2009年171通常国会:速記録

国民年金法改正案に対する質疑


  • 厚労行政が問われる/小池議員 割引郵便の悪用追及<(関連記事)
2009年6月2日(火)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 五年前の年金制度改革のときは、政府・与党が百年安心だというふうに大宣伝をされました。今回、財政検証を行われていますが、やっぱり経済前提が余りに現実と遊離しているのじゃないかという指摘がありました。経済成長率、物価上昇率、賃金上昇率、この十年間およそ達成したことのないような数字が並んでいる。例えば国民年金納付率は、これは八〇%という設定になっているんですが、現実には二月までの納付率が六一・五%なわけです。そもそも国民年金は、九七年以降、納付率が八割になったことは一度もありません。〇二年以降は六五%前後の数字で、更に今下がってきている。

 資料でお配りしたものは、これは政府に計算してもらったんですが、ちょっとこれで答えてほしいんですけれども、政府が試算している基本ケースの場合で、国民年金保険料の納付率を仮に六五%としてマクロ経済スライドの適用を続けた場合に、一九七四年生まれの方の六十五歳時点及び八十五歳時点の所得代替率はどうなるでしょうか。簡潔にお答えください。

政府参考人(渡邉芳樹君)

 今先生お示しになられておりますこの資料にございますように、所得代替率は、新規裁定のところで申し上げておりますが、別途の資料でもお示ししておりますように、年々お年を召される中で、既裁定者の中では既裁定物価スライド制度というんですが、それによって賃金との格差もありますので、少しずつ減ってまいります。

 そういう中で見てまいりましたときの、先ほど、今御指示ございましたのは、六五%の収納率の場合に、六十五歳時点では四九・二から四九・三五%の所得代替率、基本ケースと、こういうような話であったが、その後七十五歳になったときには、そうした既裁定者の物価スライドルールというものに基づきまして少しずつ減ってまいりまして四二・五から四二・六%、八十五歳の時点になると三九・四から三九・五%程度になる、こういう計算になるところでございます。

小池晃君

 要するに、国民年金納付率が現状よりもちょっと良くなっても、六五%のままでも、政府が〇四年改正で約束をしていた支給開始時点の五〇%を切るだけではなくて、受給開始後二十年後には四〇%を切るということが明らかになるわけであります。

 更に聞きますが、今回の財政再計算の経済指標では名目賃金上昇率二・五%としていますけれども、過去十年間にそういったことは一度でもあったでしょうか。

政府参考人(渡邉芳樹君)

 過去十年というのは、委員御承知のとおり、大変賃金上昇率が低いないし減った、そうした時期でございました。したがって、名目でいって二・五%を上回ることはなかったのでございますが、一点だけ補足させていただきますと、今後長期にわたる経済のモデルを考えて財政検証をしておりますが、この二・五%の内訳は、物価上昇率一%を除いてみますと、一人当たりの実質賃金上昇率は〇・八%であって、その程度については余り高い賃金上昇率だとは思われませんが、今後の二十一世紀の社会の中では被用者数の変化率は年々マイナス〇・七%ということが見積もられますので、そうした労働力の減少に伴って賃金に対する影響がプラスに働くということなしにすべて資本の側に回ってしまうというようなことではないのではないかという専門家のモデルの判定により、この〇・七を〇・八に上乗せした数字が二・五%ということでございます。これまでの人口上昇局面における賃金上昇率とは同一に評価できないものと考えております。

小池晃君

 未来のことはともかく、当面のことでいうと、じゃどうかというと、今回の再計算のバックデータ、今日、資料の二枚目にお配りをしましたけれども、これは今年の名目賃金上昇率がプラス〇・一%になっていますし、来年は三・四%というふうに急上昇するという、こういう数字で計算されているんですね。一体ちょっとどこの国の話かなという感じがするわけですが、未来の数字も私今の説明では納得できないんですけれども、今年の数字も実態と違うわけですし、来年こんなに急に良くなるなんというのは、これはそういうふうに考えている人は日本に余りいないんじゃないかと思うんですけれども、こういう数字に何か根拠があるんでしょうか。どういう根拠でこれを年金財源の根拠にしているんですか。

政府参考人(渡邉芳樹君)

 こうした数値につきましては、経済、金融の専門家に集まっていただきまして、専門委員会を構成して議論をしたわけですが、先ほど申し上げましたような二〇一六年以降と申しますか、そういう超長期の問題につきましての経済モデルを開発すると同時に、この足下につきましては内閣府における当面の経済の見通しというものを置くということが政府として取り得る最善の道ではないかということで、専門の先生方にも御理解賜り、そうした結論を得てこういう数値表ができておりますが、検証というのはやはり長い、長期にわたる年金財政のモデルというものをどう見積もるかということでございますので、当面の単年度、単年度の数字についてはそういう目で見ていただきたいというふうに考えております。

小池晃君

 もう当面の数字も長い数字もそういう目で見れないんですよね、こういう数字出されるとね。

 大臣にお聞きしますけれども、もちろん経済は好転してもらわなきゃいけない、しなきゃいけない、それから納付率だって上がらなきゃいけないですよ。このままでいいなんて私は思いません。そういう方向でやっぱり行政が努力するというのは、これは当然のことだというふうに思うんですけれども、ただ、その年金財政の根拠となる数字というのは願望とか決意でやっちゃいけないと思うんです。やっぱりリアルな実態、きちっと根拠のある数字でなければ、これ、やっぱり年金に対する国民の信頼は逆に揺らぐことになるんじゃないかと私は思うんですね。

 大臣は、今回のこの前回の五年前よりむしろ好転している指標を使って計算をしているわけですが、この今回の経済指標、妥当なものだというふうに大臣は考えますか、これで国民の信頼が得られるというふうに思われますか。

国務大臣(舛添要一君)

 過去十年の経験をそのまま将来十年にプロットすることは不可能です。そして、我々は今全力で経済回復に努めている。したがって、そういう方向で努力する。それから、先ほど来申し上げておりますように、経済の専門家がそういう話をきちんとデータを持ってきてやった。それぞれの年について振り返ってみて検証すれば違うということはあると思いますけど、今から十年、二十年、三十年、低成長で続くとはとてもある意味で思いません。

 それから、何度も申し上げますけれども、国民年金の納付率一〇〇%であってしかるべきなんです。一人一人にとってみれば絶対得なんだから、民間のところでやるより、一・七倍になるんですから。こんな得なのを、それは、今払えないなら免除措置がありますから、払えるのに払えない人がいたら、是非、赤旗でもどんどんキャンペーン張って、払いなさいと、あなたにとってこんなに得なんですよと、労働者の皆さんどうですかと、こう言って助けてくださいよ。もうとにかく払わない方がいい、年金はやらない方がいい、やらない方がいいというのを皆さんがおっしゃることも一つ原因だと思いますから、是非一緒になって納付率を上げましょう。

小池晃君

 いや、だからそれはすり替えだというの。だって、要するに、そういう方向にしなきゃいけないというのは私もそうだと言ったんですよ。しかし、振り返ってどうだったというんじゃないんですよ。今年の数字だって八割で設定しているわけでしょう。ところが、六一・五%だというわけですよ。賃金上昇率だって、今年の数字がもうもはや足下から違うと。こういう数字出しておいて、年金信頼してください、払ってくださいと言ったって、払うという気持ちになりますかと聞いているんです。ならないんじゃないですか、こんなでたらめなやり方したら。

国務大臣(舛添要一君)

 だから、十年、二十年、三十年の見通しで言っている。

 それなら、合計特殊出生率一・二五か二六でやっていますよと。明日ぐらい発表になると思いますけれども、恐らく、今、集計していますけれども、一・三六より上ぐらい来るんじゃないですか。私が大臣になってから三年連続して合計特殊出生率は上がってきていますよ。ですから、上がってきているのにこんな低い数字、大臣、何だと、あなた悲観的過ぎるじゃないか、もっと高い数字言ったら国民はもっと安心するんだ、そういう反論やってみてくださいよ。

小池晃君

 いや、今のは反論になっていないって。出生率は、それは実態、私、これ、反映している数字、唯一認められる数字ですよ。あと、だって、納付率にしたって経済指標にしたって全然認められない数字。こういうものを出して信頼してくださいなんて言ったって信頼得られないんだということをやっぱり踏まえて、年金改革というのは議論していただきたいというふうに思います。

 それから、財源問題もあるんですが、ちょっとそれは次回に回したいと思います。

 障害者団体向けの割引郵便の悪用問題についてちょっと聞きたいんですが、これ、企画課の係長が逮捕されました。当時、障害保健福祉部の企画課というのは障害者自立支援法の企画立案をやっていたんです。障害者には応益負担だと重い負担を押し付けるような議論をしながら、一方で障害者向けの施策を悪用して暴利をむさぼるような団体の手助けをしていたとすれば、これ、極めて重大な問題だというふうに思います。

 厚生労働省も省内調査委員会を立ち上げている。で、官房長に聞きたいんですが、この凜の会という自称障害者団体、この案件は、これは前任者から逮捕された係長に対して引き継がれたという報道がありますけど、これは前任者についても調査をやったんですか。それから、引継ぎメモなどは調査したんですか。

政府参考人(大谷泰夫君)

 本件につきましては、五月の二十七日付けで省内の調査チームを発足をさせたところでございます。この省内調査チームでありますけれども、主にこういう身体障害者用の低料金の第三種郵便制度における障害者団体の証明事務について、申請の受付から審査、決裁、発番、押印、証明書の発行といった一連の手続が適正に運用されていたのかどうか、こういうことを調査するということで進めているわけでございます。

 今、お尋ねの件であります前任者の問題等でございますが、いろいろ報道等で私どもも承知はしておりますけれども、この事実関係につきましては、現在捜査当局で捜査が進められている最中であるということから、私どもとしてはそれについてのコメントは差し控えたいというふうに考えております。

小池晃君

 政治家の関与も報道されているんですが、この件に関して、当時国会議員から何らかの働きかけがあったのかどうか。これは、元障害保健福祉部長、元企画課長などにその点について問いただすなどの調査はやっていますか。

政府参考人(大谷泰夫君)

 お答え申し上げます。

 この調査チームの進め方でありますけれども、現時点では当時の担当者からの聴き取りというものは行っておりません。これは、捜査当局の捜査の状況を踏まえまして、私どもとしてもその事実の解明と併せて進めてまいりたいと思いますが、現時点ではそれは慎んでいるところでございます。

小池晃君

 何で慎んでいるの、おかしいじゃないの、省内にいるんだから。

 〇四年二月当時の障害保健福祉部長は、現在独立行政法人福祉医療機構理事の塩田幸雄氏、それから同じく企画課長は、現在雇用均等・児童家庭局長の村木厚子さん、今いらっしゃいます。

 村木さんは、〇四年二月ごろ、凜の会の代表が企画課を訪れたときに面会されたという事実はありますか。

政府参考人(村木厚子君)

 私、雇用均等・児童家庭局長として政府参考人として今日呼ばれておりますので、所管外の問題についてはお答えをすることができません。御容赦をいただきたいと存じます。

小池晃君

 私、その言い訳は通用しないと思うんですよ。これ、施策の中身、細目について聞いているんじゃないんです。今、厚生労働行政の公平性、公正性に社会の疑惑の目が向けられているんですよ。その当時、やっぱり担当者だった以上、あなたは厚生労働省の幹部としてこの疑問に対してちゃんと答える責任があると思います。もう一度答えてください。

政府参考人(村木厚子君)

 恐縮でございますが、重ねてお答えを申し上げます。

 雇用均等・児童家庭局長としては所管外の問題でございますので、お答えをする立場にございません。

小池晃君

 いや、駄目だって。だって、この障害者団体の証明書には企画課長だったあなたの公印が押されていたというのは、さっき答弁があったんですよ。ね、ちゃんと答えてくださいよ。これじゃ駄目ですよ。

政府参考人(村木厚子君)

 重ねて申し上げます。

 私の立場でお答えをできる状況でございません。立場でございません。

小池晃君

 官房長、当時の企画課長が、まさに公印が押されていたというわけですよ。ね。だったらば、それについて元課長である村木さんに、調査委員会としてその件について調査する、聴くというのは当然じゃないですか。何でやらないんですか。やってないんだったら、今そこで聴いてください、隣にいるんだから。村木さんが答えられないんだったら、あなたが答弁してくださいよ。そうでなきゃ駄目です。

 そこはちょっと止めていただきたい、私。ちょっと今相談していただいて、村木さんに聴けばいいじゃないですか、横にいるんだから。雇用均等・児童家庭局長としては答えられないというのであれば、調査委員会の官房長、あなたは責任で今聴いて、それで答弁してください。

委員長(辻泰弘君)

 まず大谷官房長。

政府参考人(大谷泰夫君)

 個々の担当者からの聴き取りというのは、今捜査当局の状況を踏まえて、これは追って検討をしていきたいと考えていまして、こういう場で行うことは今考えておりません。

小池晃君

 こういう場でって、国会で問われているんだからね、知っている人がそこにいるんだから、おかしいじゃないですか。

 委員長、これ止めてください。ちゃんと答えさせてください。

委員長(辻泰弘君)

 ちょっと速記を止めてください。

  〔速記中止〕

委員長(辻泰弘君)

 では速記を始めてください。

小池晃君

 大臣、今ちょっと横で聴いていただいて、事務次官は記者会見で、組織的に行われるとは理解し難いと述べているんですよね。

 しかし、この逮捕された係長というのは、〇四年の四月に異動したばかりの係長が、見ず知らずの相手に偽の稟議書を作成して、決裁途中の稟議書を外部に出す、これ全部個人で行ったなんて、私、到底これこそ理解し難いんですよ。組織的関与がなかったとは到底考えられないと思いますが、大臣、いかがですか。

国務大臣(舛添要一君)

 まず、一人係長が逮捕されたということは極めて遺憾であるということを申し上げた上で、今捜査当局による捜査が進んでいるところでありますので、これを見守りたいというふうに思っています。

 そして、私は冒頭から申し上げていますように、予断を持って、組織的かどうかということも分かりません。今は省を挙げて捜査当局にこれは全面的に協力をする。そして、捜査の結果、事実が確定したならば、それは厳正に対処をすると、そういう方針で今後とも貫いていきたいというふうに思っています。

 司直の手が入っているところでございますから、三権分立ということを考えても、今この場で私の方からコメントをすることは差し控える。ただ、この調査チームを我々はつくりましたから、我が省内の調査はきちっとやる。そして、今委員が御指摘のような組織的な関与ということがあれば、今大きな厚生労働行政の改革をやっているところでありますから、一切の容赦なく厳正に対処し、処分すべきは処分すると、そういう立場で臨みたいと思います。

 今は当局の捜査の結果をお待ちしたいと思っております。

小池晃君

 いや、おかしいですよ。省を挙げて調査するというのであれば、組織的関与があったかなかったか、当時の担当の上司に聴くのが一番のまず調査すべきことじゃないですか。それをやっていないというわけでしょう。その当人も、ここでね、国会でこうやって問いただしても答えないというわけですよ。

 大臣、これで省を挙げて調査しているって国民は思うと思いますか。省を挙げて事実を隠しているとしかこれは国民から見れば見えないじゃないですか。

国務大臣(舛添要一君)

 何度も申し上げますけれども、今捜査されているわけですから、当局によって、これに全面的に協力をする。そして、捜査当局、これがきちんと結論を出し、どういう事実であるかを確定する、それに基づいて対応する。そして我々は、人的なヒアリング、それから書類の精査含めて私たちのできる限りのことについては、それはやります。ただ、例えば、警察が入って全部資料を持っていっているわけですから。捜査当局に資料あるんですよ。そういうことも含めて、これはきちんとやる。今、調査チームを発足させたばかりですから、それはそれできちんとこれは対応して、しかるべきときにそれはどういう結果であるかということはお話しいたしますが、今まさに捜査の対象になっているわけですから、そのことは厳正に受け止めて結果を待たないといけないというふうに思っております。

小池晃君

 別に捜査資料を取ってこいなんて言っていないんですよ、一言も。調べられることを調べたらどうなんですかと言っているんですよ。当の御本人がいるんだから、そこに。なぜ聴かないのかと。これすらやらないっていうのは、私、本当に、やれることやっていますって言うけど、一番やんなきゃいけないこと、一番最初にやらなきゃいけないことを大臣やっていないじゃないですか。

 大臣、聴いたんですか、じゃ、村木さんに、あなたはそのことを知っていたのかと。聴いたんですか、聴いていないんですか。

国務大臣(舛添要一君)

 そういうことも含めて、こういう捜査が入っているときにその内容について国会の場で私は言明すべきではないというふうに思っております。

小池晃君

 おかしいと思います。やはり、国会は国会で独自の真相究明の責任があるんです。

 私、冒頭申し上げたように、この案件というのは、まさに厚生労働行政の公平性、公正性が問われているわけですよ。障害者の皆さんに大変な負担を押し付ける議論をする一方でこういうことをもしやっていたとしたら、これは重大なことだというふうに言っているわけで、私は今の答弁では全く納得できないし、今のやり取りを見た国民は、これは疑惑隠しを大臣先頭にやっているというふうにしか見えないというふうに思いますので、そのことを申し上げて、私の質問は終わります。

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