介護保険

介護認定 大幅見直し
基準43項目 厚労省、軽度化認める


2009年7月29日(水)「しんぶん赤旗」より

 4月に導入され世論の批判を浴びて検証中の新しい要介護認定制度について、厚生労働省は28日に開かれた検討会で「非該当者および軽度者の割合は増加した」と述べ、新制度で認定が軽度化する事実を認め、利用者への74項目の聞き取り調査のうち、43項目の基準を見直す案を提示し、了承されました。

 見直し策は、(1)実際に行われている介助で機械的に判断するのをやめて、行われている介助が不適切な場合は適切な介助を選ぶことにするなど、4点にわたり基本的な考え方を変更(2)「座位保持できるか」の判断を「1分間できるか」から「10分間できるか」に戻すなど、個別に17項目の基準を変更ーの2点です。4月からの制度変更の誤りを認めざるを得なくなったものです。

 現在、希望すれば従来の認定を継続できる経過措置がとられています。見直した調査基準での認定を10月1日にも開始し、経過措置を解除します。その後、いずれかの時期に、再度検討会を行い、見直し後の認定結果を検証する意向です。

運動と追及で

 日本共産党の小池晃参院議員の話 今回、厚労省が異例の「大幅見直し」を提出したのは、関係者の運動や日本共産党の国会での追及の成果です。介護費用抑制が目的であることを示した「内部資料」が厚労省を追い詰める決定打となりました。

 実施前から多くの介護関係者の懸念・批判の声が寄せられていたのに強行した政府・厚労省の責任は重大です。

 日本共産党は総選挙政策でも、新要介護認定制度は白紙撤回し、認定制度を廃止してすべての人に必要な介護を提供できる制度に根本的に見直すことを掲げ、訴えていきます。


解説

介護認定の是非問うとき

 4月実施の新しい要介護認定制度について、厚生労働省は「一律に軽度に判定されるものではない」と説明してきました。

 しかし、厚労省が公開した全国のデータによれば、新制度では「非該当」と認定される人が0・9%(2008年4~5月)から2・4%(09年同期)へと3倍近くに増えました。「非該当」「要支援1・2」「要介護1」の軽度者は49・5%から53・6%へ4・1ポイント増えました。多くの人が必要なサービスを奪われる重大な結果です。

 同省が新制度による認定の軽度化を認めて大幅な見直しを表明せざるを得なくなったのは、批判の声を上げてきた介護関係者の側に道理があったことの証明です。

 日本共産党と「しんぶん赤旗」は、新制度の問題点をいち早く指摘して実施の中止を求めてきました。4月の実施直後、経過措置と新制度見直しの検討会設置という異例の事態に政府を追い込んだのは、小池晃参院議員が暴露した厚生労働省の内部文書でした。軽度者を増やす目標や「縮減」できる給付費の額を記した内部文書は、新制度への疑念を決定づけました。

 4月から導入された新しい認定調査の考え方は"調査員の主観を排除する"というものでした。今回の見直し案はその考え方自体を否定しました。「全国一律」を建前に基準を機械化すればするほど利用者の実態から離れるという、コンピューター判定の矛盾が浮かび上がった形です。

 しかし、見直し案で適切な認定が行われる保証はありません。▽コンピューターソフトの変更▽認定調査項目の削減▽審査会の裁量権の縮小ーについては一切検証されていません。利用者の生活を守るために、見直し案を含めた新制度の全体を検証し、問題点を告発する運動を広げる必要があります。

 一連の経過は、サービス利用の上限を決める認定制度が、さらなる給付費抑制の道具として使われる危険性を国民に示しました。認定制度そのものの是非を、問うていくときです。(杉本恒如)



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