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小池 晃

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「1億円の壁」解決を 所得税負担構造問題 小池氏ただす 参院財金委

2022年11月18日

赤旗2022年11月18日付

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(写真)質問する小池晃議員=17日、参院財金委

 日本共産党の小池晃議員は17日の参院財政金融委員会で、所得1億円超で所得税の負担率が下がる「1億円の壁」の問題を取り上げました。鈴木俊一財務相は「高所得層の負担率の方が低所得層よりも低い状況にあり、所得税の負担構造として問題があるとの意見が政府税制調査会(政府税調)であった。政府としてもそうしたご議論を踏まえて、適切に対応する」と述べました。

 

 さらに小池氏は、10月に政府税調が新たに提出した、所得税に社会保険料を合算した納税者負担率のグラフを示し、所得1億円を境に富裕層の税負担率が中低所得者より低くなっていると指摘。証券優遇税制に加えて、定額の国民年金や、人頭税の要素が強い国民健康保険料(税)の逆進性が反映されているとし、「政府全体として社会保険料の逆進性の是正を図るべきだ」とただしました。

 

 鈴木俊一財務相は、社会保険料の逆進性について認める一方、「社会保険制度の持続可能性のための受益と負担のバランスを確保する」と述べるにとどめました。

 

 小池氏はまた、政府税調が提出した米国・英国の所得税負担率のグラフを示し、「両国とも『1億円の壁』のようなものはなく、高額所得者の負担率が比較的高い水準で維持されている」「日本もこれらの国の取り組みを参考にすべきではないか」と質問。住澤整主税局長は、米国での高所得者層への34・8%の課税(ニューヨーク州)について「留意する必要がある」と答えました。

 

 鈴木財務相は「政府税調の議論では『累進化を導入する段階課税など諸外国の制度も一つの参考になる』との意見があった」と答弁しました。

速記録を読む

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 所得が一億円を超えると所得税の負担率が下がっていくという、一億円の壁の問題、これ、大門実紀史議員が初めて取り上げて、今や政府税調でも大きなテーマとなってきているわけです。この一億円の壁、大臣、税の公平性を保つという点でも税収を確保するという点でも、私はなくしていくべき壁だと思いますが、大臣、どう認識されていますか。

 

○国務大臣(鈴木俊一君) 先生から御指摘がございました一億円の壁でございますけれども、まず、税負担の公平性を確保するという観点から、社会保険料も加味をいたしますと、かなりの高所得層の負担率の方が低所得者層よりも低い状況にある、ありまして、所得税の負担構造として問題があるといった趣旨の御意見などが政府税制調査会においてもあったということを報告を受けております。
 この問題につきましては、令和四年度与党税制改正大綱においても、税負担の公平性を確保する観点から、市場への影響も踏まえた上で総合的な検討を行うこととされておりまして、今後、与党税制調査会において幅広い観点から御議論をいただくものと承知をしております。政府としても、そうした御議論を踏まえて適切に対応してまいりたいと思っております。

 

○小池晃君 今も御答弁ありましたが、資料一でお配りをしておりますけど、今回は初めて、十月四日の政府税調に新たに所得税に社会保険料を合算した負担率のグラフというのが出されております。20221117資料①
 財務省にお聞きしますが、何で社会保険料を合算されたのか、合算した結果と、そこから見えてくる課題というのをどうお考えか、お答えください。

 

○政府参考人(住澤整君) お答え申し上げます。
 今お示しいただきましたこの資料の①でございますが、この資料につきましては、九月の政府税制調査会の審議の際に、一億円の壁の問題に関連いたしまして、政府税調の委員の方から、高所得層の実態がどのようになっているのか、これについてしっかり把握するため、今後その議論を進める上でより詳細なデータの提示が必要ではないかという御意見がございまして、この御意見を踏まえまして、本年十月の政府税制調査会に、様々な資料を提出させていただきましたが、その中の一つとして提出したものでございます。このデータ自体は、国税庁の申告所得税標本調査のデータから、既に公表されているデータが基になってございます。
 この資料につきまして、政府税調において事務局から、所得税と社会保険料はその趣旨が異なっているという点については留保申し上げた上で、これらを合わせた負担感を比較いたしますと、低所得層を含む多くの納税者の負担率よりもかなりの高所得者層の負担率の方が低くなる状況が生じているといった点を事実関係として御説明申し上げましたが、これにつきまして委員の方々から、社会保険料については給付と一体として考えられるべきものであり、所得税は異なっている点には留意はすべきであるという御指摘があった一方で、社会保険料も加味するとかなりの高所得者層の負担率の方が低所得者層よりも低い状況にあり、所得税の負担構造として問題があるといった趣旨の御意見があったところでございまして、こういった点も踏まえて、国民的な議論が必要な課題であるというふうに考えております。

 

○小池晃君 これ、負担率見ますと、超富裕層といいますかね、そこの負担率が逆にその中低所得者層より低いという数字も出てきているわけだし、中低所得者というか、一千万円ぐらいまでも含めてこれがかなり高止まりしちゃっているという、この負担率が、超富裕層に比べるとですね。非常にやっぱりいびつな構造があるということが見て取れると私は思うんですね。
 これ、中低所得層の負担率が高めに出ているのは、これ社会保険料、特に定額である国民年金、これ申告納税者ですから、やはり国民年金の保険料定額ですし、それから国民健康保険料は人頭払いの要素強いですから、非常にやっぱり逆進性が反映しているという面もあると思うんです。
 大臣、やっぱり社会保険料の逆進性については、これは厚生労働省を始め政府全体としても課題を共有して、是正を図るべきだというふうに思われませんか。

 

○国務大臣(鈴木俊一君) 社会保険料につきましては、今、小池先生から御指摘がございましたとおり、例えば国民年金の保険料が定額負担であるということなど一定の逆進性が存在をすると理解をしておりますが、一方で、国民年金や国民健康保険の保険料については、所得に応じた免除でありますとか軽減の制度が設けられておりまして、所得の低い方々に配慮した制度になっているという点も考えなければいけないと思います。
 社会保障制度の持続可能性を確保するためには、受益と負担のバランスを確保しつつ、国民の負担を適正で負担可能な範囲にとどめることが重要であると考えておりまして、厚生労働省など関係省庁とも連携をしながら、能力に応じて皆が支え合う持続可能な社会保障制度を構築していくこと、これが大事であると思っております。

 

○小池晃君 いろいろと減免した結果こうなっているわけですからね。私はこれ適正な負担だとは思えないんですよ。やはり、これだけ富裕層よりも中低所得者の方が負担率高いって、これ適正だと思われますか。

 

○国務大臣(鈴木俊一君) まさに、そういう点が財政審議会でも議論になっているということでありますので、あっ、政府税調ですね、失礼しました。政府税調でも議論になっているということでありますので、そうした議論をしっかりと注視していきたいと思います。

 

○小池晃君 それからもう一点、資料の二を御覧いただきたいんですけど、これは政府税調に出された米国、英国の所得税負担率のグラフなんですね、これも初めて出されたわけですけど。これ見ますと、このグラフを見る限りですよ、限りではですよ、これ一億円の壁のようなものは余りない。高額所得者の負担率、比較的高い水準で維持されていると思うんですが、財務省、これ、どうしてこういうふうに、米国、英国はこのようなカーブになっているんでしょう。20221117資料➁

 

○政府参考人(住澤整君) お示しいただいておりますこの政府税調の資料でございますが、米国につきましては、日本円で申しますと十・九億円以上のところでブラケットが切れておりまして、英国につきましては二・八億円以上のところで切れているということでございますので、我が国に関連してお示しいただいた①の方のように五十億とか百億とかこういったブラケットまで示されているわけではございませんので、ちょっと比較する上でのこのデータとしては若干不足があるというところかとは思いますが、他方で、この四角の中の米国、英国の制度についての説明がございますが、ここで株式の譲渡益についての課税として、米国の場合は、ニューヨーク州の場合、最高で三四・八%までの課税がなされているといったような点については留意する必要があると考えております。

 

○小池晃君 ここから先はデータがないので分からないというのはそれはそうなんだけども、やはり、これキャピタルゲインに対して累進的な課税をしていることであるとか、英国などはこれは総合課税的な掛け方をしている部分もあったりする。
 私ね、大臣ね、この一億円の壁、解決しなきゃいけないと思っていますし、その点では、このままやれとは言いませんけども、やっぱり米国や英国がやっているような取組というのはこれ参考にすべきではありませんか。

 

○国務大臣(鈴木俊一君) 十月四日に開催されました政府税制調査会におけるいわゆる一億円の壁に関する議論の中では、諸外国の制度も踏まえた御意見というものもあったと報告を受けております。その中で、例えば、分離課税について所得全体で見た上で累進化を導入する段階課税の考え方は一つの参考になるといった御意見もあったとのことでありました。
 いずれにいたしましても、いわゆる一億円の壁の問題については、今後、政府税制調査会のみならず、与党の税制調査会において幅広い観点から総合的な検討が行われるものと承知をいたしております。政府としても、そうした議論を踏まえて対応してまいりたいと考えます。

 

○小池晃君 それから、最後、資料の三、見ていただきたいんですけど、これも政府税調に出た資料ですが、フランス、一般社会税ですね、これ、給与だけでなくて金融所得にも課税されて、全額がこれはもう必ず疾病、年金、介護などに給付されると。規模は、二〇一九年決算で十五兆六千億と。20221117資料③
 社会保障というと消費税、消費税って一本やりなんですけど、我が国財務省は。私は、こういう、低所得者に負担の重い消費税ではなく、フランスのように直接税をやはり社会保障目的税とすると。まあ、これもこういうやり方をそのままとは言いませんが、こういった考え方もやはり検討すべきではないかと思いますが、大臣、いかがですか。

 

○国務大臣(鈴木俊一君) 社会保障制度を支える財源といたしましては、各国それぞれの事情に基づいて定められているものと考えておりますが、急速な高齢化等が進行する我が国におきましては、負担が特定の世代に集中せず、税収が景気や人口構成の変化に左右されにくく安定していることから、消費税が社会保障に係る経費を賄うための財源としてふさわしいと考えているところであります。
 したがいまして、現時点におきまして、御指摘のように、社会保障財源を確保するために所得税において新たな税の枠組みを創設することは考えておりませんが、安定的な税収基盤を確保するため、引き続き税体系全般の見直しを進めてまいりたいと思っております。

 

○小池晃君 もちろん、私も今すぐこういうことをやれと言っているわけじゃないんですね。やっぱり、将来、この社会保障の財源を考えていく上で、今みたいに消費税しか考えないということでいいのかという問題提起をさせていただいたということです。
 消費税は増税し、法人税は減税し、所得税を最高税率引き下げてきたと、これが内部留保を増やして格差拡大してきた、デフレを長引かせた最大の原因だというふうに思います。前回、内部留保課税をこの委員会で求めまして、まあ大臣いらっしゃらなかったんですけども、やっぱりこういう税制改革の最重要課題として、この一億円の壁、この問題の解決ということを進めていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

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