2010年174通常国会:速記録

厚生労働委員会 子ども手当法案に関する参考人質疑


  • 子育て支援 総合的に/参院委 参考人から意見相次ぐ/小池氏質問<(関連記事)
2010年3月24日(水)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 今日のお話でも、これまでの委員会の議論でも、やはり子育て世代の経済的な状態は非常に大変であって、現金給付の拡大は必要であるということでは、それを否定するという議論はないと思うんですね。ただ、五兆円という規模に、取りあえず今年の法案の範囲でいうと私ども賛成しているんですが、五兆円という規模で進めていくということについては疑問があるということを繰り返し申し上げてきて、やっぱりバランスの問題があると。

 その点で、保育所の実態を、安川参考人が実態をお話しいただいたんですけれども、やはり今の深刻な保育所の待機児童の問題や、例えば子どもの医療費の問題なんかも含めてやっぱり現物給付ということも非常に日本は遅れているわけで、先ほど安川参考人も子ども手当の必要性はお話しになったんですが、そういった経済的支援とともに、今少子化対策、子育て政策で現場の実践から見てこういったことをやっぱりやっていくべきだということがあれば、そして、そういう目から見て、今の政権の子育て政策について御意見があればお聞きしたいというふうに思います。

委員長(柳田稔君)

 あの、どなたの。

小池晃君

 安川参考人です。

参考人(安川信一郎君)

 本当に実態的には、私が住んでいるのは二十三区で、保育園をしているのもそこですから、非常に待機児問題というのが深刻な状態になっているのは現実なわけですね。本当に働きたくても働けない保護者がいっぱいいる、子どもをまともに育てたくても育てない親がいっぱいいる、これが現実だと思っています。

 それで、今の政権というか、私が一番気になるというふうに思うのは、先ほども最後のところで述べましたけれども、やはり基本的には国が責任を持って公的な保育制度を、今の制度をより充実させるというのが本来の在り方だというふうに私は、子どもたちの状態とか親の状態を見ると思っています。

 それで、今、少子化対策部会も含めて、前の自公政権のときから今の保育制度の中身というか、検討を進めていますけれども、新たな保育制度の仕組みをつくるということで、やはり今の制度だと待機児が多いからスピード感を持つ制度に変える必要があるんじゃないかということで論議が進んでいるようですけれども、私はやっぱり、児童福祉法の二十四条の中で両親の就労等で保育に欠ける状況にある子どもたちはきちっと保育所に入所させると、最低基準を超える水準をやっぱり確保してきた保育を守る、そういう公の保育をきちっと責任を持ってやっていくということがないと、非常に危険な状態になるんじゃないかなというふうに思っています。今度の新たな保育の制度の仕組みという中では、この公の責任を私は放棄するものじゃないかなというふうに思っています。

 実際的には、直接入所という形で、保護者が子どもが生まれたら区市町村に行って認定書をもらって、保護者が自分で保育所を見付けなければいけないという状態になるわけですね。私は施設長ですから、もしそうなったときに、保護者が来たときに面接しますよね。それで、何を基準に選ぶかというと、これは、私はあくどい経営者じゃないですからそうはしませんけれども、まず自分の保育園がちゃんと経営できるかどうかということを考えると思うんですね。そのときに、保護者の就労状態というか収入を見ると思うんです、本当にこの保護者がきちっと保育料を払ってくれる保証がある保護者なのかどうかということで。直接契約ですから、保育料が払っていただけないと経営者としては契約違反になりますから、じゃやめてもらうということもあるわけです。そういったときに、本当に経済的に恵まれている人はいい保育を受けられる。今、貧困の問題は非常に切実になっていますけれども、本当に貧しい人は保育を受ける権利すらなくなってしまう、そういう今保育制度が国のレベルで考えられているというのは、私は非常に問題だというふうに思っています。

 やはり、先ほども論議ありましたけれども、この子どもたちは日本の国を支える子どもたちなんですね。この日本中の子どもたちに対して、きちっと公、国が責任を持つという保育制度を今より更に充実させていく、そのために待機児問題も解消するにはやっぱりきちっと公的な制度で保育所を建てるというのが私は筋ではないかなというふうに思っています。

 今、保育所の事態も規制緩和の中でいろんな企業とか参入してきています。でも、そこでどういうことが実際行われるかというと、この間、チャイルド、どっかの企業が中野と三鷹でやっているのが経済的に破綻したと、経営が成り立たないということでもう投げ出しちゃうわけですね。そういう状態に置かれたときに、本当にこれでいいのかというふうにすごく思います。やはり一人一人の子どもたちが自分らしく生きていく、そして、親が働き続けられるためには、今の公的保育制度を更に充実させる立場で、是非民主党政権になってもその立場でやっていただくのが私は本来ではないかなというふうに現場を預かっている者として思います。

小池晃君

 ありがとうございました。

 ちょっと話題変えて、子ども手当の制度の問題について、原田参考人とそれから森田参考人、ちょっと御意見聞きたいんですけれども。

 外国人に対する給付というのはかなり話題になっていて、これはある意味では児童手当の制度をそのまま援用したということでこういう事態になっているんで、私はやっぱり一定のルールは必要ではないかなというふうには思っているんですけれども、それは政府の方でも検討するという話に今なってきているんですね。

 この問題について、先ほど原田参考人、ちょっと時間切れでお話しいただけなかったところもあるんで、大きな考え方で結構だと思うんで、今こういう議論になっている中で、この問題、外国人の子どもの、外国居住の人たちに対する支給問題で御意見聞かせていただければと思いますが、いかがでしょうか。

参考人(原田泰君)

 子ども手当の支給範囲というのは、一般論で言えば、ほかの国はどうしているのかということと、それから日本の大国としての寛大さ、その二つを考える必要があると思います。日本はもう大国じゃないから寛大さは必要ないと言う方もいらっしゃるかもしれませんけれども、私はそうは思いません。ただし、過度の寛大さというのをやりますと、かえって偏狭な反対論を生みかねないと思います。ですから、そういうことはむしろ望ましくないと私は思っております。

 これは、非常に微妙な問題を含んでいるものでありますから、この問題についての専門家というのはいないわけで、国民に選ばれた方々が、ほかの国がどうやっているのか、それから、何らかの制限を付けたときに本当にそれを実行できるのか、そういう実務的な観点ですね、そういうことを十分確認された上で、十分に議論をしていただいて決めていただければよいというように私は思います。

参考人(森田明美君)

 私も基本的には原田参考人と同じように考えております。

 特に、国際ルールというのは私は日本にとってもとても大事なところで、日本の子どもたちあるいは日本の親たちが海外で暮らすというケースもたくさんあるわけですので、やはり相互にそこの調整は取っていかなければいけないということはとても感じます。

 その点、やはり非常に日本の中からしか見ていない、あるいは日本の親の立場からしか見ていない、これはあるいは日本の大人の立場からしか見ていないという政策になってはならず、子どもの立場から、特に子どもの権利条約なんかでは国際ルールを非常に今重視してきておりますので、そういったところをしっかり見極めながら、この海外に暮らしている子どもたちの問題というのを見ていく必要があるのではないかというふうに思います。

小池晃君

 ありがとうございました。

 やっぱり子どものための施策ですから、子どもの権利という視点でしっかりこの問題を議論していくことが非常に大事だと思いますので、今日の御意見踏まえてしっかり国会でも議論させていただきたいというふうに思います。

 終わります。

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