2009年171通常国会:速記録

国民年金法改正案に対する質疑


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2009年6月9日(火)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 冒頭、被爆の問題で、上告を断念されて原告被爆者とお会いになったと。前回の委員会で大臣に求めたんですが、実現して大変良かったというふうに思っています。

 問題は、しかし、これからだと思うんですね。医療分科会というのはまさに今まで切り捨てを進めてきたところなわけで、やっぱりそういったところに議論をゆだねていては、これは解決の結論が出てこない、まさに政治的な判断で進めていくことが今求められているというふうに思うんです。その点では、やはり与党PTも示しているように、線引きをしないですべての原告を救済をしていく、それから認定基準を判例に則してきちんと見直していくという方向で全面解決を図るべきだと。

 大臣、先ほどこれは、これが解決しなければ戦争が終わったことにならないというふうにおっしゃったわけで、やっぱりそこまで言うのであれば、これは本当に線を引いたらいけないと思うんです、やっぱり。みんながこの問題で闘ってきた人たちなわけだから、やはりきちっと全員救済するという政治の判断をしていただきたいと、重ねてお伺いします。

国務大臣(舛添要一君)

 そういうことも含めまして、司法の判断を尊重し、そしてまた専門家の方たちの御意見もいただき、それで、既に個々のケースについて総合的判断という形で相当前に進めておりますので、何とか更にこれを進め、解決に向かって進めたいと思っておりますので、これは深くかかわってきた河村官房長官を始めよく議論をして、最後は麻生総理の御決断を仰ぐ形で、今日、原告の方々とわずかな時間でしたけれどもお話合いをいたしましたので、その気持ちを共有しながら努力をしたいと思います。

小池晃君

 是非、大臣のイニシアチブを期待しております。

 それから、年金の問題へ行きたいんですが、年金財政を考える上で支え手の問題は非常に大事だと思うんです。

 年金局長にお伺いしますが、二十歳代の厚生年金の加入者数というのはどうなっているか。二〇〇〇年と、直近である二〇〇七年の数字を示してください。

政府参考人(渡邉芳樹君)

 お尋ねの二十歳から二十九歳までの厚生年金被保険者の数は、二〇〇〇年度末で八百八万人、二〇〇七年度末で七百万人となっております。

小池晃君

 大幅に減少しているわけであります。

 国民生活基礎調査では雇用形態による公的年金加入状況も示されているんですが、二十歳代のパート、アルバイト、派遣社員の公的年金の未加入率をお示しください。

政府参考人(渡邉芳樹君)

 お尋ねの十九年の国民生活基礎調査における二十歳から二十九歳までの年齢各層におけるパート、アルバイト、派遣社員それぞれで見て、公的年金の加入状況について、公的年金に加入していないと回答をした方の割合は、パートの場合は九・五%、アルバイトの場合は一七・九%、労働者派遣事業所の派遣社員の場合は七・五%と、こういうふうになっております。

 ここで加入していないと回答されている方には、被保険者数の状況から見て、国民年金一号被保険者であるが保険料未納となっている者など相当数含まれているものと考えられます。

小池晃君

 いずれにしても、こういう非正規労働者の中での年金未加入は問題だと思うんですね。

 国民生活基礎調査で年齢階層別に加入者数が出ているので、二十九歳以下、二十代の一号と二号の加入割合をグラフにして今日は資料でお配りをしております。これを見ますと、トレンドとしては、九〇年代以降、二十代の厚生年金加入者、共済年金加入者の比率は減少して、逆に国民年金加入者の割合が増加をしていることになるわけですね。これは、先ほどの数字と合わせれば、やはりこの原因というのは、若年層における雇用の非正規化、パート、アルバイト、派遣社員などの増加というふうに見てよろしいかと思うんですが、大臣、これいかがでしょうか、これ見て。

国務大臣(舛添要一君)

 済みません、ちょっと質問の意味を、もう一度おっしゃってくださいますか。

小池晃君

 要するに、非正規労働が増えているというのがこういう二十代での厚生年金から国民年金というこういう流れになっている、基本的な認識なんですけれども、お伺いしたい。

国務大臣(舛添要一君)

 いや、もうそれはそのとおり、済みません、そのとおりであって、いわゆる正規のサラリーマンになっていれば厚生年金なわけですから、昔は自営業者なんかを前提にしていたんですけれども、国民年金の性格自体が変わってきているというように思います。

小池晃君

 こうした問題をどう解決するかということなんですが、非正規労働者の年金加入を進める制度改正というのはもちろんあると思うんです。ただ、それ以前に現行制度でもできることがあるはずだと。本来、年金に加入すべき人たちが未加入で放置されているという問題、これはあると思うんですね。

 職安局長おいでいただいているんですが、二十歳代の雇用保険の被保険者数というのは二〇〇七年度末で何人になるんでしょうか。

政府参考人(太田俊明君)

 二〇〇七年度における二十歳代の雇用保険被保険者数でございますが、これ年度平均の数字でございますけれども、約七百八十一万人でございます。

小池晃君

 ですから、先ほどの七百万人と比べると差は八十万人以上あるわけです。これはもちろん、私どもも分かっていて、その適用条件の違いがありますから、二十時間、三十時間とあるので、それもかなりあるだろうと思うんだけれども、でもやっぱり相当部分が、やっぱり本来厚生年金に加入すべき人が未加入になっているという実態が私はこれはあると思うんですが、局長、いかがですか。

政府参考人(渡邉芳樹君)

 先ほども別の委員に御答弁いたしましたが、現在、被用者年金一元化法の中で正社員に近いパートの方々の適用拡大を入れておりますが、その際、審議会などでもよく指摘されましたけれども、今御指摘のとおりでございまして、現行の制度の中でも四分の三パートであってももっと適用をしっかりしなきゃいけないということは当然の前提でございます。社会保険庁から年金機構に移ってまいりますが、そういうことは大変大事な仕事の目標であるということで、引き続き努力させていただきたいと思います。

小池晃君

 大臣、やっぱり社会保険庁の調査でも厚生年金未適用事業所って十万以上あるんですよね。それから、適用事業所の中でも本来加入すべき人で適用されていない人いるはずで、社保庁の事業所調査では資格取得の届出漏れが六万件以上発見されている。

 大臣にお伺いしたいのは、やっぱりこういう厚生年金の適用逃れというのを徹底して是正していくということが年金財政を安定化させていく上でも非常に大事になっているんじゃないかと思うんですが、認識を伺います。

国務大臣(舛添要一君)

 まさにそれはそうだと思います。農業とか個人事業者、それから五人未満、ただ、これは先ほど足立さんとも議論したように、ただそれだけをやると標準報酬の改ざんみたいなことも起こるんで、中小零細企業の事業主負担の部分について、どういうふうに社会で公平に支えるかという議論も同時にないといけないかなと思っています。

小池晃君

 私はその適用のやり方で、例えばもう一時間でも働いたら事業主分だけは保険料を取るとか、そういったことだって考えていいんじゃないかなというふうに思うんですよ。そういった形でむしろ逆に正社員化のインセンティブをつくっていくというような考え方はあり得ると思うんですけど、そういったことも含めて、これはきちっとやっぱり年金に適用すべき人は適用して、それを年金財源に充てていくということは大いに知恵を出していく必要があるんじゃないかなというふうに思います。

 同時に、これはやっぱり雇用の適正化というのがどうしても必要で、非正規雇用が増大していくということは、結局年金保険料の収入の減少、それで年金の給付抑制の効果をもたらしていく。先ほど、やっぱり職種別に見ても明らかに非正規雇用の加入率が低いという事態があるわけで、これが将来の低年金者、無年金者になっていくということがあるわけです。もちろん、雇用を正規化していくというのはそれ自体として大事なことなんだけれども、その社会保障財源、特に年金財源を安定化させていくという上で、やっぱりその非正規雇用の拡大に歯止めを掛けて、正規雇用に転換していくということが私は極めて重要な課題になっていると思うんですが、この点でも大臣の認識を伺いたい。

国務大臣(舛添要一君)

 それは全くそのとおりだと思います。今日は小池委員とよく認識が一致します。

小池晃君

 いつもこうだといいんですけれども。これは本当に大事な課題だということを申し上げたい。

 さらに、ちょっと具体的に、じゃ本当に雇用の問題を安定させていくという上で、ちょっと直近の問題を大臣にお伺いしたいと思っているんですが、六月四日に広島と山口の労働局が大手自動車会社のマツダに対して、労働者派遣で違法なクーリングを行って、派遣期間を超えて派遣を受け入れているという労働者の申告に基づいて是正指導をやったと、これが報道されました。これは私どもの志位委員長も衆議院で、そして仁比聡平議員も参議院で取り上げてきた問題で、まさにその違法が認定をされ、大手自動車企業に指導が行われたということの意味は、これは大変大きいというふうに思っております。

 このマツダの是正指導について、報道では、申告者に対して、期間工になった後も元の派遣会社との間に支配従属関係がなかったとは確認できないというふうに指摘をして、派遣期間が実質的に三年を超えていたという認定をしている。大臣、これはつまり、その派遣元との支配従属関係があったと、その結果派遣期間が三年を超えて継続していたということで、労働者派遣法四十条の二、派遣期間制限に抵触すると是正指導したというふうに理解してよろしいですね。

国務大臣(舛添要一君)

 個々の問題についてはコメントしないという前提で、一般的に言えば派遣法の問題もありますけれども、実を言うと、この元の派遣会社と労働者の間の支配従属関係は持続しているわけですから、これは労働者供給とみなされる。つまり、職業安定法の四十四条の違反であるということも事実であります。したがいまして、きちんと厳正に指導をするということです。

小池晃君

 今の問題は極めて重大だというふうに思っております。そういう重大な法違反があった。

 ところが、労働局はそういう是正指導をしたと、これは申告者にちゃんと労働局の方が報告している。ところが、マツダは何と言っているかというと、六月四日に記者会見をやって、その資料では、クーリング期間が三か月を超えているとは判断できないため、派遣可能期間を超えているとみなされるおそれがある。これらの点について違反がないか点検し、違反があれば是正することと指導されたというふうに書いてあって、当社としては過去法律違反はなかったと理解していますが、指導は真摯に受け止めていますと。違反したとは認めないというのを文書でちゃんと配っているんですよ、記者会見で。労働局は違反があったというふうに説明しているのに、マツダ側は違反なかったと。明らかに労働局の指導と違うことを公然と記者会見で文書で配る。

 大臣、労働局の指導内容をこんなふうにゆがめて発表するような企業に対しては、私は厳正に臨んでいただきたいというふうに思うんですが、いかがですか。

国務大臣(舛添要一君)

 残念ながら、個々の具体的なケースについてはコメントしませんが、しかしながら、労働局が厳正な指導をやる前提は法律違反でありますから、これは労働者派遣法違反が明確に行われているから指導に入ったわけでありますので、これは真摯に受け止めて改善してもらわないといけないのでありまして、もしそういうことがなければ更にこれは指導を再びやりたいというふうに思っております。

小池晃君

 是非、これはそういうことを言っておりますので、厳しくやっていただきたいということを重ねて申し上げたいというふうに思います。

 それから、問題は、じゃ、その申告した労働者の雇用がどうなったのかという問題なんですね。申告しても結局雇用が失われるということでは労働者にとってみればこれは大変なことなわけであります。今回のような期間制限違反、労働者派遣法四十条の二の違反の場合の是正指導に当たっては、雇用の安定を前提に直接雇用などを助言、推奨するというふうになっているんですけれども、本当に徹底しているかというと、例えば今回是正に至ったマツダの申告者は、新たな仕事は見付からなくて失業給付も切れちゃって生活保護を受けているという実態なんですね。

 やはり大臣、やっぱり改めて違反した事業主に対して申告者を含めた雇用安定の措置、これを徹底していくということが労働行政には求められているんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

国務大臣(舛添要一君)

 今委員おっしゃったように、労働者の雇用が失われちゃ何のために是正したか分かりませんから、例えば派遣の場合は適正な派遣に是正しなさい、請負の場合も適正な形にしなさい、それから直接雇用を推奨するということをやっておりますので、今回も、今回もということは言っちゃいけませんので一般的に申し上げますと、対象労働者を直接雇用するように推奨しろということは各県の労働局に対して指示をしたところであります。

小池晃君

 一般的にはそうなんです。しかし、実態として何が起こっているかというと、申告者はやっぱり派遣法四十条の四の直接雇用申込み義務の指導を求めているんだけれども、結局、派遣法には三十五条というのがあって、通知がないということでこれを指導しようとしないというのが、実態としてはそういうことになっているんですね。

 今回のマツダのケースというのは、まさにクーリング使って期間制限の抵触日が来ないようにしていたケースですから、そういう場合に通知を出すわけがないわけですよ、意図的にやっていたわけだから。ここまで明確なのに三十五条の通知がないから直接雇用を指導しないということだと、私はこれはやっぱり派遣法の機能不全になっているというふうにここは言わざるを得ないというふうに思うんです。

 業務取扱要領では、四十条の四の是正について、ちゃんと、目的はあくまで派遣労働者の雇用の安定を図ることであるというふうに、趣旨としてはそう書いてあるわけだから、やっぱりきちっと、法違反はこれからさせないようにしました、でもそれを告発した労働者は路頭にほうり出されましたと、これじゃいけないと思うので、やっぱりきちっと雇用が維持される方向に労働行政は厳しく臨んでいくべきだというふうに思うんですが、重ねて伺います。

国務大臣(舛添要一君)

 その方向で更に厳しい指導を行いたいと思います。

小池晃君

 こういうふうに至った事態というのは、そもそも労働局の対応に時間が掛かり過ぎたということもあって、その間に雇用が失われているということもあるわけですから、速やかに対応するように求めていきたいというふうに思います。

 今日はちょっと余りに大臣の答弁がいい答弁が続いたので、ちょっと時間少し余っていますけれども、ここで終わりにさせていただきます。

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