くいらっしゃるところと薄くいらっしゃるところがある、これは事実でありまして、そのことを、そういうことを我々は観察した結果、今申したような偏在ということを申し上げているということでございます。

小池晃君

 じゃ、厚くいる都道府県とは一体何県ですか、言ってください。──駄目、駄目、ちょっと、ちょっと止めてください。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 もちろん基本的に西高東低ということで徳島なんかが、今委員も言っておるとおりですけれども、私どもは、各県の中でも非常に厚いところと薄いところがある、そういうようなことで地域的な偏在があるということを申し上げているということです。

小池晃君

 答えられないんですよ。医師が足りている県なんてないんです。絶対的不足なんですよ。

 私、いろんな対策、先ほど総理おっしゃったけれども、例えば医学部の入学定員を増やす、これいいことだと思います。しかし、見てみますと、たった十年間だけ、しかも一〇%増やす、終わったらこれ前倒して逆に定数減らさなきゃいけない、こういう腰の引けた対策なんですよ。なぜこうなっているのかといえば、医学部の入学定員の削減を決めた十年前の閣議決定があるからなんです。だから、入学定員を増やすってことを思い切ってできないんです。

 今のこの実態から見れば、総理、私は、十年前の閣議決定を見直す、そしてやっぱり医師数の増加、医学部の入学定員を増やすということを国民の声にこたえてやるべき時期なんじゃないですか。お答えいただきたい。──総理、閣議決定の問題だよ。閣議決定、何であなたが出てくるの。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 先ほど申し上げましたように、三千五百人から四千人、毎年これ増えているわけでございます。この傾向でいけば、将来はこれは供給が上回っていくという可能性もあるわけであります。しかし、現在のところ、科目によっては確かに不足している科目もある、また地域もあるわけでありますから、それに対して我々は対策を打っているわけでございますし、先ほど申し上げましたように、百億円、補正と当初予算でこの医師不足対策費は組んでいるわけでございます。

小池晃君

 私は、医師不足の問題というのは、国民健康保険の問題とともに、社会保障に対する国の支出を抑制してきた、こういうやり方が本当に現場で矛盾を生んでいるんだということだというふうに思います。やっぱり、この転換をなくして国民に安全な医療を提供することは決してできないというふうに思います。

 私たち日本共産党は、命と暮らしを守る、そういう政治に転換していく、国民健康保険の危機を打開して、医師不足をなくしていく、そのために全力を尽くして奮闘していきたいと、そのことを申し上げて、私の質問を終わります。

委員長(尾辻秀久君)

 以上で小池晃君の質疑は終了いたしました。(拍手)

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