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日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

166通常国会 厚生労働委員会 社会保険庁解体・民営化法案および年金時効特例法に関する参考人質疑

2007年6月18日(月)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 参考人の皆さんありがとうございました。

 最初に、佐藤参考人にお伺いをしたいと思うんですが、参考人のお話の中で、年金行政の問題点として申請主義への過度の依存という御指摘がありました。これは私もそのとおりだと思うんですね。今回の宙に浮いた年金という原因もやはり将来的には統合できるんだ、それは申請でやればそうなるんだということがやはり背景にあったんだろうと思うんです。これは日本の社会保障行政全体にもある意味共通する問題点ではないかとも思うんですね。その問題意識の下にねんきん定期便の導入という業務改革も行われた、これもいいことだと思っております。

 ただ、今この事態に当たって、またこの申請主義といいますかね、問題が出てきているんじゃないかと思うのが、社会保険庁、事務所に今問い合わせ殺到しているんです、電話もパンクしているんですね。要するに、心配な方は問い合わせてくださいという対応になっているんですね。やっぱり申請主義から脱却するということであれば、まずその第一歩として、今回のこのいろんな問題を解決するために個々人の年金保険料の納付記録を心配な人は問い合わせてくださいというのではなくて、国の側から送る、ある意味定期便ではなくて臨時便を一斉に出すようなことを申請主義から抜け出す第一歩としてやってみたらどうかなと思っているんですが、御意見をお聞かせください。

参考人(佐藤英善君)

 それは、むしろやらなきゃいけないと私自身も思っています。その方が基本的には今の状況が、被保険者、分かるわけですよね。それを三十五、四十五、五十八という、こういう刻みでやっておりますけれども、今の事態が何かというと、今の状況で私はどうなっているということ、世代関係ないですね、年齢。これをすぐやれるかどうかなんですね、実務的にといいますか、お金その他の問題で。そういう問題残りますけれども、本来やれば相当問題点を解消できるんじゃないですかね、と思います。それから、申請主義に過度に依存しているという発想もいささか改められると思いますね。

小池晃君

 私もこれ是非やるべきだと思っていまして、やっぱりこれで実際正しい記録を送られればそれで安心できる人も一杯出てくるだろうと思いますし、やっぱりこれだけの問題を国民にもある程度率直に協力も求めて解決していくという姿勢が必要なんじゃないかなというふうに思っています。ありがとうございました。

 それから、西沢参考人、山田参考人、磯村参考人にお伺いしたいんですが、そもそも今回の事態を通じて、私は、やっぱり年金というのが何十年にもわたって国民のある意味では資産、大事な財産を管理していく大切な仕事であると、その能力があるかどうかということではなく、やはり国が責任を持ってこれはやっていくべき仕事なんだということが私はむしろ浮き彫りになったんではないかというふうに思ってはいるんですけれども、今回のこの機構法を通じて国のやっぱり業務から分離してしまう、このことで日本の年金にどういう影響を与えるのか、その点について御見解をそれぞれお聞かせいただきたいと思います。

参考人(西沢和彦君)

 今回、徴収執行機関ですか、徴収して記録を管理して給付するこの組織の話に集中しがちですけれども、私の考え方は、先ほど申し上げましたけれども、制度が複雑であるとこの執行機関に対する負荷が非常に大きくなるんですね。一億三千万人いる国民で、保険料を払って初めて給付を受けられるというこの皆保険の仕組みというのは、執行機関に非常な負荷を掛けてきたと思います。それが国民年金の未納率の上昇であったりすると思うんです。ですから、制度改革、システムに負荷を掛けない制度改革と執行機関改革が一体的にあるべきというのが私の一つの考え方と。

 もう一つ、社保庁の職員の方々に対するモラルアップが叫ばれますけれども、私は、この制度が安定的に運営されるためには、普通の人が普通に仕事をしていれば運営されるようなものでないといけないと思います。優秀な人が集まって一杯一杯仕事をしたのではいつか破綻してしまうわけですから、凡人といいますか、普通の人が普通に仕事をしていれば制度が運営されるようなシステムにむしろつくり変えるべきかなと思っておりますし、最後に、民間に対する過度な期待があり過ぎるのかなと思っております。公的サービスの供給者というのは、金銭を目当てに多分働くわけではないと思うんですね。社会的な使命感ですとか、私、おれこそが国の礎を築いているという使命感がその人を突き動かすわけで、それは民間でも公務員でも同じだと思います。ですから、給与や昇格、昇進で人を釣っても、それは永続的ではないと思っております。

参考人(山田稔君)

 日本の年金制度がこれからどうなっていくのかというのは、非常に国民の、前回の二〇〇四年の改革以降ずっと持ち続けている不安であり、まあ不信までは行きませんが、そういう感じを持っているというふうに思っています。今回のこの問題が発生をしてはっきりしたのは、やはり三十年、四十年先のことに対してだれが責任を持ってくれるのか、だれが信頼に足るのかという点では、やっぱり国が責任を持って運営すべきだということがよりはっきりしているんではないかというふうに思っています。

 今の年金制度を本当にいい方向で改善をしていく、それについては皆さんの御意見も一致しているんだろうというふうに思いますが、年金制度をどうつくり変えていくのかというときに、じゃ、その運営管理が全く国から、全くといいますか国から離れていく、そのことに対しては、国民が信頼しようとしているその足下から信頼の根拠をなくしていくようなものになるんじゃないかなというふうに思っています。

 そういう点では、国が本当に、意見の中でも言いましたが、国が全責任を持って国民の老後の生活、その大きな経済的な基盤である年金を責任を持って運営をするんだというこの安心感を与えるということがまず第一ではないかというふうに思っています。そのことを大きく逸脱をしていくという方向になるんじゃないかなというふうに私は思います。

参考人(磯村元史君)

 非公務員型というものと民間企業とは似て非なるものでございます。もし非公務員型で民間企業に対する厳しさと同じようなことを要求なさる、あるいは民間企業が持っておると思われるガバナンスと同じものを期待されるんであれば、今度の改正証券取引法、すなわち日本版SOX法と言われます金融商品取引法というのがございまして、金融商品取引法では民間企業に相当な厳しいガバナンスを要求しております。それが実行できない場合には厳しい処罰も予定されております。そういうものと同じものを新しい日本年金機構に要求なさるという前提であれば、まだ信頼感は多少つながるかも分かりません。でない限り、今の程度のガバナンスじゃ、まず無理だと思います。

 以上です。

小池晃君

 磯村参考人にちょっと引き続き、第三者機関のことで、先ほど今のままだと現場が混乱するというふうにお話しされましたが、これは法的根拠なしに、ある意味で一回行われた行政処分をひっくり返すようなことができるんだろうかということは大変疑問に思うんですが、こういう法的な根拠が一切ない第三者判定機関の在り方について、更に付け加えることあれば是非お聞かせください。

参考人(磯村元史君)

 この性格がどういうものなのかよく分かりませんが、ただ、六月四日御議論なさった大臣、副大臣の御答弁を拝見いたしますと、何か審議会的な位置付けのようでございますね。したがって、勧告はできると。勧告ができる程度の法律的な裏付けのないものでしたら、だれも言うこと聞きませんね。

 以上です。

小池晃君

 それから、社会保障番号のこと、若干さっき話題になりまして、山田参考人に御意見をお聞きしたいんですが、安倍首相も社会保障番号の導入ということを言い出しています。

 それで、これは今の宙に浮いた過去の問題解決する手段にはなり得ないということが一つあると思うのと、医療、年金、介護を一つの番号というふうにした場合に、どういう病気をしたのか、どういう治療をしたのか、あるいは収入は幾らか、すべてが丸裸になっていくわけですね。その点でいうと非常に、基礎年金番号すらまともに管理できないようなこういう実態の中で、こういうプライバシーがすべて筒抜けになってしまう。住基ネットのときに、氏名、住所、年齢だけで大問題になったのに、これはやっぱりプライバシーという点から見て大変問題が大きいのではないかと思うんですが、先ほどちょっと若干議論もあったので、山田参考人の御意見をお聞かせください。

参考人(山田稔君)

 社会保障分野といいますか、年金でも医療でもそうですし、生活保護でも障害者の自立支援法でもそうですが、基本的には社会的弱者と言われている方たちも含めて、非常にプライバシーについては敏感な方というのは、当然置かれている状況の中で大きいわけです。それが、今回の年金のこの機構法案についても、本当にプライバシーは守れるんだろうかというのは率直な国民の疑問であり不安だろうというふうに思っています。

 これが、国がしっかり責任を持って解決をするということのないままに、更に社会保険番号という格好で不安に不安を重ねるようなやり方で、今、安倍首相も含めて新たな提起をされるという点では、本当に、こんな言い方して申し訳ないですが、政府は一体何を考えているのかというのが国民の率直な思いだというふうに思っています。

 本当にこれを国民の目線で解決をするということがどうして最優先されないのか、五千万件だけでなくすべての加入者が安心できる、そのことがまずどうして解決されないのか、そのこと抜きにプライバシーが更に拡散をする、そういう不安を増やすのかということが国民の率直な気持ちだろうというふうに思っています。

 そういう点では、新たな提起については、より混乱を招くだけだというふうに私は思っています。

小池晃君

 引き続き、山田参考人にお伺いしたいんですけれども、今回、年金の問題でかなり急速にやっぱり世論が変化して国民の怒りが広がっていますが、やっぱりこれだけ内閣支持率が一週間でもう二〇%ぐらい下がるような事態になったということは、やはりこの間の政府が進めた年金制度の制度改定などに対する不信感というのは土壌にかなりあったんじゃないかと思うんですが。実際、いろんな国民の声も聞いている立場にあると思いますので、皆さんがどんな思いでいるのか、ちょっとお聞かせ願えればと思います。

参考人(山田稔君)

 今言われましたように、年金に対する今回の国民の大きな怒りというのは、この五千万件問題が発生をした、それから急速に生まれてきたものではないというのは御承知といいますか、当然皆さんも御理解されているというふうに思います。

 二〇〇四年の年金制度の見直しのときに、保険料は上がるけれども給付は下がる。このことが、国民が百年安心だということで納得しているわけがないわけです。そのじくじたる思いが、ずっと抱えながら今回のことです。そういう点では、それ見たことかというのが国民の率直な意見といいますか、感情だというふうに思っています。

 それに加えて、年金だけではなくて、この間、社会保障のあらゆる分野で制度の見直しがあり、保険料や利用料が引き上がる。さらには税制の見直しがあり、定率減税の廃止も含めて負担が増やされる。こうやって国民にはどんどんどんどん負担が押し付けられる、その中で本当に苦労して苦労して払っている年金の保険料。意見の中にも言いましたけれども、そうやって苦労して払うというのは、すべて自分の年金権につながるということを一〇〇%信頼して払っているわけですから、それが全く根底から裏切られたということに対しては、国民の素直な感情がやっぱりこれだけの怒りだというふうに思っています。

 また、それに更に輪を掛けて怒りを増幅させているのは、それこそ今定率減税の廃止で住民税の納付書が国民のところに届いています。住民税を大きく引き上げた納付書は直ちにすべての国民に届けるのに、どうして年金の納付記録は、是非安心をさせてくれという、国民が求めているにもかかわらずそれが出されないのか、このことに対する怒りも今回の国民の怒りを大きく増幅させている要素の一つだというふうに思っています。

小池晃君

 西沢参考人にお伺いしたいと思うんですが、年金保険料の納付率の向上ということが今回の法案の一つの目玉になっていて、参考人は国税庁に強制徴収を委託することについて、個人の資産を把握できない新機構がなかなかそういう対象者を特定することは難しいんじゃないかというコメントもされていますが、この点について、御説明いただけますか。

参考人(西沢和彦君)

 御存じのように、社会保険庁は企業からは厚生年金の保険料納付、企業に対して代行してもらっていますけれども、それはあくまで従業員の給料の申告に基づいて社保庁行っているわけで、その企業ごとの利益の状況とかを当然把握しているわけではありませんし、企業の資産も把握していないです。他方で、国税であれば利益に基づいた税徴収を行っていますから利益も把握していると、あるいは市町村であれば固定資産税を取っていますので資産状況も把握していると。強制徴収を行うのであれば、利益、資産の状況を知っておりませんと、その悪質性をなかなか認定しにくいわけです。

 これは個人についても同様です。個人も、国民年金保険料というのは定額負担ですから、所得を一義的に社会保険庁は知っているわけではありません。市町村や国税であれば知っているわけです。すると、その人は悪質かどうかという認定は甚だ困難になってまいりますし、仮に悪質だと分かっても、取り立てようとしたころにはもう資産逃れが行われていたり、あるいはその企業、個人の資産が劣化しているかもしれません。取りっぱぐれになってしまう懸念があると、そういうことです。

小池晃君

 ありがとうございました。

 それから、最後、山田参考人にお伺いしたいと思うんですが、やっぱり今回の事態を通じて、安心できる年金制度をつくるということが本当に大事になってきていると思います。

 先ほど、空洞化などの実態についてもお話があったんですけれども、今の日本の年金の問題を解決するためにどういう改革が必要なのか、財源のことも含めてお考えをお聞かせください。

参考人(山田稔君)

 意見陳述の中にも若干触れましたが、最低保障年金制度という制度を創設する以外、根本的な解決はあり得ないというふうに思っています。私以外の参考人の方々からも出ていますが、やっぱり収入のない人にも保険料の納付を義務付けている今の日本の年金制度というのはもう限界を迎えると。当然、払えないという事態も発生をするわけですし、また払えなくて減免をすると低年金ということにもなります。そういう点では、空洞化を食い止める、そのことも含めて、またこの間、年金をめぐっては女性の年金権やパート労働者の年金権の問題等々あります。根本的にこれらの日本の年金制度が抱えている問題を解決する、そういう点では最低保障年金制度の創設しかないというふうに思っています。

 最低保障年金制度については、別に私たちが言っているだけではなくて、連合や全労連などの労働組合、労働団体もそうですし、民主党、共産党、社民党の皆さんも政党レベルで、名前こそ若干違いますが、やっぱり最低保障年金という、そういう仕組みを用いない限り問題解決しないというふうに言われています。また、経済界もその方向で、骨太方針二〇〇七に向けてという格好で経済同友会が提言をされているというようなこともあります。

 ただ、私たちが一番危惧をしているのは、やっぱり財源の問題が非常に大きな問題になってくるだろうというふうに思っています。仕組みはいいけれども、じゃ財源をどうするのかということです。財界などは消費税をというふうに提言をされていますが、消費税というのは本当に社会保障の財源としては一番ふさわしくない財源だというふうに思っています。御承知のように、消費税というのは収入の少ない人ほど負担感が非常に強い税金ですし、そういう点では憲法二十五条の理念に一番そぐわない財源だというふうに思っています。

 そういう点で、最低保障年金制度という制度、それについては多くの方の意見が一致をしてきているわけですから、憲法二十五条の理念に基づいて、やっぱり税金の集め方、使い方を改めてこの国の在り方として考え直す、その中で本当にこの年金制度に対する信頼を回復をする、その方向に是非向かっていくべきだというふうに私は思っております。

小池晃君

 ありがとうございました。終わります。

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