2009年171通常国会:速記録

国民年金法改正案に対する質疑


  • 年金受給/資格期間短縮求める/小池議員 "せめて10年程度に"<(関連記事)
2009年6月11日(木)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 年金の受給資格期間の問題、この間、何度か当委員会でもありましたけれども、お伺いしたいと思うんです。

 日本においては最低加入期間が二十五年で、世界的に見ると非常にこのような長期は少数なんですが、主要国の受給資格期間について簡単に紹介してください。

政府参考人(渡邉芳樹君)

 お答え申し上げます。

 諸外国の年金制度における老齢年金の受給資格を得るための最低加入期間につきまして、私ども海外との社会保障協定などを進めておりますので、その範囲での知る限りで申し上げますが、確かに日本以外にも二十五年という国がないわけではございませんが、むしろ逆に設けていないという国まで様々でございます。

 その中で重立った主要国について申し上げれば、アメリカ合衆国の場合は四十加入四半期、あそこは四半期単位でカウントしておりますので、約十年相当でございます。ドイツは五年とされております。現在、イギリス、フランス及びスウェーデンにおいては最低加入期間は設けられていないというふうに承知しております。なお、スウェーデンにおける保証年金の受給のためのスウェーデン居住期間は最低三年とされていると承知しております。

小池晃君

 今紹介があった主要国すべて十年以下なわけですね。それで、最低加入期間そのものがない国が三か国。

 今お話ありましたけれども、社会保障協定を結んだかあるいは結ぼうとしている国全体を見ても、最低加入期間なしが五か国、五年というのが三か国、十年というのが四か国、十五年が二か国で、二十五年もあるとおっしゃったけれども、これはチェコですよね。チェコは、六十歳から受給するためには二十五年なんですけれども、十五年あれば六十五歳から支給されますから、これは実質的には十五年。

 大臣、やっぱり二十五年の期間というのは国際的に見てもほとんど例がない。これが無年金者を発生させているということになるわけで、この間議論もありましたけれども、やはりこれをなくす、せめて当面第一歩として十年程度にと私ども言ってまいりました。

 大臣は、この問題について、最低保障機能の議論と併せてやらなきゃいけないというふうに答弁されているんだけれども、これはやっぱり別の問題だと思うんですよ。やっぱり少しでも年金保険料を納めていれば受給につながる、受給権を保障するという問題と、それと老後の最低保障機能の議論というのは、これはこれとして別の問題として私はやはり独立させて、まず受給権の保障というものは、それはそれとしてやはり確保していくということが必要ではないかというふうに思うんですが、いかがですか。

国務大臣(舛添要一君)

 逆に、一つは、短期間でよければ年金額は少なくなりますね。低年金者が増える。これはまさに、じゃ、それに対する最低保障機能をどうするかという問題が一つ出てきます。それから、国民皆年金ということは、年金払っていない方たちに対しても面倒を見る。それから、先ほど来議論が朝からありましたように、免除措置をとってありますね。免除措置があったってその期間は算入されるわけですから、要するに、相当程度の財源を確保するという目的で二十五年というのがある。それを減らせば、それなりの支給も減るし、低年金者も増えてくる。五年しか掛けていなかったらそれ分しかありませんよと。

 片一方で、二十五年働いていた人との差が広がりますよ、当然、年金額。じゃ、その差をどういう財源とどういう手段で埋めるかといったときに、二十五年以上掛けた人と五年しか掛けていない、単純に五分の一でいいんですかという話になってきたときに双方から不満が来るから、これは議論を、そういうことをきちっと問題点を挙げた上で、まあ二十五年が長いなら二十年にするとか十五年にするとかいうような議論はしていいと思います。ただ、メリット、デメリットがあるんで、それをきちっと一覧表にして、そしてこれは国民で議論すべきだと思っております。

小池晃君

 低額年金は、受給期間短くしなくたって既に国民年金受給者の平均四万という実態があるわけで、それはそれでやっぱり低年金の問題というのはあるわけですよ。別に最低加入期間を短くしたからといって、今より年金額が減るわけじゃないんですよ。ゼロの人が増える、ゼロの人が低年金になると。それは問題だけれども、でもゼロなんだから、掛け捨てになっちゃうわけだから。だから、やっぱりそこのところを解決していくというのは、私はそれはそれで、最低保障機能の確保とは別の問題として議論していっていいと思うんですよ。

 大臣、やっぱり二十五年払わなければ掛け捨てになってしまうということが、例えば今若い人で非正規雇用になって、これから先二十五年間払い続けられるかというふうになったとき、ああこれ無理かもしれないからやめておこうということで、大臣、率直に言ってこの二十五年という足かせがやっぱり納付率を下げる一つの要因になっていると思いませんか。

国務大臣(舛添要一君)

 まあそういう面もあるかもしれませんけれども、ただ、しかし、例えば二十二で大学出て働き始めたとして、平均寿命まで、六十まで生きたら四十年間は大体働くわけですから、四十年間働くうちの二十五年間というのは何%になりますか、六割ぐらいですか。そんなに長い、そんなにこの日本という社会は不安定で、常に派遣か何かで非正規をやっておかないと生きていけない社会なら、それの方が悪いんですよ。そっちもちゃんと是正しないといけない。

 だから、余りそっちを言うと、もう不安定な雇用でいいようなことになっちゃうから、やっぱり両方、常に小池さん、バランスの取れた議論がこれは必要だと思いますよ。

小池晃君

 いや、私もそうだと思いますよ。それは、そんな雇用状態が続くような社会にしておいちゃいけないというのはそうですよ。

 ただ、率直に、現状を見ればやっぱり厳しいですよ。大臣甘いですよ。二十五年間保険料を払い続けられるかどうかって、やっぱり自信を持って言える今非正規雇用の労働者どれだけいるかというと、やっぱりこれ結局掛け捨てになっちゃうんだったらというふうにためらわせる一つの原因に私はなっているというふうに思うんですよね。

 だから、やっぱり少しでも納めればそれが給付に反映させていくと。これは年金財政上は、これは財政的に中立なわけだから、やっぱりきちっと納めたものについては反映させていく、最低限受給権を保障するということは、これはこれとしてやっぱり議論をしていくべきではないかと思うんですよ。

国務大臣(舛添要一君)

 小池さんの方がはるかに私よりいい人で、善良な心を持っていると思うんですね。

 私の人間の見る目をひがんでいるかもしれなくて、二十五年間払わぬといかぬから、私も苦しいときもこつこつこつこつ払ってきた。だけれども、五年でいいよということになると、やっぱり人間は怠け者とか結構いいかげんな面があって、いや今日、この何年間はもう適当にやって生活エンジョイしようと。年金少なくなっても何とかなるだろうと、小池先生に頼めば何とか将来なるよというようなことを思って、やっぱり掛ける、掛金を払う意欲がなくなるんじゃないかなと、私はちょっと人間に対して見方がひがんでいるのかもしれないけれども、そういう面を思うわけですよ。

 ですから、余り、一年でも二年でも、まあ五年掛けりゃいいじゃないかじゃなくて、やっぱり最低、私に言わせると最低十年は掛けてもらわないと、それは駄目ですよ。なるって、そう。

小池晃君

 だから、せめて最低十年って言ったんじゃないですか。期せずして意見が一致したわけだから、是非そういう方向で議論をしていただきたいというふうに思います。

 それから、社会保障カードの問題について今日は聞きたいんですが、これ実は本委員会で舛添大臣が委員だったときに、当時の安倍首相と論戦されて、そのときにやっぱり年金記録問題で社会保障番号必要じゃないかということで政府・与党の合意になって議論が始まったという、そういう経過がございます。

 そもそも論としてお聞きしたいんですが、年金記録管理のために基礎年金番号を導入したわけですよ。基礎年金番号を導入したけれども、結局消えた年金問題が起こっちゃったわけですよ。ここに新たに社会保障カードを導入して記録問題解決するんですかという、屋上屋を重ねるだけじゃないかと。結局、消えた基礎年番号が消えた社会保障カードになってしまうだけの話じゃないですかということをまずお聞きしたい。

政府参考人(間杉純君)

 お答え申し上げます。

 社会保障カード、今先生から御指摘ありましたような経過で、私どもの方の検討会も報告書をこのほど提出をし、また検討を進めていかなければならないなと考えているところでございます。

 御指摘の年金記録問題につきましては、平成十九年七月五日の政府・与党合意がございまして、まずは基礎年金番号に未統合の記録の問題に優先的に取り組むというふうなことで、現在着実な取組を進めているところでございます。

 一方で、これから将来にわたって年金記録を正しいものにするということで、いつでも年金記録を御自身が簡便に確認できるだけの仕組みとして社会保障カードの導入も挙げられているところでございます。このカードが実現することによりまして、いつでも御自宅等からオンラインで自らの年金記録を確認、入手できると。それから、それによりまして、御自身で正しい情報への修正、あるいは手続漏れ、虚偽報告の抑止が可能になる等の効果をもたらすものでございまして、御本人にも御参加していただく形で年金記録の適正を期すと、こういった意義があるものだと考えてございます。

小池晃君

 まあ自宅で見れるという話なんだけれどもね、これ、ICカードリーダー必要だし、結構手間掛かるわけですよ。

 既に、利便性という点では、社会保険庁が住基カードを使った年金加入記録照会、年金見込額の試算を電子申請するシステム稼働させていますが、この利用件数、過去、直近四年間で何件ですか。件数だけでいい。

政府参考人(石井博史君)

 件数だけですか、はい分かりました。

 お答え申し上げます。直近四年間、十七、十八、十九、二十年度、この四か年でございますと、千百九十九件という件数になってございます。

小池晃君

 四年で千百、ちょっと、ちゃんと一年ごとに言ってほしかったんですが、百七十四件、三百二十七件、まあ二〇〇七年が消えた年金大問題になって四百十件、去年はまた下がって二百八十八件。そんなに多いとは言えないですよね、これ。利便性の向上といっても、やっぱり利用する人は限られてくるのではないかなと。

 それから、経費どれくらい掛かるのかなんですが、内閣官房の関係省庁連絡会議でかつて試算をしたことがございます。初期費用とそれから経常経費について、幾ら掛かったか御紹介ください。

政府参考人(間杉純君)

 御指摘の十八年九月の関係省庁連絡会議の取りまとめでございますが、社会保障番号を導入するための費用につきまして、様々な前提を置いた上で幾つかの検討が行われてございます。

 これによりますと、簡潔に申しますと、運営機関に要する経費、各保険者に要する経費、ネットワーク構築費、各保険者、医療機関等のカードリーダー導入経費等につきまして、それぞれ初期経費と経常経費が試算をされてございます。それらを単純に合計をいたしますと、初期経費で千二百四十億円程度、経常経費で七百七十五億円程度でございます。

 なお、この試算は幾つかの前提を置いた上で粗い試算を行ったものでございまして、相当な幅を持って見る必要があるとされております。例えば、各保険者、医療機関等のパソコンの導入経費等はこの中には含まれていない、こういうことでございます。

小池晃君

 そうはいっても、ほかには試算がないので、これしか頼るところがないわけです。

 これ、人件費もしかも入っていないわけですね。これだけの多額な費用が掛かる。それから、プライバシーの問題どうかというと、これは、厚生労働省はプライバシーの観点から社会保障カードには個人識別番号は記録しないというふうにしているんだけれども、データベースの中には整理番号を付けるという。この整理番号は国民には見せないんだけれども、ネットワークトラブルなどの危険に備えて、保険者の変更があっても変更されない保健医療番号というのを、単一の番号を付けると。で、これを社会保障カードの表面に表示するというんですね。そうすると、何の意味もないんじゃないかと。

 住基ネットで使用される番号というのは、これは転居によって変更される上に、基本的には本人以外には自治体から知らせることはないんですが、それでも総背番号制につながるおそれがあるということで、他用途使用は法律で禁止をされたわけです。しかし、金融機関が使用しようとするなど、トラブルも起こりました。

 今回はこれ、一生変わらない番号なんですね。その上、カードの表面に、医療、介護の部分については番号が付くということになると、これではやっぱりプライバシーが大臣、本当に保障されるのかと、大変私、危惧があるんですが、大臣、お答えいただきたい。

国務大臣(舛添要一君)

 私は本来、時の安倍総理と議論をしたときは、ソーシャル・セキュリティー・ナンバー、これをきちんと当初から入れなかったから様々な問題があると。ただ、そのときにセキュリティーの観点、プライバシーの問題があるわけです。

 それから、この社会保障カードは、私が当初言ったソーシャル・セキュリティー・ナンバーよりもはるかに統一性は欠いてあります。したがって、これは医療のデータが年金のデータと全然連結しておりません。それぞれが個別になっている。だから、ある意味で物すごく使い勝手悪いんだけれども、その分、プライバシーの確保はやっている。それから、ビジビリティー、可視性というのから見ても、それはここにあれば分かるんだけれども、そしたらばれちゃいますから。

 だから、プライバシーの保護、セキュリティーということとこの利便性ということの、どこにバランスを取るかということが非常に難しいんで、私の立場から言うと、小池さんの声が大き過ぎて、何か利便性よりプライバシー保護ばっかり来ちゃったなという感じがしますよ。

小池晃君

 別々に持っているというんだけれども、やっぱりデータベース、中継のところではつながるわけだから、これはやっぱり危険性というのは否定できないと思うんですよね。膨大な経費も先ほど言ったように掛かってくる。利便性といっても、実態としてはやっぱり国民が家からカードリーダーを使ってアクセスするというのはなかなか大変だと。しかも、いろいろと問題になった住基台帳番号よりもより漏えいしやすい仕組みにこれはならざるを得ないんですね、利便性ということになっていけば。

 厚労省の研究会に出された意見書でも、積極的な導入派は日本経団連だけで、医師会も日弁連などもこれ反対の意見を出しているわけで、やっぱりこれは慎重にあるべきだというふうに思います。

 それに加えて、問題は、社会保障個人会計という問題なんですね。この文脈で出されてきていると。経済財政諮問会議に出された民間議員の提案には、社会保障番号、社会保障カード導入の目的に社会保障個人会計というのは明確にうたわれているわけであります。これ諮問会議では、制度間の利用者負担総合キャップ制なんていうのが導入されるということがうたわれておりまして、社会保障のいろんな分野の併給調整ということが課題になっているんですね。しかし、併給調整という点でいえば、それは今でも高額医療と高額介護の合算制度なんていうのがありますし、労災と年金、医療、介護の併給調整というのもこれはやられているわけですから。

 ちょっとお聞きしたいのは、社会保障給付の併給調整にとって、社会保障番号を導入する、あるいはカードを導入するって、これは必須のものなんでしょうか。

政府参考人(間杉純君)

 御指摘の骨太の方針とか民間議員ペーパーにおきまして様々なキャップ制等が御議論されておりまして、それにつきましては、それ自体今後幅広い観点から検討すべき課題だと考えております。

 御指摘の、厚生労働省でも、個々人における負担の総合的な調整というふうなことで、今回、医療保険制度改革におきまして、医療、介護を通じて自己負担の合計額が著しく高額になる場合の負担軽減の高額医療・高額合算制度というものを導入したわけでございます。

 現在、こういった仕組みは、まず御本人からアクションを起こしていただくと。御本人が自分は確かに介護のサービスを受けましたということで領収書を手に入れられる、それから医療保険の方からこのぐらいですというふうなことで、これを合わせて保険者に提出をするということで、大変その手続も煩瑣な形になっておりますけれども、今後、社会保障カードの実現によりまして、制度、保険者をまたがっての利用者の特定というふうなものは可能になりますので、今度は保険者のサイドから加入漏れがないようにというふうなことでアクションが起こせるというふうなことでのメリットは期待できるだろうと考えているところでございます。

小池晃君

 いや、私が聞いたのは、併給調整できないということじゃないでしょうと聞いたんですよ。できないことじゃないでしょう、やっているんだからね、それは事実ですから。

 大臣、経済財政諮問会議の民間議員提案では、これは個人会計導入の最大の理由というのは、負担と給付のバランスを目に見えるようにするということにしている。つまり、社会保障の給付を個人が負担した分に見合うだけに限定していく。これだとやっぱり民間社会保険、民間保険商品と変わらないような性格になっていきかねない危険性が私はあるというふうに思うんですね。

 大臣、社会保障には、大臣もかねがね言っているように、所得の再分配機能というのは、これはあるわけであります。社会保障の個人会計という考え方が極端に進んでいくと、やっぱり結局これを破壊して、憲法二十五条が保障している生存権ということを掘り崩すことになるんではないかと。

 大臣、やっぱり厚生労働省、私聞きたいのは、これは社会保障カードの導入によって個人会計というような方向に進もうという政策的な方向を持っているんですか。そのことをお聞きしたい。

国務大臣(舛添要一君)

 それは全くないと思います。一番最大の今日の議論の年金、世代間の賦課方式でやっているんだから、私が出した金で私が年金もらうわけじゃなくて、私より後から来る世代がもらっているんで、大体個人会計という概念自体が成り立ちません、年金について言うと。

 ただ、何のためにそれをやっているかといったら、自分がどれだけ掛金払ったかな、それから給付の見込み幾らかな、そういう情報が取りやすい、それから様々な利便性があるということで、そういう民間議員がいるかもしれませんけれども、少なくとも今の日本の社会保障制度の考え方からいうと個人会計ではありません。

小池晃君

 憲法二十五条からいっても、社会保障を個人責任、自己責任の世界におとしめるようなやっぱり個人会計というのは導入すべきでないというふうに私どもは思いますので、このカードの導入というのをそういったことの入口にするような議論には是非しないでいただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

アーカイブ