2010年174通常国会:速記録

厚生労働委員会


2010年4月22日(木)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 ちょっと法案に入る前に、その前提となる問題で、今日ちょっと急に大塚副大臣に来ていただきましてありがとうございます。

 昨日、行政刷新会議の規制・制度改革に関する分科会ライフイノベーションワーキンググループが開かれまして、混合診療の原則解禁について議論をされています。これはやっぱりこの議論の前提となるような重大な論点だと思うんですが。

 日本の医療というのは、国民皆保険で最新の医療技術も安全性と有効性を確認しながら保険適用してきた。このことによって、やはり国民の健康を保持し長寿国をつくってきたと思うんですね。私はやっぱり、混合診療を解禁するということになれば、これは貧富の格差が命の格差ということにつながりかねないし、地域医療の現場に重大な影響を与えることにならざるを得ないと思っております。

副大臣(大塚耕平君)

 御質問ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、この構成員の中には、お医者さんばかりではなくて、医療に造詣の深い方々という意味でメンバーを選定をさせていただきました。お医者さんも二名入っておられますので、委員御指摘のような御懸念も含めてフラットに議論が進められるものというふうに理解をしております。

 もちろん分科会の会長は私自身が務めさせていただいておりますので、混合診療に関する様々な論点、私自身も私なりに理解をしておりますので、御懸念のようなことにならないようにしっかりと運営をさせていただきたいと思っております。

小池晃君

 そういうふうにならないようにするとおっしゃるんだけれども、昨日、終わった後で松山事務局長は、混合診療については委員は基本的に拡大の方向で考えるべきだという方ばかりだというふうに記者団に答えているんですね。これでフラットな議論になるんだろうか、私は一直線の議論になりかねないんじゃないかというふうに思っていまして、やっぱりこのまま結論を出すんじゃなくて、例えば地域医療関係者のヒアリングをやる。今日ちょっと内閣府の方に聞いたらそういった予定は全くないとおっしゃっているんですけれども、やっぱりそういう声を聴いて議論をしていかないといけないんじゃないですか。

副大臣(大塚耕平君)

 まず、この規制・制度改革の分科会、この分科会自身に何か法的な決定権限があるわけではありませんので、分科会は分科会として一つの考え方をお示しする、分科会としての方針をお示しするということになろうかと思います。

 そういう中で、昨日、私自身も中で発言をさせていただいたんですけれども、日本の医療が、先ほど委員も、非常に日本の医療が高品質で、そして国民の皆さんに満足をいただける安全な医療を提供するという、そういう御趣旨の御発言をされたかと思うんですが、そういう思いは全く共有をしております。

 ただ、その一方で、今の日本の医療に全く何も問題がないということであれば、その日本の医療を構成している様々なファクトどれ一つ取っても変える必要はないと思います。ところが、例えば医師の皆さんの勤務状況の問題から始まり、そして日本の医療が本当に高品質なのかということも最近は問われ始めている面もあります。そういう問題が何がしかあるとすれば、日本の医療を構成している様々なファクトについて虚心坦懐に議論をし、見直しの必要があれば見直しをすることも、これはあるべき姿だと思っております。

 そして、混合診療の問題はその幾つもあるファクトのうちの一つであって、これをどうすれば本当に今問題だと言われている医療がいい方向に行くのかどうか、その答えは一義的ではないと思いますので、拙速かつ短絡的な展開にならないようにしっかりと運営をさせていただきたいというふうに思っております。

小池晃君

 拙速かつ短絡的にしないためにも、やっぱり地域医療関係者なんかの声を聴くような場をつくるべきでないか、そのことはどうですか。

副大臣(大塚耕平君)

 この分科会は、今の分科会のメンバーは七月までの任期でございまして、六月に今回の分科会のミッションとして一つの分科会の考え方を出すというワークロードを設定して進めております。

 そういう中で、今委員が御指摘いただいた点も時間的余裕があれば是非やってみたいとは思いますので、よく検討してみたいというふうに思います。

小池晃君

 大臣は先日の委員会で、混合診療は慎重な議論が必要だというふうに述べています。私は、やっぱり慎重な、本当に綿密な議論をしなければいけない重大なテーマだと思っていますが、大臣、今のような議論の進め方について厚労省として容認されるんですか。やっぱりきちっと、もっと慎重な、徹底的な議論をすべきだというふうにおっしゃるべきじゃないですか。

国務大臣(長妻昭君)

 私自身は、医療の分野、これ、政権交代をいたしまして、重視すべきところは重視する、十年ぶりに診療報酬ネットプラスにする。ただ、同じ考え方のままでそのまま進んでいいのかというとそうではないということで、いろいろな有識者あるいは知見を持った方々、あるいは医療分野に限らずほかの分野から医療を御覧になっておられる方の意見を広く聴くというのは、これは私にとっても厚生労働行政にとっても大変貴重なことである、取り入れるべきことは取り入れるという姿勢がまず大前提であります。

 その中で、例えば今言われた個別の混合診療の問題でございますけれども、今時点も、御存じのように、先進医療、高度医療という枠の中でその部分の混合診療というのはこれ認められているというのが項目数にして百五あるわけでございます。それについて全体的にどう考えていくのかということについては、いろいろな人の御意見を聴き、規制改革会議の御意見も聴き、そして私どもの中でも判断をするということでございますので、まだ検討過程でありますので、どういう御指摘が出るのか、我々もそれを注視をしていきたいというふうに思います。

 ただ、日本国はこれ皆保険の国でございますので、お金の多寡によって救われる命、救われない命、こういうことが発生するということがあってはなりませんので、そういう原則を踏まえて御指摘をいただき、我々も検討するということであります。

小池晃君

 何か報道によれば、民主党の中で混合診療の推進ということをマニフェストに入れるというような議論もあるやに聞いております。そんな方向にかじを切るようなことが絶対にあってはならないというふうに思っていますので、(発言する者あり)ないないという声があるので、それを信じていたいと思いますが、これ、本当に重大な日本の医療の根幹にかかわる問題ですので、きっちり議論をしていただきたいというふうに思います。

 それから、法案について、国保の広域化のことを聞きたいんですが、国保の最大の問題というのは、これは支払能力超えた高い保険料で、広域化だけで解決する問題ではないと思うんですね。結局、広域化して保険料を平準化するというんだけれども、都道府県単位で平準化しても、これ、保険者である市町村ごとの一人当たりの給付費というのは、例えば東京都の場合でも二倍以上の格差がございます。これを、共同安定化事業を拡大していって保険給付費が減少する自治体もありますけれども、増える自治体も出てきます。

 さっきから肩代わり肩代わりという話出ているんですが、やっぱりこの問題でも、結局、国保財政の安定化というけれども、財政の比較的安定した市町村に財政困難な市町村の救済を肩代わりさせるということにしかならないんじゃないですか。

大臣政務官(足立信也君)

 広域化だけでという話でございますけれども、当然のことながら、広域化するということは平準化されるわけですから、委員おっしゃるように、今までよりも上がるところもあれば下がるところも当然あるわけでございます。ですから、それだけで委員の御指摘である保険料を下げることにはならないでしょうと、それはそのとおりだと思います。

 ですから、国民健康保険の中には当然国庫負担の問題等も含めて考えなければならない。まさに、後期高齢者医療制度の今の改革会議の中で一体的に考えていくということだと思います。

小池晃君

 やっぱり国庫負担の増額なしにただ広域化してもすべての自治体にメリットがあるわけじゃない、当然だと思うんですが、今回のこの広域化等支援方針の策定は都道府県の判断だけでやることになるんでしょうか。簡潔にお答えください。

大臣政務官(足立信也君)

 はい、そのとおりです。

小池晃君

 ということになると、結局、この事業への参加、例えば、具体的には対象が拡大された保険財政共同安定化事業の拠出は市町村は拒否できないということになりますね。

国務大臣(長妻昭君)

 今言われたのは保険財政共同安定化事業のことだと思いますけれども、これについては、もし委員に誤解というか、これによって財政を調整するような仕組みということではございませんで、これは、一人一か月三十万円を超える高額な医療費の負担を市町村が共有する事業について、その事業の対象となる医療費の範囲を都道府県が広域化等の支援方針に定めることにより拡大することができるということで、ある意味では再保険的なリスクを共有するということであります。

小池晃君

 結局、この仕組みだと、広域化の方針が策定されたら市町村はそれに従う努力義務が生まれますし、結局これは拒否しようとしたってできない。もし拒否すれば都道府県調整交付金の配分が行われないということになりますから、成り立たない。結局、市町村の自治事務であるこの国保事務の広域化を強引に進める権限を都道府県に与えるということになっちゃうと思うんですね。

 一方で、今回の法改正によって、医療費が多額になっている市町村を厚生労働大臣が指定する指定市町村制度は廃止されるわけです。これは分権委員会からの指摘によるものだと。一方で国はそれをやめる、しかし都道府県がペナルティーを科せるようにするということは、国が地方を縛ることはやめるといいながら都道府県が市町村を縛るような制度をつくるというのは、これは矛盾じゃないですか。

国務大臣(長妻昭君)

 今おっしゃられたように、この指定市町村制度というのは廃止をいたします。これは、医療費が高い市町村を指定をして、医療費適正化が実現できないと国がペナルティーを科してお金を簡単に言えば減らすということはやめるということでございますけれども、今後は、都道府県がしっかりと市町村の御意見を聴いて定める広域化方針に従って指導してくださいと、国が全国一律そういうものを措置をすることはいたしませんという、そういう趣旨でございますので、更にきめ細かく実態に応じた必要があれば指導がなされるものだというふうに考えております。

小池晃君

 私は、国によるペナルティーはなくなったけれども、都道府県がやるんだといっても、市町村にとってみれば上からの押し付けという点ではこれは変わりないわけですから、地方主権、地方分権と言うけれども、そういうことになっていないんじゃないかなというふうに思うんですよ。

 それから、国保財政の悪化の原因として収納率の低さを言っていますが、それに更に拍車掛けているのは収納率が低いと普通調整交付金を減額するというペナルティーの問題で、これ私、自公政権時代にもこんなものはやめるべきだというふうに主張してまいりました。

 参考人にお聞きしたいんですが、二〇〇七年、二〇〇八年の減額、総額は幾らになるでしょうか。

政府参考人(外口崇君)

 二〇〇七年度は約二百八十八億円、二〇〇八年度は約二百七十六億円であります。

小池晃君

 これだけのペナルティーが掛かっているわけですね。東京都の資料をもらいましたが、これ見ますと、二〇〇七年度四十五自治体、二〇〇八年度五十一自治体が減額対象となっていて、国保一世帯当たりのペナルティー額千円超える自治体が十二自治体あります。中には、一世帯当たり三千百十五円、これ神津島なんですけれども、そういうところもあるんです。

 収納率低いというのは、別にサボっていてそうなっているというんじゃなくて、やっぱり高過ぎる保険料を払えない、あるいは住民の経済状態があるわけで、むしろ必死に努力している自治体が多いわけですね。そういうところに収納率が低いからといってペナルティーを科すということをやれば、悪循環でますます収納率が下がっていくという問題がある。このことは自公政権のときにも私、指摘をいたしました。

 今回の法改正によって、この収納率による普通調整交付金の減額措置制度は廃止されることになるんでしょうか。

国務大臣(長妻昭君)

 これもいろいろな御指摘もございまして、今までは国が保険料収納率目標の段階に応じてペナルティーを掛けてきた。簡単に言えばお金を減らすということをしておりましたけれども、それは今後は国としてはしないということであります。

小池晃君

 国としてはしないと。しかし、仕組みとしては広域化支援方針にいろんな仕組みが組み込まれているわけですね。

 それで、ちょっと確認したいのは、この広域化等支援方針に収納率の達成状況に応じて助言、勧告の措置が盛り込まれれば、都道府県調整交付金の収納率によるペナルティーが盛り込まれなくても、これは普通調整交付金のペナルティーの適用は除外されるというふうに理解してよろしいんですね。

政府参考人(外口崇君)

 そのとおりでございます。

小池晃君

 一応、これはもうこういうふうに詳しく聞くって通告してありますから、ちゃんと聞いておいてほしいんですけど。

 そういうことだということで、結局、だから都道府県の判断でペナルティーを科さないという道もできてくる仕組みなんだろうというふうに思うんです。

 足立政務官は、衆議院の委員会でこういうふうに言っています。広域化を図る中で、目標の収納率を定めた上で、達成状況に応じて都道府県の技術的助言や勧告をするということをやると言いながら、その一方で、そういうふうに言っていた上で、都道府県の調整交付金は条例によって定めるもので特段の決まりはないと、国としては都道府県の調整交付金が減額されないように要請をしたいというふうにおっしゃっているんですね。

 私はこれは大事なことだと思うんですが、だとすれば、やっぱりきちっと都道府県に対してそういう趣旨を伝えていただきたいというふうに思うんですが、いかがですか。

大臣政務官(足立信也君)

 伝え方についても、またいろいろ当然方法はあるとは思いますが、国の姿勢としては要請したいということはまさにそのとおりで、しっかり伝えていきたいと思います。

小池晃君

 こういう仕組みについてはちゃんと周知をしていただきたいというふうに思っております。

 私はやはり、全体としてこういう形での強引な広域化、国庫負担を入れるようなことをしないで強引に広域化に持っていくようなやり方についてはやめるべきだということを重ねて申し上げたいと思います。

 最後に、ちょっと別件なんですが、過労死のちょっと問題を取り上げたい。

 四月十六日に名古屋高裁で、マツヤデンキの豊川店というところで働いていた心臓機能障害者の小池勝則さんという方が二〇〇〇年に死亡された、これを過労死だということで、一審を取り消して過労死と認定をいたしました。この問題は私、舛添大臣にもこの委員会で取り上げて質問しておりまして、やっぱり憲法というのは国民の勤労権を認めていて、障害者の就労を支援しているんですから、それをやっている以上、この業務が過重であったかどうかは、平均的な労働者の基準じゃなくて障害を持っている方の基準で判断すべきだということを申し上げて、やっぱり障害者独自の労災認定基準を作るべきだということをこの委員会で申し上げて、大臣も今後の検討課題にしたいというふうにおっしゃったんですね。そういうやり取りがあった上でこういう判決が出ました。

 今回の判決は、障害を持つ人の労働と通常の労働者の労働とは同じ物差しでは測れないという極めて当然の認定だと思います。

 この原告で妻の小池友子さんは、この判決に当たって、これ以上被災者を増やさないでほしいと、上告しないで職場環境の改善に取り組んでほしいというふうに訴えて、厚労省にも直接要請したいとおっしゃっています。

 大臣、この判決の趣旨は、障害を持ちながら働いている方にとって大変重いものだというふうに思います。厚生労働省としては、上告をせずに、直接要望も聞いて、こういう不幸が二度と起こらないようにやっぱり障害者問題の解決に取り組むべきではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(長妻昭君)

 これについて、四月十六日の名古屋高裁の判決を私も見ましたけれども、これは労災認定是か非かということが争われた裁判でございます。

 その中で、今までにない考え方というのが判決の中の労災認定の基準として盛り込まれておりまして、これは、事業主の災害補償責任の範囲、あるいは労災補償の在り方の基本的な今までの解釈の変更ということもございますので、私どもとしては慎重に検討していきたいと思います。

小池晃君

 上告はしないでいただきたい。重ねて申し上げて、質問を終わります。

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