2009年171通常国会:速記録

厚生年金保険の保険給付及び保険料の納付の特例等に関する法律に対する質疑


  • 消えた年金/救済 被害者の立場で/参院厚労委 小池議員が要求<(関連記事)
2009年4月23日(木)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 議論聞いていると、何かこれが通るともう不正がまかり通ってとんでもないことになるというような感じなんですけど、私は日本の国民にもっと希望と信頼を持っていいんじゃないかなというように思いますし、とんでもないことやったのは、年金の保険料を流用したり記録とか給付で大きな穴空けた歴代政権じゃないですか。そこの反省を忘れちゃいけないと、それが原点だというふうに私はまず言います。

 だからこそ、安倍晋三首相はこの問題の対応のときに何て言ったかというと、国民の側に立って対応すると、社会保険庁ではなくて第三者委員会をつくって、領収書等の証拠がなくても申し立てた方のお気持ちに立ちながら公正に判断すると答弁したわけで、これがまさに私は原点だと。これにどうこたえるかというのが今立法府に問われているんだろうというふうに思うんです。

 現実に今何が起こっているかということで、総務省にお聞きしますが、実際却下されてしまった東京の厚生年金事案二百六十九、今日資料をお配りしましたけど、ちょっとかいつまんで説明してください。

政府参考人(関有一君)

 本事案は、申立人が株式会社Aにおいて継続勤務していた期間のうち、途中の期間が厚生年金保険の被保険者期間として確認できないことに対する申立てでございます。この案件につきまして、平成二十年六月二十四日に記録の訂正は不要である旨の決定を行っております。

 この記録の訂正が不要であると判断した理由でございますけれども、厚生年金保険料が事業主により控除されていたことを確認できる資料や推認できる周辺事情が見当たらなかった、さらにヒアリング、御本人からお伺いしましたけれども、新たな事情も認められなかったものであるというものでございます。

小池晃君

 でも、これ見ていただければ分かるんですが、認定されているわけですよ、適用事業所で消えた期間も働いていたことは。しかも、消えている期間の前後はその事業所での加入期間がこれはあるわけで。もちろん、本人は保険料を納付されていたとはっきり主張されているわけで、こういう事案でなぜ却下なのかと、私は大変疑問なんですね。

 しかも、今、何か新しい材料がなかったとおっしゃるけれども、例えばこの事業所では、この時期に社長ともう一人の人を除いてすべての労働者の年金資格が喪失しているという事実がある。総務省はこれは退職されたんじゃないかと言うんだけれども、これは働いていた写真まで本人は提示をしているわけですよ、皆さんの。

 しかも、この申請者は、資格喪失していたはずの期間に病気になった、どこの病院に入院したかも覚えていると。入院したことによって自分が定時制高校の卒業が遅れるので、夏休みに一生懸命勉強したと、ここまで覚えている。お母さんは、健康保険に入っていて良かったね、だからちゃんと入院できたねと、そういうことを言っている。当時は国民健康保険ありませんから、年金と医療というのは一緒に払っていることが多いわけで。さっき、マイナスがなくてプラス要素があればいいと言ったけれども、こういうプラス要素いろいろあるじゃないですか。

 私は、こういう事情を考慮すれば、これは事業主は様々な事情で便宜的に喪失手続を取ったのではないかということが類推される事例で、被害者の立場に立ってプラス要素をすくい上げれば、私はこういうのは記録が回復されてしかるべきだというふうに思うんですが、保険料を控除されたことが証明できないから駄目だというわけですよ。

 これ、結局、こういうことで却下したらば、私は記録の回復なんてほとんど不可能じゃないかと思いますが、どうですか。

政府参考人(関有一君)

 今議員からお話がありましたように、二十九年の九月末といいますか十月の時点で、この会社は八名おられたようでございます。十月の時点で六名の方の資格喪失届が社会保険庁になされております。そのうち四名の方は、この申立人ではございません、残り五人のうちの四名の方は数か月後に別の会社に就職をされているということが確認をできました。もう一人の方については、再就職されたのかどうかということは、よく事情は分かりません。

 この御本人は継続して勤務していたんだということなんですけれども、資格喪失届が出ていると。そうすると、この四名の方、お辞めになって別の会社に移られた方と同じような、同じと言ったらいけません、何か事業主にとって、資格喪失届をするということですから、この四名の方と全く同じとは申し上げませんけれども、何か事情があって資格喪失届がなされたのではないかというふうに考えられるわけでございます。

 それで、三十年の十二月以降はまた資格を取得しておりまして保険料が徴収されているわけですけれども、二十九年十月から三十年十二月の間について保険料がどうなったかということが分からなかったということでございます。

小池晃君

 だから、その四人は別の会社に就職したんだから、それは当然別の事業所に行っているわけで、今のは何の説明にもなっていないんですよ。

 この方は働いていたと、ちゃんと。だって、この事案というのを認定しているじゃないですか、第三者委員会で、その期間はずっと働いていたんだと。ところが、なぜか脱退して、また加入していると。おかしいじゃないかというふうに、私はこれを見たら、どう考えたっておかしいなと。それを何か、別の要素で、わざわざ違うんだとマイナス要素をあら探ししているようにしか私には聞こえないですよ。

 やっぱりこういう事例は私は今の法律の精神でいったって本当は認定されてしかるべきだというふうに思うんですが、実態としては、今、第三者機関でこういうのは切り捨てられているんですね。

 そこで提案者にお伺いしたいんですけれども、立法者の意思としては、こうしたケースについてはこれはやっぱり救済していく方向で進むべきなんだと、今回の法案というのはそういったことにつながっていくものなんだというふうに考えていらっしゃるのかどうか、御答弁願いたい。

蓮舫君

 御指摘の申立人は、私どもの会議にも来てくださって、様々なお話をしていただきました。

 確かに、保険料を控除した物証はお持ちではないんですけれども、写真も持っているし、五十年前の入院の記憶ですとか、あるいは当時の勤務状況ですとか、大変明確で、しかも同僚の証言もある。しかも、同僚はその当時働いていた方がおられるのに、この方だけが資格喪失されている。第三者委員会は恐らくこの資格喪失されている物証を見て判断をされたと推測されるんですが、ただ、ちょっと私どもの立場としましては、今この本改正案を審議している立場なので、個別具体的にどうだとは言えませんが、発議者としてはこうした方たちが今非あっせんとなっていることは非常に痛ましく思っております。是非、こうした方たちを一人でも多く救済するために、本改正案を一日でも早く上げていただきたいな、お認めいただきたいなと思います。

小池晃君

 第三者委員会が保険料の納付の証明にこだわる余りに十分に救済が進んでいないという現状は、本当にこれは党派を超えて解決しなきゃいけない問題だというふうに思いますし、趣旨はいいんだという発言が与党の方からも相次いだわけで、是非これは建設的な方向で議論を進めるべきだということを申し上げておきたいというふうに思います。

 関連して、昨年九月の当委員会で、第三者委員会で記録改ざんされた十七事案について、その事業所で同様の処理がされたと思われる同僚についてはどうなっているんだと、調査していただきたいというふうに言いました。結果、どうなっていますか。

政府参考人(石井博史君)

 お答え申し上げます。

 今委員がおっしゃった件数、十七事案というふうにおっしゃったかと思いますけれども、私どもの方でその事務処理を進めておりますのは十六事案、あっせんの対象となった十六事案で、それに関する申立人の同僚百七十名について今救済の手続を進めているわけでございます。

 二十二日時点での対応状況でございますけれども、住所が御不明であるというようなことで、これは再三にわたって御連絡を取ろうとしているんですが取られないということで、そういう状態にあるものが三十件でございますけれども、そういうものを除いて、御本人又は御家族に対して既に説明を行っているものが百四十件、残りのすべてでございます。

 このうち、年金記録にかかわります確認申立書、これを御提出していただいているものが百二十一件というふうになっています。ここから先は少し細かな話になりますが、簡単に申し上げますと、提出をいただいて更に作業を進めまして記録訂正に至ったものが九十六件、それから第三者委員会の方に御送付申し上げたものが十五件、それから送付手続をなお行っているというものが七件、そして最後、確認申立書のお取下げの御要請があったもの、お受けしたものが三件と、これトータルでございます。

小池晃君

 かなり回復につながっているわけですね。それで、これは去年取り上げたときにはこの百七十だったわけですが、それ以降もこういう同じ事業所の中で同様のというケースはいっぱい出てきているわけで、これは処理終わっていますか。

政府参考人(石井博史君)

 お答え申し上げます。

 本年三月末現在において、第三者委員会においてあっせんがなされて、それにかかわる申立人の同僚ということで救済の対象となるべき者、これの言わば割り出しと、それから割り出せた方についてはその連絡を取らせていただいて、そして必要な御案内申し上げつつ事務を進めております。百七十事案、そのうち十六事案、これはそういうことで進めておりますので、それを除いて百五十四事案ですね、これを内容に応じて割り出し作業を進めておるという状況になっております。

小池晃君

 大臣、まだ経過途中だというんですけど、これ迅速にやっていただきたいのと、やっぱり期限区切ってきちっとこういう仕事をやっていただきたいと思うんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(舛添要一君)

 できるだけ迅速にということはそれはやりたいと思います。ただ、もうこれは本当、過去の記録一人一人いろんなデータから確実にしていかないといけないので、若干そこは時間掛かるということをお認めいただいて、御要望のようにできるだけ早くやりたいと思います。

小池晃君

 続いて、保険料の徴収の問題についてお聞きしたいんですけれども、経済危機の中で医療や年金の保険料の徴収、滞納事業所が今増えております。滞納があってもこれ一律に機械的に対応するんじゃなくて、やっぱり個別の事情を十分に踏まえながら納付をしてもらう、そういう対応が求められると思うんですが、大臣、全国の社会保険事務所にはどのような指導をされていますか。

国務大臣(舛添要一君)

 それぞれの事情がありますので、きめ細やかに事情をよく聞いて様々な、例えば分割納付をするとかいろんな手がありますから、そういうことも説明してきめ細やかに対応しろと、こういうことを徴収事務については指示をいたしております。

小池晃君

 そうであればいいんですが、現場を見ると実態いろいろあるわけですね。

 先日、こういう相談がありました。能登観光自動車という観光タクシーなどやっている石川県穴水町の会社です。能登地震があって、それまでは順調だったんだけれども、それ以降かなり資金繰りが大変になっていると。社会保険料について、指定期限には遅れ気味だけれども、何とか遅れ遅れで払ってきたという会社です。

 まず、ちょっと去年の問題なんですが、年度末に当たる二月分の納付を強く迫られて、資金繰りの関係で四月二十日の指定期日に間に合わなかったと。一週間後の四月二十八日に銀行口座を差し押さえられた。足りない分は先日付小切手を差し入れるということで、ゴールデンウイーク明けに払ったと。これ、観光タクシーだからやっぱりゴールデンウイークに実入りがあるわけですね。だから、それがないとなかなか払えないということでこういう事情になったというんですが、事情を把握して踏まえてやると言うけれども、こういう実情の会社でも指定期日を過ぎたらわずか一週間の猶予だけで差押えと、こういうやり方で社会保険庁はやっているんですか、どうですか。

政府参考人(石井博史君)

 お答え申し上げます。

 保険料を納付したくても経営状況が非常に厳しいということで滞納状態が発生している、そういう事業所に対しては、私どもも、今大臣の方から申し上げましたように、滞納が発生したからといって直ちに強制的な処分の手続に入るということではなくて、やはりきちんと御事情を聞いて、そして払える要するにその状況というのがどうなのかというのを踏まえて、いろんな方法を用いていきたいというふうに考えています。

 それで、今御紹介のあった事業所の件ですが、私どもも若干調べさせていただきました。

小池晃君

 それは去年の。

政府参考人(石井博史君)

 ええ、去年の状況も調べさせていただいたところ、余り端的に単純化してはいけないんですけれど、十九年度一か年を見ますと、納期内に御納入いただいたのが三月分だけと、あと九か月が、督促状でお願いしたんですが、そこでお示しした納期にも届かないというようなことで、これは御事情もあったんでしょうけれども、再三にわたって、払いましょう、じゃお願いします、しかし直前になって守れません、ごめんなさいというような状態が一年続いたという状況が私どもなりに把握しております。

 そういうようなことで一定の配慮してきたんだけれども、昨年の場合は四月になって、その直前になしていた御先方の約束、これ守れないというお申出があったので、やむなく差押えの予告通知を送付して、御来所いただければ相談の余地はあるかもしれませんねということを申し上げましたけれども、それもできなかったというようなことで、一定の配慮をさせていただいた上での措置ではなかったかというふうに思っております。

小池晃君

 ところが、一定の措置って、一週間後に差し押さえるって、一定の措置とは言えないですよ。今年も二月分の納付が強く迫られていて、どうしても資金繰り付かないから、二月分の社会保険料四十万円、これを四月末までに半分、ゴールデンウイーク明けに半分、これで払うと申し入れたんだけれども駄目だと。先日付小切手担保に納めるのでお願いしたいと言ったけれども、駄目だと。昨年も差し押さえられているから、二回やられたらもうこれは銀行取引停止になるというふうに相談したら、仕方がないですねと言われたというんですね。

 こういうふうに、会社つぶしたらもう大変なことになるということで言っているときに、倒産に追い込んでも構わないんだと、こういう対応でいいんですか。

政府参考人(石井博史君)

 今年の状況についても、この事業所について私どもなりに把握させていただきました。それで、やはり厳しい状況が続いていると、それを踏まえて、私ども、一月、二月、それから四月に入っても、丁寧に対応せよという示達をしているわけでございますが、今委員の方からちょっとお話ございましたけれども、このままでは倒産してしまうという御先方のお話に対して、きちっとそれを受け止めるようなちょっと対応ができなかったといううらみがあったやに承知しておりますが、現時点では、お申入れをいただいた分割納付、連休明けでの残り半分のお支払、これでもって対応させていただくということで両者合意ということになっているというふうに承知しております。

 以後、気を付けていきたいというふうに思っております。

小池晃君

 だって、これだって、私が国会で取り上げるぞ、質問するぞと言ったら、翌日になったら分割納付でいいよと。これ偶然とは思えないんですよ。

 こんなことやったら、全部国会で追及していかないとこういうひどい仕打ちがまかり通るということになるんで、大臣、実態こうですから、きちっとここのところは対応させていただきたい。簡単にお願いします。

国務大臣(舛添要一君)

 ひどい仕打ちはいけませんが、逆のことを言うと、私も会社経営していましたから、私が経営者なら、従業員に頼んで、給料一割連休後になるけど待ってくれ。それから、取引先ありますね。運輸会社だったら、ガソリンスタンドとやっていますよ、支払ちょっと待ってくれ。こういうことだってやれることなので、私はむしろこの経営者に会って直接、あなたどういう経営やったんですかということを聞きたいぐらい。

 というのは、公租公課については、今言ったようなことをやりながら、歯食いしばって、まず税金、まず保険料を払っているところがあるんです。ですから、そういう面も考えて実態をよく見たいと思いますが、ひどい仕打ちは、それ、していることがあればいけません。それは、(発言する者あり)だけど、やっぱり小池さんも、こういう私が言ったような面をおっしゃるとバランスの取れた質問になると思います。

小池晃君

 いや、私はこういうことで倒産に追い込んで仕方がないですねという対応は許されないと言っているんですよ。だから、それ、やめるって言ったんだから、素直に認めなさいよ。

 最後に、今日四時から臨床研修制度の見直しをめぐって部会が開かれると。これで疑問の声が今、医療界からたくさん上がっているんです。簡単に、パブリックコメント、四月十七日まで募集しましたが、件数は何件か簡単に答えてください。

政府参考人(外口崇君)

 パブリックコメントの件数は、これは団体の意見や連名で提出された意見は一件と数えて集計しているところでありますが、総数千二百四十一件であります。

小池晃君

 これだけ多数の声が寄せられているんです、大臣。そしてしかも、昨日私が厚労省に聞いたら、数は把握してないと言った。こういう状況で、四時からこの省令の改正の結論をたった二時間で出してしまうと。こんなこと、私、許されないと思いますよ。今、医療界を挙げて慎重に検討すべきだという声が上がっているときに、私は、これ今日結論出すべきじゃない、しっかりこのパブリックコメントも踏まえて検討すべきだと思いますが、大臣、いかがですか。結論出さないでいただきたい。

国務大臣(舛添要一君)

 今日で決まるわけじゃないですから、きちんと議論をしていただいて、最終的にどういうふうにするのかということは、検討した上で結論を出したいと思っております。

小池晃君

 そもそも、医師不足の解消を研修医の強制的な配置で行うということは許されないし、そこには良い医師を育てるという一番大事な観点が私は欠落していると思います。

 臨床研修の見直し、特に都道府県別のこの上限設定は撤回すべきだと、パブリックコメントを通過儀礼にするようなやり方は絶対に許されないということを申し上げて、質問を終わります。

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