2009年171通常国会:速記録

臓器移植法改正案、子ども臨調設置法案に関する参考人質疑


2009年6月30日(火)
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【健康局長に対する質疑】

小池晃君

 WHOの臓器移植の指針の改定問題についてちょっとお聞きをしたいんですけれども、それとそれに関する決議について。

 一つは、ここで言っている移植ツーリズムとか臓器売買というものについては、厚生労働省としてはどういう定義というふうに考えているのか、これが一点です。

 それから二つ目は、ここで抑えるべきというふうにされているのは、金銭をもって売買をする、あるいは強制を伴うものなどであって、海外に行って臓器移植を受けるということを抑制するという趣旨ではないんではないかというふうに読めると思うんですけど、その点についてどうお考えか。

 それから最後は、むしろこの指針の改定なり決議というのは、生体移植についての安全管理とかあるいは人権の保護ということも書いていますし、それから、臓器以外の組織などの売買についてもこれは一定の規制を設けるべしというふうになっているんですが、むしろこのWHOの指針なり決議なりが採択されると、我が国においてこういった部分での法整備が求められることになるのではないかと思うんですが、その点についての見解を。

 以上三点、お伺いします。

政府参考人(上田博三君)

 まず、WHOのガイドラインの性格でございますけれども、これは条約ではございませんので、あくまでもガイドラインということでございます。それから、WHOというのは、御存じのように、先進国から発展途上国まで幅広く同じルールでできることをやるということがございますので、必ずしも強制的な法的措置を求めなければいけないものではないということです。それから、途中でおっしゃいました、いわゆる透明性とかそういうものを確保するべしということはまさにおっしゃったとおりでございます。

 それから、一番最初におっしゃった渡航移植の問題でございますけれども、まず、やはりその前に、臓器売買、これはやっぱりあってはならないことだと。これは恐らく世界中、共通認識でありますので、そこに何らかの対価が発生をして臓器移植が行われることは、これはもう厳に慎む、そこは恐らくだれも変わらない。

 移植ツーリズムについては、今回のWHOの決定がされても、それを全く禁止をするというものではないんだろうと。ただ、できるだけ自国民のための臓器は自国で確保してほしいという思想を前提にして、その延長を突き詰めていくと、何といいますか、移植ツーリズムは余りよろしくないんではないかということが出てくるという、こういうふうな理解だというふうに考えておるところでございます。

【参考人に対する質疑】

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 脳死下の臓器移植に対する国民の理解を広げる上でも検証作業というのは大変大事だと思いますし、やられているお仕事に心から敬意を表したいと思うんですが、八十一例、既に脳死下臓器移植が行われているわけですよね。そういう中で、既にいろいろと今まで検証したものでもCTがないとか脳波が残されていないという、そういうかなりちょっと問題じゃないかなと思う事例もあるんですが、問題は五十五例の検証しかまだできてないということなんですよね。

 五十五例ということでいうと、これ三年か四年ぐらい前の症例までさかのぼるんではないかなというふうに思うんですけれども、なぜこれがこういう段階でとどまっているのか、その理由など、ちょっと教えていただければというふうに思いますが。

参考人(藤原研司君)

 これは、何年前のやつだから順番にやってくるという、検証していきますというような、そういう単純にいかないことがある。ついせんだっての三月のときの検証会議で、五十二、三、四、五例目という、やりましたんですが、そのもっと前のものでまだ検証してないものもございます。ですから、五十五例までといっても、実際は五十一しかやっていない。

 なぜかというと、なかなかすべて、御家族とかの都合とかいろんなこと、それから実際の作業班がうまく、数人で専門家が行くんだと私申しましたんですが、必ずしもスムーズにいかないことがあるとか、いろんな事情ございまして、それで、もうすぐにでもリアルタイムで検証すればいいんじゃないかというお考えあろうかと思うんですが、私どもの立場というのは、これまでの中で起こった事実関係について、医学的に、法的に、そしてまた一つの流れとしてあっせん業務に至るまで、それが適切か、妥当かという観点に関してやるという、そしてそこで立ち上げた問題については、国であったりあるいはネットワークの方に提言するという、こういう操作ですので、いっときも早くやるという、そういう観点では必ずしもないということでございます。

 これでお答えになっているかどうかなんですが、もっと早くやれということにも取れますが。

小池晃君

 リアルタイムですぐにやるというのは、それは恐らく無理だろうと思うんですけれども、今のお話でいっても、ということはもっと昔の、かなり前の事例もまだ検証されてないということがあるというふうにお聞きをしたわけですよね。御家族の事情とかいろいろあると思うんですが、やっぱり中心になるのは、医学的な対応がきちっとマニュアルどおりに行われていたのか、脳死判定要件をきちんと満たしていたのかというところが最大のやっぱり検証の課題になると思うんで、それが、医療機関が協力をしないというような実態があるんでしょうか。そうでなければ、なかなか進まないということがいま一つ私にはよく飲み込めないんですけれども。

参考人(藤原研司君)

 ちょっとごめんなさい。具体的なプロセスは臓器対策室が中心に行っていますので、ちょっとお待ちください。

 お答えします。

 これまで提供施設が断ったということは一事例もないんだそうです。遅れている、まあ遅れというのは一体どのぐらいを遅れと言うかなんですが、一番新しいのでも二年も三年もたつということはないですね。例えば四十八例目の、先ほど申し上げた脳波のあれも実際はこれ十九年と、十八年五月のものを検証会議では十一か月遅れた十九年四月に検証会議の作業を行っていますし、ですから、実際起こったときから一年以内ですね、これは。それを遅れていますと言われますと、なぜと聞きたくなるんですが、ちょっとそこは控えさせていただきます。

小池晃君

 先生にいろいろと言っても仕方がない問題なのかもしれないので。

 ただ、八十一例で五十五例の検証ということは、二十六例やられていないのがあるわけですから。そうすると、単純に計算しても平成十九年、それで、かなり最近のものもやっているとすれば、二、三年あるいは四、五年前のものでやられていないものがあるんだろうとは思うんで、これはちょっと今後、厚生労働省にもやはりきちっと言っていかなきゃいけないかなというふうに今お話をお聞きして思いましたし、しかも、その中で公開されているのは三十四例なんですよね。

 やっぱり検証作業で一番大事なのは、国民にしっかり検証の結果を示していくことではないかなと。プライバシーの問題なんかでなかなか困難な面もあるかもしれませんけれども、その公開の点なんかではいろんな支障が何かあるのかないのか。もし何か政府の対応に必要なことがあるのであれば言っていただければと思うんですが、いかがでしょうか。

参考人(藤原研司君)

 確認しましたんですが、家族が発表するのを難色を示すということ、それ以外の理由はないということです。

小池晃君

 ありがとうございました。

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