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日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

8 月 22 日

フォックス・メキシコ大統領、上院議長、

そして議員団と楽しく交流

 朝から大統領府へ。あたりからは隔絶された森の中の邸宅のような大統領府です。しかも開放的で、驚いたことに大統領執務室の手前まで見学の観光客が入ってきています。

 
大統領執務室で、フォックス・メキシコ大統領と
 
 

「パブロ・ネルーダ集」などが並んでいる書棚を眺めながら大統領執務室でしばらく待つと、フォックス大統領登場。2 メートル近い長身の大統領と握手しましたが、まるでグローブのような大きな手です。ここでは 30 分以上懇談しました。フォックス大統領は、日本との FTA 締結への強い期待を強調していました。

 メキシコは、2000 年 12 月の大統領選挙でフォックス大統領が当選し、71 年ぶりの政権交代となりましたが、その後の政権運営には批判が強く、今年 7 月に行われた下院選挙では、与党(国民行動党、PAN)が 203 から 154 へと大幅に議席を減らし、野党の制度的革命党(PRI)が 207 から 223 へと議席を増やしています。注目されるのは、かつてのメキシコ共産党の流れをくむ政党で、日本共産党の 20 回大会に来賓参加したこともある民主革命党(PRD)が 56 から 96 議席へと大幅に議席を増やしていることです。

 特に PRD はメキシコシティで絶大な支持を得ています。下院選挙と同時に行われた区長選挙では、メキシコシティの 16 のうち 14 の区長をおさえ、残る 2 つのうち 1 つも選挙違反が発覚しており、再選挙になるだろうとのこと。そうすれば PRD の勝利は確実です。メキシコシティの人口は 1500 万人で国政にも重大な影響を与えており、現市長(PRD)は次期大統領選挙の有力候補といわれています。

 その後メキシコ議会(上院)へ向かい、ジャクソン上院議長にお会いしました。

 上院の建物は、まるで「浅草か上野のような」(西村大使談)ごみごみした町中にあります。車寄せもなく、歩道からふつうのビルのように中に入れる国会にびっくりしました。

 一応入り口には警護の人もいるし、金属探知器もあるのですが、日本のように、ものものしく威圧的な感じはありません。庶民的で開放された国会のあり方には感心しました。そういえばアメリカの連邦議事堂も議員会館も、金属探知器さえ通れば誰でも入れる仕組みだったことを思い出します。日本の過剰警備の方が、世界から見れば異常なのかもしれません。

 懇談の席上、ジャクソン議長は「メキシコの経済活性化が重要だ。失業率が 3 %こえ、社会的緊張が高まるのではないかと懸念している。こうした状況を逆転させることが必要で、最大の課題は雇用を増やし安定させることだ。

 さらに財政の強化が必要。財政を通じて貧困層にどう分配するかということと、教育の質の向上をはかることが重要だ」と述べました。また、

「2 日前のイラクでの国連に対するテロもきびしく批判した。上院として米英 2 軍の撤退を求め、イラク自身の手による復興をすすめるべきとの決議を行い、メキシコ政府と国連安保理に送付した」と紹介しました。

 私は「みなさんにお会いできてうれしく思う。太平洋を囲む国家として友好を深めたい。特にジャクソン議長の言われた、経済活性化にとって国民生活の向上が重要とのお話を共感を持って聞いた。多国籍企業のメキシコ市場への影響と、企業の社会的責任についてどうお考えかお聞きしたい」と質問しました。

 ジャクソン議長は、私の話を受けて「少し長く話したい」と前置きし、「メキシコは今経済の変革に直面している。国内の変革と世界の中でのメキシコの位置づけをめぐる問題だ。多国籍企業について言えば、生産部門への外国からの投資は経済発展を可能にしたし、先端技術の取り入れにも役立っている。しかし、富や技術がわが国に残るようにすることが大切で、そういう議論が始まっている」と述べました。私には、多国籍企業のアメリカ資本に翻弄されてきたメキシコの苦悩が伝わってくるように思えました。

 夜は、市内の日本料理レストランで倉田議長主催の夕食会が開かれました。各テーブルに分かれて座ったのですが、私のテーブルには、ヘスス・オルテガ PRD 上院会長、同夫人(この 7 月に下院議員に当選)、クアウテモック・サンドバル前上院議員(PRD 中央委員)、ノエミ・ソイラ・グスマン上院議員(PRI)のみなさんでした。

 オルテガ上院議員会長は、いったん簡単なあいさつを交わした後、私の名刺を見るやもう一度立ち上がり、笑顔で固い握手。「同じ左翼政党だ。会えて大変うれしい」と。

 こんな具合で始まった夕食会ですが、私のテーブルは PRD の議員ばかりだったためか、終始「日本共産党」談義で盛り上がりました。

 オルテガ氏に「日本共産党の機関紙は何部か」と聞かれたので 200 万と答えると、みな目を丸くしていました。クアウテモック氏はよく知っていて、「日本共産党は西側の共産党では一番大きな政党だ」と周りの人に説明しています。同席した日系人の方まで「赤旗はメキシコでは売っていないのか。メキシコで印刷したらどうか」と言いだす始末です。

 また、「西側のイタリア、フランスなどはソ連崩壊で共産党が消滅したのに、なぜ日本は大きな勢力を保っているのか」と聞かれたので、私が「日本共産党はソ連、中国とも論争し、従属せず自主独立の立場貫いてきた。ソ連については社会主義とは無縁の体制と批判してきた。だからソ連崩壊の影響は少なかった」と答えると、すかさずオルテガ氏から「そのソ連に対する見方には完全に同意する」という返事が返ってきました。

 質問は矢継ぎ早に続き、北朝鮮の現政権をどう見るか、中国共産党と日本共産党の関係は、とか、日本の民主党とはどういう政党か…などあらゆる分野にわたります。オルテガ氏が「アメリカとの自由貿易協定(NAFTA)で農業に問題が出ている」とこぼすので、私が、「メキシコは NAFTA に忠実に補助金を減らす一方、アメリカは補助金を拡大している。不公平ではないか」と言ったところ、まさにわが意を得たりとばかりに「その通り。アメリカは農業補助金を増額しており、不公平が拡大しているので再交渉を要求している」とのことでした。その一方でオルテガ氏は、日本との FTA には期待しているとも述べるなど、この問題の複雑さを痛感させられました。

 米国のカリフォルニア州知事選挙も話題に。もともとカリフォルニア州やテキサス州などは、1845 年のアメリカとの戦争まではメキシコの領土だっただけに、「今度戦争したらメキシコのものだ」などという発言も飛び出します。民主党の州知事候補であるブスタマンテ副知事が、メキシコ移民の出身であるだけに、応援する空気が強いようです。

 イラク問題については、メキシコの立場はきわめて鮮明です。PRD は各国のあらゆる行動が国連決議に基づくべきとの考えだとのことでした。だから米英の侵攻には最後まで反対するし、たとえどんな国の派兵であっても反対であり、日本の派兵にももちろん反対だと言うのです。

 オルテガ氏は「この考えはメキシコでは全会派が完全に一致している」と力説し、同じテーブルにいた PRI のノエミ議員も深くうなずいていました。

 アメリカの隣に位置しながら、決してアメリカ言いなりとはならないメキシコと比べて日本はどうでしょう。日本の政府・与党は、独自の判断を放棄して、アメリカに言われるまま派兵法案を強行したかと思えば、今度はイラクの事態の悪化を前にして、派兵延期に右往左往しています。日本の対米従属の異常性は、外国に来るといっそう強く実感することができます。


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