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166通常国会 参議院厚生労働委員会 パート労働法「改正」案に関する質疑

  • 「すき家」/残業割増代不払い/参院委 小池議員が指導要求(関連記事
2007年5月17日(木)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 おとといの質疑、昨日の参考人、そして今日の質疑も通じて、今求められているのは、やはりパート労働者だというだけで賃金や福利厚生などで差別されている実態を正して、本当の意味での均等待遇ということを近づけていくということだろうと思います。

 これに対して安倍首相は、本法案について、先ほど大臣も総理肝いりだとおっしゃいましたが、これ、すべてのパートを対象としてきめ細かく待遇改善していくんだと答弁をされた。しかし、やっぱり審議通じて、本法案はそうしたパート労働者の願いにこたえるものになっていないということをつくづく感じるわけであります。

 そこで、まずお聞きしたいのは、差別禁止規定を設けた八条一項の、通常の労働者と同視すべきパート労働者の対象が一体どれだけいるのかという、この議論です。

  〔委員長退席、理事阿部正俊君着席〕

 これ、二十一世紀財団の調査を基にして、対象となるのはパート労働者の四、五%だという大臣の答弁に対して、これはおととい吉川議員も、同じ調査で期間の定めのない雇用と答えた方が二一・一%だったので、四、五%に〇・二掛ければ一%もないんじゃないかと、こういう提起もいたしました。

 大臣は、そのとき答弁として、四、五%にすぐ掛けて正しいのかというふうに答えたんですが、要するに、二つの要件で四、五%だと、じゃ三つ目の要件掛けたら一%切るじゃないかという考え方自体は、これは別に間違っていないんじゃないかと。何ですぐ掛けちゃいけないんですか。なぜ正しくないというふうにおっしゃったのか、説明してください。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 私は、この三つの要件というか、私どもがこの二十一世紀職業財団が実施した多様な就業形態の在り方に関する調査というもので、四、五%の者は配転、転勤等の取扱いが正社員と同じと回答したものでありますから、そういう同じといったんされたものにまた〇・二ですか、というものを掛けるというよりも、それはまあ、四、五%というとあと残りは九六とか九五なんですね、そういうところと全く一視同仁で掛けるという掛け算は正しいのかという疑問を私は申し上げたということに尽きます。

小池晃君

 いや、意味がよく分かりません。だって、三つの要件があって、そのうちの二つを満たしているのが大体四、五%だというのがあの結果だと思うんですよ。それとは別に、三つ目の要件でこれが二一%だってあるんだから、考え方としては、三つの要件満たせばそのカテゴリーになるんであれば、その三つ目を掛けて大体一%を切るぐらいじゃないのかと、考え方はそうなるんじゃないですか。

政府参考人(大谷泰夫君)

 二つの要件が最初にあって、三つ目の要件でというふうにちょっと今お話があったんですが、実はこの十三年の調査項目は、その幾つかの要件が重なって聴いている。といいますのは、その当時、こういった期間要件について今回の法律改正のような区分というものはなかったわけでありますから、ある意味で包括的に聴いているようなものがあって、それで幾つかの数字が重なっているわけでありますが、平成十三年度の調査項目は何を聴いたかといいますと、仕事と、それから責任の重さと、残業や休日出勤があるかということと、配転、それから転勤の有無それから頻度、これが自分が正社員と同じかということを聴いているわけであります。

 この配転や転勤の有無、頻度を答えるときには、これは有期の人であっても、恐らくこれは、自分はそこについて正社員と同じだと答える人のケースというのは、自分が例えば一年とか三月の方はそう答えるはずがないということで、これに答えられた方というのは、もうかなりの方がその中で自分は正社員並みと考えたということで、これはその統計として別に取った全体の全数の中で、その二割が期限の定めなくて八割があるということを、これは違う母数になるわけでありますから、そこは掛けるわけにいかないということで、むしろ最初の四、五%という、そのアンケートの丸を付けたその部分の方が蓋然性は高かろうというふうに申し上げているわけであります。

小池晃君

 今の説明というのは、もう恣意的解釈というのの見本みたいな話だと思うんですよね。勝手に推測ですよ、これ。これ、丸付けた人はきっと、自分は有期だから、これは有期だから自分は該当しないんだろうと思ったに違いないという、勝手に推測しているだけの話で、私は統計の見方としては非常にこういうのは一番悪いやり方だと思いますよ。

 で、大臣ね、大臣は、どんぴしゃじゃないけれどもこれ近似値じゃないかというようなこともおっしゃっているんですが、いずれにしても、まあ何%になるのかという議論はともかくとして、四、五%よりもこれ少なくなるということは、これは少なくとも間違いないんじゃないですか。このくらいちょっとはっきり認めてくださいよ。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 それは私もなかなか難しいと思うんです。(発言する者あり)いや、要するに、この四、五%ということになると、あと九六なり九五%はいらっしゃるわけですね。そうして、そういう人たちの中で、何と申しますか、非常に有期の方の比率が多くて、この四、五%の人たちは有期の比率が非常に少ないという、そういう分布だってあり得るわけでございます。

  〔理事阿部正俊君退席、委員長着席〕

 というのは、今、雇・児局長が答えたとおり、これは、ほぼもう期間の定めのない方々か、あるいはそれに同視すべき方と同じぐらいだろうと、こういう推測をしているということと併せてお聞きいただければ私はお分かりいただけるかと思いますが、どうしてもこれよりも、四、五%というのは、有期の方がこの中にもう絶対いないと言えないという意味ではこれより目減りするだろうということについては、私もそれを絶対ないとは言い切りませんので御随意、御随意と言っては恐縮ですが、そういう解釈に、どのくらいかというのは分からないということを申し上げているという意味で、委員の御指摘については私は全否定はいたしません。

小池晃君

 いや、これ結構大事な問題でしょう。だって、この法案で差別禁止の対象になるのはどれだけなのかと。それを御随意にというのはちょっと無責任ですよ。やっぱりこれは大事な問題だし、しっかり言うべきだと思います。これで、そういう大事な問題のところで恣意的な解釈やるというのは、私は制度や法案に対する国民の信頼を本当にゆがめることになると思いますよ。こういったところはきちっとやっぱりしなきゃいけない。

 昨日の参考人質疑でも、そんな人には会ったことがないとか、いるんだったら教えてくださいという、そういう声出ているわけですよ、現場で実際に。そういう事例を扱っているような弁護士さんであるとかあるいは労働組合の方からそういう声が出ているわけで、私はやっぱりそういう声にしっかり耳傾けるべきだというふうに思います。

 しかも、この同視すべき三要件の中に配置変更が見込まれることというのは、これは重大だと思うんですね。配置変更に応じられないような家族的責任を有する労働者の差別につながるのではないかということについてはどうお答えになるんですか、局長。

政府参考人(大谷泰夫君)

 今回の差別禁止の対象をどう定めるかということにつきましては、これ、基本的に均衡処遇を全体にかぶせていく中で、しかし、通常の労働者と同視できる人はどういう人かということをまず確定しなければいけないということで、例えば同じ職場にいて一時的に業務的には同じことをしていても、しかし一方はその本社が採用していろんな場所を経験してそして今そこにいる人もいれば、いろんなケースがある。そうすると、同視するべきはどういう方かということについて、これは審議会でも相当精緻な議論を、これは過去、歴史的にもどういう人を同視すべきかという議論があったわけであります。

 ここで、今回正社員と同視して、その処遇についても、これは退職金から住居手当からみんな同じだという人はどういう人かということになりますと、これは我が国の雇用システム全体、正社員のこれは雇用システムも見渡して、ある程度の長期の雇用を想定してこれは人材育成を行うとともに待遇の決定が行われているということから、通常の労働者と同視すべきであるかどうかという主張として、このある一時点でない、職務内容以外の長期的な見方が要ると。そのために、三要件と申しますけれども、職務が同一であるということ、それから無期契約又は有期契約であっても、実質的に無期契約となっている場合であって長期雇用を前提としていること、それからその人材活用を同じようにされている、こういった要件を備えたわけでありまして、そういったことが同視するべき人というさっきのルールの中では必要かつ十分なものであったのではなかろうかというふうに考えているわけであります。

 しかしながら、これまでの参考人の質疑それから御議論の中で若干、先生方に誤解はないと思いますけれども、議論の中に誤解が生じやすいのは、何かパートタイマーはその転勤要件というか、転勤をしないと正社員並みではないと、こういったちょっと誤解が一部にあるような気がいたします。

 これは、同じ事業所において自分が正社員並みであるといった場合に、対象となる方々と同じであるかということを比べているわけでありまして、その比較対象の方が、それが転勤していない方であれば、それはその方と同じであれば、それで差別禁止の対象になるわけでありますから、言ってみれば、その通常の労働者の中に転勤する方されない方、むしろいろんな方々がいて、むしろそれはその通常の労働者の中にもいろんなその働き方があるべきであるという昨日参考人の御意見もありましたが、そういう中で比べていくというわけでありますから、正にその配置転換が必要だからその家庭責任を有する労働者差別というふうに一概には言えないんではないかというふうに考えております。

小池晃君

 いやいや、それは私の言っていることに答えてないと思うんですけれどもね。

 要するに、一般労働者の場合でいうと、家族的責任を有する労働者が転勤に応じられないという場合に、それを理由とした不利益取扱いというのは許されないはずだと思うんですよ。ところが、短時間労働者の場合というのは、それをもって一律に同視すべき労働者からはこれ排除されちゃうと、これは権利の侵害になるんじゃないですか。今の説明からいっても私そうなると思いますが、いかがですか。

政府参考人(大谷泰夫君)

 これ、権利の侵害と申しますよりも、くどいわけでありますけれども、ある意味パートタイムで相当期間お勤めになった方が、自分はどう考えても通常の労働者と同じであると考えた場合に、同じである人というのはどういうところで比べるのかというこれを尺度にしたわけでありまして、その尺度が、さっき言いましたけれども、職務と人材活用の仕組みとそれから期間ということがあったということで、そのことそのものが権利侵害になるというよりも、それは、そこが確認できれば差別禁止の対象になるという、これでその権利が創設されるのではないかというふうに考えております。

小池晃君

 今の説明でも、ちょっとその権利侵害だということに対する答えになっていないと思います。

 更に危惧されるのが、この法改正きっかけにして、正社員の中から転勤に応じられない人をパートに変更してその賃金と労働条件引き下げる危険があるんじゃないか。パート労働者の処遇改善のための法改正によって正社員の労働条件が悪化するということはあってはならないと思うんですが、一般法理でどうなっていますという話じゃなくて、今回の法案の中にそうならないような担保というのはあるんですか。

政府参考人(大谷泰夫君)

 今回の法律の中に今申し上げた部分の明確な規定はありませんけれども、これは労働条件の不利益変更を事業主の一存で合理的な理由なく一方的に行うということは、およそこれは法的に容認されないものでありまして、万が一正社員の労働条件が合理的な理由なく引き下げられた場合には、この個別労働関係紛争解決促進法に基づく紛争解決の援助が受けることができるということで、そういった局面で打開されると考えております。

小池晃君

 およそあってはならないと言うんですけれども、その一方的な不利益変更というのは、じゃ、その個別労使紛争の中で、実態としてはどうなっているんですか。たくさんあると思うんですが、実態を御説明してください。

政府参考人(宮島俊彦君)

 御質問の正社員からパート労働者への不利益変更の相談件数ということについては、これは把握できておりません。十七年度に都道府県の労働局の総合労働相談コーナーに寄せられた民事上の個別労働紛争相談のうち、労働条件の引下げということに関するものは二万八千六十二件というような件数になっております。

小池晃君

 実際にはこういう表に出てきたものだけでも非常に多数の理不尽な不利益変更がまかり通っているわけです。

 実例をちょっと紹介したいと思うんですが、栃木県の東武グループの子会社の株式会社東武スポーツ、ここは二〇〇二年の二月に正社員のキャディー職二十数名に対して、一年契約のキャディー契約書への押印、提出を迫りました。提出しない場合は四月以降契約終了、つまり解雇すると、こう脅して正社員から契約社員になる契約書を提出させているんです。これは、賃金も二四%大幅減額されることを隠して、定年退職まで安心して働けます、給料もさほど変わりませんと、こう説明していたんですね。これは、宇都宮地裁の判決では、会社側の本人同意があったという主張を退けて、旧労働条件による労働契約に基づき期間の定めのない労働契約上の権利を有すると、こう認定されています。しかし、会社側はこんな明白な事実があっても控訴して、いまだに団交にも応じない、五年掛かっても未解決なんですね。

 仮に裁判にならなくても、正社員のパート化、一方的な不利益変更なんというのは、もう一杯起こっているわけですよ、実際には。こんなことで、一般法理でできませんから大丈夫です、どこが法律上困難なんですか。実態見ればこんなことがどんどんどんどん出てくる危険がますます増すんじゃないですか。いかがですか。

政府参考人(大谷泰夫君)

 今回の法律改正によって、これは均衡の考え方でありますから、本来、通常の労働者にパートタイムの労働者をどう近づけようかとする中で、一方で正社員側にどういうことが起きるかということで、私どもとしては、先ほど申しましたように、従来の正社員の雇用にこのパート法そのものが悪影響を及ぼすというよりは、そちらにパートの処遇を近づけるということで実態を期待しているところでございます。

小池晃君

 いや、駄目だと思いますね。

 しかも、今の議論は現にいる労働者の例ですが、新規採用についてどうなのか。この法改正きっかけにして、今後これから雇用する者のうち転勤できない労働者は正社員としないでパートにすると、そういうルールを作った場合は、転勤できる労働者以外はパートというふうになってしまうことになっていく。転勤という例じゃなくても、配置転換であっても職務の責任であっても要件に少し差を付けてそういう採用ルールというのを作ってしまう、法改正きっかけに企業側がそういう採用方針に変えていく、こんなことが許されるんですか。

政府参考人(大谷泰夫君)

 政府といたしましては、その企業や経済の活動全体が底上げされて、正社員とパート労働者双方の労働条件が改善される中でその均衡待遇が確保されることが望ましいと考えているところであります。

 しかしながら、今おっしゃったような形があるのかということで、もし、このパート労働法の改正が理由でそういうことが起きるということであれば、それはその転勤等を強制する理由として適切なものであるかどうか極めて疑わしいと思うわけでありますけれども、ただ、必要がある転勤要件であれば、それが問題あるとまでは言い切れないということだと思います。

小池晃君

 結局何も言えないということじゃないですか。企業がそういう採用ルールにしても何も言えないと。何のための労働行政か。私は、この法案がかえって正社員も含めて労働条件悪化させる危険すらあるということを今の答弁を聞くと本当に思いますよ。

 しかも、この対象は一体どういう人たちなのかということで、衆議院の論議で局長は、大手のスーパー等においては人事管理が先行して徹底されているから今回の差別禁止の対象みたいなものはもうほとんど存在しないんだという答弁をされているんですが、だから、結局、この法律できても、大手企業なんかはもう雇用管理が行き届いていて、パートはパート、正社員は正社員と職務もきっぱり分かれていると、だから結局余り大手の企業のパート労働者には対象者がいないと。専ら中小企業が中心ということに実態としてはこれなっていくものになるんじゃないですか。その点はいかがでしょう。

政府参考人(大谷泰夫君)

 これは、衆議院の御審議の中で委員の側から、自分の知る、そういった大手の企業だったかと思いますが、そういうところにはそういう者がいないという指摘、そして、だからして世の中にはこういう差別禁止の対象なんかいないという御議論があったときに申し上げた一つの例示でありますけれども、これは本法案を取りまとめるに当たりまして審議会の中でも大いに議論をしたわけでありますが、その際、中小企業の関係者からは、この差別的取扱い禁止規定を盛り込むことについて相当これは否定的な反応が繰り返し示されたところであります。

 また、衆議院の参考人のときにもコメントがありましたけれども、中小企業の団体に対しましてはこのパート法についてやはり自分の企業について不安があるということで相当の問い合わせ等があるということについて議論があったということで申しますと、対応している企業もあれば、特に中小企業、これは理由としましては、先ほどの三要件というのがございましたけれども、職務の内容は同じであって特に転勤とか配置転換が中小の企業であれば余りない可能性が高いということになりますと、実はその三要件のうちの一要件はもう最初から中小企業の中では同じになる可能性が強いということになりますと、むしろ大企業よりも中小企業の中に、雇用管理が徹底していないこともありますが、そういう転勤や配転という要件については初めからパートの方と正社員が同じということで、そういう意味でその対象者がいるのではないかという議論もありまして、そういった意味で中小企業については事によると存在するのではないかという議論があったということを紹介したわけであります。

小池晃君

 いずれにしても、今のお話聞くと、これは結局、大企業の場合はこういう同視すべき労働者というのはそもそもいない、あるいは三要件という点では中小企業の方がむしろ適用されやすいということでいうと、余り大企業には影響を与えないような基準にむしろしたのかなというような疑問すら私、持つんですね。

 大臣、大企業では余りその対象者がいないような仕組み、それでパート労働者の処遇の改善を図るといっても、それで本当に実効性が図れるというものになっていくのか。その点については大臣はどんなふうに考えていらっしゃるんですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 改正法案は、パート労働者の待遇を公正なものにしていくため必要な措置を事業主に求めるものであります。

 実態を見ますと、雇用管理の進んでいる大企業には問題事例が相対的に少なく、雇用管理が遅れている中小企業に問題が仮に多いとすれば、その結果としてそれぞれの大企業や中小企業で負担が異なる結果になるということでありまして、何かねらい撃ち的な意図に基づく立法であるという御指摘は当たらないと、このように考えます。

小池晃君

 結局、だから今の話でいけば、やっぱり大企業だって一杯問題事例あるわけですよ。それを三要件、同視すべき労働者なんという仕組みを持ち込んだがために非常にいびつな格好になって、本来救われるべき労働者が救われないということに私はなっているんじゃないだろうかというのを今のお話聞いても大変感じるわけです。入口から多くのパート労働者が対象とならない、しかも、その上、それに三要件という厳しい条件をかぶせれば、差別禁止の対象者というのは私は限りなくゼロに近づいていく危惧すら覚えるわけですよね。

 しかも、現場のお話を聞くと、これは均等待遇以前のノンルールの働き方みたいなのがはびこっております。

 具体例を紹介したいんですが、東証一部上場の外食産業大手のゼンショーが経営している牛丼チェーンのすき家というのがあります。ここで、昨年、東京のアルバイト従業員六人が解雇されました。六人は二か月ごとの雇用契約を自動更新されて、二年から五年働いて、労働時間は通常の正社員並みです。だから、そもそもこういう労働者は今回の法案の対象にすらなりません。店舗に正社員はいない。店はアルバイトだけでやっている。突然の解雇通告に、労働組合である首都圏青年ユニオンに加入をして、交渉の結果、九月末に全員の解雇撤回と職場復帰実現した、こういうケースです。

 厚労省にお聞きしますが、こうしたパート・アルバイト労働者の解雇や雇い止め、こういう相談は年間どのくらい寄せられているんでしょうか。

政府参考人(宮島俊彦君)

 御質問のパート労働者に限って解雇、雇い止めが相談件数がどうかということについては把握しておりませんが、先ほども申しました平成十七年度の一年間に都道府県労働局の総合労働相談コーナーに寄せられた民事上の個別労働紛争相談のうち、解雇に関するものは五万二千三百八十五件、雇い止めに関するものは五千八百七十七件となっておるところでございます。

小池晃君

 相談件数全体十七万件で、そのうちパート三万件、派遣・契約社員が二万件ということをお聞きしているんですが、そういう数字はありますよね。

政府参考人(宮島俊彦君)

 総相談人員ということになるんですが、十七万六千四百二十九件でございまして、正社員の相談が五一%で八万九千八百九十一件、パート・アルバイトが一八・二%で三万二千百七十九件ということになっております。

小池晃君

 パート、非正規で全体の四割超しているわけですね、高い比率なんです。しかも、雇い止めの相談というのは、これは相談すること自体大変難しいケースが多いと思うんですが、しかし六千件近くもある。しかも、これもほんの氷山の一角で、ほとんどは権利すら知らされずに泣き寝入りしているという実態だと思うんです。

 解雇に加えて、このすき家では、法律上規定されている残業代の二五%以上の割増しをこれは一切払ってなかったことが分かりました。過去二年間の未払賃金を解雇中の休業手当とともに支払って、昨年十二月分からはすべてのアルバイト従業員の残業代を法律どおり割増しで支払うようになったというふうに聞いています。

 問題は、このすき家は、過去の未払分については全員に支払っていないんですね。割増し分を乗せない残業代しか支払ってなかった。だから明白なんです。だから、法律上は、過去二年間分は全労働者にさかのぼって支払う義務があるはずなんです。首都圏青年ユニオンは、全員分のサービス残業代の支払を求めております。

 基準局長にお伺いしますが、厚労省としてはこういう場合はどういう指導をするのか。この場合はサービス残業明らかなわけですから、これは全労働者規模にわたって是正指導すべきじゃないですか。

政府参考人(青木豊君)

 個別の案件についてはちょっと差し控えさせていただきたいと思いますが、今委員がお尋ねになりましたこういう場合の、ケースについてでありますけれども、労働基準監督機関が行う法違反に対する是正勧告というのは、もう最終的に司法処分に付するということもあり得ることを背景とするものでございます。したがって、遡及是正につきましても、賃金不払事件として立件するに足りる客観的な確証が得られたものに限って指導を行っております。

 このような考え方に基づいて、監督時におきまして、労働時間についての記録、あるいは賃金台帳など様々な書類を点検、確認しまして、また更に関係者から必要な事情を聴取するなどにより、事実関係を明らかにしました上で必要な指導を行っているものでございます。

小池晃君

 さらに問題なのは、昨年九月以来、すき家はサービス残業の是正と未払分の支払を求める労働組合首都圏青年ユニオンとの団交を拒否し続けて、既に八か月を過ぎています。それまでは団交してきたんです。ところが、サービス残業問題が出てきたら突然団交拒否なんです。

 政策統括官、来ていただいているんですが、一般に正当な理由なく団交を拒否することは許されないはずでありまして、こうした事業主に対して厚労省としてはどう対応しているのか、こういうケース、問題なしと言えるのか、お答えいただきたい。

政府参考人(金子順一君)

 これも個別の事案のことでございまして、しかも今、労働委員会におきまして係属中ということでございますので、本件についての具体的な答弁というのは差し控えさせていただきたいわけでございますが、その上であくまで一般論として申し上げますと、今委員から御指摘がありましたように、使用者が正当な理由なく団体交渉を拒否するということになりますと、労働組合法第七条におきまして規定をしております不当労働行為に該当するということでございまして、法におきまして禁じている内容になると、こういうことでございます。これは当然のことではございますが、組合員の方がパート労働者の方であっても変わりないと、こういうことでございます。

小池晃君

 このサービス残業の監督指導における結果では、どういう産業に多いのか。例えば、今取り上げた外食産業などはどうなのか。また、パート労働者、短時間労働者のサービス残業というのはどの程度あるというふうに把握されているのか、お答えいただきたいと思います。

政府参考人(青木豊君)

 外食産業におけるパート労働者の賃金不払残業の状況についての統計的なデータは保有しておりません。しかし、平成十七年における監督指導結果を見ると、飲食店に対しましては二千六百十三件、監督指導を実施いたしました。そのうち何らかの労働基準関係法令違反が認められたものは七四・六%、千九百五十件というふうになっております。

 いずれにしても、私どもは監督指導を適切に実施していきたいというふうに思っております。

小池晃君

 今パート労働者のサービス残業の実態はお答えなかったんで、そういう統計はないのかなと思うんですが、UIゼンセンの調査では、独身パート労働者の三人に一人がサービス残業を強いられているという回答もあります。

 やはり労働基準法違反のサービス残業については、企業名の公表や、あるいはその未払分倍額払いにするなどといった二度と起こせないような法改正、仕組みが必要だと私は思いますが、もちろん過去分も厳格に指導すべきだと思うんですけれども、特にやっぱりパート労働者などが多い、アルバイトが多い業界に対して特別に調査するとか、根絶のための具体的対策というのは必要なんじゃないですか。その点はいかがですか。

政府参考人(青木豊君)

 これ、賃金不払残業というのはもう労働基準法に違反をする、あってはならないものであります。私どもとしても、平成十五年五月に賃金不払残業総合対策要綱を策定いたしまして、こういったものに基づきまして、毎年賃金不払残業解消キャンペーン月間を設定いたしまして、企業全体として労使の主体的な取組を促すということをやっておりますし、また重点的な監督指導を実施するということもいたして、そういった賃金不払残業の解消に向けた対策を推進しているところでございます。

 パートタイム労働者につきましても、昨年の賃金不払残業解消キャンペーン月間中に実施した無料相談ダイヤルにおきまして相談が寄せられております。総数でいきますと、パート・アルバイトについては六・五%ということでありますが、こういうこともございますので、今後ともパートタイム労働者を含めてこれらの対策を積極的に進めて賃金不払残業の解消に取り組んでいきたいというふうに思っております。

小池晃君

 具体例の紹介をいたしましたけれども、法案の中身の問題でもう一回戻りますと、やっぱり均等待遇ということを言うのであれば、これ、有期雇用の労働者を対象としなければ、やはり多くの非正規雇用というのは救われないだろうというふうに思うんです。いわゆるフルタイムパートの問題についても、短時間正社員という枠ではくくれなくても、有期雇用という枠ではこれは法の対象とすることもできるわけですね。ところが、本法案はむしろ有期雇用の労働者は同視の対象から外すなどと、私逆行だと思うんです。

 大臣にお伺いしたいんですが、安倍政権の再チャレンジ支援の目玉だとまで言うのであれば、やっぱりこの際、有期雇用の労働者もしっかりこの枠組みの中に含めていくということをなぜやらなかったのか。これ、やっぱり当然やるべきだというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 この有期契約労働者と無期契約労働者との間の均衡を含めた労働条件に関する均衡の問題というものにつきましては、私どもとして労政審の審議をお願いしたところでございます。この審議におきましても、労働者代表委員は就業形態の多様化に対応して均等待遇原則を労働契約法制に位置付けるべきだという意見でございました。これに対して、使用者代表委員は、具体的にどのような労働者についていかなる考慮が求められるのかが不明であり、労働契約法制に位置付けるべきではないと、こういう意見がそれぞれにありまして、この間にコンセンサスができ上がるに至らなかったということでございます。

 しかしながら、ここに問題があるということは労政審の委員の間にもしっかり認識がございまして、労働者の多様な実態に留意しつつ必要な調査等を行うことを含め、引き続き検討することが適当であると、こういうことを答申にうたっていただいたのでございます。

 今回は法制化を見送ることになりましたが、今後、この答申を踏まえ、検討を深め、法制化に向けて努力をしていきたいと、このように考えます。

小池晃君

 今後今後と言うのではなくて、やっぱり今回の法案でそれ入れるべきだというふうに思いますし、私どもはそこが本法案で修正すべき点だということを申し上げたいと思います。

 それから最後、ネットカフェ難民、日雇派遣の問題について。

 三月十五日の当委員会で、私、質問いたしまして、大臣は望ましい労働の形態とは言えないというふうにそのとき答弁されて、あの質問は結構報道もされまして、非常に話題になってきています。

 大臣、その後の大臣の認識の発展、これを踏まえて、改めてこのネットカフェ難民、日雇派遣の実態についてどうお考えか、お答えください。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 これはそういうことがあるとすれば、それはもう全く望ましくないと私は考えておりまして、まず実態を把握する必要があるという観点からこのことについて検討を進めているわけでございます。

 そうした方は、その外見からは一般の終夜営業の喫茶店利用者と区別が付かないことからなかなか、どうした実施方法でもってこの実態に接近していくかということにつきましては、困難があるようでございます。

 こうした中で、派遣元事業主やNPO団体等の協力も求めまして、今後、その実態の把握に努めていく予定でありますけれども、具体的な調査の実施方法につきましては、現在関係の方々と協議をさせていただいているところでございまして、今後とも鋭意検討をして実態把握に努めたいと、このように考えています。

小池晃君

 既にこの問題では独自の調査もやられておりまして、昨日厚労省にはお渡ししましたけれども、今度の日曜日に東京の明治公園で全国青年大集会というのが開かれる予定で、その実行委員会である首都圏青年ユニオンや日本民主青年同盟などがネットカフェ暮らしの実態調査というのをやっています。これは全国三十四の店舗を利用している若者から聞き取り調査やっています。この中にはリアルな実態幾つも紹介されていまして、仕事を辞めて二年近くネットカフェに住んでいる、あるいは夜はいつも満室でスーツ姿の人が半分だといった実態も出ているんですね。

 私、二つ提案をさせていただきたいのは、一つはやっぱり、ネットカフェ難民問題について調査はいろいろと大変だ大変だとおっしゃるんですけど、まずはどういう問題なのかということをとにかく生で把握をしていくと。だから、私、大臣行かれたっていいと思うんですよ。私も実際行ってきて、ああ、こういうものなんだって自分で体験したんですよ。やっぱり真っ先にちょっと行って、どういう実態なのか、この首都圏青年ユニオンなどの調査も参考にしていただいて、これは状況がどうなっているのか把握するということを厚労省としてまずやっていただきたいと。全体像じゃなくてもいい、どういう問題点があるのか、どういう実態調査をやればいいのかのヒントでもつかむような、そういうことが今必要なんではないかと。

 それからもう一つは、厚労省として、このネットカフェなどで暮らさざるを得ないような人たちに対するその悩みにこたえる。あるいは、親御さんたちも大変心配しているわけですね。だから、フリーダイヤルの電話窓口つくるとか、あるいはそれこそインターネットを利用して相談窓口を緊急につくる。そういう窓口を通じて寄せられた声からまた実態が分かるという効果も私はあると思うんですね。これは緊急にでもできることではないかと思うんですが、是非検討していただけませんか。いかがですか。

政府参考人(高橋満君)

 インターネットカフェ難民、ネットカフェ難民の実態ということにつきまして、今大臣からもお話、答弁ございましたとおり、実態把握に向けて今様々検討いたしておるわけでございますが、そういう検討しているプロセスの中でも、私ども、相談活動を行っておられるNPOなどの関係者からもヒアリング等行っておるところでございまして、いずれにしましても、実態の把握については様々な形で把握をしていきたいと思っております。

 また、私ども、ハローワークに是非職業相談においでいただくということ、このハローワークの利用をいろんな形で呼び掛けをさしていただきながら、ハローワークの持つ就職支援機能というものに、是非その利用を考えていただくべく我々も努力をしていきたいと思っておりますし、ハローワークにおきましても、こういう方々は住居を失っておる方もおられるという意味では、より安定した雇用に結び付けていく上で、住み込みでありますとか寮付きの会社の求人というものも有効になるわけでございまして、そうした求人も鋭意確保しながら必要な情報提供をしていく。また、安定した雇用に向けた就職のための様々な支援措置というものもあるわけでございますので、そうしたものも効果的に講じながら、就職支援に向けた努力というものを私どももしっかり対応していきたいと考えておるところでございます。

小池晃君

 ハローワーク行けと言うけど、行けるんだったらもう既に行っていると思うんですよね。それは行けない実態があるからこういう人たちが生まれているわけで、今までの施策の延長線上では救えないと思うんですよ。だから、私が言ったような緊急の取組でも、まず手掛かりでも、何か厚労省としてこれやっているんだということが、何かちょっと少しは答弁あるのかなと思ったらないんですけれども、是非ちょっと検討していただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

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