Dr.小池の世直し奮戦記
防災・福祉のまちづくりを
「いつでも元気 2011.5 No.235」より

Dr. 小池の世直し奮戦記/防災・福祉のまちづくりを

東京を経由して被災地(宮城県)へバスで向かう、沖縄県民医連の医療支援の方々と(3月15日、東京都文京区で)
東京を経由して被災地(宮城県)へバスで向かう、沖縄県民医連の医療支援の方々と(3月15日、東京都文京区で)

 東日本大震災で、『元気』を愛読されていた方や、民医連の職員にも、犠牲になられた方がいらっしゃると聞きました。たいへんつらく悲しいことです。犠牲になられた方々に、心から哀悼の意を表します。また被災し、不安を抱えながら、たいへんなご苦労をされている方々に、お見舞いを申し上げます。
 いま、立場の違いをこえて、多くの方々が心をひとつにして被災地の救援・復興に取り組んでいます。ひと口に復興といっても、被害は甚大かつ広範囲で、想像もできないような大事業になるでしょう。生活再建を基礎に、行政機能の回復、失われた地域のコミュニティーの再建もすすめなければなりません。
 民医連は全国で力をあわせて被災地の支援にあたっています。いのちと健康、人権を守る専門家集団としての真骨頂が国をあげての大事業の中で示される場面です。

エネルギー政策の転換必要

 福島第一原子力発電所も日本の原発史上最悪の事故を起こし、広範囲の住民に不安を広げています。
 東京電力は「津波が想定外の高さだったから事故が起きた」と言いますが、決して「想定外」ではありません。地震や津波で深刻な事故が起こる危険性は、これまでも国会の場や市民団体などによって指摘されてきたことです。国と東電は、「安全」と繰り返すだけで、対策をとってこなかったのです。こんな「安全神話」とは決別して"安全最優先"の行政に転換し、日本中の原発を総点検することは、待ったなしの課題です。
 そして「原発だのみ」の政策から抜け出すことです。太陽光・熱、風力、水力、地熱、波力、潮力やバイオマス(生物資源エネルギー)など、自然エネルギー中心の社会・政策へと転換していくことが必要です。
 ドイツではすでに発電量の一六%(二〇〇九年)を自然エネルギーでまかなっています。これは福島第一原発一号機の二五基分にあたります。さらに二〇二〇年には三〇%、二〇五〇年には八〇%をめざしています。日本でも自然エネルギー活用の具体的な数値目標をたてて、"エネルギー自給自足"のまちづくりに本格的に取り組まなければなりません。

行政のあり方問われている

 大震災の甚大な被害は、日本の行政のあり方を根本から問い直すことを求めています。一番深刻な被害が出ているのが、「災害弱者」と言われる高齢者、障害者、妊産婦や子どもたち、そして病気を抱える人たちです。
 国でも地方でも政治が福祉を切り捨て、住民、とりわけ医療や介護を必要とする人や子育て世帯に大きな犠牲を強いてきました。構造改革で病院、保健所が減らされ、子育ても自己責任にされて保育所は増えず、自治体合併で役所も職員も減っています。これでは災害時も救援の手や必要な情報が届かず、十分な医療・介護も提供されません。ふだんから医療や介護、福祉、子育て支援の強い基盤があってこそ、災害時にも力を発揮します。

希望を胸に手をとりあって

 日本国憲法は九条で戦争放棄をうたうとともに、二五条で国民の生存権を保障しています。いまこそ憲法を生かした政治を実現しなければなりません。
 いのちを守る福祉・防災のまちをつくりましょう。そのことが今回、無念の中で命を落とされた方々やご家族、被災地で懸命の活動に取り組むすべてのみなさんの思いにこたえることになると、私は確信しています。希望を胸に手をとりあい、がんばりましょう!

アーカイブ