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166通常国会 参議院 法務委員会・厚生労働委員会連合審査会 少年法「改正」案に関する質疑

  • 児童相談所充実こそ/連合審査会 小池議員が質問(関連記事
2007年5月24日(木)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 今回の少年法の改正案では触法事件について警察の調査権限を付与し、押収、捜査、検証なども可能としております。これまで触法事件への対応の中心となってきた児童相談所については、警察官の調査を基に処分を決める、特に殺人などの重大事案は家裁へ全件送致して処分を決めるということにされておりますが、最初に法務省にお伺いします。今まで児童相談所における触法事件、特に重大事案について、これは対応に問題があったという御認識なんでしょうか。

政府参考人(小津博司君)

 児童相談所の調査は、児童や保護者等にどのような処遇が必要かを判断するために、主に児童福祉司や相談員が中心になって、面接や心理学診断、行動観察等の方法によって、児童の状況、家庭環境、生活歴や生育歴、過去の相談歴、地域の養育環境等の事項を調査するものと承知しております。

 他方、触法行為といった非行の内容等につきましては、これを解明することが児童相談所の調査の直接の目的と位置付けられているわけではなく、現在の実務におきましても警察の調査結果が児童相談所で利用されるなど、警察の調査が重要な役割を果たしているものと承知しております。

 しかしながら、触法少年の行為につきましては、刑事訴訟法に基づく捜査ができないとの理解から、捜索等の法律に基づく強制処分を行うことができず、また任意で行う調査につきましても、法律上の根拠が明確でないため、円滑な調査に困難が伴って事案の解明が十分にできない場合があることから、少年の健全な育成のための措置に資するように警察の調査権限を法律上明確にすることとしたものでございます。

 したがいまして、児童相談所におけるこれまでの調査等に問題があったことを理由として本法案を提出しているものではございません。

小池晃君

 今までの対応に問題があったという認識でないとすれば、立法の根拠自体に重大な疑問を持つわけであります。

 現行法は、触法事件というのは、これは児童相談所が中心となって対応するということを予定しております。重大事件であっても児童福祉的な対応が必要だと児童相談所が判断すれば、これやっているわけです。家裁に送致することなく処分を決めることができるわけです。

 実際に最近の重大事件でも、二〇〇一年の四月に尼崎で発生した十一歳の少年による殺人事件、これは児童相談所による一か月半にわたる調査が行われて、県の社会福祉審議会児童相談部会の意見を聞いた上で、児童自立支援施設に入所措置を決めております。

 以前から、重大な触法事件でも児童相談所の範囲で対応したという例は見られるわけですが、これ問題は起こっていないわけであります。ところが、今回の改正では、触法事件について警察が捜査を行い、特に重大事件においては家庭裁判所全件送致を法律上の原則とするという中身なんですね。

 法務大臣にお聞きしますが、これは先ほどからも議論ありますが、福祉的対応を基本とするのが児童相談所の役割であり、そのかかわる領域が後退するということにならざるを得ないんじゃないですか。

国務大臣(長勢甚遠君)

 児童相談所が福祉的な対応を中心とする組織であるということはそのとおりだろうと思います。ただ、少年法等により行われる家庭裁判所による児童相談所送致や保護処分などの福祉的措置も、事案の真相の解明がなされることによって初めて適切に行われるものと考えます。警察の調査はこのような少年の健全な育成のための措置に資することを目的として行われるものでありまして、このことは本法案でも明記をしているところでございます。

 本法案が触法少年の事件について、捜索、押収等の物に対する強制調査を可能にしておるわけでありますが、こうした目的から、警察でないとできない問題ができるようにすることによって、事案の真相解明やこれに即した少年本人のために最も適切な処遇選択をより一層十全なものとするためでございます。また、触法少年にかかわる事件の任意調査手続の整備は、今も局長が申しましたが、実務上、従来から行われてきた警察の調査についてその法的根拠を明確にする点に意義があるためこれを整備するものでございまして、基本的には従来の法制度を変更するものではないと考えております。

 したがって、本法案により触法少年に対する福祉的な対応を後退させるということにはならないというふうに考えております。

小池晃君

 そうおっしゃいますけれども、児童相談所の調査の範囲も判断の範囲もこれ大幅に減らされているわけです。警察の調査というのは、これは今強調されましたけれども、しかしこれは事実の確定に限られているわけで、児童の健全育成という観点から必要な事実を把握するということにはならないわけで、そこが捜査機関である警察の限界であると思うんですね。

 その点で、やっぱり総体として、少年が抱える問題を事実関係だけでなくて背景なども含めてしっかり把握をして対応を行っていく児童相談所の役割というのは非常に重要だし、その調査力、対応力は一層強化すべきだと思うんですが、私は、こんな形で警察の調査権限付与によってそっちばっかり肥大化していけば、むしろ本来強化すべきである児相の対応力、調査力というのが逆に弱体化するんではないかという大変懸念を持つわけであります。

 そこで、その体制についてお聞きをしたいんですが、先ほどから議論では福祉的対応の必要性は否定しないわけですが、実際にそれにふさわしい体制になっているかという問題、以下、厚労省にお聞きしたいと思うんです。

 この十年間で虐待の相談件数、非行相談件数と児相の職員数はどうなっていますでしょうか。

政府参考人(大谷泰夫君)

 児童相談所におきます児童虐待を含めた養護相談件数につきましては、平成十七年度が七万五千二百五十三件、これは平成七年度に比べて約二・五倍、また同様に非行相談の件数は一万七千五百十八件でありまして、平成七年度に比べますと約一・一倍というふうな増加となっております。それから、児童相談所の職員数でありますけれども、平成十七年度が七千二百二十七人でありまして、平成七年度に比べまして一・三倍という増員となっております。

 今申しましたように、児童虐待を含めてこの対応件数が大幅に増加する中で、非行の相談や障害相談などへの対応を迅速に行っていくためには、児童相談所の体制、とりわけその職員の充実強化が重要な課題と認識しております。

 例えば、児童相談所において行う調査の中核となります児童福祉司の配置状況を申し上げますと、各自治体においてこれまで必要な増員を図ってきておりまして、平成十八年度は二千百四十七人と、これは平成八年度と比べまして一・九倍というふうになっております。また、特に平成十九年度でありますが、今回、地方財政措置を行っていただきまして、標準人口で百七十万人当たりの職員、児童福祉司が三名の増員といったこれまでにはない大幅な増員を図ったところでございます。

 こういったことで、今後とも、児童相談所におきまして少年非行問題にもあるいは児童虐待にも適切な対応が図れますよう体制整備に努めてまいりたいと考えております。

小池晃君

 非行相談、虐待相談が十年間で約二倍になっている中で職員は一・三倍だから、厚労省としても非常に体制はこれで十分だとは言えないと、だからこそ体制の強化に図っているという、そういう御答弁だったと思うんですね。

 しかも、中身もいろんな問題点指摘されておりまして、特に都市部では一時保護所の収容率が高くて、被虐待児と非行少年が同一施設で処遇せざるを得ないとか、あるいはその一時保護所が外から収容児童が見えてしまうのでプライバシー保護が十分でないという問題もあります。こういう問題点についてはどう認識されていますか。

政府参考人(大谷泰夫君)

 児童虐待が増加します中で、都市部を中心に一時保護施設が定員超過状態になっているというような御指摘がございました。こういったことを受けまして対応を図っているところでありますが、いわゆる一時保護施設によりましては、虐待を受けたお子さんとそれから非行の児童が同室で保護されると、いわゆる混合処遇といった問題も発見されたところでございます。

 そこで、対応でありますけれども、まず平成十八年度の補正予算におきまして、これはさっき申しましたような虐待を受けたお子さんと非行児童のこの両者のいわゆる仕切り、こういった間仕切りを改善するような一時保護所の環境整備、環境改善予算を設定したということ。

 それから、現在進めておりますのは、定員を超える状態にあります一時保護所、そういったものを有する地方自治体に対しまして、本年の六月末までに一時保護施設等の緊急整備計画というものを策定を求めております。遅くとも平成二十一年度までにこういった一時保護施設の定員不足状態を解消するという措置を講じ、都道府県、地方自治体と協議している最中でございます。

 それから、プライバシーの問題でありますが、この一時保護所のプライバシー問題につきましては、重大な非行事件に係る保護の場合など、マスコミ関係者等から保護児童のプライバシーの確保を図るという必要がございます。

 外部から一時保護所の居室等の内部をうかがうことができないようなそういう窓ガラスにするように工夫するとか、部外者が敷地内に立ち入ることができないよう警備を強化する、あるいは他の施設で一時的に保護を行う、こういった措置を講ずることが適当と考えて努力しているところでございます。

小池晃君

 さらに、この触法少年の処遇というのは非常に、児童自立支援施設での育て直しということでいうと高い専門性が要求されると思います。特に施設長がそのことが問われると思うんですが、これは、お聞きしますと、施設長のうち、児童福祉施設の最低基準八十一条の一号と二号の人数で見ますと、一号該当が二十三人、二号該当が三十五人ということなんですね。これ、一号というのは児童自立支援事業に五年以上従事した人、二号というのは児童自立支援事業について特別の学識を有し、厚生労働大臣又は知事が認めるものということで、つまり経験なくてもいいわけです。現場のお話聞くと、二号の方の中には福祉の業務の経験がない方さえいらっしゃるというふうにお聞きをしております。

 こういう状況というのは適切な運営という点で改善の余地があると思うんですが、いかがでしょうか。

政府参考人(大谷泰夫君)

 児童自立支援施設におきます子供の処遇を適切に行うために、児童自立支援施設の施設長の専門性を高めるということは大変重要な課題であると認識しております。

 今御指摘いただきましたように、これまでその施設長の任用につきましては二つのグループがあったわけでありますけれども、やはりその専門性を高めていく必要があるということで、実は十九年の四月から児童福祉施設の最低基準を改正いたしまして、必要な研修を義務付けるなど児童自立支援施設の施設長の任用要件の厳格化を図ったところでございます。

 今後とも、この児童自立支援施設の職員の専門性の向上を図るということで子供の自立に向けた支援、援助の充実に努めてまいりたいと考えております。

小池晃君

 いろいろな努力はされてはいるんですが、お金も人も非常に今地方大変なときに、地方に丸投げするような今のようなやり方では、やっぱり福祉的対応が必要といってもなかなか絵にかいたもちということになってしまうんではないか。

 柳澤大臣にお伺いしたいんですが、やはり人材面あるいは予算、財政の面で国がしっかりした責任を果たすべきではないかと思いますが、いかがですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 少年非行の問題につきましては、これはもう政府としても全体的な取組、また社会全体で取り組むべき重要な課題だと、このように認識をいたしております。

 厚生労働省におきましては、当然、児童福祉の観点からこの問題に積極的に取り組んでいるところであります。少年非行の早期発見、予防等のため、要保護児童対策地域協議会、これは地域社会がしっかり予防に取り組まなきゃいけないという御指摘もあったわけですが、いわゆる子供を守る地域ネットワークの設置の促進、こういうこと、それからまた、児童自立支援施設等を対象に社会復帰を円滑に行うための自立援助ホームにおける就業の支援、それから児童自立支援施設によって出所、この施設を出た後のアフターケアをこの施設自体が行うということ、それから児童相談所の人的あるいは物的体制の強化、今、雇・児局長から答弁をさせていただいたとおりでございまして、このようなことで個々の子供たちの立ち直りや社会的自立を支援しているところでございます。

 また、非行の加害者である子供たちが、実は、先ほど来いろんな先生からお触れいただいた点ですが、虐待の被害者としての経験を持っているという事案が多く存在しているところと認識しております。昨今、児童虐待対応件数の増加や深刻化を踏まえまして児童虐待防止対策の充実を図っておるところでございますが、非行防止という観点からもこれらの取組を積極的に推進していくことが重要だと、このように考えております。

 虐待の発生予防、早期発見、早期対応、保護、支援、我々一〇〇%の対応を期しているわけですが、なかなか手から水が漏れるような事案がありまして非常に悩ましく受け止めていますが、我々としては様々な施策を通じて更に万全を期していきたいと、このように思います。

 少年非行全体の問題については、今後とも関係省庁との連携を密にしながら、いろいろ財政的な制約等もございますけれども、そうしたものをいろいろな工夫をして克服をいたし、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

小池晃君

 これまで指摘したように様々な課題あると思うんですが、そういう中でも改善の方向で進んでいると思うんです。困難な中でも、十四歳以下の事件について児童相談所などが努力して対応してきたという実績はあるわけです。

 国立武蔵野学院前院長の徳地昭男氏が参考人質疑でも述べておられますが、殺人で六人、傷害致死で三人受け入れて、非常に大変だったけれども、これは再び非行に走って家裁に通告、送致することはなかったんだということを述べられております。かぎが掛かる施設に収容する強制措置をとれないような国立以外の施設でも、例えば小学四年生が二年生の子供を突き落として殺害するという佐世保事件と同様の事件が一九七九年に東京で起こっていますが、台東児童相談所でこれは都立の教護院に入所させてきちんと対応しています。

 法務省は、少年院でも男女の担任制など家庭的な雰囲気を大切にした指導をしていくというふうにおっしゃっているということは、やはり発達段階の少年にとって児童自立支援施設で行ってきたような家庭的な雰囲気の中での育て直しが必要だと考えておられるということなんですね。これは簡単にお答えください。

政府参考人(梶木壽君)

 先ほども申し上げましたように、我々が行っております処遇の二本柱、つまり再非行防止のための教育と並んで、今委員が御指摘になりました育て直しのための教育というのは重要な柱であると考えております。

小池晃君

 だとすれば、やはり集団的規律を重視する少年院というのは、幾ら努力してもやはり家族のような環境を用意する、精神科医との協力の下で育て直しを行う児童自立支援施設と同等の機能を果たす、これは本当に難しいことだというふうに思うんです。やはり触法少年を立ち直らせて再び罪を犯させない、これがその解決の根本であるわけで、だからこそ育て直し、そして虐待の解決などの育成環境の整備が重要だということだと思うんです。

 法務大臣にお伺いしたいんですけれども、やはりそういう点でいえば、十四歳未満の触法少年については、実績もあり、そして現在、虐待や発達障害対策の中心になっている児童相談所や自立支援施設での対応がやっぱり一番必要なのではないかというふうに考えるんですが、この点についての法務大臣の見解を伺います。

国務大臣(長勢甚遠君)

 この議論、従前から度々聞かさしていただいておりますが、どうもどっちかでなければならないという話ではなくて、やはり個々の方々に、十四歳未満の少年に沿って、早期の矯正教育が必要なもの、また相当なもの、あるいは児童福祉施設の開放処遇になじまない場合、こういう場合にその選択ができるということにしておくということが今回の目的でありますし、それが適切ではないかと思っております。

 同時に、今矯正局長が申し上げましたように、いわゆる発達障害の方々ですとか被害者体験を持っておられる方々とか、いろんなケースがありますので、それに沿った育て直しの努力を相当やってきておりますし、また成果が上がっている事例も見ておりますので、是非その方向で我が方としても、少年院としても努力を続けていきたいと思っております。

委員長(山下栄一君)

 小池君、時間が来ておりますので、おまとめください。

小池晃君

 個々の対応が必要だからこそ、全件法的に原則送致するというやり方が重大な問題なんだと申し上げているんです。

 改めて、非常に重大な問題だということを指摘して、質問を終わります。

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