2009年171通常国会:速記録

国民年金法改正案に対する質疑


  • 年金財源/消費税増税やめよ/小池議員 国民負担増の実態示す<(関連記事)
2009年6月4日(木)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 今日の議論の中で、年金の財源で消費税、消費税って話が飛び交っているんですが、ちょっと待っていただきたいと思いますので、そういうことでちょっと今日は質問したいと。

 元々この基礎年金国庫負担二分の一引上げの安定した財源というのは、五年前のこの国会の議論では違う議論だったわけですよ。当時、坂口大臣は、与党税制改正大綱で、平成十六年からの年金課税の見直しによる増収分を財源として引上げに着手をして、平成十七年、十八年はいわゆる恒久的減税の定率減税の縮減、廃止と合わせてやるんだと、安定的な財源を確保するんだとおっしゃっていた。

 大臣、確認です。これはもうイエスかノーかで。事実ですからもう認めていただきたいんですが、当時は基礎年金国庫負担引上げのための安定した財源というのは年金課税の強化と定率減税の縮小、廃止を説明していた、間違いありませんね。

国務大臣(舛添要一君)

 これは正確を期した方がいいと思います。ちょっと読ましていただきますと、平成十六年度与党税制改正大綱において、年金課税の適正化により確保される財源は、ここからです、平成十六年度以降の基礎年金拠出金に対する国庫負担の割合の引上げに充てる、いいですか。それから、定率減税の縮減、廃止による増収分について、これにより平成十七年度以降の基礎年金拠出金に対する国庫負担割合の段階的な引上げに必要な安定した財源を確保すると、こういうふうになっております。

小池晃君

 いや、だから安定した財源というのはまさに定率減税と年金課税だったということじゃないですか。そういう文脈にしか読めませんよ。

 この年金課税の強化と定率減税の廃止によって基礎年金の国庫負担割合の引上げにどれだけ充当されたのか、お答えください。

政府参考人(渡邉芳樹君)

 平成十六年以降、年金課税の適正化、定率減税の縮減、廃止による増収分のうち、基礎年金国庫負担の引上げに充当された金額を単純に合計いたしますと、それぞれの分を単純に合計いたしますと四千九百五十六億円となります。

小池晃君

 年金課税の強化と定率減税の廃止で国税分だけで増税二兆八千四百億円なんですね。そのうち、実際にはその二割足らず、一七%しか充てられてないということなわけですよ。

 今度の法案では、これは二分の一引上げの安定した財源として先ほどから消費税の増税だというようなことをおっしゃる。一枚の証文を使って二度借金を取り立てるようなやり方というのは、私は国民的な理解は到底得られるものではないというふうに思うんです。この経過、大臣、これはどう見ても国会と国民に対する約束違反ということになるんじゃないですか。

国務大臣(舛添要一君)

 いや、約束違反じゃなくて、段階的な引上げに使うということで段階的な引上げに使ったわけですよ。そして、その上で安定的な財源をということで二十一年までにそれをやると。そして、それは基本的に消費税を中心としてやるということなんですが、この二年間は臨時的な財源措置をやる、こういうことになっているので、まあ一枚の証文で二枚とか裏切ったということにはならないと思いますね。

小池晃君

 いや、五年前にはそういう議論はなかったんです。まさにこれでやるんだと、これ大宣伝されてましたよ、選挙でも。私は、これは約束違反というのは言い過ぎだとしたら、じゃ言い換えます、二枚舌だというふうに申し上げたいと思います。

 やっぱり、消費税の増税というのは、年金暮らしの高齢者に対しても、あるいは子育て世代に対しても、派遣切りに遭った若者に対しても重くのしかかるわけだし、ちょっと今日議論したいのは、これ大企業の負担というのは逃れる税金ですから、やっぱり社会保障財源に対する事業主負担、企業負担の軽減ということになっていく、この問題をやっぱりしっかり見ておく必要があると思うんです。

 今回の国民年金法の改正案では国庫負担を二分の一に引き上げるわけですが、これによって厚生年金にかかわる基礎年金拠出金に占める事業主負担の額と割合は二分の一に引き上げる前の前年度と引上げ後の今年度で額としてどうか、割合どうか、局長、お答えください。

政府参考人(渡邉芳樹君)

 誤解のないということであれば、こういうことかと思います。厚生年金などの各制度が年金特別会計の基礎年金勘定に拠出する基礎年金拠出金につきましては、保険料財源と拠出時に国庫が負担する税財源とにより賄われておりますので、保険料財源の中において事業主負担分と本人負担分の内訳に法令上の定めがこの拠出金についてはあるわけではございません。しかしながら、お求めに応じて、保険料財源のうちの半分を事業主負担分と仮に置きまして機械的に計算を行った場合の数字についてお答え申し上げます。

小池晃君

 数字だけ言ってください。

政府参考人(渡邉芳樹君)

 はい。二十年度の厚生年金の基礎年金拠出金のうち事業主負担相当分は四・二兆円であり、基礎年金拠出金に占める割合は三一・六%でございます。二十一年度における同じ数字はそれぞれ三・八兆円と二五・七%でございます。

小池晃君

 国庫負担割合の引上げによって財政計算上は基礎年金給付費に占める事業主負担というのは四千億円減少するということになるわけです。当面はこれ引上げ財源は埋蔵金というわけですが、これを政府が想定しているように消費税で賄った場合に被保険者、まあ事業主の負担という、こういうのはどうなっていくのか。

 これ資料一枚目を見ていただきたいんですが、これは社会保障国民会議がシミュレーションをまとめたもので、税方式移行パターンの中で現行制度と比較できるケースBの場合でこれ端的に、家計の負担、企業負担がどう変化するのか、まとめてあるので端的に答えてください。

政府参考人(渡邉芳樹君)

 お手元の資料のとおりでございますが、これを今簡単に申し上げたいと思います。税方式化後の給付額を保険料未納期間に応じて減額する方式であるケースBで見てみますと、勤労者世帯の家計に与える影響についてはすべての所得階層において基礎年金分の保険料軽減額よりも消費税負担の増加額の方が大きくなっており、さらに実収入に対する比率を見ると、所得階層の低い方が増加率が大きくなっており、低所得階層の負担が相対的に大きくなっているということが読み取れます。

 この紙とは別かもしれませんが、自営業者等の家計に与える影響については、消費税負担の増加額の方が小さくなるというものの、それはかなりの高所得者世帯と保険料免除の対象となるような低所得階層におきましては逆に消費税負担の増加額の方が大きくなるということが出ております。

 それから、今お示しいただいた資料にもありますように、企業に与える影響については基礎年金分の保険料負担額が軽減することになる、また年金受給者に与える影響については消費税負担が増加することになる、こういう計算が当時示されたところでございます。

小池晃君

 大臣、基礎年金に対する国庫負担引上げの財源を消費税に求めれば、この試算に示されているように結局、事業主の負担は軽減される、そして勤労者や低所得者の国民年金受給世帯に負担が増える、こういうことになると、これは間違いないんじゃないですか、大臣、いかがですか。大臣に答えてほしい。時間ないから、大臣に。

国務大臣(舛添要一君)

 要するに、税の議論をするとき、今ぽんとそこに入りましたけれども、保険料や事業主負担は、国庫負担が二分の一になろうがなるまいが、税率の上げるのは法定で定められていますから、その議論とこの法定で定められた事業主負担、保険料の議論は全く連動しませんよ。そこははっきり申し上げておきたい。

小池晃君

 いや、でも、これ実際にシミュレーションすればまさにこういう傾向になるわけですよね。私は、こういう形で消費税だけで財源をつくっていくというやり方では逆にやっぱり年金の持っている所得再分配機能、社会保障制度の再分配機能を大きく壊すことになるんじゃないかと、大きな議論として言っているんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(舛添要一君)

 ですから、そういう意味では、消費税そのものが逆累進性を持ち得るわけですけれども、ただ所得の捕捉、それからこの豊かな社会における税の負担の在り方、単純に言えば、それは、一千万の車を買える人と百万の車を買える人は消費税率が五%だってもうそこで十倍の差が出てくるわけですから、もう少し総合的な議論をする必要があろうかと思っていますが、今おっしゃったように、その議論を進めていけば、消費税だけでやるという、だけということでなくても構わないですよ、それはほかの税源を持ってきても。ただ、ここでのポイントは、消費税を社会保障目的税に充てるというところに、目的税化ということにあるということをもう一言申し上げておきたい。

小池晃君

 そういうやり方では所得再分配機能、壊れると。

 ちょっと資料の二枚目見ていただきたいんですけれども、逆に、経済財政諮問会議なんかでは所得再分配機能は強化されるという議論がやられております。これは、昨年十一月二十八日の経済財政諮問会議に出された内閣府の資料ですけれども、これを見ると、低所得世帯ほど負担よりも受益が大きいと。しかし、これ見ますと、受益として挙げられている部分のほとんどは、これは年金なんですね。子育て負担にあえいでいる世帯とか失業で苦しんでいる若い非正規労働者なんかは、これではむしろ低所得層ほど負担増になるというふうに思うんですが、いかがですか。

政府参考人(西川正郎君)

 お答え申し上げます。

 この試算におきましては、消費税収を社会保障の各分野にどのように充当するかということについて定まっていないため、社会保障国民会議の仮定に基づいて割り振っております。したがって、そういった社会保障分野への割当ての仕方によって受益の内訳あるいは収入階級ごとの分布も変わってくるのではないかと思います。

 また、この分位試算で示しておりますのはある一時点を取ってとらえたものでございますので、生涯を通じて見れば、若者にとっても、将来高齢者になったとき社会保障が維持され、社会保障が安心して給付されるという、そういった観点でとらえることができると思っております。

小池晃君

 これは生涯の受給を計算したわけじゃないんで、そういう議論というのは私は根拠がないと思うんですが、そもそもこの試算の年金給付というのは、この年金に対する国庫負担の投入額の半分以上を国庫負担二分の一への引上げに充てるという、そういう前提になっているわけですよね、これは。

 それで、厚労省に聞きますけれども、今年、国庫負担二分の一に引き上げた、そのことによって受給できる年金額というのは、これは増えたんでしょうか。

政府参考人(渡邉芳樹君)

 お尋ねの点でございますが、これは十六年改正の枠組みに沿って給付と負担の中で国庫負担割合を引き上げるということでございますので、この国庫負担割合の引上げによって、先ほども議論になりましたような、保険料の負担水準が変化するわけではありませんし、給付費が変化するわけではありません。したがいまして、事業主の負担がこれにより減るわけでもありませんし、給付が増えるわけでもありません。

小池晃君

 ところが、この内閣府の試算というのは、この年金給付というところ、半分以上は国庫負担引上げ分なんで、何かこれを見ると年金の給付額が増えるかのような印象を与えて、これで逆に再配分なんだという、そういう議論なんですね。別に国庫負担二分の一に引き上げたことによって年金の給付額が増えるわけでもないのに、これで社会保障給付が増えるから低所得者ほど消費税というのは再配分機能が強化される、この議論というのはちょっとアンフェアじゃないですか、この立て方というのは。内閣府、どうですか。

政府参考人(西川正郎君)

 お答え申し上げます。

 この試算におきまして、消費税収を基礎年金の機能強化に充てる場合には現金給付等の形で国民に直接還元されることになると考えております。また、消費税収を基礎年金の国庫負担引上げに充てた場合には、年金制度の持続可能性を高め、将来において適切な給付水準が保たれるといった形で将来時点で国民に還元されると考えられます。

 いずれによりましても、国民の受益として還元されると考えております。

小池晃君

 ちょっとそういうことをこのグラフから私は読み取れないというふうに思いますし、こういう形で、消費税こそ何か再配分機能が強いかのような議論というのは、私は世論を誤った方向に導くものではないかなということに、非常に疑問を持っております。

 最後、ちょっと大臣にお聞きしたいんですが、原爆被爆者の認定訴訟の問題で二十九日に東京高裁の画期的な判決が出されました。判決の直後に厚生労働省は、原告団の皆さんに対して、来週のしかるべき時期に大臣が会うということを言っているんですよ。すなわち、今週であります。それを聞いて原告団の皆さん、もうこれは、日比谷公園前、座込みやっていたテントを畳んで心待ちにしていた。ところが、会えないということに今なってきている。

 私、今日たくさん皆さんお見えになっていますけれども、大変御高齢なんですね。やっぱり一刻も早く大臣お会いになって、直接声を聞いてこの問題の解決に当たるという姿勢を示すべきじゃないかと。直ちに会っていただきたいと。今週会うというふうにいったん約束したんだから、今週是非会っていただきたいというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(舛添要一君)

 私はできるだけ早くお会いしたいということは申し上げてきて、ただその上で、六月十一日がこの東京高裁判決に対して政府の態度を決めないといけない。これはこれできちんと対応したいと思いますから、今、法務省を含め関係省庁と対応しています。その判断を下した上で、そしてじっくりとお話を聞いて今後のことを考えたいというように思っていますので、それは一刻も早い方がよろしいと思いますけれども、ただ、私はきちんとそういう整理をしてやりたい。ただ、何か延ばしたくて延ばしているという、そういうことではありません。できるだけ早くと思っております。

小池晃君

 その六月十一日というのだって、そこまで引っ張るということ自体問題だし、大体その判断をするためにこそ会うべきじゃないですか。その声を聞いて、当然私は上告なんか絶対にすべきでないと、そんなこと許されないと思いますけれども、やっぱりその上でも一刻も早く会うと。大臣、今週が無理だったら来週早々にでも会っていただきたいと思いますが、いかがですか。

国務大臣(舛添要一君)

 国会日程や何かを見ながらできるだけ早く会いたいと思います。

小池晃君

 与党もこの問題では勧告的意見を出している。東京高裁の判決を踏まえて、線引きせずに全員の救済をと。私たちの主張してきたこととも一致する中身であります。私、この方向でこそやっぱり解決すべきだと。大臣、与党の意見も我々の意見も一致しているわけで、これ、怖いものなしですよ、だれも反対しませんよ。この問題で解決すれば、本当にみんながこの解決、歓迎するということになると思う。是非この与党の勧告的意見の方向でこの問題の全員救済という解決を図っていただきたいというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(舛添要一君)

 与党の代表の南野さんもそこにおられるし、それから山本さんもおられますので、よくよく意見も聞いております。

 私は、やはり司法の判断は十分に尊重してそれに対応しないといけないと思っていますし、専門家の皆さん方の意見もまたこれ聞かないといけません。ただ単に、やみくもに政治的な決断をやれということだけでも、これは国民が納得しないといけませんから、司法がノーと言ったものに対して、じゃそれはイエスということを簡単に言えるかということも逆に言えば議論しないといけません。そして、私ももう、長崎に行ったときも広島に行ったときも直接皆さんにお会いしていますし、この問題を一日も早く解決したい。だから、認定基準も改めて、もう前のときよりも何十倍の人たちを大急ぎで認定しているというのはそういうことの表れでありますけれども、ただ、基本的にそういうこの財政的な財源というのは国民の皆様の税金でお願いするわけですから、やはり国民の皆さん全体が、じゃ、みんなで支援しよう、それでいきましょうということがなければ、これはきちんとした支援にならないと思いますから、そういうすべてをよく考えて、これは官房長官、そして最終的には総理の御判断を仰いで決断をしたいと思っております。

小池晃君

 この問題でお金を出すことに反対する声なんてありますか。ないですよ。そんなに巨額な費用というわけじゃないですよ。やっぱりこういう問題について、本当に御高齢で大変な暮らしをされている方に対して、国がお金を出すことに私は、国民は絶対に反対の声なんか上げないですよ。そのことは、大臣、堂々と言っていただかないといけない。その解決するために、今おっしゃったように、本当に解決するんだというふうにおっしゃるんであれば、もう一回繰り返しになりますけれども、やっぱり十一日以降という発言はやめていただいて、きちっと一刻も早く会うということをちょっと明言していただきたいんですが、いかがですか。

国務大臣(舛添要一君)

 誤解がないように申し上げますと、要するに、段階を踏んでこの問題を相当私は解決してきたと思っていますよ。ですから、そういう意味で司法判断に対するこちらの判断を決めるというのは一つの仕事、そしてそこから、今おっしゃったような与党の皆さんの御意見も賜って、できるだけいい方向で解決するというのがもう一つの仕事。そういうふうに問題を整理しているんで六月十一日ということを申し上げたんですが、できるだけ早く会うように努力をしたいと思います。

小池晃君

 今の発言があった、その十一日よりも早く会うという方向で努力するということなんで、とにかく今週中あるいは来週早々にでも必ず会っていただくということを求めて、私の質問を終わります。

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