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166通常国会 参議院厚生労働委員会 雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する質疑/雇用/労働等に関する一般質疑

  • 違法派遣/是正指導中のフルキャストに/厚労省が業務委託(関連記事
2007年4月10日(火)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 今回の法案の積雪寒冷地の被保険者への特例一時金の削減問題についてお聞きをしたいと思います。

 これは、北海道を始めとする自治体、季節労働者の皆さんからはたくさん削減反対の声が与野党を問わず寄せられていると思うんです。この要望書を見ますと、特例一時金の削減問題はもちろんですが、それに入る前に、三十年間続いてきた季節労働者のための冬期援護制度が今年三月で終了することの見直しも求めておられます。

 最初にお聞きしますが、この制度の〇六年度の予算は幾らあったのか。これは直ちに全部なくなってしまうようなことになると大問題だと思うんですが、それに代わる施策あるのかどうか、お聞きします。

政府参考人(高橋満君)

 冬期雇用安定奨励金でございますが、これは〇六年度でございますので十八年度でございますか、十八年度の冬期雇用安定奨励金の予算は約四十四億四千万、それから冬期技能講習助成給付金の予算額は約二十二億六千万となってございました。

小池晃君

 それに代わる施策はあるのかと。ちゃんと答えてくださいよ、質問聞いて。

政府参考人(高橋満君)

 私ども、今申し上げた雇用安定奨励金及び技能講習助成給付金でございますが、これまで通年雇用化を促進すると、こういうような趣旨でこの事業を実施してまいりました。しかし、現状は非常にこの通年雇用への移行率というものがいずれも低い状況にとどまっておると、こういうことで、これを十八年度をもって廃止をさせていただいたところでございます。

 ただ、他方で、この季節労働者の雇用対策につきましては、十九年度予算におきまして通年雇用奨励金の拡充といったようなことを中心といたしまして施策の充実強化を図ったところでございます。

 具体的には、季節的業務におきます通年雇用を一層促進するため、通年雇用奨励金についてその助成の経費の対象を拡充をすると。また、季節的業務以外の一般業務への労働移動による常用雇用化ということを進めていくという意味で、新たに試行雇用奨励金及び通年雇用奨励金の対象にしていくと。それから、さらに三点目といたしまして、ハローワークでの担当者制によるきめ細かな就労支援に加えまして、市町村レベルでの通年雇用対策に対する支援事業というものを創設をいたしまして、地域レベルでの相談支援体制の強化を図るということで、従来以上にこの季節労働者の通年雇用化に向けた総合的な幅広い支援策を講じていきたいと考えておるところでございます。

小池晃君

 従来以上にと言うけれども、取りあえず〇八年度以降はということですが、その先はどれだけ確保できるか不明なわけです。いろいろ言うけれども、冬期援護制度そのものが終わるということはこれは紛れもない事実で、これはやっぱり見直すべきだと思います。

 それに加えて、その冬期援護制度を終了した上に、今回の雇用保険法案で特例一時金が五十日から三十日へ、当分の間は四十日へということになれば、これはもう季節労働者の生活が成り立たなくなるという声が寄せられております。

 例えば、全国季節労働者二十三万人のうち、北海道には十三万人が集中している。これ特例一時金が十日分減ると、一人平均約五万円、総額七十億円、本則の三十日分にもしなれば百四十億円がこれは失われることになる。北海道の経済にも相当な打撃になります。だからこそ、与党の議員も北海道出身の方はこうした見直しの紹介議員となっているわけです。

 局長、端的にお答えいただきたいんですが、当分の間四十日分というふうになっているわけですが、当分の間というのは、これいつまでなのか。いつの間にか自然に、勝手に三十日になってしまうというようなことはないんでしょうね、これは。

政府参考人(高橋満君)

 今御指摘の当分の間の期間でございますが、私どもとしては積雪寒冷地におきます地域雇用対策の効果、さらに、給付を受けておられる季節労働者の実態の動向等を踏まえて適切な時期までとすべきであると考えておるところでございますが、この当分の間の措置については法律の附則で措置をいたしたわけでございまして、したがいまして、仮に今委員が言われるような本則の三十日分相当額とするということになりますと、当然法律改正を必要とするということになろうかと思います。

小池晃君

 これ、生活実態をお聞きしているんですが、例えば旭川市の季節労働者からの訴えです。

 妻と子供五人家族で、建設会社の通年雇用で働いていたんだけれども、五年前から仕事が激減して季節雇用になったと。日給は九千円、年収は二百十七万余り。特例一時金が二十六万九千円、技能講習給付金が八万八千円で、これ入れても二百五十三万円で、通年雇用に比べて年収が半減したと。この方、住宅ローンの支払も三年残っていて、この上更に特例一時金が削減されたらもう到底生活が成り立たない。こんな声がたくさん寄せられているんですね。

 大臣にちょっとお示ししたいんですが、この季節労働者問題に各政党がどういう主張をしてきたかなんですよ。ちょっとまあ以前のことになりますが、一九七七年当時の選挙公約があるんです。これ朝日新聞の北海道版に載っているんですね。ここで私たち日本共産党は、九十日復活すべきだということを主張をしております。自民党は、北海道の実態に即しない雇用保険法は特殊事情が反映するよう特例を設けますと。要するに、拡大すると言っているんですよ。それから公明党も、雇用保険法を改正して九十日給付の復活を実現するということを公約に掲げているんですね。これ見ますと、すべての党派が五十日では駄目で、九十日に戻すなどの拡充ということを公約されている。それなのに今回、五十日更に削減するというわけでしょう。

 大臣ね、やっぱりかつての公約と全く正反対の方向を進めていくということについて、大臣、与党の一員でもおられるわけだけれども、これ道民に対して約束違反ということになるんじゃないですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 選挙の公約がどの程度の期間を想定してその施策を公約するかということはあろうかと思うんですけれども、私どもの今度の特例一時金の縮減というのは、今回こういう見直しの必要性というものが指摘されておりまして、他の被保険者とのバランスからいっても見直しをさせていただこうと。しかし、同時に通年雇用対策の拡充というものをさせていただくことによって、そうしたことが全体として大きな打撃を与えることなく実現できるという展望の下で行っているわけでございます。これについては、先ほど来職安局長の方からもるる御説明している点を踏まえていただければ御理解賜り得るものではないかと、このように考えております。

小池晃君

 自民党の選挙の公約には賞味期限があるということは、これからの選挙で大いに宣伝をさせていただきたいと思います。

 これ、変えるんだったらちゃんと説明しないと駄目ですよ。それを変えずに、なし崩し的に全く逆の方向へ持っていくなんというのは許されないと思います。

 大臣は通年雇用、通年雇用とおっしゃるんだけれども、私も通年雇用の環境が整備されているんだったらそれはいいと思いますよ。しかし、実態どうなのか。これね、問題だらけなんですよ。通年雇用の環境、整備されていない、確保されていないんですよ。例えば、実際、〇六年の北海道の建設労働者の動き見ますと、ピークの九月、十月が八万六千人。これに対して、最も工事量が減少する三月にはわずか七千百人なんです。その差異、八万人ぐらいの差があるわけですよ。これが今の実態なんです、積雪寒冷地の。

 順次手を打つんだ、通年雇用対策やるんだと言っているけれども、そんなことを言ってたら働く前に凍えてしまうわけですよ。季節労働者も人間です。生活もあるんです。食事もするし暖房も必要なんです。だから、通年で働くことができる場を確保できているんだったらともかく、それができないのに生活保障の方を先に削ってしまうと。これは順番違うんじゃないですか、大臣、いかがですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 これは私どもとしては、先ほど来お答え申し上げておりますように、政策の面では通年雇用対策というものを拡充しているわけでありまして、そういうものが実現されるということが他方期待をされておる。そういう中で、かねてから問題にされてきたこの循環的な給付であるところの特例一時金の縮減をさせていただくということでございます。もとより、先ほども委員御自身も御指摘いただいているとおり、一挙に恒常的なレベルにまで行くというのではなくて、当分の間ということで経過措置もとらせていただいておるということでございます。

小池晃君

 いや、五十日が四十日になるんだって大打撃なんですよ。大臣、期待でしょう。期待じゃ駄目なんですよ。実体ちゃんとできてからだったら分かるけれども、それは期待しますと言いながら実体できてないのに打ち切るというのは余りに無責任じゃないかと言っているんですよ。命綱なんですよ、これは実際に、北海道の寒冷地の季節労働者にしてみれば。こういうやり方は許されないと。

 労働基準法の第一条には、「人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」というふうに言っているわけです。そういう労働環境をつくる責任が国にはあるわけですよ。そういう労働環境ができたら、じゃ、生活保障の方はもうやめましょうと言うのは分かるけれども、全くできてないのに生活保障の方を先に断ち切ったらどうなるのかと。こういう制度自体が必要でなくなるような労働環境をつくるというのがこれは労働行政の役割じゃないですか。それをまず徹底してやるべきなんじゃないですか。大臣、いかがですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 私どもは通年雇用対策を拡充し、通年雇用がより多く確保されるということを期待し、同時に、それが実現すべく努力をするということを当然のことながら政策の実施に当たる担当の役所として考えているということでございまして、そういう考え方の中で、他方において、特例一時金については今申したような経過措置を伴いつつの縮減をさせていただくということでございます。

小池晃君

 これは容認できません、特例一時金の削減は。五十日、維持すべきだと思います。

 同時に、きちっとその通年雇用の施策を解決するというのであれば、具体的なことをやっぱりしっかりやるべきだと思います。

 二つちょっと考えを提案したいんですが、一つは、実施予定している通年雇用促進支援事業に加えて、同事業の活用で雇用創出に挑戦しようとしている自治体に対して、実際仕事を生み出す、直接雇用を生み出すようなそういうやっぱり仕組みを作るべきだ。緊急地域雇用創出特別交付金ってありましたけれども、地域雇用創出臨時交付金とでも呼べるような、こういう自治体で直接雇用を生み出すという施策が必要なんではないか。それからもう一点は、やはり建設業などの業界があるわけです、季節労働者を多用している。そういう業界と国、自治体が連携して、例えば積雪寒冷地休業補償基金というようなそういう基金を創設をして、季節労働者の新たな通年雇用対策考えていくと、こういうやっぱり具体的な手だてを打っていくべきじゃないですか。まあ、こういう提案いかがですか。

副大臣(武見敬三君)

 いろいろなお考えはあるんだろうと思います。この季節労働者の雇用対策については、平成十九年度予算において通年雇用奨励金の拡充などの施策の充実強化によって季節労働者の通年雇用化の一層の促進を図る、これがまず基本でありまして、そしてこの中で、例えば建設業というお話がありましたけれども、この建設業におきましては特別に雇用保険料を上乗せ徴収をいたしておりまして、これは千分の一でありますが、当該財源を元に建設労働者の雇用の改善を図るための助成金の支給など、その特性に応じたきめ細かな支援策、これを講じております。このうち、建設事業主団体がその構成員たる事業主に対して通年雇用を促進する取組を講じた場合に要した費用の一部を助成する仕組みを雇用改善推進事業助成金として設けております。

 こうした施策を通じて、季節労働者の通年雇用化というものを更に促進をしたい、こういう考え方でございます。

小池晃君

 今までの施策の枠組みやっぱり一歩出てきちっと支援、季節労働者の通年雇用のための施策を取るべきだというふうに、それは検討していただきたいと思います。

 それから、雇用保険制度の一つの日雇雇用保険についてもお聞きしたいんですが、日雇労働者と規定されている人は現在何人で、いわゆる白手帳、日雇雇用保険の手帳というのは何人が所持しているのか、数字だけ端的に。

政府参考人(高橋満君)

 日雇労働者の数でございますが、これは労働力調査で見まして、平成十七年が百八万人という数字が報告されております。他方、日雇労働被保険者として手帳を発給しております、交付しております方々が三万人という数でございます。

小池晃君

 非常に大きな開きがあるわけですね。これは本来加入できる条件の労働者が加入していないということになるんじゃないですか。何でこんなことになっているんですか。

政府参考人(高橋満君)

 労働力調査でございますが、これは、労働力調査における日雇労働者というのは、調査月の月末一週間に実際に日々又は一か月未満の契約で雇われて働いた者という数として統計的に把握されている者でございます。

 他方、雇用保険制度におきます日雇労働被保険者でございますが、これは常態として日々又は一か月未満の契約で雇われる者として働いている者で一定の要件を満たす者が対象でございまして、当然その範囲に違いがございます。それから、雇用保険制度におきましては、日雇という形で働いておりましても、直近の二月の各月におきまして同一の事業主に十八日以上雇用された場合には原則として一般被保険者になるというようなこともございます。

 そうした点からも両者に差が生じるものというふうに理解をいたしております。

小池晃君

 そうはいっても、実態をお聞きをしますと、ちゃんと適用されているのかなって疑問に思うようなケースが一杯あるんですよ。

 例えば、京都府、滋賀県辺りでは、警備業者が事業を受注できたので日雇雇用保険の事業所の登録を地元の職安に申請に行ったら、窓口で建設、警備業ではできないというふうに拒否された。あるいは、京都府では、建設業者が職安に申請したら、管轄区域内に日雇労働市場がないからって拒否された。

 これ確認したいんですが、日雇雇用保険では登録事業の業種限定とか地域限定というのはこれあるんですか。

政府参考人(高橋満君)

 雇用保険制度におきます日雇労働被保険者でございますが、これは日々雇用される者又は三十日以内の期間を定めて雇用される者でありまして、厚生労働大臣の定める適用区域内に居住するか又は適用区域内の適用事業所に雇用される者等がその対象になるというものでございます。

 したがいまして、業種については特段の制限はございませんが、地域については一定の限度というものを、一定の範囲というものが定められておるということでございまして、適用事業所につきましても、これら日雇労働被保険者の雇用の可能性ということを適正に判断をして対応しているところでございます。

小池晃君

 この日雇労働者対策というのは、このホームレス対策法が制定されたときにもう予防措置として重要だと位置付けされてきたわけであります。先日、日雇派遣という労働者の問題も私取り上げました。やっぱり政府はきちっと必要な手帳を交付する、必要な業種の登録を行う、で、不安定雇用から抜け出すというサポートをしていくのは政府の責任だと思うんです。

 大臣ね、殊更行政的に日雇雇用保険の登録事業所の数とか手帳の交付数を減らすと、で、規模を縮小すると、こういうことがあってはならないというふうに思うんですが、やはり必要な人にはきちんと適用していくということをやっていくべきだと思いますが、大臣の見解を伺います。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 日雇労働者のうちで常用雇用を望む方に対しては、職業紹介や技能講習を行って日雇労働者の常用化を図るという努力をまずしています。そういうことが私は必要だと、このように思います。

 雇用保険制度における日雇労働者というものにつきましては、今職安局長の方からつまびらかに御説明したように、一定の要件が満たされた場合に適用されると、こういうことになっているわけでございます。そういうことでございますが、労働者又は適用事業所より雇用保険の適用に係る相談等があった場合には、私どもとしては雇用実態を詳細に調査した上で被保険者資格の有無等について慎重に判断していかなければならないと、このように、雇用保険の運用上の立場からそのように考えております。

小池晃君

 必要な人にはきちんと適用していただきたい。

 最後に、三事業の問題ですが、もちろんホテル事業などの本来の趣旨から逸脱したものについては、これは政府の責任、逆に明確になっていないように思います。

 必要な事業もあるはずで、例えば人材確保等支援助成金、看護師等雇用管理研修助成金というのがありますが、これきちっと法的根拠があって設けられたものが今回廃止される。これ、引き継ぐ施策についてどうなっているのか、ちょっと簡単に御説明を。

政府参考人(高橋満君)

 看護師等雇用管理研修助成金でございますが、これについてはなかなか、その実績が非常に極めて少ないと、こういうようなこともございまして、今般、雇用福祉事業の廃止に伴いまして廃止をいたすことといたしたわけでございます。

 今後については、元々この助成金の目的が看護師等の人材の確保に資していくというようなことであるわけでございまして、そういう観点から私どもといたしましては、全国の福祉重点ハローワークにおきます職業相談、職業紹介等を通じた人材の確保、それからキャリア形成促進助成金によります研修等の受講経費の助成によりますキャリアアップということを引き続き行いますとともに、独立行政法人雇用・能力開発機構におきまして雇用管理相談でありますとか雇用管理講習会といったものを開催をいたしておりますので、そうした中で看護師等に対する雇用管理の改善への支援ということもこの中で対応していきたいということで努力をしていきたいと考えております。

小池晃君

 制度がなくなってもきちっと後継策があることは周知徹底していただきたいと思います。

 終わります。

小池晃君

 私は、日本共産党を代表して、雇用保険法等の一部を改正する法律案の原案及び修正案に反対の討論を行います。

 反対する第一の理由は、雇用保険への国庫負担の五割削減によって、制度への国の責任が大きく後退しているからです。

 そもそも、失業給付への国の責任は、勤労権を保障した憲法二十七条に根差しています。大企業のリストラや非正規雇用の拡大など、深刻な雇用情勢の下で国の役割はますます重要です。二兆九千億円の積立金に示された雇用保険財政の好転は、委員会論議でも明らかになったように、前回改定による保険料率の引上げや給付額削減、受給期間の縮小の結果であることは明白です。本来なら、給付の拡充とともに、除外されている一千万人を超える未加入者への対策こそ求められており、国庫負担の削減など言語道断であります。

 反対の第二の理由は、被保険者の受給資格に新たな差別を持ち込み、今まで六か月で受給できた権利が奪われることになるからです。

 既に自己都合離職には給付制限期間三か月が課せられている上、前回改定で給付にも格差が付けられました。今回の改定は、この上、新たに資格要件まで差別化するものです。循環的給付や安易な給付を防止するという改定理由も、具体的根拠を一切示せないままでした。

 反対の第三の理由は、本日質問した積雪寒冷地の被保険者等への特例一時金の削減です。

 この制度は、冬期に仕事のない季節労働者の命綱であるにもかかわらず、通年で働ける措置がないままに削減が進められており、季節労働者の生存権が脅かされています。

 さらに、雇用福祉事業三事業についても、今回廃止される五十二施策の中には、看護師等雇用管理研修助成金や出稼ぎ労働者の健康診断などに対する地方への補助や小規模事業所の雇用保険事務代行への助成制度が廃止されるなど、雇用福祉制度の後退があります。

 育児休業職場復帰給付金の引上げは改善ですが、基本手当の算定基礎日数から育児休業期間を除外することは賛成できません。

 そもそも、本法案は雇用保険制度の根幹にかかわる重要な法案であるにもかかわらず、日切れ法案扱いということで、十分な質疑時間の確保や参考人質疑も行われず、このような短時間の審議で採決すべきものではありません。

 法案成立前の文書配付についても、国会軽視として厳しく抗議をいたします。

 以上指摘をして、私の反対討論とします。

午後/雇用・労働等に関する一般質疑
小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 前半、政府に質問します。

 先日の質問で、東京労働局がフルキャストに対して業務改善命令を出した件について、悪質だと、厳正に指導するように求めました。ところが、その後、東京労働局が今年一月五日の契約でフルキャストグループのフルキャストHR総研に対して求職活動支援セミナーを業務委託しているということが分かりました。フルキャストは昨年八月に神奈川労働局から是正指導を受け、是正したはずなのに九月段階でも履行されていないということで今回業務改善命令を受けた。全国五十三支店で同様の違反が明らかになっております。

 職安局長に聞きますが、労働局から是正指導を受けている最中のグループ企業に対して、求職活動支援セミナーのような雇用にかかわる事業の業務委託を行う、こんなことがあっていいのか。東京労働局は一月の段階で昨年の神奈川の件は承知していたはずです。認識していても問題なしとしたのかどうか、お聞きします。

政府参考人(高橋満君)

 今の御指摘の求職活動支援セミナーでございますが、これは雇用保険受給者の早期再就職のために履歴書、職務経歴書の書き方とか面接指導等を行うものでございまして、その際、民間事業者のノウハウを活用していくということで各都道府県労働局から民間事業者に委託をして実施しているものでございます。

 お尋ねの東京労働局にかかわる業務委託でございますが、これは一定の入札参加資格を満たした企業等の中から企画競争入札等を行いまして、最も企画が優れているものと委託契約を締結したものでございます。業務改善命令を受けたフルキャストの関連会社ということでございますが、それぞれ独立した法人ということを踏まえますと、適切に委託先が選定されているものというふうに理解はいたしております。

小池晃君

 いや、独立なんかしていないですよ。ホームページ見たら、もうフルキャストグループで一体としてこれ宣伝しているんですね。れっきとしたフルキャストグループの一員なんですよ。そういう言い訳は私、通用しないと思います。どういう検討の上にこういう業務委託に至ったのか、これは事実関係を後で報告をしていただきたい。

 また、昨年の十月に、キャリア形成助成金の対象となるキャリアコンサルタント能力評価試験として職業能力開発局長が指定する試験に、これまたフルキャストHR総研の能力評価試験を指定、更新しているんですね。これ、当然指定する民間機関が法律を遵守しているかどうかということは大事な問題なわけです。法律違反が明確なフルキャストのグループ企業をなぜここでも指定したのか。これ、問題ないと言うんですか。

政府参考人(奥田久美君)

 御指摘のキャリアコンサルティング能力評価試験につきましては、指定基準に基づきまして試験実施機関として指定をしているところでございます。

 この指定基準の中には、試験の実施体制あるいは試験内容に関する要件、こういったものがございますので、こういったものを審査をして、それが適当であるという判断で指定をしているわけでございますが、試験機関として著しく不適当と認めるに足りる相当の理由がある場合等につきましては指定の取消しということもございますので、今後動向を見ていきたいというふうに思っているところでございます。

小池晃君

 これは著しく不適当ですよ。もう派遣法違反の違反率というのは非常に高いわけで、そういう違反企業に様々な事業を委託して雇用関係の助成金が流れていくという構造は、私、これ大問題だと思うんですね。

 大臣、派遣法違反について厳正にやっていると言うけれども、厚労省が行っているこの派遣会社及び再就職支援会社に委託業務先、こういったところが法令違反をしていると。これ重大な問題だと私は思いますし、これグループだからという言い訳通用しないと思うんですよ。やっぱり総点検すべきだと。少なくとも、違反がこれだけ明らかに、フルキャストグループなんて全国ぐるみでやっているわけですからね。

 こういうグループに対する委託や指定というのは、私は当然見直すべきだと思いますが、大臣いかがですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 委託の事業、それから試験についての指定というか、そういうことをしておるということで、他方において労働者派遣事業の法令に違反することが行われておって改善命令を受けたと、こういうことでございます。

 ただ、その間、フルキャストそのもの、改善命令を受けたフルキャストそのものではなくて関連会社であるということで、いろいろ行政当局も考えておるということの答弁でございましたが、これは私はやはり検討をしないと、片方で改善命令を出して処分をしているという中で片方で仕事を手伝ってもらっているという形が本当に適当かどうか再検討をしなければならないと、このように思います。

小池晃君

 これは是非厳しく再検討、総点検していただきたいというふうに申し上げたいと思います。

 それでは、参考人の方々にお聞きをしたいと思うんですが、最初に日本経団連専務理事の紀陸参考人にお伺いします。

 四月六日の経済財政諮問会議で、労働時間の短縮や数値目標を掲げるというふうにしたことについてであります。この場で日本経団連の御手洗冨士夫会長が働き方を変える行動指針の制定に向けてという提案を共同でされまして、労働時間については短縮などの数値目標を掲げ確実な達成を図るべきだと提言されました。

 専門調査会の報告を見ますと、十年間で労働時間を一割削減して残業時間を半減するというふうに言っています。十年掛けてというのはちょっとどうかなという感じはしますが、しかし、そもそも年間総実労働時間という時間の中にサービス残業は入っておりません。この問題で摘発されてももう後を絶たない違反企業の問題が話題になっているわけであります。

 御手洗会長の提案も含めて、このサービス残業問題の解決ということに触れていないのは一体どういうことなんでしょうか。なぜなんでしょうか。

参考人(紀陸孝君)

 御質問の焦点は、諮問会議で時間短縮の件について会長としてコメントがなかったと、その点でございましょうか。

小池晃君

 はい。

参考人(紀陸孝君)

 決して問題意識がないわけでなくて、長時間労働の抑制自体は会長のみならず産業界のやっぱり総意だというふうに思うんですね。大きく、今先生いろいろなことをおっしゃいましたけれども、じりじりといわゆるオーバータイムの幅を縮めていって、かつ同時にサービス残業であるとかあるいは不払残業であるとか、それは完全に法令違反がはっきりしていた場合には、これは許されることではありませんので、どの企業も今様々に時間把握を行って、かつ健康確保という点も含めてこの抑制に努めている段階だというふうに思います。

 したがって、決して御手洗会長の意識が欠落していたわけでなくて、それを当然の前提としてのコメントであったというふうに理解しております。

小池晃君

 日本経団連のサービス残業についてのちょっと取組について引き続き聞きたいんですが。

 二〇〇一年に厚労省がサービス残業根絶の通達出したときに経労委報告で、労働基準行政に対して通達を基に企業の実態を無視したかのような指導がなされている、企業の国際競争力の強化を阻害しかねないような動きが顕著であるというふうに日本経団連として御主張されました。これに対して、厚労省は文書を出しまして、労使慣行には介入していないんだと、実態に合った指導監督をしている、そして指摘を受けた企業は冷静に自らの企業の在り方を見直すことから始めることが望ましいという見解を伝えました。

 この問題は、この委員会でも私、柳澤大臣とやり取りをさせていただいて、柳澤大臣は、日本経団連が各都道府県の経営者協会を回ってその趣旨を説明したということを確認したというふうに答弁をされているんですね。日本経団連としては全国の経営者にサービス残業の根絶というのをどのように徹底されているのか、お聞きしたいと思います。

参考人(紀陸孝君)

 法の趣旨を遵守するのは当然でございまして、実は私ども、今先生御指摘のように経営労働政策委員会報告、これ毎年春季の交渉の前に発表いたしますが、そのときに併せて、今、厚労省からの見解も踏まえて、これ私どもの職員がみんな分担して全国の経営者協会に回ります。これは、春の交渉を前にして経営側としてどういう、特に賃金問題が中心でございますけれども、賃金、それから労働時間の問題も含めてですね、労使でどういうふうな協議をしたらいいのか、そのプロパガンダに回りますので、そのときに併せて各都道府県の経営者協会に遵守方、説明をいたしております。

小池晃君

 ちょっと実態も御紹介をしながら、更にお聞きをしたいと思うんですが、東芝、これは日本経団連副会長企業で、経営対策委員会の会長企業でもあります。日本経団連が三月二十日に提言出されましたね。その中で、ワーク・ライフ・バランス推進に関する企業の事例集というのがあるんですね。そこで東芝が紹介されているんですよ。

 ここでは、東芝が一月の残業八十時間超したら医師の面接を必須とし、健診を実施している、長時間労働の是正に向けた取組だって、まあ天までというとあれですけど、かなり持ち上げているんですね。ところが、これ実態を労働者に聞いたんですわ、東芝の。東芝の京浜事業所の労働者に聞くと、長時間労働ずっと続いていると。

 これはもう御紹介だけで別にお答えいただかなくていいんですが、東芝の京浜事業所の労働安全衛生委員会が発表している時間外健診状況というのを見ますと、工場で働く約二千二百人のうち、月の残業八十時間を超す労働者数が昨年六月は三百六十三人、七月は二百九十九人、その後ずっと毎月三百人超えているんですよ。十一月は四百九人なんですね。だから、実に五人に一人が八十時間超なんです。この四百九人の平均時間外労働は九十八・六四時間だと、これこの労働安全委員会の報告にあるんですね。つまり、だから毎日五時間残業していると。夜十時から十時半まで働いているということになるわけで、正にこれ過労死水準超えるような状態で働かされていると。これで長時間労働是正していますといっても、過労死対策をやっているだけじゃないかというふうに私なんか見て感想を持ちました。

 この東芝についていうと、そのサービス残業について、ここ数年間だけでも労基署から、京浜事業所あるいは川崎工場、これ三回の是正指導を受けているわけですね。京浜事業所は五億円支払ったとされているんです。こうしたサービス残業というのは、もうこれ東芝に限らず大企業、多くの大企業で摘発をされております。

 私、この経済財政諮問会議で労働時間短縮するという提言された、これはもう大いに結構だと。しかし、そう言われるのであれば、やっぱりまずこういうサービス残業、長時間労働というのをこの会長、副会長企業の中でどうなっているのか、よく点検をして、やっぱり率先してなくしていくべきなんじゃないか。これ日本を代表する企業でしょう、日本経団連の役員企業というのはね。やっぱりそういったところでこういう実態があるというのは、私は国際的に見ても大問題だと思うんですよ。是非こういう率先垂範して、日本経団連のその役員企業などで労働時間削減、何よりもサービス残業の根絶ということにやはり努力されるべきではないかと思いますが、いかがですか。

参考人(紀陸孝君)

 御指摘のように、法違反というのは許されない事態だというふうに思います。今、各企業とも仕事の繁閑が相当にある中で、特に忙しいときにどうやってそのオーバータイムの幅を縮めるか、人の年間通じての均等ならしと併せて、鋭意努力しているさなかだと思いますので、その辺の事情も御理解いただければ幸いかというふうに存じます。

 法令遵守は当然のことだというふうに思っております。

小池晃君

 もう一つお伺いしたいのは、偽装請負への是正指導の問題なんですが、日本経団連の御手洗会長は経済財政諮問会議で、法令遵守当然だがということはまくらに置いておられますが、請負法制に無理があり過ぎると、これを是非もう一度見直してほしいというふうに発言されました。

 これは、日本経団連としては現在もこの請負法制には問題があるという認識をお持ちなのか。会員企業が偽装請負をやっている例もあるかと思うんですが、これにどう対応されていくおつもりか、お聞かせ願いたいと思います。

参考人(紀陸孝君)

 請負の問題につきましては、これは請負だけでないんですけれども、派遣もそうなんですけれども、職場の実態に合わせた法令の運用というのが一番基本かというふうに存じます。

 特に構内請負が認められて、実際には最低限の指示命令というのが発注主の方から必要な場面が出てまいります。昨年の十月にそういうような、これはある程度何というか、領域を絞った範囲でございますけれども、発注主側の指示命令ができるというふうな運用が変わりましたんで、この点は大いに評価したいというふうに存じております。

 以上であります。

小池晃君

 是非、やっぱり企業の社会的責任ということが国際的にも大きく問われている中で、こういう会員企業の中で違法行為が行われているという実態についてきちっと対応していただきたいなと思います。

 最後に、連合の古賀参考人にお伺いしたいと思うんですが、今、日本経団連の紀陸参考人といろいろやり取りしてまいりまして、同時に、御手洗会長の提言では、多様な働き方という言い方でホワイトカラーエグゼンプション導入も、これあきらめていらっしゃらないということを出されているんですね。

 連合として、労働組合の立場、労働者の立場から日本経団連の長時間労働やあるいはサービス残業についての対策、取組についてどのようにお考えか、お聞かせ願いたいと思います。

参考人(古賀伸明君)

 冒頭、連合の各企業組合の労働時間の実態については御報告をさせていただきました。いわゆる不払残業、サービス残業もまだまだ後を絶たないという実態の中で、労働組合としても、我々自身も労働時間管理の問題あるいは企業に徹底的にきちっとしたコンプライアンス、そして規制を掛けていく取組もやっていかなければならないというふうに思っておりますけれども、是非やはり職場実態というのを各企業がしっかりと把握をして、そして正に対策を早急に取る、そんな迅速な対応を企業には要請をしていきたいというふうに思っているところでございます。

 また、先ほどの議論の中で幾つかのキーワードが出ました。一つは、ワーク・ライフ・バランス。非常に今ワーク・ライフ・バランスという言葉は響きが良く、あらゆるところで出てきますが、このワーク・ライフ・バランスということについても一度政労使の間でどういうことなんだという概念を統一をしないと、何か同床異夢的なものが残っていくんではないかというふうに思っております。

 当然のことながら、ワーク・ライフ・バランスを取るために長時間労働を削減をしていく。正に日本の働くモデルは例えば九時から五時まで、残業というのはあくまでもイレギュラーなときが残業なんだという、そのモデルを作ることによってワーク・ライフ・バランスやあるいは少子化の問題、そして次なるステージへ向けての成熟社会への対応が図れるのではないかということもあえて申し上げておきたいと思います。

 以上でございます。

小池晃君

 ありがとうございました。

 以上で質問を終わらせていただきますが、野川参考人は先ほど、今後出されてくる労働法制についての御意見聞かせていただいて大変参考になりましたので、ありがとうございました。

 今日も御手洗会長の発言をいろいろと引用させていただいて御質問させていただきましたけれども、是非、経済財政諮問会議等で積極的に御発言もされているので、国会の場に来ていただいて、お話を直接お伺いしたいなというふうに思っておりますので、その旨是非お伝えいただきたいというふうに思っております。

 以上で質問を終わります。

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