2010年174通常国会:速記録

厚生労働委員会


  • 最賃の抜本アップを/生活保護下回る実態追及/小池議員<(関連記事)
2010年4月20日(木)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 後ほど採決される年金遅延加算法について、これは、公布日以前に支給された場合には遅延加算金が自動的に加算されるけれども、それ以後は申請しないと駄目だということで、公布日前に支払を行われた方が漏れなく手続できるように個別に周知をしていただきたいと。それから、手続も簡略化していただきたいと。質問しようと思っていたんですが、さっき答弁ありましたので、もうその線できちっとやっていただきたいということで、答弁を求めません。

   〔理事小林正夫君退席、委員長着席〕

 その上で、最低賃金について聞きたいんですが、大臣は、二〇〇七年、最低賃金法改正のときに、一般的な働き方をしたときに最低賃金が生活保護を下回らないという哲学があるかと問いかけて、当時の柳澤大臣も、最低賃金は生活保護を下回らない水準にすると答弁をしているんですね。

 厚生労働省、参考人にお伺いしますが、現在の時点で最低賃金が生活保護水準に到達していない都道府県どれだけあるのか、乖離を簡単にお示しください。

政府参考人(金子順一君)

 下回っております都道府県でございますが、全部で十都道府県でございます。二十一年度の数字でございます。

 具体的な乖離額ですが、最大は神奈川県の四十三円、最小が青森県の六円となっております。

小池晃君

 いまだに十都道府県が下回っているわけです。これは今日お配りした資料を厚生労働省から示していただきました。

 これによると、例えば東京は三十五円、大阪は十二円引き上げれば生活保護水準を上回ることになるんですが、大臣、もちろんこの状態の改善、解決は必要だと思うんですけれども、これだけ上がれば本当に生活保護水準の生活ができるようになるのか、大臣の見解をお聞きします。

国務大臣(長妻昭君)

 まずは、これは法律でも規定が、最低賃金法でもある趣旨というのは、最低賃金は生活保護を下回らない水準となるよう配慮すべきと、こういうふうに解釈されると思いますので、今おっしゃられた、下回っているものを下回らないようにするというのは一つの大きな課題であるというふうに考えております。

 その賃金で生活ができるか否かということでありますけれども、これについてはナショナルミニマムということもございますけれども、生活保護と異なりまして、これは貯金がどの程度あるのかなどなど総合的に判断されるべきものだと思います。

小池晃君

 数字の上でこの乖離がなくなったからといって、生活保護水準の生活できるということは、そうはなっていないという実態があります。

 今日お配りした資料の二枚目はその事実を示すものでありますけれども、大阪の労働組合、大阪労連が実態、労働生活相談の中で出た具体的な事例です。

 例えば、三つ例を挙げているんですが、最初の例、清掃委託の会社で勤務する六十二歳の男性ですが、これ、時給は地域最賃を七円上回る七百七十五円。一日七時間、月二十一日働いて、一か月の給料は十一万余り。ここから税、社会保険料を取ると、手取りは十万円切るんですね。それで、これでは生きていけない、暮らしていけないということで相談に来られて、生活保護申請して、これは勤労に必要な経費の控除も認められて、支給されることになりました。

 二つ、残り二つも全部フルタイムで働いて生活保護受給に至っているんです。

 大阪では時給十二円引き上げれば生活保護水準になるはずなんですが、この方々の場合は、一時間当たりの賃金三百円以上引き上げないと、これは生活保護水準になりません。

 問題は、何でこんなことになるのかなんですが、ちょっと厚生労働省にお聞きしますけれども、厚労省が最低賃金と生活保護水準を比較する際に、一か月の賃金額を出すときの労働時間の基準を百七十三・八時間としていると。この根拠を示していただきたいのと、これについて審議会で問題点指摘の意見はありませんか。

政府参考人(金子順一君)

 今委員から御指摘がございましたけれども、最低賃金額と生活保護の水準を比較するに当たりましては、最低賃金額が時給でございますので、月額換算して比較する必要があるわけでございます。その際、どういう数字を使うかでございますが、今、最低賃金審議会で使っておりますのは御指摘のございましたような法定労働時間でございます。これは平成二十年度の最低賃金審議会におきまして、使用者側はこの法定労働時間の採用を主張しておりました。労働者側は所定内の実労働時間の方を使うべきだと、こういう議論がございました。結局、その審議会での議論としては、公益委員が引き取る形で今使っております法定労働時間の方が採用されたと、こういう経緯になっておるところでございます。

 これは、最低賃金はすべての労働者に適用されるものでありますとか、生活保護との比較によって、引上げ額を計算する上での実務上安定的に行う必要があるとか、そういった点が配慮されて、この審議会での議論を踏まえて、審議会としての取扱いというものが決められたというふうに理解をしております。

小池晃君

 今の経過なんですが、これ月百七十三・八時間だとすると、年間では二千八十五・六時間になるので、これ実際には所定内で二千時間を超えて働くことなどできませんから、労働側が小委員会で主張したことは私はこれは当然だと思うんです。

 続いて厚生労働省、もう一回聞きますが、一般労働者の月の所定内実労働時間は昨年の毎月勤労統計では何時間でしょうか。

政府参考人(金子順一君)

 平成二十一年の毎月勤労統計調査におきまして、規模五人以上でございますが、調査産業計で百五十三時間となっております。

小池晃君

 ですから、百七十三・八時間の厚労省の基準と、だから実労働時間とでは月当たり二十・八時間の差がある。その分、現実の最低賃金水準よりも水増しされることになるわけであります。

 大臣、私、お聞きしたいのは、一般労働者の現実の所定内実労働時間を働けば生活できるだけの賃金を保障すると、これがやっぱり当たり前じゃないかと思いますが、大臣、いかがですか。

国務大臣(長妻昭君)

 これは基準をどこに持っていくかという大変悩ましい議論でもあると思いますけれども、これは最低賃金審議会で、これは普通の審議会ではなくて、労使そして公益委員ということで、労働側、使用者側の代表が入った議論の中で、この法定労働時間を使っていこうという一つの決めがなされたわけでございますので、今の段階ではまずこの基準でクリアをしていない最低賃金の地域もあるということでもございますし、我々新政権では最低賃金そのものを更に上げていこうということを目指す施策も出しておりますので、まずは最低賃金の底上げを図っていくということであります。

小池晃君

 まずは、まずはと言うけれども、新政権になったんだから、自公政権時代の数字をそのまま使って、実際には働けない労働時間を根拠にしたんでは本当に必要な最低賃金額が出てきませんから、これはきちっと、これはすぐできるはずですから、一か月賃金、所定内実労働時間で計算すべきだと思います。

 民主党はそもそも、昨年の総選挙で最賃全国平均千円を目指すと公約をしました。ところが、昨年の最賃引上げでは高いところで東京で二十五円、これ七百九十一円になりましたけれども、佐賀、長崎、宮崎、沖縄、こういったところは一円から二円しか増えていないんですね。全国加重平均で七百十三円、対前年比で十円の増額、仮に今後このペースでいったら、平均千円になるには三十年近く掛かるわけです。時給八百円程度の賃金ではこれは生活維持も困難ですし、労働意欲にもつながりません。中小企業に対する支援、もちろん必要ですけれども、フルタイム働けば生活できるという賃金保障は私はこれは最低限必要だと思うんです。

 今年の中央最賃審議会では、今の時点では何の議論も行われていません。このままではゼロに近いんではないかという悲観する声も出ているんですね。大臣、やはり政治主導というのであれば、審議会任せにせずに、大臣のイニシアチブを発揮をして平均千円といったことに近づける、そのイニシアチブを今こそ発揮すべきじゃないですか。

国務大臣(長妻昭君)

 まずは、これはマニフェストでも申し上げておりますけれども、全国最低賃金八百円を想定をしようということで、これはマニフェストでもあるように、一期四年の中で実現をしようということでございます。そして、今、調査の経費も付けまして、最低賃金を上げていくには、例えば中小企業にとってどういう問題が発生するのか、その問題を解決するためにどういう別の政策、中小企業支援等が必要なのかということについて調査を開始をしております。その調査結果が夏ごろまでに出ますので、その調査結果も踏まえて、我々は最低賃金の底上げを図っていきたいと考えております。

小池晃君

 いや、選挙のときと大分違うじゃないですか。そんなことを言ったら、八百円だって十年ぐらい掛かっちゃいますよ、今のペースで十円ずつだったら。

 私は、これは日本経済の回復のためにやっぱり今こそこういう分野が必要なんだというのが民主党の主張だったんだし、これはやっぱりちゃんと実現できる、そういう手だてをしっかり政権として示すべきですよ。そのことを強く求めたいと思います。

 それから、変形労働時間制についてもお聞きしたいんですけれども、四月七日に、全国で約百九十店を展開するパスタチェーンの洋麺屋五右衛門、ここのアルバイトの店員さんが、変形労働時間制の不当な適用で支払われなかった残業代を請求した訴訟で、この変形労働時間制を無効として、未払残業代、懲罰的損害金、こういったものを合わせて支払うように命じる東京地裁の判決が出ました。

 厚生労働省にお聞きしたいんですが、現時点で変形労働時間制はどれだけの職場で導入されていますか。

政府参考人(金子順一君)

 変形労働時間制を採用している企業数割合でございますが、一年単位の変形制の場合三五・六%、一か月単位の変形制で一五・五%、全体では五四・二%というふうになっております。

小池晃君

 全体の五割も導入されているんですね。やっぱりこれ、きちんとやられていないと大変なことになると思うんです。

 このケースでは、労基署は変形労働時間の違反を認めたんです。是正指導をしたんですが、会社はそれに従わずに、二年分のところを一か月分しか是正しなかったんです。ですから、労働者は訴えて、不足分の請求と、悪質な場合に裁判所が認定する付加金、これを求めた裁判なんですよ。

 大臣、元々こういう、本当に今、業界は低賃金です。非常に劣悪な労働条件です。そこで働いていた上に、不誠実な態度で、労基署の指導にも従わずに残業代払わないということは許されない。しかも、それを裁判所に訴えなければ解決しないということでいいんでしょうか。

 大臣、私、少なくともこの洋麺屋五右衛門というところでは、アルバイト、有期雇用で同じような労働時間管理に置かれている人が六千人もいるというんです。私は、裁判と同様のこういう実態がないかどうかを総点検する必要があるんではないかと思いますが。

 私は、大臣、裁判について聞いているわけじゃないから、個別事例と逃げないで、やっぱりこれは労働行政として総点検するということが必要じゃないかと思いますが、いかがですか。

国務大臣(長妻昭君)

 今言われた個別の事業者の中身のコメントというのは差し控えますけれども、一般論としては、労働基準監督機関としては、申告人以外の労働者にも共通する問題が認められた場合は、当然、併せて是正を求めるということをしていくわけであります。

 そして、今おっしゃられた変形労働時間制でありますけれども、これについて、これを本来の趣旨とは違って運営をしていくということは、これはあってはならないわけでございますので、我々はこういう観点も着目をして、今後とも適切に監督指導を実施をしていこうと考えております。

小池晃君

 いや、ほかにもある可能性があるんじゃなくて、これは大いにあるじゃないですか。だって、労基署の指導に従わないでやっているんですよ。裁判でようやくこれが認定されたんですよ。だから、私はここに対してはちゃんと点検に入るべきだと思いますが、どうですか。点検するかどうか答えてください。

国務大臣(長妻昭君)

 個別のことを国会のこの場でお答えはできませんけれども、今申し上げた趣旨のとおり適切に、ほかの申告者以外の方にも同様の法違反が認められるという場合は、その是正を図るようにきちっと指導をしてまいります。

小池晃君

 きちっと指導をしていただくように、これはこっちでこれからも見守りたいというふうに思います。きちんとやってもらわないと困ります。

 今回のように、アルバイトなど有期労働者が圧倒的な店舗で働いて、シフトの勤務の変更というのはもう日常茶飯事なんですよ、こういうところは。勤務直前で突然労働時間が変わる、こんなことがしょっちゅう起こるわけですね、こういうところは。私は、こういう職場ではそもそも変形労働時間制認めるべきでないと思いますが、大臣、いかがですか。

国務大臣(長妻昭君)

 これは、変形労働時間制というのが一定のルールの下これが認められているということが今までもなされておりますので、単に、例えばアルバイトの労働者が多い職場だから認めないとか認めるとか、職場によって差は付けるべきものではないというふうに考えております。

小池晃君

 いや、でも、現実にこういうことが起こっているんだから、やっぱりしっかり問題意識持ってやってもらわないと困りますよ。やはり、こういう事態を放置することは許されないというふうに思いますので、この問題、引き続き私、取り上げていきたいというふうに思います。

 それから、今日ちょっとどうしても、時間がないので、最後やりたいのは、先ほども議論ありましたけれども、B型肝炎の問題です。

 今、原告団、弁護団の皆さんが厚生労働省の前で座込みをされていて、私、昼休みに行ってまいりました。先ほど責任ある対応ができないから会わないんだというふうにおっしゃったけれども、私はとんでもないと思うんですよ。だって、会わなければ責任ある対応策ってできるんですか。会って話を聞くのが責任ある対応策をつくり出していくその第一歩になるじゃないですか。

 大臣が記者会見で言ったんです、省内でA案、B案、C案、検討していますと。そのA案、B案、C案なるものの中身は全く明らかになっていないんですよ。これは、密室で官僚と一緒に検討して答えが出るんですか。

 舛添大臣は厚生労働大臣時代のことを回顧録を書いていて、そこで薬害肝炎のときのことを言っているんです。何て言っているかというと、役人がはじき出してきた二兆円という数字があったと、それに対して弁護団が出してきた数字は全く違ったと。問題が解決した今から振り返ってみると、原告弁護団の数字の方が実態に近かったと、こういうふうにおっしゃっているんですよ。

 やっぱり補償の水準考える上でも、実際に訴えている原告団、弁護団に話を聞くということをやって初めて責任ある対応ができるんじゃないですか。だから、そのためにも私は会うべきだと思いますが、いかがですか。

国務大臣(長妻昭君)

 私が先ほど申し上げましたのは、責任ある発言ができるというときにお会いをしてお話をするということを申し上げたところでありまして、当然、省内で過去のいろいろな事例の分析をする、その情報というのは省内にとどまらず、関係各省庁とも、今事務方同士も連絡協議をする、そして関係閣僚も協議をする、そして総理大臣を中心として議論もし協議をするということで、もう期限が迫っておりますので、それに向けて一つ一つ議論をして、責任ある発言ができるように努めていくということであります。

小池晃君

 責任ある発言ができないから会わないって、私は勘違いしていると思いますよ、国民は何のためにあなたたちに政権を渡したんですか。責任ある回答ができないから会わないなんて、そんな対応をするために政権渡したんじゃないですよ。野党のときだったら、真っ先にあなたたち駆け付けて会いなさいと言っていたじゃないですか。今も座り込んでいるんです、今日の夕方までも。行って手を握って話を聞くと、そういうことをやるのが新しい政権の仕事なんじゃないですか、それを期待して国民はあなたたちに政権を渡したんじゃないですか。こんな冷たい官僚的な対応をするために政権交代したんじゃないですよ。山井さん、どうですか。

大臣政務官(山井和則君)

 小池委員にお答えを申し上げます。

 本当に、そういう御質問いただくと、私も非常に責任を感じます。先ほども丸川委員に答弁をさせていただきましたが、肝炎対策基本法そして核酸アナログ製剤の医療費助成、この四月からスタートをしました。そして、一刻も早く、苦しんでおられる方々がやはりこの訴訟が終わるように私もせねばならないというふうに思っております。

 大臣も答弁しましたように、五月十四日という具体的な一つの期日というものがありますので、そのときに回答ができるように精いっぱい今協議をしている最中でございます。

小池晃君

 何で会わないんですか、今日夕方まで厚生労働省の前に座っているんですよ、行って手を取って話を聞くだけでいいんですよ。ここで回答できなくても、それは無責任なことを言われちゃ困りますよ、でも話を聞いてあげてくださいよ。それが新しい対応を考えていく土台になるんじゃないですか。私は、新政権ということに国民が期待したのはそういう対応なんだと思いますよ。

 大臣、あなたは何のために権力持っているんですか。あなたが会うと言えば会えるんですよ。あなたは厚生労働省のトップになったんですよ。その権力を今こそ国民のために使うべきときなんじゃないですか。行って会ってください。

国務大臣(長妻昭君)

 先ほど来答弁いたしておりますけれども、我々は今政権の座に着いているということで、まさに責任ある対応、責任ある実際の問題解決をしなければならないということで、政府挙げて我々今協議をしているところでありまして、それについて五月十四日の期日までにきちっとした回答ができるように責任ある今議論をして、その回答ができるように今関係各大臣とも様々な情報の交換をし、いろいろな過去の例の問題あるいは最高裁の判決も含めて、我々鋭意協議をしているというところであります。

小池晃君

 官僚と議論しているだけでは私は結論は出ないと思います。声を聞くと、それが解決の第一歩だということを重ねて申し上げます。

 終わります。

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