本文へジャンプ
日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

166通常国会 参議院厚生労働委員会 パート労働法「改正」案に関する質疑

  • ダブルワークでも賃金11万円/生活できる施策を/パート法で小池議員/子ども2人育てるシングルマザー/1日の食費 3人で1200円(関連記事
2007年5月22日(火)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 最初に、昨日規制改革会議が提案した労働法制の提案文書について、先ほどのちょっと議論もありましたので、お聞きをしたいと思うんです。

 先ほど室長は、この提案というのは一般論であって、特定の法案について言及したものではないというような趣旨で発言をされました。しかし、これを見ますと、最後のところにパートタイム労働法と明記してありまして、これについては、今国会へ提出されたところであるが、同法所定の通常の労働者と同視すべき短時間労働者であっても、通常の労働者との間には、賃金の決定方法等について、やはり大きな差異があるのが現状である。よって同法所定の対象をいたずらに拡大することには慎重であるべきであると。正にパート法そのものについて言及しているじゃないですか。先ほどの答弁との関係、いかがですか。

政府参考人(田中孝文君)

 誤解が生じたとしたらおわび申し上げますけれども。

 先ほどは、新聞で報道されている最低賃金の引上げに反対しているということに対して具体的に最賃法のことについて言及したものではないという、ここのところに関しては、先ほど御説明したように、不用意に最賃を引き上げるということに関しては、その賃金に見合う生産性を発揮できない労働者の失業をもたらし、そのような人々の生活をかえって困窮化することにつながるという一般論を書いてあるというふうに御答弁したつもりでしたが、誤解を生じたようでしたらおわび申し上げます。

小池晃君

 しかし、今正にこれは、この法案は国会で審議されているわけですよ。しかも、その中で、野党としてはこれは問題点を指摘をしていますし、政府の方からは、厚生労働省の方からはできるだけこの均等の対象を拡大すべくやっていくんだという答弁されているわけですね。それは、我々としては是認していません、非常に不十分だと思うけれども、政府答弁としては拡大すると言っているときに、規制改革会議は全く百八十度異なる見解を出す。こういうことがまかり通っていいんですか。そんなことを承知でこれを提案されたんですか。

政府参考人(田中孝文君)

 本文書の性格について先ほど少し答弁いたしましたが、この文書につきましては、二月二十三日の第二回規制改革会議において設置が認められました労働タスクフォースという下部組織において、今後三年間に行うべき規制改革の課題を検討するという観点から、現段階の意見を取りまとめたということでございます。

 したがいまして、現段階では規制改革会議そのものの意見ではございませんが、いずれにしても、その報告書の最後のところに、労働分野においては、以上のような観点から、新しい時代にふさわしい労働システムの在り方について、今後三年間検討を進めていくことにするということを、その性格を明らかにしているところでございます。

小池晃君

 大臣、正に今審議されているパート法案について厚生労働省の国会答弁とも百八十度異なるような見解が出されているわけですよ。しかも、それだけではない。同一労働同一賃金にも反対。最低賃金を引き上げることにも反対。しかも、中身を見ますと、例えばこんなことも書いてあるんです。行政庁、労働法・労働経済研究者などには、このような意味でのごく初歩の公共政策に関する原理すら理解しない議論を開陳する向きも多い。当会議としては、理論的根拠のあいまいな議論で労働政策が決せられることに対しては、重大な危惧を表明せざるを得ないと考えていると。ここまである意味なめられたような文書を出しているわけですよ。

 大臣、やっぱりこれは、私、むしろ私なんかは、これはもう財界の利益のみを根拠にしたあいまいな議論で、労働政策にこういう規制改革会議が介入してくることには重大な懸念を私は持つわけですが、これだけの中身を出されておいて黙っているわけにはいかないんじゃないんですか。私は、今正にパート法の審議もやっているんですから、その中で、全く政府見解と違うことが規制改革会議から出てくる中で、これは法案審議なんかできませんよ。これを撤回しなければ、私はこの法案審議はできないと思いますが、撤回を求めるべきじゃないですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 委員の御指摘は私といたしましても理解するところであります。先ほど来申し上げておりますように、この法案を出し、また担当の省のみならず、内閣におきましても、そういう最低賃金の問題について将来、中長期的にこれを引き上げる方向でその条件をいかにして整えるかということについて議論をいたしている、そういう状況の下で、政府のこの一部門の末端の組織といえども、こうしてその方向性において全く違うようなことを意見表明するということは、これはもう随分異例のことであると思うし、適切さを全く欠いていると私は考えております。

 小池委員の方からは、この撤回を求めるべきと、こういうふうにおっしゃいますけれども、これは規制改革会議の下のグループの、更にその下のまたタスクフォースということでございますので、ちょっと私どもとしてはそれほど大きく相手にすべきことでもあるまいと、このように考えております。

小池晃君

 しかし、報道ではこれが規制改革会議の提言であるかのような報道がされているわけですから、これは一般的にはそう受け止められている。

 しかも、中身見ますと、例えば最高裁判例についても、最高裁の判例が社会経済的に合理的な結果をもたらしているかどうかを政策判断の観点から厳格に検証することもある、こうまで言っているんですね。最高裁判例までこれけ散らすようなとんでもない議論が、これは末端、末端とおっしゃるけど、政府の中枢でしょう、正に今、そこから出されてきている。私は余りに異常だと思います。

 こういうことに対しては、きっちり厚生労働省としてもやっぱり物を言っていくべきだし、私は、これ、法案審議やっているさなかですから、しっかり大臣としても、採決、今提示されていますが、まだ採決されるわけじゃないんで、これしっかり、こういうことはもう言うなということを言っていただかないと、私はこれは国会審議にも重大な影響を与えるというふうに申し上げたいと思います。

 それから、中身に入っていきたいんですが、これは「雇用融解」という最近出された本で、パート労働者の実態が出ているんで、ちょっとそこから今日、話をしたいんです。

 この本で紹介されている百円ショップの大手のザ・ダイソー、大創産業のパート労働者に対する解雇ルールの問題を取り上げられているんですが、ここでは一万人のパート労働者が働いて、正社員の店長が一人で複数店を統括していると。二千四百店舗というから一店舗当たりパート四、五人で運営しているわけです。このパート労働者の雇用契約書には、棚卸しの際に在庫の紛失率は一%を下回ることと、上回ったら雇用契約を解除できるという規則があるそうなんですね。実際に関東のある店舗の女性パートは、〇五年夏の棚卸しでロス率が一%を上回ったら、退職強要されて、抗弁したものの、その場で退職願を書かされて、表向き自己都合退職ですけれども、事実上解雇されたというんです。正社員の店長は常時いない状態なんですね。ところが、そのロス率一%を超えた損失責任を、その店舗で働くパート労働者に事実上の解雇という形で取らせているわけです。

 厚生労働省にお聞きしたいんですが、ロス率一%以上は解雇、雇い止め、こういうふうに業務上の成績を雇用契約の要件とするというのは、これ社会通念上からも認められないのではないですか。

政府参考人(青木豊君)

 ちょっと具体的な事例について今この場で御質問がありましたけれども、労働契約においていかなる労働条件を定めるかは、これは、法令あるいは強行法規、あるいは公序良俗、そういったものに反しない限り当事者の合意にゆだねられているというふうに考えております。その中で、解雇事由として、成績が振るわない、能力が不足しているというようなものを解雇事由として定めている例というのはそう少なくないと思います。

 これについては、成績不振を解雇事由とすること自体は、それをもって直ちに公序良俗違反で無効だということにはならないというふうに思いますが、しかし、一つは、今お示しになった例がちょっと、度数率一%というのがどの程度のところかちょっとにわかには判じかねますが、通常のロスが生ずるようなものであれば、そういったものが合理性があると言うのはなかなか難しいのではないかとも思いますが、それは具体的な事情を見てみないとなかなか分からないと思います。

 また、さらに、解雇事由が具体的に定められて、それが有効であるということでありましても、今度、その解雇事由に基づく解雇というのがすべて有効とされるというわけではないというふうに思っております。解雇については、今ほど申し上げましたように、個別具体的な事情、そういうものに照らしまして、現在、現行法の労働基準法十八条の二の規定によりまして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効とされておりますので、これに従って個々具体的な事情を勘案して判断されるということだというふうに思っております。

小池晃君

 百円ショップっていうのは、在庫管理は極めてラフなんですね。要するに、レジなんかも百円のものを何点買ったというような形でしかやっていませんから、いわゆるPOSシステムみたいなのはほとんど導入されていない。そういう中で一%のロス率というのは、かなりこれはもう当然ぐらいのことなんだというのが関係者の話なんですよね。万引きの問題なんかもあります。そういう中でそれが全部労働者の責になっているというのは、これは非常に重大だと私は思うんですが。

 法案に関連してお聞きしますが、この例えばダイソーというのは、正社員というのは幾つかの店舗を掛け持ちしている店長だけなんです。それ以外は全部パートなんですね。こういう職場のパート労働者というのは、今回の法案でいけば八条の要件にも九条の要件にも該当する労働者はいないということになってくるわけですね。

政府参考人(大谷泰夫君)

 今御指摘がありましたような事例につきましては、正社員である店長と従業員の職務がもう異なるという場合が多いと想定されますので、そのような場合は正社員と同視すべきパート労働者、あるいは職務と人材活用が同じパート労働者というものはこれは存在しないというふうになると思います。

小池晃君

 こういうダイソーのように同視する正社員がいないパート労働者というのは救われないわけで、一方で非常に無法な解雇、雇い止めなんていうのが行われているというのがこれが現実なんですよ。トラブルがあれば労働行政へというけれども、結局、現状では裁判で何年も掛かってということになるし、圧倒的なパート労働者は裁判などやっていられない。結局、泣き寝入りしている人が僕は本当にたくさんいらっしゃるんだと思うんです。これが現実だと思います。

 さらに、賃金の問題、九条にかかわって質問したいんですが、大臣の答弁では、この九条の賃金については正社員と同じ賃金表を適用するよう努力義務を課すというふうにしているんですが、同じ賃金表を適用するというのはどういう内容を指しているんでしょうか。

政府参考人(大谷泰夫君)

 賃金の決定の関係でございますけれども、この改正法案の第九条第二項におきましては、職務内容と中期的な人材活用が通常の労働者と同じパート労働者について、正社員と同一の方法により賃金を決定するよう努めることを求めているわけであります。

 他方、現実には、正社員は年功賃金である一方、パート労働者は地域相場によって設定した採用時の賃金のままであるなど、賃金の決定方法が全く異なっていると、こういった場合も少なくないと。したがいまして、第九条第二項の措置で考えておりますのは、例えば正社員の職能給体系に合わせてパート労働者も職能給による支払とするとか、また正社員が歩合制であった場合には正社員の歩合制に合わせてパート労働者にも歩合制を導入する、こういった措置から始め、賃金表の体系を正社員に適用されているものに近づけていく、これが一つであります。また、正社員と同じ賃金表を適用することにより、時間の短いパート労働者であっても正社員の時間比例賃金としていく、こういったことを考えているところでございます。

小池晃君

 同一労働同一賃金じゃなくて、同一方法あるいは同じ賃金表ということで、何の目安も設けないで比例で適用するということになると、結局、事業主の判断によって正社員とパートの格差というのは付けることが可能になってくるわけです。

 丸子警報器の判例では、パートと正社員の労働内容は同一なのに賃金格差を設けているのは均等待遇の理念に違反するもので公序良俗違反だと、正社員と比較して八割以下は裁量の範囲を超える、こう断罪したわけですが、九条の規定からすれば、少なくともこの丸子警報器判決の八割を最低基準とするなどもう最低限の歯止めとなるものがなければ、幾ら同じ方法、同じ賃金表といっても格差はどんどん広がるだけなんで、やっぱりそういう最低限の歯止めは必要なんじゃないですか。

政府参考人(大谷泰夫君)

 この賃金の決定につきまして、今回、九条二項の考え方は、その職務内容とそれから中期的な人材活用、これを併せてみて考えていくようになるわけでありますが、この最低賃金制度につきましては、制度がセーフティーネットとして十分機能するように最低賃金法の改正案を今国会に提出しているところでありますが、そもそもこの最低賃金法はパート労働者に対しても当然適用になるものでありますので、既にパート労働者について適用されるこの最低賃金法が形成されているところであります。

 今回の、今のお尋ねの関係について特に申し上げますと、パート労働者の就業の実態が極めて多様であるという我が国の現状におきましては、パート労働者の賃金の決定について、最低賃金を上回る一定の水準を定めて強制するといった手法によりましては、かえってその働きや貢献に見合った公正な待遇とはならなくなるおそれが大きく、そうした方法によることは考えていないわけでありますが。

 例えば、パート労働者は正社員の何割の賃金とすべきか。つまり、どの程度の働き方の違いに応じてどの程度の待遇差が認められるかにつきましては、平成五年にパート労働法を制定して以降、有識者による検討を行ってきたわけでありますけれども、我が国における雇用管理の実態に見合った、いわゆる現実味のある水準についてなかなか合意が得られているという段階ではないということでございます。

小池晃君

 いろいろとおっしゃったけれども、結局、合意がないんでできなかったというだけの話ですよね。最低賃金の問題で言っているんじゃないんですよ。正社員との賃金格差の問題でやっぱり一定の歯止めが必要じゃないかと言っているんですよ。

 私、やっぱり、八条の対象が極めて限定されるだけじゃなくて、九条の要件についても非常に限定的であり、実効性に乏しいということを改めて今お話を聞いても感じるわけです。

 特に、この勘案すべき点に意欲というのがあるわけですね。これは事業主側の恣意的判断にゆだねられる、単なる評価基準じゃないわけです。九条が適用になるかどうかという要件に意欲というのが入ってくれば、残業、休日出勤あるいは配転に応じるのかどうか、ここまで判断要素となりかねない。一層過酷な労働条件を強いることになることは明白ではないかと思うんです。

 この意欲ということについては、これは削除すべきじゃないですか。

政府参考人(大谷泰夫君)

 改正法の第九条におきまして、パート労働者の職務の内容、それから成果、意欲、経験、能力等を勘案して賃金を決定するよう努めるべきこととしているわけであります。

 このうちの今御指摘のありました意欲につきましては、これは事業主の主観に基づくものではなくて、総合的かつ客観的な判断がなされるべきものでありまして、評価の要素、基準等については客観的な説明ができるということが求められております。例えば、あるスーパーで短時間労働者が遅刻、欠勤がなく勤続した場合に、当該労働者の意欲を勘案して精皆勤手当を支給すると、こういったことが想定されるわけであります。

小池晃君

 今のような基準では非常に恣意的な判断になってくる危険性、極めて高いし、私はこういうものは持ち込むべきでないということを改めて申し上げたいというふうに思います。

 それから、本案というのはパート労働者の処遇改善のためだというけれども、実態としてどうかというと、パート労働者と通常労働者との格差はむしろこの間拡大をしています。

 〇六年の賃金構造基本統計では、パート労働者の平均賃金額は中小企業よりも大企業の方が低くなっています。景気回復は大企業中心なのに、実際にはその利益は労働者に回っていない。更にパート労働者は差が開いているという実態があります。

 そこで、お聞きしたいんですが、パート労働者の賃金水準がどのように決まってきているのか、その中に占める最低賃金の要素、これは大きくなってきているんじゃないか、その点についてお聞かせください。

政府参考人(大谷泰夫君)

 パート労働者の賃金の決定要因についての実態でありますけれども、平成十六年のパートタイマー・契約社員に関する総合実態調査によりますと、パート労働者の採用時の賃金決定要素として、同じ地域、職種のパートの賃金相場とする事業所が六四・四%でありまして、これが最も高いものであります。次いで、パート、契約社員の在籍者の賃金が、これが四三・九%、仕事の難易度によるというものが二八・〇%、また地域産業別最低賃金というものは二一・二%となっております。

小池晃君

 この調査、三年前にも行われていますが、最賃を要素とするという数字が一四%から、今お話あったように二一%に上がってきています。六四%という同じ地域の同業同一職種の賃金相場というのも、結局その地域の最賃という場合が多いと思うんです。

 私、いろいろと実態お聞きしましたけれども、例えば大阪の労働者、大阪労連の方に聞いたんですけれども、パート労働者の方が団交でその均等処遇を求めると何と言われるか、そんな賃金のところはどこにあるねんと、周り見て自分のところだけ良くはできないじゃないかと、時間給は隣のスーパーと比べて遜色ないはずだと、その証拠にあんたたち安いと言うけど辞めないだろうと、こういう返事がこれは使用者側から返ってくると言うんですよね。これが実態だと。

 結局、大阪の例でいうと、最賃額の七百十二円を基礎にして、最低ラインに学生アルバイト、その少し上にパートが置かれてパート相場はできていると、そこに張り付いているという実態があるんだと。しかし、八割は有期雇用ですから、これは安い賃金でも我慢するしかないという実態があるんだと。こうした中でまともな生活ができる賃金確保するために、解決方法としては、やはり同一価値労働同一賃金ということをルールの原則にしっかり据えるとともに、全国一律最低賃金制を確立する。最低賃金、まともに暮らせる水準、私たちとしては時給千円以上ということ提起していますが、これが本当に必要なんだろうと思うんです。

 その点で、今この国会に提出されています最賃法案ですが、生活保護に係る施策との整合性に配慮すると、そういう規定でしかない、確実に最賃が引き上がる根拠は示されておりません。厚労省としては、これどの程度の金額が上がると考えているのか。もう生活保護との関係ということでいっていくと、全国のアンバランスという点ではかえって大きくなる危険性あるんじゃないかと思うんですが、その点はいかがですか。

政府参考人(青木豊君)

 最低賃金制度は、今るるお話にありましたように、賃金の低廉な労働者の労働条件の下支えとして十分機能しているというふうに思っておりますし、今後とも、安全網として一層適切に機能することが求められているというところであります。

 このため、今お話ありましたように、今回の改正法案では地域別最賃については生活保護との整合性も考慮するということを明確にしまして、その最賃額までの賃金の不払についての罰金額の上限を五十万円に引き上げるということで、より一層この最低賃金制度が適切に機能するようにしたいというふうに考えております。

 お話ありました最低賃金の具体的な水準につきましては、これは公労使三者構成の地方最低賃金審議会における地域の実情を踏まえた審議を経て決定されるものであります。今回の法案が成立した暁には、各都道府県の地方最低賃金審議会においてこの法改正の趣旨に沿った議論が行われて、その結果に沿って現下の雇用情勢等を踏まえた適切な引上げ等の措置を講ずることとしております。

 また、成長力底上げ戦略推進円卓会議におきまして、生産性の向上を考慮した最低賃金の中長期的な引上げ方針について政労使の合意形成を図って、その合意を踏まえて生産性の向上に見合った引上げを実現したいというふうに考えております。

 今お話にありました全国一律、まあ千円というお話もありましたが、そういうことにつきましては、急に最低賃金額を大幅に引き上げることにつきましては、これは中小企業を中心として労働コスト増により事業経営が圧迫される結果、かえって雇用が失われる面があり非現実的だというふうに思っております。

 最低賃金を全国一律の制度とすることについては、これは最低賃金は労働者の最低限度の水準の賃金を保障するものであります。地域によって物価水準等に差がありまして、生計費も異なるということから、その水準につきましても地域によって差があるものでありまして、全国一律に最低賃金を定めることは適当ではないと、やはり各地域の実情に応じて決定されるべきであるというふうに考えております。

小池晃君

 中小企業の問題について言えば、中小企業支援としっかりセットでやっていけばいいわけでありまして、やはり世界の流れ見てもやっぱり全国一律ということになっていると思いますので、そういう方向でやるべきだということは申し上げておきたいと思います。

 それから、ダブルワークの問題についてお聞きしたいんですが、これはやっぱり最低賃金低過ぎるということで、幾ら一つの仕事でまじめに働いても生活できないと、そういうことでダブルワークの方が増えている。三月にも質問いたしましたが、その際の答弁では、〇四年の就業構造基本調査で約八十一万人ということでした。

 大臣にお聞きしますが、このダブルワーク、マルチジョブホルダー、こういった働き方がなぜ広がっているというふうに認識をされているか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 マルチジョブホルダーあるいはダブルワークのそうした労働形態がどうして発生しているのか、あるいは広がっているのかと、こういうことですけれども、御指摘のように、一つの就業で得られる収入だけでは生活できないということのために複数の就業を掛け持ちしなければならないという例があるとすれば、それは決して望ましい働き方とは言えないと、このように考えております。

 したがいまして、私どもは、非正規労働者の待遇の改善ということに向けまして、本改正法案さらには最低賃金法の改正法案等を国会に提出いたしておるところでございまして、これらによりまして本当に働き方に見合った公正な待遇が実現されると、こういうことに向けて取り組んでいるところでございます。

小池晃君

 ダブルワークの労働者の実態、今日、資料をお配りしております。これは大阪労連が低賃金で働く労働者に家計簿とか食事内容などを報告してもらう生活証言運動・家計調査をやっているので、その一例です。

 これは公立学校の臨時事務職員の四十三歳の女性なんです。これは専門学校生と小学生の二人のお子さんがいらっしゃるシングルマザーなんですね。この方は一日六時間、週六日間学校事務の仕事をされていて、その収入が基準内賃金のところに書かれていますが、月六万五千八百九十八円。これでは生活成り立ちませんから、ダブルワークで、その他賃金ってところに四万八千七百五十円とあります。これは衣料品の検品のパートをやられている、その収入なんですね。これは二つ合わせて一日十時間近く働いてようやく月収が十一万円余り。ですから、児童手当と児童扶養手当などを含めてやっと十六万六千何がしで、これで食いつないでいるということなんです。このときは違うんですが、トリプルワークするときもあって、そのときは朝五時半から宅配便のパートをすることもあるんだというんですね。

 二枚目に食事、一月間どんなものを食べたかという記録があるんですが、一日の食費は三人で千二百円というふうに決めているそうです。食事見ますと、朝はトーストとコーヒーだけ。日曜はもう朝御飯食べない。それでも生活厳しいということで、夕食は実家で食事をするというのは四回出てくるんです。お子さんこれから大きくなってきて、学費が一層増えてくるので本当に大変だというお話を聞いています。

 私、こういう働き方、本当に今特別じゃなくなっているようなんですね。全労連のアンケートでは、ダブルワークしている人の六二・八%が収入のためだというふうに回答している。一つの仕事、毎日六時間、週六日やって、それで暮らせないんですよ。だから、それ以外にまたパートやらなきゃいけない、こういう働き方が今本当蔓延しているわけです。

 私、こうした暮らしをしなくてよいようにするのが政治の責任だと思うんですが、大臣、率直に、こういうダブルワークで本当にお母さんが一生懸命子育てしているという姿見て、どういう感想お持ちになりますか。政治として、今何が必要だと大臣思われますか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 私どもは、先ほども申し上げましたように、こうした時間給ということにつきまして、これを引き上げる方向性を出すと、実現するということのために今回のパート労働法の改正もお願いをしているわけでございますし、また最低賃金法の改正ということによりまして、今ちょっとこのにわかの計算ですから、最低賃金との関係がどうなっているかということでございますけれども、できるだけこれを引き上げまして、そしてダブルジョブが必要であったとしてももうちょっと本業によりまして賃金が確保できる、そういう方向での努力をしていきたいということで、今いろいろ御提案を申し上げているというところでございます。

小池晃君

 この方の場合、これ公務パートですからね、今回の法案の対象にすらならないわけですね。

 私、本当に根本的に見直す必要がある。やっぱり同一価値労働同一賃金という原則と、最低賃金、先ほど否定されたけれども、やはり本当に安心して暮らせる水準まで引き上げていくということがどうしても必要だというふうに思います。その点で、やっぱりこういう実態にこたえる法案になっていないんだということは重ねて指摘をしたいと思うんです。

 それから、福利厚生についてもお伺いしたいんですが、何度もこの間議論をされていて、私聞いていてもどうしても納得できないんですが、例えばこの政府案というのは、パート指針の内容より狭いわけですよね。省令に書くのは給食、休憩室、更衣室で医療施設すら入らないわけですよ。

 例えば、医療施設、健康を守ることにパートと正社員に違いはあるんでしょうか。私、これは全くないと思うんですね。あるいは、仕事にかかわる施設にそれを利用する権利、パートと正社員に何で違いがあるんですか。これ説明していただきたい。

政府参考人(大谷泰夫君)

 今回の福利厚生施設につきましては、これは従来から指針に定められておりました。指針の方では、給食、医療、教養、文化、体育、レクリエーション等の施設全般をうたっているわけでありますが、その中でも法律をもって更に高いレベルの規範として定めたものが今言った三つでありますけれども、これはそれが三つだけでいいということでなくて、それは法律上、より質の高いレベルで定まったということで、残る指針の内容につきましても、今後ともこれは維持していくという考え方でありますので、特に、そういった意味で差別したものではなくて、今回、その職務に直接付随したものとしての今三つの施設について特に法律で定めたということでございます。

小池晃君

 三つの施設も配慮義務にとどまっているわけですが、その指針にほかは残すんだとおっしゃるけれども、指針ではほとんど実効性がなかったということが参考人質疑でも言われているわけです。

 私は、この間議論されていますが、今回、法律上の努力義務とすることと、これまでの指針の努力規定というのはどう違うのかというのはこれ非常に分かりにくい、どう違うのか。厚労省は、その違いというのをこれは事業主にどういうふうに説明するつもりなんですか。事業主がいると思って、こうなんですと説明してくださいよ。

政府参考人(大谷泰夫君)

 このパート労働指針でありますけれども、これはその法律に根拠を置くとは申しましても、厚生労働大臣がその裁量の範囲内において定めたものであります。

 その法律に根拠を有する努力義務とは正当性や社会規範性の観点でこれは違いがあるということで、やはり国会で議決いただいたものに対する規範というものについて大きな価値を認め、またそれを私どもは事業主にも説明し、その尊重について訴えてまいりたいというふうに考えます。

小池晃君

 非常にこれは現場が混乱する危険があると思うんです。

 それから、慶弔手当や貸付制度などの福利厚生も均等処遇にすべきだという要求は切実だと思うんですね。うれしいこと、悲しいことがパートや正社員で違うはずがないんですよ。これは本来同一であるべきなんです。

 実際に、慶弔見舞金については、正社員では八八%に対して、パート労働者で既に七一%適用されているわけですから、既にある程度の水準まで来ているわけですね。これは労使合意で外したというけれども、元々これ配慮義務で義務規定じゃないわけですから、厚労省は決断すればいいだけの話じゃないですか。私は、同じ処遇が望ましいという考えを持つのであれば、せめて慶弔手当とか貸付制度なども配慮義務に入れる、どうしてこれができないんですか。

政府参考人(大谷泰夫君)

 慶弔見舞金についての実情は、今先生のおっしゃるとおり、かなりの企業で、正社員で八八、パート労働者の七一%ということで、既にそういう給付が行われているということは御指摘のとおりであります。

 このような施設以外の福利厚生につきましては、先ほどの全体で言いますと、正社員と同視できるものについては、これは差別的取扱禁止規定により正社員と同一の扱いを求めることになるわけでありますが、それ以外の場合における均衡処遇の中でどうするかということで、これは審議会でも相当慎重な検討が行われたわけでありまして、事業主の方からは、福利厚生というのは事業主が人材の確保や長期定着等の観点から広い裁量の下に実施しているものであって、その実施について法が介入すべきでないという意見が強かったわけであります。しかしながら、パート労働者を代表する意見としては、本来、労働者の働き、貢献に関係のない待遇であるから、労働者間で取扱いに差があることはある種の身分差別のようなものでもあり、あらゆる福利厚生を対象として均衡待遇の確保を図るべきだと、こういう議論がありまして、この二つの意見が対立したわけであります。

 今回の決着としましては、福利厚生の中でも職務に関連性がある施設ということで、今回、さっき申しましたような給食施設や休憩施設や更衣室、こういったものについては今回の措置の対象とすることは合理的だという判断に至ったわけでありますけれども、慶弔見舞金とか慶弔休暇などにつきましては、法が介入して実施させるというところまでの合理性には合意が得られなかったということで、今回は見送られたということでございます。

 しかしながら、これは、こういう法で介入してまで強制はできなかったということでありますけれども、そういった職場において正社員に提供するそういった処遇であれば、それは同じ職場でパートタイマー、パート労働者にも提供すべきだという意見もありまして、これは今後の課題としても検討していかなければならないテーマだというふうに考えております。

小池晃君

 差別をなくすために法に書くんですよ。それをやらないというのは、私は本当に大きな後退だと思うんです。

 それから、短時間正社員制度の問題なんですが、フルとパートの行き来ができる仕組みという点で非常に有効だと言われています。私たちは、均等待遇を前提として、子の養育とか家族の介護などを理由にして労働者の申し出た期間、短時間労働者として働くことができる制度を提案もし、修正案も準備しているんですが、今回の法案においてはなぜ短時間正社員制度導入を位置付けなかったのか。これは企業も一律には拒否してないはずなんですね。これ促進することで合意できたんじゃないんですか。

政府参考人(大谷泰夫君)

 短時間正社員についてでありますけれども、今回、法律改正には盛り込んでおらないわけでありまして、今どのような内容をこの法案に盛り込むかということについて定かではないわけでありますけれども、パート労働者の待遇が公正なものとなっていないということを今回の改正では問題意識として検討を行い、労働政策審議会で今回の改正案というのがまとまったわけでありまして、そういった意味で、言わば均衡に差があるから縮めるという見地からの目的とはちょっと違ったのか、審議会においても特段今回、短時間正社員について法律を盛り込むという議論はなかったわけであります。

 しかしながら、この短時間正社員につきましては、これは非常にこれからの雇用の中で重要かつ、特にパートタイム労働法、今回の法律の成果としましても差別禁止対象の方々がこういう短時間正社員に近い処遇、あるいはそういった処遇になっていくことも大いに期待されるということで、その普及啓発を努めてまいりたいというふうに考えます。

小池晃君

 均等室の体制問題についてもお聞きしたいと思うんですが、これは全国で二百三十六人だということなんですけれども、いろいろと事情をお聞きすると、各局で短時間労働者担当の人は一人、大きな県で二人程度というふうに聞いています。

 実態を聞きますと、神奈川県では、これは全国でもパート労働者比率が高いんですが、女性労働者百二十五万人の五五%、六十九万人、二人に一人超えているわけです。その神奈川県の均等室でも短時間労働者の担当は一人しかいないというんですね。一人当たり六十万人、七十万人のパート労働者に対応するというわけで、一人で全部をやるわけじゃないわけですが、これで足りるのか。もちろん全体で、局を挙げてやるんだ、協力してやるんだとおっしゃるけれども、やっぱり中心でパートのことだけしっかり考える、責任を持つという人が今のように各県一人、二人しかない、こういう体制で、大臣、これからやろうとしているパートの人たちの相談にこたえる、均等の方向に持っていく、こんな仕事ができるんでしょうか。ここは抜本的に強化しなきゃいけないんじゃないかと思うんですが、いかがですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 雇用均等室におけるこのようなこれからの課題に取り組む体制の問題ですけれども、私どもとしては、まずノウハウの蓄積ということにつきましては、男女雇用機会均等法に基づく指導、それから平成十五年のパート労働指針改正以降の均衡待遇の概念についての周知、こういったことで、それなりにと私ども経験を蓄積させていただいてきたと、このように考えております。

 問題はマンパワーということで、今そこの点、委員の御指摘にもあったわけですけれども、私どもとしては、都道府県労働局内の連携にまず万全を期すとともに、必要な体制整備につきましても、これからこの局内のやりくりというようなことを通じて努力をしてまいりたいと、このように考えております。

小池晃君

 さらに体制問題で、今回見直しされる短時間労働援助センターについてもお聞きします。

 これ委託を受けてきたのは二十一世紀職業財団なんですが、ここにもパート労働者がいると聞いています。業務委嘱者という呼び方だそうですけれども、全員社会保険に未加入だというんですね。なぜ社会保険未加入なんですか。

政府参考人(大谷泰夫君)

 ただいま御指摘のありました財団法人の二十一世紀職業財団に確認しましたところ、財団で業務委嘱者と称されております非常勤職員の平均勤続年数が、五月一日現在で五年三か月というふうに承知しております。また、これらの業務委嘱者について、一日七時間、月十五日勤務というふうにしておりまして、社会保険の被保険者資格要件を満たしていないということで社会保険に加入していないというふうに聞いております。

小池晃君

 パート労働者支援するセンターのパート労働者が、社会保険適用しないようにぎりぎりの労働条件で雇っているって、私これ本当にどうなのかと、支援する財団がこんなんでいいのかというふうにこれ率直に言わざるを得ません。

 業務の縮小に当たってパート労働者の雇い止めというのはこれはなかったんでしょうか。今後もないと言えるんでしょうか。

政府参考人(大谷泰夫君)

 二十一世紀職業財団の労働者の雇用の問題につきましては、使用者である財団が一義的に判断し責任を負っているというふうに承知しております。

 昨年度、過去の例を申しますと、一件、過去におきますと雇い止めということはあったということは承知しておりますけれども、特に昨年度、雇い止めの問題がございまして、これ本年三月に財団と労働組合の間で行われました団体交渉におきまして、平成二十年度の事業実施が見込まれる場合には、できるだけ早い時期に業務委嘱契約を行い、極力雇い止めを回避するよう努力することということを両者間で確認したというふうに聞いております。

小池晃君

 今後もそういう問題、起こらないんでしょうね。私、パート労働者の相談に応じるところがこういうふうに、まるで見本にならないような、社会保険適用しない、あるいは身分も不安定ということに置いておくというのは非常に重大な問題だということは指摘をしたいと思うんですが。

 まあそういう問題点はさておき、長年事業を委託して、ノウハウも積んできたところなんですね。なぜこういう、わざわざ別の団体に委託をしてしまうのかということなんです。

 これ神奈川の実績を聞きますと、相談千件を超えている、セミナー五十回、事業主への研修十回。パート労働者の環境整備のための仕事を担ってきているわけですが、先ほど言ったように均等室の体制は非常に不十分なわけです。にもかかわらず、こういう重要な事業の委託を打ち切るということでやめてしまって、果たしてきちっと事業が継続できるんですか。

政府参考人(大谷泰夫君)

 短時間労働援助センターの業務についてでありますけれども、これは昨今、行政改革あるいは指定法人改革という見地から、特にこれは規制改革・民間開放推進三か年計画といった計画の中でもその改革の必要性が決定されまして、この均衡待遇の取組の支援のために不可欠な業務のみに特化をするというふうになったものであります。

 これまでの業務で二十一世紀職業財団に蓄積されておりますノウハウにつきましては、これは財団独自の業務において今後とも生かされていくものというふうに考えております。

小池晃君

 ここのところはしっかり引き継ぐ必要があると思うんですが、私、非常に問題だと思うのは、この短時間援助センターの調査研究事業の停止というのは、これは法案の事項のはずなんです。ということは、その施行は七月なんです。ところが、既にこのセンターへの委託は現場では今年四月に打切りになっているんですね。法が施行する前に既に事業をやめているということになるわけですよね。法が想定した事業の停止を既に現場では実行されちゃっているんです。こんなことが許されるんですか。

政府参考人(大谷泰夫君)

 この短時間労働援助センターの業務のうち雇用福祉事業として行ってきましたものにつきましては、これ平成十九年四月一日に予定されておりました雇用保険制度の見直しの中で、パート労働法における指定法人業務の精査を行い、廃止することとしたものでありまして、実際には四月二十三日に施行になったわけでございます。

 この改正法案におきましては、事業主に均衡待遇の確保という新たな措置を果たしますことから、この改正法案施行後にその支援のための助成金の支給業務を開始するということになっておるところでございます。

小池晃君

 いや、私、これちょっと経過おかしいと思うんですね。

 大臣、もしもこのまま法律成立すれば相談業務というのは増えるわけだけれども、その相談業務は委託やめてしまう。しかも、いろんなことを理由にして、法案が成立する前に早々と実態としては業務委託が打ち切られている。こんなことが許されるんでしょうか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 これは、要は今局長からお話をさせていただきましたとおり、今般の業務の見直しにつきましては、この今パート労働法の改正だけによって引き起こされるものではないということでございまして、先ほど、雇用保険法の改正に伴ってもう雇用福祉事業であるとか労働福祉事業の見直しが行われていると、こういうことでもございます。

 指定法人の業務については、今回、真に必要な最小限度のものにするとした閣議決定が行われておりますので、その内容を踏まえて行ったと、こういうことでございます。

 その一方で、改正法案に基づいてパート労働者の均衡待遇の確保に取り組む事業主支援につきましては、むしろここにこそこの団体の力を特化するという考え方の下でその充実を図っているということでございます。

 したがいまして、こうした背景の下で業務の見直しが行われていることから、法案成立後に行うべきとのお考えは必ずしも当を得ていないと、このように考えております。

小池晃君

 現在の均等室の体制で新たな要求にこたえるのは極めて困難なわけですから、やはりしっかり相談業務続ける保障、責任があるというふうに思いますし、私は、法案の成立待たずに、法事項であるこの事業の打切りということが先行的に現場で起こっているということは、これは何というか、法治主義という点から見ても非常に問題があるんじゃないかなということは指摘をしたいと思います。

 最後に、ちょっとこれは緊急の問題で一つお聞きしたいんですが、中国残留孤児の支援策についてであります。

 これ大臣は、四月十二日の当委員会で私の質問に対して、拉致被害者の方々との比較では共通する要素もあるが、異なる要素も相当あると答弁されました。

 異なる要素、私もあると思うんです。異なる要素と言うのであれば、最大の要素は、北朝鮮の拉致被害者というのは北朝鮮の責任だということです。それに対して中国残留孤児は、戦時中の責任、敗戦後の棄民政策、あるいは早期帰国義務を実施しなかったこと、自立支援義務を実施しなかったこと、正に日本政府の責任だという点が大きな違いだと思うし、その点でいえば、拉致被害者に対する支援の水準よりも低い水準であっていいはずがないというふうに思うんです。

 それから、新たな支援策の内容が報道されているんですが、非常に水準が孤児が求めている水準からほど遠いんですね。

 私は、新たな給付金制度と言うけれども、生活保護と同一水準であるということ、それから自助努力して得られた収入が収入認定されて、その分の給付が削られるという問題があります。これは孤児が働いて自分でお金を稼ごうと思っても、それが全部収入認定されて削られる、これでは日本人としての尊厳を回復できるものではないと。それから、孤児に配偶者がある場合、あるいはその遺族への給付も報道を見る限りでは見当たらないんです。

 大臣、今報道されているようなこういう中身で、安倍首相が指示した、日本に帰ってきて本当によかったと言えるようなものになっていると考えるんですか、これお答えいただきたい。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 中国残留邦人の問題につきましては、委員も御承知のとおり、訴訟が提起されておりまして、これまで八地裁で判決が出ていますけれども、神戸地裁の判決を除きましてすべて国側勝訴、言い換えますと国に法的責任はないと、こういう判決が出ているわけでございます。

 それで、そういう法的問題あるいは判決、そういう裁判の問題とは切り離して中国残留邦人に対して新たな支援策を考えなさいと、こういう安倍総理からの指示をいただきまして、そしてまた、その際に、指示内容として、これからの進め方と申しますか、手続面につきましても言及をいただいておるということでございます。一つは、有識者会議を開催して議論をするようにということと、与党でかなりいろいろ議論を重ねてきておるということもあるので、そのようなことを踏まえての与党との調整もするようにと、こういうようなことで指示をいただいたところです。

 したがいまして、この指示に従いまして、現在、有識者会議での御議論を進めていただいておるところでございまして、その後にまた与党ともよく相談して、夏ごろに取りまとめをしたいということでございます。

 したがいまして、報道を今御言及になりましたけれども、そのようなことについては私どもが知るところではない、報道を通じて知っているということでございまして、これから先、今のような順序に従って議論を詰めていきたいと、このように考えているところでございます。

ページトップへ
リンクはご自由にどうぞ。各ページに掲載の画像及び記事の無断転載を禁じます。 © 2001-2010 Japanese Communist Party, Akira Koike, all rights reserved.