2010年174通常国会:速記録

厚生労働委員会 子ども手当法案に対する質疑


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2010年3月18日(木)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 日本の家族関係社会支出は、ヨーロッパと比較をして、これは支給期間も支給額も極めて低いということが指摘されてまいりました。一方で、不安定雇用の増加や労働者世帯の収入減など国民生活は非常に困難になっていて、親の貧困と格差がそのまま子どもに連鎖するということが大問題として指摘されてきたわけですが、最初に厚労省参考人に数字をお聞きしたいんですけど、主要国と比較をして日本の家族給付のGDP比率を御紹介ください。

  〔委員長退席、理事森ゆうこ君着席〕

政府参考人(伊岐典子君)

 主要国の家族関係社会支出の対GDP比というお尋ねでございます。

 これはOECDのデータでございますが、二〇〇五年ベースで日本が〇・八一%であるのに対しまして、ドイツが二・二二%、フランスが三・〇〇%、スウェーデンが三・二一%といった状況になってございます。

小池晃君

 国際的に見ても日本の家族関係支出、特に現金給付が非常に低いということが言われていて、やはり教育費負担などが急増する中でこの引上げということは非常に大事だというふうに私ども思っていますし、日本共産党はかねてから、児童手当の支給金額の引上げ、支給対象年齢の拡充ということを主張してきたわけでありまして、その限りにおいて今回の法案についてはこれはあえて反対はしませんと、賛成をしているわけであります。

 しかし、問題は再来年度でありまして、これは、民主党側が二万六千円に引き上げるとしているその財源として、控除から手当へといって、例えば配偶者控除の廃止も掲げております。また、政権内部からは、民間保育所に対する運営費の国庫負担金の一部一般財源化という声も出ていたわけです。しかし、子ども手当の財源を増税、例えば配偶者控除の廃止ということでやれば、これは子育て終わった世代や子どものいない世帯を犠牲にする形で負担を押し付けるということになりますし、これは許されないと私ども思っておりますし、民間保育所の運営国庫負担金を廃止して子ども手当というのは、これ本末転倒もいいところだというふうに考えております。

 厚労省に基本的な見解をお聞きしたいんですが、子ども手当を二万六千円に、大臣、引き上げる際の財源として、配偶者控除あるいは成年扶養控除の廃止、あるいは民間保育所の運営費国庫負担金の廃止、こういったことは考えておられるのか、厚労省としての考え方を説明していただきたい。

国務大臣(長妻昭君)

 まず、この配偶者控除の廃止というのは、働き方を制約するということもあり、これはマニフェストでも提示をさせていただいて、具体的にはこれ税調の中で議論をされるものだというふうに考えております。

 そして、その全体の財源ということでありますが、先ほどもお話し申し上げたんですけれども、幼保一体化の現物支給とこの現金支給の二十三年度というのはちょうど同時期に議論をするということになるわけでございますので、地方と国も財源だけではなくて役割分担の議論というのもする必要が出てまいりますので、そういう大きな議論の中で財源についてもそれを最終的には予算編成の中で確定をしていくということでありますので、今確定的なことを申し上げるというようなところではありません。

小池晃君

 配偶者控除の廃止はマニフェストであるというふうにおっしゃいますし、今指摘をした財源の問題についても否定をされないと。幼保一体化は、私どもはこれ意見を持っておりますし、それは機会があればまた別の議論をしたいと思いますが。

 私たちは、やっぱりこういう財源というのは、子育て世代の中で右のポケットから左のポケットへという形ではなくて、きちっとやはりその財源をつくる。かねてから言っておりますように、我々、聖域になっているやはり防衛省の予算、軍事費の問題もありますし、この間繰り返し行われてきた大企業減税という大穴をまずふさぐことが先決ではないかというふうに、この点では、財源の問題については、これは再来年以降はこれ大問題になっていくだろうというふうに思っております。これは引き続きちょっと議論をしたいと思うんです。

 それから、その財源の中で今日特に問題にしたいのは事業主負担の問題でありまして、家族関係社会支出全体に占める事業主負担、これ日本は非常に低いわけです。フランスは五七・九%、スウェーデンは二七・一%、日本は一二%です。家族関係社会支出のGDP比の給付額が低い上にその中での事業主の負担というのは低くなっている。

 日本の企業の社会保障負担は、これはドイツやフランスなどと比較してやっぱりこれは軽いと言われていますが、子ども手当においても例外ではありませんで、来年度のこの子ども手当における事業主負担は千四百三十六億円で、子ども手当財源に占める割合は九・八%ということです。非常に低いわけですね。

 政府の家族政策によって利益を受けるのは、決してそれは家族だけではありませんで、労働者として受け入れている企業、あるいは商品が売れればそれは企業に還元していく、企業も大きな利益を受けることになると思うんです。やはり子育てに対する企業の社会的責任ということがあるわけですから、中小企業に対する配慮はもちろん必要だと私ども思いますが、しかし、子ども手当の事業主負担について、これはやっぱり引き上げる方向で私は考えていくという政策目標を持つべきだと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(長妻昭君)

 今、個別に財源の部分の議論をなかなかする段階ではないといいますのは、先ほど申し上げましたように、これは大きな現物支給の構造を転換する、幼保一体化ということもありましょうし、地方と国との役割分担ということもありますので、その中で議論をしていくということであります。

 ただ、いずれにしましても、この子育て支援というのは、結果として少子化の流れを変えるということが実現できるというふうに考えておりますので、それは企業のみならず、お子さんがおられない方も含めて、社会保障の担い手が増えるという観点からも皆さんにとって意義あることだということはおっしゃるとおりだと思います。

小池晃君

 少なくとも、今の児童手当並みの事業主負担というのを維持していくということを考えるべきじゃありませんか。

国務大臣(長妻昭君)

 これは、先ほども申し上げましたように、事業主負担の部分だけを取り出して、それを増やす増やさないという議論はまだ、その全体像を議論をして、考え方を提示して、そしてその財源を決めていくと、こういうプロセスをたどるわけでありますので、その中で我々としては決めていきたいと。当然、それが決まったときには国会にも御報告をして、質疑で詳細を説明をするということになります。

小池晃君

 一方、重大だと思うのは、子ども手当が増額するということをもって企業の家族手当を削減するという動きが出てきているわけです。

 日本経団連のいわゆる経労委報告ではこういうふうに言っています。従業員の生活保障として家族手当を支給する企業も多いが、今年六月から支給が予定されている子ども手当の創設は、仕事の対価としての賃金や諸手当の在り方について考えるきっかけになると。子ども手当出るから、家族手当というのはこれはなくしていこうじゃないかというような、こういうことも出てきているんですね。

 ところが、これは私、大臣には、この問題はちょっと非常に問題だと思っているんですが、大臣は三月十日の衆議院の厚労委員会でこうおっしゃっているんです。これは企業の自由度に任せると、国がやめるのはけしからぬとか言う権限がどの程度あるのか、基本的には企業の自由であるというふうにおっしゃったんだけれども、私、大臣、こんなことを大臣が国会で答弁をしたらば、企業の側は、もうこれは子ども手当出たんだから家族手当をなくそうじゃないかという議論になりますよ。

  〔理事森ゆうこ君退席、委員長着席〕

 どこまで権限があるかどうかは別として、大臣として私はこんなことを言ってはいけないと。少なくともやっぱり企業はきちんと、厚生労働省なんだから、そういう意味ではきちっと社会的責任を守るべきだというふうに私は大臣は言うべきで、こういう発言はちょっといただけない。やはりきちっと企業も、こういう家族に対する企業としての社会的責任を守っていくということを大臣として言うべきじゃないですか。

国務大臣(長妻昭君)

 この質疑の中で、今引用していただいたところで私が申し上げたのは、基本的にこれは私の立場としてはやはり少子化の流れを変えたい、子ども、子育てに対する全体の予算が少ないという中で、それは子ども手当が出たとしても企業には継続して子育て支援策はやっていただきたいと、こういう基本的な考え方はありますけれども、ただ、それを決めるのは、最終的にそれは企業の判断で決められるということで申し上げたところでありまして、それはもちろん企業だけではなくて労使の判断ということにもなろうかと思います。

 その中で、今人事院が民間の給与とかあるいはそういう福利厚生を定期的に調査しておりますので、この子ども手当、二十二年度出た段階で、あるいは動向の調査ということを注視をして、それが何か極端にそういう方向に行く状況があれば、いろいろな我々もメッセージや考え方を出す必要があると判断をするわけでありますので、その調査をまずは見ていきたいということであります。

小池晃君

 いや、減っちゃってから後では遅いわけで、駄目ですよ、やっぱりきちっと。さっきの答弁でいえば、前半だけで良かったんですよ。後で余計なことをおっしゃるからこれは問題なわけで、私は前の方をしっかり強調して企業に対しては物を言うという立場をやっていただきたいというふうに思います。

 それから、もう一つの問題が、先ほどからも議論になっています、子育て支援というのは現金給付だけでは駄目だと、現物給付と車の両輪だと。私は、バランスが悪いから現金給付は控えておけというのは、これは発展の議論ではないわけで、バランスを整える方向で両方進めていくというのが国の政策としてはあるべきだというふうに思うんです。

 そういう点でいうと、やっぱりM字カーブをなだらかにして働き続けられる環境をつくっていく、そのためにはやっぱり保育所の待機児童問題は引き続き重要です。極めて今深刻になっているのが、今日お配りしている、これは東京新聞の一面に出た記事ですが、東京二十三区で人口流入に加えて不況で就労を望む家族が増えているために、これは入園申込みが東京二十三区軒並み増えているという問題なんですね。下の方にありますが、千代田区というのは待機児ゼロ記録八年間続いていたんだけれども、その千代田区も今年の四月で待機児が発生する可能性が高いと。新聞や雑誌ではもう、就活という言葉もありますが、保活という言葉まで出てきているという状況であります。要するに保育所に預けられないと退職を余儀なくされるということで、保育所回りでもう本当に必死になっていると。

 これは不況と相まって、これは東京だけじゃない、大都市圏ではこういう事態がどこでも起こってきているわけで、これ、基本認識を大臣にお伺いしたいんですが、やはりこの保育所の待機児童問題の解決というのの基本は、これは認可保育所の増設によって進めるべきだというふうに思うんですが、いかがですか。

国務大臣(長妻昭君)

 基本はそのとおりだと思います。

小池晃君

 その上で、その認可保育所を、じゃどう造るのかということなんですよ。特にやっぱり大都市圏で認可保育所を造る場合に一番ネックになるのは土地の手当てなんです。東京社会福祉協議会保育部会が加入している私立の認可保育所に対するアンケート調査では、保育所新設のハードル、課題として、約五割の保育所が、適切な場所、スペースの確保というふうに言っています。それから、待機児解消に向けた具体的提案の第一位は、土地、建物の確保や増改築に対する補助、第二位が、行政による土地、建物の確保、無償貸与なんですね。そもそも公立保育所に対しては国からの補助金は何もなくなりました。民間に対しても建設費の補助だけで、土地確保には何の支援もありません。

 大臣、こういう事態の中で、保育所に対するニーズは高まっている、しかし、東京、例えば二十三区の中で土地を確保するなんてとんでもないと、とてもできないという中で、どうやって認可保育所を造ると、増やすというふうにお考えですか。

国務大臣(長妻昭君)

 今おっしゃられるように、土地の取得が大変だということでありまして、これは一つの考え方でありますが、認可保育所の分園という考え方で、これは第二次補正予算で御了解をいただいて、安心こども基金に二百億円積み増しをして、そこから分園を全力で探していこうということで、これについては、空き教室を使ったりあるいは公民館などの公共施設の空きスペース、当然安全性が確保されなければならないというのは言うまでもありませんけれども、あるいは公営住宅等の空いているスペースを活用させていただいて、あらゆる場所について、これ、文科省とも空きスペース、空き教室では連携をして、ここに分園をつくってお子さんを見ていこうというようなことも考えておりますけれども、さらには五か年計画というのも出させていただいておりますので、あらゆる手段を使って定員を増やしていくということであります。

小池晃君

 そういう手だて、基金事業なども存じ上げておりますけれども、利用できれば利用したいんだけど、これ、ネックはやっぱり土地の確保なんだという声はあるわけですね。借地料を継続的に負担できるような補助が約束されればできる、でもそれがないから難しいという声も聞いております。

 行政が所有している、じゃ、空いている土地がないのかというと、そうではないわけですね。自治体なんかでは、これは利用可能な土地を保育所に活用する努力をやっている。

 じゃ、国の土地はどうかということをちょっと財務省にお聞きしたいんですけれども、東京都内で行政が利用していない普通財産である土地の状況はどうなっているか、御説明ください。

政府参考人(川北力君)

 お答え申し上げます。

 東京都二十三区等に所在する私ども所管しております普通財産の面積でございますが、配付いただきました私どもが提出した資料にありますとおり、二十三区内で五百九十八万平米余り、二十三区以外で千九百六十九万平米余りで、合計で二千五百六十七万七千平米でございます。

 ただ、この数字そのものは、既に地方公共団体に公園等として私どもの方から貸し出している土地ですとか山林原野等が大宗を占めておりますので、すぐ利用、活用できるものという意味でございますと、この数字に比べますとかなり限られたものになるということは付け加えさせていただきます。

小池晃君

 しかし、東京二十三区に山林原野はそうないわけでありまして、これ、かなり利用できる部分があるはずなんですよ。首都圏見てもかなりあるわけですね。もちろんこれ、米軍基地なんかの分も入っているというふうにお聞きしていますから、しかし、それを除いても、移転した庁舎や公務員住宅の跡地や税金の物納地など、直ちにやはり保育所として活用できるような土地はあると思うんです。

 こういうところを、財務省にお聞きしたいんですけれども、例えば庁舎や公務員住宅の跡地や物納地などを自治体や社会福祉法人などが保育所として活用したいと考えた場合に、何らかの優遇措置はあるんでしょうか。

政府参考人(川北力君)

 財政法によりまして、国有財産は適正な対価、すなわち時価による譲渡又は貸付けが原則とされております。

 お尋ねの財産につきましては、庁舎、宿舎の移転跡地ですと移転するための経費、コストが掛かっておりますし、あるいは物納の財産につきましては相続税の金銭納付に代えて入ってきているものでございますので、早期に金銭に換価するという必要がございますので、原則どおり全面積を時価売払いという取扱いにしておるところでございます。

小池晃君

 二十三区の土地を時価で買うようなお金があれば、だれも苦労をしないわけですよね。国が保有しているまとまった土地が現にあるわけだし、これはやっぱり待機児解消という国家的事業でしょう、緊急事業でしょう。やっぱり私は、財務省にはこれを時価より例えば低価格で、ただで出せとは言いませんよ、時価より低価格で譲渡をする、あるいは賃貸、無償あるいは廉価での賃貸、こういうことを検討すべきじゃないかと思うんですが、財務省としては検討しないんですか。

政府参考人(川北力君)

 国有財産の有効活用につきましては、財務大臣から新しい成長戦略に関しまして幅広い観点から検討していく旨指示を受けております。また、保育所に国有財産を活用するという点につきましては、厚生労働省を始め関係省庁とともに何ができるか前向きに検討しておきたいというふうに考えております。

 ただ、何分国有財産行政といたしましては、財政法なり国有財産法なりの前提の下に先ほど申し上げたような考え方になっているというところでございます。

小池晃君

 大臣、ネックの財務省が前向きと言ったんですから、これ是非考えるべきだと。政府も各省の担当者を集めて会議もやったというふうにお聞きしておりますが、実際には検討進んでないわけで、やっぱり保育行政担当する厚労省として、普通財産を所管している財務省、あるいはURなんかの土地もある、これは国交省ですが、保育所を設置するためにこれを無償貸与する、時価より低い価格で優遇する、こういうことをしっかり実現するために厚労省として働きかけするべきじゃないかと思うんですが、いかがですか。

国務大臣(長妻昭君)

 今ちょっとお触れいただいた昨年十二月二十四日に、地域における余裕スペースを活用した取組ということで、これは厚生労働省、文部科学省、国土交通省、財務省、四省が連携して取り組むということで打合せを実施をしたわけでありますので、今御指摘もございましたので、ちょっとこの打合せの結果やその後の経緯を調査をいたしまして、今後さらに分園の取組の中でそれが拡充できるような仕組みがあるのか、つくれないのか、こういうことを検討していきたいと思います。

小池晃君

 終わります。

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