Dr.小池の日本を治す!
現金先行の子ども手当より総合支援

 参議院で「子ども手当法案」が成立しました。「共産党も賛成したのですね」と驚かれた方もいらっしゃるようです。連載2回目はこの問題を取り上げましょう。

 今回通った法律は2010年度に限って、当初予定の半額の月1万3000円を支給するものです。財源についても、今回は0~15歳の扶養控除の廃止だけにとどまり、子育て世帯以外への増税は先送りとなりましたので、賛成しました。しかし来年以降は、今の政府の方針のままでは、とても賛成できません。


◆増税抱き合わせの「月2万6000円」

 1つは、来年以降は子ども手当と抱き合わせで、配偶者控除などの廃止による増税を予定していること。子育てが終わった世帯やお子さんのいない世帯を犠牲にする形で、負担を押しつけることには、私たちは反対です。

 もう1つは、子育て世帯への支援は単に「お金を配ればいい」というものではないからです。子育て世帯の家計状況は深刻で、経済的な支援はたしかに必要です。しかし、それだけでは事足りません。

 もともと、日本では、子供や家族向けの社会保障などの公的支出が、ヨーロッパに比べて著しく低くなっています。教育費負担の重さ、子育て世帯向けの公共住宅が少ないこと、長時間労働で父親が子育てに参加しにくいことなど、子育ての困難は、以前から深刻なものでした。しかも最近では、自公政権下で進められた「構造改革路線」が、その困難さをいっそう増大させました。

 1つは、派遣法の対象業種拡大など労働規制の緩和が進められたこと。子育て世帯の中の「短期雇用者世帯」が10年間で3倍に増え、世帯主が40歳未満のサラリーマン4人世帯の年収は、この11年間に608万円から522万円へと、14%も減少しています。

 もう1つは、「毎年2200億円の社会保障予算を削る」という路線のもとで、保育所や学童保育などの予算が抑制されてきたことです。地方財政の困難の中で、公立保育所の減少傾向が続いていましたが、04年度に公立保育所運営費への国の負担金が廃止されたことが、それに拍車をかけました。私立の認可保育所は増えていますが、待機児童が増加しているというのに、昨年度の認可保育所増加数は、公立・私立の全国合計で、たった16カ所です。これでは、働くこともできず、「子供の貧困」はますます深刻化します。

 ◆父母の雇用安定が最優先

 こうした状況を考えれば、金銭的な手当の増額も必要ですが、総合的な子育て支援策の強化が求められていることは明らかです。まずは、子育て世帯の父母の雇用を安定させることです。労働者派遣法の抜本改正や、異常な長時間労働の是正などに真剣に取り組むべきです。

 それに加えて、保育所整備をはじめとした子育て予算の拡充です。政府部内では、11年度以降の子ども手当の財源を確保するために、他の子育て予算を削減する案も検討されています。たとえば、私立保育所についても国の運営費負担金をなくし、市町村などに財政負担を押し付けようというのです。こんなことをすれば、公立保育所だけでなく私立保育所まで減ってしまい、待機児童がますます増加することになりかねません。これでは本末転倒です。

 国際的な比較でも、日本はヨーロッパなどに比べて、子育て世帯への「現金給付」だけではなく、保育サービスなどの「現物給付」でも、きわめて立ち遅れています。

 政府は、「月額2万6000円」というマニフェスト(政権公約)の数字を金科玉条とせず、限られた財源を子育て世帯の支援のために、どのように使うべきか、国民の声に耳を傾けるべきです。

(フジサンケイビジネスアイ 2010年3月29日掲載)
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