2010年174通常国会:速記録

厚生労働委員会


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2010年6月1日(火)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 五月十一日のこの委員会で、私、入院中の患者が他院に受診した場合の診療報酬の削減と投薬制限の問題について質問をいたしまして、これは政府の方も問題点を認められました。長妻大臣も、これはよく問題点を調査していきたいというふうに答えたんですけれども、その後もいろんな情報が寄せられております。

 この問題について、例えば、扱いが限定されているような薬については外来側の医療機関の処方せんでよいというふうに政府は答弁もしたし説明をしてきたんですけれども、少なくとも私どもの得ている情報では、北海道、東北、四国、九州の厚生局では、これは本省に問い合わせ中ですから答えられないという対応をしております。政府の答弁のような対応をしているところは一つもありません。それから、青森の事務所に至っては、これは分からないので基金に聞いてくれというような対応をしているというんですね。

 大変現場は混乱しておりますし、政府もこの診療報酬の改定の問題点は認めておられるわけだから、私は、やっぱりこれ、直ちにこの改定は撤回、少なくとも凍結をして現場の混乱を抑えるという対応を取る必要があると思うんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(長妻昭君)

 これについては前回も御質問をいただいたところでありますけれども、今の薬剤の処方は原則として入院医療機関で行うこととしているという、この出来高病棟に対する措置については、これは本当にいろいろな御指摘がございますので、中医協で六月か、若干ちょっと延びるかもしれませんけれども、そのぐらいの時期をめどにこの規定をなくしていく方向で検討をしていきたいと思っております。

小池晃君

 規定なくすということは私重要な答弁だというふうに思いますが、六月まで、六月、あとどのくらいか分かりませんが、直ちにやっぱり、そうであればこれはいったん凍結をするという手だてを政府の方で打っていただきたいということは重ねて申し上げたいと思いますが、中医協も含めて、これは規定をなくすということで是非やっていただきたいと思います。

 それから、医療関連業務の派遣問題をちょっと取り上げたいんですけれども、二月二十三日の民主党の厚生労働省政策会議で、労働者派遣法の専門二十六業務に医師などの医療関連専門職を加えるべきだという意見が出されておりまして、そのときの厚生労働省側の発言は士業についての適用除外については触れているんですけれども、医療関係専門職の派遣の是非については厚生労働省側の発言は出ておりませんでした。

 そこで、安定局長に、改めて医療関連業務に派遣を禁止している理由を簡潔に御説明ください。

政府参考人(森山寛君)

 お答え申し上げます。

 医療関係業務への派遣を原則として禁止している理由でございますけれども、第一に、病院等が事前に面接などができない派遣労働者を受け入れますと、医師や看護師など連携して患者の治療に当たるチーム医療の構成員に派遣会社の都合によって差し替えられる者が含まれることになります。そのためにお互いの能力把握や意思疎通が十分になされずチーム医療に支障が生ずるおそれが強いこと。第二に、生命や身体にかかわる医療関連業務につきましては、その業務の適正の確保につきまして慎重を期する必要があることということでございます。

小池晃君

 私は今の禁止理由は妥当なものだと思うんですが、与党の中に一部ではあれ医療関連業務を専門業務に加えろという解禁論があることに危惧を覚えております。

 大臣にお聞きしますが、医療関連業務を適用除外とする立場、大臣、変わりありませんか。

国務大臣(長妻昭君)

 私としては、医療関連業務については労働者派遣の禁止業務でありますので、その考えを変えるつもりというのは現時点ではありません。

小池晃君

 もう現時点とは言わず、これはしっかりそういう立場でやっていただきたいと思うんですが。

 医療関連業務については、これは原則は適用除外というふうにしながら、二〇〇三年に社会福祉施設における医療関連業務が解禁をされまして、二〇〇四年には医療機関の医師、看護師について紹介予定派遣に限っては解禁をされたという経過がございます。

 そこで、厚生労働省に、この一部解禁以後、医療関連業務へはどれだけ労働者派遣されているのか。それから、医療関連派遣における派遣法違反は何件で何人あったのか、お答えください。

政府参考人(森山寛君)

 今先生御指摘のように、この医療派遣業務につきましては、例外的に紹介予定派遣等の形態で医療関係業務の派遣を行うことができるようになっていますけれども、この医療関連業務に従事する派遣労働者数については統計は取っていないところでございます。

 一方、医療関連業務を含めまして禁止業務につきまして労働者派遣を行ったとして指導した件数は、平成二十年度において五十九件でございました。このうち医療関連業務につきましては、紹介予定派遣と称して看護師の労働者派遣を行っていましたけれども、実際には紹介予定派遣ではなかったなどによりまして九件指導を行っているところでございます。

小池晃君

 これは、二〇〇三年の医療分野における規制改革に関する検討会で、医療関連業務の派遣、一部解禁をするときに、これは医療事故などの懸念が強く出されたんですね。その場合に、実際に行われた場合の検証ということを求めていたという経過もございます。しかし、今の答弁にあるように、一部解禁以後、医療関連業務への派遣労働者の数も把握がされていないということであります。

 大臣、これはこの二〇〇三年の議論に照らしても、やはり直ちに実態を把握するということが必要ではないかと思うんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(長妻昭君)

 その実態把握というのは、これはもう厚生労働行政で最も重要なものの一つだと申し上げておりますので、この今の労働者派遣、例外が医療関係業務については大きく三つ認められております。紹介予定派遣、そして、病院、診療所以外の施設、例えば特養などでは認められております。あるいは都道府県が必要と認めた病院等における医師の業務と。こういう大きく三つのカテゴリーがありますけれども、それぞれ具体的に何人程度の方がそこにおられるのかということについて、全件把握できるかどうかも含めて、あるいはサンプル的な把握になるのかどうかも含めて検討いたしますが、いずれにしても実態把握に努めていきたいと思います。

小池晃君

 きちっと実態を把握をしていただいて、専門業務は、今派遣法の審議、衆議院でも行われていますが、より厳格に絞り込むべきだというふうに私ども考えておりますし、新たな業務への拡大などということは到底許されないということも申し上げておきたいと思います。

 それから、年金についてお聞きしたいんですが、障害年金、遺族年金の支給要件についてです。

 これは一九八五年に特例が設けられまして、直近一年以上の保険料を納めていれば、受給要件を満たしていなくても、老齢年金のですね、支給されると。この特例は二〇一六年度まで延長されているわけであります。ただ、この特例の対象は六十五歳までということになっています。一方、二〇〇四年の年金改正で、厚生年金適用事業所に勤務する方については七十歳まで厚生年金への加入が義務付けられました。

 そこでお聞きをしたいのは、直近一年以上まじめに年金保険料を払ってきた六十五歳以上七十歳未満の、いわゆる年金受給権を有していないような、そういう厚生年金の被保険者が例えば死亡した場合、あるいは障害年金受給できる程度の傷病を負ったりした場合、遺族年金や障害年金は受給できるんでしょうか、大臣。

国務大臣(長妻昭君)

 遺族年金、障害年金については受給要件があって、過去の三分の二の期間以上払っている又は直近一年払っているという要件でありますが、これについては、六十五歳以上七十歳未満の方については直近一年要件というのはございませんで、三分の二要件のみであります。

小池晃君

 この支給要件の特例が六十五歳未満の方にしか対象になっていないということで、実際に起こっているケースを紹介したいんですけれども、心筋梗塞のために六十七歳で亡くなった方、これ実際の例です。運転手をされていた方なんですが、最近十年以上はもうずっと欠かさず保険料を払っていたとおっしゃるんです。しかし、死亡時の加入期間の合計が二十四年六か月、受給権得るには六か月足りないのでこの妻は遺族年金を受け取れなかったんですね。あとわずか六か月だったのにと。厚生年金というのは、受給年限満たしていなくても、いざとなれば遺族年金、障害年金は出るということで思っていたんだけれども、これも出ないのかということで泣いておられるんですね。

 こういう例が私どものところにも幾つも寄せられておりまして、これ、任意加入ならまだしも、七十歳まで厚生年金強制加入なわけでありまして、私は、まじめに払ってきたとしても、六十五歳未満と六十五歳以上で区別があるというのはおかしいと思うんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(長妻昭君)

 まず、これ経緯がございまして、昭和六十年改正で基礎年金が導入されまして、そのときに納付要件をいわゆる三分の二要件に統一をいたしました。そのときに、旧国民年金では直近一年要件というのが国民年金のみに認められておりましたが、三分の二要件に統一するということで、直近一年要件をこれはもう廃止をしていこうという議論もありましたけれども、これは不利益変更に当たるということで、これについては例外的に延長しようということで、かつ厚生年金にも認めると、こういう特例的な形で今日まで来ているということであります。そして、平成十二年度改正で六十五歳から七十歳まで被保険者資格が引き上げられるということになりまして、それについて直近一年要件をそこまで拡大しなかったという、こういう経緯はございますが、ただ、様々な、今二十五年ルールの問題にもかかわるお話でもございますし、あるいは障害年金、遺族年金の支給要件がばらつきがあるというお話でもあります。

 これについては、新しい年金制度を検討する過程で、新制度でそういう論点についても議論をしていきたいと考えております。

小池晃君

 これはやっぱり、年金の保険料の徴収には熱心だけれども、受給権を保障するということに非常に無頓着でやってきた今までの政治の反映だというふうにも私は思うんです。

 やっぱりこういう矛盾を解決する、最低加入期間を短縮するのはもちろんですけれども、こういうやっぱり制度の矛盾は年金抜本改正を待たずに、やれることはとにかく着手していくということで私は対応を求めたいというふうに思います。

 そして、最後に泉南アスベスト訴訟についてお伺いをします。

 五月十九日、大阪地裁は大阪泉南アスベスト国家賠償訴訟について、国が規制権限行使を怠ったことを明確に認める判決を下しました。これは、病気の苦しみと命懸けで闘いながら訴訟にも取り組んできた原告の皆さんは控訴断念を訴え続けてこられたわけです。

 長妻大臣は関係閣僚会合で控訴を断念したいと発言したんだと、これは小沢環境大臣が記者団に語っておりまして、大きく報道もされております。小沢環境大臣もこれを支持したというふうに言われたわけです。この訴訟にかかわる言わば主務大臣二人が控訴断念を主張したという、これは重いと思うんですね。ところが、昨日の夜の関係閣僚会合で控訴を決めたというふうに報道されています。

 私は、この関係主務大臣が断念すべきだと主張しているにもかかわらず、これを控訴するとは何たることかというふうに思いますよ。生きているうちに救済をというのが原告団の皆さんの声なんですね。命を大切にするというのが民主党鳩山政権であれば、私はこんな形で更に苦しみを長引かせるようなことは絶対にすべきでないと。

 長妻大臣、長妻大臣は断念すべきだと言ったんです。命懸けでこの控訴を撤回すると、そういう立場で頑張るべきじゃありませんか。

国務大臣(長妻昭君)

 これについては、昨晩関係閣僚集まって議論をして、内閣全体でこれは議論をして決定をする案件であるということでありまして、様々な意見が出ましたが、最後は、いろいろな法的な論点も煮詰まっていない部分があるということ等にかんがみて控訴をするという結論に政府全体としてなったということであります。

小池晃君

 法的な論点が煮詰まっていないから控訴するというのはおかしいですよ。それは、控訴断念をして原告の皆さんと話合いをして解決をしていくというのが政治の責任でしょう。私は今のは納得できません。

 大阪の泉南地域というのは、ほかに例を見ないほど零細な工場群がもう石綿紡織産業の一大集積地を形成した。当時のお話を聞くと、もう工場の中は真っ白になっていて前も見えないような中で作業をしたと、そういう証言があるわけです。その危険性は戦前から内務省保険医の調査でも指摘をされていた。

 そして、今日私お配りしたのは、昭和六十二年に岸和田の労働基準監督署が策定をした石綿紡織業における特別監督指導計画。これを見ますと、昭和五十年にいわゆる新特化則というので規制を強めたけれども、真ん中辺りからですね、ところが、濃密な行政指導にもかかわらず云々、作業環境改善テンポは遅く、労働衛生上問題を抱えながら新規のじん肺有所見者も後を絶たない状況にあると、こういうふうに現場の労働基準監督署も昭和五十年の規制を強めた後でもまだまだ広がっているということを指摘をしているわけですね。

 私は、こういう形で政府が危険性を知りながら規制権限を行使しなかった責任というのは、これはもう明らかだというふうに思います。この責任を大臣は認めたからこそ、控訴断念すべきだというふうに主張もされたんだと思う。

 私、この問題についての政府の責任というのは明らかだと思いますが、大臣、いかがですか。

国務大臣(長妻昭君)

 これについては、先ほど申し上げましたように、この大阪地裁の判決で政府の責任ということについて幾つかの点を指摘をされているところであります。ただ、それぞれについて法的に整理が必要な部分もあるということが議論をされまして、最終的に控訴をするということになったわけであります。

 いずれにいたしましても、本当にそこの現場で働いておられた方々の苦しみというのは、これはもう大変なものがあるというふうに私どもも認識をしておりますので、控訴をしてそういう論点をきちっと詰めた上で対応を考えていきたいというふうに思います。

小池晃君

 苦しみが分かっているんだったら控訴すべきじゃないでしょう。今もどんどんどんどん原告の方からも亡くなっている方出ているわけですよね。アスベストというのは本当に後になって出てきて、じわじわじわじわ進んで、そして発症すれば一気に悪くなっていく。その苦しみを私も医療機関で実際医者として見てきていますから、本当につらい病気ですよ。こういうことを、苦しみながらやっている人たちに対して、控訴していたずらに長引かせるというのはやめるべきですよ。そして、控訴せずに、今論点あるんだったら話し合うべきじゃないですか。私は、こういう対応は到底国民の納得は得られないし、命を守るという政権のやることではないというふうに思います。こういう形のことは許されない。

 もう一回、断固としてこれは控訴を断念しろと、撤回しろということを改めて求めて、質問を終わります。

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